説明

表示体、表示パネルおよび表示装置

【課題】光の取出効率が高いと共に、十分なコントラストが得られる自発光型の表示パネルを提供する。
【解決手段】自発光式の発光層14から出力された光L1の射出角度を変換して光の取出効率を向上する斜面構造24が作り込まれた表示パネルにおいて、斜面24aの傾斜角度θがθ≧45+arcsin(1/n)/2を満足した表示パネル10aを提供する。斜面24aの傾斜角度θの規定することにより、パネル内に入り込んだ外光L2は再び出力されることはなく、外光反射を抑制でき、光の取出効率が高いと共に、十分なコントラストが得られる表示パネル10aを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)などの自発光型素子を用いた表示パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自発光型のフラットパネルディスプレイ(FPD)として、有機EL素子を用いた表示パネルや、プラズマディスプレイパネル(PDP)を用いたものが盛んに開発されている。これらの表示パネルでは、陽極層と陰極層との間に発光層が配置された構成となっており、素子あるいは表示体を構成する複数の薄膜の間の界面や、パネルと外界との界面(パネル表面)に、表示体から射出された光が外界に出力されない臨界角が存在する。すなわち、発光層で発光した光のうち、臨界角以上の角度で所定の層に入射した光はパネル内で全反射して外部に射出されない。このため、実際に発光層から出力された光のうち、一定の割合の光しか表示パネルの外部に出力する光として利用することができない。自発光型の表示体である有機EL素子においては、20%〜30%程度の光しか表示パネルの外に出せないと言われている。
【0003】
このような光の利用効率または光の取出効率に関する問題を解決するために、パネル内部に斜面構造を作り、その斜面により臨界角以上の放射角を持つ光を反射あるいは屈折させて臨界角未満の光線あるいは光束に変換し、光の取出効率を上げることが開示されている。特許文献1には発光層の周囲に楔状の反射部材を配置した構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−189251号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、自発光型の表示パネルにおいては、パネルの表面やパネル内部の反射率が高いと、パネル外部からの光を観測者の側に反射(外光反射)してしまうため、表示部と非表示部のコントラストが確保できなくなるという問題がある。特に、有機EL素子を用いた表示パネルでは、陰極に仕事関数の関係上、アルミニウムなどの反射性の高い金属を用いるケースが多く、このことが原因となって外光反射の問題が顕著である。
【0006】
外光反射を抑制する方法として、パネル表面に円偏光板を貼る方法が挙げられる。外光が円偏光板を通り、たとえば、右回りの円偏光となってパネル内に入ったとすると、アルミニウムなどから形成された反射面で反射することにより逆方向の円偏光になり、再度円偏光板に入射したときに吸収される。これにより、観測者の側にパネル内に入った外光が出力されるのを防ぐことができ、外光反射を抑制することができる。また、発光層の裏側に光を吸収する層を形成し、外部からパネル内に入り込んだ光を光吸収層で吸収する方法も有効である。
【0007】
しかしながら、発光層の周辺に斜面構造を作り込んだ表示パネルでは、これらの方法で外光反射を抑制するだけでは不十分であり、実際に十分なコントラストを確保することができない。図6に斜面構造が作り込まれた表示パネル100の概略を示してある。この表示パネル100は、ベース基板101の上に画素を構成するように複数の発光層102が積層された後に、パネル層103がさらに積層された構成となっている。この表示パネル100においては、ベース基板101および発光層102が射出層105に相当し、パネル層103が伝達層に相当する。パネル層103の裏面、すなわち、射出層105に対峙する面103aにはV字状の溝を形成することにより構成された複数の斜面構造110が作り込まれている。そして、各々の斜面構造110は発光層102と重ならない位置に配置されている。
【0008】
この表示パネル100においては、発光層102から出力された光の内、パネルの表面103bに対する入射角度が臨界角以上のもので、斜面構造110の斜面110aで反射した光は臨界角未満の入射角になるように角度変換される。このため、光の取出効率が向上する。一方、この斜面構造110は、表示パネル100に入り込んだ外光も反射する。したがって、表示パネル内に入り込んだ外光のうち、図面上の左側の斜面で水平方向に反射され、図面上の右側の斜面でパネル外部に向けて再度反射される成分が発生する。このような光成分は2回の反射で位相差が2倍となる。このため、パネル表面に円偏光板を貼り付けた構成で反射光を防止しようとしても、円偏光板を通過してパネル外に出力されてしまう。このため、ユーザ90が表示パネル100を特定の方向から見たときには、パネル内の斜面構造で2回反射した光が観測されるため表示パネル全体が光って見え、表示部のコントラストが確保できなくなってしまう。したがって、射出される光の利用効率を高めるための斜面構造により外光が反射されてしまい、かえってコントラストが低くなり、表示パネルの性能を低くする結果となる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明においては、内部に斜面構造が作り込まれた表示パネルまたは表示体において、外光反射を抑制でき、表示部のコントラストを確保できると共に光の取出効率の高い表示パネルおよび表示体を提供することを目的としている。さらに、パネル表面に円偏光板を貼り付けるような反射防止構造をとらなくても外光反射を防止できる表示体および表示パネルを提供することを目的としている。そして、この表示パネルを用いることにより、輝度が高く、十分なコントラストが得られる大型のフラットディスプレイや携帯機器用の小型のディスプレイなどの表示装置を提供することも本発明の目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明においては、斜面構造により形成される斜面の角度を規定することにより、斜面で反射される外光は表示パネルの外側にでないようにして、斜面により反射された外光による影響を、上述した2回反射も含めて抑制する。これにより、斜面構造を作り込んだ際の目的である光の取出効率が向上するメリットを十分に活かすことができる表示体および表示パネルを提供することができる。すなわち、本発明の表示体は、電極間に印加された電圧により発光する発光層を含む射出層と、この射出層に積層され、この発光層から出力された光を伝達する伝達層とを有する表示体であって、射出層および伝達層の少なくともいずれか一方は、発光層から出力された光の角度を変換する複数の斜面構造を備えており、これらの斜面構造により形成される斜面の傾斜角度θは、斜面が含まれる射出層または伝達層の屈折率をnとしたときに以下の式(A)を満足することを特徴としている。
θ≧45+arcsin(1/n)/2・・・(A)
【0011】
なお、傾斜角度θは伝達層と外界またはその他の層の界面と斜面とのなす角度(θ<π/2)であり、多くのケースでは、表示体を構成する各層の面は平行になっているので、発光層の面と斜面とのなす角度に等しい。
【0012】
この斜面構造の斜面の角度θを式(A)の条件にすると、詳しくは図3に基づき説明するが、伝達層の界面から臨界角以下で入射した外光は、斜面構造により、伝達層の界面と平行あるいはそれ以上の角度で反射される。したがって、そのまま伝達層の界面から再び外界に出力されることはなく、また、斜面構造の他の斜面に多重反射することにより界面から外界に出力されることもない。すなわち、伝達層の界面から入射される外光の角度を考えたとき、伝達層内においては、臨界角以上になる。したがって、発光層から射出される光の角度を臨界角以下になるように反射するように設計された斜面構造により外光が反射されるときに、最も上向き(界面の方向)に反射される外光は臨界角で界面から入射された光となり、この光を界面と平行または下向きに反射することにより、発光層などの平面により外光が反射されない限り、界面から外光が再度出力される可能性をなくすことができる。
【0013】
このため、斜面で反射した光は外部に出力されることはなく、表示体の内部に閉じ込められる。複数の発光層が設けられた表示パネルにおいても同様であり、斜面の傾斜角度θが式(A)を満足するように設計および製造することにより、外光による影響を防止することができる。したがって、本発明の条件を満足することにより、斜面構造が作り込まれた表示パネルまたは表示体において、外光が表示パネルまたは表示体に入射する角度に左右されず、さらに、円偏光板をパネル表面に貼り付けることなく、外光反射を抑制できる。一方、発光層から出力された光は斜面構造の斜面により臨界角より小さな入射角に変換されて外部に出力されるので、斜面構造を形成したことによるメリット、すなわち、光の取出効率または光の利用効率を向上するというメリットは最大限に享受できる。
【0014】
したがって、本発明により、光の利用効率が高いと共に、十分なコントラストを確保できる表示パネルおよび表示体を提供できる。本発明の表示パネルと、この表示パネルの発光層を駆動して画像を表示させる駆動装置とを有する表示装置においては、輝度が高く、どの方向から見てもコントラストが高く非常に見やすい表示が可能となる。
【0015】
一方、発光層から出力された光が斜面により角度変換されても臨界角より小さな入射角にする斜面本来の機能を考えたとき、発光層から出力された光線のもっとも角度が大きな光は界面に平行な光であり、その光を臨界角以下の光に変換する斜面の傾斜角度θの条件は、上記式(A)と逆の関係になる。したがって、光の取出効率の向上と外光反射の抑制効果を両立するためには、それらの条件を満足する等号が成立する条件であることが望ましい。すなわち、傾斜角度θは式(B)を満足することが最も好ましい。
θ=45+arcsin(1/n)/2・・・(B)
【0016】
本発明の表示パネルおよび表示体においては、内部に侵入した外光は界面より下向き、すなわち、発光層の方向に反射される。したがって、その外光を再度反射しないように、発光層の伝達層と反対側に低反射層を設けることが有効である。これにより、表示パネルまたは表示体の内部に閉じ込まれた光を低反射層により吸収できる。この低反射層としては、黒色化された層、粗面化された層、または干渉により反射防止面化された層を採用することが可能である。
【0017】
発光層から出力された光の角度変換は反射を利用するものであっても良いし、屈折を利用したものであっても良いが、発光層から直に外界に出力される光の障害になることは望ましくない。このため、複数の斜面構造は射出層および/または伝達層において、発光層と重ならないように配置された反射構造であることが望ましく、伝達層において、発光層と重ならないように配置された屈折構造とすることが望ましい。また、発光層の界面を反射構造とすることが可能であり、この場合は、傾斜した周縁部を備えた発光層を形成すれば良い。発光層の周縁部を斜面構造としたときの式(A)における屈折率nは発光層の屈折率となる。さらに、斜面構造は発光層と異なるピッチで配列することも可能であるし、発光層と同じピッチで配列することも可能である。
【0018】
本発明は、自発光型の発光層、すなわち、自発光型素子を用いている表示体または表示パネルであれば適用することが可能である。このため、PDP、発光ダイオード、無機EL、有機EL、フィールドエミッションなどを利用した表示体または表示パネルに本発明を適用できる。特に、発光層が有機エレクトロルミネッセンス発光層である有機EL素子を用いた表示体または表示パネルは光の取出効率が非常に低く、斜面構造を作り込むことが有効とされているので、本発明は非常に有用である。
【0019】
本発明の表示パネルにおいては、伝達層にガラス基板などの板状部材を用いるのであれば、その板状部材の射出層に対峙する面に斜面構造となる凹凸を形成しておくことが望ましい。凹凸を加工した板状部材を射出層に接着または貼り付けるだけで表示パネル内に斜面構造を簡単に作り込むことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。図1に本発明に係る表示パネルが搭載された表示装置として携帯電話機を示してある。本例の携帯電話機1は、データが表示される表示パネル10aとして自発光型の素子である有機EL素子を用いた表示パネルが採用され、CPU、RAM、ROMなどから構成される駆動装置9により有機EL素子から光L1を発光させて文字や画像などのデータがユーザ90に観測されるようになっている。
【0021】
図2に表示パネルの概略を、表示パネルの一部を拡大した断面図を用いて示してある。本例の表示パネル10aは、有機エレクトロルミネッセンス素子からなる多数の画素がマトリックス状に配置されたものであり、アクティブマトリックス方式やパッシブマトリックス方式により駆動することができる。この表示パネル10aは、単独の発光層14と複数の斜面構造24を備えた表示体19が1つの画素となり、複数の表示体19が2次元方向にアレイ状あるいはマトリクス状に配置されたものである。したがって、各々の表示体19を駆動することにより2次元画像を表示することができる。個々の表示体19は、電極間に配置され、電極間に電圧を印加することにより自発的に発光する発光層14を含む射出層21と、この射出層21に積層され、発光層14から出力された光L1を伝達する伝達層22とを有しており、伝達層22に形成された斜面構造24の斜面24aの傾斜角度θを規定することにより外光反射を防止している。
【0022】
射出層21は、ガラス基板などのベース基板11に積層されている。ガラス基板の上面11aには、信号線やドライビング用の素子などと共に、ITOからなる陽極層12が表示パネルの画素となる発光層14に対応する位置に選択的に作り込まれている。また、ベース基板11の上面11aには陽極電極12から外れた位置にポリイミドからなるバンク層13が形成されている。そして、陽極電極12の上面、すなわち、バンク層13により四方が囲われた領域に有機EL発光層14が製膜されている。したがって、バンク層13、発光層14および発光層14を駆動するために必要な電極層などにより射出層21が構成されている。
【0023】
発光層14は、インクジェット技術を利用して製造することが可能であり、バンク層13は発光層14を製膜する際のアライメントに利用できる層である。本例の発光層14は有機ELからなる単独の層とすることも可能であるし、発光効率を改善するためにホール輸送層や電子輸送層を付加した層とすることも可能である。バンク層13および発光層14の上にはITOからなる陰極層15が形成されており、陽極層12および陰極層15に電圧を印加することにより、これらの電極間に配置された発光層14が自発的に発光する。陰極層15の上面にはSiO2からなる保護層16が積層されている。
【0024】
さらに、本例の表示パネル10aにおいては、ガラス基板11と発光層14との間に低反射層18が介在している。この低反射層18は黒色化された層、粗面化された層、または、干渉により反射防止面化された層であり、光の反射を抑制し、入射した光のほとんどを吸収することができる。このため、本例の表示パネル10aにおいては、入射した外光は、低反射層18に導かれることにより、吸収したり、干渉により光を消滅または減衰させたりすることができる。
【0025】
本例の伝達層22は板状部材である透明の封止ガラスであり、保護層16の上面に接着層17を介して積層されている。発光層14から出力された光L1はこの封止ガラス22を介して外部に出力される。封止ガラス22は、発光層14から出力された光L1の角度を変換する複数の斜面構造24を備えている。この斜面構造24は、封止ガラス22の裏面、すなわち、封止ガラス22の射出層21に対峙する面22aに形成された凹凸により形成されている。本例では、封止ガラス22の裏面22aにV字状の溝25を形成しておき、この状態で射出層21に接合することにより斜面構造24が表示パネル10aに形成される。
【0026】
斜面構造24は、溝25の斜面24aに反射膜26、アルミニウム膜や誘電体多層膜を形成することにより反射構造とすることができる。斜面構造24はバンク層13とほぼ重なるように配置されており、発光層14と重ならないようになっている。このため、発光層14から放射されたほとんどの光L1は陰極層15、保護層16、および接着層17を伝達して封止ガラス22に入射して封止ガラス22の上面(空気あるいは外界との界面)から出力される。一方、放射された光L1の内、封止ガラス22の上面に対して、その臨界角以上の角度で入射する光はガラス22の上面を通過しないので、反射され、発光層14の四方を囲んでいる状態の斜面構造24の斜面24aに反射される。その結果、ガラス22の上面に対する入射角度が変わり、上面を通過して出力される。このように、斜面構造24は、発光層14から放射された光のうち、封止ガラス22と外界との界面に対して臨界角以上で入射する光を斜面24aで反射することにより、界面に対する入射角を臨界角未満の角度に変換する機能を発揮し、これにより、発光層14から出力された光の取出効率が向上する。
【0027】
さらに、本例の斜面構造24の斜面24aは、その傾斜角度θが、斜面24aが形成されている層、または、外光が斜面で反射して伝達する層の屈折率(本例では封止ガラス22の屈折率)をnとしたときに以下の式(A)を満足するように形成されている。ここでは、封止ガラス22の界面と発光層14の面とが平行であるとして、傾斜角度θは、発光層14の平面に対して斜面24aが傾いている角度(θ<π/2)で示してある。このような傾斜角度θに設定された斜面24aにより、表示パネル10aに入り込む。また、外光L2が斜面24aで水平方向に反射された場合には、再度斜面24aで外界の方向に反射されるが、そのような外光L2は、封止ガラス22と外界との界面に、その臨界角以上の角度で入射する。このため、外光L2を外部に出力することなくパネル内に閉じ込めることが可能になる。
θ≧45+arcsin(1/n)/2・・・(A)
【0028】
図3に基づいて、式(A)について説明する。まず、外光L2が封止ガラス22に入力されるときの条件を考えると、外光L2がガラス22の界面22bから出力される角度は臨界角θ1以下になる。臨界角θ1は、封止ガラス22の屈折率nを用いると、以下の式(C)で表すことができる。
θ1=arcsin(1/n)・・・(C)
【0029】
臨界角θ1は、たとえば、屈折率nが1.5の場合は約42度になる。斜面24aの角度θは、発光層からの出力光L1の角度を界面22bの方向に変換する機能を考えると90度以下であり、この斜面24aで反射される角度が浅くなり、最も上向き(界面22bの方向)になる可能性がある条件は、外光L2が臨界角θ1で出力されたときである。したがって、斜面24aで臨界角θ1の外光L2が水平以下に反射されるように斜面24aの角度θを設定すれば、反射光は界面22bの方向には反射されない。図3において斜面24aに対する外光L2の入射角xは以下の式で表すことができる。



【0030】
したがって、外光L2が斜面24aで水平方向以下に反射される条件はθ1+2(θ−θ1)≧90となり、式(C)を用いると、条件式(A)が導かれる。これにより、表示パネル10aに入り込み、斜面24aで反射した外光L2は封止ガラス22の界面22bに向かって反射されることはない。また、2回反射を考えた場合、水平またはそれ以下の入射角度で斜面24aに入射した光の内で出射角度がもっとも大きくなるのは、水平の場合であり、このとき2回反射された光は、上記の式(A)の条件で界面22bに対する入射角は臨界角θ1以上になる。したがって、2回反射された光がガラス22の界面22bから出力されることはない。3回以上の多重反射された外光においても同様である。
【0031】
したがって、本例の表示パネル10aにおいては、入射した外光L2は、すべてパネル内に閉じ込めることが可能になり、ユーザの側には出力されない。そして、いずれは発光層14の裏面に設けられた低反射層18に到達して吸収される。このため、外光反射によるコントラストの低下を防ぐことができる。また、本発明による外光反射の防止は斜面の傾斜角度θを規定するだけなので、偏光板などの特別な光学素子を用いない非常に簡易な方法で外光の影響を防止できる。
【0032】
ここで斜面構造24のもう一つの重要な機能、すなわち、発光層14から出力された光L1を臨界角より小さな角度に変換する機能を検討する。発光層14から出力される光L1のうち、最も入射角度が大きい光は、水平方向に出力された光である。したがって、上述した外光L2とまったく逆の関係が成り立つ。すなわち、水平方向に斜面24aに入射した光を、界面22bに対して臨界角θ1以下になるように反射することが要求される。したがって、外光L2を出力せず、出力光L1を臨界角以下となるように反射する条件を満たす斜面24aの角度は以下の式(B)で示す角度となる。この条件を満たすことにより、外光反射を防止しつつ、光の取出効率を向上できる。
θ=45+arcsin(1/n)/2・・・(B)
【0033】
このように本例の表示パネル10aでは、光の取出効率を高めるための斜面構造24の斜面24aの傾斜角度θを規定することにより、斜面24で2回反射した外光が外部に出力されるのを防止することができる。このため、外光L2が表示パネル10aに入射する角度に左右されずに外光L2がユーザに観測される事態を未然に防止できる。また、発光層14から出力された光の角度を変換して光の取出効率を高める、斜面構造24の本来の機能はそのまま維持しやすい。特に、斜面24aの角度を条件式(B)を満足する角度とすることにより、光の取出効率の向上と外光反射の防止というメリットを両立することができる。これにより、輝度が高く、コントラストの良い表示パネル10aを提供できる。また、輝度やコントラストを上げるために必要以上にエネルギーを費やす必要もないので、表示装置1の消費電力も少なくて済み、有機EL素子の信頼性も向上できる。
【0034】
図4に表示パネルの異なる例を断面図を用いて示してある。この図に示した表示パネル10bは、封止ガラス(伝達層)22に設けられた斜面構造24が屈折構造となっている例であり、図2に示した表示パネル10aとは異なり、斜面24aには反射膜が形成されていない。この表示パネル10bでは、封止ガラス22に形成された凹部または溝25が発光層14と重なるように配置され、斜面構造24が発光層14と同じピッチで配置されている。
【0035】
このため、発光層14から出力された光L1は陰極層15、保護層16、接着層17を介して凹部25により形成された中空部28を通過し、ガラス22を通って出力される。一方、ガラス22の界面に対して臨界角以上で入射し、出力されなかった光L1は、凹部25の壁面(斜面)24aにより屈折することにより角度変換され、封止ガラス22から外部に出力される。このように屈折タイプの斜面構造24であっても発光層14から出力された光L1の角度を調整することが可能であり、光の取出効率を高めることができる。また、このような屈折タイプであると、封止ガラスの凸部29が斜面構造24であると言うことが可能であり、この点では、斜面構造24が発光層14と重ならない位置に配置されているとみなすことができる。
【0036】
そして、屈折タイプの斜面構造24であると、斜面24aに反射膜が形成されておらず、斜面で2回反射して外光L2が外部に出力される現象は表示パネル10aに比較すると少ないと思われる。しかしながら、屈折率の異なる物質の界面においては、フレネル反射が発生するので、斜面24aにおいてもフレネル反射成分は生じることになる。このため、屈折タイプの斜面構造24であっても、上記の式(A)を満足するように斜面24aの傾斜角度θを規定することによりフレネル反射成分が外部に出力されるのを確実に防止でき、本例の表示パネル10bの構成によっても輝度が高く、十分なコントラストを確保できる表示パネルを実現できる。
【0037】
なお、上記では、斜面構造24を発光層(または画素)14と同じピッチで配置した構成としているが、斜面構造24のピッチはこれに限定されない。また、斜面構造24を形成する層は封止ガラス(伝達層)22に限定されずに、射出層21の発光層14、またはこの発光層14より上の層に形成することが可能であるし、複数の層の各々に斜面構造24を形成することも可能である。
【0038】
図5にさらに異なる表示パネル10cを、一部を拡大した断面図を用いて示してある。本例の表示パネル10cは、裏面22aが平坦な封止ガラス22が接着層17を介して射出層21に接合されており、ポリイミドからなるバンク層13の斜面の側壁13aが斜面構造24の斜面24aを規定するようになっている。このような表示パネル10cでは、発光層14から出力された光の一部はバンク13の壁面13aで角度変換され外部に出力される。また、発光層14で出力される光について見ると、発光層14からはあらゆる方向に光が放射される。このため、発光層14の中心部分で発光された光の一部は水平方向に出力され、発光層14の傾斜した周縁部、すなわち、バンク層13の側壁13aに沿って傾斜した周縁部で角度変換されて外部に出力される成分もある。このため、発光層14の周縁部も斜面構造24の一部と考えることも可能である。
【0039】
したがって、本例の表示パネル10cでは、バンク層13の壁面13a、すなわち、実質的に発光層14の周縁部の斜面24の傾斜角度θを、発光層14の屈折率をnとしたときに条件式(A)を満足する角度に設定するようにしている。このような表示パネル10cにおいては、発光層14の周縁部24に入射した外光L2をパネル内に閉じ込めることが可能であり、輝度が高く、コントラストに優れた表示パネルを提供できる。
【0040】
なお、本発明の表示パネルを携帯電話機に搭載される表示パネルを例に説明したが、PDAなどに搭載される小型の表示パネルにも本発明を適用することが可能であるし、近年開発が盛んである30インチなどの大型の表示パネルについても本発明を適用できる。また、有機EL素子を用いた発光層を説明したが、PDP、発光ダイオード、無機EL、有機EL、フィールドエミッションなどの電極間に電圧を印加することにより自発的に発光する発光層を用いた表示パネルであれば本発明を適用することが可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、光の取出効率を高めるための複数の斜面構造が作り込まれた表示体または表示パネルにおいて、斜面構造の斜面の傾斜角度を式(A)を満足する角度に定めるようにしている。これにより、光の取出効率を損ねずに、外光反射を抑制することが可能になる。したがって、本発明の表示パネルを用いることにより、輝度が高く、十分なコントラストが確保できる大小様々なサイズの表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る表示パネルが搭載された携帯電話機の概要を示す図である。
【図2】本例の表示パネルの概略を示す断面図である。
【図3】外光反射を抑制する原理を説明するための図である。
【図4】異なる表示パネルの概略を示す断面図である。
【図5】さらに異なる表示パネルの概略を示す断面図である。
【図6】従来の斜面構造が作り込まれた表示パネルの概略を示す断面図である。
【符号の説明】
1 携帯電話機
10a、10b、10c 表示パネル
14 発光層
12 陽極層
15 陰極層
18 低反射層
21 射出層
22 封止ガラス(伝達層)
24 斜面構造
24a 斜面
26 反射膜
L2 外光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極間に印加された電圧により発光する発光層を含む射出層と、この射出層に積層され、この発光層から出力された光を伝達する伝達層とを有する表示体であって、
前記射出層および伝達層の少なくともいずれか一方は、前記発光層から出力された光の角度を変換する複数の斜面構造を備えており、
これらの斜面構造により形成される斜面の傾斜角度θは、前記斜面が含まれる前記射出層または伝達層の屈折率をnとしたときに以下の式を満足する表示体。
θ≧45+arcsin(1/n)/2
【請求項2】
請求項1において、前記傾斜角度θは以下の式を満足する表示体。
θ=45+arcsin(1/n)/2
【請求項3】
請求項1において、前記発光層の前記伝達層と反対側に低反射層を有する表示体。
【請求項4】
請求項3において、前記低反射層は、黒色化された層、粗面化された層、または、干渉により反射防止面化された層である表示体。
【請求項5】
請求項1において、前記複数の斜面構造は、前記射出層および/または前記伝達層において、前記発光層と重ならないように配置された反射構造である表示体。
【請求項6】
請求項1において、前記複数の斜面構造は、前記伝達層において、前記発光層と重ならないように配置された屈折構造である表示体。
【請求項7】
請求項1において、前記発光層は傾斜した周縁部を備えており、この周縁部が前記反射構造になっている表示体。
【請求項8】
請求項1において、前記斜面構造は前記発光層と同じピッチで配列されている表示体。
【請求項9】
請求項1において、前記発光層は有機エレクトロルミネッセンス発光層である表示体。
【請求項10】
電極間に印加された電圧により発光する複数の発光層を含む射出層と、この射出層に積層され、これらの発光層から出力された光を伝達する伝達層とを有する表示パネルであって、
前記射出層および伝達層の少なくともいずれか一方は、前記発光層から出力された光の角度を変換する複数の斜面構造を備えており、
これらの斜面構造により形成される斜面の傾斜角度θは、前記斜面が含まれる前記射出層または伝達層の屈折率をnとしたときに以下の式を満足する表示パネル。
θ≧45+arcsin(1/n)/2
【請求項11】
請求項10において、前記斜面構造は前記発光層と同じピッチで配列されている表示パネル。
【請求項12】
請求項10において、前記伝達層を形成する板状部材を有し、その板状部材の前記射出層に対峙する面に前記斜面構造となる凹凸が形成されている表示パネル。
【請求項13】
請求項10に記載の表示パネルと、この表示パネルの前記発光層を駆動して画像を表示させる駆動装置とを有する表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2004−199953(P2004−199953A)
【公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−365523(P2002−365523)
【出願日】平成14年12月17日(2002.12.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】