表示体及びラベル付き物品
【課題】従来のモアレ効果を用いた立体表示体と異なる視覚効果を持ち、かつ薄型の表示体を提供する。
【解決手段】本発明の表示体は、規則的に配列した複数の表示用パターンを一方の主面に含む構造シートと、規則的に配列した複数のレンズを一方の主面に含み、前記構造シートと向き合ったレンズシートと、を具備する表示体において、前記表示用パターンの少なくとも一部または全部は回折格子構造よりなり、前記レンズはブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズであり、前記複数の表示用パターンと前記複数のレンズとは、それらの配列との重ね合わせによって生じるモアレ効果により、前記複数の表示用パターンがそれぞれ表示する複数の像を合成してなる合成像を表示するように配置されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明の表示体は、規則的に配列した複数の表示用パターンを一方の主面に含む構造シートと、規則的に配列した複数のレンズを一方の主面に含み、前記構造シートと向き合ったレンズシートと、を具備する表示体において、前記表示用パターンの少なくとも一部または全部は回折格子構造よりなり、前記レンズはブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズであり、前記複数の表示用パターンと前記複数のレンズとは、それらの配列との重ね合わせによって生じるモアレ効果により、前記複数の表示用パターンがそれぞれ表示する複数の像を合成してなる合成像を表示するように配置されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば偽造防止効果を提供するため、モアレ効果を利用した立体視効果を付与した表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
立体表示技術として、ホログラムや、モアレ効果を利用した立体視効果はこれまでも広く知られている。
【0003】
モアレを利用した立体視では、モアレによる拡大視効果を利用し、微小パターンの拡大率を調整することにより奥行き感を生じさせることができる(特許文献1参照)。従来の製品は微細パターンを有する印刷層と球面もしくは非球面のマイクロレンズを組み合わせた構成である。レンズのピッチは微小パターンを配列するピッチによってもある程度制限され、レンズ機能とのバランスによっては、表示体が数十μm以上の厚みになることもある。印刷による微小パターンは印刷技術の進歩により微細化が進んでいるが、未だ比較的単純な形状であることが多い。
【0004】
このような立体表示体は、シールであったり、紙にすきこんだりして、さまざまな物品に用いられており、多種多様な加工に対応するには表示体の厚みは20μm未満であることが望ましいとされている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−516337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では上記従来技術を鑑みて、モアレを用いた立体視効果を有する表示体において、回折効果を有する回折格子構造を用いて表示用パターンを形成することで、より高精細な表示用パターンを提供し、かつ球面あるいは非球面のレンズではある程度厚みが必要とされるところを、代わりにブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズを組み合わせることで、従来のモアレ効果を用いた立体表示体と異なる視覚効果を持ち、かつ薄型の表示体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面によると、規則的に配列した複数の表示用パターンを一方の主面に含む構造シートと、規則的に配列した複数のレンズを一方の主面に含み、前記構造シートと向き合ったレンズシートと、を具備する表示体において、
前記表示用パターンの少なくとも一部または全部は回折格子構造よりなり、
前記レンズはブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズであり、
前記複数の表示用パターンと前記複数のレンズとは、それらの配列との重ね合わせによって生じるモアレ効果により、前記複数の表示用パターンがそれぞれ表示する複数の像を合成してなる合成像を表示するように配置されている
ことを特徴とする表示体が提供される。
【0008】
本発明の第2側面によると、請求項1〜9のいずれかに記載の表示体とこれを支持した物品とを具備したラベル付き物品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来のモアレ効果を用いた立体表示体と異なる視覚効果を持ち、かつ薄型の表示体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全ての図面を通じて、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1〜6は、本発明の一態様に係る表示体を示す断面図である。図1、3、4、5、6における表示体は、パターン用基材2上に形成されたパターン形成層3の面上に規則的に配列した複数の表示用パターン4を有する構造シート1と、レンズ用基材6上に形成されたレンズ形成層7の面上に規則的に配列した複数のレンズ(レンズ群8)を有し、構造シート1と向き合ったレンズシート5と、を具備している。図2における表示体は、パターン用基材2の一方の主面に規則的に配列した複数の表示用パターン4を備えるパターン形成層3を有し、パターン用基材2の他方の主面に規則的に配列した複数のレンズ(レンズ群8)を備えるレンズ形成層7を有している。図1〜6に示す例では、レンズ群8側を前面側とし、かつ表示用パターン4側を背面側としている。ここで、本発明における表示体は、図1〜6に示す構成に制限されるものではない。
【0012】
図2および図11を用いて本発明における表示体について説明を行う。図11は、本発明の一様態に係る表示体における光路の概略図である。
【0013】
光源111を用いて観察者側から入射した光は、規則的に配列した複数のレンズ(レンズ群8)によって屈折及び回折され、一部の波長の光が集光される。ここで、単位レンズはブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズを用いている。
次に、レンズ群8によって集光された入射光は、規則的に配列した複数の表示用パターン4面(非観察者側)に照射される。ここで、規則的に配列した複数の表示用パターン4の少なくとも一部または全部は回折格子構造よりなり、パターン用基材2、パターン形成層3及びレンズ形成層7の厚さは、焦点位置に表示用パターン4が配置されるように設定してある。
次に、表示用パターン4面に照射された光は、一部は吸収、一部は透過、一部は観察者側へと再度反射される。
次に、この反射光は、表示用パターン4の表面微細構造の形状によって、正反射光、回折光、散乱光に分かれ、レンズ群8を介して再び観察者側へと射出されて、観察者に視覚される。このとき、単位レンズの形状と回折光射出角度が調整されていないと、レンズ群8と空気の界面で臨界角を超えた光は全反射してしまい、観察者側へ射出しない。そこで、反射光の明るさを向上させるために、単位レンズの形状と回折光射出角度の調整が必要となる。
本発明における表示体では、図11に示すように、特定の波長のみ射出させ、その他の波長は散乱もしくは吸収することで色味変化をもたせることができる。
【0014】
本発明における構造シート1について図1を用いて説明する。
本発明に用いられる構造シート1は、規則的に配列した複数の表示用パターン4を一方の主面に含むものであり、図1では、パターン用基材2上に形成されたパターン形成層3の面上に規則的に配列した複数の表示用パターン4が形成されている。なお、構造シート1は、表示体の非観察者側に配置されるものである。
【0015】
本発明に用いられるパターン用基材2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)などの樹脂からなるフィルム又はシートを用いることができる。パターン用基材2は、透明であってもよく、不透明であってもよいが、視認性を高めるために、光透過性の高いものが好ましい。パターン用基材2は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。また、必要に応じてパターン用基材2には、反射防止処理、低反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び防汚処理等の処理を施してもよい。パターン用基材2は、省略することができる。
【0016】
本発明に用いられるパターン形成面10は、複数の表示用パターン4が規則的に配列しており、複数の表示用パターン4は、少なくとも一部または全部が回折格子構造よりなる。このため、回折格子の空間周波数を変化させることにより、光の入射角度や、観察者のパターン観察角度によって色の見え方が大きく異なる。さらに、以下に示す式(1)に基づいて表示用パターンを設計することで、希望する色味を再現することができる。mは次数(主に+1次光を観察する場合はm=1)、λは波長、dは回折格子ピッチ、θiは入射角度、θは回折角度として表記する。
mλ=d(sinθi±sinθ) ・・・ (1)
本発明における表示体では、構造シート1とレンズシート5を重ね合わせており、レンズ群8によって光路が変化するので、入射角度と、射出角度となる回折角度には設計時に注意が必要である。
【0017】
本発明における表示用パターン4の表面構造としては、回折格子構造、ランダムな形状の散乱構造、印刷法により形成されるナノインプリント等を用いることができる。それらの表面構造は、光の入射角度や、観察者のパターン観察角度によって、色の見え方が大きく異なる。
【0018】
本発明における表示用パターン4は、構造シート1の一方の主面に規則的に配列している。表示用パターン4の配列としては、例えば、正方格子、矩形格子及び三角格子等の格子状配列を挙げることができる。
【0019】
本発明における表示用パターン4の形状としては、絵柄、文字等を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明における表示用パターン4は、例えば、表面レリーフ型ホログラムの製造で行われているように、微細な凸部及び/又は凹部を設けた金型をパターン形成層に押し付けることにより形成することができる。例えば、パターン形成層は、パターン用基材2上に形成された熱可塑性樹脂層に、凸部及び/又は凸部が設けられた金型を、熱を印加しながら押し当てる方法、即ち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、パターン形成3層は、パターン用基材2上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに金型を押し当てながらパターン用基材2側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、金型を取り除く方法により形成することも可能である。
【0021】
この金型は、例えば、電子線描画装置を用いて製造する。例えば、まず、レジスト層への電子線描画を行って、樹脂からなる凹凸パターンを含んだ原版を得る。次いで、電鋳によって、原版に設けられた凹凸パターンの反転パターンを含んだ金型を得る。その後、この金型のパターンを熱可塑性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂層に転写して複数の版を製造し、これら版から電鋳によって複数の金型を製造する。このようにして得られた金型の凹凸パターンを樹脂層に転写することにより、一方の主面に表示用パターンが設けられたパターン形成層3を得ることができる。
【0022】
本発明に用いられるパターン形成層3の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂及びアクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂材料又は紫外線硬化樹脂を使用することができる。パターン形成層3の材料として、樹脂を使用する代わりに、珪酸塩を含んだ無機系材料を使用してもよい。また、透明であってもよく、不透明であってもよい。ただし、いずれの材料も流動性が高いことが必要である。流動性が低いと、微細構造の細かな凹凸形状の底まで樹脂が入り込まず、成形不良が発生してしまう。
【0023】
本発明におけるレンズシート5について図1を用いて説明する。
本発明に用いられるレンズシート5は、規則的に配列した複数のレンズを一方の主面に含むものであり、図1では、レンズ用基材6上に形成されたレンズ形成層7の面上に規則的に配列した複数のレンズ(レンズ群8)が形成されている。より詳しくは、波長ごとに異なる焦点を持つ単位レンズを、規則的に配列したものである。本発明に用いられるレンズシート5は、表示体の観察者側に配置されるものである。さらに、本発明に用いられるレンズは、ブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズである。
【0024】
本発明に用いられるレンズ用基材5としては、パターン用基材2と同様に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)などの樹脂からなるフィルム又はシートを使用することができる。レンズ用基材6は、省略することができる。
【0025】
本発明に用いられるホログラムレンズは、図7に示すように、たとえば、放射状に回折構造が配置され、特定波長の光が回折効果により集光するよう設計されている単位レンズセル72を複数配列させたもので、通常の屈折を利用したレンズに比べ、レンズ高さを低くすることができる。図12に単位レンズ71を2つ用いた場合の光路の概略図を示した。図12に示されるように、特定波長の光に対し、単位レンズ71の中心付近では回折角度が基材面に対して法線方向付近で、単位レンズ71の端部では回折光が単位レンズ71の中心方向に射出するように、単位レンズ71内のどの部分かによって回折構造はピッチ、角度が変化する。単位レンズ71の大きさは、前記モアレパターンとして成形されるパターンの大きさや、重ね合わせ角度などにより決定される。単位レンズ71に用いられる回折構造の形状は、使用する光の波長、単位レンズ71の大きさなどにより変化する。
【0026】
本発明に用いられるホログラムレンズの設計においても上記(1)式が適用される。特定の波長のみを集光させるよう設計することも可能であり、表示用パターン4に用いられる回折格子のピッチ等を調整することで、モアレパターンの色味を調整することができる。
【0027】
本発明では、レンズの焦点に近い位置にある表示用パターン4ほど鮮明に見え、例えば、表示用パターン4位置にグリーン領域の波長において焦点が合う場合、モアレパターンはグリーンで、よりはっきりと視覚される効果を得ることができる。このように、表示用パターン4の色味調整も可能となる。
【0028】
本発明に用いられるレンズ群8の形成方法としては、レンズ用基材6上のレンズ形成層7に、プレス法、キャスティング法、射出成形法を施す方法や、平面スタンパ、ロールスタンパの凹凸形成面に、紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)や電子線硬化型樹脂等の電離放射線樹脂を塗布または注入し、その上にレンズ用基材6を配置し、硬化処理後、スタンパから離型するという方法等を用いることができる。
【0029】
樹脂を金型に流し込んで成形する方式に使用される硬化性樹脂としては、表示用パターン4と同様に、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂材料、あるいは珪酸塩を成分に含む無機系材料を使用することができる。なお、レンズ用基材との相性や、構造の形状やサイズ、価格に応じて使い分けると良い。
【0030】
本発明に用いられる複数の表示用パターン4においては、合成像を表示する複数の第1パターンと、合成像とは異なる像を表示する1つ以上の第2パターンと、を含んでいてもよい。
【0031】
少なくとも1つ以上の第2パターンに、それ以外の第1パターンとは異なる形状あるいは異なる特性を付与することで、配列される膨大な数の第1パターンの内、いくつかが異なる形状、異なる特性を有していても、モアレとして拡大視する際は、合成像は平均化され、表示用パターンの多くを占める第1パターンの形状及び特性が支配的に表示される。ここで、特性が異なるとは、回折格子構造のピッチや配列角度、パターン形状そのものなどを変化させることを意味する。
【0032】
また、本発明に用いられる複数の表示用パターンにおいては、規則的に配列した複数の表示用パターンが形成されたパターン形成面と同一面上であり、かつ規則的に配列した複数の表示用パターンとは異なる位置に、表示用パターンがそれぞれ表示する複数の像を合成してなる合成像とは異なる像を表示する1つ以上の第3パターンを備えていてもよい。
【0033】
規則的に配列した複数の表示用パターンが形成されたパターン形成面と同一面上であり、かつ規則的に配列した複数の表示用パターンとは異なる位置に配置された、少なくとも1つ以上の第3パターンに、表示用パターンとは異なる形状あるいは異なる特性を付与することで、配列される膨大な数の表示用パターンの隙間に、いくつかが異なる形状、異なる特性を有していても、モアレとして拡大視する際は、合成像は平均化され、表示用パターンの形状及び特性が支配的に表示される。ここで、特性が異なるとは、回折格子構造のピッチや配列角度、パターン形状そのものなどを変化させることを意味する。
【0034】
本発明に用いられる表示体が、第2パターン及び第3パターンを含む表示体である場合、第2パターン及び第3パターンを認証用パターンとして用いることで、セキュリティ効果を向上させることができる。つまり、当該表示体を顕微鏡等を用いてミクロの視点で観察する際に、第2パターン及び第3パターンをチェック項目として用いることができる。
【0035】
例えば、図10に示す構造シート105では、2つの異なる形状の表示用パターン(101及び102)が規則的に配列され、それらの構造シート105内での分布はランダムであるかのように思われる。しかし、検証ツールとして構造シート105の領域A(103)にレンズシートを重ねると、表示用パターンA(101)形状が支配的に視覚される(106)。また、構造シート105の領域B(104)にレンズシートを重ねると、表示用パターンB(102)形状が支配的に視覚される(107)。これは、領域A(103)においては、表示用パターンA(101)を複数の第1パターンとして、表示用パターンB(102)を1つ以上の第2パターンとして分布を設定しており、領域B(104)においては、表示用パターンB(102)を複数の第1パターンとして、表示用パターンA(101)を1つ以上の第2パターンとして分布を設定していることに起因する。これ以外にも様々な構成が考えられ、セキュリティ度に応じて工夫することが可能である。
【0036】
また、図10に示す構造シート105の領域A(103)には、規則的に配列した複数の表示用パターン(101及び102)と同一面上であり、かつ表示用パターン(101及び102)とは異なる位置に、表示用パターン(101及び102)とは異なる形状の第3パターン108が配置されている。領域A(103)にレンズシートを重ねたとき、表示用パターンB(第2パターン102)同様に、第3パターン108も視覚されることがない。
【0037】
本発明における第2パターン及び第3パターン、いわゆる認証用パターンの形状としては、絵柄、文字等を用いることができ、これに限定されるものではない。
【0038】
また、本発明における表示体では、複数の表示用パターンを用いてモアレパターンを表示しているため、何らかの原因により複数の表示用パターンの一部において不良が発生したとしても、モアレはその他多くの表示用パターンと平均化したパターンを表示するので目立ちにくく、高品質を保ち易い利点がある。同様の理由で、EB描画時において、EBの出力バラツキから最初と最後に描画した表示用パターン特性が若干異なっていたとしても、視覚されるモアレパターンではその変化が非常に滑らかである。
【0039】
本発明における表示体は、構造シート1とレンズシート5の間に粘着層9を介して一体化させて使用してもよい(図1及び図3参照)、また、構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用してもよい(図4乃至図6参照)。図1に示す表示体には、構造シート1とレンズシート5の間に粘着層を介して一体化させた2枚のシートとして使用した場合の構成例を示している。
【0040】
本発明に用いられる表示体の構造シート1とレンズシート5との重ね合わせパターンとしては、以下のパターンを挙げることができる。
【0041】
図3及び4に示す表示体では、構造シート1の表示用パターン形成面10とレンズシート5の非レンズ形成面12が向き合って配置されている。図3に示す表示体では、構造シート1とレンズシート5が粘着層9を介して一体化しており、図4に示す表示体では、構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用している。
図3に示す重ね合わせパターンでは、構造シート1とレンズシート5を別々に作製することができ、後から粘着層9を介して組み合わせているので、位置ズレによるモアレパターンの不具合が起こりづらい。図4に示す重ね合わせパターンでは、構造シート1とレンズシート5を別々に作製することができ、たとえば、セキュリティ用途での真偽判定としてレンズシート5を検証ツールとして使用することができる。
【0042】
図1、2、6に示す表示体では、構造シート1の非表示用パターン形成面10とレンズシート5の非レンズ形成面12が向き合って配置されている。図1に示す表示体では、構造シート1とレンズシート5が粘着層9を介して一体化しており、図2に示す表示体では、パターン用基材2の一方の面に複数の表示用パターン4を含むパターン形成層10を有し、パターン用基材2の他方の面に複数のレンズ(レンズ群8)を含むレンズ形成層7を有する構成をしており、図6に示す表示体では、構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用している。
図1に示す重ね合わせパターンでは、構造シート1とレンズシート5の基材(パターン用基材2とレンズ用基材6)面同士が接するため貼合し易く、図6に示す重ね合わせパターンでは、表示用パターン形成面10がレンズシート5と擦れることがないので耐久性を保持することができる。また、図2に示す重ね合わせパターンでは、レンズ用基材6を用いずにパターン用基材2のみを用いているため、厚みの制御が容易であり、工程数を少なく作成することができる。
【0043】
図5に示す表示体では、構造シート1の表示用パターン形成面10とレンズシート5の非レンズ形成面13が向き合って配置されている。図5に示す表示体では、構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用しているが、構造シート1とレンズシート5が粘着層9を介して一体化していてもよい。
図5に示す重ね合わせパターンでは、構造シート1とレンズシート5を別々に作製することができ、たとえばセキュリティ用途での真偽判定としてレンズシート5を検証ツールとして使用することができる。構造シート1とレンズシート5の間に粘着層9を介して一体化させて使用した場合、位置ズレによるモアレパターンの不具合が起こりづらい。
【0044】
また、構造シート1の非表示用パターン形成面11とレンズシート5のレンズ形成面12が向き合って配置されていてもよい。このような表示体においても、構造シート1とレンズシート5の間に粘着層9を介して一体化させて使用してもよいし、構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用してもよい。
構造シート1とレンズシート5の間に粘着層9を介して一体化させて使用した場合、後から粘着層9を介して組み合わせるので位置ズレによるモアレパターンの不具合が起こりづらい。構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用した場合、表示用パターン形成面10がレンズシート5と擦れることがないので耐久性を保持することができる。
【0045】
本発明に用いられる表示体の構造シートとレンズシートとの重ね合わせる角度としては、表示用パターンやレンズ群の配列の周期、配列方法、微小パターンの拡大率によって調整されるものであり、ここでは特に限定しない。
【0046】
例えば、図8に示すように、表示用パターン(第1パターン)81の周期と単位レンズ82の周期が同一である場合、表示用パターン81の配列(配列角度84)と、単位レンズ82の配列(配列角度83)は、完全に一致していなくてもよい。つまり、重ね合わせ角度θが0°である必要はない。このように、表示用パターン81の配列角度84と単位レンズ82の配列角度83とを調整することで、表示される合成像(モアレパターン)の大きさを調整することができる。なお、図中の符号85は第2パターン、符号86は第3パターンを示すものである。
【0047】
また、本発明における構造シートとレンズシートを一体化させる際に使用する粘着層としては、透明度が高く、光透過性に優れた材料が好適に用いられる。例えば、本発明における表示用パターンやレンズに用いられるアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂材料、あるいは珪酸塩を成分に含む無機系材料等を使用することができる。
【0048】
ただし、粘着層を用いて構造シートとレンズシートを一体化させる際には、構造シートの表示用パターン形成面に反射層を設けることが好ましい。粘着層を有し、反射層を有していない場合、表示用パターンと粘着層との屈折率差が小さくなるため、表示用パターンにより表示される合成像(モアレパターン)の視認性が低下してしまう。
なお、本発明における表示体では、基材厚や粘着層の厚みに注意することで、よりクリアなモアレパターンを得ることができる。
【0049】
上述したとおり、本発明に使用される表示体では、構造シート1の表示用パターン形成面10に反射層91を設けてもよい。
図9に示すように、表示用パターン形成面10に反射層91を設けた場合、表示用パターン形成面10における回折効率が向上し、表示される合成像(モアレパターン)を容易に観察することができる。また、反射層91は、省略することができる。
【0050】
本発明に使用される反射層91としては、構造シート1の表示用パターン形成面10全てに設ける必要は必ずしもなく、表示用パターン4部分のみに設けるようなディメタライズド処理を行っても良い。このとき、コントラストが向上し、表示用パターンの合成像(モアレパターン)を容易に観察することができる。
【0051】
本発明に用いられる反射層91は、光反射性能を有するものであり、例えば、金属層である。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、銀又はそれらの合金を使用することができる。特に、広い波長域での反射率が高いアルミニウムが好適に用いられる。金属層は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。金属又は合金からなる反射層を気相堆積法により形成する場合、その厚さは、例えば30〜100nm程度で十分である。
【0052】
本発明に用いられる反射層91は、1層又は多層の誘電体膜であってもよい。反射層91として、例えば、透明な単層の誘電体膜を使用した場合、肉眼で表示体を観察したときに表示体の背面側にある物体を視認できる可能性がある。反射層91として多層誘電体膜を使用した場合には、表示体に波長選択性を与えることができる。従って、反射層91として金属蒸着層や単層の誘電体膜を使用した場合とは異なる視覚効果を得ることができる。多層誘電体膜は、表示用パターン4上に、例えば、硫化亜鉛などの高屈折率材料とフッ化マグネシウムなどの低屈折率の材料とを交互に蒸着することによって得られる。
【0053】
本発明における表示体は、例えば、偽造又は不正使用等が抑制されるべき物品に支持させる。本発明における表示体を、物品に支持させることで、真正であるか否かが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別することができる。従って、例えば、有価証券、銀行券、身分証明書などの証明書、及びクレジットカードなどの印刷物や美術品及び工芸品などの高級品の偽造を防止又は抑制することができる。
【0054】
なお、本発明における表示体をラベルとして利用する場合、表示体は物品に様々な方法で支持させることができる。例えば、表示体に粘着剤層を設け、この粘着剤層を介して表示体を物品に貼り付けてもよい。或いは、表示体と熱可塑性樹脂からなる接着層とを含んだ転写箔を製造し、熱及び圧力を利用した転写により、表示体を物品に貼り付けてもよい。或いは、表示体を含んだタグを製造し、これを紐及び鎖などの取付具を介して物品に支持させてもよい。或いは、表示体を含んだ包装材料を製造し、この包装材料で物品を包装してもよい。
【0055】
本発明における表示体は、偽造防止以外の目的で使用することも可能である。例えば、表示体と拡大鏡などの検証具とを含んだ光学キットは、先の真偽判定に利用可能であるのに加え、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。即ち、これら表示体は、偽造防止効果、装飾効果及び/又は美的効果を提供する。
【実施例】
【0056】
<実施例1>
単位レンズが正方格子状にピッチ100μmで配列されており、波長532nmの光を入射角度約45度で照射したときに、焦点距離が約20μmとなるレンズシートを、厚さ16μmのPETフィルムをレンズ基材として、熱エンボス方法により金型から複版、作製した。構造シートは、表示用パターンが正方格子状にピッチ100μmで配列されており、表示用パターンはφ20μmの円形形状を2つ用い、それぞれ配列角度が0.3度ずれるように並べ、いずれも空間周波数約1000本/mmの回折格子構造により生成したものをEB描画装置を用いて金型を作製した。描画範囲は100mm角。基材はレンズ成形後のレンズシートを用いて、アクリル系樹脂を用いて金型に注入し基材をラミネート後、UV露光により硬化させ金型から剥離し作製した。金型には離型処理はしていない。成形時の剥離ムラはなく、金型から綺麗に剥離することができた。成形した構造シートには、構造面にアルミ蒸着を施した。アルミ蒸着膜厚は約60nmであった。観察面から見ると、円形の表示用パターンが拡大されて視覚され、2つの円形の奥行き感が異なる表示体を得ることができた。表示体の厚みは約20μmであった。
【0057】
<実施例2>
単位レンズが正方格子状にピッチ100μmで配列されており、レンズの高さは約26μm、焦点距離は約20μmのレンズシートを、厚さ16μmのPETフィルムをレンズ基材として、アクリル系/スチレン系共重合樹脂を金型に注入しラミネート後、UV露光して硬化させ、金型から剥離し作製した。構造シートは、表示用パターンが正方格子状にピッチ100μmで配列されており、表示用パターンはφ20μmの円形形状を2つ用い、それぞれ配列角度が0.3度ずれるように並べ、いずれも空間周波数約1000本/mmの回折格子構造により生成したものをEB描画装置を用いて金型を作製した。描画範囲は100mm角。基材はレンズ成形後のレンズシートを用いて、アクリル系樹脂を用いて金型に注入し基材をラミネート後、UV露光により硬化させ金型から剥離し作製した。金型には離型処理はしていない。成形時の剥離ムラはなく、金型から綺麗に剥離することができた。成形した構造シートには、構造面にアルミ蒸着を施した。アルミ蒸着膜厚は約60nmであった。観察面から見ると、円形の表示用パターンが拡大されて視覚され、2つの円形の奥行き感が異なる表示体を得た。表示体の厚みは約42μmであった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図2】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図3】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図4】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図5】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図6】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図7】本発明のホログラムレンズにおける単位レンズについての概略図を示す。
【図8】本発明の構造シートとレンズシートの重ね合わせ角度についての概略図を示す。
【図9】本発明の反射層を設けた状態の構造シートの断面図を示す。
【図10】本発明の一態様に係る表示体についての概略図を示す。
【図11】本発明の一様態に係る表示体の構成における光路の概略図を示す。
【図12】本発明の一様態に係る構成における光路の概略図を示す。
【符号の説明】
【0059】
1…構造シート、2…パターン用基材、3…パターン形成層、4…表示用パターン、5…レンズシート、6…レンズ用基材、7…レンズ形成層、8…レンズ群、9…粘着層、10…表示用パターン形成層、11…非表示用パターン形成層、12…レンズ形成層、13…非レンズ形成層、71…単位レンズ、72…単位レンズセル、81…表示用パターン(第1パターン)、82…単位レンズ、83…レンズ群の配列角度線、84…表示用パターンの配列角度線、85…第2パターン、86…第3パターン、θ…重ね合わせ角度、91…反射層、101…表示用パターンA(第1パターン)、102…表示用パターンB(第2パターン)、103…領域A、104…領域B、105…構造シート、106…領域Aにレンズシートを重ねた場合に観察されるモアレパターン、107…領域Bにレンズシートを重ねた場合に観察されるモアレパターン、111…光源
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば偽造防止効果を提供するため、モアレ効果を利用した立体視効果を付与した表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
立体表示技術として、ホログラムや、モアレ効果を利用した立体視効果はこれまでも広く知られている。
【0003】
モアレを利用した立体視では、モアレによる拡大視効果を利用し、微小パターンの拡大率を調整することにより奥行き感を生じさせることができる(特許文献1参照)。従来の製品は微細パターンを有する印刷層と球面もしくは非球面のマイクロレンズを組み合わせた構成である。レンズのピッチは微小パターンを配列するピッチによってもある程度制限され、レンズ機能とのバランスによっては、表示体が数十μm以上の厚みになることもある。印刷による微小パターンは印刷技術の進歩により微細化が進んでいるが、未だ比較的単純な形状であることが多い。
【0004】
このような立体表示体は、シールであったり、紙にすきこんだりして、さまざまな物品に用いられており、多種多様な加工に対応するには表示体の厚みは20μm未満であることが望ましいとされている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−516337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では上記従来技術を鑑みて、モアレを用いた立体視効果を有する表示体において、回折効果を有する回折格子構造を用いて表示用パターンを形成することで、より高精細な表示用パターンを提供し、かつ球面あるいは非球面のレンズではある程度厚みが必要とされるところを、代わりにブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズを組み合わせることで、従来のモアレ効果を用いた立体表示体と異なる視覚効果を持ち、かつ薄型の表示体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面によると、規則的に配列した複数の表示用パターンを一方の主面に含む構造シートと、規則的に配列した複数のレンズを一方の主面に含み、前記構造シートと向き合ったレンズシートと、を具備する表示体において、
前記表示用パターンの少なくとも一部または全部は回折格子構造よりなり、
前記レンズはブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズであり、
前記複数の表示用パターンと前記複数のレンズとは、それらの配列との重ね合わせによって生じるモアレ効果により、前記複数の表示用パターンがそれぞれ表示する複数の像を合成してなる合成像を表示するように配置されている
ことを特徴とする表示体が提供される。
【0008】
本発明の第2側面によると、請求項1〜9のいずれかに記載の表示体とこれを支持した物品とを具備したラベル付き物品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来のモアレ効果を用いた立体表示体と異なる視覚効果を持ち、かつ薄型の表示体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全ての図面を通じて、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1〜6は、本発明の一態様に係る表示体を示す断面図である。図1、3、4、5、6における表示体は、パターン用基材2上に形成されたパターン形成層3の面上に規則的に配列した複数の表示用パターン4を有する構造シート1と、レンズ用基材6上に形成されたレンズ形成層7の面上に規則的に配列した複数のレンズ(レンズ群8)を有し、構造シート1と向き合ったレンズシート5と、を具備している。図2における表示体は、パターン用基材2の一方の主面に規則的に配列した複数の表示用パターン4を備えるパターン形成層3を有し、パターン用基材2の他方の主面に規則的に配列した複数のレンズ(レンズ群8)を備えるレンズ形成層7を有している。図1〜6に示す例では、レンズ群8側を前面側とし、かつ表示用パターン4側を背面側としている。ここで、本発明における表示体は、図1〜6に示す構成に制限されるものではない。
【0012】
図2および図11を用いて本発明における表示体について説明を行う。図11は、本発明の一様態に係る表示体における光路の概略図である。
【0013】
光源111を用いて観察者側から入射した光は、規則的に配列した複数のレンズ(レンズ群8)によって屈折及び回折され、一部の波長の光が集光される。ここで、単位レンズはブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズを用いている。
次に、レンズ群8によって集光された入射光は、規則的に配列した複数の表示用パターン4面(非観察者側)に照射される。ここで、規則的に配列した複数の表示用パターン4の少なくとも一部または全部は回折格子構造よりなり、パターン用基材2、パターン形成層3及びレンズ形成層7の厚さは、焦点位置に表示用パターン4が配置されるように設定してある。
次に、表示用パターン4面に照射された光は、一部は吸収、一部は透過、一部は観察者側へと再度反射される。
次に、この反射光は、表示用パターン4の表面微細構造の形状によって、正反射光、回折光、散乱光に分かれ、レンズ群8を介して再び観察者側へと射出されて、観察者に視覚される。このとき、単位レンズの形状と回折光射出角度が調整されていないと、レンズ群8と空気の界面で臨界角を超えた光は全反射してしまい、観察者側へ射出しない。そこで、反射光の明るさを向上させるために、単位レンズの形状と回折光射出角度の調整が必要となる。
本発明における表示体では、図11に示すように、特定の波長のみ射出させ、その他の波長は散乱もしくは吸収することで色味変化をもたせることができる。
【0014】
本発明における構造シート1について図1を用いて説明する。
本発明に用いられる構造シート1は、規則的に配列した複数の表示用パターン4を一方の主面に含むものであり、図1では、パターン用基材2上に形成されたパターン形成層3の面上に規則的に配列した複数の表示用パターン4が形成されている。なお、構造シート1は、表示体の非観察者側に配置されるものである。
【0015】
本発明に用いられるパターン用基材2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)などの樹脂からなるフィルム又はシートを用いることができる。パターン用基材2は、透明であってもよく、不透明であってもよいが、視認性を高めるために、光透過性の高いものが好ましい。パターン用基材2は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。また、必要に応じてパターン用基材2には、反射防止処理、低反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び防汚処理等の処理を施してもよい。パターン用基材2は、省略することができる。
【0016】
本発明に用いられるパターン形成面10は、複数の表示用パターン4が規則的に配列しており、複数の表示用パターン4は、少なくとも一部または全部が回折格子構造よりなる。このため、回折格子の空間周波数を変化させることにより、光の入射角度や、観察者のパターン観察角度によって色の見え方が大きく異なる。さらに、以下に示す式(1)に基づいて表示用パターンを設計することで、希望する色味を再現することができる。mは次数(主に+1次光を観察する場合はm=1)、λは波長、dは回折格子ピッチ、θiは入射角度、θは回折角度として表記する。
mλ=d(sinθi±sinθ) ・・・ (1)
本発明における表示体では、構造シート1とレンズシート5を重ね合わせており、レンズ群8によって光路が変化するので、入射角度と、射出角度となる回折角度には設計時に注意が必要である。
【0017】
本発明における表示用パターン4の表面構造としては、回折格子構造、ランダムな形状の散乱構造、印刷法により形成されるナノインプリント等を用いることができる。それらの表面構造は、光の入射角度や、観察者のパターン観察角度によって、色の見え方が大きく異なる。
【0018】
本発明における表示用パターン4は、構造シート1の一方の主面に規則的に配列している。表示用パターン4の配列としては、例えば、正方格子、矩形格子及び三角格子等の格子状配列を挙げることができる。
【0019】
本発明における表示用パターン4の形状としては、絵柄、文字等を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明における表示用パターン4は、例えば、表面レリーフ型ホログラムの製造で行われているように、微細な凸部及び/又は凹部を設けた金型をパターン形成層に押し付けることにより形成することができる。例えば、パターン形成層は、パターン用基材2上に形成された熱可塑性樹脂層に、凸部及び/又は凸部が設けられた金型を、熱を印加しながら押し当てる方法、即ち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、パターン形成3層は、パターン用基材2上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに金型を押し当てながらパターン用基材2側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、金型を取り除く方法により形成することも可能である。
【0021】
この金型は、例えば、電子線描画装置を用いて製造する。例えば、まず、レジスト層への電子線描画を行って、樹脂からなる凹凸パターンを含んだ原版を得る。次いで、電鋳によって、原版に設けられた凹凸パターンの反転パターンを含んだ金型を得る。その後、この金型のパターンを熱可塑性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂層に転写して複数の版を製造し、これら版から電鋳によって複数の金型を製造する。このようにして得られた金型の凹凸パターンを樹脂層に転写することにより、一方の主面に表示用パターンが設けられたパターン形成層3を得ることができる。
【0022】
本発明に用いられるパターン形成層3の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂及びアクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂材料又は紫外線硬化樹脂を使用することができる。パターン形成層3の材料として、樹脂を使用する代わりに、珪酸塩を含んだ無機系材料を使用してもよい。また、透明であってもよく、不透明であってもよい。ただし、いずれの材料も流動性が高いことが必要である。流動性が低いと、微細構造の細かな凹凸形状の底まで樹脂が入り込まず、成形不良が発生してしまう。
【0023】
本発明におけるレンズシート5について図1を用いて説明する。
本発明に用いられるレンズシート5は、規則的に配列した複数のレンズを一方の主面に含むものであり、図1では、レンズ用基材6上に形成されたレンズ形成層7の面上に規則的に配列した複数のレンズ(レンズ群8)が形成されている。より詳しくは、波長ごとに異なる焦点を持つ単位レンズを、規則的に配列したものである。本発明に用いられるレンズシート5は、表示体の観察者側に配置されるものである。さらに、本発明に用いられるレンズは、ブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズである。
【0024】
本発明に用いられるレンズ用基材5としては、パターン用基材2と同様に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)などの樹脂からなるフィルム又はシートを使用することができる。レンズ用基材6は、省略することができる。
【0025】
本発明に用いられるホログラムレンズは、図7に示すように、たとえば、放射状に回折構造が配置され、特定波長の光が回折効果により集光するよう設計されている単位レンズセル72を複数配列させたもので、通常の屈折を利用したレンズに比べ、レンズ高さを低くすることができる。図12に単位レンズ71を2つ用いた場合の光路の概略図を示した。図12に示されるように、特定波長の光に対し、単位レンズ71の中心付近では回折角度が基材面に対して法線方向付近で、単位レンズ71の端部では回折光が単位レンズ71の中心方向に射出するように、単位レンズ71内のどの部分かによって回折構造はピッチ、角度が変化する。単位レンズ71の大きさは、前記モアレパターンとして成形されるパターンの大きさや、重ね合わせ角度などにより決定される。単位レンズ71に用いられる回折構造の形状は、使用する光の波長、単位レンズ71の大きさなどにより変化する。
【0026】
本発明に用いられるホログラムレンズの設計においても上記(1)式が適用される。特定の波長のみを集光させるよう設計することも可能であり、表示用パターン4に用いられる回折格子のピッチ等を調整することで、モアレパターンの色味を調整することができる。
【0027】
本発明では、レンズの焦点に近い位置にある表示用パターン4ほど鮮明に見え、例えば、表示用パターン4位置にグリーン領域の波長において焦点が合う場合、モアレパターンはグリーンで、よりはっきりと視覚される効果を得ることができる。このように、表示用パターン4の色味調整も可能となる。
【0028】
本発明に用いられるレンズ群8の形成方法としては、レンズ用基材6上のレンズ形成層7に、プレス法、キャスティング法、射出成形法を施す方法や、平面スタンパ、ロールスタンパの凹凸形成面に、紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)や電子線硬化型樹脂等の電離放射線樹脂を塗布または注入し、その上にレンズ用基材6を配置し、硬化処理後、スタンパから離型するという方法等を用いることができる。
【0029】
樹脂を金型に流し込んで成形する方式に使用される硬化性樹脂としては、表示用パターン4と同様に、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂材料、あるいは珪酸塩を成分に含む無機系材料を使用することができる。なお、レンズ用基材との相性や、構造の形状やサイズ、価格に応じて使い分けると良い。
【0030】
本発明に用いられる複数の表示用パターン4においては、合成像を表示する複数の第1パターンと、合成像とは異なる像を表示する1つ以上の第2パターンと、を含んでいてもよい。
【0031】
少なくとも1つ以上の第2パターンに、それ以外の第1パターンとは異なる形状あるいは異なる特性を付与することで、配列される膨大な数の第1パターンの内、いくつかが異なる形状、異なる特性を有していても、モアレとして拡大視する際は、合成像は平均化され、表示用パターンの多くを占める第1パターンの形状及び特性が支配的に表示される。ここで、特性が異なるとは、回折格子構造のピッチや配列角度、パターン形状そのものなどを変化させることを意味する。
【0032】
また、本発明に用いられる複数の表示用パターンにおいては、規則的に配列した複数の表示用パターンが形成されたパターン形成面と同一面上であり、かつ規則的に配列した複数の表示用パターンとは異なる位置に、表示用パターンがそれぞれ表示する複数の像を合成してなる合成像とは異なる像を表示する1つ以上の第3パターンを備えていてもよい。
【0033】
規則的に配列した複数の表示用パターンが形成されたパターン形成面と同一面上であり、かつ規則的に配列した複数の表示用パターンとは異なる位置に配置された、少なくとも1つ以上の第3パターンに、表示用パターンとは異なる形状あるいは異なる特性を付与することで、配列される膨大な数の表示用パターンの隙間に、いくつかが異なる形状、異なる特性を有していても、モアレとして拡大視する際は、合成像は平均化され、表示用パターンの形状及び特性が支配的に表示される。ここで、特性が異なるとは、回折格子構造のピッチや配列角度、パターン形状そのものなどを変化させることを意味する。
【0034】
本発明に用いられる表示体が、第2パターン及び第3パターンを含む表示体である場合、第2パターン及び第3パターンを認証用パターンとして用いることで、セキュリティ効果を向上させることができる。つまり、当該表示体を顕微鏡等を用いてミクロの視点で観察する際に、第2パターン及び第3パターンをチェック項目として用いることができる。
【0035】
例えば、図10に示す構造シート105では、2つの異なる形状の表示用パターン(101及び102)が規則的に配列され、それらの構造シート105内での分布はランダムであるかのように思われる。しかし、検証ツールとして構造シート105の領域A(103)にレンズシートを重ねると、表示用パターンA(101)形状が支配的に視覚される(106)。また、構造シート105の領域B(104)にレンズシートを重ねると、表示用パターンB(102)形状が支配的に視覚される(107)。これは、領域A(103)においては、表示用パターンA(101)を複数の第1パターンとして、表示用パターンB(102)を1つ以上の第2パターンとして分布を設定しており、領域B(104)においては、表示用パターンB(102)を複数の第1パターンとして、表示用パターンA(101)を1つ以上の第2パターンとして分布を設定していることに起因する。これ以外にも様々な構成が考えられ、セキュリティ度に応じて工夫することが可能である。
【0036】
また、図10に示す構造シート105の領域A(103)には、規則的に配列した複数の表示用パターン(101及び102)と同一面上であり、かつ表示用パターン(101及び102)とは異なる位置に、表示用パターン(101及び102)とは異なる形状の第3パターン108が配置されている。領域A(103)にレンズシートを重ねたとき、表示用パターンB(第2パターン102)同様に、第3パターン108も視覚されることがない。
【0037】
本発明における第2パターン及び第3パターン、いわゆる認証用パターンの形状としては、絵柄、文字等を用いることができ、これに限定されるものではない。
【0038】
また、本発明における表示体では、複数の表示用パターンを用いてモアレパターンを表示しているため、何らかの原因により複数の表示用パターンの一部において不良が発生したとしても、モアレはその他多くの表示用パターンと平均化したパターンを表示するので目立ちにくく、高品質を保ち易い利点がある。同様の理由で、EB描画時において、EBの出力バラツキから最初と最後に描画した表示用パターン特性が若干異なっていたとしても、視覚されるモアレパターンではその変化が非常に滑らかである。
【0039】
本発明における表示体は、構造シート1とレンズシート5の間に粘着層9を介して一体化させて使用してもよい(図1及び図3参照)、また、構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用してもよい(図4乃至図6参照)。図1に示す表示体には、構造シート1とレンズシート5の間に粘着層を介して一体化させた2枚のシートとして使用した場合の構成例を示している。
【0040】
本発明に用いられる表示体の構造シート1とレンズシート5との重ね合わせパターンとしては、以下のパターンを挙げることができる。
【0041】
図3及び4に示す表示体では、構造シート1の表示用パターン形成面10とレンズシート5の非レンズ形成面12が向き合って配置されている。図3に示す表示体では、構造シート1とレンズシート5が粘着層9を介して一体化しており、図4に示す表示体では、構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用している。
図3に示す重ね合わせパターンでは、構造シート1とレンズシート5を別々に作製することができ、後から粘着層9を介して組み合わせているので、位置ズレによるモアレパターンの不具合が起こりづらい。図4に示す重ね合わせパターンでは、構造シート1とレンズシート5を別々に作製することができ、たとえば、セキュリティ用途での真偽判定としてレンズシート5を検証ツールとして使用することができる。
【0042】
図1、2、6に示す表示体では、構造シート1の非表示用パターン形成面10とレンズシート5の非レンズ形成面12が向き合って配置されている。図1に示す表示体では、構造シート1とレンズシート5が粘着層9を介して一体化しており、図2に示す表示体では、パターン用基材2の一方の面に複数の表示用パターン4を含むパターン形成層10を有し、パターン用基材2の他方の面に複数のレンズ(レンズ群8)を含むレンズ形成層7を有する構成をしており、図6に示す表示体では、構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用している。
図1に示す重ね合わせパターンでは、構造シート1とレンズシート5の基材(パターン用基材2とレンズ用基材6)面同士が接するため貼合し易く、図6に示す重ね合わせパターンでは、表示用パターン形成面10がレンズシート5と擦れることがないので耐久性を保持することができる。また、図2に示す重ね合わせパターンでは、レンズ用基材6を用いずにパターン用基材2のみを用いているため、厚みの制御が容易であり、工程数を少なく作成することができる。
【0043】
図5に示す表示体では、構造シート1の表示用パターン形成面10とレンズシート5の非レンズ形成面13が向き合って配置されている。図5に示す表示体では、構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用しているが、構造シート1とレンズシート5が粘着層9を介して一体化していてもよい。
図5に示す重ね合わせパターンでは、構造シート1とレンズシート5を別々に作製することができ、たとえばセキュリティ用途での真偽判定としてレンズシート5を検証ツールとして使用することができる。構造シート1とレンズシート5の間に粘着層9を介して一体化させて使用した場合、位置ズレによるモアレパターンの不具合が起こりづらい。
【0044】
また、構造シート1の非表示用パターン形成面11とレンズシート5のレンズ形成面12が向き合って配置されていてもよい。このような表示体においても、構造シート1とレンズシート5の間に粘着層9を介して一体化させて使用してもよいし、構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用してもよい。
構造シート1とレンズシート5の間に粘着層9を介して一体化させて使用した場合、後から粘着層9を介して組み合わせるので位置ズレによるモアレパターンの不具合が起こりづらい。構造シート1とレンズシート5を独立した2枚のシートとして使用した場合、表示用パターン形成面10がレンズシート5と擦れることがないので耐久性を保持することができる。
【0045】
本発明に用いられる表示体の構造シートとレンズシートとの重ね合わせる角度としては、表示用パターンやレンズ群の配列の周期、配列方法、微小パターンの拡大率によって調整されるものであり、ここでは特に限定しない。
【0046】
例えば、図8に示すように、表示用パターン(第1パターン)81の周期と単位レンズ82の周期が同一である場合、表示用パターン81の配列(配列角度84)と、単位レンズ82の配列(配列角度83)は、完全に一致していなくてもよい。つまり、重ね合わせ角度θが0°である必要はない。このように、表示用パターン81の配列角度84と単位レンズ82の配列角度83とを調整することで、表示される合成像(モアレパターン)の大きさを調整することができる。なお、図中の符号85は第2パターン、符号86は第3パターンを示すものである。
【0047】
また、本発明における構造シートとレンズシートを一体化させる際に使用する粘着層としては、透明度が高く、光透過性に優れた材料が好適に用いられる。例えば、本発明における表示用パターンやレンズに用いられるアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂材料、あるいは珪酸塩を成分に含む無機系材料等を使用することができる。
【0048】
ただし、粘着層を用いて構造シートとレンズシートを一体化させる際には、構造シートの表示用パターン形成面に反射層を設けることが好ましい。粘着層を有し、反射層を有していない場合、表示用パターンと粘着層との屈折率差が小さくなるため、表示用パターンにより表示される合成像(モアレパターン)の視認性が低下してしまう。
なお、本発明における表示体では、基材厚や粘着層の厚みに注意することで、よりクリアなモアレパターンを得ることができる。
【0049】
上述したとおり、本発明に使用される表示体では、構造シート1の表示用パターン形成面10に反射層91を設けてもよい。
図9に示すように、表示用パターン形成面10に反射層91を設けた場合、表示用パターン形成面10における回折効率が向上し、表示される合成像(モアレパターン)を容易に観察することができる。また、反射層91は、省略することができる。
【0050】
本発明に使用される反射層91としては、構造シート1の表示用パターン形成面10全てに設ける必要は必ずしもなく、表示用パターン4部分のみに設けるようなディメタライズド処理を行っても良い。このとき、コントラストが向上し、表示用パターンの合成像(モアレパターン)を容易に観察することができる。
【0051】
本発明に用いられる反射層91は、光反射性能を有するものであり、例えば、金属層である。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、銀又はそれらの合金を使用することができる。特に、広い波長域での反射率が高いアルミニウムが好適に用いられる。金属層は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。金属又は合金からなる反射層を気相堆積法により形成する場合、その厚さは、例えば30〜100nm程度で十分である。
【0052】
本発明に用いられる反射層91は、1層又は多層の誘電体膜であってもよい。反射層91として、例えば、透明な単層の誘電体膜を使用した場合、肉眼で表示体を観察したときに表示体の背面側にある物体を視認できる可能性がある。反射層91として多層誘電体膜を使用した場合には、表示体に波長選択性を与えることができる。従って、反射層91として金属蒸着層や単層の誘電体膜を使用した場合とは異なる視覚効果を得ることができる。多層誘電体膜は、表示用パターン4上に、例えば、硫化亜鉛などの高屈折率材料とフッ化マグネシウムなどの低屈折率の材料とを交互に蒸着することによって得られる。
【0053】
本発明における表示体は、例えば、偽造又は不正使用等が抑制されるべき物品に支持させる。本発明における表示体を、物品に支持させることで、真正であるか否かが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別することができる。従って、例えば、有価証券、銀行券、身分証明書などの証明書、及びクレジットカードなどの印刷物や美術品及び工芸品などの高級品の偽造を防止又は抑制することができる。
【0054】
なお、本発明における表示体をラベルとして利用する場合、表示体は物品に様々な方法で支持させることができる。例えば、表示体に粘着剤層を設け、この粘着剤層を介して表示体を物品に貼り付けてもよい。或いは、表示体と熱可塑性樹脂からなる接着層とを含んだ転写箔を製造し、熱及び圧力を利用した転写により、表示体を物品に貼り付けてもよい。或いは、表示体を含んだタグを製造し、これを紐及び鎖などの取付具を介して物品に支持させてもよい。或いは、表示体を含んだ包装材料を製造し、この包装材料で物品を包装してもよい。
【0055】
本発明における表示体は、偽造防止以外の目的で使用することも可能である。例えば、表示体と拡大鏡などの検証具とを含んだ光学キットは、先の真偽判定に利用可能であるのに加え、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。即ち、これら表示体は、偽造防止効果、装飾効果及び/又は美的効果を提供する。
【実施例】
【0056】
<実施例1>
単位レンズが正方格子状にピッチ100μmで配列されており、波長532nmの光を入射角度約45度で照射したときに、焦点距離が約20μmとなるレンズシートを、厚さ16μmのPETフィルムをレンズ基材として、熱エンボス方法により金型から複版、作製した。構造シートは、表示用パターンが正方格子状にピッチ100μmで配列されており、表示用パターンはφ20μmの円形形状を2つ用い、それぞれ配列角度が0.3度ずれるように並べ、いずれも空間周波数約1000本/mmの回折格子構造により生成したものをEB描画装置を用いて金型を作製した。描画範囲は100mm角。基材はレンズ成形後のレンズシートを用いて、アクリル系樹脂を用いて金型に注入し基材をラミネート後、UV露光により硬化させ金型から剥離し作製した。金型には離型処理はしていない。成形時の剥離ムラはなく、金型から綺麗に剥離することができた。成形した構造シートには、構造面にアルミ蒸着を施した。アルミ蒸着膜厚は約60nmであった。観察面から見ると、円形の表示用パターンが拡大されて視覚され、2つの円形の奥行き感が異なる表示体を得ることができた。表示体の厚みは約20μmであった。
【0057】
<実施例2>
単位レンズが正方格子状にピッチ100μmで配列されており、レンズの高さは約26μm、焦点距離は約20μmのレンズシートを、厚さ16μmのPETフィルムをレンズ基材として、アクリル系/スチレン系共重合樹脂を金型に注入しラミネート後、UV露光して硬化させ、金型から剥離し作製した。構造シートは、表示用パターンが正方格子状にピッチ100μmで配列されており、表示用パターンはφ20μmの円形形状を2つ用い、それぞれ配列角度が0.3度ずれるように並べ、いずれも空間周波数約1000本/mmの回折格子構造により生成したものをEB描画装置を用いて金型を作製した。描画範囲は100mm角。基材はレンズ成形後のレンズシートを用いて、アクリル系樹脂を用いて金型に注入し基材をラミネート後、UV露光により硬化させ金型から剥離し作製した。金型には離型処理はしていない。成形時の剥離ムラはなく、金型から綺麗に剥離することができた。成形した構造シートには、構造面にアルミ蒸着を施した。アルミ蒸着膜厚は約60nmであった。観察面から見ると、円形の表示用パターンが拡大されて視覚され、2つの円形の奥行き感が異なる表示体を得た。表示体の厚みは約42μmであった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図2】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図3】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図4】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図5】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図6】本発明の一態様に係る表示体を示す断面図を示す。
【図7】本発明のホログラムレンズにおける単位レンズについての概略図を示す。
【図8】本発明の構造シートとレンズシートの重ね合わせ角度についての概略図を示す。
【図9】本発明の反射層を設けた状態の構造シートの断面図を示す。
【図10】本発明の一態様に係る表示体についての概略図を示す。
【図11】本発明の一様態に係る表示体の構成における光路の概略図を示す。
【図12】本発明の一様態に係る構成における光路の概略図を示す。
【符号の説明】
【0059】
1…構造シート、2…パターン用基材、3…パターン形成層、4…表示用パターン、5…レンズシート、6…レンズ用基材、7…レンズ形成層、8…レンズ群、9…粘着層、10…表示用パターン形成層、11…非表示用パターン形成層、12…レンズ形成層、13…非レンズ形成層、71…単位レンズ、72…単位レンズセル、81…表示用パターン(第1パターン)、82…単位レンズ、83…レンズ群の配列角度線、84…表示用パターンの配列角度線、85…第2パターン、86…第3パターン、θ…重ね合わせ角度、91…反射層、101…表示用パターンA(第1パターン)、102…表示用パターンB(第2パターン)、103…領域A、104…領域B、105…構造シート、106…領域Aにレンズシートを重ねた場合に観察されるモアレパターン、107…領域Bにレンズシートを重ねた場合に観察されるモアレパターン、111…光源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則的に配列した複数の表示用パターンを一方の主面に含む構造シートと、規則的に配列した複数のレンズを一方の主面に含み、前記構造シートと向き合ったレンズシートと、を具備する表示体において、
前記表示用パターンの少なくとも一部または全部は回折格子構造よりなり、
前記レンズはブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズであり、
前記複数の表示用パターンと前記複数のレンズとは、それらの配列との重ね合わせによって生じるモアレ効果により、前記複数の表示用パターンがそれぞれ表示する複数の像を合成してなる合成像を表示するように配置されている
ことを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記複数の表示用パターンは、前記合成像を表示する複数の第1パターンと、前記合成像とは異なる像を表示する1つ以上の第2パターンと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記規則的に配列した複数の表示用パターンが形成されたパターン形成面と同一面上であり、かつ前記規則的に配列した複数の表示用パターンとは異なる位置に、前記合成像とは異なる像を表示する1つ以上の第3パターンを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の表示体。
【請求項4】
前記構造シートのパターン形成面と前記レンズシートの非レンズ形成面が向き合って配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項5】
前記構造シートの非パターン形成面と前記レンズシートの非レンズ形成面が向き合って配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
前記構造シートのパターン形成面と前記レンズシートのレンズ形成面が向き合って配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
前記構造シートの非パターン形成面と前記レンズシートのレンズ形成面が向き合って配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項8】
前記構造シートのパターン形成面に反射層を設けることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表示体。
【請求項9】
前記構造シートと前記レンズシートの間に粘着層を設けることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表示体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の表示体とこれを支持した物品とを具備したラベル付き物品。
【請求項1】
規則的に配列した複数の表示用パターンを一方の主面に含む構造シートと、規則的に配列した複数のレンズを一方の主面に含み、前記構造シートと向き合ったレンズシートと、を具備する表示体において、
前記表示用パターンの少なくとも一部または全部は回折格子構造よりなり、
前記レンズはブレーズド型又は/及びバイナリー型の回折格子構造よりなるホログラムレンズであり、
前記複数の表示用パターンと前記複数のレンズとは、それらの配列との重ね合わせによって生じるモアレ効果により、前記複数の表示用パターンがそれぞれ表示する複数の像を合成してなる合成像を表示するように配置されている
ことを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記複数の表示用パターンは、前記合成像を表示する複数の第1パターンと、前記合成像とは異なる像を表示する1つ以上の第2パターンと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記規則的に配列した複数の表示用パターンが形成されたパターン形成面と同一面上であり、かつ前記規則的に配列した複数の表示用パターンとは異なる位置に、前記合成像とは異なる像を表示する1つ以上の第3パターンを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の表示体。
【請求項4】
前記構造シートのパターン形成面と前記レンズシートの非レンズ形成面が向き合って配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項5】
前記構造シートの非パターン形成面と前記レンズシートの非レンズ形成面が向き合って配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
前記構造シートのパターン形成面と前記レンズシートのレンズ形成面が向き合って配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
前記構造シートの非パターン形成面と前記レンズシートのレンズ形成面が向き合って配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項8】
前記構造シートのパターン形成面に反射層を設けることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表示体。
【請求項9】
前記構造シートと前記レンズシートの間に粘着層を設けることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表示体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の表示体とこれを支持した物品とを具備したラベル付き物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−186544(P2009−186544A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23579(P2008−23579)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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