説明

表示パネル用の基板およびこの基板に対する露光方法

【課題】 露光開始位置の近傍における露光ムラの発生を防止できる表示パネル用の基板およびこの基板への露光方法を提供すること。
【解決手段】 絵素のパターンが格子状の形成される表示領域12aの外周の辺の外側の直近に、格子状に形成される絵素のパターンと同じ構造を有するダミーパターン11aをアライメントマークとして形成する。この基板をその面方向に沿って移動させつつ開口部が形成されるマスク53を介して表示領域12aに露光を施すに際し、表示領域12aがマスク53を介して露光される位置に達する前に、ダミーパターン11aによってマスク53の基板1aに対する位置や角度を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネル用の基板およびこの基板に対する露光方法に関するものであり、特に、光配向処理に適した液晶表示パネル用の基板と、配向膜の光配向処理工程における基板に対する露光方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルのアレイ基板やカラーフィルタ基板の表面に形成される配向膜には、液晶分子を所定の向きに配向させるために配向処理が施される。この配向処理の方法として、従来一般には、繊維材料によるラビングが用いられてきたが、最近では、これに代わる配向処理の方法として、光配向処理が用いられるようになってきている。
【0003】
光配向処理は、配向膜に所定の方向から紫外線などを照射することにより、配向膜の表面に所定の配向特性を与える処理である。光配向処理における具体的な紫外線などの露光方法として、たとえば、所定の形状の開口部が設けられたマスクを基板表面に覆いかぶせるように載置し、さらにその上方から紫外線などを照射するという構成が用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
最近は、液晶表示パネルのコントラストや視野角の改善などのため、分割配向の技術が用いられている(特許文献2参照)。分割配向の技術は、一絵素内に配向膜の配向方向が異なる複数の領域を設けるものである。この技術における露光方法は、配向膜の上方にスリット状の開口部が設けられたマスクを配置し、マスクの上方から所定の照射角で紫外線などを照射し、続いて異なる照射角で再び紫外線などを照射するというものである。
【0005】
【特許文献1】特開2005−024649号公報
【特許文献2】特開平11−133429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような露光方法では、基板サイズの大型化に伴ってマスクのサイズも大きくする必要があり、マスクの高価格化を招く。また、マスク大型化すると、撓みなどによる位置ずれが生じやすくなり、位置ずれ防止のための要求精度が極めて厳格になる。その結果、プロセスの繁雑化やランニングコストの増加を招くことになる。
【0007】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、小形のマスクを用いて精度よく露光することができる表示パネル用の基板、およびこの基板に対する露光方法を提供すること、または、露光の精度を維持しつつタクトの低下を防止できる表示パネル用の基板、およびこの基板に対する露光方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明は、スリット状の開口部が形成された小形のマスクを用いて基板表面の一部の領域に紫外線などを照射しつつ、基板を移動させるという方法で露光を行う。このような方法によれば、基板表面の特定の領域がストライプ状に露光される(すなわち紫外線などの照射を受ける)。紫外線などを照射しつつ基板を移動させている間は、基板の表面に形成されるパターンを撮影し、撮影された画像を用いて実際に照射している位置を監視する。これにより、実際に露光される領域が露光すべき領域から外れないようにし、また、外れた場合には補正する。
【0009】
そして、このような方法の実施に際し、基板の露光開始位置の近傍において精度よく露光ができるようにするため、基板にアライメントマークを形成する。具体的には、露光対象となる基板について、絵素のパターンが格子状に形成される領域の外側で、かつその領域の周辺の直近に、基板に対するマスクの位置や角度をあらかじめ補正するためのアライメントマークとしてのダミーパターンを形成する。
【0010】
このダミーパターンは、露光の際に基板を絵素のパターンの格子に平行な方向に進行させる場合において、少なくともこの格子に平行な、すなわち基板の進行方向に平行な線状の要素を含むことが好ましい。また、このダミーパターンは、格子状に形成される絵素のパターンと同じ構造を有するものであってもよい。
【0011】
具体的には、前記基板が液晶表示パネルのアレイ基板であれば、ダミーパターンには、少なくともソース信号線またはゲート信号線と同じ構造のパターン要素を備える構成が適用できる。また、前記基板が液晶表示パネルのカラーフィルタ基板であれば、絵素を構成するブラックマトリックスと同じ構造のパターン要素を備える構成が適用できる。
【0012】
本発明に係る露光方法は、小形のマスクを介して紫外線などを照射しつつ基板を移動させるという露光方法の実施において、ダミーパターンが形成される外周縁を、基板の進行方向のもっとも前方に位置させる。そして、絵素のパターンが格子状に形成される領域が露光される位置に達するよりも前に、ダミーパターンを用いてマスクの基板に対する位置および/または角度を補正する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る表示パネル用の基板によれば、露光すべき領域(ここでは絵素のパターンが格子状に形成される領域)が、露光される位置に達するよりも先に、ダミーパターンを用いてマスクの位置や角度の補正を行うことができる。したがって、基板が進行して露光すべき領域が露光される位置に達した時点において、マスクが急激に移動や回転することがなくなる。この結果、露光の開始位置の近傍における露光位置の精度の向上を図ることができ、露光ムラの発生を防止できる。
【0014】
ダミーパターンが、基板の移動方向と平行なパターン要素を備えるものであれば、特に基板の移動方向に対して直角方向のマスクの位置と、この移動方向に対するマスクの傾きを容易に検知し補正することができる。
【0015】
このダミーパターンが、格子状に形成される絵素のパターンと同じ構造を有するものであれば、絵素のパターンを形成する際にダミーパターンを併せて形成することができる。したがって、ダミーパターンを形成するための工程を別に追加する必要がなく、基板の製造コストの上昇や製造時間の長時間化を招くことがない。
【0016】
たとえば、前記基板が液晶表示パネルのアレイ基板であれば、ダミーパターンとして、少なくともソース信号線またはゲート信号線と同じ構造のパターン要素を備える構成が適用できる。そしてソース信号線やゲート信号線を形成する工程において、併せてダミーパターンを形成することができる。また、前記基板が液晶表示パネルのカラーフィルタ基板であれば、絵素を構成するブラックマトリックスと同じ構造のパターン要素を備える構成が適用できる。そして絵素を構成するブラックマトリックスを形成する工程において、併せてダミーパターンを形成することができる。
【0017】
本発明に係る露光方法によれば、露光すべき領域(ここでは絵素のパターンが格子状に形成される領域)に対する露光を開始する前に、あらかじめこの領域の外側に形成されるダミーパターンを用いてマスクの位置や角度の補正がなされる。したがって、基板が進行して、露光すべき領域がマスクを介して露光される位置に達した時点において、マスクが急激に移動や回転することがなくなる。この結果、露光の開始位置の近傍における露光位置の精度の向上を図ることができ、露光ムラの発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に係る表示パネル用の基板は、液晶表示パネルのアレイ基板もしくはカラーフィルタ基板、またはこれらの基板を製造するためのマザーガラス基板である。
【0020】
本実施形態に係る基板の露光方法は、スリット状の開口部が形成されたマスクを用い、このマスクの開口部を通じて基板表面に紫外線など(以下、単に紫外線という)を照射しつつ基板を移動させる。これにより、基板表面の特定の領域をストライプ状に露光する。そしてたとえば、液晶表示パネルのアレイ基板またはカラーフィルタ基板に形成される配向膜に、光配向処理を施す工程に適用される。
【0021】
図1(a)は、本実施形態に係るアレイ基板のマザー基板の構造を模式的に示した平面図である。図1(a)は、1枚のマザー基板から4枚のアレイ基板が製造できる4枚取りのマザー基板を示す。なお、特に断りのない限り、「アレイ基板」という場合には、そのマザー基板を含むものとする。アレイ基板1aは、ソース信号線、ゲート信号線、薄膜トランジスタおよび絵素電極などがマトリックス状に形成される領域12aを備える。以下、この領域を構成する前記各要素を「絵素のパターン」と称する。また、この絵素のパターンがマトリックス状に形成される領域を「表示領域」と称する。この表示領域12aに形成される絵素のパターンは、従来一般の液晶表示パネルの絵素と同じものが適用できる。このため、詳細な説明は省略する。この絵素のパターンの表面には、配向膜の層が形成される。この配向膜は、光配向処理が適用できるものであれば、従来一般に用いられる配向膜が適用でき、その種類は問わない。
【0022】
そして、この表示領域12aの外側で、かつアレイ基板1aの外周縁の近傍の所定の位置に、ダミーパターン11aが形成される。このダミーパターン11aは、本発明に係る露光方法の実施において、露光の位置決めを行うためのアライメントマークとして用いられる。このダミーパターン11aの具体的な数と位置については後述する。
【0023】
図1(b)は、基板に形成されるダミーパターン11aと、表示領域12aの一部を拡大して示した平面模式図である。そして、このダミーパターン11aの構成と、ダミーパターン11aと表示領域12aに形成される絵素のパターンとの位置関係を模式的に示す。なお、この図1(b)は、絵素のパターンの要素のうち、ソース信号線21とゲート信号線22のみを示し、それ以外の要素、たとえば絵素電極や薄膜トランジスタなどは省略してある。
【0024】
このダミーパターン11aは、表示領域12aに形成される絵素のパターンと同一の構成を備える。換言すれば、本実施形態に係るアレイ基板1aは、表示領域12aの外側の領域に、表示領域12aに形成される絵素のパターンと同じ構造のダミーパターンが形成される構成を備える。アライメントマークとして形成されるダミーパターン11aには、少なくとも1本以上のソース信号線21が含まれる。そしてダミーパターンに含まれるソース信号線21は、その中心線が、表示領域12aに形成されるソース信号線21の中心線と一致する位置に形成される。
【0025】
図2(a)は、本発明の実施形態に係るカラーフィルタ基板のマザー基板の構成を模式的に示した平面図である。図2(a)に示すマザー基板は、1枚のマザー基板から4枚のカラーフィルタ基板を製造できる、いわゆる4枚取りのマザー基板を示す。なお、特に断りのない限りは、「カラーフィルタ基板」という場合には、そのマザー基板を含むものとする。カラーフィルタ基板1bは、ブラックマトリックスが格子状に形成され、その格子の内側にカラーフィルタ層が形成される領域12bを備える。以下、このブラックマトリックスが格子状に形成される領域を、「表示領域」と称する。このブラックマトリックスおよびカラーフィルタ層は、従来一般のカラーフィルタ基板のブラックマトリックスおよびカラーフィルタ層と同じ構成のものが適用できる。したがって説明は省略する。ブラックマトリックスおよびカラーフィルタ層の表面には、配向膜の層が形成される。この配向膜は、前記アレイ基板に適用される配向膜と同じものが適用できる。
【0026】
そしてこのカラーフィルタ基板1bには、表示領域12bの外側で外周縁近傍の所定の位置に、ダミーパターン11bが形成される。このダミーパターン11bは、本発明に係る露光方法の実施において、露光の位置決めの基準となる。また、このダミーパターン11bは、表示領域12bに形成されるブラックマトリックス31と同じ構造を備える。換言すれば、このカラーフィルタ基板1bは、表示領域12bの外側の所定の位置に、表示領域12bに形成されるブラックマトリックス31と同じ構造のダミーパターンが形成される構成を備える。このダミーパターン11bは、そこに含まれる格子の中心線と、表示領域12bに形成されるブラックマトリックス31の格子の中心線とが一致する位置に形成される。
【0027】
図3は、本実施形態に係る露光方法の実施に適用できる露光装置の要部の構成の概念を模式的に示した図であり、図3(a)は、この露光装置を基板の面の側方から見た図、図3(b)は、上方または下方から見た図である。ここでは、本発明に係る露光方法の実施に関連する部分についてのみ説明し、その他の部分や詳細な動作などについては説明を省略する。
【0028】
この露光装置5は、基板1a,1bに紫外線を照射する露光ユニット51と、基板1a,1bを載置して移動させるステージとを備える。図中の矢印aは、ステージによる基板1a,1bの移動の向きを示す。なお、図3(b)は、アレイ基板1aに対して露光を行っている状態を示しているが、カラーフィルタ基板1bに対しても同様に露光を行うことができる。
【0029】
この露光ユニット51は、紫外線を発する紫外線光源(図示せず)を備え、マスク53を介して基板1a,1bの表面に対して所定の照射角で紫外線を照射できるように構成される。また、各露光ユニット51は、撮像手段52と、記憶手段と、照合手段と、補正手段とを備える。
【0030】
撮像手段52は、基板1a,1bの表面を撮影できる。たとえばCCDカメラなどが適用できる。記憶手段は、露光の位置合わせの基準となる基準画像を記憶しておくことができる。照合手段は、撮像手段52が撮影した画像と基準画像とを比較照合して、実際に露光している位置と露光すべき位置とのズレを算出する。補正手段は、照合手段によるズレの算出結果に基づいて、マスク53の位置や角度を補正する。
【0031】
マスク53は、たとえば板状の部材であり、所定の箇所に所定の寸法形状の開口部が設けられる。したがって、基板1a,1bが搬送されてマスク53の直下を通過すると、マスク53の開口部の直下を通過した領域のみが露光される。この結果、基板1a、1bの表面の所定の細長い線状の領域が露光される。
【0032】
また、図3(b)に示すように、この露光装置5は、複数の露光ユニット51を備える。そして、この露光ユニット51が基板1a,1bの進行方向の直角方向に並べられるように配設される。これにより、基板1a,1bの全幅に亘って1回の走査で露光できる。なお、各露光ユニット51は、それぞれ独立して前記動作を行うことができる。
【0033】
次に、前記構成を有する露光装置5を用いて、本実施形態に係る基板に対し、本発明の実施形態に係る露光方法を実施する動作について説明する。なお、図3(b)は、アレイ基板に露光する様子を示しているが、カラーフィルタ基板に対しても同様の方法で露光できることから、まとめて説明する。
【0034】
まず、ステージ上に基板1a,1bを載置する。基板1a,1bを載置する向きは、ダミーパターン11a,11bが形成される辺が、ステージによる基板の進行方向(矢印a)の最も前方に位置する向きとする。
【0035】
ステージによる基板1a,1bの搬送が開始されると、まず基板1a,1bの表面に形成されるダミーパターン11a,11bが各露光ユニット51の撮像手段52の視野に入り、撮像手段52はこれを撮影する。照合手段は、撮像手段52が撮影したダミーパターン11a,11bの画像と、記憶手段が記憶している基準画像とを比較照合し、露光すべき位置と、実際に露光している位置とのズレを算出する。そして補正手段は、この算出結果に基づいて、マスク53の位置(特に基板の進行方向に対して直角方向の位置)や角度(特に、基板の進行方向に対する角度)を補正する。
【0036】
ダミーパターン11a,11bに含まれるソース信号線21またはブラックマトリックス31の中心線は、表示領域12a,12bに形成されるソース信号線21またはブラックマトリックス31の中心線と一致している(図1、図2参照)。したがって、ダミーパターン11a,11bを用いてマスク53の位置や角度が補正されると、表示領域12a,12bに形成されるソース信号線21またはブラックマトリックス31を撮影して補正をしたのと同じ効果が得られる。
【0037】
ダミーパターン11a,11bが撮像手段52によって撮影可能な位置に達した時点においては、基板1a,1bの表示領域12a,12bは、マスク53の直下には達していない。すなわち、まだ露光が開始されない。したがって、このダミーパターン11a,11bを用いた補正によってマスク53が大きく動いたとしても、表示領域12a,12bに対する露光には何らの影響を及ぼさない。
【0038】
基板1a,1bがさらに進行すると、基板1a,1bの表示領域12a、12bが撮像手段52の視野に入る。そうすると、撮像手段は表示領域12a,12bに形成されるパターンを撮影できるようになり、このパターンに基づいてマスク53の位置や角度の補正が行われる。また、これとほぼ同時に、基板1a,1bの表示領域12a,12bが露光される位置に達する。前記のとおり、基板1a,1bがこの位置に達するまでに、前記ダミーパターン11a,11bによるマスク53の位置や角度の補正が行われている。したがって、この位置に達した時点では、マスク53の位置や角度が大きく変化することがない。この結果、表示領域12a,12bに対する露光の開始位置の近傍において、露光位置の精度の向上を図ることができ、露光ムラの発生を防止できる。
【0039】
以降、基板1a,1bを搬送しつつ、表示領域12a,12bに形成されるパターンの撮影と、撮影した画像と基準画像との比較照合による露光位置のズレの算出、および算出結果に基づいたマスク53の位置や角度の補正を継続的に行う。その結果、基板1a,1bの1回の搬送によって、所定の線状の箇所に露光を施すことができる。
【0040】
このように本実施形態に係る露光方法は、表示領域12a,12bに対して露光を開始する前に、あらかじめ表示領域12a,12bの外側に形成されるダミーパターン11a,11bを用いてマスク53の位置や角度の補正が行われる。したがって、表示領域12a,12bに対して露光を開始する時点においてマスク53が急激に大きく変位することがなく、露光位置の精度の向上を図ることができ、露光ムラの発生を防止できる。
【0041】
このような動作を実現するため、各基板1a,1bのダミーパターン11a,11bが形成される位置は、基板1a,1bをステージ上に載置して搬送した際に、露光ユニット51の撮像手段52が撮影できる位置に形成される。また、形成される数は、露光装置5が備える露光ユニット51の数に等しい数とされる。
【0042】
なお、各基板1a,1bに形成されるダミーパターン11a,11bは、アレイ基板1aであれば、表示領域12aに形成される薄膜トランジスタそのものが適用できる。また、カラーフィルタ基板1bであれば、表示領域11bに形成されるブラックマトリックス31そのものが適用できる。したがって、各基板1a,1bに薄膜トランジスタやブラックマトリックスを形成する工程において、併せてダミーパターン11a,11bを形成することができる。このように、ダミーパターン11a,11bを形成するための特別の工程を追加する必要がなく、基板製造のコストや時間の増加を招くこともない。
【0043】
なお、各基板1a,1bに形成されるダミーパターン11a,11bは、撮像手段により撮影されて位置合わせに用いられる構成であればよい。したがって、必ずしも、表示領域12a,12bに形成される絵素のパターンと完全同一である必要はない。すなわち、本発明に係る露光方法において主に問題となるのは、基板の進行方向に対するマスクの直角方向の位置、基板の進行方向の軸線に対する角度である。そして、このダミーパターン11a,11bを用いて補正を行った後、基板1a,1bの表示領域12a,12bに形成されるパターンを用いて補正を行う動作にスムーズに移行できればよい。したがって、ダミーパターンには、少なくとも基板の進行方向に沿って延設される要素が含まれればよい。たとえばアレイ基板については、ソース信号線のみを形成するものであってもよい。また、カラーフィルタ基板については、ブラックマトリックスを格子状に形成せずに、基板の進行方向に平行な辺のみを形成するものであってもよい。
【0044】
ところで、露光の開始位置の近傍における露光ムラを防止するため、次のような方法も採りうる。まず、露光に先立って、基板の表面に形成されるパターンが撮像手段によって撮影できる位置にまで基板を進行させる。そしてマスクの基板に対する位置や角度を補正する。その後、補正したマスクの位置や角度を維持しつつ、一旦基板を後退させる。それから、基板の移動および実際の露光を開始する。
【0045】
このような方法によれば、露光開始位置近傍における露光位置の精度の向上を図ることができる。ただし、あらかじめ基板を進行させてマスクの位置や角度の補正を行い、その後基板を一旦後退させるという動作を経る必要がある。これに対し、前記方法によれば、このような動作を経る必要がないから、工程の時間を短くでき、タクトの低下を防止できる。
【0046】
また、工程に要する時間を長くすることなく、露光の開始位置の近傍における露光ムラを防止するため、次のような構成も採りうる。露光装置における撮像手段の配設位置を、マスクに対して基板の進行方向後方の離れた位置に設定する。すなわち、基板の表面に形成されるパターンが、撮像手段により撮影できる位置に達した時点においては、基板の露光すべき領域がマスクを介して露光される位置にまで達しないようにする。このような構成によれば、マスクの基板に対する位置や角度の補正が終わった後に、基板表面の露光すべき領域に対して露光を開始できる。したがって、露光の開始位置の近傍における露光ムラの発生を防止できる。
【0047】
ただし、このような構成では、マスクの位置や角度の補正は、露光すべき位置から離れた位置にあるパターンに基づいて行われることになる。このため、マスクの位置や角度の補正の精度が低下するおそれがある。これに対し、前記構成によれば、マスクを撮像手段の直近に配置できることから、露光位置の精度の低下を招くことがない。このように、露光位置精度の向上の観点からは、マスクのスリットが形成される位置と、撮像手段とが、互いにできるだけ近い位置に配設されることが好ましい。
【実施例】
【0048】
次に、本発明の実施例(適用例)について説明する。次に示す実施例は、液晶パネルの各絵素内に液晶分子の配向方向が互いに異なる複数のドメイン領域を形成するために、絵素内の所定の領域ごとに異なる方向から紫外線を照射して光配向処理を施す例である。図4(a),(b)は、各基板の各絵素に対する露光の形態を模式的に示した斜視図である。それぞれ、図4(a)がアレイ基板1aに形成される絵素を、図4(b)がカラーフィルタ基板1bに形成される絵素を示す。また、図4(c)は、前記各基板を貼り合わせて構成される液晶パネルの各絵素における液晶分子の配向の向きを示した平面模式図である。
【0049】
本実施例に適用される絵素の構造は特に限定されるものではない。ここでは、ソース信号線21とゲート信号線22に囲まれる領域に絵素電極23が形成され、薄膜トランジスタ24により駆動するという、一般的な構成の絵素を例に用いて説明する。アレイ基板については、図4(a)に示すように、各絵素内にその両側のソース信号線21の略中間で二分されて形成される2つの領域を想定する。そしてそれぞれの領域に対して、絵素の面の法線に対して所定の角度θだけ傾斜した方向から紫外線を照射する。各領域に対する紫外線の照射の向きは、それぞれ照射される紫外線の光軸を絵素の面に投影した場合に、これらの投影した光軸がソース信号線21に平行でかつ互いに180°異なる向きとする。
【0050】
また、図4(b)に示すように、カラーフィルタ基板1bには、ブラックマトリックス31が格子状に形成され、格子すなわち絵素の内側にカラーフィルタ層が形成される。このブラックマトリックス31およびカラーフィルタ層の構成や製造方法は、従来一般のものと同じものが適用できるから説明は省略する。カラーフィルタ基板1bについては、前記アレイ基板1aと貼り合わせた際にアレイ基板1aのゲート信号線22に平行となる2辺の略中央で二分されて形成される2つの領域を想定する。そしてそれぞれの領域に対して、絵素の面の法線に対して所定の角度θだけ傾斜した方向から紫外線を照射する。各領域に対する紫外線の照射の向きは、それぞれ照射される紫外線の光軸を絵素の面に投影した場合に、これらの投影した光軸が、アレイ基板1aのゲート信号線22に平行でかつ互いに180°異なる向きとする。
【0051】
前記のように配向処理が施された基板どうしを貼り合わせて液晶表示パネルを構成すると、図4(c)に示すように、両基板の間に充填される液晶分子は、各基板の各領域に施された配向処理の向き、すなわち紫外線の照射方向にしたがって配向する。その結果、各絵素内には、液晶分子の配向の向きが互いに異なるドメイン領域が形成される。
【0052】
図5(a)は、本発明に係る方法によりアレイ基板の配向膜を露光する際に使用されるマスク53a(以下、「アレイ基板用マスク」と称する)の構成を示す。また図5(b)はこのアレイ基板用マスク53aと、アレイ基板1aに形成される絵素のパターンとの寸法および位置関係を示した平面模式図である。
【0053】
図5(a)に示すように、アレイ基板用マスク53aは、略長方形の板状の部材である。そして紫外線が通過できるスリット状の開口部531aが、所定のピッチPで複数平行に形成される。この開口部のピッチPは、図5(b)に示すように、アレイ基板1aに形成されるソース信号線21のピッチに等しく設定される。また、開口部531aの寸法(ここではこのピッチ方向の寸法)Lは、各絵素のパターンの前記ピッチの約1/2の寸法に設定される。なお、図中の矢印aは、マスク53aに対する基板1aの進行の向きを示す。
【0054】
図6は、カラーフィルタ基板の配向膜を露光する際に使用するマスク53b(以下、「カラーフィルタ基板用マスク」と称する)と、カラーフィルタ基板1bに形成されるブラックマトリックス31との寸法および位置関係を示した図である。
【0055】
カラーフィルタ基板用マスク53bは、アレイ基板用マスク53aとほぼ同一の構成を備える(図5(a)参照)。すなわち、紫外線が通過できるスリット状の開口部531bが、所定の間隔Pをおいて複数平行に形成される。この開口部531bのピッチPは、カラーフィルタ基板に形成されるブラックマトリックスのピッチ(ここでは、アレイ基板と重ね合わせた場合に、アレイ基板のゲート信号線に平行する辺のピッチ)と等しくなるように設定される。また、開口部531bの寸法(ここでは前記ピッチ方向の寸法)Lは、このピッチの約1/2の寸法に設定される。なお、図中の矢印aは、マスク53aに対する基板1aの進行の向きを示す。
【0056】
このようなマスク53a,53bを用い、本発明に係る露光方法によって、各基板1a,1bを露光する。なお、露光の動作は前記実施形態において説明したとおりである。この結果、各基板とも、各絵素の半分の領域が、基板の一回の移動により露光される。その後、露光位置を半ピッチずらし、紫外線の照射の角度を変えて残りの半分の領域について露光する。この結果、各絵素の半分ずつの領域が互いに異なる方向に配向処理される。
【0057】
そしてこのような構成によれば、表示領域に対する露光の開始位置の近傍に存在する絵素についても、精度よく露光でき、露光ムラが生じることがない。このため、この近傍における絵素における液晶分子の配向の乱れを防止でき、高品位な液晶パネルを提供できる。
【0058】
以上、本発明の各種実施形態および実施例について詳細に説明したが、本発明は前記各実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0059】
たとえば、前記実施形態においては、アレイ基板については、基板をソース信号線の延伸方向に移動させつつ露光する構成を示したが、ゲート信号線の延伸方向に移動させつつ露光する構成であってもよい。この場合、ダミーパターンが形成される位置を変更し、前記説明における「ゲート信号線」と「ソース信号線」とを読み替えればよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係るアレイ基板の構成を示した平面模式図であり、(a)は基板全体を、(b)はダミーパターンおよび表示領域に形成されるパターンを拡大して示した図である。
【図2】本実施形態に係るカラーフィルタ基板の構成を示した平面模式図であり、(a)は、基板全体を、(b)は、ダミーパターンおよび表示領域に形成されるパターンを拡大して示した図である。
【図3】本発明に係る露光方法に適用できる露光装置の要部の構成の概念を模式的に示した図であり、(a)は側方から見た図、(b)は上方または下方から見た図である。
【図4】本発明の実施例に係る露光方法を用いた光配向処理を模式的に示した図であり、(a)はアレイ基板に対する光配向処理を、(b)はカラーフィルタ基板に対する光配向処理を示す。また、(c)は、前記各基板を貼り合わせて構成される液晶パネルの各絵素内における液晶分子の配向方向を模式的に示した図である。
【図5】前記実施例において用いるアレイ基板用マスクの構成を模式的に示した図であり、(a)はアレイ基板用マスクの平面模式図、(b)は、アレイ基板に形成されるパターンとの寸法関係を示した図である。
【図6】前記実施例において用いるカラーフィルタ基板用マスクと、カラーフィルタ基板に形成されるパターンとの寸法関係を示した図である。
【符号の説明】
【0061】
1a,1b 表示パネル用の基板
11a,11b ダミーパターン
12a,12b 表示領域
5 露光装置
51 露光ユニット
52 撮像手段
53 マスク
a 基板の進行方向を示す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絵素のパターンが格子状に形成される領域の外側でかつ該領域の直近に、ダミーパターンがアライメントマークとして形成されていることを特徴とする表示パネル用の基板。
【請求項2】
前記ダミーパターンは、前記絵素のパターンの格子に平行な線状のパターン要素を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル用の基板。
【請求項3】
前記ダミーパターンは、前記格子状に形成される絵素のパターンと同じ構造を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示パネル用の基板。
【請求項4】
前記絵素のパターンは、ソース信号線、ゲート信号線、薄膜トランジスタおよび絵素電極を備えるパターンであり、前記ダミーパターンは少なくとも前記ソース信号線またはゲート信号線と同じ構成のパターン要素を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の表示パネル用の基板。
【請求項5】
前記絵素のパターンは格子状に形成されるブラックマトリックスであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の表示パネル用の基板。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の基板をその面方向に沿って移動させつつ光が通過できる開口部が形成されるマスクを介して前記基板の表面に線状に露光を施す露光方法であって、前記絵素のパターンが格子状に形成される領域がマスクに形成される開口部を通じて露光される位置に達するより前に、前記基板に形成されるアライメントマークによって前記マスクの前記基板に対する位置および/または角度を補正することを特徴とする表示パネル用基板の露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−41175(P2007−41175A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223635(P2005−223635)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】