説明

表示装置およびその製造方法

【課題】高い信頼性を有しつつ、より良好な表示性能を発揮し得る表示装置を提供する。
【解決手段】この表示装置は、基体11上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層16が順に積層されてなる有機発光素子と、有機層を取り囲むように配置され、第2電極層16と電気的に接続された補助配線層としての金属層17とを備える。金属層17は、第1導電層171と第2導電層172との2層構造からなり、第1導電層171は、第2電極層16との接触抵抗が第2導電層172よりも低いものである。第2導電層172の端面172Tが第1導電層171の端面171Tよりも内側に後退することにより、第1導電層171の上面171Sの一部が第2電極層16と接している。これにより、金属層17と第2電極層16との良好なコンタクトが確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機層を含む自発光型の発光素子を備えた表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機層を含む自発光型の有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた有機EL表示装置が実用化されている。有機EL表示装置は、自発光型であるので、液晶などに比較して視野角が広く、また、高精細度の高速ビデオ信号に対しても十分な応答性を有するものである。
【0003】
これまで有機EL素子については、共振器構造を導入し、発光色の色純度を向上させたり発光効率を高めたりするなどして発光層において発生する光を制御することにより、表示性能を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。例えば、基板と反対側の面(上面)から光を取り出すトップエミッション方式(上面発光方式)においては、基板の上に、駆動トランジスタを介してアノード電極と有機層とカソード電極とを順に積層し、アノード電極とカソード電極との間で有機層からの光を多重反射させている。
【0004】
トップエミッション方式の有機EL表示装置では、高い開口率を確保するため、封止パネル側に位置するカソード電極が、各有機EL素子に共通に設けられた一体の電極層となっている。さらに、カソード電極は、上面から光を取り出すために、例えばITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)などの光透過性の導電材料により構成されている。ところが、このような光透過性の導電材料は、通常の金属材料などと比べて抵抗率が2〜3桁程度高くなっている。よって、カソード電極へ印加された電圧が面内で不均一となりやすいので、各有機EL素子間の発光輝度の、面内位置によるばらつきが生じ、十分な表示品質が得られにくいという問題があった。
【0005】
そこで、この問題を解決するべく、カソード電極と接続される補助配線を、例えば駆動パネル側に位置するアノード電極と同一層に形成し、カソード電極の面内方向での電圧降下を抑制するようにした有機EL表示装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。補助配線は、例えば各有機EL素子の表示領域外においてカソード電極と接続される。 このように、補助配線を、面内方向に広がるカソード電極に沿って網目状に張り巡らせると共にカソード電極と接続することにより、上述した面内位置による有機EL素子間の発光輝度のばらつきがある程度緩和される。
【0006】
ところで、上記のような補助配線を有する有機EL表示装置を作製する場合には、製造工程の簡略化を図るため、例えばアノード電極と補助配線とを同一の材料によって一括形成することが望ましい。アノード電極の構成材料としては反射率の高いアルミニウムの単体やその化合物が最も好ましい。ところが、そのような材料を補助電極にも採用した場合、製造工程中における補助電極の表面の酸化が問題となる。すなわち、補助電極の表面が酸化されると、補助電極とカソード電極との接続抵抗が増大し、その接続部分での大きな電圧降下を招いてしまう。したがって、表示画面内での発光輝度分布の不均一性の緩和が十分になされない可能性がある。
【0007】
このような問題に対し、本出願人は、導電性のコンタクト部を予め形成したのち、そのコンタクト部と接するようにアノード電極および補助配線とカソード電極とを順次形成するようにした有機EL表示装置を既に提案している(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第01/39554号パンフレット
【特許文献2】特開2004−207217号公報
【特許文献3】国際公開第2007/148540号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献3によれば、アノード電極および補助配線を、アルミニウムなどの酸化が進行しやすい材料によって形成した場合であっても、コンタクト部を介して良好な導電性が得られる。
【0010】
しかしながら、上記特許文献3の場合、コンタクト部を配置するためのスペースを十分に確保する必要がある。上記特許文献3では、有機EL素子の表示駆動を行う駆動素子と同じ階層にコンタクト部を設けるようにしているが、画素密度を向上させようとすると、コンタクト部と、駆動素子における電極層などの他の導電層との意図しない短絡が生じるおそれがある。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、より高い信頼性を有しつつ、より良好な表示性能を発揮し得る表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示装置は、基体上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が順に積層されてなる発光素子と、有機層を取り囲むように配置され、第2電極層と電気的に接続された補助配線層とを備える。ここで、補助配線層は、第1導電層と第2導電層との2層構造を含み、この第1導電層は、第2電極層との接触抵抗が第2導電層よりも低いものである。また、補助配線層における2層構造は、第2導電層の端面が第1導電層の端面よりも内側に後退することにより、第1導電層の上面の一部が第2電極層と接するように形成されている。
【0013】
本発明の表示装置の製造方法は、上記本発明の表示装置の製造方法であって、基体上に、第1導電層と、第2電極層との接触抵抗が前記第1導電層よりも高い第2導電層とを順に積層することにより積層膜を形成する工程と、積層膜を所定形状にパターニングすることにより積層膜パターンを形成する工程と、第1導電層よりも第2導電層に対して高い溶解性を示すエッチング溶液を用いて積層膜パターンのエッチング処理を行い、第2導電層の端面を後退させて第1導電層の上面を一部露出させることにより補助配線層を形成する工程とを含むものである。
【0014】
本発明の表示装置およびその製造方法では、補助配線層における2層構造の端部が階段状であることから、第2電極層との接触抵抗が第2導電層よりも低い第1導電層の膜面(上面)の一部が第2電極層と接するようになっている。このため、第2導電層を、アルミニウムなどの表面酸化が発生しやすい材料によって形成した場合であっても、それに影響されることなく補助配線層と第2電極層との良好なコンタクトが確保される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表示装置およびその製造方法によれば、発光素子における第2電極層と電気的に接続された補助配線層を第1導電層と第2導電層との2層構造とすると共に、第2電極層との接触抵抗が第2導電層よりも低い第1導電層の上面の一部を第2電極層と接触させるようにしたので、第2導電層の構成材料に影響されることなく補助配線層と第2電極層との良好なコンタクトを実現することができる。その結果、表示画面内での発光輝度分布の均一性を向上させ、より高い表示性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す平面図である。
【図4】図1に示した表示領域の構成を表す断面図である。
【図5】図3に示した有機発光素子の構成を表す断面図である。
【図6】図5の要部を拡大して表す断面図である。
【図7】図3に示した有機発光素子の構成を表す他の断面図である。
【図8】図5,図7に示した画素駆動回路形成層の構成を表す平面図である。
【図9】図5に示した有機層を拡大して表す断面図である。
【図10】図3に示した接続部の断面を拡大して表す断面図である。
【図11】図1に示した表示装置の製造方法を説明するための一工程を表す断面図である。
【図12】図11に続く一工程を表す断面図である。
【図13】図12に続く一工程を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明における一実施の形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられる。この表示装置は、基板111の上に表示領域110が形成されたものである。基板111上の表示領域110の周辺には、例えば映像表示用のドライバである信号線駆動回路120、走査線駆動回路130および電源供給線駆動回路140が形成されている。
【0019】
表示領域110には、マトリクス状に二次元配置された複数の有機発光素子10(10R,10G,10B)と、それらを駆動するための画素駆動回路150とが形成されている。画素駆動回路150において、列方向には複数の信号線120A(120A1,120A2,・・・,120Am,・・・)が配置され、行方向には複数の走査線130A(130A1,・・・,130An,・・・)および複数の電源供給線140A(140A1,・・・,140An,・・・)が配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの各交差点に、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つが対応して設けられている。各信号線120Aは信号線駆動回路120に接続され、各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、各電源供給線140Aは電源供給線駆動回路140に接続されている。
【0020】
信号線駆動回路120は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧を、信号線120Aを介して選択された有機発光素子10R,10G,10Bに供給するものである。
【0021】
走査線駆動回路130は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。走査線駆動回路130は、各有機発光素子10R,10G,10Bへの映像信号の書き込みに際し行単位でそれらを走査し、各走査線130Aに走査信号を順次供給するものである。
【0022】
電源供給線駆動回路140は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。電源供給線駆動回路140は、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し互いに異なる第1電位および第2電位のいずれかを適宜供給する。これにより、後述する駆動トランジスタTr1の導通状態または非導通状態の選択が行われる。
【0023】
画素駆動回路150は、基板111と有機発光素子10との間の階層(後述の画素駆動回路形成層112)に設けられている。図2に、画素駆動回路150の一構成例を表す。図2に示したように、画素駆動回路150は、駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、有機発光素子10とを有するアクティブ型の駆動回路である。有機発光素子10は、電源供給線140Aおよび共通電源供給線(GND)の間において駆動トランジスタTr1と直列に接続されている。駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0024】
書込トランジスタTr2は、例えばドレイン電極が信号線120Aと接続されており、信号線駆動回路120からの映像信号が供給されるようになっている。また、書込トランジスタTr2のゲート電極は走査線130Aと接続されており、走査線駆動回路130からの走査信号が供給されるようになっている。さらに、書込トランジスタTr2のソース電極は、駆動トランジスタTr1のゲート電極と接続されている。
【0025】
駆動トランジスタTr1は、例えばドレイン電極が電源供給線140Aと接続されており、電源供給線駆動回路140による第1電位または第2電位のいずれかに設定される。駆動トランジスタTr1のソース電極は、有機発光素子10と接続されている。
【0026】
保持容量Csは、駆動トランジスタTr1のゲート電極(書込トランジスタTr2のソース電極)と、駆動トランジスタTr1のソース電極との間に形成されるものである。
【0027】
図3に、XY平面に広がる表示領域110の一構成例を表す。ここでは、第2電極層16、保護膜18および封止基板19(いずれも後出)を取り去った状態の表示領域110を、上方から眺めた平面構成を表す。表示領域110には、複数の有機発光素子10が、全体としてマトリックス状に順に配列されている。より詳細には、補助配線層としての金属層17が格子状に設けられており、それによって区画された各領域に、開口規定絶縁膜24によって輪郭が規定された発光領域20を含む有機発光素子10R,10G,10Bが1つずつ配置されている。有機発光素子10Rは赤色光を発し、有機発光素子10Gは緑色光を発し、有機発光素子10Bは青色光を発する。ここでは、同色光を発する有機発光素子10をY方向に一列に並べ、それをX方向に順に繰り返し配置するようにしている。したがって、X方向において隣り合う有機発光素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。図3において、金属層17によって区画された各領域のうち、破線で示した矩形の領域は、有機発光素子10に含まれる第1電極層13(後出)である。また、金属層17の交差点のうちのいくつかには、開口規定絶縁膜24に開口24Kが設けられている。この開口24Kに含まれる領域には、金属層17と有機発光素子10の第2電極層16との接続を図るための接続部21(破線で囲んだ部分)が設けられている。なお、図3では、2行×5列の計10個の有機発光素子10を示したが、X方向およびY方向に並ぶ有機発光素子10の数はこれに限定されるものではない。
【0028】
図4は、表示領域110における、図3に示したIV−IV線に沿ったXZ断面の概略構成を示すものである。図4に示したように、表示領域110では、基板111に画素駆動回路形成層112が設けられてなる基体11の上に、有機発光素子10を含む発光素子形成層12が形成されている。有機発光素子10の上には、保護膜18と封止基板19とが順に設けられている。有機発光素子10は、基板111の側から、アノード電極としての第1電極層13、発光層14C(後出)を含む有機層14、およびカソード電極としての第2電極層16が各々順に積層されたものである。有機層14および第1電極層13は、開口規定絶縁膜24によって有機発光素子10ごとに分離されている。一方、第2電極層16は、全ての有機発光素子10に共通して設けられている。金属層17は、開口24Kに対応した領域を除き、開口規定絶縁膜24によって埋設されている。なお、図4では、画素駆動回路形成層112における駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2などの詳細な構成については図示を省略した。
【0029】
開口規定絶縁膜24は、隣り合う有機発光素子10における第1電極層13および有機層14同士の隙間を埋めるように設けられている。開口規定絶縁膜24は、例えばポリイミドなどの有機材料からなり、第1電極層13と、第2電極層16および金属層17との絶縁性を確保すると共に、有機発光素子10の発光領域20を正確に所望の形状とするものでもある。
【0030】
有機発光素子10を覆う保護膜18は、窒化ケイ素(SiNx )などの絶縁材料からなる。また、その上に設けられた封止基板19は、保護膜18や接着層(図示せず)などと共に有機発光素子10を封止するものであり、発光層14Cにおいて発生した光を透過する透明なガラスなどの材料により構成されている。
【0031】
次に、図5〜図10を参照して、基体11および有機発光素子10の詳細な構成について説明する。なお、有機発光素子10R,10G,10Bは、互いに有機層14の構成が一部異なることを除き、他は共通の構成であるので、以下では、まとめて説明する。
【0032】
図5は、図3に示した表示領域110の、V−V線に沿った断面図であり、図6は、図5に示した接続孔124の近傍を拡大して表す断面図である。また、図7は図3に示したVII−VII線に沿った断面図である。また、図8は、一の有機発光素子10における、画素駆動回路形成層112に設けられた画素駆動回路150の平面構成を表す概略図である。なお、図5は、図8に示したV−V線に沿った断面に相当し、図7は、図8に示したVII−VII線に沿った断面に相当している。また、図9は、図4,図5,図7に示した有機層14の断面の一部を拡大して表したものである。さらに、図10は、図3に示したX−X線に沿った接続部21の近傍におけるXZ断面の構成を拡大して示すものである。
【0033】
基体11は、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板111に、画素駆動回路150を含む画素駆動回路形成層112が設けられたものである。基板111の表面には、第1階層の金属層として、駆動トランジスタTr1のゲート電極である金属層211Gと、書込トランジスタTr2のゲート電極である金属層221Gと、信号線120A(図7,図8)とがそれぞれ設けられている。これら金属層211G,221Gおよび信号線120Aは、窒化ケイ素や酸化ケイ素などからなるゲート絶縁膜212によって覆われている。ゲート絶縁膜212上の、金属層211G,221Gに対応する領域には、アモルファスシリコンなどの半導体薄膜からなるチャネル層213,223が設けられている。チャネル層213,223上には、その中心領域であるチャネル領域213R,223Rを占めるように絶縁性のチャネル保護膜214,224が設けられており、その両側の領域には、n型アモルファスシリコンなどのn型半導体薄膜からなるドレイン電極215D,225Dおよびソース電極215S,225Sが設けられている。これらドレイン電極215D,225Dおよびソース電極215S,225Sは、チャネル保護膜214,224によって互いに分離されており、それらの端面がチャネル領域213R,223Rを挟んで互いに離間している。さらに、ドレイン電極215D,225Dおよびソース電極215S,225Sをそれぞれ覆うように、第2階層の金属層として、ドレイン配線としての金属層216D,226Dおよびソース配線としての金属層216S,226Sが設けられている。金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sは、例えばチタン(Ti)層、アルミニウム(Al)層、およびチタン層を順に積層した構造を有するものである。第2階層の金属層としては、上記の金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sのほか、走査線130Aおよび電源供給線140A(図5,図8)が設けられている。なお、ここでは、逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)の駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2について説明したが、スタガー構造(いわゆるトップゲート型)のものであってもよい。また、信号線120Aについては、走査線130Aおよび電源供給線140Aとの交差点以外の領域では第2階層に設けるようにしてもよい。
【0034】
第2階層の金属層は、例えば図6に示した金属層216Sのように、有機発光素子10(第1電極層13)の側から順に積層された第1〜第3の薄層31〜33からなる3層構造を有しているとよい。第1の薄層31は、例えばモリブデン(Mo)やその化合物(金属)からなり、有機層14から放出される光に対する吸収率が第2の薄層よりも高いものである。一方、第2の薄層32は、第1の薄層31よりも高い導電率を有するものであり、例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)などの単体もしくはその化合物が挙げられる。第2階層の金属層が、反射率の高いアルミニウムなどからなる第2の薄層32よりも上(第1電極層13の側)の階層に光吸収率の高い第1の薄層31を有することにより、外光や有機発光素子10から洩れた光などの不要光を吸収することができる。そのうえ、特に金属層216Sにおける第1の薄層31を、第1電極層13の第1導電層131(後出)と同種の材料によって構成すると、接続孔124における第1電極層13と金属層216Sとの接続抵抗を低減する効果も得られるので好ましい。第3の薄層33は、第2の薄層32の構成元素が、その下層に位置する駆動トランジスタTr1や書込トランジスタTr2へ拡散(移動)するのを遮断するように機能する。例えば第2の薄層32がアルミニウム元素を含む場合、第2階層の金属層を形成したのちの工程において熱が加わると、その熱エネルギーによってアルミニウム元素がその下層の半導体薄膜(例えばアモルファスシリコンからなる薄膜)の内部へ拡散し、AlSiを形成する可能性がある。そうした場合にはスパイクが発生するおそれがあるので、それを防止するため、第3の薄層33を例えばチタン(Ti)によって構成するとよい。なお、第2の薄層32を熱拡散しにくい元素によって形成した場合には、第2階層の金属層を、(第3の薄層33を設けることなく)第1の薄層31と第2の薄層32との2層構造によって構成してもよい。
【0035】
画素駆動回路150は、窒化ケイ素などからなる保護膜(パッシベーション膜)217によって全体的に覆われており、その上には、さらに絶縁性の平坦化膜218が設けられている。平坦化膜218は、その表面が極めて高い平坦性を有するものであることが望まれる。また、平坦化膜218および保護膜217の一部領域には、微細な接続孔124が設けられている(図5,図8参照)。平坦化膜218は、特に保護膜217に比べて厚みが大きいので、例えばポリイミド等の有機材料など、パターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。接続孔124には第1電極層13が充填されており、駆動トランジスタTr1のソース電極を構成する金属層216Sとの導通がなされている。
【0036】
平坦化膜218の上に形成された第1電極層13は、反射層としての機能も兼ねており、できるだけ高い反射率を有する材料によって構成することが発光効率を高める上で望ましい。そのため、第1電極層13は、図6に示したように第1導電層131と第2導電層132との2層構造を有し、そのうち、第2電極層16と対向する側に位置する第2導電層132をアルミニウム(Al)やアルミニウムネオジウム合金(AlNd)などの高反射率材料によって構成している。なお、アルミニウムは、開口規定絶縁膜24の開口24Kを形成する際の現像処理に用いる現像液に対し、耐性が低く腐食しやすい。これに対し、AlNdは、現像液に対して耐性が高く腐食しにくい。このため、第2導電層132は、AlNdからなる単層構造、もしくは、アルミニウム層とAlNdとの2層構造「Al層(下層)\AlNd層(上層)」とするとよい。特に、Al層(下層)\AlNd層(上層)の2層構造の場合、単層のAlNd層と比べて低抵抗となるので好ましい。一方、第1導電層131については、モリブデン(Mo)やその化合物(合金)などの、低反射率材料によって構成するとよい。駆動トランジスタTr1や書込トランジスタTr2が設けられた画素駆動回路形成層112の側を光吸収率の高い層とすることにより、外光や有機発光素子10から洩れた光などの不要光を吸収するためである。また、第1電極層13は、全体の厚みが例えば100nm以上1000nm以下であり、そのうち、第1導電層131の厚みは例えば単体のモリブデンの場合には40nm以上であり、第2導電層132の厚みは例えばAlNdの場合には300〜500nmである。なお、第1電極層13は、上述したように、平坦化膜218の表面を覆うと共に接続孔124を充填するように形成されている。
【0037】
有機層14は、開口規定絶縁膜24によって画定された発光領域20に全面に亘って隙間無く形成されている。有機層14は、例えば図9に示したように、第1電極層13の側から正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、電子輸送層14Dが順に積層された構成を有する。但し、発光層14C以外の層は、必要に応じて設ければよい。
【0038】
正孔注入層14Aは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層14Bは、発光層14Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層14Cは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層14Dは、発光層14Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層14Dと第2電極層16との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
【0039】
また、有機層14は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっている。有機発光素子10Rの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機発光素子10Rの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機発光素子10Rの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0040】
有機発光素子10Gの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Gの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Gの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Gの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0041】
有機発光素子10Bの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Bの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Bの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、スピロ6Φ(spiro6Φ)により構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0042】
第2電極層16は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。第2電極層16は、例えば全ての有機発光素子10R,10G,10Bに共通に設けられており、各有機発光素子10R,10G,10Bの第1電極層13と対向配置されている。さらに第2電極層16は、有機層14のみならず、開口規定絶縁膜24をも覆うように形成されている。
【0043】
金属層17は、第1電極層13と同様に平坦化膜218の表面に形成されており、主たる電極としての第2電極層16における電圧降下を補うように機能するものである。金属層17は、図10に示したように、第1導電層171と第2導電層172との2層構造となっている。すでに述べたように、金属層17は、開口24Kの領域内の接続部21において第2電極層16によって覆われており、第2電極層16と電気的に接続された状態となっている。接続部21における金属層17は、第2導電層172の端面172Tが第1導電層171の端面171Tよりも内側に後退することにより、第1導電層171の上面171Sの一部が第2導電層172と接するように形成されている。すなわち、 第2電極層16は、第1導電層171の端面171Tおよび上面171Sの一部、ならびに第2導電層172の端面172Tおよび上面172Sと接している。
【0044】
第1導電層171および第2導電層172は、いずれも、第2電極層16よりも高い導電率を有する材料によって構成することが望ましい。また、第1導電層171については、有機層14から放出される光に対する吸収率が高い低反射率材料によって構成することが望ましい。第1電極層13と同様に、駆動トランジスタTr1や書込トランジスタTr2が設けられた画素駆動回路形成層112の側を光吸収率の高い層とすることにより、外光や有機発光素子10から洩れた光などの不要光を吸収するためである。また、第1導電層171および第2導電層172のいずれかは、表面酸化などの変質が生じにくく、第2電極層16との接触抵抗が良好な材料によって構成されることが望ましい。さらに、第1導電層171および第2導電層172は、製造工程の簡略化のため、それぞれ第1電極層13を構成する第1導電層131および第2導電層132と同一材料によって構成されることが望ましい。以上の観点から、第1導電層171の構成材料としては、モリブデンの単体もしくは化合物(合金)が適しており、第2導電層172の構成材料としては、アルミニウム(Al)の単体もしくは化合物(合金)が適している。特に、第1導電層171の構成材料としてモリブデンを採用すると共に、第2導電層172の構成材料として、モリブデンよりもウェットエッチング処理におけるエッチングレートの高い材料であるAlNdを採用するとよい。図10に示したような、金属層17における端部が階段状の2層構造を比較的容易に作製することができるからである。なお、金属層17は、開口率向上の観点においては、可能な限り幅を狭く(占有面積を小さく)することが望ましい。
【0045】
この金属層17が存在しない場合、電源(図示せず)から個々の有機発光素子10R,10G,10Bまでの距離に応じた電圧降下により、共通電源供給線GND(図2参照)と接続された第2電極層16の電位が各有機発光素子10R,10G,10B間で一定とならず、顕著なばらつきを生じ易い。このような第2電極層16の電位のばらつきは、表示領域110における輝度むらの原因となるので好ましくない。金属層17は、表示装置が大画面化した場合であっても電源から第2電極層16に至るまでの電圧降下を最小限度に抑え、このような輝度むらの発生を抑制するように機能する。
【0046】
有機発光素子10では、第1電極層13は反射層としての機能を発揮する一方、第2電極層16が半透過性反射層としての機能を発揮する。これら第1電極層13および第2電極層16により、有機層14に含まれる発光層14Cにおいて発生した光を多重反射させるようになっている。すなわち、有機発光素子10は、第1電極層13の有機層14側の端面を第1端部P1とし、第2電極層16の有機層14側の端面を第2端部P2とし、有機層14を共振部として、発光層14Cで発生した光を共振させて第2端部P2の側から取り出す共振器構造を有している。このような共振器構造を有することで、発光層14Cで発生した光が多重反射を起こし、一種の狭帯域フィルタとして作用することによって、取り出される光のスペクトルの半値幅が減少し色純度を高めることができる。また、封止基板19の側から入射した外光についても多重反射により減衰させることができ、さらに位相差板や偏光板(図示せず)との組み合わせにより有機発光素子10における外光の反射率を極めて小さくすることができる。
【0047】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。以下、図4〜図10に加え、図11〜図13を参照して、本実施の形態の表示装置の製造方法について説明する。
【0048】
まず、上述した材料よりなる基板111の上に、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2を含む画素駆動回路150を形成する。具体的には、まず、基板111上に例えばスパッタリングにより金属膜を形成する。そののち、例えばフォトリソグラフィ法やドライエッチング、あるいはウェットエッチングによりその金属膜をパターニングすることで、基板111上に金属層211G,221Gおよび信号線120Aを形成する。次いで、全面をゲート絶縁膜212によって覆う。さらに、ゲート絶縁膜212の上に、チャネル層213,223、チャネル保護膜214,224、ドレイン電極215D,225Dおよびソース電極215S,225S、ならびに、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sを順に、所定形状に形成する。ここで、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sの形成と併せて、走査線130Aおよび電源供給線140Aを第2の金属層として各々形成する。その際、金属層221Gと走査線130Aとを接続する接続部、金属層226Dと信号線120Aとを接続する接続部、金属層226Sと金属層211Gとを接続する接続部を予め形成しておく。そののち、全体を保護膜217で覆うことにより、画素駆動回路150を完成させる。その際、保護膜217における金属層216S上の所定位置に、ドライエッチングなどにより開口を形成しておく。
【0049】
画素駆動回路150を形成したのち、スピンコート法などにより、例えばポリイミドを主成分とする感光性樹脂を全面に亘って塗布する。次に、その感光性樹脂に対しフォトリソグラフィ処理を施すことにより、接続孔124を有する平坦化膜218を形成する。具体的には、例えば所定位置に開口を有するマスクを用いた選択的な露光および現像により、保護膜217に設けられた開口と連通する接続孔124を形成する。そののち、平坦化膜218を必要に応じて焼成してもよい。これにより画素駆動回路形成層112を得る。
【0050】
さらに、上述した所定の材料よりなる第1電極層13および金属層17を形成する。具体的には、例えばスパッタリングによって上述の材料からなる第1導電層131,171と第1導電層132,172とを全面成膜して2層の積層膜を形成したのち、その積層膜上に所定のマスクを用いて所定形状のレジストパターン(図示せず)を形成する。さらにそのレジストパターンをマスクとして用い、積層膜の選択的なエッチングを行うことにより、図11に示したように積層膜パターン17Zを形成する。その際、第1電極層13については、平坦化膜218の表面を覆うと共に接続孔124を充填するように形成する。また、のちに金属層17となる積層膜パターン17Zについては、平坦化膜218の表面に、第1電極層13の周囲を取り囲むように形成する。積層膜パターン17Zは、第1電極層13と同種の材料を用いて、第1電極層13と共に一括して形成することが望ましい。
【0051】
次いで、図12に示したように、積層膜パターン17Zに対し、所定のエッチング溶液を用いてウェットエッチング処理を行うことにより、比較的エッチングレートの高い第2導電層172の端面172Tを後退させ、第1導電層171の上面171Sを露出させる。これにより、金属層17が得られる。あるいは、第1導電層171がモリブデンからなる場合には、第1導電層171および第2導電層に対してハーフトーンマスクを用いた露光を行ったのち、ウェットエッチングもしくはドライエッチングを施すようにしてもよい。これにより、端部が階段状の金属層17が得られる。さらに、隣り合う有機発光素子10の第1電極層13同士の隙間を充填するように開口規定絶縁膜24を形成する。その際、図13に示したように、格子状にパターニングされた金属層17の交差点のいくつかの箇所に対応する位置に、開口24Kを形成するようにする。
【0052】
次いで、第1電極層13のうち、露出している部分を完全に覆うように上述した所定の材料および厚みの正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、電子輸送層14Dを、例えば蒸着法によって順に積層することで有機層14を形成する。さらに、有機層14を挟んで第1電極層13と対向するように覆い、かつ、接続部21において金属層17を覆うように全面に亘って第2電極層16を形成することで有機発光素子10を完成させる。
【0053】
こののち、全体を覆うように、上述した材料よりなる保護膜18を形成する。最後に、保護膜18の上に、接着層を形成し、この接着層を間にして封止基板19を貼り合わせる。以上により、表示装置が完成する。
【0054】
このようにして得られた表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書込トランジスタTr2のゲート電極(金属層221G)を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。その一方で、電源供給線駆動回路140が、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し第2電位よりも高い第1電位を供給する。これにより駆動トランジスタTr1の導通状態が選択され、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極層13と第2電極層16との間で多重反射し、第2電極層16、保護膜18および封止基板19を透過して取り出される。
【0055】
以上、説明したように、本実施の形態では、補助配線層としての金属層17が、第2電極層16との接続部21において端部が階段状となった2層構造を有しており、第1導電層171の膜面(上面)の一部が第2電極層16と接するようになっている。ここで、第1導電層171は、表面酸化などの変質が生じにくく、第2電極層16との接触抵抗が良好な材料によって構成される。このため、第2導電層172を、アルミニウムなどの表面酸化が発生しやすい材料によって形成した場合であっても、それに影響されることなく補助配線層と第2電極層との良好なコンタクトが確保される。その結果、表示画面内での発光輝度分布の均一性を向上させ、より高い表示性能を得ることができる。
【0056】
また、第1電極層13および金属層17における第1導電層131,171や第2階層の金属層における第1の薄層31を、モリブデンなどの光吸収率の高い材料によって構成するようにしたので、外光や有機発光素子10から洩れた光などの不要光を吸収することができる。仮に、これらの第1導電層131,171や第1の薄層31がアルミニウムなどの反射率の高い材料からなる場合には、上記の不要光が有機発光素子10と金属層17との隙間から基体11へ入射してしまう。その場合、不要光は、駆動トランジスタTr1や書込トランジスタTr2のチャネル領域213R,223Rへ、直接的に、あるいは第1導電層131,171の裏面(基体11側の面)や第1の薄層31の表面において反射を繰り返したのちに間接的に入射する。ところが本実施の形態では、上記の理由により、そのような不要光が駆動トランジスタTr1や書込トランジスタTr2のチャネル領域213R,223Rなどに入射するのを防ぐことができる。この結果、駆動トランジスタTr1や書込トランジスタTr2における誤動作による画素駆動回路150へのリーク電流の発生を確実に防ぎ、画質向上を図ることができる。また、駆動トランジスタTr1や書込トランジスタTr2の寿命劣化を防ぎ、動作信頼性を高めることもできる。特に、第1導電層131と第1導電層171とを同一材料によって一括形成し、第2導電層131と第2導電層172とを同一材料によって一括形成すれば、製造工程の簡略化を図ることができる。その際、第2導電層132として好適なアルミニウムやその合金を用いて第2導電層132,172を形成する場合であっても、上述した理由により、補助配線層(金属層17)と第2電極層との良好なコンタクトを確保することができるので、表示性能を損なうことがない。
【0057】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、金属層17が、開口24Kにおける接続部21においてのみ階段状の端部を有すると共に第2電極層16との接続を図るようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、全面に亘って金属層17が階段状の2層構造を有し、その全面に亘って第2電極層16と接するように構成してもよい。また、補助配線層(金属層17)は、2層構造に限らず、3層以上の多層構造であってもよい。3層構造としては、例えば基体の側からモリブデン層、アルミニウム層、AlNd層が順に積層されたものが挙げられる。また、金属層17の平面形状は、格子状のものに限定されるものではない。例えば、図3において、X方向またはY方向の一方向のみに延在するものであってもよい。
【0058】
また、本発明は、上記実施の形態において説明した各層の材料や積層順序、あるいは成膜方法などに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、第1電極層13をアノード、第2電極層16をカソードとする場合について説明したが、第1電極層13をカソード、第2電極層16をアノードとしてもよい。さらに、上記実施の形態では、有機発光素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層をさらに備えていてもよい。例えば、第1電極層13と有機層14との間に、酸化クロム(III)(Cr2 3 ),ITO(Indium-Tin Oxide:インジウム(In)およびスズ(Sn)の酸化物混合膜)などからなる正孔注入用薄膜層を備えていてもよい。
【0059】
加えてまた、上記実施の形態では、第2電極層16が半透過性反射層により構成されている場合について説明したが、第2電極層16は、半透過性反射層と透明電極とが第1電極層13の側から順に積層された構造としてもよい。この透明電極は、半透過性反射層の電気抵抗を下げるためのものであり、発光層で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。透明電極を構成する材料としては、例えば、ITOまたはインジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物が好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。透明電極の厚みは、例えば30nm以上1000nm以下とすることができる。また、この場合、半透過性反射層を一方の端部とし、透明電極を挟んで半透過性電極に対向する位置に他方の端部を設け、透明電極を共振部とする共振器構造を形成するようにしてもよい。さらに、そのような共振器構造を設けた上で、有機発光素子10R,10G,10Bを保護膜18で覆うようにし、この保護膜18を、透明電極を構成する材料と同程度の屈折率を有する材料により構成すれば、保護膜18を共振部の一部とすることができ、好ましい。
【0060】
加えてまた、上記各実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記各実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0061】
さらに、本発明では、補助配線層において、下層の第1導電層をチタン(Ti)によって形成すると共に、上層の第2導電層をAlNdによって形成するようにしてもよい。その場合、AlNdからなる第2導電層を燐硝酢酸をウェットエッチングしたのち、チタンからなる第1導電層を塩素系ガスでドライエッチングすることにより、図10に示したような階段状構造、すなわち、第1導電層の幅が第2導電層よりも広い構造とすることができる。
【符号の説明】
【0062】
10(10R,10G,10B)…有機発光素子、11…基体、111…基板、112…画素駆動回路形成層、12…発光素子形成層、13…第1電極層、131…第1導電層、132…第2導電層、14…有機層、14A…正孔注入層、14B…正孔輸送層、14C…発光層、14D…電子輸送層、16…第2電極層、17…金属層、171…第1導電層、172…第2導電層、18…保護膜、19…封止基板、20…発光領域、21…接続部、31〜33…第1〜第3の薄層、24…開口規定絶縁膜、24K…開口、124…接続孔、110…表示領域、120…信号線駆動回路、120A…信号線、130…走査線駆動回路、130A…走査線、140…電源供給線駆動回路、140A…電源供給線、150…画素駆動回路、217…保護膜(パッシベーション膜)、218…平坦化膜、Cs…キャパシタ(保持容量)、P1…第1端部、P2…第2端部、Tr1…駆動トランジスタ、Tr2…書込トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が順に積層されてなる発光素子と、
前記有機層を取り囲むように配置され、前記第2電極層と電気的に接続された補助配線層と
を備え、
前記補助配線層は、第1導電層と第2導電層との2層構造を含み、
前記第1導電層は、前記第2電極層との接触抵抗が前記第2導電層よりも低いものであり、
前記補助配線層における2層構造は、前記第2導電層の端面が前記第1導電層の端面よりも内側に後退することにより、前記第1導電層の上面の一部が前記第2電極層と接するように形成されている
表示装置。
【請求項2】
前記第1電極層もまた、前記第1導電層と前記第2導電層との2層構造を含み、
前記第2導電層は、前記有機層からの光に対する反射率が前記第1導電層よりも高いものである
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2導電層は、前記第1導電層よりもウェットエッチング処理におけるエッチングレートの高い材料からなる
請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2電極層は、前記補助配線層の2層構造における前記第1導電層の端面ならびに前記第2導電層の上面および端面とも接している
請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1導電層および第2導電層は、前記第2電極層よりも高い導電率を有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2導電層は、前記第1導電層よりも高い導電率を有する
請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1導電層は、モリブデン(Mo)の単体もしくは化合物からなり、
前記第2導電層は、アルミニウム(Al)の単体もしくは化合物からなる
請求項1記載の表示装置。
【請求項8】
前記基体上に配列された複数の前記発光素子を備え、
前記第1電極層および有機層は、前記発光素子ごとに絶縁膜によって分離されており、
前記第2電極層は、前記複数の発光素子に共通して設けられている
請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
前記補助配線層は、前記複数の発光素子の第1電極層および有機層を積層面内においてそれぞれ取り囲むように設けられ、かつ、前記絶縁膜を前記発光素子ごとに分離するように設けられている
請求項8記載の表示装置。
【請求項10】
前記基体は、映像信号に基づいて前記発光素子の表示駆動を行う駆動素子を有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項11】
前記駆動素子は、前記第1電極層における第1導電層と導通する電極を有し、
前記電極は、前記第1電極層の側から順に、前記第1導電層と同一の材料からなる第1の層と、前記第1の層よりも高い導電率を有する第2の層とを含む
請求項10記載の表示装置。
【請求項12】
前記第1の層は、前記有機層からの光に対する反射率が前記第2の層よりも低いものである
請求項11記載の表示装置。
【請求項13】
前記第1の層は、モリブデン(Mo)の単体もしくは化合物からなり、
前記第2の層は、アルミニウム(Al)の単体もしくは化合物からなる
請求項12記載の表示装置。
【請求項14】
前記電極は、前記第2の層の、前記第1の層とは反対側に、モリブデン(Mo)の単体もしくは化合物、またはチタン(Ti)の単体もしくは化合物からなる第3の層をさらに含む
請求項13記載の表示装置。
【請求項15】
基体上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が順に積層されてなる発光素子と、前記有機層を取り囲むように配置されると共に前記第2電極層と電気的に接続される補助配線層とを備えた表示装置の製造方法であって、
前記基体上に、第1導電層と、前記第2電極層との接触抵抗が前記第1導電層よりも高い第2導電層とを順に積層することにより、積層膜を形成する工程と、
前記積層膜を所定形状にパターニングすることにより、積層膜パターンを形成する工程と、
前記第1導電層よりも前記第2導電層に対して高い溶解性を示すエッチング溶液を用いて前記積層膜パターンのエッチング処理を行い、前記第2導電層の端面を後退させて前記第1導電層の上面を一部露出させることにより前記補助配線層を形成する工程と
を含む表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記第2導電層を、前記有機層からの光に対する反射率が前記第1導電層よりも高い材料によって形成し、
前記第1電極層を、前記積層膜パターンの一部に含まれるように形成する
請求項15記載の表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記第1導電層を、モリブデン(Mo)の単体もしくは化合物を用いて形成し、
前記第2導電層は、アルミニウム(Al)の単体もしくは化合物を用いて形成する
請求項16記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−244808(P2010−244808A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91292(P2009−91292)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】