表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器
【課題】信号書き込みを2回に分けて行う際に、低階調の画質を向上させることの可能な表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器を提供する。
【解決手段】階調補完書き込みを行ったのち、ブートストラップ動作が始まったら、ブートストラップ動作が直ちに停止され、移動度補正が開始される(T6〜T8)。移動度補正が終了したのち、ブートストラップ動作が始まったら、ブートストラップ動作が直ちに停止され、信号電圧の書込みが行われる(T9〜T11)。このように、2回目の信号書込みを行う前に、移動度補正を行うようにすることにより、2回目の信号電圧Vsig2の値とは無関係に、移動度補正を行う。
【解決手段】階調補完書き込みを行ったのち、ブートストラップ動作が始まったら、ブートストラップ動作が直ちに停止され、移動度補正が開始される(T6〜T8)。移動度補正が終了したのち、ブートストラップ動作が始まったら、ブートストラップ動作が直ちに停止され、信号電圧の書込みが行われる(T9〜T11)。このように、2回目の信号書込みを行う前に、移動度補正を行うようにすることにより、2回目の信号電圧Vsig2の値とは無関係に、移動度補正を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素ごとに配置した発光素子で画像を表示する表示装置およびその駆動方法に関する。また、本発明は、上記表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、画素の発光素子として、流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の光学素子、例えば有機EL(electro luminescence)素子を用いた表示装置が開発され、商品化が進められている。
【0003】
有機EL素子は、液晶素子などと異なり自発光素子である。そのため、有機EL素子を用いた表示装置(有機EL表示装置)では、光源(バックライト)が必要ないので、光源を必要とする液晶表示装置と比べて画像の視認性が高く、消費電力が低く、かつ素子の応答速度が速い。
【0004】
有機EL表示装置では、液晶表示装置と同様、その駆動方式として単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とがある。前者は、構造が単純であるものの、大型かつ高精細の表示装置の実現が難しいなどの問題がある。そのため、現在では、アクティブマトリクス方式の開発が盛んに行なわれている。この方式は、画素ごとに配した発光素子に流れる電流を、発光素子ごとに設けた駆動回路内の能動素子(一般にはTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ))によって制御するものである。
【0005】
ところで、一般的に、有機EL素子の電流−電圧(I−V)特性は、時間の経過に従って劣化(経時劣化)する。有機EL素子を電流駆動する画素回路では、有機EL素子のI−V特性が経時変化すると、駆動トランジスタに流れる電流値が変化するので、有機EL素子に流れる電流値も変化し、その電流値に応じて発光輝度も変化する。
【0006】
また、駆動トランジスタの閾値電圧Vthや移動度μが経時的に変化したり、製造プロセスのばらつきによって閾値電圧Vthや移動度μが画素回路ごとに異なったりする場合がある。駆動トランジスタの閾値電圧Vthや移動度μが画素回路ごとに異なる場合には、駆動トランジスタに流れる電流値が画素回路ごとにばらつくので、駆動トランジスタのゲートに同じ電圧を印加しても、有機EL素子の発光輝度がばらつき、画面の一様性(ユニフォーミティ)が損なわれる。
【0007】
そこで、有機EL素子の発光輝度を一定に保つようにするために、有機EL素子のI−V特性の変動に対する補償機能および駆動トランジスタの閾値電圧Vthや移動度μの変動に対する補正機能を組み込んだ表示装置が開発されている(例えば、特許文献1〜4参照)。これら特許文献1〜4には、μ補正と信号書き込みとを同時に行ったり、信号書き込みを行いながらその最後の期間に信号書き込みと並行してμ補正を行ったりすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−171827号公報
【特許文献2】特開2007−108381号公報
【特許文献3】特開2007−133283号公報
【特許文献4】特開2007−133284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜4に記載の駆動方法を応用して、閾値補正を行った後に、信号書き込みを2回に分けて行うことで映像階調を増大させる方法が過去に提案されている。しかし、この方法では、1回目の信号書き込みがなされた後、2回目の信号書き込みがなされるまでの間、ブートストラップが生じてしまう。そのため、1回目の信号電圧値を大きくすることができず、1回目の信号書込みの際に移動度補正を十分に行うことができない。従って、2回目の信号電圧値が小さい場合には、2回目の信号書込みの際にも移動度補正を十分に行うことができないので、低階調の画質が低下してしまうという問題があった。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、信号書き込みを2回に分けて行う際に、低階調の画質を向上させることの可能な表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表示装置は、画素回路アレイ部と、走査線駆動回路と、信号線駆動回路とを備えたものである。画素回路アレイ部は、行状に配置された複数の走査線と、列状に配置された複数の信号線と、各走査線と各信号線との交差部に対応して行列状に配置された複数の発光素子および複数の画素回路とを含んでいる。信号線駆動回路は、映像信号に対応する階調補完電圧と、固定値の移動度補正電圧と、映像信号に対応する信号電圧とをこの順に各信号線に印加して、選択対象の画素回路への書き込みを行うようになっている。走査線駆動回路は、複数の走査線に選択パルスを順次印加して、複数の発光素子および複数の画素回路を順次選択するようになっている。走査線駆動回路は、さらに、信号線駆動回路が複数の信号線に移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスを印加するようになっている。
【0012】
本発明の電子機器は、上記表示装置を備えたものである。
【0013】
本発明の表示装置の駆動方法は、以下の2つのステップを含むものである。
(A)以下の構成を備えた表示装置を用意するステップ
(B)走査線駆動回路を用いて、信号線駆動回路が複数の信号線に移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスを印加するステップ
【0014】
上記駆動方法が用いられる表示装置は、画素回路アレイ部と、走査線駆動回路と、信号線駆動回路とを備えたものである。画素回路アレイ部は、行状に配置された複数の走査線と、列状に配置された複数の信号線と、各走査線と各信号線との交差部に対応して行列状に配置された複数の発光素子および複数の画素回路とを含んでいる。走査線駆動回路は、複数の走査線に選択パルスを順次印加して、複数の発光素子および複数の画素回路を順次選択するようになっている。信号線駆動回路は、映像信号に対応する階調補完電圧と、固定値の移動度補正電圧と、映像信号に対応する信号電圧とをこの順に各信号線に印加して、選択対象の画素回路への書き込みを行うようになっている。
【0015】
本発明の表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器では、信号線駆動回路が複数の信号線に移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスが印加される。これにより、信号電圧の大きさに依らずに画素回路の移動度を補正することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器によれば、信号電圧の大きさに依らずに画素回路の移動度を補正することができるようにした。これにより、信号書き込みを2回に分けて行う際に、低階調の画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の一例を表す構成図である。
【図2】図1の画素回路アレイ部の内部構成の一例を表す構成図である。
【図3】図1の表示装置のライン動作の一例について説明するための波形図である。
【図4】比較例に係る表示装置の動作の一例について説明するための波形図である。
【図5】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図6】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図7】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図8】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図9】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図10】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
1.1 表示装置の概略構成
1.2 表示装置の動作
1.3 作用・効果
2.モジュールおよび適用例
【0019】
<1.実施の形態>
(1.1 表示装置の概略構成)
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置1の概略構成を表したものである。この表示装置1は、表示パネル10と、駆動回路20とを備えている。表示パネル10は、例えば、複数の有機EL素子11R,11G,11B(発光素子)がマトリクス状に配置された画素回路アレイ部13を有している。本実施の形態では、例えば、互いに隣り合う3つの有機EL素子11R,11G,11Bが1つの画素12を構成している。なお、以下では、有機EL素子11R,11G,11Bの総称として有機EL素子11を適宜、用いるものとする。駆動回路20は、画素回路アレイ部13を駆動するものであり、例えば、映像信号処理回路21、タイミング生成回路22、信号線駆動回路23、走査線駆動回路24および電源線駆動回路25を有している。
【0020】
[画素回路アレイ部]
図2は、画素回路アレイ部13の回路構成の一例を表したものである。画素回路アレイ部13は、表示パネル10の表示領域に形成されている。画素回路アレイ部13は、例えば、図1、図2に示したように、行状に配置された複数の走査線WSLと、列状に配置された複数の信号線DTLと、走査線WSLに沿って行状に配置された複数の電源線PSLとを有している。各走査線WSLと各信号線DTLとの交差部に対応して、複数の有機EL素子11および画素回路14が行列状に配置(2次元配置)されている。画素回路14は、例えば、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタTr2および保持容量Csによって構成されたものであり、2Tr1Cの回路構成となっている。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、例えば、nチャネルMOS型の薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により形成されている。なお、TFTの種類は特に限定されるものではなく、例えば、逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)であってもよいし、スタガー構造(トップゲート型)であってもよい。また、駆動トランジスタTr1または書き込みトランジスタTr2は、pチャネルMOS型のTFTであってもよい。
【0021】
画素回路アレイ部13において、各信号線DTLは、信号線駆動回路23の出力端(図示せず)と、書き込みトランジスタTr2のドレイン電極(図示せず)に接続されている。各走査線WSLは、走査線駆動回路24の出力端(図示せず)と、書き込みトランジスタTr2のゲート電極(図示せず)に接続されている。各電源線PSLは、電源線駆動回路25の出力端(図示せず)と、駆動トランジスタTr1のドレイン電極(図示せず)に接続されている。書き込みトランジスタTr2のソース電極(図示せず)は、駆動トランジスタTr1のゲート電極(図示せず)と、保持容量Csの一端に接続されている。駆動トランジスタTr1のソース電極(図示せず)と保持容量Csの他端とが、有機EL素子11のアノード電極(図示せず)に接続されている。有機EL素子11のカソード電極(図示せず)は、例えばグラウンド線GNDに接続されている。なお、カソード電極は、各有機EL素子11の共通電極として用いられており、例えば、表示パネル10の表示領域全体に渡って連続して形成され、平板状となっている。
【0022】
[駆動回路]
次に、画素回路アレイ部13の周辺に設けられた駆動回路20内の各回路について、図1を参照して説明する。映像信号処理回路21は、外部から入力されたデジタルの映像信号20Aに対して所定の補正を行うと共に、補正した後の映像信号を信号線駆動回路23に出力するものである。所定の補正としては、例えば、ガンマ補正や、オーバードライブ補正などが挙げられる。タイミング生成回路22は、信号線駆動回路23、走査線駆動回路24および電源線駆動回路25が連動して動作するように制御するものである。タイミング生成回路22は、例えば、外部から入力された同期信号20Bに応じて(同期して)、これらの回路に対して制御信号22Aを出力するようになっている。
【0023】
信号線駆動回路23は、制御信号22Aの入力に応じて(同期して)、映像信号処理回路21から入力された映像信号20Aに対応するアナログの映像信号を、各信号線DTLに印加して、アナログの映像信号またはそれに対応する信号を選択対象の画素回路14に書き込むものである。具体的には、信号線駆動回路23は、映像信号20Aに対応する階調補完電圧Vsig1と、固定値の移動度補正電圧Vofs2と、映像信号に対応する信号電圧Vsig2とをこの順に各信号線DTLに印加して、選択対象の画素回路14への書き込みを行うものである。なお、書き込みとは、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間に所定の電圧を印加することを指している。信号線駆動回路23は、例えば、信号電圧Vsig2および階調補完電圧Vsig1と、有機EL素子11の消光時に駆動トランジスタTr1のゲートに印加する電圧Vofs1および移動度補正電圧Vofs2とを出力することが可能となっている。ここで、階調補完電圧Vsig1は、信号電圧Vsig2と所定の関係にあり、例えば、信号電圧Vsig2以下の電圧値となっている。また、電圧Vofs1は、駆動トランジスタTr1の閾値電圧をVthとすると、(Vofs1-Vth)が有機EL素子11の閾値電圧Velとカソード電圧Vcaを足し合わせた電圧(Vel+Vca)よりも低い電圧値(一定値)となるように設定されている。電圧Vofs2は、駆動トランジスタTr1の移動度を補正する際に用いられる電圧である。電圧Vofs2は階調補完書き込みにおけるソース電位の上昇をΔV1、移動度補正におけるソース電位の上昇をΔV2とすると、(Vofs1-Vth+ΔV1+ΔV2)が電圧(Vel+Vca)よりも低い電圧値(一定値)となるように設定されている。
【0024】
走査線駆動回路24は、制御信号22Aの入力に応じて(同期して)、複数の走査線WSLに選択パルスを順次印加して、複数の有機EL素子11および複数の画素回路14を順次選択するものである。走査線駆動回路24は、例えば、書き込みトランジスタTr2をオンさせるときに印加する電圧Vonと、書き込みトランジスタTr2をオフさせるときに印加する電圧Voffとを出力することが可能となっている。ここで、電圧Vonは、書き込みトランジスタTr2のオン電圧以上の値(一定値)となっている。電圧Voffは、書き込みトランジスタTr2のオン電圧よりも低い値(一定値)となっている。
【0025】
電源線駆動回路25は、制御信号22Aの入力に応じて(同期して)、複数の電源線PSLに制御パルスを順次印加して、有機EL素子11の発光および消光を制御するものである。電源線駆動回路25は、例えば、駆動トランジスタTr1に電流を流すときに印加する電圧VccHと、駆動トランジスタTr1に電流を流さないときに印加する電圧VccLとを出力することが可能となっている。ここで、電圧VccLは、有機EL素子11の閾値電圧Velと、有機EL素子11のカソードの電圧Vcaとを足し合わせた電圧(Vel+Vca)よりも低い電圧値(一定値)である。VccHは、電圧(Vel+Vca)以上の電圧値(一定値)である。
【0026】
(1.2 表示装置の動作)
図3は、表示装置1を駆動させたときの各種波形の一例を表したものである。図3(A)〜(C)には、信号線DTLにVofs1、Vsig1、Vofs2、Vsig2が周期的に印加され、電源線PSLにVccL、VccHが所定のタイミングで印加され、走査線WSLにVon、Voffが所定のタイミングで印加されている様子が示されている。図3(D),(E)には、信号線DTL、走査線WSLおよび電源線PSLへの電圧印加に応じて、駆動トランジスタTr1のゲート電圧Vgおよびソース電圧Vsが時々刻々変化している様子が示されている。
【0027】
[Vth補正準備期間]
まず、Vth補正の準備を行う。具体的には、電源線駆動回路25が電源線PSLの電圧をVccHからVccLに下げる(T1)。すると、ソース電圧VsがVccLとなり、有機EL素子11が消光すると共に、ゲート電圧Vgは発光時のVgsをVgs0とすると(VccL+Vgs0)となる。次に、信号線DTLの電圧がVofs1となっており、かつ電源線PSLの電圧がVccLとなっている間に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVoffからVonに上げる。
【0028】
[最初のVth補正期間]
次に、Vthの補正を行う。具体的には、信号線DTLの電圧がVofs1となっている間に、電源線駆動回路25が電源線PSLの電圧をVccLからVccHに上げる(T2)。すると、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れ、ソース電圧Vsが上昇する。その後、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVofs1からVsig1に切り替える前に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T3)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、Vthの補正が一旦停止する。
【0029】
[最初の休止期間]
Vth補正が休止している期間中は、先のVth補正を行った行(画素)とは異なる他の行(画素)において、信号線DTLの電圧のサンプリングが行われる。なお、Vth補正が不十分である場合、すなわち、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間の電位差Vgsが駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthよりも大きい場合には、以下のようになる。Vth補正休止期間中にも、先のVth補正を行った行(画素)において、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れ、ソース電圧Vsが上昇し、保持容量Csを介したカップリングによりゲート電圧Vgも上昇する。
【0030】
[2回目のVth補正期間]
Vth補正休止期間が終了した後、Vthの補正を再び行う。具体的には、信号線DTLの電圧がVofs1となっており、Vth補正が可能となっている時に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T4)、駆動トランジスタTr1のゲートを信号線DTLに接続する。このとき、ソース電圧Vsが(Vofs1−Vth)よりも低い場合(Vth補正がまだ完了していない場合)には、駆動トランジスタTr1がカットオフするまで(電位差VgsがVthになるまで)、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れる。その結果、保持容量CsがVthに充電され、電位差VgsがVthとなる。その後、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVofs1からVsig1に切り替える前に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T5)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなるので、電位差Vgsを信号線DTLの電圧の大きさに拘わらずVthのままで維持することができる。このように、電位差VgsをVthに設定することにより、駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthが画素回路14ごとにばらついた場合であっても、有機EL素子11の発光輝度がばらつくのをなくすことができる。
【0031】
[2回目の休止期間]
その後、Vth補正の休止期間中に、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVofsからVsig1に切り替える。
【0032】
[階調補完書き込み期間]
Vth補正休止期間が終了した後、階調補完書き込みを行う。具体的には、信号線DTLの電圧がVsig1となっている間に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T6)、駆動トランジスタTr1のゲートを信号線DTLに接続する。すると、駆動トランジスタTr1のゲート電圧がVsig1となる。このとき、有機EL素子11のアノード電圧はこの段階ではまだ有機EL素子11の閾値電圧Velとカソード電圧Vcaを足し合わせた電圧(Vel+Vca)よりも小さく、有機EL素子11はカットオフしている。そのため、電流Idは有機EL素子11の素子容量(図示せず)に流れ、素子容量が充電されるので、ソース電圧VsがΔV1だけ上昇し、やがて電位差VgsがVsig1+Vth−ΔV1となる。このようにして、階調補完書き込みと同時に移動度補正が行われる。
【0033】
[1回目のブートストラップ期間]
次に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T7)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間の電圧Vgsを一定に維持した状態で、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れる。その結果、ソース電圧Vsが上昇し、それに連動して駆動トランジスタTr1のゲートも上昇する。
【0034】
[移動度補正期間]
ブートストラップ動作が始まったら、直ちに、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVsig1からVofs2に切り替える。さらに、続けて、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T8)、駆動トランジスタTr1のゲートを信号線DTLに接続する。すると、駆動トランジスタTr1のゲート電圧がVofs2となり、ブートストラップ動作が停止する。このとき、有機EL素子11のアノード電圧はこの段階ではまだ電圧(Vel+Vca)よりも小さく、有機EL素子11はカットオフしている。そのため、電流Idは有機EL素子11の素子容量(図示せず)に流れ、素子容量が充電されるので、ソース電圧VsがΔV2だけ上昇し、やがて電位差VgsがVofs2+Vth−ΔV1−ΔV2となる。このようにして、信号電圧Vsig2の書込みとは別個に(独立して)移動度補正が行われる。
【0035】
[2回目のブートストラップ期間]
次に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T9)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間の電圧Vgsを一定に維持した状態で、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れる。その結果、ソース電圧Vsが上昇し、それに連動して駆動トランジスタTr1のゲートも上昇する。
【0036】
[書き込み期間]
ブートストラップ動作が始まったら、直ちに、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVofs2からVsig2に切り替える。さらに、続けて、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T10)、駆動トランジスタTr1のゲートを信号線DTLに接続する。すると、駆動トランジスタTr1のゲート電圧がVsig2となり、ブートストラップ動作が停止する。このとき、有機EL素子11のアノード電圧はこの段階でも電圧(Vel+Vca)よりも小さく、有機EL素子11はカットオフしている。そのため、電流Idは有機EL素子11の素子容量(図示せず)に流れ、素子容量が充電されるので、ソース電圧VsがΔV3だけ上昇し、やがて電位差VgsがVsig2+Vth−ΔV1−ΔV2−ΔV3となる。このようにして、信号電圧Vsig2の書込みが行われる。
【0037】
[発光期間]
次に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T11)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間の電圧Vgsを一定に維持した状態で、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れる。その結果、ソース電圧Vsが上昇し、それに連動して駆動トランジスタTr1のゲートも上昇し、有機EL素子11が所望の輝度で発光する。
【0038】
[繰り返し]
次に、所定の期間が経過したのち、発光期間を終了する。具体的には、電源線駆動回路25が電源線PSLの電圧をVccHからVccLに下げる(T1)。すると、ソース電圧VsがVccLとなり、有機EL素子11が消光する。その後、上述した各期間に対応した駆動を実行する。このようにして、駆動回路20は、発光期間、消光期間(Vth補正準備期間〜書き込み期間)をフレーム期間ごとに繰り返すと共に、例えば1水平ラインごとに行方向にスキャンする。
【0039】
本実施の形態の表示装置1では、上記のようにして、各画素12において画素回路14がオンオフ制御され、各画素12の有機EL素子11に駆動電流が注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、陽極と陰極との間で多重反射し、陰極等を透過して外部に取り出される。その結果、表示パネル10において画像が表示される。
【0040】
(1.3 作用・効果)
ところで、本実施の形態では、階調補完書き込みを行ったのち、ブートストラップ動作が始まったら、ブートストラップ動作が直ちに停止され、移動度補正が開始される。例えば、信号線DTLの電圧がVsig1となっており、かつ電源線PSLの電圧がVccHとなっているときに、走査線WSLの電圧がVonからVoffに下げられたら、直ちに、信号線DTLの電圧がVsig1からVofs2に切り替えられ、さらに、走査線WSLの電圧がVoffからVonに上げられる。
【0041】
さらに、本実施の形態では、移動度補正が終了したのち、ブートストラップ動作が始まったら、ブートストラップ動作が直ちに停止され、信号電圧の書込みが行われる。例えば、信号線DTLの電圧がVofs2となっており、かつ電源線PSLの電圧がVccHとなっているときに、走査線WSLの電圧がVonからVoffに下げられたら、直ちに、信号線DTLの電圧がVofs2からVsig2に切り替えられ、さらに、走査線WSLの電圧がVonからVoffに下げられる。
【0042】
このように、本実施の形態では、2回目の信号書込みを行う前に、移動度補正を行うようにした。これにより、例えば、階調補完書き込みを行ったのち、ブートストラップ動作が始まっても、ブートストラップ動作を停止させず、そのまま、移動度補正と書き込みを同時に行った場合(図4参照)と比べて、移動度補正を確実に行うことができる。従って、例えば、2回目の信号電圧Vsig2の値が小さい場であっても、2回目の信号電圧Vsig2の値とは無関係に、移動度補正を確実に行うことができるので、低階調の画質を向上させることができる。
【0043】
<2.モジュールおよび適用例>
以下、上述した実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0044】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置1は、例えば、図5に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板31の一辺に、封止用基板32から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、駆動回路20の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0045】
(適用例1)
図6は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0046】
(適用例2)
図7は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0047】
(適用例3)
図8は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0048】
(適用例4)
図9は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0049】
(適用例5)
図10は、上記実施の形態の表示装置1が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0050】
以上、実施の形態および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0051】
例えば、上記実施の形態等では、表示装置1がアクティブマトリクス型である場合について説明したが、アクティブマトリクス駆動のための画素回路14の構成は上記実施の形態等で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを画素回路14に追加してもよい。その場合、画素回路14の変更に応じて、上述した信号線駆動回路23、走査線駆動回路24、電源線駆動回路25のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0052】
また、上記実施の形態等では、信号線駆動回路23、走査線駆動回路24、電源線駆動回路25の駆動をタイミング生成回路22が制御していたが、他の回路がこれらの駆動を制御するようにしてもよい。また、信号線駆動回路23、走査線駆動回路24、電源線駆動回路25の制御は、ハードウェア(回路)で行われていてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われていてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態等では、画素回路14が、2Tr1Cの回路構成となっていたが、トランジスタが有機EL素子11に直列に接続された回路構成を含んでいるものであれば、2Tr1Cの回路構成以外の回路構成となっていてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態等では、駆動トランジスタTr1,書き込みトランジスタTr2は、nチャネルMOS型の薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により形成されている場合が例示されていたが、pチャネルトランジスタ(例えばpチャネルMOS型のTFT)により形成されていてもよい。ただし、その場合には、トランジスタTr2のソースおよびドレインのうち電源線PSLと未接続の方と保持容量Csの他端とを有機EL素子11のカソードに接続し、有機EL素子11のアノードをGNDなどに接続することが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1…表示装置、10…表示パネル、11,11R,11G,11B…有機EL素子、12…画素、13…画素回路アレイ部、14…画素回路、20…駆動回路、20A…映像信号、20B…同期信号、21…映像信号処理回路、22…タイミング生成回路、22A…制御信号、23…信号線駆動回路、24…走査線駆動回路、25…電源線駆動回路、Cs…保持容量、DTL…信号線、Id…電流、PSL…電源線、Tr1…駆動トランジスタ、Tr2…書き込みトランジスタ、Vg…ゲート電圧、Vgs…ゲート−ソース間電圧、Vs…ソース電圧、Vth…閾値電圧、WSL…走査線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素ごとに配置した発光素子で画像を表示する表示装置およびその駆動方法に関する。また、本発明は、上記表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、画素の発光素子として、流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の光学素子、例えば有機EL(electro luminescence)素子を用いた表示装置が開発され、商品化が進められている。
【0003】
有機EL素子は、液晶素子などと異なり自発光素子である。そのため、有機EL素子を用いた表示装置(有機EL表示装置)では、光源(バックライト)が必要ないので、光源を必要とする液晶表示装置と比べて画像の視認性が高く、消費電力が低く、かつ素子の応答速度が速い。
【0004】
有機EL表示装置では、液晶表示装置と同様、その駆動方式として単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とがある。前者は、構造が単純であるものの、大型かつ高精細の表示装置の実現が難しいなどの問題がある。そのため、現在では、アクティブマトリクス方式の開発が盛んに行なわれている。この方式は、画素ごとに配した発光素子に流れる電流を、発光素子ごとに設けた駆動回路内の能動素子(一般にはTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ))によって制御するものである。
【0005】
ところで、一般的に、有機EL素子の電流−電圧(I−V)特性は、時間の経過に従って劣化(経時劣化)する。有機EL素子を電流駆動する画素回路では、有機EL素子のI−V特性が経時変化すると、駆動トランジスタに流れる電流値が変化するので、有機EL素子に流れる電流値も変化し、その電流値に応じて発光輝度も変化する。
【0006】
また、駆動トランジスタの閾値電圧Vthや移動度μが経時的に変化したり、製造プロセスのばらつきによって閾値電圧Vthや移動度μが画素回路ごとに異なったりする場合がある。駆動トランジスタの閾値電圧Vthや移動度μが画素回路ごとに異なる場合には、駆動トランジスタに流れる電流値が画素回路ごとにばらつくので、駆動トランジスタのゲートに同じ電圧を印加しても、有機EL素子の発光輝度がばらつき、画面の一様性(ユニフォーミティ)が損なわれる。
【0007】
そこで、有機EL素子の発光輝度を一定に保つようにするために、有機EL素子のI−V特性の変動に対する補償機能および駆動トランジスタの閾値電圧Vthや移動度μの変動に対する補正機能を組み込んだ表示装置が開発されている(例えば、特許文献1〜4参照)。これら特許文献1〜4には、μ補正と信号書き込みとを同時に行ったり、信号書き込みを行いながらその最後の期間に信号書き込みと並行してμ補正を行ったりすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−171827号公報
【特許文献2】特開2007−108381号公報
【特許文献3】特開2007−133283号公報
【特許文献4】特開2007−133284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜4に記載の駆動方法を応用して、閾値補正を行った後に、信号書き込みを2回に分けて行うことで映像階調を増大させる方法が過去に提案されている。しかし、この方法では、1回目の信号書き込みがなされた後、2回目の信号書き込みがなされるまでの間、ブートストラップが生じてしまう。そのため、1回目の信号電圧値を大きくすることができず、1回目の信号書込みの際に移動度補正を十分に行うことができない。従って、2回目の信号電圧値が小さい場合には、2回目の信号書込みの際にも移動度補正を十分に行うことができないので、低階調の画質が低下してしまうという問題があった。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、信号書き込みを2回に分けて行う際に、低階調の画質を向上させることの可能な表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表示装置は、画素回路アレイ部と、走査線駆動回路と、信号線駆動回路とを備えたものである。画素回路アレイ部は、行状に配置された複数の走査線と、列状に配置された複数の信号線と、各走査線と各信号線との交差部に対応して行列状に配置された複数の発光素子および複数の画素回路とを含んでいる。信号線駆動回路は、映像信号に対応する階調補完電圧と、固定値の移動度補正電圧と、映像信号に対応する信号電圧とをこの順に各信号線に印加して、選択対象の画素回路への書き込みを行うようになっている。走査線駆動回路は、複数の走査線に選択パルスを順次印加して、複数の発光素子および複数の画素回路を順次選択するようになっている。走査線駆動回路は、さらに、信号線駆動回路が複数の信号線に移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスを印加するようになっている。
【0012】
本発明の電子機器は、上記表示装置を備えたものである。
【0013】
本発明の表示装置の駆動方法は、以下の2つのステップを含むものである。
(A)以下の構成を備えた表示装置を用意するステップ
(B)走査線駆動回路を用いて、信号線駆動回路が複数の信号線に移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスを印加するステップ
【0014】
上記駆動方法が用いられる表示装置は、画素回路アレイ部と、走査線駆動回路と、信号線駆動回路とを備えたものである。画素回路アレイ部は、行状に配置された複数の走査線と、列状に配置された複数の信号線と、各走査線と各信号線との交差部に対応して行列状に配置された複数の発光素子および複数の画素回路とを含んでいる。走査線駆動回路は、複数の走査線に選択パルスを順次印加して、複数の発光素子および複数の画素回路を順次選択するようになっている。信号線駆動回路は、映像信号に対応する階調補完電圧と、固定値の移動度補正電圧と、映像信号に対応する信号電圧とをこの順に各信号線に印加して、選択対象の画素回路への書き込みを行うようになっている。
【0015】
本発明の表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器では、信号線駆動回路が複数の信号線に移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスが印加される。これにより、信号電圧の大きさに依らずに画素回路の移動度を補正することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器によれば、信号電圧の大きさに依らずに画素回路の移動度を補正することができるようにした。これにより、信号書き込みを2回に分けて行う際に、低階調の画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の一例を表す構成図である。
【図2】図1の画素回路アレイ部の内部構成の一例を表す構成図である。
【図3】図1の表示装置のライン動作の一例について説明するための波形図である。
【図4】比較例に係る表示装置の動作の一例について説明するための波形図である。
【図5】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図6】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図7】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図8】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図9】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図10】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
1.1 表示装置の概略構成
1.2 表示装置の動作
1.3 作用・効果
2.モジュールおよび適用例
【0019】
<1.実施の形態>
(1.1 表示装置の概略構成)
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置1の概略構成を表したものである。この表示装置1は、表示パネル10と、駆動回路20とを備えている。表示パネル10は、例えば、複数の有機EL素子11R,11G,11B(発光素子)がマトリクス状に配置された画素回路アレイ部13を有している。本実施の形態では、例えば、互いに隣り合う3つの有機EL素子11R,11G,11Bが1つの画素12を構成している。なお、以下では、有機EL素子11R,11G,11Bの総称として有機EL素子11を適宜、用いるものとする。駆動回路20は、画素回路アレイ部13を駆動するものであり、例えば、映像信号処理回路21、タイミング生成回路22、信号線駆動回路23、走査線駆動回路24および電源線駆動回路25を有している。
【0020】
[画素回路アレイ部]
図2は、画素回路アレイ部13の回路構成の一例を表したものである。画素回路アレイ部13は、表示パネル10の表示領域に形成されている。画素回路アレイ部13は、例えば、図1、図2に示したように、行状に配置された複数の走査線WSLと、列状に配置された複数の信号線DTLと、走査線WSLに沿って行状に配置された複数の電源線PSLとを有している。各走査線WSLと各信号線DTLとの交差部に対応して、複数の有機EL素子11および画素回路14が行列状に配置(2次元配置)されている。画素回路14は、例えば、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタTr2および保持容量Csによって構成されたものであり、2Tr1Cの回路構成となっている。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、例えば、nチャネルMOS型の薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により形成されている。なお、TFTの種類は特に限定されるものではなく、例えば、逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)であってもよいし、スタガー構造(トップゲート型)であってもよい。また、駆動トランジスタTr1または書き込みトランジスタTr2は、pチャネルMOS型のTFTであってもよい。
【0021】
画素回路アレイ部13において、各信号線DTLは、信号線駆動回路23の出力端(図示せず)と、書き込みトランジスタTr2のドレイン電極(図示せず)に接続されている。各走査線WSLは、走査線駆動回路24の出力端(図示せず)と、書き込みトランジスタTr2のゲート電極(図示せず)に接続されている。各電源線PSLは、電源線駆動回路25の出力端(図示せず)と、駆動トランジスタTr1のドレイン電極(図示せず)に接続されている。書き込みトランジスタTr2のソース電極(図示せず)は、駆動トランジスタTr1のゲート電極(図示せず)と、保持容量Csの一端に接続されている。駆動トランジスタTr1のソース電極(図示せず)と保持容量Csの他端とが、有機EL素子11のアノード電極(図示せず)に接続されている。有機EL素子11のカソード電極(図示せず)は、例えばグラウンド線GNDに接続されている。なお、カソード電極は、各有機EL素子11の共通電極として用いられており、例えば、表示パネル10の表示領域全体に渡って連続して形成され、平板状となっている。
【0022】
[駆動回路]
次に、画素回路アレイ部13の周辺に設けられた駆動回路20内の各回路について、図1を参照して説明する。映像信号処理回路21は、外部から入力されたデジタルの映像信号20Aに対して所定の補正を行うと共に、補正した後の映像信号を信号線駆動回路23に出力するものである。所定の補正としては、例えば、ガンマ補正や、オーバードライブ補正などが挙げられる。タイミング生成回路22は、信号線駆動回路23、走査線駆動回路24および電源線駆動回路25が連動して動作するように制御するものである。タイミング生成回路22は、例えば、外部から入力された同期信号20Bに応じて(同期して)、これらの回路に対して制御信号22Aを出力するようになっている。
【0023】
信号線駆動回路23は、制御信号22Aの入力に応じて(同期して)、映像信号処理回路21から入力された映像信号20Aに対応するアナログの映像信号を、各信号線DTLに印加して、アナログの映像信号またはそれに対応する信号を選択対象の画素回路14に書き込むものである。具体的には、信号線駆動回路23は、映像信号20Aに対応する階調補完電圧Vsig1と、固定値の移動度補正電圧Vofs2と、映像信号に対応する信号電圧Vsig2とをこの順に各信号線DTLに印加して、選択対象の画素回路14への書き込みを行うものである。なお、書き込みとは、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間に所定の電圧を印加することを指している。信号線駆動回路23は、例えば、信号電圧Vsig2および階調補完電圧Vsig1と、有機EL素子11の消光時に駆動トランジスタTr1のゲートに印加する電圧Vofs1および移動度補正電圧Vofs2とを出力することが可能となっている。ここで、階調補完電圧Vsig1は、信号電圧Vsig2と所定の関係にあり、例えば、信号電圧Vsig2以下の電圧値となっている。また、電圧Vofs1は、駆動トランジスタTr1の閾値電圧をVthとすると、(Vofs1-Vth)が有機EL素子11の閾値電圧Velとカソード電圧Vcaを足し合わせた電圧(Vel+Vca)よりも低い電圧値(一定値)となるように設定されている。電圧Vofs2は、駆動トランジスタTr1の移動度を補正する際に用いられる電圧である。電圧Vofs2は階調補完書き込みにおけるソース電位の上昇をΔV1、移動度補正におけるソース電位の上昇をΔV2とすると、(Vofs1-Vth+ΔV1+ΔV2)が電圧(Vel+Vca)よりも低い電圧値(一定値)となるように設定されている。
【0024】
走査線駆動回路24は、制御信号22Aの入力に応じて(同期して)、複数の走査線WSLに選択パルスを順次印加して、複数の有機EL素子11および複数の画素回路14を順次選択するものである。走査線駆動回路24は、例えば、書き込みトランジスタTr2をオンさせるときに印加する電圧Vonと、書き込みトランジスタTr2をオフさせるときに印加する電圧Voffとを出力することが可能となっている。ここで、電圧Vonは、書き込みトランジスタTr2のオン電圧以上の値(一定値)となっている。電圧Voffは、書き込みトランジスタTr2のオン電圧よりも低い値(一定値)となっている。
【0025】
電源線駆動回路25は、制御信号22Aの入力に応じて(同期して)、複数の電源線PSLに制御パルスを順次印加して、有機EL素子11の発光および消光を制御するものである。電源線駆動回路25は、例えば、駆動トランジスタTr1に電流を流すときに印加する電圧VccHと、駆動トランジスタTr1に電流を流さないときに印加する電圧VccLとを出力することが可能となっている。ここで、電圧VccLは、有機EL素子11の閾値電圧Velと、有機EL素子11のカソードの電圧Vcaとを足し合わせた電圧(Vel+Vca)よりも低い電圧値(一定値)である。VccHは、電圧(Vel+Vca)以上の電圧値(一定値)である。
【0026】
(1.2 表示装置の動作)
図3は、表示装置1を駆動させたときの各種波形の一例を表したものである。図3(A)〜(C)には、信号線DTLにVofs1、Vsig1、Vofs2、Vsig2が周期的に印加され、電源線PSLにVccL、VccHが所定のタイミングで印加され、走査線WSLにVon、Voffが所定のタイミングで印加されている様子が示されている。図3(D),(E)には、信号線DTL、走査線WSLおよび電源線PSLへの電圧印加に応じて、駆動トランジスタTr1のゲート電圧Vgおよびソース電圧Vsが時々刻々変化している様子が示されている。
【0027】
[Vth補正準備期間]
まず、Vth補正の準備を行う。具体的には、電源線駆動回路25が電源線PSLの電圧をVccHからVccLに下げる(T1)。すると、ソース電圧VsがVccLとなり、有機EL素子11が消光すると共に、ゲート電圧Vgは発光時のVgsをVgs0とすると(VccL+Vgs0)となる。次に、信号線DTLの電圧がVofs1となっており、かつ電源線PSLの電圧がVccLとなっている間に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVoffからVonに上げる。
【0028】
[最初のVth補正期間]
次に、Vthの補正を行う。具体的には、信号線DTLの電圧がVofs1となっている間に、電源線駆動回路25が電源線PSLの電圧をVccLからVccHに上げる(T2)。すると、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れ、ソース電圧Vsが上昇する。その後、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVofs1からVsig1に切り替える前に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T3)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、Vthの補正が一旦停止する。
【0029】
[最初の休止期間]
Vth補正が休止している期間中は、先のVth補正を行った行(画素)とは異なる他の行(画素)において、信号線DTLの電圧のサンプリングが行われる。なお、Vth補正が不十分である場合、すなわち、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間の電位差Vgsが駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthよりも大きい場合には、以下のようになる。Vth補正休止期間中にも、先のVth補正を行った行(画素)において、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れ、ソース電圧Vsが上昇し、保持容量Csを介したカップリングによりゲート電圧Vgも上昇する。
【0030】
[2回目のVth補正期間]
Vth補正休止期間が終了した後、Vthの補正を再び行う。具体的には、信号線DTLの電圧がVofs1となっており、Vth補正が可能となっている時に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T4)、駆動トランジスタTr1のゲートを信号線DTLに接続する。このとき、ソース電圧Vsが(Vofs1−Vth)よりも低い場合(Vth補正がまだ完了していない場合)には、駆動トランジスタTr1がカットオフするまで(電位差VgsがVthになるまで)、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れる。その結果、保持容量CsがVthに充電され、電位差VgsがVthとなる。その後、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVofs1からVsig1に切り替える前に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T5)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなるので、電位差Vgsを信号線DTLの電圧の大きさに拘わらずVthのままで維持することができる。このように、電位差VgsをVthに設定することにより、駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthが画素回路14ごとにばらついた場合であっても、有機EL素子11の発光輝度がばらつくのをなくすことができる。
【0031】
[2回目の休止期間]
その後、Vth補正の休止期間中に、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVofsからVsig1に切り替える。
【0032】
[階調補完書き込み期間]
Vth補正休止期間が終了した後、階調補完書き込みを行う。具体的には、信号線DTLの電圧がVsig1となっている間に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T6)、駆動トランジスタTr1のゲートを信号線DTLに接続する。すると、駆動トランジスタTr1のゲート電圧がVsig1となる。このとき、有機EL素子11のアノード電圧はこの段階ではまだ有機EL素子11の閾値電圧Velとカソード電圧Vcaを足し合わせた電圧(Vel+Vca)よりも小さく、有機EL素子11はカットオフしている。そのため、電流Idは有機EL素子11の素子容量(図示せず)に流れ、素子容量が充電されるので、ソース電圧VsがΔV1だけ上昇し、やがて電位差VgsがVsig1+Vth−ΔV1となる。このようにして、階調補完書き込みと同時に移動度補正が行われる。
【0033】
[1回目のブートストラップ期間]
次に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T7)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間の電圧Vgsを一定に維持した状態で、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れる。その結果、ソース電圧Vsが上昇し、それに連動して駆動トランジスタTr1のゲートも上昇する。
【0034】
[移動度補正期間]
ブートストラップ動作が始まったら、直ちに、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVsig1からVofs2に切り替える。さらに、続けて、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T8)、駆動トランジスタTr1のゲートを信号線DTLに接続する。すると、駆動トランジスタTr1のゲート電圧がVofs2となり、ブートストラップ動作が停止する。このとき、有機EL素子11のアノード電圧はこの段階ではまだ電圧(Vel+Vca)よりも小さく、有機EL素子11はカットオフしている。そのため、電流Idは有機EL素子11の素子容量(図示せず)に流れ、素子容量が充電されるので、ソース電圧VsがΔV2だけ上昇し、やがて電位差VgsがVofs2+Vth−ΔV1−ΔV2となる。このようにして、信号電圧Vsig2の書込みとは別個に(独立して)移動度補正が行われる。
【0035】
[2回目のブートストラップ期間]
次に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T9)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間の電圧Vgsを一定に維持した状態で、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れる。その結果、ソース電圧Vsが上昇し、それに連動して駆動トランジスタTr1のゲートも上昇する。
【0036】
[書き込み期間]
ブートストラップ動作が始まったら、直ちに、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVofs2からVsig2に切り替える。さらに、続けて、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T10)、駆動トランジスタTr1のゲートを信号線DTLに接続する。すると、駆動トランジスタTr1のゲート電圧がVsig2となり、ブートストラップ動作が停止する。このとき、有機EL素子11のアノード電圧はこの段階でも電圧(Vel+Vca)よりも小さく、有機EL素子11はカットオフしている。そのため、電流Idは有機EL素子11の素子容量(図示せず)に流れ、素子容量が充電されるので、ソース電圧VsがΔV3だけ上昇し、やがて電位差VgsがVsig2+Vth−ΔV1−ΔV2−ΔV3となる。このようにして、信号電圧Vsig2の書込みが行われる。
【0037】
[発光期間]
次に、走査線駆動回路24が走査線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T11)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間の電圧Vgsを一定に維持した状態で、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idが流れる。その結果、ソース電圧Vsが上昇し、それに連動して駆動トランジスタTr1のゲートも上昇し、有機EL素子11が所望の輝度で発光する。
【0038】
[繰り返し]
次に、所定の期間が経過したのち、発光期間を終了する。具体的には、電源線駆動回路25が電源線PSLの電圧をVccHからVccLに下げる(T1)。すると、ソース電圧VsがVccLとなり、有機EL素子11が消光する。その後、上述した各期間に対応した駆動を実行する。このようにして、駆動回路20は、発光期間、消光期間(Vth補正準備期間〜書き込み期間)をフレーム期間ごとに繰り返すと共に、例えば1水平ラインごとに行方向にスキャンする。
【0039】
本実施の形態の表示装置1では、上記のようにして、各画素12において画素回路14がオンオフ制御され、各画素12の有機EL素子11に駆動電流が注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、陽極と陰極との間で多重反射し、陰極等を透過して外部に取り出される。その結果、表示パネル10において画像が表示される。
【0040】
(1.3 作用・効果)
ところで、本実施の形態では、階調補完書き込みを行ったのち、ブートストラップ動作が始まったら、ブートストラップ動作が直ちに停止され、移動度補正が開始される。例えば、信号線DTLの電圧がVsig1となっており、かつ電源線PSLの電圧がVccHとなっているときに、走査線WSLの電圧がVonからVoffに下げられたら、直ちに、信号線DTLの電圧がVsig1からVofs2に切り替えられ、さらに、走査線WSLの電圧がVoffからVonに上げられる。
【0041】
さらに、本実施の形態では、移動度補正が終了したのち、ブートストラップ動作が始まったら、ブートストラップ動作が直ちに停止され、信号電圧の書込みが行われる。例えば、信号線DTLの電圧がVofs2となっており、かつ電源線PSLの電圧がVccHとなっているときに、走査線WSLの電圧がVonからVoffに下げられたら、直ちに、信号線DTLの電圧がVofs2からVsig2に切り替えられ、さらに、走査線WSLの電圧がVonからVoffに下げられる。
【0042】
このように、本実施の形態では、2回目の信号書込みを行う前に、移動度補正を行うようにした。これにより、例えば、階調補完書き込みを行ったのち、ブートストラップ動作が始まっても、ブートストラップ動作を停止させず、そのまま、移動度補正と書き込みを同時に行った場合(図4参照)と比べて、移動度補正を確実に行うことができる。従って、例えば、2回目の信号電圧Vsig2の値が小さい場であっても、2回目の信号電圧Vsig2の値とは無関係に、移動度補正を確実に行うことができるので、低階調の画質を向上させることができる。
【0043】
<2.モジュールおよび適用例>
以下、上述した実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0044】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置1は、例えば、図5に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板31の一辺に、封止用基板32から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、駆動回路20の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0045】
(適用例1)
図6は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0046】
(適用例2)
図7は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0047】
(適用例3)
図8は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0048】
(適用例4)
図9は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0049】
(適用例5)
図10は、上記実施の形態の表示装置1が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0050】
以上、実施の形態および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0051】
例えば、上記実施の形態等では、表示装置1がアクティブマトリクス型である場合について説明したが、アクティブマトリクス駆動のための画素回路14の構成は上記実施の形態等で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを画素回路14に追加してもよい。その場合、画素回路14の変更に応じて、上述した信号線駆動回路23、走査線駆動回路24、電源線駆動回路25のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0052】
また、上記実施の形態等では、信号線駆動回路23、走査線駆動回路24、電源線駆動回路25の駆動をタイミング生成回路22が制御していたが、他の回路がこれらの駆動を制御するようにしてもよい。また、信号線駆動回路23、走査線駆動回路24、電源線駆動回路25の制御は、ハードウェア(回路)で行われていてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われていてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態等では、画素回路14が、2Tr1Cの回路構成となっていたが、トランジスタが有機EL素子11に直列に接続された回路構成を含んでいるものであれば、2Tr1Cの回路構成以外の回路構成となっていてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態等では、駆動トランジスタTr1,書き込みトランジスタTr2は、nチャネルMOS型の薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により形成されている場合が例示されていたが、pチャネルトランジスタ(例えばpチャネルMOS型のTFT)により形成されていてもよい。ただし、その場合には、トランジスタTr2のソースおよびドレインのうち電源線PSLと未接続の方と保持容量Csの他端とを有機EL素子11のカソードに接続し、有機EL素子11のアノードをGNDなどに接続することが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1…表示装置、10…表示パネル、11,11R,11G,11B…有機EL素子、12…画素、13…画素回路アレイ部、14…画素回路、20…駆動回路、20A…映像信号、20B…同期信号、21…映像信号処理回路、22…タイミング生成回路、22A…制御信号、23…信号線駆動回路、24…走査線駆動回路、25…電源線駆動回路、Cs…保持容量、DTL…信号線、Id…電流、PSL…電源線、Tr1…駆動トランジスタ、Tr2…書き込みトランジスタ、Vg…ゲート電圧、Vgs…ゲート−ソース間電圧、Vs…ソース電圧、Vth…閾値電圧、WSL…走査線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
行状に配置された複数の走査線と、列状に配置された複数の信号線と、各走査線と各信号線との交差部に対応して行列状に配置された複数の発光素子および複数の画素回路とを含む画素回路アレイ部と、
前記複数の走査線に選択パルスを順次印加して、前記複数の発光素子および前記複数の画素回路を順次選択する走査線駆動回路と、
映像信号に対応する階調補完電圧と、固定値の移動度補正電圧と、映像信号に対応する信号電圧とをこの順に各信号線に印加して、選択対象の画素回路への書き込みを行う信号線駆動回路と
を備え、
前記走査線駆動回路は、前記信号線駆動回路が前記複数の信号線に前記移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスを印加する
表示装置。
【請求項2】
行状に配置された複数の走査線と、列状に配置された複数の信号線と、各走査線と各信号線との交差部に対応して行列状に配置された複数の発光素子および複数の画素回路とを含む画素回路アレイ部と、
前記複数の走査線に選択パルスを順次印加して、前記複数の発光素子および前記複数の画素回路を順次選択する走査線駆動回路と、
映像信号に対応する階調補完電圧と、固定値の移動度補正電圧と、映像信号に対応する信号電圧とをこの順に各信号線に印加して、選択対象の画素回路への書き込みを行う信号線駆動回路と
を備えた表示装置を用意するステップと、
前記走査線駆動回路を用いて、前記信号線駆動回路が前記複数の信号線に前記移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスを印加するステップと
を含む表示装置の駆動方法。
【請求項3】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
行状に配置された複数の走査線と、列状に配置された複数の信号線と、各走査線と各信号線との交差部に対応して行列状に配置された複数の発光素子および複数の画素回路とを含む画素回路アレイ部と、
前記複数の走査線に選択パルスを順次印加して、前記複数の発光素子および前記複数の画素回路を順次選択する走査線駆動回路と、
映像信号に対応する階調補完電圧と、固定値の移動度補正電圧と、映像信号に対応する信号電圧とをこの順に各信号線に印加して、選択対象の画素回路への書き込みを行う信号線駆動回路と
を備え、
前記走査線駆動回路は、前記信号線駆動回路が前記複数の信号線に前記移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスを印加する
電子機器。
【請求項1】
行状に配置された複数の走査線と、列状に配置された複数の信号線と、各走査線と各信号線との交差部に対応して行列状に配置された複数の発光素子および複数の画素回路とを含む画素回路アレイ部と、
前記複数の走査線に選択パルスを順次印加して、前記複数の発光素子および前記複数の画素回路を順次選択する走査線駆動回路と、
映像信号に対応する階調補完電圧と、固定値の移動度補正電圧と、映像信号に対応する信号電圧とをこの順に各信号線に印加して、選択対象の画素回路への書き込みを行う信号線駆動回路と
を備え、
前記走査線駆動回路は、前記信号線駆動回路が前記複数の信号線に前記移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスを印加する
表示装置。
【請求項2】
行状に配置された複数の走査線と、列状に配置された複数の信号線と、各走査線と各信号線との交差部に対応して行列状に配置された複数の発光素子および複数の画素回路とを含む画素回路アレイ部と、
前記複数の走査線に選択パルスを順次印加して、前記複数の発光素子および前記複数の画素回路を順次選択する走査線駆動回路と、
映像信号に対応する階調補完電圧と、固定値の移動度補正電圧と、映像信号に対応する信号電圧とをこの順に各信号線に印加して、選択対象の画素回路への書き込みを行う信号線駆動回路と
を備えた表示装置を用意するステップと、
前記走査線駆動回路を用いて、前記信号線駆動回路が前記複数の信号線に前記移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスを印加するステップと
を含む表示装置の駆動方法。
【請求項3】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
行状に配置された複数の走査線と、列状に配置された複数の信号線と、各走査線と各信号線との交差部に対応して行列状に配置された複数の発光素子および複数の画素回路とを含む画素回路アレイ部と、
前記複数の走査線に選択パルスを順次印加して、前記複数の発光素子および前記複数の画素回路を順次選択する走査線駆動回路と、
映像信号に対応する階調補完電圧と、固定値の移動度補正電圧と、映像信号に対応する信号電圧とをこの順に各信号線に印加して、選択対象の画素回路への書き込みを行う信号線駆動回路と
を備え、
前記走査線駆動回路は、前記信号線駆動回路が前記複数の信号線に前記移動度補正電圧を印加している期間内に、一の走査線に選択パルスを印加する
電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−22342(P2011−22342A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167098(P2009−167098)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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