説明

表示体及び光学効果機能の発現方法

【課題】多層薄膜のカラーシフト効果を利用しつつ、特定のパターンを用いた偽造・変造が困難で真偽判別が容易なユニークな色調と色彩を有し、目視可能で偽造・変造・改竄などの不正行為が困難な情報を付与し、かつ、偽造・変造などの不正行為の事実を肉眼により簡単に判定可能な表示体及び光学効果機能の発現方法を提供する。
【解決手段】第一の基材上に、セラミックス薄膜層、透明樹脂薄膜層または金属薄膜層から選ばれる少なくとも1層以上の光学薄膜層を有する第一の積層体を具備し、第二の基材上に、セラミックス薄膜層、透明樹脂薄膜層または金属薄膜層から選ばれる少なくとも1層以上の光学薄膜層を有する第二の積層体を具備し、該第一の積層体と第二の積層体の光学薄膜層同士を重ねることで光学効果機能を発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視角の変化に応じて反射色の変化を生じる表示体に関するものであり、特に目視による真贋の判定が容易であり、かつ偽造・改竄・変造を困難とし、剥離後の再利用を防止する表示体及び、光学効果機能の発現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造を防止する手段には、物品そのものを真似することが困難なものとするか、或いは真似することが困難なものを本物であることの証明として物品に取りつけることにより、本物と偽物を区別できるようにするものがある。この後者の代表的なものとして、近年多用されているレリーフ型ホログラム、回折格子、リップマン型ホログラムなどのホログラムがある。この中で、例えばレリーフ型ホログラムは、画像を微細な凹凸状に形成したものであり、これにより光の回折と干渉により見る角度(すなわち、ホログラムを支持している角度)に応じて、固有のカラーシフト(反射光の色変化)を生じ、観察する位置により見える色が異なるものであるため、その状態の有無を確認することにより、真正物であるか否かを容易に判定することができる。ところが、近年では上述のようなホログラムは、ホログラム原理や層など構成が簡単であるため、偽造されやすくなりつつあることから、これによる偽造防止効果も薄れてきている。
【0003】
そこで、このホログラムと同様の見る角度によるカラーシフト(反射光の色変化)の効果を有するものとして、基材にセラミックスや金属などの薄膜で、光学特性の異なるものを積層した多層薄膜層がある。これらは薄膜の光学特性と膜厚により得られる光の干渉作用を利用したものであり、特定の波長域に反射・透過特性を有し、観察する位置により、この反射・透過特性が変化し、見える色が異なるため、その状態の有無を確認することにより、真正物であるか否かを容易に判定することができる。
【0004】
特許文献1には、染料等の着色剤を担持した光学的厚みを有し概して透明な表裏2面を有する上層の片側に、多層膜干渉性皮膜を具備した光学的可変色薄膜製品が開示されている。また、特許文献2には、低屈折率と高屈折率のセラミックスを交互に組み合わせることで、特定の波長領域の光線を反射あるいは透過させる機能層を基材上に具備したシールが開示されている。また、多層膜を形成する基材が透明フィルムのままでは色の変化が判りづらいこともあって、多層膜の下地として黒等の濃色の着色層または金属反射膜を付加する場合がある。特許文献3には、偽造防止効果を大きくするために、金属蒸着した基材又は金属箔に、透明蒸着層、透明保護層、屈折率の異なるセラミックス材料を交互に特定の厚さに積層した積層体が開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、基材上に屈折率の異なる複数のセラミックス材料を積層した機能層、印刷層を順次設けた複写防止印刷物が開示されている。これらのカラーシフト(反射光の色変化)において、視角による色の変化は偽造物に対して真偽の判定を可能とし、とくにコピー機、カラーコピー機などにより不正に複写したものではその光学特性を再現することが不可能であるため、偽造・変造を困難とし、偽造・変造されたとしても、その使用を諦めさせる効果を有する。
【0006】
その形態は、例として偽造防止媒体、シール、または、特許文献5に開示されているように、基材上に剥離層、屈折率の異なる複数のセラミックス材料を積層した機能層、接着層を順次設けた転写箔、転写シートとして、多層薄膜層を保持し、これらを帖着、または転写により物品に貼り付け使用する。さらには多層膜に回折構造をエンボス、若しくは転写、貼り付けにより形成することも可能である。さらにより高いセキュリティの付加とし
て、とくに層構成を考慮し、シールを剥離困難とするか、或いは特許文献6に開示されているように、基材上に部分形成剥離層、屈折率の異なる複数のセラミックス材料を積層した機能層、接着層を順次設けた脆性シールのような剥離後再生困難となるように構成されており、一度貼り付けた後、これを剥離すると光学機能層の一部もしくは全体が破壊されることで、偽造だけでなく、改竄など物品になんらかの手が加えられたことが、一目で判別できるようにしたものがある。さらには透明基材上に積層した多層薄膜に干渉光を生じない凹凸、所謂エンボス部を形成させ、正面から見たときにエンボス部と非エンボス部とで色が異なるように工夫された構成が提案されている。
【特許文献1】特開昭61−105509号公報
【特許文献2】特開平7−146649号公報
【特許文献3】特開平7−199812号公報
【特許文献4】特開平7−214960号公報
【特許文献5】特開平7−144500号公報
【特許文献6】特開平7−146650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基材にセラミックスや金属などの薄膜で、光学特性の異なるものを積層した多層薄膜は、極めて真偽判別が簡易であり、多層薄膜の構成も判りにくいため偽造防止効果が高いものである反面、基材の表面に一様に、或いはパターンとして一構成の多層薄膜のみを形成したため、カラーシフトも単一のものにならざるを得ず、色彩・デザインに乏しいとする欠点を有しており、偽造・変造・改竄などの不正行為が困難である目視可能な情報が付与されることは無かった。とくに目視可能な情報は、比較的単純な構成では偽造・改竄・変造の恐れが無いとは言えず、より高度なセキュリティ技術が求められている。
【0008】
そこで本発明は、多層薄膜のカラーシフト効果を利用しつつ、特定のパターンを用いた偽造・変造が困難で真偽判別が容易なユニークな色調と色彩を有し、目視可能で偽造・変造・改竄などの不正行為が困難な情報を付与し、かつ、偽造・変造などの不正行為の事実を肉眼により簡単に判定可能な表示体を提供することを課題としている。また、偽造防止シール、並びに偽造防止転写箔等に適用できる表示体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る発明は、第一の基材上に、セラミックス薄膜層、透明樹脂薄膜層または金属薄膜層から選ばれる少なくとも1層以上の光学薄膜層を有する第一の積層体を具備し、第二の基材上に、セラミックス薄膜層、透明樹脂薄膜層または金属薄膜層から選ばれる少なくとも1層以上の光学薄膜層を有する第二の積層体を具備し、該第一の積層体と第二の積層体の光学薄膜層同士を重ねることで光学効果機能を発現することを特徴とする表示体である。
【0010】
また本発明の請求項2に係る発明は、前記第一の基材及び/又は第二の基材が可視光を透過することを特徴とする請求項1に記載する表示体である。
【0011】
また本発明の請求項3に係る発明は、前記第一の積層体又は第二の積層体の層間にパタ
ーン層を有することを特徴とする請求項2に記載する表示体である。
【0012】
また本発明の請求項4に係る発明は、前記パターン層が無色透明であることを特徴とする請求項3に記載する表示体である。
【0013】
また本発明の請求項5に係る発明は、前記パターン層が有色インキであることを特徴とする請求項3に記載する表示体である。
【0014】
また本発明の請求項6に係る発明は、前記第一の積層体又は第二の積層体の光学薄膜層が積層してある面とは反対の面に粘着層を設けてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載する表示体である。
【0015】
次に、本発明の請求項7に係る発明は、第一の基材上に、セラミックス薄膜層、透明樹脂薄膜層または金属薄膜層から選ばれる少なくとも1層以上の光学薄膜層を有する第一の積層体と、第二の基材上に、セラミックス薄膜層、透明樹脂薄膜層または金属薄膜層から選ばれる少なくとも1層以上の光学薄膜層を有する第二の積層体とを用い、該第一の積層体と第二の積層体の光学薄膜層同士を重ねることで光学効果機能を発現することを特徴とする光学効果機能の発現方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上のような構成であるから、下記に示す如き効果がある。即ち、本発明の表示体によれば、2つの積層体は、夫々が単独では殆ど無色透明であり、2つの積層体の光学薄膜層同士を重ね合わせることによって、はじめて、目視角度により色が変化する、すなわち、視角の変化に応じて反射色が変化する光学効果機能を発現する。なお、各々の積層体単体では光学効果は発現しない。
【0017】
また、文字パターンを印刷した本発明の表示体を、例えばカラーコピー機を用いて複写しても、2つの積層体を重ねて得られる干渉色は、パターンに重なる多層薄膜層部分は光の干渉作用が起こらなくなるために、目視角度によって反射色が変化せず、不正行為の発見を容易とし、またこのような不正行為を困難とする。さらに貼付する商品券等のデザインを損ねることがないなど偽造防止対策を必要とする分野において広く使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の表示体を、一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の表示体の一実施形態を示す平面図であり、図2は、図1の表示体の一方の積層体のX−X線及び他方の積層体のY−Y線における断面図であり、図3は本発明の表示体を適用した、一方の積層体の偽造防止シールの一実施例を示す断面図であり、図4、a、bは本発明の表示体を適用した、偽造防止シールの他の実施例を示す図である。
【0020】
図1の本発明の表示体を構成する積層体1、2は、図2の断面図に示すように、基材11、12、多層薄膜層13、14が順次積層され、多層薄膜層13の下面にパターン層15が設けられている。積層体1の単独での外観はパターン層15による文字の可視情報が通常の印刷物として目視されるだけであり、同時に積層体2の単独での外観は透明なフィルムである。積層体1に積層体2の薄膜層が接するように重ねたとき、積層体2を通してみた積層体1は光の干渉色が発現し、特にパターン層15の文字情報は明らかな干渉色が認められる。同時に観察する位置により、この反射・透過特性が変化し、見える色が異なるカラーシフト(反射光の色変化)する効果が現れる。
【0021】
ここで、基材11、12は、PET(ポリエチレンテレフタレート)が好ましく、それ以外でもポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリカーボネイト系、ポリメタクリル酸メチル系、ポリスチレン系等の合成樹脂、あるいはセルロース系等の天然樹脂、ガラス等の材料を、単層あるいは複合体として使用することができるが、ある程度の剛性および表面の平滑性を有していればよい。さらに基材12は、光透過可能な透明基材である必要があり、とくに層構成によって光学特性が限定される場合もあるため、積層する多層薄膜層や本発明の表示体の用途などに応じて適宜選択される。
【0022】
薄膜層13,14は、異なる光学特性を有する薄膜を組み合わせることから成り立ち、金属薄膜、セラミックス薄膜又はそれらを併設してなる複合薄膜として機能する。例えば、屈折率の異なる薄膜を利用する場合、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜を組み合わせてもよく、また特定の組み合わせを交互に積層するようにしてもよい。それらの組み合わせにより、所望の効果を得ることができる。
【0023】
具体的には、例えば屈折率が凡そ2以上の高屈折率材料と、屈折率が1.5程度の低屈折率材料を所定の膜厚で積層したものが挙げられる。具体的なセラミックスとしては、Sb23(屈折率:n=3.0)、Fe23(n=2.7)、TiO2(n=2.6)、CdS(n=2.6)、CeO2(n=2.3)、ZnS(n=2.3)、PbCl2(n=2.3)、CdO(n=2.2)、Sb23(n=2.0)、WO3(n=2.0)、SiO(n=2.0)、Si23(n=2.5)、In23(n=2.0)、PbO(n=2.6)、Ta23(n=2.4)、ZnO(n=2.1)、ZrO2(n=2.0)、SnO(n=2.0)、ITO(n=2.0)、MgO(n=1.6)、SiO2(n=1.5)、MgF2(n=1.4)、CeF3 (n=1.6)、CaF2(n=1.3〜1.4)、AlF3(n=1.6)、Al23(n=1.6)、GaO(n=1.7)などがある。
【0024】
また、金属単体もしくは合金の薄膜としては、例えばAl、Fe、Mg、Zn、Au、Ag,Cr、Ni、Ti、Cu、Siなどがある。上記した高屈折率材料もしくは30〜60%透過の金属薄膜より選ばれる少なくとも一種と、低屈折率材料より選ばれる少なくとも一種とを選択し、所定の厚さで交互に積層させる事により、特定の波長の可視光に対する吸収あるいは反射を示すものとなる。なお、金属から構成される薄膜は構成材料の状態や形成条件などにより、屈折率などの光学特性が変わってくるため、本発明の実施例では一定の条件における値を用いている。
【0025】
薄膜層は、上記した各種材料から、屈折率、反射率、透過率等の光学特性や、耐候性、耐薬品性、層間密着性などに基づき適宜選択される。形成方法は公知の手法を用いることができ、膜厚、成膜速度、積層数、或いは光学膜厚(=n・d、n:屈折率、d:膜厚)などの制御が可能な、通常の真空蒸着法、スパッタリング法などの物理的気相析出法やCVD法などの化学的気相析出法を用いることができる。なお、本発明ではセラミックスおよび金属のみを開示しているが、セラミックスや金属と同等、或いは類似する屈折率と反射率を有するものであれば、他の材料を用いることが可能である。
【0026】
この薄膜層13,14の具体例としては、その各薄膜の層厚が50〜2000nmの範囲であり、また薄膜の層構成は上記した高屈折率の材料からなる薄膜、例えばZnS、TiO2、ZrO2、In23、SnO、ITO、CeO2、ZnO、Ta23などと、上記した低屈折率の材料からなる薄膜、例えばMgF2、SiO2、CaF2、MgO、Al23等との組み合わせであり、それらを交互に積層し、その積層数が2層以上であり、好ましくは2層〜9層であるものが挙げられる。なお、用いられる材料、組み合わせにより多層膜の光学特性が異なるため、これに限定されるものではない。薄膜13と14には夫々上記薄膜が形成されるが、薄膜の分離は2層で光学効果を得る場合には1層ずつである。
また、3層以上で効果を得る場合には適宜分離可能である。
【0027】
なお、多層の薄膜層13、14が形成される基材11、12が低屈折率の有機ポリマーである場合には、この基材11,12に接する次層は高屈折率であることが望ましい。一般的に分光特性は層数に応じて変化する。さらに図示しないが、基材11又は薄膜層12上に位置するように有色透明のインキなどにより着色層(図示しない)を設けることで、より色変化が多彩になり、かつ見やすくなることにより、偽造防止効果を向上させることができる。
【0028】
薄膜層13,14の全体の膜厚は夫々1μm以下が望ましい。1μmを越えると柔軟性に乏しくなり、薄膜層13,14にクラックが生じる場合があるためである。
【0029】
パターン層15は、文字、数字、マークや絵柄などのデザイン等の目視可能な可視情報を薄膜層13の下部に形成する。さらに、薄膜が複数層である場合には層間に配置しても良い。さらには二つ以上の層間にそれぞれ可視情報を形成する、また、各層間の可視情報を組み合わせるようにしてもよい。
【0030】
この可視情報を構成するパターン層15は、水または有機溶剤に溶解する一般に用いられる高分子材料を単体もしくは適量の顔料または染料を混ぜたインキ状のもので形成される。この高分子材料として、具体的にはポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、線状の飽和ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のメタクリル樹脂の単独または共重合物、アクリル系、スチレン系、シリコン系、ポリイソブチル系等の樹脂単独または共重合物が使用できる。例えばパターン層15は上記高分子材料に顔料または染料を添加しない無色透明インキや、黒色の顔料または染料を添加した墨色インキを用いて、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法や、バーコート法、グラビア法、ロールコート法等、またはインクジェット法等の塗布方法などの公知の形成方法により設けられる。
【0031】
なお、パターン層15は上記の無色透明インキ、墨色インキ以外の色としてもよく、また可視光領域以外に吸収又は反射を有する材料を添加してもよく、表示体を構成する積層体1、2の用途などに応じて適宜選択することができる。
【0032】
次に図3は、本発明の表示体を適用した、一方の積層体の偽造防止シール3の一実施例を示す断面図であり、基材11上に薄膜層13、また、基材11の裏面に接着層16が積層されている。組合せとなる積層体2は前述したものと同一である。この偽造防止シール3は被帖着物に接着層16を介して接着固定するものである。
【0033】
ここで、接着層16は、一般的な接着・粘着材料を用いることができる。例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系等の粘着材を単独、もしくはアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリル等に代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加したものを用いることができる。接着層16の形成には公知のグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法やバーコート法、グラビア法、ロールコート法等などの塗布方法等を用いることができる。
【0034】
次に図4は、本発明の表示体を構成する積層体2と、他方の積層体である偽造防止シール3の適用例を示すものである。図4−aに示すように、前述の偽造防止シール3を、個
装箱の表面に貼り付け、その外側を、積層体2で包装する。文字パターン15は二つの積層体が重なることで、目視角度に応じてカラーシフト効果を示す。しかし、図4−bに示すように、積層体2を剥がすと文字パターン15のカラーシフト効果は無くなる。
【0035】
先に述べたように、本発明の表示体は、2つの積層体夫々が単独では殆ど無色透明であり、2つの積層体を重ね合わせることによって、目視角度により色が変化する機能を発現する。文字パターンを印刷した表示体を、例えばカラーコピー機を用いて複写しても、2つの積層体を重ねて得られる干渉色は、パターンに重なる多層薄膜層部分は光の干渉作用が起こらなくなるために目視角度によって色が変化せず、不正行為の発見を容易とし、またこのような不正行為を困難とする。さらに貼付する商品券等のデザインを損ねることないなど偽造防止対策を必要とする分野において広く使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0037】
<実施例1>
・積層体1
25μm厚の透明ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シートを基材とし、基材上に、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック各色のポリエステル系グラビアインキ(商品名:NEW LPスーパー 東洋インキ製造社製)を用いて、文字等からなるパターン層を、グラビア印刷法で厚さ1μmに形成した。ついで、下記[薄膜層の組成1]からなる薄膜層を真空蒸着法により二層まで形成し、積層体1を得た。
[薄膜層の組成1]
金属薄膜層(高屈折率側) TiO2 20nm
セラミックス薄膜層(低屈折率側) SiO2 300nm
なお、基材/金属薄膜層/セラミックス薄膜層/金属薄膜層/セラミックス薄膜層の順で設けた。
・積層体2
25μm厚の透明ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シートを基材とし、基材
上に下記[薄膜層の組成2]からなる薄膜層を真空蒸着法により一層を形成した。
[薄膜層の組成2]
金属薄膜層 TiO2 20nm
上記積層体1の上に積層体2を薄膜層が向き合うように重ねたところ、薄膜上の部分、特にパターン層の部分の色変化が青色から赤紫色となることが確認された。しかし、重ねたものをカラーコピー機で複写した複製品はパターン層の部分が単なる黒に写るため、偽造行為を容易に発見することができた。
【0038】
<実施例2>
・偽造防止シール3
上記した実施例1で作製した積層体1を用いて、アクリル系粘着材からなる接着層を、薄膜層とは反対の面にグラビア法で厚さ10μmに形成し、シリコン系離型紙と合わせて偽造防止シール3を得た。
【0039】
上記偽造防止シール3を個装箱の表面に帖着し、ついで、実施例1で作製した積層体2を用いて個装箱を包装した。包装された個装箱全体、特にパターン層の部分が青色から赤紫色と色変化を呈したが、積層体2の包装を剥がすと色変化は失われ、無色透明な状態となった。特にパターン層の部分は印刷色が明瞭に確認され、カラーシフト効果は殆ど失われた。さらに、偽造防止シール3を個装箱からはがし取り、カラーコピー機で複写を行い、複写品と積層体2とを重ね合わせても干渉色は得られなかった。また積層体2をカラーコピー機で複写したものを偽造防止シール3に重ねても同様に干渉色は得られなかった。
【0040】
以上説明したように、本発明の表示体によれば、干渉色が得られるように設計した薄膜を複数の基材に分離して生成したことで、カラーコピー機等による複写で作成する不正行為に対抗する偽造防止用の表示体を提供できることになった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の表示体の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1の表示体の一方の積層体のX−X線及び他方の積層体のY−Y線における断面図。
【図3】本発明の表示体を適用した、一方の積層体の偽造防止シールの一実施例を示す断面図。
【図4】本発明の表示体を適用した、偽造防止シールの他の実施例を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1・・・積層体1 2・・・積層体2 3・・・偽造防止シール
11、12・・・基材 13、14・・・薄膜層15・・・パターン層
16・・・接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基材上に、セラミックス薄膜層、透明樹脂薄膜層または金属薄膜層から選ばれる少なくとも1層以上の光学薄膜層を有する第一の積層体を具備し、
第二の基材上に、セラミックス薄膜層、透明樹脂薄膜層または金属薄膜層から選ばれる少なくとも1層以上の光学薄膜層を有する第二の積層体を具備し、
該第一の積層体と第二の積層体の光学薄膜層同士を重ねることで光学効果機能を発現することを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記第一の基材及び/又は第二の基材が可視光を透過することを特徴とする請求項1に記載する表示体。
【請求項3】
前記第一の積層体又は第二の積層体の層間にパターン層を有することを特徴とする請求項2に記載する表示体。
【請求項4】
前記パターン層が無色透明であることを特徴とする請求項3に記載する表示体。
【請求項5】
前記パターン層が有色インキであることを特徴とする請求項3に記載する表示体。
【請求項6】
前記第一の積層体又は第二の積層体の光学薄膜層が積層してある面とは反対の面に粘着層を設けてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載する表示体。
【請求項7】
第一の基材上に、セラミックス薄膜層、透明樹脂薄膜層または金属薄膜層から選ばれる少なくとも1層以上の光学薄膜層を有する第一の積層体と、
第二の基材上に、セラミックス薄膜層、透明樹脂薄膜層または金属薄膜層から選ばれる少なくとも1層以上の光学薄膜層を有する第二の積層体とを用い、
該第一の積層体と第二の積層体の光学薄膜層同士を重ねることで光学効果機能を発現することを特徴とする光学効果機能の発現方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−54920(P2010−54920A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221188(P2008−221188)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】