説明

表示パネルの製造装置及びガス導入装置

【課題】表示パネル内部への放電ガスの導入を容易かつ低コストで行えるようにする。
【解決手段】対向して配置された前面側基板と背面側基板とを内部を真空状態にして封着する封着部と、製造装置の外部に移送可能であって封着された基板間の対向間隙の容積に応じた量の放電ガスを有し対向間隙に放電ガスを導入するガス導入装置が内部に移送され、それを封着部にて封着された基板の一方に取り付けられたチップ管に真空中で装着する装着部とを有し、製造装置の内外に移送可能なガス導入装置により表示パネル内部に放電ガスを導入するようにして、放電ガスの導入を容易かつ低コストで行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの製造装置及びガス導入装置に関し、詳しくは封止された表示パネル内部へのガス導入技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)のような表示パネルは、前面基板と背面基板とを対向させて配置し、周囲を封止することで放電空間が形成される。そして、前面基板と背面基板との間の放電空間に、Ne−Xe等の放電ガスが封入されて表示パネルが製造される。
【0003】
例えば、前面基板と背面基板を対向させ周囲を封止した後、一方の基板に形成された通気孔に取り付けられたチップ管に接続されたパイプにより、パネル内部の真空排気を行い、ガスボンベからパネル内部に放電ガスの導入を行っていた。この工程は、パネル部分のみを加熱炉で加熱し、ガスボンベを加熱炉体の外に設置して行われていた。ガスボンベを密閉容器(チャンバー)の外に設置し、密閉容器内でパネルを封着する場合、特別な密閉容器を用意してガス導入し、チップ管の封止・切断(チップオフ)も密閉容器内で行われていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、例えば、パネルの封着を行う密閉容器内に放電ガスを導入し、放電ガスを含む雰囲気中で封着することによりパネル内部に放電ガスの導入を行っていた(例えば、特許文献2参照。)。さらに、特許文献2記載の製造工程においては、密閉容器内に残っている放電ガスを回収して精製し再利用していた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−319572号公報
【特許文献2】特開2004−281419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パネルの封着を行う密閉容器の外にガスボンベを設置すると、パネル内部に放電ガスを導入するための機構が複雑になるという問題がある。ガスボンベを密閉容器の外に設置し、密閉容器内でパネルを封着する場合、ガスボンベからの放電ガスを導入する導入口は、密閉容器内で移動できる機構を有していなければならない。また、チップオフを密閉容器内で行うには、脱ガスのない仕様が要求され、設備費が非常に高価になる。
【0007】
また、パネルの封着を行う密閉容器内に放電ガスを導入して、パネル内部に放電ガスの導入を行った場合、パネル内部に封入されない放電ガスがほとんどであり、多量のガスが密閉容器内に残る。この密閉容器内に残った放電ガスは、排気されるか、あるいは回収精製して再利用されるが、排気すると放電ガスを浪費し多量のコストがかかり、再利用する場合でも精製コストや精製後の放電ガスの純度の点で問題がある。
【0008】
本発明は、表示パネル内部への放電ガスの導入を、容易かつ低コストで行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表示パネルの製造装置は、対向して配置された前面側基板と背面側基板の対向間隙に放電ガスが封入されてなる表示パネルの製造装置であって、内部を真空状態にして前記前面側基板と前記背面側基板とを封着する封着部と、当該製造装置の外部に移送可能であって前記対向間隙の容積に応じた所定量の放電ガスを有し前記対向間隙に放電ガスを導入するガス導入装置が内部に移送され、当該ガス導入装置を前記封着部にて封着された基板の一方に取り付けられたチップ管に真空中で装着する装着部とを有することを特徴とする。
本発明の表示パネルの製造装置は、対向して配置された前面側基板と背面側基板の対向間隙に放電ガスが封入されてなる表示パネルの製造装置であって、前記前面側基板及び前記背面側基板と、一方の前記基板に取り付けられたチップ管に装着された、当該製造装置の外部に移送可能でかつ前記対向間隙の容積に応じた所定量の放電ガスを有し前記対向間隙に放電ガスを導入するガス導入装置とが移送され、内部を真空状態にして前記チップ管に前記ガス導入装置が装着された状態で前記前面側基板と前記背面側基板とを封着する封着部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造装置の内外に任意に移送可能なガス導入装置により表示パネル内部に放電ガスを導入することができ、製造装置に複雑な機構を設けることなく、表示パネル内部への放電ガスの導入を容易かつ低コストで行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下では、表示パネルとしてプラズマディスプレイパネルを一例に説明する。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、表示パネルに形成された通気孔に取り付けられたガラス管を介して、封止されたパネル内部に放電ガスの導入を行う表示パネルに適用可能である。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの構成例を示す分解斜視図である。
【0013】
前面ガラス基板11上に、バス電極(金属電極)12と透明電極13とからなる表示電極(サステイン電極ともいう。)が形成されている。表示電極(12、13)の上には、低融点ガラス等からなる誘電体層14が被着されている。さらにその上には、MgO(酸化マグネシウム)等の保護膜15が被着されている。すなわち、前面ガラス基板11に配置された表示電極(12、13)は、誘電体層14に覆われており、さらにその表面が保護膜15に覆われている。
【0014】
また、前面ガラス基板11と対向して配置された背面ガラス基板16上に、アドレス電極17R、17G、17Bが、表示電極(12、13)と直交する方向に(交差するように)形成される。アドレス電極17R、17G、17Bの上には誘電体層18が被着される。さらにその上には、蛍光体20R、20G、20Bが被着されている。アドレス電極17R、17G、17Bの両側に列方向のセルを区分するための隔壁(リブ)19が配置される。
【0015】
隔壁19の内面(側壁)には、紫外線により励起されて赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の可視光を発光する蛍光体20R、20G、20Bが各色毎に配列、塗布されている。詳細には、アドレス電極17Rの上方に赤色に発光する蛍光体層20Rが形成され、アドレス電極17Gの上方に緑色に発光する蛍光体層20Gが形成され、アドレス電極17Bの上方に青色に発光する蛍光体層20Bが形成されている。言い換えれば、隔壁19の内面に塗布されている赤色、緑色、青色の蛍光体層20R、20G、20Bに対応するようにしてアドレス電極17R、17G、17Bが配置されている。
【0016】
すなわち、背面ガラス基板16に配置されたアドレス電極17R、17G、17Bは、誘電体層18に覆われており、アドレス電極17R、17G、17Bの両側に放電セルを区画する隔壁19が配置されている。アドレス電極17R、17G、17B上の誘電体層18の上面及び隔壁19の側壁に、放電セルに対応して蛍光体層20R、20G、20Bが塗布されている。対をなす表示電極(12、13)間の面放電によって蛍光体20R、20G、20Bを励起して各色が発光する。
【0017】
前面ガラス基板11と背面ガラス基板16を、保護膜15と隔壁19が接するように封着し、かつその内部(前面ガラス基板11と背面ガラス基板16との間の放電空間(対向間隙))にNe−Xe等の放電ガスを所定の圧力で封入し、プラズマディスプレイパネルが構成される。
【0018】
なお、図1に示すプラズマディスプレイパネルの構成は一例であり、図1に示したものと、例えば表示電極(12、13)の構造や隔壁19の構造等が異なるプラズマディスプレイパネルも本実施形態に含まれる。
【0019】
図2は、本実施形態におけるプラズマディスプレイパネルのチップ管接着後の外観図である。
【0020】
保護膜15と隔壁19が接するように重ね合わされた前面ガラス基板11と背面ガラス基板16は、周縁部に配された封着剤(低融点ガラスや樹脂)21により封着される。表示パネル内部への放電ガスの封入は、背面ガラス基板16に接着された(取り付けられた)チップ管と呼ばれるガラス管22を介して行われる。
【0021】
チップ管22は、背面ガラス基板16に設けられた通気孔の上(通気孔位置に合致する位置)に配設され、通気孔を囲むようにしてチップ管22の端面が基板16に密着している。このようにチップ管22の端面を基板16に密着させ、その周囲を封着剤(低融点ガラスや樹脂)23により封着することで、外部との通気を遮断し、チップ管22を介したパネル内部への放電ガス封入が可能になる。パネル内部に放電ガスを封入した後、チップ管22の通気路を塞ぐようにチップ管22を溶断することで、放電空間の密閉を行う。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態におけるガス導入装置の構成例を示す図である。本実施形態におけるガス導入装置は、表示パネル内部にチップ管を介して放電ガスを導入するものであり、いわゆる小型ボンベ31を用いて構成される。本実施形態におけるガス導入装置(小型ボンベ31)は、表示パネルに取り付けられたチップ管に装着した状態で、表示パネルやチップ管を破損させることなく、製造装置内を移動可能であるとともに、製造装置の内部と外部の間でも移動させることが可能である。
【0023】
小型ボンベ31は、その内部空間と外部とを接続する通気路の内周面に環状溝(リング溝)が形成される。リング溝には小型ボンベ31を表示パネルのチップ管22に装着したときに、小型ボンベ31の通気路内周面とチップ管の外周面との間をシールするシールリング(例えば、Oリング)より構成されるシール材32が装着されている。
【0024】
また、小型ボンベ31は、その内部に弁33を有する。弁33は、小型ボンベ31に固定されておらず、小型ボンベ31の内部空間側の圧力を外部の圧力よりも高くして図示のように小型ボンベ31の通気路を下方にすることで、圧力差によって小型ボンベ31の内壁と密着し、内部空間と外部との間のガスの流れを遮断する。
【0025】
図4(A)、(B)は、ガス導入装置である小型ボンベ31を表示パネルのチップ管22に装着したときの状態の一例を示す図である。
図4(A)には、挿入したチップ管22の先端が弁33に至っていない状態を示している。このとき、シール材32が、小型ボンベ31の通気路内周面及びチップ管22の外周面に密着し、小型ボンベ31とチップ管22との間をシールする。また、チップ管22の先端が弁33に至っていないため、弁33は閉じた状態を維持している。
【0026】
図4(B)には、図4(A)に示した状態からさらにチップ管22を挿入し、チップ管22の先端が弁33に至った状態を示している。シール材32が、小型ボンベ31の通気路内周面及びチップ管22の外周面に密着し、小型ボンベ31とチップ管22との間をシールする。また、チップ管22の先端部により弁33が移動させられ、弁33は開いた状態となる。したがって、チップ管22を介して小型ボンベ31から表示パネルに放電ガスが供給される。
【0027】
なお、図5に示すように、小型ボンベ31の内部にチップ管22が奥まで挿入されるのを防止するストッパ36を設けるようにしても良い。ストッパ36は、チップ管22が当接したときにチップ管22を介したガスの流れが完全には遮断されないように、チップ管22の先端部の一部が当接するように構成されている。このようなストッパ36を設けることで、小型ボンベ31に対するチップ管22の挿入深度を容易に一定とすることができ、チップオフするためのチップ管22の露出部分を確保することができる。なお、図5に示すストッパ36の構成は一例であり、これに限定されるものではない。
【0028】
図6(A)〜(C)は、本実施形態におけるガス導入装置(小型ボンベ)31の他の構成例を示す図である。
図6(A)に示すように、小型ボンベ31は、内部空間と外部とを接続する通気路の内周面に環状溝(リング溝)が形成され、リング溝には小型ボンベ31をチップ管22に装着したときに、小型ボンベ31の通気路内周面とチップ管の外周面との間をシールするシールリングより構成されるシール材32が装着されている。
【0029】
また、小型ボンベ31は、弁37を有する。弁37は、バネ(スプリング)38により小型ボンベ31における通気路を閉鎖する方向に付勢されている。なお、弁37は、切り欠き部39を有するが、切り欠き部39とは異なる部分で小型ボンベ31の内壁と密着可能なように構成されている。このように通気路を閉鎖する方向に付勢される弁37を用いた場合には、小型ボンベ31の通気路の方向にはかかわらず、小型ボンベ31の通気路からチップ管22等の管を抜去すると同時に内部空間と外部との間のガスの流れを遮断することができる。
【0030】
図6(B)に示すように、挿入したチップ管22の先端が弁37に至っていない状態では、シール材32が、小型ボンベ31の通気路内周面及びチップ管22の外周面に密着し、小型ボンベ31とチップ管22との間をシールする。また、チップ管22の先端が弁37に至っていないため、弁37は閉じた状態を維持している。
【0031】
一方、図6(C)に示すように、挿入したチップ管22の先端が弁37に至った状態では、シール材32が、小型ボンベ31の通気路内周面及びチップ管22の外周面に密着し、小型ボンベ31とチップ管22との間をシールする。また、チップ管22の先端部によってバネ38による付勢力に抗して通気路が開く方向に弁37が移動させられ、弁37は開いた状態となる。弁37に切り欠き部39を設けたことにより、弁37とチップ管22の先端部とが密着することを防止し、チップ管22を介して小型ボンベ31から表示パネルに放電ガスが供給される。
【0032】
次に、上述したプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと記す)の製造に用いられる本発明の一実施形態における製造装置について説明する。本実施形態における製造装置では、上述したガス導入装置を用いてPDP内部に放電ガスの導入を行う。
【0033】
図7は、本実施形態における製造装置の構成例を示す図である。
図7に示す本実施形態における製造装置は、保護膜蒸着部102、プリベーク部105、アライメント部107、チップ管導入部109、封着部112、ボンベ装着部114、及びボンベ導入部117を有する。
【0034】
保護膜蒸着部102は、仕切りバルブ101を介して図示しない第1の搬入部に接続され、プリベーク部105は、仕切りバルブ104を介して図示しない第2の搬入部に接続される。また、保護膜蒸着部102及びプリベーク部105は、仕切りバルブ103、106を介してアライメント部107に接続される。また、仕切りバルブ108を介して外部に接続されるチップ管導入部109は、仕切りバルブ110を介してアライメント部107に接続される。
【0035】
アライメント部107は、仕切りバルブ111を介して封着部112に接続され、封着部112は、仕切りバルブ113を介してボンベ装着部114に接続される。また、仕切りバルブ116を介して外部に接続されるボンベ導入部117は、仕切りバルブ118を介してボンベ装着部114に接続される。ボンベ装着部114は、仕切りバルブ115を介して図示しない搬出部に接続される。
【0036】
図7に示した製造装置を用いてPDPを製造する工程について図8を参照して説明する。なお、図7に示した製造装置において、保護膜蒸着部102、プリベーク部105、アライメント部107、封着部112、及びボンベ装着部114は、予め真空排気されているものとする。
【0037】
表面に表示電極(維持電極)が形成され(151)、さらに誘電体層が形成された(152)前面ガラス基板が、図示しない第1の搬入部に搬入される。続いて、第1の搬入部を真空排気して真空状態になったら、仕切りバルブ101を開いて第1の搬入部と保護膜蒸着部102とを接続し、前面ガラス基板を保護膜蒸着部102に移送して仕切りバルブ101を閉じる。
【0038】
そして、保護膜蒸着部102において、前面ガラス基板の表面にMgO等の保護膜を蒸着法により成膜する(153)。所定の膜厚の保護膜が形成されると、仕切りバルブ103を介して保護膜蒸着部102とアライメント部107とを接続し、前面ガラス基板をアライメント部107に移送する。
【0039】
一方、背面ガラス基板は、表面にアドレス電極が形成され(154)、その上に誘電体層が形成される(155)。また、その上に隔壁及び蛍光体層が形成される(156、157)。さらに、背面ガラス基板は、その周縁部及びチップ管の取り付け部に封着材としての低融点ガラスが配されて(158)、図示しない第2の搬入部に搬入される。続いて、第2の搬入部を真空排気して真空状態になったら、仕切りバルブ104を開いて第2の搬入部とプリベーク部105とを接続して背面ガラス基板をプリベーク部105に移送し、仕切りバルブ104を閉じる。
【0040】
そして、プリベーク部105において、背面ガラス基板を加熱し、所定時間ベーキングを行うことで脱ガス処理を行う(159)。脱ガス処理を終了すると、仕切りバルブ106を介してプリベーク部105とアライメント部107とを接続し、背面ガラス基板をアライメント部107に移送する。
【0041】
また、仕切りバルブ108を一時的に開いてチップ管をチップ管導入部109に搬入する。次いで、チップ管導入部109を真空排気して真空状態になったら、仕切りバルブ110を開いてチップ管導入部109とアライメント部107とを接続し、チップ管をアライメント部107に移送して仕切りバルブ110を閉じる。
【0042】
アライメント部107では、保護膜形成後の前面ガラス基板と、脱ガス処理後の背面ガラス基板とが、前面ガラス基板に形成された保護膜と背面ガラス基板に形成された隔壁とが接するように重ね合わされ、基板用クリップ等の固定具で固定される。前面ガラス基板と背面ガラス基板とを重ね合わせる際には、前面ガラス基板と背面ガラス基板との位置ずれが生じないように位置合わせして固定される。また、チップ管が、背面ガラス基板に設けられた通気孔の位置に合わせて配設され、チップ管用クリップ等の固定具で固定される(160)。
【0043】
このようにして、前面ガラス基板と背面ガラス基板とが重ね合わせて固定され、かつチップ管が背面ガラス基板に固定されると、仕切りバルブ111を介してアライメント部107と封着部112とを接続し、前面ガラス基板、背面ガラス基板、及びチップ管を固定された状態で封着部112に移送する。
【0044】
続いて、封着部112では、前面ガラス基板、背面ガラス基板、及びチップ管を固定された状態で、例えば約430℃に加熱する(161)。これにより、封着材としての低融点ガラスを溶融させ、前面ガラス基板と背面ガラス基板とを封着させるとともに、背面ガラス基板とチップ管を封着させる(162)。その後、PDP(詳細には、封着された前面ガラス基板、背面ガラス基板、及びチップ管)を所定温度になるまで冷却した後、仕切りバルブ113を介して封着部112とボンベ装着部114とを接続し、PDPをボンベ装着部114に移送する(163)。
【0045】
また、仕切りバルブ116を一時的に開いて、PDPの放電空間(対向間隙)の容積及び封入時のガス圧に応じた所定量の放電ガスが内部に導入された小型ボンベ(ガス導入装置)31をボンベ導入部117に搬入する。次いで、ボンベ導入部117を真空排気して真空状態になったら、仕切りバルブ118を開いてボンベ導入部117とボンベ装着部114とを接続し、ガス導入装置である小型ボンベをボンベ装着部114に移送して仕切りバルブ118を閉じる。
【0046】
ボンベ装着部114では、放電ガスが内部に導入された小型ボンベをPDPのチップ管に装着する(164)。ただし、本工程では、例えば、図4(A)や図6(B)に示した状態、すなわちチップ管の先端が小型ボンベ内の弁に至らず弁が閉じた状態を維持するように装着する。
【0047】
次に、仕切りバルブ115を開いてボンベ装着部114と図示しない真空排気されている搬出部とを接続し、小型ボンベが装着されたPDPを搬出部に移送する。そして、搬出部をリークして大気圧とし、小型ボンベが装着されたPDPを外部に搬送する。
【0048】
その後、PDPに装着された小型ボンベを押し込むことにより、チップ管をさらに挿入する(チップ管の挿入深度を大きくする)。これにより、例えば、図4(B)や図6(C)に示した状態、すなわちチップ管の先端が小型ボンベ内の弁に至った状態にして弁を開き、小型ボンベよりPDP内部の放電空間に放電ガスを導入する(165)。そして、チップ管をチップオフして放電空間を密閉するとともに、小型ボンベを回収して終了する(166)。
【0049】
なお、上述した説明では、前面ガラス基板と背面ガラス基板とを封着した後に小型ボンベを装着するようにしている。しかし、例えば封着材として有機物である樹脂(例えば、熱可塑性樹脂)を用いた場合など加熱温度が低く、その温度に小型ボンベが耐えられるときには、以下に説明するように、真空状態とする前に外気圧の状態で、表示パネルに小型ボンベを装着するようにしても良い。
【0050】
図9は、本実施形態における製造装置の他の構成例を示す図である。
図9に示す本実施形態における製造装置は、保護膜蒸着部202、プリベーク部205、アライメント部207、及び封着部209を有する。
【0051】
保護膜蒸着部202は、仕切りバルブ201を介して図示しない第1の搬入部に接続され、プリベーク部205は、仕切りバルブ204を介して図示しない第2の搬入部に接続される。また、保護膜蒸着部202及びプリベーク部205は、仕切りバルブ203、206を介してアライメント部207に接続される。
【0052】
アライメント部207は、仕切りバルブ208を介して封着部209に接続される。封着部209は、仕切りバルブ210を介して図示しない搬出部に接続される。
【0053】
図9に示した製造装置を用いてPDPを製造する工程について図10を参照して説明する。なお、図9に示した製造装置において、保護膜蒸着部202、プリベーク部205、アライメント部207、及び封着部209は、予め真空排気されているものとする。
【0054】
表面に表示電極(維持電極)が形成され(251)、さらに誘電体層が形成された(252)前面ガラス基板が、図示しない第1の搬入部に搬入される。続いて、第1の搬入部を真空排気して真空状態になったら、仕切りバルブ201を開いて第1の搬入部と保護膜蒸着部202とを接続し、前面ガラス基板を保護膜蒸着部202に移送して仕切りバルブ201を閉じる。
【0055】
そして、保護膜蒸着部202において、前面ガラス基板の表面にMgO等の保護膜を蒸着法により成膜する(253)。所定の膜厚の保護膜が形成されると、仕切りバルブ203を介して保護膜蒸着部202とアライメント部207とを接続し、前面ガラス基板をアライメント部207に移送する。
【0056】
一方、背面ガラス基板は、表面にアドレス電極が形成され(254)、その上に誘電体層が形成される(255)。また、その上に隔壁及び蛍光体層が形成される(256、257)。さらに、背面ガラス基板は、その周縁部に封着材としての樹脂(例えば、熱可塑性樹脂)が配される(258)。
【0057】
次に、背面ガラス基板に設けられた通気孔の位置に合わせてチップ管を配設し、背面ガラス基板にチップ管を接着した後、PDPの放電空間の容積及び封入時のガス圧に応じた所定量の放電ガスが内部に導入された小型ボンベをチップ管に装着する(259)。ただし、本工程では、例えば、図4(A)や図6(B)に示した状態、すなわちチップ管の先端が小型ボンベ内の弁に至らず弁が閉じた状態を維持するように装着する。
【0058】
この小型ボンベがチップ管に装着された背面ガラス基板が、図示しない第2の搬入部に搬入される。続いて、第2の搬入部を真空排気して真空状態になったら、仕切りバルブ204を開いて第2の搬入部とプリベーク部205とを接続して、小型ボンベが装着された背面ガラス基板をプリベーク部205に移送し、仕切りバルブ204を閉じる。
【0059】
そして、プリベーク部205において、背面ガラス基板を加熱し、所定時間ベーキングを行うことで脱ガス処理を行う(260)。脱ガス処理を終了すると、仕切りバルブ206を介してプリベーク部205とアライメント部207とを接続し、背面ガラス基板をアライメント部207に移送する。
【0060】
アライメント部207では、保護膜形成後の前面ガラス基板と、小型ボンベが装着された脱ガス処理後の背面ガラス基板とが、前面ガラス基板に形成された保護膜と背面ガラス基板に形成された隔壁とが接するように重ね合わされ、基板用クリップ等の固定具で固定される。なお、前面ガラス基板と背面ガラス基板とを重ね合わせる際には、前面ガラス基板と背面ガラス基板との位置ずれが生じないように位置合わせして固定される(261)。そして、仕切りバルブ208を介してアライメント部207と封着部209とを接続し、重ね合わされた前面ガラス基板と背面ガラス基板とを封着部209に移送する。
【0061】
続いて、封着部209では、前面ガラス基板と背面ガラス基板を固定された状態で、例えば約150℃に加熱し(262)、封着材としての樹脂を軟化させ、前面ガラス基板と背面ガラス基板とを封着させる(263)。その後、封着されたPDPを所定温度になるまで冷却した後、仕切りバルブ210を開いて封着部209と図示しない真空排気されている搬出部とを接続し、PDPを搬出部に移送する。そして、搬出部をリークして大気圧とし、小型ボンベが装着されたPDPを外部に搬送する(264)。
【0062】
その後、PDPに装着された小型ボンベを押し込むことにより、チップ管をさらに挿入する。これにより、例えば、図4(B)や図6(C)に示した状態、すなわちチップ管の先端が小型ボンベ内の弁に至った状態にして弁を開き、小型ボンベよりPDP内部の放電空間に放電ガスを充填する(265)。そして、チップ管をチップオフして放電空間を密閉するとともに、小型ボンベを回収して終了する(266)。
【0063】
次に、回収した小型ボンベの再利用方法について説明する。
図11(A)は、回収した小型ボンベの再利用に係る処理フローを示す図であり、図11(B)は、小型ボンベの再利用するための装置構成について示す図である。
【0064】
上述のようにPDPの放電空間に放電ガスを充填した後、チップ管をチップオフすることにより小型ボンベが回収されると、小型ボンベに挿入されているチップ管を抜去して、小型ボンベの内部を必要に応じて洗浄する(301)。
【0065】
次に、図11(B)に示すように、真空排気するためのポンプ311及び放電ガスを内含するガスボンベ312が接続された配管に小型ボンベ31を装着し、ヒータ314で加熱しながら、小型ボンベ31内部をポンプ311によって真空排気する(302)。なお、図示していないが、図11(B)に示す装置にはバルブが設けられており、各工程での内容に応じてバルブが適宜開閉される。
【0066】
その後、小型ボンベ31を冷却し(303)、ガスボンベ312から小型ボンベ31に放電ガスを導入する(304)。小型ボンベ31内部の放電ガスの圧力は圧力計313によりモニターされ、PDPの内部容積(放電空間の容積)及びガス圧に応じて、設計された圧力で所定量の放電ガスが小型ボンベ31に導入される。
【0067】
そして、放電ガスが導入された小型ボンベ31を配管から抜き取り、処理を終了する。このとき、小型ボンベ31が図3に示すような構成である場合には、通気路を下にして配管から小型ボンベ31を抜き取ることにより弁33が閉じた状態となる。一方、小型ボンベ31が図6(A)に示すような構成である場合には、小型ボンベ31を配管から抜き取る方法に制限はない。
【0068】
上述した本実施形態によれば、例えば、容量50ccの小型ボンベにNe−Xeガスを122kPa充填し、それを用いてパネル内容量(放電空間の容積)が52ccのPDPにガス圧60kPaのNe−Xeガスを導入することができる。
【0069】
以上、説明したように、PDP等の表示パネルのチップ管に装着した状態で、表示パネルやチップ管を破損させることなく、製造装置内を移動可能であるとともに、製造装置の内部と外部の間でも移動可能な小型ボンベ(ガス導入装置)を用いて、表示パネル内部に放電ガスを導入する。これにより、製造装置に複雑な機構を設けることなく安価な設備でかつ多量の放電ガスを浪費せずに、容易かつ低コストで良好な状態の放電ガスを表示パネル内部に導入することができる。
【0070】
また、放電ガス導入後のチップオフを密閉容器内で行う必要がなく、製造装置外部で行えるので安価な設備で実現することができる。また、ガス導入装置である小型ボンベを再利用することで、さらにコストを低減することができる。
【0071】
なお、上述した説明では、図7及び図9に示した製造装置において表示パネルを封着して、製造装置の外部に小型ボンベが装着された表示パネルを搬出した後に、表示パネル内部に放電ガスを導入するようにしているが、図7及び図9に示した製造装置内部で表示パネルに放電ガスを導入するようにしても良い。製造装置内部で表示パネルに放電ガスを導入する場合には、図7に示した製造装置ではボンベ装着部114で行い、図9に示した製造装置では封着部209で行う。このとき、ボンベ装着部114及び封着部209を窒素ガス等でリークした後に、表示パネルに装着された小型ボンベを押し込み、小型ボンベより表示パネル内部の放電空間に放電ガスを導入する。
【0072】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの構成例を示す分解斜視図である。
【図2】本実施形態におけるプラズマディスプレイパネルのチップ管接着後の外観図である。
【図3】本実施形態におけるガス導入装置の構成例を示す図である。
【図4】本実施形態におけるガス導入装置を表示パネルに装着した状態の一例を示す図である。
【図5】本実施形態におけるガス導入装置の構成例を示す図である。
【図6】本実施形態におけるガス導入装置の他の構成例を示す図である。
【図7】本実施形態における製造装置の構成例を示す図である。
【図8】図7に示した製造装置を用いてプラズマディスプレイパネルを製造する工程を示す図である。
【図9】本実施形態における製造装置の他の構成例を示す図である。
【図10】図9に示した製造装置を用いてプラズマディスプレイパネルを製造する工程を示す図である。
【図11】小型ボンベの再利用に係る処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0074】
102,202 保護膜蒸着部
105,205 プリベーク部
107,207 アライメント部
109 チップ管導入部
112,209 封着部
114 ボンベ装着部
117 ボンベ導入部
31 ガス導入装置(小型ボンベ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された前面側基板と背面側基板の対向間隙に放電ガスが封入されてなる表示パネルの製造装置であって、
内部を真空状態にして前記前面側基板と前記背面側基板とを封着する封着部と、
当該製造装置の外部に移送可能であって前記対向間隙の容積に応じた所定量の放電ガスを有し前記対向間隙に放電ガスを導入するガス導入装置が内部に移送され、当該ガス導入装置を前記封着部にて封着された基板の一方に取り付けられたチップ管に真空中で装着する装着部とを有することを特徴とする表示パネルの製造装置。
【請求項2】
対向して配置された前面側基板と背面側基板の対向間隙に放電ガスが封入されてなる表示パネルの製造装置であって、
前記前面側基板及び前記背面側基板と、一方の前記基板に取り付けられたチップ管に装着された、当該製造装置の外部に移送可能でかつ前記対向間隙の容積に応じた所定量の放電ガスを有し前記対向間隙に放電ガスを導入するガス導入装置とが移送され、内部を真空状態にして前記チップ管に前記ガス導入装置が装着された状態で前記前面側基板と前記背面側基板とを封着する封着部を有することを特徴とする表示パネルの製造装置。
【請求項3】
前記前面側基板と前記背面側基板とが封着され、かつ前記チップ管に前記ガス導入装置が装着された後、封着された基板が載置された雰囲気を大気圧状態、又は真空とは異なる減圧状態として、前記ガス導入装置に対する前記チップ管の挿入深度を大きくし、前記ガス導入装置から前記対向間隙に放電ガスを導入することを特徴とする請求項1又は2記載の表示パネルの製造装置。
【請求項4】
対向して配置された前面側基板と背面側基板とからなる表示パネルの対向間隙に放電ガスを導入するガス導入装置であって、
通気路の内周面に設けられた溝に配置され、前記基板の一方に取り付けられたチップ管と前記通気路との間をシールするシール部材と、
前記対向間隙の容積に応じた所定量の放電ガスを内含可能な内部空間と前記通気路との間に設けられた弁とを有し、
前記チップ管に脱着可能であることを特徴とするガス導入装置。
【請求項5】
前記弁は、前記チップ管の挿入深度に応じて開閉されることを特徴とする請求項4記載のガス導入装置。
【請求項6】
前記チップ管を介したガスの流れを遮断する機能と、前記チップ管を介してガスを前記表示パネルの対向間隙に導入する機能とを有することを特徴とする請求項4記載のガス導入装置。
【請求項7】
前記表示パネルの製造装置内を可搬可能なボンベを用いて構成されていることを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載のガス導入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−70701(P2009−70701A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238403(P2007−238403)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】