説明

表示手段融雪システム

【課題】高周波出力手段として高周波発振半導体素子を使用するため、高周波出力手段を小型化して低コスト化することができる。設置スペースを少なくして表示手段に有効に取付けることができる。
【解決手段】高周波出力手段を、金属製シールドケース内にマイクロ波発振半導体素子及び複数の増幅半導体素子を内蔵すると共に高周波出力手段の出力端子に、磁性体に向かって高周波を出力するアンテナを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路標識や案内板及び看板等の各種表示手段に付着したり、付着する雪や氷を溶融(以下、本発明においては融雪及び融氷を総称して融雪という。)して表示手段の視認性を確保する表示手段の融雪システム、詳しくは表示手段に取付けられた磁性材にマイクロ波を出力して融雪する表示手段融雪システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば寒冷地の道路、特に高速道路にあっては、交通情報を表示する道路標識、道路案内板等の各種表示手段に雪や氷が付着して表示情報を視認することが困難で、運転者に正確な情報を伝えることができなかった。この問題を解決するため、本出願人は、特許文献1に示すように各種情報を有した表示手段と、表示手段の情報表示面と反対側に設けられる磁性体と、磁性体に対して所定の周波数及び出力の電磁波を照射する電磁波送信手段とを備え、電磁波送信手段から出力される電磁波を磁性体に照射し、該磁性体を透過する電磁波を熱エネルギーに変換して表示手段を加熱して付着した雪、氷を融かす融雪システムを提案した。
【0003】
特許文献1の融雪システムにあっては、電磁波出力手段としてマイクロ波を高出力で出力可能なマグネトロン管を使用しているが、表示手段自体が屋外に設置されるため、電磁波出力手段自体を高気密度で防水する必要があり、装置自体が大型化する問題を有している。また、マグネトロン管にあっては、その発熱量が多いため、高い防水性を図りながら内部の熱を放熱する必要があり、構造が複雑化して装置が大型化する問題を有している。
【0004】
また、マグネトロン管を使用した電磁波出力手段にあっては、高電圧の電源装置を必要とするため、装置自体が大型化及び高コスト化する問題を有している。
【0005】
更に、マグネトロン管を使用した電磁波出力手段は、車輌等が通過する道路の近傍に設置しているが、マグネトロン管自体、振動に弱いため、マイクロ波を安定的に出力するには、装置自体を防振構造とする必要があり、上記した防水構造と相まって装置自体が大型化及び高コスト化している。
【特許文献1】特開2004−225401
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、高周波出力手段が大型化して多くの設置スペースを必要とする点にある。また、高周波出力手段を高い気密度で防水する必要があり、装置自体が大型化する点にある。更に、高周波出力手段が振動に弱いため、装置自体を防振構造にする必要があり、装置が大型化する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、正面に各種情報が表示された表示手段の背面に磁性体を取付け、該磁性体に対して高周波出力手段からマイクロ波を出力して電波吸収させることにより発熱して表示手段を加熱して融雪する表示手段融雪システムにおいて、高周波出力手段は、金属製シールドケース内にマイクロ波発振半導体素子及び複数の増幅半導体素子を内蔵すると共に高周波出力手段の出力端子に、磁性体に向かって高周波を出力するアンテナを接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、高周波出力手段として高周波発振半導体素子を使用するため、高周波出力手段を小型化して低コスト化することができる。また、設置スペースを少なくして表示手段に有効に取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、高周波出力手段を、金属製シールドケース内にマイクロ波発振半導体素子及び複数の増幅半導体素子を内蔵すると共に高周波出力手段の出力端子に、磁性体に向かって高周波を出力するアンテナを接続したことを最良の形態とする。
【実施例】
【0010】
以下に本発明を、実施形態を示す図に従って説明する。
図1及び図2に示すように、1は道路、特に高速道路に設置されて表示手段を構成する、例えば速度表示板等の道路標識で、該道路標識1は、金属製のボックス3の前面に、速度規制情報等の各種情報を表示する金属製の表示板5が取付けられている。該表示板5の背面には、磁性体としての例えばMn−Znフェライト、Niフェライト、バナジウムフェライト等の焼結フェライト板やフェライト含有シート、フェライト含有塗料、パーマロイ等の磁性体7が、ほぼ全面に亘って設けられている。
【0011】
具体的には、磁性体7が焼結フェライト板の場合にあっては、フェライト粉60wt%とコージライト40wt%に水を添加して混練した後、成形圧力500kg/cm2で所定の形状に成形し、次に生地を約1200℃、30時間焼成して焼結フェライト板、また磁性体7をフェライト含有シートとする場合にあっては、ゴムや樹脂にフェライト粉を30〜90wt%含有させてシート状に成形した磁性体シート、更にフェライト含有塗料とした場合にあっては、焼結フェライト粉を約30〜90wt%含有させた塗料を表示板5の背面に塗布した塗膜構造のいずれであっても良い。
【0012】
上記した磁性体7は、後述する高周波出力手段としての高周波出力装置9から出力されるマイクロ波を電磁波吸して発熱することにより表示板5を加熱して前面に付着する、又は付着した雪や氷を融かすのに必要が発熱容量を得るため、例えば1〜100mm程度の厚さで適宜設定すればよい。
【0013】
また、近年においては道路に埋設された電磁誘導線から出力される電磁波を検出して車両を走行させる車両誘導システムが実現されつつあるが、道路標識1のボックス3から漏出したマイクロ波が誘導システムの電磁波に干渉して車両誘導システムを誤作動させる恐れがある。
【0014】
これを防止するため、表示板5の背面に磁性体7を取付ける際に、両者間に金属箔や金属板等の電磁波反射板11を取り付けると共にボックス3内を電気的にシールドしてマイクロ波がボックス3外へ漏出するのを防止すればよい。
【0015】
磁性体7の後方に位置するボックス3の背面板3a内面には高周波出力装置9に接続されたマイクロ波アンテナ13が磁性体7に相対するように取付けられている。マイクロ波アンテナ13としては、F型アンテナ、ループアンテナ等のいずれであってもよく、磁性体7の表面積に応じて複数個としてもよい。尚、本実施例においては、背面板3aは、反射板を構成している。
【0016】
図3に示すように、背面板3aの外面には高周波出力装置9が取付けられている。該高周波出力装置9の金属製シールドケース15内には、波長30cm−0.3mm、周波数1GHz−50GHzのマイクロ波、望ましくは電波法により無許可の使用が認められている、例えば2.45GHzのマイクロ波を発振するガンダイオード等の高周波発振半導体素子及び複数段の増幅半導体素子から構成される高周波発振回路基板17及びスイッチング回路基板19が内蔵され、最終段の増幅半導体素子は金属製シールドケース15に取付けられた出力コネクタ21に接続されている。そして出力コネクタ21には、上記したマイクロ波アンテナ13が同軸ケーブル23により接続されている。
【0017】
尚、図中の符号29は、ボックス3の背面側に取付けられて高周波出力装置9を覆うカバー板である。また、図中の符号27は、表示板5の表面又は背面に取付けられる温度センサー27であり、高周波出力装置9は、温度センサー27からの温度検出信号に基づいて発振制御される。
【0018】
次に、上記のように構成される表示手段融雪システムによる融雪作用を説明する。
表示板5の前面に雪が付着したり、付着する恐れがある気候条件下においては、作業者が高周波出力装置9の電源スイッチ(図示せず)をON操作すると、高周波出力装置9は温度センサー27により検出される温度が所要の温度以下になった際に、マイクロ波を発振制御して表示板5の背面に取付けられた磁性体7に出力する。
【0019】
そして磁性体7にマイクロ波が照射されると、マイクロ波が磁性体7を透過する際の誘電損失及び磁気損失、抵抗損失により熱エネルギーに変換されて磁性体7を加熱して表示板5を加熱させる。これにより加熱された表示板5に吹付けられる雪を溶融して雪が付着するのを回避したり、付着した雪や氷を融雪して表示板5に表示された交通情報を、常に視認可能な状態にさせる。
【0020】
高周波出力装置9は、温度センサー27からの温度検出信号に基づいて発振制御される。このため、表示板5の温度が、雪や氷が付着可能な温度より高い温度になったときには、温度センサー27からの温度検出信号に基づいて高周波出力装置9をOFF制御したり、発振出力を減少制御して消費電力を低減させることができる。
【0021】
尚、高周波出力装置9の発振制御は、温度センサー27からの温度検出信号に基づかずに、作業者が目視で融雪状態等を確認してON−OFF制御してもよい。
【0022】
このよう本実施例は、高周波出力装置9を、マグネトロン管を使用せずに高周波発振半導体素子とすることにより装置自体を小型化することができる。また、高周波発振半導体素子自体、マグネトロン管に比べて発熱量がすきなく、その冷却構造を簡易化して装置自体を小型化できる。更に、高周波発振半導体素子自体、マグネトロン管に比べて振動による影響が少ないため、簡易な防振構造とすることができ、装置自体を簡易化して小型化できる。
【0023】
実験例1
磁性体に出力されるマイクロ波の出力時間及びアンテナの種類による温度上昇を、ボトル内に充填した水の水温の変化を示す表に基づいて示す。
表1は、
磁性体7:10cm角、厚さ:4.5mmの焼結フェライト板
マイクロ波周波数:2.45GHz
アンテナ:ループアンテナ
出力:50W
室温:14℃
水温:11.2℃
【表1】

【0024】
実験例2
表2は、
磁性体7:10cm角、厚さ:4.5mmの焼結フェライト板
マイクロ波周波数:2.45GHz
アンテナ:F型アンテナ
出力:50W
室温:14℃
水温:10.1℃
【表2】

【0025】
本発明は、以下のように変更実施することができる。
1.上記説明は、表示手段として道路、特に高速道路に設置される速度標識等の道路標識としたが、本発明の表示手段としては、この他に道路案内板、店舗等の看板等の各種表示手段においても実施することができる。
【0026】
2.上記したように高周波出力装置9は、図4に示すようにその外面にマイクロ波アンテナ13を一体化したモジュール構造であってもよい。この場合にあっては、背面板3aの内面にモジュール化した高周波出力装置9を直接取付けると共に背面板3aの外面に多数の冷却フィン41aが設けられた放熱板41を取付けて背面板3aを介して高周波出力装置9を冷却可能にしてもよい。
【0027】
3.高周波出力装置9としては、背面板3aの外面に直接取付けるのではなく、道路標識1が設置される地面に設けられる防水箱(図示せず)内に収容し、マイクロ波アンテナ13に対して同軸ケーブル23で接続した構造であってもよい。
【0028】
4.高周波出力装置9の取付け数としては、磁性体7の表面積や寒冷の程度に応じた個数とすればよい。
【0029】
5.上記説明においては、背面板3aの内面にマイクロ波アンテナ13を直接取付ける例を示したが、予め金属板にマイクロ波アンテナ13を取付け、該金属板を背面板3aの内面に固着してマイクロ波アンテナ13を取付ける構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】表示手段の融雪システムを示す説明図である。
【図2】表示手段の略体断面図である。
【図3】高周波出力装置の概略を示す説明図である。
【図4】高周波出力装置の他の取付け例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1−表示手段としての道路標識、3−ボックス、5−表示板、7−磁性体、9−高周波出力手段としての高周波出力装置、13−マイクロ波アンテナ、27−温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面に各種情報が表示された表示手段の背面に磁性体を取付け、該磁性体に対して高周波出力手段からマイクロ波を出力して電波吸収させることにより発熱して表示手段を加熱して融雪する表示手段融雪システムにおいて、高周波出力手段は、金属製シールドケース内にマイクロ波発振半導体素子及び複数の増幅半導体素子を内蔵すると共に高周波出力手段の出力端子に、磁性体に向かって高周波を出力するアンテナを接続した融雪システム。
【請求項2】
請求項1の高周波出力手段は、融雪条件に応じて複数個とした表示手段融雪システム。
【請求項3】
請求項1の高周波出力手段は、シールドケースの一面にアンテナを一体化してモジュール化した表示手段融雪システム。
【請求項4】
請求項1のアンテナは、F型アンテナ及びループアンテナのいずれかとした表示手段融雪システム。
【請求項5】
請求項1の磁性体は、高周波電磁波の周波数に対応する厚さの焼結磁性板とした表示手段融雪システム。
【請求項6】
請求項1の磁性体は、基材に磁性体粉を所要の割合で含有した磁性体シートとした表示手段融雪システム。
【請求項7】
請求項1の磁性体は、磁性体粉を所定の割合で含有した塗膜とした表示手段融雪システム。
【請求項8】
請求項1の高周波出力手段は、表示手段に設けられた温度センサーからの信号に基づいて高周波を発振制御する表示手段融雪システム。
【請求項9】
請求項1乃至8の磁性体は、焼結フェライトとした表示手段融雪システム。
【請求項10】
請求項1乃至8の磁性体は、パーマロイとした表示手段融雪システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−247198(P2007−247198A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70072(P2006−70072)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(304047325)
【Fターム(参考)】