説明

表示装置、表示装置の制御方法、及び、プログラム

【課題】先に表示していた画像の一部と、その後に表示する画像の一部とを同時に表示可能とし、表示位置等の表示態様を高い自由度で自在に調整できる表示装置、表示装置の制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】入力画像を表示するプロジェクター11は、スクリーンSCに投射中の第1の入力画像に対して、投射を続ける維持領域が指定された場合に、投射中の第1の入力画像全体を記憶し、記憶した画像から維持領域を抽出し、抽出した維持領域を第1の入力画像より後に入力された第2の入力画像に重畳して重畳画像を生成し、生成した重畳画像をスクリーンSCに投射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示する表示装置、表示装置の制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示領域を複数に分割して異なる複数の画像を表示する態様で表示を行う表示装置が知られていた。この種の装置の典型的な例としては、複数の入力画像を並べて表示する、いわゆる2画面表示が知られている。しかしながら、2画面表示は、複数の入力系統から同時に入力される複数の画像を同時に表示するものであり、例えば、過去に表示していた画像とその後に表示される画像の一部とを同時に表示することはできないし、複数の入力系統から画像が入力されていることが必要である。そこで、1つの入力系統を用いる場合であっても、複数の画像を同時に表示可能とする装置が提案された(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の表示装置は、入力された画像の一部について書き換えを禁止して保持領域とし、他の部分は入力画像に応じて書き換える書換領域とし、この保持領域と書換領域とを用いて一画像分の画像データを形成することで、先に表示していた画像の一部と、その後に表示する画像の一部とを同時に表示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−75504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の画像を同時に表示する場合、特許文献1記載の装置のように、画像の一部を保持したまま他の部分を書き換える態様だけでなく、例えば表示を更新しない部分を移動させる、多数の画像を同時に表示するなど、表示態様の自由度を高めることが望まれる。しかしながら、特許文献1記載の装置では保持領域は書き換えが禁止されるため、自由度を高めるには限界があった。
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、先に表示していた画像の一部と、その後に表示する画像の一部とを同時に表示可能とし、表示位置等の表示態様を高い自由度で自在に調整できる表示装置、表示装置の制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、入力画像を表示する表示装置であって、前記入力画像を表示する表示手段と、前記表示手段により表示されている第1の入力画像に対して、表示を続ける維持領域を指定する指示手段と、前記指示手段により前記第1の入力画像の前記維持領域が指定された場合に、表示中の前記第1の入力画像全体を記憶する画像記憶手段と、前記画像記憶手段に記憶された前記第1の入力画像から前記指示手段により指定された前記維持領域を抽出し、抽出した前記維持領域を前記第1の入力画像より後に入力された第2の入力画像に重畳して重畳画像を生成する重畳処理手段と、前記重畳処理手段により生成された前記重畳画像を前記表示手段により表示させる表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、表示されている第1の入力画像に対して維持領域が指定されると、この第1の入力画像全体を記憶するとともに、記憶した第1の入力画像から指定された維持領域を抽出して、その後に入力される第2の入力画像に重畳して表示するので、第2の入力画像と、それ以前に表示されていた第1の入力画像の一部とを同時に表示できる。また、維持領域が指定された場合に画像全体を記憶するので、記憶した第1の入力画像において、指定された維持領域以外の部分を後から処理することも容易であり、例えば維持領域を変更することも可能である。これにより、入力画像と、その後に表示する入力画像とを同時に表示することができ、表示位置等の表示態様を高い自由度で自在に調整できる。
【0006】
また、本発明は、上記表示装置において、前記重畳処理手段は、前記画像記憶手段に記憶された前記第1の入力画像から抽出した前記維持領域を、前記指示手段により指定されたときと同じ位置に配置して、前記第2の入力画像に重畳することを特徴とする。
本発明によれば、維持領域として指定された領域の画像を、指定されたときと同じ位置に配置して第2の入力画像に重畳して表示するので、維持領域を指定したユーザーの意図に沿った画像を表示できる。
【0007】
また、本発明は、上記表示装置において、前記画像記憶手段に記憶された前記第1の入力画像毎に、前記指示手段により指定された前記維持領域の位置を示す維持領域情報を記憶する維持領域情報記憶手段を備え、前記重畳処理手段は、前記維持領域情報記憶手段に記憶された前記維持領域情報に基づいて、前記画像記憶手段に記憶された前記第1の入力画像から前記維持領域を抽出することを特徴とする。
本発明によれば、維持領域が指定された場合に表示されていた第1の入力画像において、維持領域の位置を容易に特定して抽出することが可能である。また、維持領域情報を変更することにより、記憶した第1の入力画像から当初は維持領域として指定されなかった領域を維持領域として抽出することも可能であり、より高い自由度で表示態様を調整できる。
【0008】
また、本発明は、上記表示装置において、前記指示手段は、前記表示手段により前記重畳画像の表示中に、前記維持領域の位置変更を指示可能に構成され、前記重畳処理手段は、前記指示手段により前記維持領域の位置変更が指示された場合に、前記指示手段の指示に従って前記維持領域の位置を変更して新たに前記重畳画像を生成することを特徴とする。
本発明によれば、入力画像に重畳された維持領域の位置を変更することができるので、例えば、維持領域により隠れてしまう部分を視認できるように、表示態様を自由に調整できる。
【0009】
また、本発明は、上記表示装置において、前記画像記憶手段は複数の前記第1の入力画像を記憶可能に構成され、前記重畳処理手段は、前記画像記憶手段に記憶された複数の前記第1の入力画像から、前記指示手段により指定された前記維持領域をそれぞれ抽出し、抽出した複数の前記維持領域を前記第2の入力画像に重畳して前記重畳画像を生成することを特徴とする。
本発明によれば、複数の第1の入力画像から抽出した複数の維持領域を、第2の入力画像に重畳して表示できる。また、複数の第1の入力画像の各々について画像全体を記憶するので、各画像において維持領域を変更する等の細かい調整が可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記表示装置において、前記重畳処理手段は、前記画像記憶手段に記憶された複数の前記画像から抽出した複数の前記維持領域を、互いに重ならないように配置して前記入力画像に重畳して、前記重畳画像を生成することを特徴とする。
本発明によれば、複数の維持領域を、各々の視認性を損なわないように配置して表示できる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、入力画像を表示する表示装置の制御方法であって、表示中の第1の入力画像に対して、表示を続ける維持領域が指定された場合に、表示中の前記第1の入力画像全体を記憶し、記憶した前記第1の入力画像から前記維持領域を抽出し、抽出した前記維持領域を前記第1の入力画像より後に入力された第2の入力画像に重畳して重畳画像を生成し、生成した前記重畳画像を前記表示手段により表示することを特徴とする。
本発明の制御方法を実行することにより、表示装置によって表示されている第1の入力画像に対して維持領域が指定されると、この第1の入力画像全体を記憶するとともに、記憶した第1の入力画像から指定された維持領域を抽出して、その後に入力される第2の入力画像に重畳して表示するので、第2の入力画像と、それ以前に表示されていた第1の入力画像の一部とを同時に表示できる。また、維持領域が指定された場合に第1の入力画像全体を記憶するので、記憶した第1の入力画像において指定された維持領域以外の部分を後から処理することも容易であり、例えば維持領域を変更することも可能である。これにより、入力画像と、その後に表示する入力画像とを同時に表示することができ、表示位置等の表示態様を高い自由度で自在に調整できる。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明は、入力画像を表示する表示装置を制御するコンピューターが実行可能なプログラムであって、前記コンピューターを、表示中の第1の入力画像に対して、表示を続ける維持領域が指定された場合に、表示中の前記第1の入力画像全体を画像記憶手段に記憶させ、前記画像記憶手段に記憶された前記第1の入力画像から前記指示手段により指定された前記維持領域を抽出し、抽出した前記維持領域を前記第1の入力画像より後に入力された第2の入力画像に重畳して重畳画像を生成する重畳処理手段と、前記重畳処理手段により生成された前記重畳画像を前記表示手段により表示させる表示制御手段として機能させることを特徴とする。
本発明のプログラムを実行することにより、表示装置によって表示されている第1の入力画像に対して維持領域が指定されると、この第1の入力画像全体を記憶するとともに、記憶した第1の入力画像から指定された維持領域を抽出して、その後に入力される第2の入力画像に重畳して表示するので、第2の入力画像と、それ以前に表示されていた第1の入力画像の一部とを同時に表示できる。また、維持領域が指定された場合に第1の入力画像全体を記憶するので、記憶した第1の入力画像において指定された維持領域以外の部分を後から処理することも容易であり、例えば維持領域を変更することも可能である。これにより、入力画像と、その後に表示する入力画像とを同時に表示することができ、表示位置等の表示態様を高い自由度で自在に調整できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入力画像と、その後に表示する入力画像とを同時に表示することができ、表示位置等の表示態様を高い自由度で自在に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した実施形態に係る表示システムの概略構成を示す図である。
【図2】表示システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】投射中の画面において維持領域を指示する動作の例を示す図であり、(A)はスクリーンに投射された投射画像の例を示し、(B)はスクリーン上の投射画像にポインターが表示されて維持領域の指示が開始された状態を示し、(C)は維持領域の指示が完了した状態を示す。
【図4】重畳画像を表示する動作の例を示す図であり、(A)はPCのモニターに表示された画面を示し、(B)はPCからプロジェクターに入力される入力画像の例を示し、(C)はスクリーンに重畳画像が投射された状態を示す。
【図5】重畳画像において維持領域を移動させる動作の例を示す図であり、(A)は移動前の状態を示し、(B)は移動後の状態を示す。
【図6】複数の維持領域を重畳して重畳画像を表示する動作の例を示す図であり、(A)は投射画像において維持領域が指示される状態を示し、(B)は入力画像の例を示し、(C)は2つの維持領域が重畳された重畳画像がスクリーンに投射された状態を示す。
【図7】プロジェクターの動作を示すフローチャートである。
【図8】維持領域が変更される場合の画面の遷移例を示す図であり、(A)は変更前、(B)は変更後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した表示装置としてのプロジェクター11と、プロジェクター11に画像を供給する画像供給装置としてのPC(Personal Computer)13とを接続して構成される表示システム10の概略構成を示す図である。
PC13は、オペレーティングシステム上で、文書編集ソフトや表計算ソフト等のアプリケーションプログラムを実行し、文書データ等を処理する。PC13は、液晶ディスプレイ等のモニター14を備え、このモニター14に、実行中のプログラムに係る各種画像を表示する。また、PC13はプロジェクター11に映像信号用ケーブル等を介して接続され、モニター14に表示している画像と同じ画像を表示するための画像データを、プロジェクター11に出力する。
なお、入力画像をプロジェクター11に供給する画像供給装置としては、PC13の他に、ビデオ再生装置、DVD再生装置、テレビチューナー装置、CATVのセットトップボックス、ビデオゲーム装置等の映像出力装置、パーソナルコンピューター等が挙げられる。本実施形態ではあくまで一例としてPC13を用いる場合を説明する。
【0016】
プロジェクター11は、PC13等の外部の画像供給装置から入力される画像データまたは画像信号に基づいて、スクリーンSCに画像を投射する。図1の例では、PC13の制御によってモニター14に表示された画面201と同じ内容の投射画像211が、スクリーンSC上に投射されている。この図1に例示する画面201は文書編集ソフトの作業用の画面であり、編集中の文書が表示されており、スクリーンSCにも同一の文書が同態様で表示されている。
スクリーンSCはほぼ直立しており、スクリーン面は矩形形状とされている。プロジェクター11に入力される画像は動画像(映像)と静止画像とのどちらでもよく、プロジェクター11は映像をスクリーンSCに投射することも、静止画像をスクリーンSCに投射し続けることも可能である。
また、表示システム10は、プロジェクター11を操作する操作デバイスとして、リモコン5を備えている。リモコン5は、プロジェクター11を操作するユーザーが使用する装置であり、プロジェクター11との間で赤外線信号や各種無線信号を送受信して、プロジェクター11に対する指示を行うことができる。
【0017】
図2は、表示システム10の機能的構成を示すブロック図である。
この図2に示すように、プロジェクター11は、外部の装置に接続されるI/F(インターフェース)101を備え、このI/F101にPC13が接続されている。例えば、I/F101は、USBインターフェース、有線または無線LANインターフェース、アナログ映像信号が入力されるVGA端子、デジタル映像信号が入力されるDVI(Digital Visual Interface)、NTSC、PAL、SECAM等のコンポジット映像信号が入力されるS映像端子、コンポジット映像信号が入力されるRCA端子、コンポーネント映像信号が入力されるD端子、HDMI(登録商標)規格に準拠したHDMIコネクター等を備え、上記の端子やコネクターを介して信号を入出力するインターフェース回路を備えていてもよい。
【0018】
図2に示すように、プロジェクター11は、大きく分けて光学的な画像の形成を行う投射部3(表示手段)と、この投射部3に入力される映像信号を電気的に処理する画像処理系とからなる。投射部3は、照明光学系31、光変調装置としての液晶パネル32、及び投射光学系33から構成されている。照明光学系31は、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、LED(Light Emitting Diode)等からなる光源を備えている。また、照明光学系31は、光源が発した光を液晶パネル32に導くリフレクター及び補助リフレクターを備えていてもよく、投射光の光学特性を高めるためのレンズ群(図示略)、偏光板、或いは光源が発した光の光量を液晶パネル32に至る経路上で低減させる調光素子等を備えたものであってもよい。
液晶パネル32は、後述する画像処理系からの信号を受けて、パネル面に画像を形成する。液晶パネル32は、カラーの投影を行うため、RGBの三原色に対応した3枚の液晶パネルからなる。そのため、照明光学系31からの光はRGBの3色の色光に分離され、各色光は対応する各液晶パネルに入射する。各液晶パネルを通過して変調された色光はクロスダイクロイックプリズム等の合成光学系によって合成され、投射光学系33に射出される。
【0019】
投射光学系33は、投射する画像の拡大・縮小および焦点の調整を行うズームレンズ、ズームの度合いを調整するズーム調整用モーター、フォーカスの調整を行うフォーカス調整用モーター等を備えている。投射光学系33は、液晶パネル32で変調された入射光を、ズームレンズを用いてスクリーンSC上に投射し、結像させる。
投射部3には、制御部103の制御に従って投射光学系33が備える各モーターを駆動する投射光学系駆動部121、及び、制御部103の制御に従って照明光学系31が備える光源を駆動する光源駆動部117が接続されている。
【0020】
画像処理系は、プロジェクター11全体を統合的に制御する制御部103を中心に構成され、制御部103が処理するデータや制御部103が実行する制御プログラム105Aを記憶した記憶部105、操作パネル45及びリモコン受光部41を介した操作を検出する入力処理部123、入力映像を処理する画像入力部107、及び、画像入力部107から出力される映像信号に基づいて液晶パネル32を駆動して描画を行う光変調装置駆動部119を備えている。
【0021】
制御部103は、記憶部105に記憶された制御プログラム105Aを読み出して実行することにより、プロジェクター11の各部を制御する。制御部103は、入力処理部123から入力される操作信号に基づいて、ユーザーが行った操作の内容を検出し、この操作に応じて画像入力部107、光変調装置駆動部119、投射光学系駆動部121及び光源駆動部117を制御して、投射部3によりスクリーンSCに映像を投射させる。
【0022】
プロジェクター11の本体には、ユーザーが操作を行うための各種スイッチ及びインジケーターランプを備えた操作パネル45が配置されている。操作パネル45は入力処理部123に接続されており、入力処理部123は、制御部103の制御に従い、プロジェクター11の動作状態や設定状態に応じて操作パネル45のインジケーターランプを適宜点灯或いは点滅させる。この操作パネル45のスイッチが操作されると、操作されたスイッチに対応する操作信号が入力処理部123から制御部103に出力される。
また、プロジェクター11は、上述のようにリモコン5を有する。リモコン5は、図2に示すように、プロジェクター11の電源オン/オフを指示する電源スイッチ51、及び、メニュー画面の表示や一時停止等を指示する各種の操作子を備えた操作ボタン部52を有し、操作ボタン部52には、表示中の画像の一部を維持領域として指定するための機能である「PFreeze」の実行を指示するボタン53と、上下左右の方向を指示するポインティングデバイスとしての方向指示キー54とが設けられている。ボタン53が操作されると、プロジェクター11は、後述するように維持領域を指示する動作を実行する。また、その後の維持領域を指定するための操作を方向指示キー54により行うことができ、方向指示キー54の中央には操作内容を確定するための決定キー54Aが配置されている。
【0023】
リモコン5は、電源スイッチ51や操作ボタン部52の各操作子が操作されると、操作された操作子に対応する赤外線信号を送信する。プロジェクター11の本体に設けられたリモコン受光部41は、リモコン5から受光した赤外線信号を受光し、デコードして、リモコン5における操作内容を示す操作信号を生成し、制御部103に出力する。なお、リモコン5とリモコン受光部41とは、赤外線信号に限らず、他の近距離無線通信方式を用いて操作信号を送受信する構成としてもよい。また、操作パネル45は、リモコン5と同等の操作子を備えた構成としてもよい。
【0024】
I/F101には、I/F101を介して入力された画像信号または画像データを取得し、アナログ画像信号かデジタル画像データかの判別、デジタル画像データのデータフォーマットの識別等を行い、後段の画像処理部109に画像データとして出力する画像入力部107が接続されている。
画像入力部107は、外部の画像供給装置からアナログ画像信号が入力された場合に、このアナログ入力信号をA/D変換してデジタル信号を出力する機能や、PC13からの入力映像を、液晶パネル32の仕様に適合した、連続する複数のフレームからなる映像フレームに変換して出力する機能を備えている。
【0025】
画像処理部109は、画像入力部107から入力される画像データに基づき、投射部3が投射する1画面分のデータをメモリー115に格納し、この1画面分のデータに基づいて表示用の画像データを生成して、光変調装置駆動部119に出力する。光変調装置駆動部119は、画像処理部109から入力される表示用の画像データに基づいて液晶パネル32を駆動し、液晶パネル32に画像を描画する。この液晶パネル32に描画された画像が投射光学系33を介して、スクリーンSC上に投射画像として投射される。
PC13からI/F101に入力される画像は、画像入力部107の機能により、静止画像であっても動画像であっても数十フレーム/秒のフレームからなる画像データとして画像処理部109に入力される。画像処理部109は、入力される画像データをフレーム毎にメモリー115に展開し、この画像を表示するためのデータをフレーム毎に生成して光変調装置駆動部119に出力する。
【0026】
また、重畳処理部109Aは、後述する重畳制御部103Cの制御に従って、フレーム記憶部115Cからフレームのデータを取得し、このフレームのデータから指定された領域を抽出し、抽出した領域を、入力画像のフレームに重畳して、1つの画面に相当するフレームのデータを合成する処理を行う。
画像出力部109Bは、画像入力部107から入力される入力画像または重畳処理部109Aが生成した重畳画像について、液晶パネル32の表示解像度及びリフレッシュレートに適合するデータに変換して、光変調装置駆動部119に出力する。
【0027】
メモリー115は、画像データ等の各種データを一時的に展開し、記憶するメモリーであって、上述した1画面分のデータを記憶する領域の他、維持領域情報記憶部115A、重畳画像記憶部115B、及びフレーム記憶部115Cを備えている。これらはメモリー115の記憶領域を仮想的、論理的に区分して設けたものであってもよく、実際にメモリー115を複数の領域に分割して、それぞれ維持領域情報記憶部115A、重畳画像記憶部115B、及びフレーム記憶部115Cとして割り当ててもよい。
【0028】
また、プロジェクター11は、制御部103の制御により画像処理部109が処理を実行し、I/F101を介して入力された入力画像を記憶して、この画像の一部を、後から入力されて表示される画像に重畳して表示する重畳表示機能を備えている。
この重畳表示機能では、最初に、プロジェクター11がスクリーンSCに投射(表示)中の画像に対し、重畳表示する領域(以下、維持領域という)を指定する操作が行われる。プロジェクター11は、指定された維持領域を検出するとともに、維持領域が指定された際に投射されていたフレームのデータを記憶する。そして、その後に表示するフレームに、維持領域を重ねて重畳画像を生成し、この重畳画像を投射部3によりスクリーンSCに投射する。
【0029】
この機能に関して、制御部103は、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を用いた操作を実現するためのGUI制御部103A、GUI制御部103Aが実現するGUIの操作によって指示される維持領域の取得および維持領域情報の記憶を制御する維持領域制御部103B、及び、維持領域の画像を入力画像に重畳する処理を制御する重畳制御部103Cを有する。GUI制御部103Aは、リモコン5及び操作パネル45を指示手段として機能させる。また、重畳制御部103Cは、重畳処理部109Aとともに重畳処理手段として機能するとともに、光変調装置駆動部119及び投射部3を制御して表示制御手段として機能する。
GUI制御部103Aは、画像処理部109が光変調装置駆動部119に出力したデータに基づいて、投射部3がスクリーンSCに投射している画像に対するGUI操作を検出する。
【0030】
図3は、投射中の画面において維持領域を指示する動作の例を示す図であり、(A)はスクリーン上の投射画像の例を示し、(B)はスクリーン上の投射画像にポインターが表示されて維持領域の指示が開始された状態を示し、(C)は維持領域の指示が完了した状態を示す。
図3(A)には、PC13から入力される入力画像に基づいてスクリーンSCに投射画像211を投射した状態を示す。図3に示す投射画像211(第1の入力画像)は、図1に示した例と同様に、文書編集ソフトを実行するPC13から入力される入力画像であって、編集中の文書がオブジェクト212として表示されている。
【0031】
ここで、リモコン5のボタン53が操作されると、制御部103のGUI制御部103Aが、スクリーンSC上の投射画像に対するGUI操作を実現する。すなわち、図3(B)に示すように、投射画像211に重ねてポインター221を投射させる。このポインター221は、GUI制御部103Aの制御によって、重畳処理部109Aが表示用の画像データに予め用意されたポインター用の画像を合成することで投射(表示)される。重畳処理部109Aは、必要に応じて、ポインター221の画像の拡大/縮小などの処理を行う。GUI制御部103Aは、投射画像211を構成するオブジェクト212やポインター221の投射画像211における位置、投射画像211の解像度、オブジェクト212やポインター221のスクリーンSC上での位置を保持している。
【0032】
図3(B)に示す状態から、維持領域を指定する操作が行われる。ここでは、操作ボタン部52の操作によって維持領域の指定開始が指示され、リモコン5が有する方向指示キー54が操作されると、方向指示キー54の操作に対応して、GUI制御部103Aがポインター221を移動させるとともに、移動開始位置を基準としてポインター221の現在位置に対応する領域222が描かれる。このようにポインター221を移動させることで、図3(C)に示す矩形の領域222が選択される。
GUI制御部103Aは、領域222を特定する情報を検出し、維持領域制御部103Bが、この情報を維持領域情報として維持領域情報記憶部115Aに記憶する。維持領域情報は、領域222の解像度、縦方向及び横方向のサイズ(例えば、画素数)、投射画像211における位置等を示す情報を含んでいる。
また、維持領域制御部103Bは、領域222が指定された際に表示中であった投射画像211のフレームのデータをフレーム記憶部115Cに記憶させ、このフレームのデータと、維持領域情報記憶部115Aに記憶した維持領域情報とを対応付ける。
【0033】
ここでは、リモコン5の操作ボタン部52及び方向指示キー54の操作に従って、プロジェクター11がスクリーンSC上のポインター221を移動させるGUIにより、維持領域を指定する例について説明した。維持領域の指定の方法は特に限定されず、例えば、プロジェクター11がカメラ(撮像装置)を備え、このカメラにより撮影した撮影画像データに基づいて、ユーザーの操作により指定された維持領域の位置やサイズを検出してもよい。
【0034】
また、制御部103は、図3に示すように指定された維持領域を入力画像に重畳して重畳画像を表示する重畳制御部103Cを有する。
図4は、重畳画像を表示する動作の例を示す図であり、(A)はPC13のモニター14に表示された画面を示し、(B)はPC13からプロジェクターに入力される入力画像の例を示し、(C)はスクリーンに重畳画像が投射された状態を示す。
【0035】
例えばPC13が文書編集ソフトの画面を表示する状態から、表計算ソフトの画面を表示する動作に切り替わると、モニター14に表示される画像は、画面201(図1)から、図4(A)に示す画面202(第2の入力画像)に切り替わる。この画面202には、表計算ソフトに特有のオブジェクト203が表示されている。この場合、PC13からプロジェクター11には、図4(B)に示す画面202が入力される。
【0036】
ここで、制御部103の重畳制御部103Cは、画像処理部109の重畳処理部109Aを制御して、図3(A)〜(C)に示した手順で指定された維持領域を、画面202に重畳する処理を行う。この処理で、重畳制御部103Cは、維持領域情報記憶部115Aに記憶した維持領域情報を取得する。そして、重畳制御部103Cの制御に従って、重畳処理部109Aが、維持領域情報に対応するフレーム(画像全体)のデータをフレーム記憶部115Cから取得し、維持領域の画像データを抽出する。
重畳処理部109Aは、画像入力部107から入力された入力画像のフレームを取得し、このフレームに維持領域の画像データを重ねて合成し、一つのフレームの画像データとする。重畳処理部109Aは、生成した重畳画像を一時的に重畳画像記憶部115Bに展開して処理を行うことができ、画像出力部109Bは、重畳画像記憶部115Bに展開された画像データについて、液晶パネル32の表示解像度及びリフレッシュレートに適合するデータに変換して光変調装置駆動部119に出力し、投射部3によりスクリーンSCに投射させる。
【0037】
この投射画像は、図4(C)に示す重畳画像214のように、画面202に含まれていたオブジェクト215とともに、維持領域231が表示されている。維持領域231は、図3(C)において領域222で指定された領域である。
この重畳画像214では、表計算ソフトの計算結果等が表示されるオブジェクト215とともに、文書編集ソフトで処理されていた文書に係るオブジェクト212(図3(A))の一部が、維持領域231として表示されている。従って、一つの画面に複数のソフトウェアで処理されている複数の情報を表示できる。また、1つのPC13が過去に出力した画像に含まれる情報と、その後に出力した情報とを、入力系統の切り替え等を行うことなく同時に表示できる。また、重畳画像214では、維持領域231が、維持領域231が指定されたときにスクリーンSCに投射されていた投射画像211(図3(C))における維持領域231と同じ位置に配置されている。
【0038】
ところで、図4(C)に示す重畳画像214では、維持領域231がオブジェクト215に重なっており、オブジェクト215の内容の一部が隠れている。この場合、リモコン5の操作により、維持領域231を移動させることができる。
図5は重畳画像において維持領域を移動させる動作の例を示す図であり、(A)は移動前の状態を示し、(B)は移動後の状態を示す。図5(A)の移動前の状態は図4(C)と同様の状態である。この状態で、リモコン5の操作ボタン部52の操作により維持領域の移動操作を開始すると、その後の方向指示キー54の操作によって、維持領域231が移動される。この間、GUI制御部103Aは、方向指示キー54の操作量及び操作方向を取得し、取得した情報に基づいて、重畳処理部109Aを制御する。重畳処理部109Aは、フレーム記憶部115C内のフレームのデータから抽出した維持領域の位置を変更して、入力画像のフレームのデータと重ねて合成し、改めて重畳画像データを生成する。この画像を画像出力部109Bが光変調装置駆動部119に出力する。
このようにして維持領域231が移動された状態を図5(B)に示す。維持領域231の内容は図5(A)の移動前と変化していないが、移動後はオブジェクト215と維持領域231とが重ならず、いずれの内容も明りょうに視認できる。
【0039】
また、プロジェクター11は、複数の維持領域を入力画像に重畳して表示することも可能である。
図6は、複数の維持領域を重畳して重畳画像を表示する動作の例を示す図であり、(A)は投射画像において維持領域が指示される状態を示し、(B)は入力画像の例を示し、(C)は2つの維持領域が重畳された重畳画像がスクリーンに投射された状態を示す。
図6(A)には、図4(B)に示した画面202と同様、PC13が表計算ソフトの実行に係る画面の入力画像が入力された場合に、リモコン5の操作によって維持領域が指定される様子を示している。スクリーンSC上の投射画像217(第1の入力画像)には、表計算ソフトに係るオブジェクト218が表示されており、リモコン5によってポインター221が操作され、オブジェクト218の一部が領域224として指定されている。
【0040】
GUI制御部103Aは領域224を特定する情報を検出し、維持領域制御部103Bが、この情報を維持領域情報として維持領域情報記憶部115Aに記憶する。また、維持領域制御部103Bは、領域224が指定された際に表示中であった投射画像217のフレームのデータをフレーム記憶部115Cに記憶する。
その後、PC13からプロジェクター11に入力される入力画像が変化して、例えば図6(B)に示すように、画像オブジェクト206を含む画面205(第2の入力画像)になった場合、重畳制御部103Cは、この画面205のフレームのデータに、今まで指定された維持領域を重畳する処理を行う。
【0041】
重畳制御部103Cは、維持領域情報記憶部115Aに記憶された複数の維持領域情報をそれぞれ取得し、維持領域の位置やサイズを取得して、重畳処理部109Aを制御する。重畳処理部109Aは、フレーム記憶部115Cから、重畳制御部103Cが取得した複数の維持領域情報にそれぞれ対応する複数のフレームのデータを取得し、各フレームのデータから維持領域を抽出する。これにより複数の維持領域の画像が抽出される。重畳処理部109Aは、抽出した複数の維持領域の画像を、現在の入力画像である画面202のフレームのデータに重ねて合成し、重畳画像のデータを生成する。この重畳画像のデータは画像出力部109Bにより光変調装置駆動部119に出力され、このデータに基づく投射画像が、図6(C)に示すように投射部3によりスクリーンSCに投射される。
図6(C)の重畳画像219には、第2の入力画像である画面205に含まれていたオブジェクト206とともに、維持領域231及び維持領域232が表示されている。ここで、重畳制御部103Cは、複数の維持領域を重畳する場合に、各維持領域が互いに重ならないように調整する機能を有する。すなわち、重畳制御部103Cは、維持領域情報記憶部115Aから複数の維持領域情報を取得した際に、複数の維持領域の位置とサイズに基づいて重複の有無を判定し、維持領域の重複がある場合は、いずれかの維持領域の表示位置を変更する。この変更を一時的なものとする場合は、重畳制御部103Cは維持領域情報を更新しない。また、複数の維持領域が重ならないよう調整した状態を保持する場合には、重畳制御部103Cは調整後の表示位置に基づいて、維持領域情報記憶部115Aに記憶されている維持領域情報を更新する。
【0042】
以上のプロジェクター11の動作を、フローチャートを参照して説明する。
図7は、プロジェクター11の動作を示すフローチャートである。
プロジェクター11の制御部103は、リモコン5または操作パネル45の操作に応じて、画像入力部107及び画像処理部109を制御して画像の投射を開始する(ステップS11)。制御部103は、リモコン5による維持領域を指定する操作が行われない間は(ステップS12;No)、通常の画像の投射を実行する。リモコン5による維持領域を指定する操作が行われると(ステップS12;Yes)、GUI制御部103Aは、リモコン5の操作に対応して維持領域の指定に必要なGUIの処理を実行し、指定された維持領域の情報を取得し、維持領域制御部103Bは、維持領域情報を生成して維持領域情報記憶部115Aに記憶させる(ステップS13)。
続いて、維持領域制御部103Bは、維持領域が指定される間に表示中であったフレームのデータを取得して、フレーム記憶部115Cに記憶させる(ステップS14)。
【0043】
その後、制御部103は維持領域の表示を開始し(ステップS15)、重畳制御部103Cが、維持領域情報記憶部115Aから維持領域情報を取得する(ステップS16)。重畳制御部103Cは、取得した維持領域情報が複数ある場合に、各維持領域が互いに重ならないように配置を調整する(ステップS17)。なお、各維持領域の表示位置を調整後の状態に固定する場合には、重畳制御部103CはステップS17で、維持領域情報を更新して維持領域情報記憶部115Aに記憶させる処理を行う。
続いて、重畳制御部103Cの制御のもと、重畳処理部109Aはフレーム記憶部115Cからフレームのデータを取得し、各フレームのデータから維持領域を抽出する(ステップS19)。そして、重畳処理部109Aは、入力画像のフレーム維持領域を重畳して、1つのフレームとなるように合成し、重畳画像のデータを生成する(ステップS19)。
【0044】
ここで、重畳制御部103Cは、未処理の維持領域情報が維持領域情報記憶部115Aにあるか否かを判別し(ステップS20)、未処理の維持領域情報がある場合は(ステップS20;Yes)、ステップS16に戻る。また、未処理の維持領域情報がない場合は(ステップS20;No)、ステップS19で生成した重畳画像のフレームを投射部3によりスクリーンSCに投射する(ステップS21)。
【0045】
その後、制御部103は、リモコン5の操作によって、スクリーンSCに投射された重畳画像における維持領域の移動が指示されたか否かを判別し(ステップS22)、移動が指示されなければ(ステップS22;No)、重畳画像の投射を終了するか否かを判別する(ステップS23)。重畳画像の投射を継続する場合(ステップS23;No)、制御部103はステップS16に戻り、維持領域を、新たな入力画像に重畳して表示する処理を行う。ここで、制御部103は、入力画像のフレームが更新される周期に合わせて維持領域を重畳する処理を行うことが好ましい。すなわち、重畳画像の投射を開始した後は、入力画像の全てのフレームに維持領域が重畳されることが好ましい。このため、制御部103は、入力画像のフレームが更新される周期と同じタイミング、またはそれより速い周期でステップS16〜S21の処理を繰り返し実行する。
また、リモコン5の操作によって、スクリーンSCに投射された重畳画像における維持領域の移動が指示された場合(ステップS22;Yes)、GUI制御部103Aは維持領域の移動を指示する操作に基づいて移動後の維持領域の情報を取得し、維持領域制御部103Bは取得した情報に基づいて維持領域情報記憶部115A内の維持領域情報を更新し(ステップS24)、ステップS16に戻る。これにより、更新後の維持領域情報に基づいて重畳画像が生成され、投射される。
【0046】
また、重畳画像の表示を終了する場合(ステップS23)、制御部103は投射を終了するか否かを判別し(ステップS25)、投射を終了しない場合はステップS11に戻り、投射を終了する場合は本処理を終了する。
【0047】
さらに、プロジェクター11は、維持領域を入力画像に重畳した重畳画像を合成する際に、維持領域を拡大または縮小することも可能である。また、フレーム記憶部115Cに記憶したフレームのデータから、リモコン5の操作により維持領域として指定された領域以外を、維持領域として抽出することもできる。つまり、制御部103によって、維持領域情報において元のフレームにおける維持領域の位置を示す情報が更新されれば、指定された位置とは異なる位置の領域を、維持領域として抽出できる。これは、維持領域を抽出する元のフレーム全体のデータをフレーム記憶部115Cに記憶しているために可能となっている。
【0048】
図8は、維持領域が変更される場合の画面の遷移例を示す図であり、(A)は変更前、(B)は変更後を示す。
図8(A)においてスクリーンSCに表示される重畳画像219は、図6(C)と同じ画像である。入力画像である画面205に含まれていたオブジェクト206とともに、維持領域231及び維持領域232が表示されている。重畳画像219が表示された状態で、例えばリモコン5によって維持領域を拡大する操作が行われると、スクリーンSCに投射される画像は、図8(B)に示すように変化する。図8(B)に示す例では維持領域232が右方向に拡大され、オブジェクト206に重なる位置まで達している。
【0049】
具体的な操作例を説明すると、例えば、リモコン5のボタン53が押下されると、この操作に応じて制御部103はポインター221(図3(B))を表示させる。この状態で、方向指示キー54が操作されると、当該操作に応じてGUI制御部103Aはポインター221を移動させる。そして、ポインター221が維持領域の上にある状態で決定キー54Aが押下されると、GUI制御部103Aは画像処理部109を制御して、ポインター221を維持領域の外枠上の1点である第1の端点(例えば、維持領域が長方形である場合には、維持領域の4つの頂点のうちの左上隅)に移動させる。その後は方向指示キー54の操作に応じて維持領域の第1の端点(及び第1の端点を通る2辺)が移動され、これに伴い維持領域のサイズが変更される。この操作の間、GUI制御部103Aは、維持領域の見かけ上のサイズ、すなわち維持領域の外枠を移動させる表示を行う。
その後、再び決定キー54Aが操作されると、GUI制御部103Aは、第1の端点とは異なる維持領域の外枠上の1点である第2の端点(例えば、右下隅)にポインター221を移動させる。同時に、維持領域制御部103Bは、決定キー54Aが操作されたときの維持領域の第1の端点の位置に基づいて維持領域情報を生成し、維持領域情報記憶部115Aに記憶された維持領域情報を新たに生成された維持領域情報によって更新する。維持領域情報が更新されると、重畳制御部103Cは、フレーム記憶部115Cから元のフレームを読み出し、更新された重畳制御部103Cに基づいて元のフレームを加工することにより、新たに重畳画像を生成して、画像処理部109により表示させる。その後、ポインター221が第2の端点上にある状態でリモコン5の方向指示キー54が操作されると、この操作に応じて維持領域の第2の端点(及び第2の端点を通る2辺)が移動され、これに伴い維持領域のサイズが変更される。なお、図8(B)に示すように、維持領域が変更されたことにより複数の画像が重複する場合、重畳制御部103Cは、維持領域と他の維持領域またはオブジェクトが重なるように重畳画像を生成してもよい。
【0050】
図8(A)及び(B)に示す例では、重畳画像219の下部左寄りに配置された維持領域232の右端を移動させることで、維持領域232が拡大される。この操作に応じて、制御部103が維持領域232の大きさ及びサイズに関する維持領域情報を更新し、更新後の維持領域情報に基づいて、図8(B)に示す重畳画像219を生成する。
このように、メモリー115は、維持領域を抽出する元のフレームを、重畳画像を生成した後もフレーム記憶部115Cに記憶するので、重畳画像を表示した後に維持領域を変更して、新たな重畳画像を生成できる。このため、指定された維持領域以外の部分を後から表示するなどの処理が可能であり、上記のように、維持領域の位置やサイズを変更することもできる。また、維持領域を変更する操作は、リモコン5を活用することで、維持領域が指定された後あるいは表示された後で、簡単に実行できる。なお、維持領域のサイズを変更せず移動することも、上記と同様の操作及び処理によって実行可能である。
【0051】
また、指定した維持領域を削除する操作も簡単に行える。
GUI制御部103Aは、リモコン5のボタン53の押下を示すイベントを検出すると、ポインター221を表示させる。ポインター221の位置が、維持領域情報記憶部115Aに記憶されたいずれかの維持領域情報の表示位置に入っている場合は、制御部103は、その維持領域情報に対応する維持領域の削除を実行する。ここで削除されるのは維持領域情報だけであってもよいし、フレーム記憶部115Cに記憶しているフレームのデータを合わせて削除してもよい。
【0052】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係るプロジェクター11は、入力画像を表示するプロジェクター11であって、入力画像を表示する投射部3と、投射部3により表示されている第1の入力画像に対して、リモコン5または操作パネル45の操作により維持領域が指定された場合に、表示中の第1の入力画像のフレーム全体を記憶するフレーム記憶部115Cと、フレーム記憶部115Cに記憶された第1の入力画像からリモコン5または操作パネル45により指定された維持領域を抽出し、抽出した維持領域を画像より後に入力された第2の入力画像に重畳して重畳画像を生成する重畳処理部109Aと、重畳処理部109Aにより生成された重畳画像を投射部3により表示させる制御部103とを備えるので、第2の入力画像と、それ以前に表示されていた第1の入力画像の一部とを同時に表示できる。また、維持領域が指定された場合に第1の入力画像のフレーム全体を記憶するので、当該フレームにおいて指定された維持領域以外の部分を後から処理することも容易であり、例えば維持領域の位置や、維持領域の表示位置を変更することも可能である。これにより、入力画像と、その後に表示する入力画像とを同時に表示することができ、表示位置等の表示態様を高い自由度で自在に調整できる。
【0053】
また、重畳制御部103C及び重畳処理部109Aは、フレーム記憶部115Cに記憶された第1の入力画像から抽出した維持領域を、リモコン5または操作パネル45により指定されたときと同じ位置に配置して、第2の入力画像に重畳するので、維持領域を指定したユーザーの意図に沿った画像を表示できる。
また、フレーム記憶部115Cに記憶された第1の入力画像毎に、リモコン5または操作パネル45により指定された維持領域の位置を示す維持領域情報を記憶する維持領域情報記憶部115Aを備え、重畳処理部109Aは、維持領域情報記憶部115Aに記憶された維持領域情報に基づいて、フレーム記憶部115Cに記憶された第1の入力画像のフレームのデータから維持領域を抽出するので、維持領域の位置を容易に特定して抽出することが可能である。また、維持領域情報を変更することにより、記憶した画像から当初は維持領域として指定されなかった領域を維持領域として抽出することも可能であり、より高い自由度で表示態様を調整できる。
さらに、リモコン5または操作パネル45によって、重畳画像の表示中に維持領域の位置変更を指示可能であり、リモコン5または操作パネル45の指示に従って維持領域の位置を変更して新たに重畳画像を生成するので、例えば、維持領域により隠れてしまう部分を視認できるように、表示態様を自由に調整できる。
【0054】
また、フレーム記憶部115Cは複数の第1の入力画像を記憶可能に構成され、重畳処理部109Aは、フレーム記憶部115Cに記憶された複数の第1の入力画像から、リモコン5または操作パネル45により指定された維持領域をそれぞれ抽出し、抽出した複数の維持領域を第2の入力画像に重畳して重畳画像を生成するので、複数の画像から抽出した複数の維持領域を、第2の入力画像に重畳して表示できる。また、複数の第1の入力画像のフレーム全体を記憶するので、各画像において維持領域を変更する等の細かい調整が可能となる。
重畳処理部109Aは、フレーム記憶部115Cに記憶された複数の第1の入力画像から抽出した複数の維持領域を、互いに重ならないように配置して重畳画像を生成するので、複数の維持領域を、各々の視認性を損なわないように配置して表示できる。
【0055】
なお、上述した実施形態は本発明を限定するものではなく、上記実施形態とは異なる態様として本発明を適用することも可能である。例えば、上記実施形態では、プロジェクター11に接続されたPC13から入力される画像を表示する場合を例に説明したが、プロジェクター11に複数のPC13を接続してもよく、他の画像供給装置から入力される画像を表示する場合に本発明を適用してもよい。さらに、本発明の表示装置は、スクリーンSCに画像を投射するプロジェクターに限定されず、液晶表示パネルに画像を表示する液晶モニターまたは液晶テレビ、或いは、PDP(プラズマディスプレイパネル)に画像を表示するモニター装置またはテレビ受像機、OLED(Organic Light-emitting-diode)、OEL(Organic Electro-Luminescence)等と呼ばれる有機EL表示パネルに画像を表示するモニター装置またはテレビ受像機等の自発光型の表示装置など、各種の表示装置も本発明の表示装置に含まれ、入力された画像信号に基づく画像をカラー表示することができる携帯型の表示装置も含まれる。この場合、液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、有機EL表示パネルが変調手段に相当する。
【0056】
例えば、上記実施形態では、光源が発した光を変調する変調手段として、RGBの各色に対応した3枚の透過型または反射型の液晶パネル32を用いた構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、1枚の液晶パネルとカラーホイールを組み合わせた方式、3枚のデジタルミラーデバイス(DMD)を用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせた方式等により構成してもよい。ここで、変調部として1枚のみの液晶パネルまたはDMDを用いる場合には、クロスダイクロイックプリズム等の合成光学系に相当する部材は不要である。また、液晶パネル及びDMD以外にも、光源が発した光を変調可能な構成であれば問題なく採用できる。
【0057】
また、上記実施形態において記憶部105が記憶していた制御プログラム、及び、画像処理部109の各機能の検出結果を図示しない不揮発性メモリーが記憶する構成であってもよいし、可搬型の記録媒体に記憶されている構成であってもよいし、或いは、プロジェクター11が通信ネットワークを介して接続された他の装置にダウンロード可能に記憶されていてもよい。また、図1に示したプロジェクター11の各機能部は機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、プロジェクター11の具体的な細部構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
3…投射部(表示手段)、10…表示システム、11…プロジェクター(表示装置)、14…モニター、13…PC、101…I/F、103…制御部、103A…GUI制御部、103B…維持領域制御部、103C…重畳制御部(重畳処理手段、表示制御手段)、105…記憶部、109…画像処理部、109A…重畳処理部(重畳処理手段)、109B…画像出力部(表示制御手段)、115…メモリー、115A…維持領域情報記憶部(維持領域情報記憶手段)、115B…重畳画像記憶部、115C…フレーム記憶部(画像記憶手段)、SC…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像を表示する表示装置であって、
前記入力画像を表示する表示手段と、
前記表示手段により表示されている第1の入力画像に対して、表示を続ける維持領域を指定する指示手段と、
前記指示手段により前記第1の入力画像の前記維持領域が指定された場合に、表示中の前記第1の入力画像全体を記憶する画像記憶手段と、
前記画像記憶手段に記憶された前記前記第1の入力画像から前記指示手段により指定された前記維持領域を抽出し、抽出した前記維持領域を前記第1の入力画像より後に入力された第2の入力画像に重畳して重畳画像を生成する重畳処理手段と、
前記重畳処理手段により生成された前記重畳画像を前記表示手段により表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記重畳処理手段は、前記画像記憶手段に記憶された前記第1の入力画像から抽出した前記維持領域を、前記指示手段により指定されたときと同じ位置に配置して、前記第2の入力画像に重畳することを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記画像記憶手段に記憶された前記第1の入力画像毎に、前記指示手段により指定された前記維持領域の位置を示す維持領域情報を記憶する維持領域情報記憶手段を備え、
前記重畳処理手段は、前記維持領域情報記憶手段に記憶された前記維持領域情報に基づいて、前記画像記憶手段に記憶された前記第1の入力画像から前記維持領域を抽出することを特徴とする請求項1または2記載の表示装置。
【請求項4】
前記指示手段は、前記表示手段により前記重畳画像の表示中に、前記維持領域の位置変更を指示可能に構成され、
前記重畳処理手段は、前記指示手段により前記維持領域の位置変更が指示された場合に、前記指示手段の指示に従って前記維持領域の位置を変更して新たに前記重畳画像を生成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記画像記憶手段は複数の前記第1の入力画像を記憶可能に構成され、
前記重畳処理手段は、前記画像記憶手段に記憶された複数の前記第1の入力画像から、前記指示手段により指定された前記維持領域をそれぞれ抽出し、抽出した複数の前記維持領域を前記入力画像に重畳して前記重畳画像を生成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記重畳処理手段は、前記画像記憶手段に記憶された複数の前記第1の入力画像から抽出した複数の前記維持領域を、互いに重ならないように配置して前記第2の入力画像に重畳して、前記重畳画像を生成することを特徴とする請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
入力画像を表示する表示装置の制御方法であって、
表示中の第1の入力画像に対して、表示を続ける維持領域が指定された場合に、表示中の前記第1の入力画像全体を記憶し、
記憶した前記第1の入力画像から前記維持領域を抽出し、抽出した前記維持領域を前記第1の入力画像より後に入力された第2の入力画像に重畳して重畳画像を生成し、
生成した前記重畳画像を前記表示手段により表示すること、
を特徴とする表示装置の制御方法。
【請求項8】
入力画像を表示する表示装置を制御するコンピューターが実行可能なプログラムであって、
前記コンピューターを
表示中の第1の入力画像に対して、表示を続ける維持領域が指定された場合に、表示中の前記第1の入力画像全体を画像記憶手段に記憶させ、前記画像記憶手段に記憶された前記第1の入力画像から前記指示手段により指定された前記維持領域を抽出し、抽出した前記維持領域を前記第1の入力画像より後に入力された第2の入力画像に重畳して重畳画像を生成する重畳処理手段と、
前記重畳処理手段により生成された前記重畳画像を前記表示手段により表示させる表示制御手段と、
して機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−253543(P2012−253543A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124199(P2011−124199)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】