説明

表示装置、表示駆動方法

【課題】フリッカーレベルを維持したまま、映像信号電圧の書込時の充放電電力を抑制し低消費電力化を図る。
【解決手段】画素回路は、発光素子と、発光素子を入力された映像信号電圧に応じて発光駆動する駆動トランジスタとを有する。画素駆動部は、各画素回路に対して信号線を介して映像信号電圧を供給して各画素回路を発光駆動する。そして画素駆動部は、映像信号電圧に応じた各画素回路の発光を所定の発光周波数で実行させるとともに、信号線を介した各画素回路への映像信号電圧の書込を発光周波数より低い書込周波数で実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素回路がマトリクス状に配置された画素アレイを有する表示装置と、その表示駆動方法であって、例えば発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を用いた表示装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2003−255856号公報
【特許文献2】特開2003−271095号公報
【背景技術】
【0003】
例えば上記特許文献1,2に見られるように、有機EL素子を画素に用いた画像表示装置が開発されている。有機EL素子は自発光素子であることから、例えば液晶ディスプレイに比べて画像の視認性が高く、バックライトが不要であり、応答速度が速いなどの利点を有する。又、各発光素子の輝度レベル(階調)はそれに流れる電流値によって制御可能である(いわゆる電流制御型)。
有機ELディスプレイにおいては、液晶ディスプレイと同様、その駆動方式として単純マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とがある。前者は構造が単純であるものの、大型且つ高精細のディスプレイの実現が難しいなどの問題がある為、現在はアクティブマトリクス方式の開発が盛んに行なわれている。この方式は、各画素回路内部の発光素子に流れる電流を、画素回路内部に設けた能動素子(一般には薄膜トランジスタ:TFT)によって制御するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL素子は電流発光素子の為、有機EL素子に流れる電流値をコントロールすることで、発色の階調を得ている。
このため有機ELディスプレイでは、各画素回路に対しては、映像データの階調値に応じた映像信号電圧を与え、各画素回路が、その入力された映像信号電圧に応じた電流を有機EL素子に流す。これにより各画素回路では、それぞれ対応する信号値に応じた発光が行われる。
【0005】
一般的にアクティブマトリックス有機ELディスプレイは、1水平期間毎に信号線に映像信号電圧を書き込み、その信号を、各画素回路内の容量に書き込み、発光電流を制御する。書き込まれた映像信号電圧は1フレーム期間保持され、発光電流が維持される。
ここで、各画素回路に映像信号電圧を供給するための信号線に着目すると、信号線は1水平期間毎に信号電圧が書き換えられていることになる。つまり充放電動作を繰り返している。
充放電動作時の消費電力はC・V2・fにて求められる。Cは容量、Vは電圧、fは充放電の周波数である。これを上記の信号線に当てはめると、Cは信号線の容量、Vは映像信号電圧、fは、通常は1水平期間に1回の書込が行われるため、水平周波数となる。
【0006】
有機ELディスプレイの消費電力としては、パネル発光部の消費電力と、この映像信号電圧の充放電による消費電力が主なものである。
近年、有機EL素子の高効率化などにより、パネル発光消費電力が低下してきており、それに比較して、映像信号電圧の充放電消費電力が無視できないレベルになってきている。有機EL表示装置の低消費電力化は強く求められており、このことから映像信号電圧の充放電の低消費電力化が求められている。
一方で、消費電力を削減できても、画質の低下を生じさせることは好ましくない。
【0007】
そこで本発明は、画質の低下を生じさせずに、映像信号電圧の充放電による消費電力の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表示装置は、発光素子と、上記発光素子を入力された映像信号電圧に応じて発光駆動する駆動トランジスタと、を有する画素回路が、マトリクス状に配置されて成る画素アレイと、信号線を介して上記各画素回路に映像信号電圧を供給して各画素回路を発光駆動する画素駆動部とを備える。そして上記画素駆動部は、映像信号電圧に応じた上記各画素回路の発光を所定の発光周波数で実行させるとともに、上記信号線を介した上記各画素回路への映像信号電圧の書込を上記発光周波数より低い書込周波数で実行する。
特に上記画素駆動部は、静止画表示の際に、上記信号線を介した上記各画素回路への映像信号電圧の書込を上記発光周波数より低い書込周波数で実行する。
また、上記発光周波数より低い書込周波数は、上記発光周波数の1/x(但しxはx≧2の整数)の周波数であるとする。
【0009】
また、上記画素回路は、上記発光素子と、ドレイン・ソース間に駆動電圧が印加されることで上記発光素子に対してゲート・ソース間電圧に応じた電流印加を行う上記駆動トランジスタと、導通されることで信号線電圧を上記駆動トランジスタのゲートに入力するサンプリングトランジスタと、上記駆動トランジスタのゲート・ソース間に接続され上記駆動トランジスタの閾値電圧と入力された映像信号電圧とを保持する保持容量とを有するものとする。
上記画素駆動部は、上記画素アレイ上で列状に配設される各信号線に、上記信号線電圧として、上記各画素回路に対する閾値補正基準電圧及び映像信号電圧を供給する信号セレクタと、上記画素アレイ上で行状に配設される各電源制御線に電源パルスを与え、上記画素回路の上記駆動トランジスタへの駆動電圧及び初期電圧の印加を行う駆動制御スキャナと、上記画素アレイ上で行状に配設される各書込制御線に走査パルスを与えて上記画素回路の上記サンプリングトランジスタを制御し、各画素回路への閾値補正基準電圧及び映像信号電圧の入力を実行させる書込スキャナとを備えるものとする。
この場合に、上記画素駆動部の上記駆動制御スキャナは、上記画素回路を発光させる期間には、上記駆動トランジスタへの駆動電圧の印加を行い、映像信号電圧の書込を伴わない非発光期間には、映像信号電圧の書込を伴なう際の非発光期間内に印加する初期電圧よりも、上記閾値補正基準電圧に近い電圧値の第2の初期電圧を、上記駆動トランジスタに印加する。
【0010】
本発明の表示駆動方法は、上記画素アレイと上記画素駆動部とを備えた表示装置の表示駆動方法として、上記画素駆動部が、映像信号電圧に応じた上記各画素回路の発光を所定の発光周波数で実行させるとともに、上記信号線を介した上記各画素回路への映像信号電圧の書込を上記発光周波数より低い書込周波数で実行する表示駆動方法である。
【0011】
このような本発明では、例えば静止画表示時には、画素回路への映像信号電圧の書込周波数を低下させて駆動し、一方、発光動作は例えば通常のフレームレートで動作させる。例えば、4フレームに1回の映像信号電圧の書込を実行しつつ、発光動作は当該4フレーム期間に4回実行させるような動作である。換言すれば、1回の映像信号電圧の書込に対して複数回の発光を実行させる。これにより、フリッカーレベルを維持したまま、映像信号電圧の信号線への書込周波数を低下させ、充放電による消費電力を削減する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発光周波数に対して、画素回路への映像信号電圧の書込周波数を低下させることで、フリッカーレベルを維持したまま、信号線に対する映像信号書込の充放電動作の低消費電力化が可能となるという効果がある。特に静止画表示動作において有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の表示装置の構成の説明図である。
【図2】実施の形態の画素回路の回路図である。
【図3】実施の形態の動画表示の際の画素回路動作の説明図である。
【図4】参考例としての画素回路動作の説明図である。
【図5】実施の形態の静止画表示の際の画素回路動作の説明図である。
【図6】実施の形態の静止画表示の際の他の画素回路動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について次の順序で説明する。
[1.表示装置及び画素回路の構成]
[2.動画表示の際の画素回路動作]
[3.参考例としての画素回路動作]
[4.静止画表示の際の画素回路動作(第1例)]
[5.静止画表示の際の画素回路動作(第2例)]
【0015】
[1.表示装置及び画素回路の構成]

図1に実施の形態の有機EL表示装置の構成を示す。
この有機EL表示装置は、有機EL素子を発光素子とし、アクティブマトリクス方式で発光駆動を行う画素回路10を含むものである。
図示のように、有機EL表示装置は、多数の画素回路10が列方向と行方向(m行×n列)にマトリクス状に配列された画素アレイ20を有する。なお、画素回路10のそれぞれは、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかの発光画素となり、各色の画素回路10が所定規則で配列されてカラー表示装置が構成される。
【0016】
各画素回路10を発光駆動するための構成として、水平セレクタ11、ドライブスキャナ12、ライトスキャナ13を備える。
また水平セレクタ11により選択され、表示データとしての輝度信号の信号値(階調値)に応じた電圧を画素回路10に供給する信号線DTL1、DTL2・・・DTL(n)が、画素アレイ上で列方向に配されている。信号線DTL1、DTL2・・・DTL(n)は、画素アレイ20においてマトリクス配置された画素回路10の列数分(n列)だけ配される。
【0017】
また画素アレイ20上において、行方向に書込制御線WSL1,WSL2・・・WSL(m)、電源制御線DSL1,DSL2・・・DSL(m)が配されている。これらの書込制御線WSL及び電源制御線DSLは、それぞれ、画素アレイ20においてマトリクス配置された画素回路10の行数分(m行)だけ配される。
【0018】
書込制御線WSL(WSL1〜WSL(m))はライトスキャナ13により駆動される。
ライトスキャナ13は、設定された所定のタイミングで、行状に配設された各書込制御線WSL1〜WSL(m)に順次、走査パルスWS(WS1,WS2・・・WS(m))を供給して、画素回路10を行単位で線順次走査する。
【0019】
電源制御線DSL(DSL1〜DSL(m))はドライブスキャナ12により駆動される。ドライブスキャナ12は、ライトスキャナ13による線順次走査に合わせて、行状に配設された各電源制御線DSL1〜DSL(m)に電源パルスDS(DS1,DS2・・・DS(m))を供給する。
後述する第1例としての駆動を行う場合は、電源パルスDS(DS1,DS2・・・DS(m))は駆動電圧Vccと初期電圧Viniの2値に切り替わるパルス電圧とされる。なお、第2例としての駆動を行う場合は、駆動電圧Vcc、初期電圧Viniの外に、電圧値の異なる第2の初期電位Vini2も加えた3値のパルスとなる。
なおドライブスキャナ12,ライトスキャナ13は、クロックck及びスタートパルスspに基づいて、走査パルスWS、電源パルスDSのタイミングを設定する。
【0020】
水平セレクタ11は、ライトスキャナ13による線順次走査に合わせて、列方向に配された信号線DTL1、DTL2・・・に対して、画素回路10に対する入力信号としての信号線電圧を供給する。
本実施の形態では、水平セレクタ11は、各信号線に対し、信号線電圧として、閾値補正基準電圧Vofsと映像信号電圧Vsigを供給する。
映像信号電圧Vsigは、水平セレクタ11に入力される映像データの値としての階調値に基づく電圧値となる。
【0021】
映像データ処理部15は、表示のための映像データDVを水平セレクタ11に供給する。水平セレクタ11は、入力される映像データDVに基づいて、内部の図示しない信号線ドライバから各信号線DTLに所定のタイミングで映像信号電圧Vsigを印加する。
また映像データ処理部15は、映像データDVが、静止画であるか動画であるかの識別信号SSを、水平セレクタ11、ドライブスキャナ12,ライトスキャナ13に供給する。
水平セレクタ11、ドライブスキャナ12,ライトスキャナ13は、識別信号SSに応じて、後述する動画時の画素駆動動作と、静止画時の画素駆動動作を切り換える。
【0022】
図2に画素回路10の構成例を示している。この画素回路10が、図1の構成における画素回路10のようにマトリクス配置される。
なお、図2では簡略化のため、信号線DTLと、書込制御線WSL及び電源制御線DSLが交差する部分に配される1つの画素回路10のみを示している。
また、信号線DTLに対して容量Cpを示しているが、これは信号線容量を表す。
【0023】
画素回路10は、発光素子である有機EL素子1と、保持容量Csと、サンプリングトランジスタTs、駆動トランジスタTdとしてのnチャネルの薄膜トランジスタ(TFT)と、補助容量Csubとで構成されている。なお容量Coledは有機EL素子1の寄生容量である。
【0024】
保持容量Csは、一方の端子が駆動トランジスタTdのソース(ノードND2)に接続され、他方の端子が同じく駆動トランジスタTdのゲート(ノードND1)に接続されている。
画素回路10の発光素子は例えばダイオード構造の有機EL素子1とされ、アノードとカソードを備えている。有機EL素子1のアノードは駆動トランジスタTdのソースに接続され、カソードは所定の配線(カソード電位Vcat)に接続されている。
また、有機EL素子1と並列に補助容量Csubが接続されている。
【0025】
サンプリングトランジスタTsは、そのドレインとソースの一端が信号線DTLに接続され、他端が駆動トランジスタTdのゲートに接続される。
またサンプリングトランジスタTsのゲートは書込制御線WSLに接続されている。
駆動トランジスタTdのドレインは電源制御線DSLに接続されている。
【0026】
有機EL素子1の発光駆動は、基本的には次のようになる。
信号線DTLに映像信号電圧Vsigが印加されたタイミングで、サンプリングトランジスタTsが、書込制御線WSLによってライトスキャナ13から与えられる走査パルスWSによって導通される。これにより信号線DTLからの映像信号電圧Vsigが保持容量Csに書き込まれる。
【0027】
駆動トランジスタTdは、ドライブスキャナ12によって駆動電位Vccが与えられている電源制御線DSLからの電流供給により電流Idsを有機EL素子1に流し、有機EL素子1を発光させる。
このとき電流Idsは、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgsに応じた値(保持容量Csに保持された電圧に応じた値)となり、有機EL素子1はその電流値に応じた輝度で発光する。
つまりこの画素回路10の場合、保持容量Csに信号線DTLからの映像信号電圧Vsigを書き込むことによって、駆動トランジスタTdのゲート印加電圧を変化させ、これにより有機EL素子1に流れる電流値をコントロールして発光の階調を得る。
【0028】
駆動トランジスタTdは、常に飽和領域で動作するように設計されているので、駆動トランジスタTdは次の式1に示した値を持つ定電流源となる。
Ids=(1/2)・μ・(W/L)・Cox・(Vgs−Vth)2・・・(式1)
但し、Idsは飽和領域で動作するトランジスタのドレイン・ソース間に流れる電流、μは移動度、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Coxはゲート容量、Vthは駆動トランジスタTdの閾値電圧を表している。
この式1から明らかな様に、飽和領域ではドレイン電流Idsはゲート・ソース間電圧Vgsによって制御される。駆動トランジスタTdは、ゲート・ソース間電圧Vgsが一定に保持される為、定電流源として動作し、有機EL素子1を一定の輝度で発光させることができる。
【0029】
このように基本的には、各フレーム期間において、画素回路10に映像信号値(階調値)Vsigが保持容量Csに書き込まれる動作が行われ、これにより表示すべき階調に応じて駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgsが決まる。
そして駆動トランジスタTdは飽和領域で動作することで有機EL素子1に対して定電流源として機能し、ゲート・ソース間電圧Vgsに応じた電流を有機EL素子1に流すことで、各フレーム期間に有機EL素子1では映像信号の階調値に応じた輝度の発光が行われる。
【0030】
[2.動画表示の際の画素回路動作]

まず本実施の形態の通常時の画素回路10の動作について説明する。本実施の形態は動画映像表示の際に通常の画素回路動作を行うものとしている。
なお、以下の例は、各画素回路10の駆動トランジスタTdの閾値、移動度のばらつきによるユニフォミティ劣化を補償するための閾値補正動作、移動度補正動作を含む回路動作である。
【0031】
画素回路動作においては、閾値補正動作、移動度補正動作自体は、従来より行われているが、この必要性について簡単に説明しておく。
例えばポリシリコンTFT等を用いた画素回路では、駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthや、駆動トランジスタTdのチャネルを構成する半導体薄膜の移動度μが経時的に変化することがある。また製造プロセスのバラツキによって閾値電圧Vthや移動度μのトランジスタ特性が画素毎に異なったりする。
駆動トランジスタTdの閾値電圧や移動度が画素毎に異なると、画素毎に駆動トランジスタTdに流れる電流値にばらつきが生じる。このため仮に全画素回路10に同一の映像信号値(映像信号電圧Vsig)を与えたとしても、有機EL素子1の発光輝度に画素毎のバラツキが生じ、その結果、画面のユニフォミティ(一様性)が損なわれる。
このことから、画素回路動作においては、閾値電圧Vthや移動度μの変動に対する補正機能を持たせるようにしている。
【0032】
図3に画素回路10の発光サイクル(各フレーム期間)の動作のタイミングチャートを示す。
図3では、水平セレクタ11が信号線DTLに与える信号線電圧を示している。水平セレクタ11は信号線電圧として、1水平期間(1H)に、所定の電圧値としての閾値補正基準電圧Vofsと、映像信号電圧Vsigとしてのパルス電圧を信号線DTLに与える。
また図3には、書込制御線WSLを介してライトスキャナ13によってサンプリングトランジスタTsのゲートに与えられる走査パルスWSを示している。nチャネルのサンプリングトランジスタTsは、走査パルスWSがHレベルとされることで導通され、走査パルスWSがLレベルとされることで非導通となる。
また図3には、電源制御線DSLを介してドライブスキャナ12から供給される電源パルスDSを示している。電源パルスDSとしては駆動電圧Vcc又は初期電圧Viniが与えられる。
また図3には、図2に示したノードND1、ND2の電圧として、駆動トランジスタTdのゲート電圧Vgとソース電圧Vsの変化を示している。
【0033】
図3のタイミングチャートにおける時点tsは、発光素子である有機EL素子1が発光駆動される1サイクル、例えば画像表示の1フレーム期間の開始タイミングとなる。
この時点tsに至る前は、前フレームの発光が行われている。
即ち、有機EL素子1の発光状態は、電源パルスDSが駆動電圧Vccであり、サンプリングトランジスタTsがオフした状態である。この時、駆動トランジスタTdは飽和領域で動作するように設定されているため、有機EL素子1に流れる電流Idsは駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgsに応じて、上述した式1に示される値となる。
【0034】
時点tsで今回のフレームの発光のための動作が開始される。
期間LT1として、消光及び閾値補正のための準備が行われる。
まず電源パルスDS=初期電位Viniとされる。
このとき、初期電位Viniが有機EL素子1の閾値電圧Vthelとカソード電圧Vcatの和よりも小さい、つまりVini ≦Vthel+Vcatであることで、有機EL素子1は消光し、非発光期間が開始される。このとき電源制御線DSLが駆動トランジスタTdのソースとなる。また有機EL素子1のアノード(ノードND2)は初期電位Viniに充電される。
また駆動トランジスタTdのゲート電位(ノードND1)は、ソース電位の低下に応じて、或る電位Vg’まで低下する。
【0035】
一定期間後、閾値補正のための準備が行われる。
即ち、信号線DTLの電位が閾値補正基準電圧Vofsである時に、走査パルスWSがHレベルとされ、サンプリングトランジスタTsがオンとされる。このため駆動トランジスタTdのゲート(ノードND1)は閾値補正基準電圧Vofsとなる。
駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgs=Vofs−Viniとなる。
このVofs−Viniが駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthよりも大きくないと閾値補正動作を行うことができないために、Vofs−Vini>Vthとなるように、初期電位Vini、基準電圧Vofsが設定されている。
即ち閾値補正の準備として、駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧が、その閾値電圧Vthよりも十分広げられることになる。
【0036】
続いて期間LT2として閾値補正(Vth補正)が行われる。
即ち、信号線電圧が閾値補正基準電圧Vofsとなっている間、ライトスキャナ13は走査パルスWSのHレベルを維持する。そしてドライブスキャナ12が電源パルスDSを駆動電圧Vccとする。
この場合、有機EL素子1のアノード(ノードND2)が駆動トランジスタTdのソースとなり電流が流れる。このため、駆動トランジスタTdのゲート(ノードND1)は閾値補正基準電圧Vofsに固定されたまま、ソースノード(ノードND2)が上昇する。
有機EL素子1のアノード電位(ノードND2の電位)が、Vcat+Vthel(有機EL素子1の閾値電圧)以下である限り、駆動トランジスタTdの電流は保持容量Csと寄生容量Coled及び補助容量Csubを充電するために使われる。有機EL素子1のアノード電位がVcat+Vthel以下である限りとは、有機EL素子1のリーク電流が駆動トランジスタTdに流れる電流よりもかなり小さいという意味である。
このためノードND2の電位(駆動トランジスタTdのソース電位)は、時間と共に上昇してゆく。
【0037】
この閾値補正は、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧を閾値電圧Vthとする動作である。従って駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧が閾値電圧Vthとなるまで、駆動トランジスタTdのソース電位が上昇される。
一定時間経過すると、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧が閾値電圧Vthとなる。
なお、この例では閾値補正動作を1回行うものとしているが、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧が閾値電圧Vthとなる時間を確保するため、閾値補正動作が分割して複数回行われることもある。
【0038】
期間LT2の終了時点で、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧が閾値電圧Vthとなった時、ソース電位(ノードND2:有機EL素子1のアノード電位)=Vofs−Vth≦Vcat+Vthelとなっている。(Vcatはカソード電位、Vthelは有機EL素子1の閾値電圧)
このとき、ライトスキャナ13は走査パルスWSをLレベルとし、サンプリングトランジスタTsがオフとなって閾値補正動作が完了する。
【0039】
その後、信号線電圧が映像信号電圧Vsigとなっている期間LT3に、ライトスキャナ13が走査パルスWSがHレベルとし、映像信号電圧Vsigの書込及び移動度補正が行われる。即ち駆動トランジスタTdのゲートに映像信号電圧Vsigが入力される。
【0040】
駆動トランジスタTdのゲート電位は映像信号電圧Vsigの電位となるが、電源制御線DSLが駆動電圧Vccとなっていることで電流が流れ、ソース電位は時間とともに上昇してゆく。
このとき、駆動トランジスタTdのソース電圧が有機EL素子1の閾値電圧Vthelとカソード電圧Vcatの和を越えなければ、駆動トランジスタTdの電流は保持容量Csと寄生容量Coled及び補助容量Csubを充電するのに使用される。つまり有機EL素子1のリーク電流が駆動トランジスタTdに流れる電流よりもかなり小さければという条件である。
そしてこのときは、駆動トランジスタTdの閾値補正動作は完了しているため、駆動トランジスタTdが流す電流は移動度μを反映したものとなる。
具体的にいうと、移動度が大きいものはこの時の電流量が大きく、ソースの上昇も早い。逆に移動度が小さいものは電流量が小さく、ソースの上昇は遅くなる。
これによって、走査パルスWSがHレベルとなる期間LT4として、サンプリングトランジスタTsがオンしてから、駆動トランジスタTdのソース電圧Vsは上昇し、サンプリングトランジスタTsがオフしたときには、ソース電圧Vsは移動度μを反映した電圧となる。駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgsは移動度を反映して小さくなり、一定時間経過後に完全に移動度を補正する電圧となる。
【0041】
このように映像信号電圧Vsig書込及び移動度補正を行った後、ゲート・ソース間電圧Vgsを確定させ、ブートストラップ、発光状態へと移行する。
即ち走査パルスWSをLレベルとしてサンプリングトランジスタTsをオフして書き込みが終了し、有機EL素子1を発光させる。
この場合、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgsに応じた電流Idsが流れ、ノードND2の電位は、有機EL素子1にその電流が流れる電圧まで上昇し、有機EL素子1は発光する。このときサンプリングトランジスタTsがオフであり、ノードND2の電位の上昇と同時に駆動トランジスタTdのゲート(ノードND1)も同様に上昇するため、ゲート・ソース間電圧Vgsは一定に保たれたままである。(ブートストラップ動作)
【0042】
このように画素回路10は1フレーム期間における1サイクルの発光駆動動作として、閾値補正動作及び移動度補正動作を含んで、有機EL素子1の発光のための動作が行われる。
閾値補正動作によって各画素回路10での駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthのバラツキや、経時変動による閾値電圧Vth変動などに関わらず、信号電位Vsigに応じた電流を有機EL素子1に与えることができる。つまり製造上或いは経時変化による閾値電圧Vthのバラツキをキャンセルして、画面上に輝度ムラ等を発生させずに高画質を維持できる。
また、駆動トランジスタTdの移動度によってもドレイン電流は変動するため、画素回路10毎の駆動トランジスタTdの移動度のバラツキにより画質が低下するが、移動度補正により、駆動トランジスタTdの移動度の大小に応じてソース電位Vsが得られる。結果として各画素回路10の駆動トランジスタTdの移動度のバラツキを吸収するようなゲート・ソース間電圧Vgsに調整されるため、移動度のバラツキによる画質低下も解消される。
【0043】
[3.参考例としての画素回路動作]

ここで本実施の形態の動作の理解のため、参考例としての画素回路動作を図4で説明しておく。
図4は、図3と同様に各波形を示しているが、図3と異なるのは、信号線DTLへの映像信号電圧Vsigの書込を4H期間(4水平期間)に1回行っている点である。つまり、映像信号電圧Vsigの書込周波数を、図3の通常動作の1/4としている。
4Hに1回の書込を行うことで、全水平ラインの画素回路10への映像信号電圧Vsigの書込には4フレーム期間を要する。従って、図示のように、発光動作の1サイクルは4フレーム期間で行われることになる。
【0044】
上述したように充放電動作時の消費電力はC・V2・fとなる。信号線DTLの充放電動作について言えば、Cは信号線の容量Cp、Vは映像信号電圧Vsig値である。そして図3の動作では、各信号線DTLには、水平セレクタ11は1H(1水平周期)で、映像信号電圧Vsigの書込を行っており、信号線DTLは1水平期間での充放電動作を繰り返している。このことからfは水平周波数となる。
ここで、充放電による消費電力を低減させようとする場合、V又はfを低下させることが考えられる。
一例として、図4のように映像信号電圧Vsigの書込周波数を1H/4とすると、消費電力は、図3の動作の場合の1/4となり、消費電力低減が実現される。
【0045】
但し、このように単純に書込周波数を下げることは、動画の場合は、フレームレートが下がることになり、図3の場合の映像品質を維持できない。しかしながら、静止画表示を前提とすれば、このようにフレームレートが下がっても、大きな問題は生じない。
つまり例えば静止画表示の際には、図4のようにすれば、消費電力の削減を実現できる。
【0046】
しかしながら、図4のように1回の映像信号電圧Vsigの書込あたり1回の発光動作を維持すると、非発光期間が相対的に長くなってしまう。これによりフリッカーが悪化することとなってしまう。
【0047】
[4.静止画表示の際の画素回路動作(第1例)]

そこで本実施の形態では、静止画表示の際には、以下説明する動作により、フリッカーを悪化させずに消費電力の削減を実現する。
【0048】
図5は本実施の形態の第1例としての静止画表示の際の画素回路動作を示している。
この図5では上記図3と同様に画素回路10の1発光サイクルの動作として、信号線電圧、走査パルスWS、電源パルスDS、ノードND1(駆動トランジスタTdのゲート電圧Vg)、ND2(駆動トランジスタTdのソース電圧Vs)を示している。
【0049】
まずこの場合、1発光サイクルは4フレーム期間となる。
これは、水平セレクタ11が、信号線DTLに対する映像信号電圧Vsigの供給を4H期間毎に行うことで、全画面、つまり第1ラインから第mラインまでの各画素回路10への映像信号電圧Vsigの書込に4フレーム期間を要することによる。
【0050】
水平セレクタ11が4H期間毎に映像信号電圧Vsigを信号線DTLに与えることに応じて、ライトスキャナ13は、走査パルスWSの出力の周期を図3の場合から変更する。つまり、ライトスキャナ13は、図3の場合は1フレーム周期において、1回、閾値補正と映像信号電圧Vsigの書込のための走査パルスWSを出力していたが、図5の場合は4フレーム周期で1回、閾値補正と映像信号電圧Vsigの書込のための走査パルスWSを出力する。
【0051】
この図5の動作例の場合、時点tsで4フレーム期間としての1発光サイクルが開始される。
まず期間LT1としてドライブスキャナ12が、駆動トランジスタTdに与える電源パルスDSを駆動電圧Vccから初期電位Viniに切り換え、これにより画素回路10の発光を終了させる。
期間LT1の最後に、走査パルスWSが立ち上がることで、閾値補正動作の準備が行われる。さらに操作パルスWSがHレベルが維持され、電源パルスDSが駆動電圧Vccとされることで、期間LT2の閾値補正動作が行われる。
その後期間LT3に、信号線DTLに映像信号電圧Vsigが与えられているときに操作パルスWSがHレベルとされて、画素回路10への映像信号電圧Vsigの書込及び移動度補正が行われる。そしてその後、発光に至る(期間LT4a)。
ここまでの動作は、基本的には図3と同様である。但し、1発光サイクルが1フレーム周期から4フレーム期間に延びたことによる時間幅の違いは当然存在する。
【0052】
図5の場合、期間LT4aとして発光が行われるが、その後、所定タイミングで電源パルスDS=初期電位Viniとされて、非発光となる(期間LT5a)。
つまりこの場合、駆動トランジスタTdのソース電圧Vs(ノードND2)は初期電位Viniにまで低下し、有機EL素子1はカットオフして消光される。また、ソース電圧Vsの低下に応じて、駆動トランジスタTdのゲート電圧Vgも低下する。
但し、期間LT3で書き込まれた映像信号電圧Vsigは、保持容量Csに保持されている。
【0053】
続いて所定タイミングで、所定タイミングで電源パルスDS=駆動電圧Vccとされて、再び発光が行われる。(期間LT4b)。つまり、期間LT4aと同じく、先に期間LT3で書き込まれた映像信号電圧Vsigに基づく階調の発光である。
その後、期間LT5bで消光され、また期間LT4cで発光され、さらに期間LT5cで消光され、期間LT4dで発光される。
このように、1発光サイクルとしての4フレーム期間に4回の発光(期間LT4a、LT4b、LT4c,LT4d)が行われる。
【0054】
つまり、画素回路10を駆動する水平セレクタ11、ドライブスキャナ12、ライトスキャナ13は、映像信号電圧Vsigに応じた各画素回路10の発光を、図3と同様の所定の発光周波数で実行させるとともに、信号線DTLを介した各画素回路10への映像信号電圧Vsigの書込を発光周波数より低い書込周波数で実行する。
例えば図3の場合のフレーム周波数が60Hzであったとする。各画素回路10への映像信号電圧Vsigの書込は、1フレーム周期で1回行われるため、書込周波数も60Hzとなる。また画素回路10の発光も1フレーム周期で1回行われるため、発光周波数も60Hzとなる。
一方、図5の場合は、1発光サイクルが4フレーム期間となり、各画素回路10への映像信号電圧Vsigの書込が4フレーム周期で1回行われるため、書込周波数は1/4の15Hzとなる。しかし、画素回路10の発光は、4フレーム期間で4回行われるため、事実上、1フレーム周期毎の発光となり、発光周波数も60Hzのままである。
【0055】
このようにすることで、フリッカーを悪化させることを防止できる。
そして、4H毎の映像信号電圧Vsigの供給(信号線DTLへの充電)を行うことで、図3の場合よりも、信号線DTLの充放電による消費電力を1/4に低減できる。つまり、フリッカーを維持したまま、消費電力の削減を実現できる。
【0056】
静止画においては、同一の映像信号電圧Vsig値が維持されるため、図5のような駆動に対応することができ、信号書き込み充放電の低消費電力化が可能となる。
従って、水平セレクタ11、ドライブスキャナ12、ライトスキャナ13は、映像データ処理部15からの識別信号SSに応じて、つまり動画表示か静止画表示かの別に応じて、図3の駆動と図5の駆動を切り換えるようにすればよい。
【0057】
なお、静止画の場合に図5の駆動が適切であるが、いわゆるワンセグ放送など、元々の映像周波数が60Hz以下の信号に対しては、映像信号電圧Vsigの書込周波数をその周波数に低下させ、発光周波数は通常どおりにする事で、動画表示であっても低消費電力化が達成できる。
【0058】
また上記例では画素回路10への映像信号電圧Vsigの書込周期を通常の場合の4倍としたが、それ以上でもそれ以下でも構わない。
即ち書込周波数は、発光周波数の1/x(但しxはx≧2の整数)の周波数であるとすればよい。
しかし、あまりに書込周期を長くすると、映像信号電圧Vsigを画素回路10の保持容量Csに保持している期間が長くなってしまう。
画素回路10のサンプリングトランジスタTsは、オフ動作においても、微量のリーク電流が発生している。その為、保持容量Csの保持電圧はリークによって変動が生じており、長時間保持し続ける事は画質の低下の原因となってしまう。
そこで、画質低下しない範囲の周期で画素回路10への映像信号電圧Vsigの書込を行うことが適切である。
【0059】
[5.静止画表示の際の画素回路動作(第2例)]

続いて第2例としての静止画表示の際の画素回路動作を図6で説明する。
この第2例では、図5と比較して、非発光期間LT5a、LT5b、LT5cにおける電源パルスDSを、第2の初期電位Vini2とする点が異なる。
第2の初期電位Vini2は、初期電位Viniよりも高い電圧である。具体的には有機EL素子1がカットオフする範囲で、閾値補正基準電圧Vofsに近い電圧である。
つまり図6の動作例でのドライブスキャナ12の動作は次のようになる。
ドライブスキャナ12は、画素回路10を発光させる期間LT5a,LT5b,LT5c,LT5dには、駆動トランジスタTdへの駆動電圧Vccの印加を行う。
またドライブスキャナ12は、映像信号電圧Vsigの書込を伴う非発光期間(LT1〜LT3)には、消光及び閾値補正動作の準備のため、駆動トランジスタTdへ初期電圧Viniを印加する。
そして、ドライブスキャナ12は、映像信号電圧Vsigの書込を伴わない非発光期間LT5a、LT5b、LT5cには、初期電圧Viniよりも、閾値補正基準電圧Vofsに近い電圧値の第2の初期電圧Vini2を、駆動トランジスタTdに印加する。
【0060】
非発光期間LT5a、LT5b、LT5cは、電源パルスDS=第2の初期電位Vini2とされることで、ソース電圧Vs=第2の初期電位Vini2となる。第2の初期電位Vini2は有機EL素子1がカットオフする電圧値に設定されているため、有機EL素子1は消光される。ソース電圧Vsの低下に応じてゲート電位Vgも低下するが、ゲート電位Vgは、ソース電圧Vs(=第2の初期電位Vini2)+発光期間のゲート・ソース間電圧Vgsとなる。
つまり、図5の場合と比較して、非発光期間LT5a、LT5b、LT5cにおけるゲート電圧Vgが高くなっている。
【0061】
上述もしたが、サンプリングトランジスタTsは、オフ時も微小なリーク電流が流れる。このリーク電流は、サンプリングトランジスタTsのソースとドレインの電位差が大きいほど多くなる。
サンプリングトランジスタTsのソース・ドレインは、信号線DTLと駆動トランジスタTdのゲートに接続されている。従って信号線DTLの電位と、駆動トランジスタTdのゲート電位の差が大きいほど、リーク電流が多くなる。
ここで信号線DTLには、閾値補正基準電圧Vofsと映像信号電圧Vsigが与えられるが、リーク電流が多くなるのは、信号線DTLに映像信号電圧Vsigが与えられている期間である。つまり、駆動トランジスタTdのゲート電位と、映像信号電圧Vsigの電位の電位差が大きいときである。
【0062】
図5の場合、駆動トランジスタTdのゲートは、初期電位Vini+発光期間のゲート・ソース間電圧Vgsとなる。
一方、図6の場合、駆動トランジスタTdのゲートは、上記のように初期電位Vini+発光期間のゲート・ソース間電圧Vgsとなる。
初期電位Vini<第2の初期電位Vini2であるから、図6の場合の方が、非発光期間LT5a、LT5b、LT5cにおけるゲート電圧Vgが高くなる。すると、図6の場合の方が、信号線DTLに映像信号電圧Vsigが与えられている期間において、サンプリングトランジスタTsのソース・ドレイン間電圧を低下させることができる。これは、図6の方が、非発光期間LT5a、LT5b、LT5cにおけるサンプリングトランジスタTsのリーク電流を少なくできるということである。
【0063】
リーク電流を少なくできることで、保持容量Csの保持電圧の変動を抑えることができる。これにより、2回目以降の発光期間LT5b,LT5c,LT5dの発光輝度の変動を抑えることができる。すなわち、画質維持のためのより適切な発光動作が実行される。
【0064】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は上記例に限定されるものではない。例えば画素回路10の構成は、図2のものに限定されず、多様な例が考えられる。例えば補助容量Csubを備えない構成、3つ以上のトランジスタを備えた構成などでもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 有機EL素子、10 画素回路、11 水平セレクタ、12 ドライブスキャナ、13 ライトスキャナ、15 映像データ処理部、20 画素アレイ部、Cs 保持容量、Ts サンプリングトランジスタ、Td 駆動トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、上記発光素子を入力された映像信号電圧に応じて発光駆動する駆動トランジスタと、を有する画素回路が、マトリクス状に配置されて成る画素アレイと、
信号線を介して上記各画素回路に映像信号電圧を供給して各画素回路を発光駆動する画素駆動部と、
を備え、
上記画素駆動部は、映像信号電圧に応じた上記各画素回路の発光を所定の発光周波数で実行させるとともに、上記信号線を介した上記各画素回路への映像信号電圧の書込を上記発光周波数より低い書込周波数で実行する表示装置。
【請求項2】
上記画素駆動部は、静止画表示の際に、上記信号線を介した上記各画素回路への映像信号電圧の書込を上記発光周波数より低い書込周波数で実行する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
上記発光周波数より低い書込周波数は、上記発光周波数の1/x(但しxはx≧2の整数)の周波数である請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
上記画素回路は、上記発光素子と、ドレイン・ソース間に駆動電圧が印加されることで上記発光素子に対してゲート・ソース間電圧に応じた電流印加を行う上記駆動トランジスタと、導通されることで信号線電圧を上記駆動トランジスタのゲートに入力するサンプリングトランジスタと、上記駆動トランジスタのゲート・ソース間に接続され上記駆動トランジスタの閾値電圧と入力された映像信号電圧とを保持する保持容量とを有し、
上記画素駆動部は、
上記画素アレイ上で列状に配設される各信号線に、上記信号線電圧として、上記各画素回路に対する閾値補正基準電圧及び映像信号電圧を供給する信号セレクタと、
上記画素アレイ上で行状に配設される各電源制御線に電源パルスを与え、上記画素回路の上記駆動トランジスタへの駆動電圧及び初期電圧の印加を行う駆動制御スキャナと、
上記画素アレイ上で行状に配設される各書込制御線に走査パルスを与えて上記画素回路の上記サンプリングトランジスタを制御し、各画素回路への閾値補正基準電圧及び映像信号電圧の入力を実行させる書込スキャナと、
を備えた請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
上記画素駆動部の上記駆動制御スキャナは、
上記画素回路を発光させる期間には、上記駆動トランジスタへの駆動電圧の印加を行い、
映像信号電圧の書込を伴わない非発光期間には、映像信号電圧の書込を伴なう際の非発光期間内に印加する初期電圧よりも、上記閾値補正基準電圧に近い電圧値の第2の初期電圧を、上記駆動トランジスタに印加する請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
発光素子と、上記発光素子を入力された映像信号電圧に応じて発光駆動する駆動トランジスタと、を有する画素回路が、マトリクス状に配置されて成る画素アレイと、
信号線を介して上記各画素回路に映像信号電圧を供給して各画素回路を発光駆動する画素駆動部と、
を備えた表示装置の表示駆動方法として、
上記画素駆動部が、映像信号電圧に応じた上記各画素回路の発光を所定の発光周波数で実行させるとともに、上記信号線を介した上記各画素回路への映像信号電圧の書込を上記発光周波数より低い書込周波数で実行する表示駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−209370(P2011−209370A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74631(P2010−74631)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】