説明

表示機能付き非接触通信媒体及びこれを用いた通信方法

【課題】自己表示機能付きの非接触IC媒体及び非接触通信媒体のリーダの両方の機能を備えた非接触通信媒体を提供すること。
【解決手段】表示装置と、前記表示装置に接続された演算処理装置と、前記演算処理装置に接続された、通信距離を制御可能な第一の非接触通信手段と、前記非接触通信手段と、非接触通信可能に配置された第二の非接触通信手段と、前記第一の非接触通信手段の通信機能の開通及び切断する第一のスイッチと、前記第二の非接触通信手段の通信機能の開通及び切断する第二のスイッチとを備え、前記第一のスイッチ及び第二のスイッチは、前記演算処理装置に接続されていることを非接触通信媒体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を表示する機能を有し、情報を送受信することができる非接触通信媒体に関し、特にICカード形態の非接触通信媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通機関等の乗車券や、電子マネー媒体として、非接触で情報のやり取りが可能な非接触ICカード等の非接触通信媒体が普及している。これらは、ICチップに接続されたアンテナを介して送受信することで、通信するものである。
【0003】
ところで、このような非接触ICカードに記録された情報を読み取るためには、別途非接触ICカードから送信された電磁波を受信するためのリーダが必要となる。リーダは、非接触ICカード同様、情報通信のためのアンテナを備えている。一方、自己のICチップに記録された情報を表示する表示装置を備えた非接触ICカードは、例えば特許文献1に開示されている。しかし、特許文献1では、ICチップに電気的に接続された配線によって、表示装置にICチップの情報を表示させているものであるので、表示機能付ICカード自体の情報は表示できるが、一般的なリーダのように、他のICカードの情報を表示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−120312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、従来自己表示機能付きの非接触IC媒体や非接触ICカードのリーダは従来からあるが、これら両方の機能を備えた非接触通信媒体は、実現が困難であった。一つは、ICカードに備えられたアンテナコイルでリーダ/ライタ機能と、自己のICチップに記録するデータの送受信のいずれか一方を行う場合、他方の機能としてもアンテナコイルが機能してしまうため不安定になってしまう。すなわち、自己の非接触ICカードのアンテナによる電磁波通信と、他の非接触ICカードからの電磁波を読み取るための通信が、同じ通信周波数を利用しているために混線してしまうという問題があった。
【0006】
本願発明は、このような問題点を鑑みて、自己表示機能付きの非接触IC媒体及び非接触通信媒体のリーダの両方の機能を備えた非接触通信媒体及び非接触通信媒体を用いた通信方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために為された請求項1に係る発明は、表示装置と、前記表示装置に接続された演算処理装置と、前記演算処理装置に接続された、通信距離を制御可能な第一の非接触通信手段と、前記非接触通信手段と、非接触通信可能に配置された第二の非接触通信手段と、前記第一の非接触通信手段の通信機能の開通及び切断する第一のスイッチと、前記第二の非接触通信手段の通信機能の開通及び切断する第二のスイッチと、を備え、前記第一のスイッチ及び第二のスイッチは、前記演算処理装置に接続されていることを非接触通信媒体である。
また請求項2に係る発明は、前記第一の非接触通信手段は、発信器と、第一のアンテナとが接続されたICを備え、前記第二の非接触通信手段は、第二のアンテナが接続されたICを備え、前記第一のアンテナに前記第一のスイッチが設けられ、前記第二のアンテナに前記第二のスイッチが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の非接触通信媒体である。
また請求項3に係る発明は、前記第一の非接触通信手段は、信号を送受信するための搬送波の出力が、少なくとも高出力と低出力の2段階に制御可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触通信媒体である。
また請求項4に係る発明は、前記第一のスイッチ及び/又は前記第二のスイッチの開閉と、前記第一の非接触通信手段の通信距離を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、 前記第一のスイッチを切断され、前記第二のスイッチを開通する状態と、前記第一のスイッチを開通され、前記第二のスイッチを切断されているとともに、前記第一の非接触通信手段の搬送波の出力を高出力にする状態と、前記第一のスイッチを開通され、前記第二のスイッチを開通されているとともに、前記第一の非接触通信手段の搬送波の出力を低出力にした状態と、を切り替える機能を有することを特徴とする請求項3に記載の非接触通信媒体である。
【0008】
さらに請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の非接触通信媒体を用いた通信方法であって、前記第一のスイッチを開通し、第二のスイッチを切断するステップと、第一の非接触通信手段の通信距離を長距離に設定するステップと、外部の非接触IC媒体の信号を検出し、通信を確立するステップと、通信された情報を表示装置に出力するステップと、を含むことを特徴とする通信方法である。
また請求項6に係る発明は、請求項5に記載の通信方法であって、前記外部の非接触IC媒体の信号を検出し、通信を確立するステップは、第一の通信規格の信号検出を行い、検出された場合は第一の通信規格で非接触IC媒体との通信を確立し、前記非接触IC媒体の信号が検出されなかった場合は第二の通信規格の信号検出を行うステップ、を含むことを特徴とする通信方法である。
また請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の通信方法であって、前記外部の非接触IC媒体の信号を検出し、通信を確立するステップにおいて通信が確立されなかった場合に、前記第二のスイッチを開通するステップと、第一の非接触通信手段の通信距離を短距離に設定するステップと、前記第二の非接触通信手段の信号を検出し、通信を確立するステップと、を含むことを特徴とする通信方法である。
また請求項7に係る発明は、請求項5乃至7のいずれかに記載の通信方法であって、 演算処理装置に記録された終了条件を満たした場合に、前記第一のスイッチを切断し、第二のスイッチを開通した状態にするステップと、を含むことを特徴とする通信方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非接触通信媒体は、通信距離を制御可能な第一の非接触通信手段(リーダ/ライタ手段)と、第二の非接触手段を有し、それぞれアンテナ回路の開通/切断するスイッチが演算処理装置に接続されているので、1)外部の非接触IC媒体と、リーダ/ライタ手段203との通信、2)外部のリーダ/ライタ装置と、第二の非接触通信手段との通信、3)リーダ/ライタ手段と、第二の非接触通信手段との通信、のいずれの場合においても安定した通信を実現することができる。
【0010】
また、本発明に係る通信方法によれば、外部の非接触IC媒体との通信と、内部の非接触通信手段との通信が、外部の非接触IC媒体の通信の有無によって、自動的に通信方法を選択し、表示装置に情報を表示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る非接触通信媒体の実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係る非接触通信媒体の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る非接触通信媒体の各構成要素の配置の構成例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る非接触通信媒体を用いた通信方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る非接触通信媒体を用いた通信方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る非接触通信媒体を用いた通信方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る非接触通信媒体の外部構成を示す模式図である。本発明の非接触通信媒体は、少なくとも表示装置101と、電源スイッチを含む操作部102を備えている。図1では、一般的なICカードとしての利用を想定し、カード型の非接触通信媒体を例として示しているが、これに限られない。
【0013】
図2は、本発明に係る非接触通信媒体の内部構成を示すブロック図である。表示装置101は、表示装置に表示情報を入力するために演算処理装置(CPU)に接続されている。さらに演算処理装置には、非接触IC媒体(ICカード等)に対するリーダ/ライタとして信号を制御し、発信するためのIC1が接続されている。また、電源スイッチを含む操作部102(CTL)や、CPUの電力源を備える。図2では、電力源として電池(Bat.)を図示している。さらに図示していないが、これ以外にも、CPU側の発信器や、CPUを初期化するための初期化回路を備えていても良い。
【0014】
IC1には、発信器(OSC)と、電磁波を送受信するためのアンテナ201(第一のアンテナ)が接続されている(リーダ/ライタ手段203)。さらに本発明の非接触通信媒体は、別のアンテナ202(第二のアンテナ)を備え、第二のアンテナはIC2に接続されている(非接触通信手段204)。図2のアンテナ201及びアンテナ202を貫く点線は、第一のアンテナ及び第二のアンテナによって通信が可能であることを示す。すなわち、IC1、第一のアンテナ、発信器を含むリーダ/ライタ手段203によって、IC2と第二のアンテナとを含む非接触通信手段の読み取りあるいは書き込みが可能である。なお非接触通信手段は、一般的な非接触ICカードと同様に、無電源で情報の送受信が可能である。
【0015】
リーダ/ライタ手段203は、通信距離を少なくとも、長距離と短距離の2つのモードを備える。より具体的には、制御手段により、第一のアンテナ201によって信号を送受信するための搬送波の出力を、少なくとも高出力と低出力の2段階に制御可能とする。リーダ/ライタ手段の出力強度は演算処理装置からの制御信号により制御することができる。高出力の設定では、外部の非接触IC媒体(ICカード)と通信するために、少なくとも非接触通信媒体の厚みを超える距離での信号検出できる出力とする。より好ましくは非接触通信媒体表面から2cm以上の検出距離となるようにする。一方、低出力の設定では、高出力の設定よりも出力が小さく、かつ第二のアンテナ202と通信可能な出力強度とする。従って、カード形状の非接触通信媒体では、第一のアンテナ及び第二のアンテナがほぼ重なって配置されているので、非接触通信媒体の5mm程度の検出距離であればよい。低出力の場合の電磁波信号の検出領域が非接触通信媒体の厚み程度であれば、外部の電磁波信号により検出が不安定になることがない。このように、本発明の非接触通信媒体によればリーダ/ライタ手段203の通信距離を切り替える手段を持つので、外部の非接触IC媒体の読み取りと、内部の非接触通信手段204の読み取りのモードを切り替えることができる。
【0016】
さらに、リーダ/ライタ手段203及び非接触通信手段204には、それぞれリーダ/ライタ手段203の回路を開通/切断するためのスイッチ1及び非接触通信手段204の回路を開通/切断するためのスイッチ2を備えており、演算処理装置により制御される。外部の非接触IC媒体の読み取り、すなわちリーダ/ライタとして用いる際には、スイッチ1を開通し、スイッチ2を切断した状態として、第一のアンテナ201の搬送波に対して非接触通信手段204が機能しないようにする。このため第二のアンテナ202の反応によって、第一のアンテナによる外部信号の読み取りが不安定になることがない。
【0017】
また、外部のリーダ/ライタ装置と通信する場合、すなわち、本発明の非接触通信媒体を非接触IC媒体(ICカード)として用いる際には、スイッチ1を切断し、スイッチ2を開通した状態として、第二のアンテナ202での通信において第一のアンテナ201が機能しないようにする。前述のように、非接触通信手段204は無電源で情報の送受信が可能であるので、電源を切った状態で、スイッチ1を切断し、スイッチ2を開通した状態としておけば、通常の非接触ICカードとして用いることができる。
【0018】
またリーダ/ライタ手段203が非接触通信手段204と通信する際には、スイッチ1及びスイッチ2をそれぞれ開通した状態とする。前述のように、この場合には、リーダ/ライタ手段203の第一のアンテナ201によって送受信するための搬送波の出力を低出力にすることで、外部信号の検出により読み取りが不安定になることがない。
【0019】
以上のように、スイッチ1及びスイッチ2の切り替えと、リーダ/ライタ手段203の通信距離が切り替えにより、1)外部の非接触IC媒体と、リーダ/ライタ手段203との通信、2)外部のリーダ/ライタ装置と、非接触通信手段204との通信、3)リーダ/ライタ手段203と、非接触通信手段204との通信との通信、のいずれの場合においても安定した通信を実現することができる。本発明の非接触通信媒体では、演算処理装置が、スイッチ1及びスイッチ2の切り替えと、リーダ/ライタ手段203の通信距離が切り替えとを制御する制御手段を備えることで、上記3つの通信モードの切り替えが電気的に可能となる。
【0020】
また、自己の情報を記録した非接触通信手段204と、リーダ/ライタ手段203とを分けて設け、情報通信媒体内で2つのアンテナを介してのみ非接触通信手段204のIC2に記録されたデータにアクセスできるようにしたので、セキュリティ性の高いICチップをIC2に用いれば、自己の情報に対するセキュリティを高めることができる。
【0021】
次に本発明に係る非接触通信媒体の詳細な構成例について説明する。図3は、上述した本発明に係る非接触通信媒体の各構成要素の配置の構成例である。図3では、最上層に表示装置101と操作部102のスイッチ回路が配置されている。次に上から順に、非接触通信手段204の第二のアンテナ202を含む層、リーダ/ライタ手段203の第一のアンテナ201を含む層、演算処理装置を含む配線回路を形成した配線回路層301が配置されている。さらに下部に非接触通信手段204及び演算処理装置の電力源である電池302が設けられている。むろんこれらの積層順は目的に応じて変えることができる。
【0022】
本発明に用いる表示装置101としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、電気泳動式表示装置、一般的な表示装置を用いることができる。例えば強誘電液晶表示装置や電気泳動式表示装置であれば、画像切り替え時のみ電力を消費するので長時間の使用に向いている。一方、動的な画像を表示する場合には、液晶表示装置や有機EL表示装置が好ましい。
【0023】
リーダ/ライタ手段203としては、一般的なリーダ/ライタ装置に用いられるIC及び発信器を用いることができる。リーダ/ライタ手段のIC1は、情報読み取りできる通信規格は、タイプA、タイプB等の一つの規格に対応したものを用いても良いし、複数の規格を切り替えられるものを用いても良い。複数の規格に対応したものとしては、具体的にはNFC(Near Field Communication)が挙げられる。NFCは近距離無線通信規格であり、FeliCa(登録商標)、MIFARE(登録商標)等の複数の規格に対応している。通信用のアンテナ201は、できるだけ省スペース化するために、金属箔をパターニングしたエッチングアンテナや、エナメル線を用いた巻き線アンテナが好適である。リーダ/ライタ手段203の回路を開通/切断するためのスイッチ1としては、例えばアンテナの一部にスイッチング回路を形成して設けることができる。
【0024】
非接触通信手段204としては、一般的なICカードに用いられている非接触通信用インレットを用いることができる。これは、シート基材上に第二のアンテナ202及び第二のアンテナに接続されたIC2を備えたものである。IC2は、情報を記録するメモリ機能を有している。非接触通信手段の回路を開通/切断するためのスイッチ2としては、インレットのアンテナの一部にスイッチング回路を形成して設けることができる。
【0025】
リーダ/ライタ手段203のアンテナ201は、読み取り距離を大きくするために、非接触通信手段204のアンテナ201は非接触通信媒体の形状に合わせてアンテナループを形成することが好ましい。配置の層方向平面視でアンテナ201ループ内に、非接触通信手段204のアンテナ202が配置される。
【0026】
配線回路層301には、演算処理装置の他に、表示装置101とのコネクタや、リーダ/ライタ手段203のIC、電源制御回路等が形成される。また同じ基材上に、アンテナ201や、アンテナ202を形成しても良い。
【0027】
演算処理装置として用いられるICは、表示装置101、リーダ/ライタ手段203のIC1、スイッチ1、スイッチ2に電気的に接続されている。さらに、電源(電源制御回路)、操作部102のスイッチ等に電気的に接続されている。また、接続回路には、中継回路(IC)を備えていても良く、例えばIC1と演算処理装置間のUART (Universal Asynchronous Receiver Transmitter)等を含む。
【0028】
操作部102の回路には、少なくとも電源をON/OFFするためのスイッチを含む。また、非接触通信媒体の使用様態よっては、モード選択・決定のための信号回路や、表示画面のスクロールのための信号回路を備えていても良い。
【0029】
電池302は、一次電池、二次電池のいずれでも良い。あるいは太陽電池等の化学電池以外の蓄電手段を電力源に用いても良い。
【0030】
これらの構成要素は、回路上それぞれ個々に設けられていても良いし、所定の複数構成要素をパッケージ化してあっても良い。また、各層の間に他の構成要素を加えても良い。例えば、表示装置と、隣接する層(第一のアンテナ201が)の間に、電磁波ノイズ低減のための磁気シートを加えることができる。
【0031】
次に、本発明の表示機能付き非接触通信媒体を用いた通信方法を示すために、図4〜6のフローチャートを参照しつつ、本発明の通信方法の処理ステップを説明する。以下の処理は演算処理装置に格納された通信プログラムにより制御される。
【0032】
まず通信を開始する前の段階では、リーダ/ライタ手段203のスイッチ1を切断し、非接触通信手段204のスイッチ2を開通した状態とする。これにより、非接触通信手段204が機能するため、通常の非接触ICカードとして用いることができる。
【0033】
通信モード(S1)は、電源を入れた瞬間に通信モードとなるようにしても良いし、電源を入れた後に、通信モードを選択することにより、実行されるようにしても良い。本発明の様態によれば、通信モードが開始されると、まず外部の非接触IC媒体との通信を試みる、「外部非接触IC媒体通信モード」が自動的に開始される。リーダ/ライタ手段203のスイッチ1を開通(ON)し(S2)、非接触通信手段204のスイッチ2を切断(OFF)する(S3)。S2及びS3のステップは、同時に行っても良いし、S3、S2の順に実行しても良い。次に、リーダ/ライタ手段を長距離検出に設定する(S4)。すなわち、第一のアンテナにより出力される通信搬送波を高出力として、外部の非接触IC媒体を検出できるようにする。S2〜S4のステップにより、外部の非接触IC媒体の読み取りが可能になる。
【0034】
次に、外部の非接触IC媒体の通信規格を検出する(S5〜12)。図4では、リーダ/ライタ手段203に複数の規格に対応したICを用いて、通信規格1〜3の非接触IC媒体を検出する場合のステップを示す。演算処理装置は、リーダ/ライタ手段203のIC1に、通信規格1の通信の検出を指示する検出コマンドを送る(S5)。演算処理装置は、IC1からの応答により通信規格1による通信が検出できたか否かを判断し(S6)、検出できた場合には、データをやりとりするための指示(データ通信コマンド)を送る(S7)。検出されなかった場合には、次に通信規格2の通信の検出を指示する検出コマンドを送る(S8)。後は通信規格1と同様のステップにより、通信規格2あるいは通信規格3の通信の検出を行う(S9〜S12)。一通りすべての通信規格についての検出確認を終えた後、通信精度を上げるために、複数回、S5〜S12の非接触IC媒体の検出ステップを繰り返すことが好ましい。具体的には、通信プログラムに検出ステップの繰り返し回数nを設定しておき、n回の検出ステップを繰り返しているかどうかを判断し、n回に達していない場合には、S5〜S12を繰り返すよう再帰させる(S13)。このステップにより、非接触IC媒体と通信可能な場合には、データ通信が開始され、非接触IC媒体と通信ができないか、信号が検出されなかった場合には、非接触通信手段204との通信を実行するステップに移行する(「内部データ通信モード」)。
【0035】
図5は「内部データ通信モード」に移行した後の通信処理ステップを示すフローチャートである。「外部非接触IC媒体通信モード」で通信が確立されない場合、引き続き、「内部データ通信モード」が実行される。「内部データ通信モード」を開始すると、非接触通信手段204のスイッチ2を開通(ON)する(S21)。リーダ/ライタ手段203のスイッチ1は引き続き開通している。次に、リーダ/ライタ手段を短距離検出に設定する(S22)。すなわち、第一のアンテナにより出力される通信搬送波を低出力として、外部の非接触IC媒体の信号を検出しにくくして、内部の非接触通信手段204との通信時のノイズを低減することができる。S21〜S23のステップにより、非接触通信手段の読み取りが可能になる。
【0036】
また、非接触通信手段204のIC2に通信個体を特定するための固有情報を格納するとともに、演算処理装置又はリーダ/ライタ手段のIC1側にも当該固有情報を記録するようにしても良い。リーダ/ライタ手段203との送受信時に固有情報に付加し、内部データ表示モード時には、当該固有情報に一致する通信を最優先するように設定しておくことで、外部の信号(ノイズ)と区別し、より安定した通信が可能になる。
【0037】
図4に示した「外部非接触IC媒体通信モード」、図5に示した「内部データ通信モード」のいずれかでデータ通信が確立すると、演算処理装置は格納された特定のプログラムに従って、所定のデータを読み取り、表示装置に表示データを出力する。表示データを出力するためのプログラムは、外部の非接触IC媒体のメモリに記録された情報から、交通機関の利用履歴や、電子マネーの残高等、特定の情報を自動的に選択して表示するようにしても良いし、使用者が表示装置上で操作して表示内容を選択するようなものであっても良い。
【0038】
図6は、通信モードを終了する際のステップを示す。演算処理装置から表示装置に表示データを出力され(S32)、情報が表示された後、演算処理装置の入力設定された終了条件に従って、通信を終了するか否かが判断される(S33)。終了条件は、例えば操作部102の電源ボタンの操作や、表示時間が設定された時間を経過したときに、終了条件を満たすものとしても良い。終了条件を満たすと、リーダ/ライタ手段203のスイッチ1を切断(OFF)し(S34)、非接触通信手段204のスイッチ2を開通(ON)する(S35)。「内部データ通信モード」から切断する場合には、既にスイッチ2は開通しているので、このステップは省略することができる。
【0039】
以上のように、本発明に係る通信方法によれば、外部の非接触IC媒体との通信と、内部の非接触通信手段との通信が、外部の非接触IC媒体の通信の有無によって、自動的に通信方法を選択し、情報を表示することが可能になる。
【符号の説明】
【0040】
100・・・表示機能付き非接触通信媒体
101・・・表示装置
102・・・操作部
201・・・第一のアンテナ
202・・・第二のアンテナ
203・・・リーダ/ライタ手段
204・・・非接触通信手段
301・・・配線回路層
302・・・電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と、
前記表示装置に接続された演算処理装置と、
前記演算処理装置に接続された、通信距離を制御可能な第一の非接触通信手段と、
前記非接触通信手段と、非接触通信可能に配置された第二の非接触通信手段と、
前記第一の非接触通信手段の通信機能の開通及び切断する第一のスイッチと、
前記第二の非接触通信手段の通信機能の開通及び切断する第二のスイッチと、
を備え、
前記第一のスイッチ及び第二のスイッチは、前記演算処理装置に接続されていることを非接触通信媒体。
【請求項2】
前記第一の非接触通信手段は、発信器と、第一のアンテナとが接続されたICを備え、
前記第二の非接触通信手段は、第二のアンテナが接続されたICを備え、
前記第一のアンテナに前記第一のスイッチが設けられ、
前記第二のアンテナに前記第二のスイッチが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の非接触通信媒体。
【請求項3】
前記第一の非接触通信手段は、信号を送受信するための搬送波の出力が、少なくとも高出力と低出力の2段階に制御可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触通信媒体。
【請求項4】
前記第一のスイッチ及び/又は前記第二のスイッチの開閉と、前記第一の非接触通信手段の通信距離を制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、
前記第一のスイッチを切断され、前記第二のスイッチを開通する状態と、
前記第一のスイッチを開通され、前記第二のスイッチを切断されているとともに、前記第一の非接触通信手段の搬送波の出力を高出力にする状態と、
前記第一のスイッチを開通され、前記第二のスイッチを開通されているとともに、前記第一の非接触通信手段の搬送波の出力を低出力にした状態と、
を切り替える機能を有することを特徴とする請求項3に記載の非接触通信媒体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の非接触通信媒体を用いた通信方法であって、
前記第一のスイッチを開通し、第二のスイッチを切断するステップと、
第一の非接触通信手段の通信距離を長距離に設定するステップと、
外部の非接触IC媒体の信号を検出し、通信を確立するステップと、
通信された情報を表示装置に出力するステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項6】
請求項5に記載の通信方法であって、
前記外部の非接触IC媒体の信号を検出し、通信を確立するステップは、
第一の通信規格の信号検出を行い、検出された場合は第一の通信規格で非接触IC媒体との通信を確立し、前記非接触IC媒体の信号が検出されなかった場合は第二の通信規格の信号検出を行うステップ、を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の通信方法であって、
前記外部の非接触IC媒体の信号を検出し、通信を確立するステップにおいて通信が確立されなかった場合に、
前記第二のスイッチを開通するステップと、
第一の非接触通信手段の通信距離を短距離に設定するステップと、
前記第二の非接触通信手段の信号を検出し、通信を確立するステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の通信方法であって、
演算処理装置に記録された終了条件を満たした場合に、
前記第一のスイッチを切断し、第二のスイッチを開通した状態にするステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−79249(P2012−79249A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226295(P2010−226295)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】