説明

表示制御装置及び管制システム

【課題】ポインタ表示及びポインタ制御の即応性及び操作性を確保すること。
【解決手段】入力操作装置1の各々から入力される操作量に基づいて、ポインタ用スクリーン上に入力操作装置1の各々に対応するポインタを描画する第1の情報処理端末2と、入力操作装置1の各々から入力される入力指示情報に従って、アプリケーションの動作状況をアプリケーション用スクリーンに描画する第2の情報処理端末8と、これら2つのスクリーンを重畳することにより合成画像を作成し、表示装置7に出力する画像合成部6とを具備する表示制御装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ウィンドウシステム(Window system)を使用した管制システムに係り、特に、複数のポインタを同時に制御することのできる表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチウィンドウ環境を実現するため、ウィンドウシステムを利用して操作や表示を実現するアプリケーションが多数存在する。ウィンドウシステムとは、並行に動作する複数のタスク(アプリケーション)にそれぞれ固有の領域(ウィンドウ)を割当て、画面出力を多重化するコンピュータ上のメカニズム及びそのためのソフトウェアであり、現在、広く利用されている。ウィンドウシステムでは、基本的に1つの画面上で操作可能なポインタは1つであり、例えば、大画面上に複数のウィンドウを表示し複数の操作員で操作をする場合、ウィンドウシステムとは別に同時操作を行うための仕組みを実装する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ネットワークを介して互いに接続される情報処理端末と共有画面表示装置とを備えるマルチウィンドウ環境の電子会議システムが開示されている。特許文献1には、複数の操作員が各々の操作端末を用いて共有画面表示装置上のウィンドウを同時に操作する場合のウィンドウ制御権について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−181846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、複数の操作端末のポインティングデバイスからの入力を共有画面表示装置へ転送した場合のポインタの移動及びウィンドウ制御を行うための具体的手法は示されていない。
しかしながら、例えば、特許文献1の構成によると、ポインタ制御を行うプログラムとアプリケーションプログラムとが同一の情報処理端末において処理され、その処理結果を同一の情報処理端末が保有するビデオカード等で共有表示装置に表示する構成となっている。
【0006】
そのため、例えば、ウィンドウ表示を行うアプリケーションプログラムが、一定周期で多数の3次元ポリゴン目標を表示するような場合、換言すると、管制装置の状況表示のように、表示処理負荷の大きなアプリケーションの場合には、状況表示の処理に費やされる時間が多いため、ポインタ表示やポインタ制御が遅れる等の問題があった。更に、ポインタ制御の負荷が増加することにより、本来のアプリケーションの状況表示のリアルタイム性が低下する等の問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、管制システムの状況表示のように、時々刻々変化し、かつ、多数の目標を3次元表示するようなウィンドウアプリケーションに適用された場合でも、ポインタ表示及びポインタ制御の即応性及び操作性を確保することのできる表示制御装置及びそれを備える管制システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、複数の入力操作手段とネットワークを介して接続され、該入力操作手段から入力される操作量に基づいて表示手段に表示されているポインタを移動させるとともに、該入力操作手段から入力される入力指示情報に従って該表示手段に表示されているアプリケーションの動作状況を変更させる表示制御システムであって、前記表示手段の表示領域に相当するポインタ用スクリーンを有し、該入力操作手段の各々から入力される操作量に基づいて、該ポインタ用スクリーン上に前記入力操作手段の各々に対応するポインタを描画する第1の処理手段と、前記表示手段の表示領域に相当するアプリケーション用スクリーンを有し、該入力操作手段の各々から入力される入力指示情報に従ってアプリケーションの動作状況を該アプリケーション用スクリーンに描画する第2の処理手段と、前記ポインタが描画されたポインタ用スクリーン及び前記アプリケーションの動作状況が描画されたアプリケーション用スクリーンを重畳した合成画像を作成して前記表示手段に出力する画像合成手段とを具備する表示制御装置を提供する。
【0009】
このように、ポインタを描画する第1の処理手段と、アプリケーションの動作状況を描画する第2の処理手段とを備えるので、ポインタ制御表示とアプリケーションの動作状況表示とを別個の手段、例えば、別個のハードウェアによって実現することが可能となる。このように、表示に関する処理を分離し、別個の処理手段にそれぞれ割り当てることで、処理能力を高めることができる。これにより、即応性、操作性の向上を図ることが可能となる。また、画像合成手段により、個別の処理手段によって作成されたスクリーンが重畳されるので、表示手段には、あたかも一つの処理手段によって表示制御がされたのと同様の画面を表示させることが可能となる。
【0010】
上記表示制御装置において、前記第1の処理手段は、該入力操作手段の識別情報と該入力操作手段が支配権を有しているアプリケーションの識別情報とを対応付けた支配権テーブルを保有しており、前記入力操作手段からアプリケーションに関する入力指示情報を受信した場合に、該入力操作手段が該アプリケーションの支配権を有するか否かを前記支配権テーブルを参照して判定し、支配権を有する場合に、該入力操作手段の識別情報、該アプリケーションの識別情報、及び該アプリケーションに関する入力指示情報を関連付けて前記第2の処理手段に出力することとしてもよい。
【0011】
このように、アプリケーションの支配権テーブルを管理することで、一つのアプリケーションが複数の操作員によって操作されることを防止することができる。
【0012】
上記表示制御装置において、前記第1の処理手段は、該入力操作手段の識別情報と該入力操作手段がウィンドウの移動権を有しているアプリケーションの識別情報とを対応付けた移動権テーブルを保有しており、前記入力操作手段からウィンドウの移動に関する操作情報を受信した場合に、該入力操作手段が該アプリケーションのウィンドウの移動権を有するか否かを前記移動権テーブルを参照して判定し、ウィンドウの移動権を有する場合に、該入力操作手段の識別情報、該アプリケーションの識別情報、及び該ウィンドウの移動操作情報を関連付けて前記第2の処理手段に出力することとしてもよい。
【0013】
このように、アプリケーションウィンドウの移動権テーブルを管理することで、一つのアプリケーションウィンドウが複数の操作員によって移動させられることを防止することができる。
【0014】
上記表示制御装置において、前記アプリケーションの支配権を有している入力操作手段と異なる入力操作手段が、前記アプリケーションのウィンドウの移動権を獲得可能とされていることとしてもよい。
【0015】
このようにすることで、例えば、いずれかの入力操作手段によって支配されているアプリケーションに関するウィンドウを他の入力操作手段からの移動指示に基づいて移動させることができる。
【0016】
本発明は、複数の入力操作手段と、複数の該入力操作手段とネットワークを介して接続される上記のいずれかの表示制御装置と、前記表示制御装置から出力される画像信号を表示する表示手段とを具備する管制システムを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、管制システムの状況表示のように、時々刻々変化し、かつ、多数の目標を3次元表示するようなウィンドウアプリケーションに適用された場合でも、ポインタ表示及びポインタ制御の即応性及び操作性を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る管制システムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】図1に示した管制システムの構成を更に詳細に示した図である。
【図3】ポインタ用スクリーンの概要を説明するための図である。
【図4】アプリケーション用スクリーンの概要を説明するための図である。
【図5】図3に示されたスクリーンと図4に示されたスクリーンとを重畳させた合成スクリーンの概要を説明するための図である。
【図6】表示に関する動作を説明する図であり、ポインタ用スクリーンとアプリケーション用スクリーンが表示装置の表示画面上で合成されるまでの仕組みを模式的に表した図である。
【図7】ポインタ移動制御の動作を説明するための動作フローである。
【図8】ポインタ用スクリーンの概念を示した図である。
【図9】支配権テーブルの一例を示した図である。
【図10】ポインタ表示座標テーブルの一例を示した図であり、(a)はポインタ移動前のポインタ表示座標テーブル、(b)は、ポインタ移動後のポインタ表示座標テーブルを示した図である。
【図11】アプリケーションの状況表示に関する処理手順を説明するための動作フローである。
【図12】表示装置の表示画面の一例を示した図である。
【図13】支配権テーブルの一例を示した図である。
【図14】ポインタ表示座標テーブルの一例を示した図である。
【図15】アプリケーション起動又は終了時のビューマネージャの動作を説明する図である。
【図16】アプリケーションの起動又は終了以外の場合のビューマネージャの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る表示制御装置及び管制システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る管制システムの概略構成を示したブロック図である。
図1に示されるように、本実施形態に係る管制システムは、複数の入力操作装置1と、複数の入力操作装置1とネットワークNet9を介して接続される表示制御装置30と、表示制御装置30から出力される画像信号を表示する表示装置7とを備えている。
入力操作装置1は、各操作員が表示装置7の大画面表示上に表示されたポインタの操作及びウィンドウに対する操作を実施するための操作端末であり、例えば、操作員数分用意されている。
表示制御装置30は、各入力操作装置1から入力される操作量に基づいて表示装置7に表示されているポインタを移動させるとともに、各入力操作装置1から入力される入力指示情報に従って表示装置7に表示されているアプリケーションの動作状況を変化させる。
表示装置7は、液晶、プラズマ、リアプロジェクタ等の表示装置であり、1面の表示装置でもよいし、複数の表示装置を組み合わせて一つの大画面を構成する表示装置でもよい。
【0020】
図2は、図1に示した管制システムの構成を更に詳細に示した図である。
図2に示されるように、入力操作装置1は、例えば、情報処理端末であり、入力デバイスとして、キーボード101、ポインティングデバイス102を備えている。キーボード101は、ウィンドウに対する入力等の操作及びアプリケーションの起動又は終了の入力を行うための装置である。ポインティングデバイス102は、ポインタ操作、ウィンドウに対する操作を行うための装置である。キーボード101及びポインティングデバイス102から入力された各入力情報は、リモートカーソル(Remote Cursor)103に送られ、ここで処理がされた後、表示制御装置30に出力される。
【0021】
表示制御装置30は、第1の情報処理端末(第1の処理手段)2と、第2の情報処理端末(第2の処理手段)8と、画像合成部(画像合成手段)6とを主な構成として備えている。
第1の情報処理端末2及び第2の情報処理端末8は、いわゆるコンピュータであり、CU(中央演算処理装置)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置、外部の機器と通信を行うことにより情報の授受を行う通信装置等などで構成されている。
補助記憶装置には、各種プログラム(例えば、アプリケーションソフトウェア)が格納されており、CPUが補助記憶装置から主記憶装置にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0022】
第1の情報処理端末2は、例えば、表示装置7の表示画面領域に相当するポインタ用スクリーンを有し、該入力操作装置1の各々から入力される操作量に基づいて、該ポインタ用スクリーン上に入力操作装置1の各々に対応するポインタを描画する。具体的には、第1の情報処理端末2は、入力操作装置1の各々から入力される操作量に基づいてポインタ用スクリーン上における各ポインタの表示座標を算出し、上記ポインタ用スクリーン上の該当表示座標に各ポインタを描画する。各ポインタが描画されたポインタ用スクリーンは、ビデオ信号に変換されて画像合成部6に出力される。第1の情報処理端末2は、例えば、ポインタを表示するためのアプリケーションソフトウェアがインストールされており、このアプリケーションソフトウェアを実行することで上記処理を実現させる。
【0023】
より具体的には、第1の情報処理端末2は、マルチカーソルコントローラ21、描画部22、ビデオカード23、支配権テーブル24、ポインタ表示座標テーブル25を備えている。
マルチカーソルコントローラ21は、入力操作装置1毎に表示装置7の表示画面上のポインタの移動を制御すると共に、入力操作装置1が制御しているアプリケーション毎に入力指示情報(例えば、キーボード101の入力情報、ポインティングデバイス102のボタン押下情報)を当該アプリケーションに対しウィンドウシステムのインタフェース仕様に変換して出力する。また、入力操作装置1から入力された入力指示情報がアプリケーションの起動又は終了か否かを判断し、起動又は終了の場合には、ビューマネージャ3に対してアプリケーションの起動又は終了を通知する。
【0024】
描画部22は、ポインタ用スクリーン上の該当表示座標にポインタを描画する。ビデオカード23は情報処理端末に装備される一般的なビデオカードであり、ポインタ描画後のポインタ用スクリーンをビデオ信号へ変換する。
【0025】
支配権テーブル24は、該入力操作装置1とポインタ情報と支配権を有しているアプリケーションの識別情報とを互いに対応付けて保持するテーブルである。この支配権テーブルには、該アプリケーションの識別情報に対応付けてアプリケーションの表示座標及びサイズ等が登録されている。
ポインタ表示座標テーブル25は、各ポインタ識別情報と現在の表示座標とを対応付けて保持するテーブルである。
【0026】
第2の情報処理端末8は、表示装置7の表示領域に相当するアプリケーション用スクリーンを有しており、入力操作装置1の各々から入力される入力指示情報に従ってアプリケーションの動作状況を該アプリケーション用スクリーンに描画する。このアプリケーション用スクリーンの大きさは、上述したポインタ用スクリーンの大きさと同じである。
【0027】
具体的には、第2の情報処理端末8は、表示制御部4と表示処理部5とを備えている。本実施形態において、表示制御部4と表示処理部5とは独立のハードウェアにより構成されているが、これに代えて、共通のハードウェアにより構成されていてもよい。
【0028】
表示制御部4は、複数のアプリケーションプログラム41とウィンドウマネージャ(Window Manager)42とを備えている。アプリケーションプログラム41は、入力操作装置1からの入力指示情報に応じて、起動、制御、終了されるアプリケーションプログラムである。ウィンドウマネージャ42は、複数のアプリケーションプログラム41のウィンドウ表示を制御するプログラムである。
【0029】
表示処理部5は、表示制御部4で動作するアプリケーションの表示処理を行い、表示装置7に表示するためのプリケーション用スクリーンの生成を行い、これをビデオ信号に変換して、画像合成部6に出力する。
具体的には、表示処理部5は、描画部51とビデオカード52とを備えている。描画部51は、ウィンドウマネージャ42から出力される情報、具体的には、アプリケーションウィンドウをアプリケーション用スクリーン上の該当座標に表示するプログラムである。ビデオカード52は、ビデオカード23と同様、情報処理端末に装備される一般的なビデオカードである。
【0030】
画像合成部6は、ポインタが描画されたポインタ用スクリーン及びアプリケーションの動作状況が描画されたアプリケーション用スクリーンを第1の情報処理端末2及び第2の情報処理端末8から受信し、該スクリーンを重畳することにより、合成画像データを作成し、表示装置7に出力する。画像合成部6は、例えば、一般的に使用されているビデオ合成装置である。
【0031】
上記第1の情報処理端末2及び第2の情報処理端末8は、ビューマネージャ(View Manager)3に接続されている。ビューマネージャ3は、入力操作装置1から第1の情報処理端末2を経由して入力されるアプリケーションの起動又は終了情報を元に、表示制御部4に対しアプリケーションの起動又は終了の制御を行うと共に、アプリケーション用スクリーン上のウィンドウの座標、ウィンドウのサイズを取得し、第1の情報処理端末2に出力する。
【0032】
上記構成を備える表示制御装置において、第1の情報処理端末2と画像合成部6との間、第2の情報処理端末8と画像合成部6との間、及び画像合成部6と表示装置7との間は、DVI等のビデオ信号で連接される。また、各入力操作装置1、第1の情報処理端末2、ビューマネージャ部3及び表示制御部4は、ネットワークNet(図1参照)を介して互いに接続されている。
また、本実施形態においては、表示制御部4と表示処理部5との間もネットワークで接続されるが、前記ネットワーク9とは分離したネットワークで接続する。これは、表示更新周期、表示情報量及び表示処理負荷が大きい状況表示等を表示するために、前記ネットワーク9と分離し表示リアルタイム性を確保するためである。
【0033】
次に、図3乃至図5を用いてスクリーンの説明を行う。
図3はポインタ用スクリーンの概要を説明するための図、図4はアプリケーション用スクリーンの概要を説明するための図、図5は2つの上記スクリーンを重畳させた合成スクリーンの概要を説明するための図である。
図3に示したポインタ用スクリーン及び図4に示したアプリケーション用スクリーンのいずれにおいても、スクリーンの左上が座標の原点(0,0)に設定されており、左上から水平方向にx軸、垂直方向にy軸が設定されている。具体的には、スクリーンの左上を基準に右にいくほどx座標値が増加し、また、左上から下にいくほどy座標値が増加するように設定されている。
【0034】
ポインタ用スクリーンとアプリケーション用スクリーンの座標サイズ(最大のx,y)は同じとされ、表示装置7に重畳表示される場合、同じ座標の表示は、同じ位置に重畳されるようになっている。ポインタは、ポインタの左上の座標で管理され、図3乃至図5の例では、ポインタAの表示位置が(xp1,yp1)の座標、ポインタBの表示位置が(xp2,yp2)の座標でそれぞれ表現される。
【0035】
アプリケーション用スクリーン上におけるアプリケーションウィンドウの表示位置は、ウィンドウ位置(ウィンドウの左上の座標)及びウィンドウサイズ(x軸、y軸の幅)で表現される。図4の例では、アプリケーションαのウィンドウは、ウィンドウ位置が(xa1,ya1)でウィンドウサイズが(Wx1,Wy1)と表現され、アプリケーションβのウィンドウは、ウィンドウ位置が(xa2,ya2)でウィンドウサイズが(Wx2,Wy2)と表現される。
そして、図3及び図4に示された各スクリーンが重畳されることにより、図5に示すような合成スクリーンが作成される。
【0036】
図6は、表示に関する動作を説明する図であり、先に説明したポインタ用スクリーン(図3参照)とアプリケーション用スクリーン(図4参照)が表示装置7の表示画面上で合成されるまでの仕組みを模式的に表した図である。
ポインタ用スクリーン10には、マルチカーソルコントローラ21により各入力操作装置1の操作量に基づいてポインタ用スクリーン10における各ポインタの表示座標が算出され、描画部22により、該表示座標に各ポインタが描画される。ポインタ描画後のポインタ用スクリーン10は、ビデオカード23によりビデオ信号に変換されて画像合成部6に出力される。
【0037】
同様に、アプリケーション用スクリーン11には、アプリケーションプログラム41、ウィンドウマネージャ42、及び描画部51の処理を経て、アプリケーション用スクリーン11上の該当表示座標にウィンドウが描画される。ウィンドウ描画後のアプリケーション用スクリーン11は、ビデオカード52によりビデオ信号に変換され、画像合成部6に出力される。
【0038】
画像合成部6では、各々ビデオ信号として入力されたポインタ用スクリーン10と、アプリケーション用スクリーン11とがビデオ信号で重畳されることにより合成され、この合成スクリーンのビデオ信号が表示装置7に出力される。これにより、表示装置7の大画面上には、ポインタとアプリケーションウィンドウとが重畳されて表示されることとなる。
【0039】
次に、本実施形態に係る表示制御装置のポインタ操作に関する処理手順について、図7乃至図10を参照して説明する。図7は、ポインタ移動制御の動作を説明するための動作フローである。図8は、ポインタ用スクリーンの概念を示した図である。図9は、支配権テーブル24の一例を示した図である。図10は、ポインタ表示座標テーブル25の一例を示した図であり、図10(a)はポインタ移動前のポインタ表示座標テーブル、図10(b)は、ポインタ移動後のポインタ表示座標テーブルを示した図である。
【0040】
図7において、操作員が表示装置7に表示されているポインタを見ながら入力操作装置1のポインティングデバイス102の位置を移動させると、このポインティングデバイス102の操作移動量は、リモートカーソル103に入力される。リモートカーソル103は、この操作移動量に基づいてポインタ用スクリーン上におけるx軸、y軸のポインタ変位量Δx,Δyを算出し(図7のP101)、算出したポインタ変移量に、当該入力操作装置1の識別情報(例えば、端末No.1)を付与して、第1の情報処理端末2が備えるマルチカーソルコントローラ21に出力する(図7のP102)。
【0041】
マルチカーソルコントローラ21は、リモートカーソル103からポインタ変移量及び端末No.1を受信すると(P201)、支配権テーブル24を参照し、端末No.1の入力操作装置1がどのポインタを制御しているかを判断する(P202,P203)。例えば、図9に示される支配権テーブルによれば、端末No.1の入力操作装置1がポインタAを制御していることがわかる。続いて、マルチカーソルコントローラ21は、ポインタAの現在の表示座標をポインタ表示テーブル25から読み出す(P204)。ここで、図10(a)に示されるように、ポインタAの現在の表示座標は(xp1,yp1)である。
【0042】
続いて、マルチカーソルコントローラ21は、リモートカーソル103から先ほど取得したポインタ変移量Δx,Δyと、ポインタ表示座標テーブル25から取得したポインタAの現在の表示座標とから、移動先のポインタ座標を算出する(P205)。この結果、ポインタAの移動後の表示座標は(xp1+Δx,yp1+Δy)となる。マルチカーソルコントローラ21は、移動後の表示座標に基づいて、図10(b)に示すように、ポインタ表示座標テーブル25を更新すると共に、ポインタAの移動先の表示座標の情報を描画部22に出力する(P208)。これにより、図8に示すように、移動後の表示座標にポインタAが描画されたポインタ用スクリーンが作成され、このポインタ用スクリーンがビデオ信号に変換されて画像合成部6に出力される(P209)。この結果、表示装置7において、ポインタAの位置が移動させられる。
【0043】
なお、上記説明では、端末No.1に対応するポインタAが既に表示装置7に表示されている場合について述べた。換言すると、支配権テーブル24に端末No.1に対応するポインタが登録されている場合について説明したが、例えば、端末No.1に対応するポインタ番号が存在しなかった場合、つまり、端末No.1に対応するポインタが表示装置7に表示されていない状態であった場合には(P203において「NO」)、マルチカーソルコントローラ21は、端末No.1に対するポインタ表示を新規として認識し、端末No.1に対して現在割り付けられていないポインタ番号(例えば、ポインタD)を付与して支配権テーブルを更新する(P206)。そして、該ポインタの表示座標としてスクリーンの中心座標を設定し、設定した中心座標と付与したポインタDの情報を描画部22に出力するとともに(P207)、ポインタの座標とポインタ番号とを対応付けてポインタ表示テーブル25に登録する(P208)。
【0044】
次に、本実施形態に係る表示制御装置のアプリケーションの状況表示に関する処理手順について、図11乃至図16を参照して説明する。図11,図15,及び図16は、アプリケーションの状況表示に関する処理手順を説明するための動作フローである。図12は、表示装置7の表示画面の一例を示した図である。図13は、支配権テーブル24の一例を示した図である。図14は、ポインタ表示座標テーブル25の一例を示した図である。
【0045】
まず、操作員が表示装置7に表示されているウィンドウを見ながらアプリケーションに対する操作を実施する。例えば、ウィンドウの場所にポインタを移動させ、アプリケーションに関する入力指示を行うと、この入力指示情報はリモートカーソル103に入力される(図11のP103)。リモートカーソル103は、この入力指示情報に当該入力操作装置1の識別情報(例えば、端末No.1)を付与して、第1の情報処理端末2が備えるマルチカーソルコントローラ21に出力する(P104)。
【0046】
マルチカーソルコントローラ21は、リモートカーソル103からアプリケーションの入力指示情報が入力されると(P210)、この入力指示情報がアプリケーションの起動又は終了に関する情報か否かを判断する(P211)。この結果、アプリケーションの起動又は終了の場合には、図16の処理を実施する。なお、図16の詳細については後述する。
【0047】
一方、入力指示情報がアプリケーションの起動又は終了に関する情報ではなかった場合には、マルチカーソルコントローラ21は、支配権テーブル24を参照し(P212)、当該端末No.1がどのアプリケーションを支配しているのかを判断する(P213)。例えば、図13に示される支配権テーブル24によれば、端末No.1はアプリケーションαの支配権を有することがわかる。なお、この場合において、支配しているアプリケーションが登録されていなかった場合には、当該入力指示情報を無視し、処理を終了する(P218)。
【0048】
次に、マルチカーソルコントローラ21は、端末No1が現在制御しているポインタAの情報を支配権テーブル24から取得するとともに、このポインタの現在の表示座標をポインタ表示座標テーブル25から取得する。更に、マルチカーソルコントローラ21は、支配権テーブルにおいて端末No1に対応付けられているアプリケーションウィンドウ座標及びアプリケーションウィンドウ幅を取得し、これらの情報に基づいてアプリケーションαのウィンドウの表示座標範囲を特定する(P214)。そして、ポインタAの表示座標とアプリケーションαのウィンドウの表示座標範囲とから、アプリケーションαのウィンドウ上にポインタAが表示されているか否かを判定する(P215)。
【0049】
この結果、ウィンドウ上にない場合には、当該入力指示情報を無視し、処理を終了する(P218)。一方、ウィンドウ上にある場合には、先にリモートカーソル103から取得した入力指示情報をアプリケーションが使用しているウィンドウシステムのデータ形式、インタフェース仕様に変換し(P216)、第2の情報処理端末8に出力する(P217)。これにより、入力指示情報に基づくウィンドウの状況変化が表示装置7の表示画面に反映されることとなる(P401)。
【0050】
次に、アプリケーションの起動又は終了の場合について、図15の処理フローに沿って説明する。図15は、アプリケーション起動又は終了時のビューマネージャ3の動作を説明する図である。図11のP211で入力操作装置1での操作がアプリケーションの起動又は終了と判断された場合、マルチカーソルコントローラ21は、ビューマネージャ3に入力指示情報を出力する(P219)。ビューマネージャ3は、入力された入力指示情報がアプリケーションの起動か終了かを判断する(P301,P302)。
【0051】
この結果、アプリケーションの起動の場合には、表示制御部4に対して当該アプリケーションの起動命令を出力する(P303)。これにより、当該アプリケーションプログラム41が表示制御部4により起動されると、ビューマネージャ3は、アプリケーションウィンドウの表示位置及びサイズを表示制御部4のウィンドウマネージャ42に問い合わせる(P304)。ウィンドウマネージャ42は、前記問い合わせが入力されると(P402)、アプリケーションウィンドウの表示位置及びサイズをビューマネージャ3に出力する(P403)。ビューマネージャ3は、アプリケーションウィンドウの表示位置及びサイズが入力されると(P305)、第1の情報処理端末2の支配権テーブル24に起動されたアプリケーション番号、アプリケーションウィンドウの表示位置及びサイズと端末No.1とを対応付けて登録する(P306)。
【0052】
一方、上記P302の判断において、アプリケーションの終了であると判断された場合には、ビューマネージャ3は、表示制御部4に対して当該アプリケーションの終了命令を出力する(P307)。これにより、当該アプリケーションプログラム41が表示制御部4により終了されると、ビューマネージャ部3は、第1の情報処理端末2の支配権テーブルから当該アプリケーション及び該アプリケーションウィンドウの表示位置及びサイズを削除する(P308)。
【0053】
次に、入力操作装置1から入力された入力指示情報がアプリケーションの起動又は終了以外である場合についてのビューマネージャ3の動作について図16を参照して説明する。図16は、アプリケーションの起動又は終了以外の場合のビューマネージャ3の動作を説明するための図である。
【0054】
ビューマネージャ3は、ウィンドウの表示位置又はサイズに変更が発生した場合、及び所定の時間間隔において、表示制御部4のウィンドウマネージャ42に対し、アプリケーションウィンドウ位置及びサイズの問い合わせを行い(P304)、取得したアプリケーションウィンドウ位置及びサイズの情報に基づいて第1の情報処理端末2の支配権テーブル24を更新させる処理を実行する(P305,P309)。
【0055】
次に、入力操作装置1から表示装置4に表示されているアプリケーションウィンドウの移動指示が出された場合における表示制御装置の動作について簡単に説明する。
この場合、第1の情報処理端末2のマルチカーソルコントローラ21は、入力操作装置1の識別情報とポインタ情報と該ポインタが移動権を有しているアプリケーションの識別情報とを対応付けた移動権テーブル(図示略)を保有しており、入力操作装置1のリモートカーソル103からウィンドウの移動に関する操作情報を受信した場合に、該入力操作装置が該アプリケーションのウィンドウの移動権を有するか否かを移動権テーブルを参照して判定する。
【0056】
この結果、ウィンドウの移動権を有する場合に、該入力操作手段の識別情報、該アプリケーションの識別情報、及び該ウィンドウの移動操作情報を関連付けて第2の情報処理端末8に出力する。これにより、移動権を有する場合には、表示装置7において、ポインタの移動に伴ってウィンドウが移動されることとなる。なお、どのアプリケーションの移動が要求されているか否かについては、アプリケーションウィンドウの表示範囲内にポインタが表示されているか否かによって判断される。
【0057】
なお、上述したアプリケーションの支配権については、例えば、ポインタをアプリケーションのウィンドウ上に移動させることにより取得できるようになっている。このアプリケーションの支配権は、排他的に設定されており、いずれかの入力操作装置によって支配されているアプリケーションについては、他の入力操作装置からのアプリケーションに関する操作は無効として取り扱われることとなる。
【0058】
また、アプリケーションの支配権の解除は、アプリケーションウィンドウ以外の場所にポインタを移動させて所定の処理を行うことで実現できるように設定されている。なお、アプリケーションの支配権の取得及び解除については、任意に設定、変更できるものとする。
【0059】
また、アプリケーションウィンドウの移動権についても排他的に設定されているが、アプリケーションの移動権とそのアプリケーションの支配権とが同一の入力操作装置に帰属していなくてもよい。つまり、アプリケーションの支配権を有している入力操作装置とは異なる入力操作装置がそのアプリケーションの移動権を有することとしてもよい。このようにすることで、例えば、表示装置7の表示画面において新しいアプリケーションを起動させようとする操作員が、表示画面中に表示されているアプリケーションウィンドウを所望の位置に移動させた後に、自分が希望するアプリケーションウィンドウを表示画面中に表示させることが可能となる。
【0060】
以上説明してきたように、本実施形態に係る表示制御装置及び管制システムによれば、ポインタをスクリーンに描画する第1の情報処理端末2と、アプリケーションの動作状況を描画する第2の情報処理端末2とを備えるので、ポインタ制御表示とアプリケーションの動作状況表示とを別個の端末によって実現することが可能となる。このように、表示に関する処理を分離し、別個の処理手段にそれぞれ割り当てることで、処理能力を高めることができる。これにより、即応性、操作性の向上を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 入力操作装置
2 第1の情報処理端末
3 ビューマネージャ
4 表示制御部
5 表示処理部
6 画像合成部
7 表示装置
8 第2の情報処理端末
9 ネットワーク
10 ポインタ用スクリーン
11 アプリケーション用スクリーン
21 マルチカーソルコントローラ
22 描画部
23 ビデオカード
24 支配権テーブル
25 ポインタ表示座標テーブル
41 アプリケーションプログラム
42 ウィンドウマネージャ
51 描画部
52 ビデオカード
101 キーボード
102 ポインティングデバイス
103 リモートカーソル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力操作手段とネットワークを介して接続され、該入力操作手段から入力される操作量に基づいて表示手段に表示されているポインタを移動させるとともに、該入力操作手段から入力される入力指示情報に従って該表示手段に表示されているアプリケーションの動作状況を変更させる表示制御システムであって、
前記表示手段の表示領域に相当するポインタ用スクリーンを有し、該入力操作手段の各々から入力される操作量に基づいて、該ポインタ用スクリーン上に前記入力操作手段の各々に対応するポインタを描画する第1の処理手段と、
前記表示手段の表示領域に相当するアプリケーション用スクリーンを有し、該入力操作手段の各々から入力される入力指示情報に従ってアプリケーションの動作状況を該アプリケーション用スクリーンに描画する第2の処理手段と、
前記ポインタが描画されたポインタ用スクリーン及び前記アプリケーションの動作状況が描画されたアプリケーション用スクリーンを重畳した合成画像を作成して前記表示手段に出力する画像合成手段と
を具備する表示制御装置。
【請求項2】
前記第1の処理手段は、該入力操作手段の識別情報と該入力操作手段が支配権を有しているアプリケーションの識別情報とを対応付けた支配権テーブルを保有しており、
前記入力操作手段からアプリケーションに関する入力指示情報を受信した場合に、該入力操作手段が該アプリケーションの支配権を有するか否かを前記支配権テーブルを参照して判定し、支配権を有する場合に、該入力操作手段の識別情報、該アプリケーションの識別情報、及び該アプリケーションに関する入力指示情報を関連付けて前記第2の処理手段に出力する請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記第1の処理手段は、該入力操作手段の識別情報と該入力操作手段がウィンドウの移動権を有しているアプリケーションの識別情報とを対応付けた移動権テーブルを保有しており、
前記入力操作手段からウィンドウの移動に関する操作情報を受信した場合に、該入力操作手段が該アプリケーションのウィンドウの移動権を有するか否かを前記移動権テーブルを参照して判定し、ウィンドウの移動権を有する場合に、該入力操作手段の識別情報、該アプリケーションの識別情報、及び該ウィンドウの移動操作情報を関連付けて前記第2の処理手段に出力する請求項1または請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記アプリケーションの支配権を有している入力操作手段と異なる入力操作手段が、前記アプリケーションのウィンドウの移動権を獲得可能とされている請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
複数の入力操作手段と、
複数の該入力操作手段とネットワークを介して接続される請求項1から請求項4のいずれかに記載の表示制御装置と、
前記表示制御装置から出力される画像信号を表示する表示手段と
を具備する管制システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−123760(P2011−123760A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282092(P2009−282092)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る出願(平成18年3月28日付け)平成17年度 防衛庁試作研究「艦載型戦闘指揮システム主要構成要素の研究試作」、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】