説明

表示装置および駆動制御方法

【課題】消費電力を低減することができるようにする。
【解決手段】ELパネル10の画素21は、発光素子34、サンプリング用トランジスタ31、駆動用トランジスタ32、スイッチングトランジスタ37、および、蓄積容量33を少なくとも有する。サンプリング用トランジスタ31が、駆動用トランジスタ32のゲートに第1の信号電位Vsig1の映像信号を供給することにより、駆動用トランジスタ32の移動度を補正し、その後、第1の信号電位Vsig1より高電位の第2の信号電位Vsig2の映像信号を、駆動用トランジスタ32のゲートに供給する。これにより、より低い映像信号の信号電位で発光させることができる。本発明は、例えば、ELパネルを用いた表示装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および駆動制御方法に関し、特に、消費電力を低減することができるようにする表示装置および駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子として有機EL(ELectro Luminescent) 素子を用いた平面自発光型のパネル(ELパネル)の開発が近年盛んになっている。有機EL素子は、ダイオード特性を有し、有機薄膜に電界をかけると発光する現象を利用した素子である。有機EL素子は、印加電圧が10V以下で駆動するため低消費電力であり、自ら光を発する自発光素子であるため、照明部材を必要とせず軽量化及び薄型化が容易であるという特長を有する。また、有機EL素子の応答速度は数μs程度と非常に高速であるので、ELパネルでは動画表示時の残像が発生しないという利点がある。
【0003】
ELパネルの中でも、とりわけ駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT)を各画素に集積形成したアクティブマトリクス型のパネルの開発が盛んである。アクティブマトリクス型ELパネルは、例えば、特許文献1乃至5に記載されている。
【0004】
ところで、一般的に、有機EL素子のI−V特性(電流−電圧特性)は、時間が経過すると劣化(いわゆる、経時劣化)することが知られている。有機EL素子を電流駆動する駆動トランジスタとして特にNチャネル型のTFTを用いた画素回路では、有機EL素子のI−V特性が経時劣化すると、駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧Vgsが変化する。駆動トランジスタのソース電極側は有機EL素子に接続されているので、この駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧Vgsの変化により、有機EL素子の発光輝度が変化する。
【0005】
このことについてより具体的に説明する。駆動トランジスタのソース電極側に有機EL素子が接続されている場合、駆動トランジスタのソース電位は、駆動トランジスタと有機EL素子の動作点で決まる。そして、有機EL素子のI−V特性が劣化すると、駆動トランジスタと有機EL素子の動作点が変動してしまうために、駆動トランジスタのゲート電極に同じ電圧を印加したとしても駆動トランジスタのソース電位が変化する。これにより、駆動トランジスタのソース−ゲート間電圧Vgsが変化するために、駆動トランジスタに流れる電流値が変化する。その結果、有機EL素子に流れる電流値も変化するために、有機EL素子の発光輝度が変化することになる。
【0006】
また、特にポリシリコンTFTを用いた画素回路では、有機EL素子のI−V特性の経時劣化に加えて、駆動トランジスタのトランジスタ特性が経時的に変化したり、製造プロセスのばらつきによってトランジスタ特性が画素ごとに異なったりする。すなわち、画素個々に駆動トランジスタのトランジスタ特性にばらつきがある。トランジスタ特性としては、駆動トランジスタの閾値電圧Vthや、駆動トランジスタのチャネルを構成する半導体薄膜の移動度μ(以下、単に、「駆動トランジスタの移動度μ」と称する)等が挙げられる。
【0007】
駆動トランジスタのトランジスタ特性が画素ごとに異なると、画素ごとに駆動トランジスタに流れる電流値にばらつきが生じるために、駆動トランジスタのゲート電極に画素間で同じ電圧を印加しても、有機EL素子の発光輝度に画素間でばらつきが生じる。その結果、画面のユニフォーミティ(均一性)が損なわれる。
【0008】
そこで、有機EL素子のI−V特性の経時劣化や、駆動トランジスタのトランジスタ特性の経時変化等の影響を受けることなく、有機EL素子の発光輝度を一定に維持するために、各種の補正(補償)機能を画素回路に持たせたものがある(例えば、特許文献6参照)。
【0009】
補正機能としては、有機EL素子の特性変動に対する補償機能、駆動トランジスタの閾値電圧Vthの変動に対する補正機能、駆動トランジスタの移動度μの変動に対する補正機能などが挙げられる。以下、駆動トランジスタの閾値電圧Vthの変動に対する補正を「閾値補正」と呼び、駆動トランジスタの移動度μの変動に対する補正を「移動度補正」と呼ぶこととする。
【0010】
このように、画素回路の各々に、各種の補正機能を持たせることで、有機EL素子のI−V特性の経時劣化や、駆動トランジスタのトランジスタ特性の経時変化の影響を受けることなく、有機EL素子の発光輝度を一定に保つことができる。その結果、表示装置の表示品質を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−255856号公報
【特許文献2】特開2003−271095号公報
【特許文献3】特開2004−133240号公報
【特許文献4】特開2004−029791号公報
【特許文献5】特開2004−093682号公報
【特許文献6】特開2006−133542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、移動度補正は、駆動トランジスタのソース電位を上昇させながら駆動トランジスタのソース−ゲート間電圧Vgsをそろえる。そのため、発光時の駆動トランジスタのソース−ゲート間電圧Vgsは、入力された映像信号の信号電位から、移動度補正による駆動トランジスタのソース電位の上昇分を、差し引いたものとなる。従って、移動度補正による駆動トランジスタのソース電位の上昇分を考慮すると、入力する映像信号の信号電位としては、より高いものが必要となっていた。これにより、消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、消費電力を低減することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面の表示装置は、ダイオード特性を有し、駆動電流に応じて発光する発光素子と、映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、前記駆動電流を前記発光素子に供給する駆動用トランジスタと、前記駆動用トランジスタへの電源電位の供給をスイッチングするスイッチングトランジスタと、前記駆動用トランジスタのゲートと前記発光素子のアノードに接続される蓄積容量とを少なくとも有する画素を行列状に複数配置した画素アレイ部を備え、前記サンプリング用トランジスタが、前記駆動用トランジスタのゲートに第1の信号電位の前記映像信号を供給することにより、前記駆動用トランジスタの移動度を補正し、その後、前記第1の信号電位と異なる第2の信号電位の前記映像信号を、前記駆動用トランジスタのゲートに供給する。
【0015】
本発明の一側面の駆動制御方法は、ダイオード特性を有し、駆動電流に応じて発光する発光素子と、映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、前記駆動電流を前記発光素子に供給する駆動用トランジスタと、前記駆動用トランジスタへの電源電位の供給をスイッチングするスイッチングトランジスタと、前記駆動用トランジスタのゲートと前記発光素子のアノードに接続される蓄積容量とを少なくとも有する画素を行列状に複数配置した画素アレイ部を備える表示装置の、前記サンプリング用トランジスタが、前記駆動用トランジスタのゲートに第1の信号電位の前記映像信号を供給することにより、前記駆動用トランジスタの移動度を補正し、その後、前記第1の信号電位と異なる第2の信号電位の前記映像信号を、前記駆動用トランジスタのゲートに供給する。
【0016】
本発明の一側面においては、サンプリング用トランジスタが、駆動用トランジスタのゲートに第1の信号電位の映像信号を供給することにより、駆動用トランジスタの移動度が補正され、その後、第1の信号電位と異なる第2の信号電位の映像信号が、駆動用トランジスタのゲートに供給される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した表示装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図2】ELパネルの各画素の色の配列を示す図である。
【図3】画素の等価回路の構成を示したブロック図である。
【図4】従来の駆動制御を説明するタイミングチャートである。
【図5】図1のELパネルの駆動制御について説明する。
【図6】本発明の効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[表示装置の構成]
図1は、本発明を適用した表示装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0020】
図1の表示装置1は、例えば、テレビジョン受像機などであり、入力された映像信号に対応する映像をELパネル10に表示する。ELパネル10は、自発光素子としての有機EL(ELectro Luminescent)素子を用いたパネルである。ELパネル10は、ソースドライバおよびゲートドライバとからなるドライバIC(Integrated Circuit)を含むパネルモジュールとして表示装置1に組み込まれている。また、表示装置1は、図示せぬ電源回路、画像LSI(Large Scale Integration)なども有している。なお、表示装置1のELパネル10は、携帯電話機、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、プリンタ等の表示部としても利用することができる。
【0021】
ELパネル10は、複数の画素21を有する画素アレイ部11、水平セレクタ12、ライトスキャナ13、電源スキャナ14、第1トランジスタスキャナ15、および第2トランジスタスキャナ16を有している。
【0022】
画素アレイ部11には、N×M個(N,Mは相互に独立した1以上の整数値)の画素21−(1,1)乃至21−(N,M)が行列状に配置されて構成されている。なお、図1では、紙面の制約上、画素21−(1,1)乃至(N,M)の一部のみが示されている。
【0023】
また、ELパネル10は、M本の走査線WSL−1乃至M、電源制御線DSL−1乃至M、第1トランジスタ制御線AZ1L−1乃至M、および第2トランジスタ制御線AZ2L−1乃至Mと、N本の映像信号線DTL−1乃至Nも有する。
【0024】
なお、以下において、走査線WSL−1乃至Mそれぞれを特に区別する必要がない場合、単に、走査線WSLと称する。また、映像信号線DTL−1乃至N、電源制御線DSL−1乃至Mに、第1トランジスタ制御線AZ1L−1乃至M、および第2トランジスタ制御線AZ2L−1乃至Mについても同様である。画素21−(1,1)乃至21−(N,M)についても同様に、単に、画素21と称する。
【0025】
水平セレクタ12、ライトスキャナ13、電源スキャナ14、第1トランジスタスキャナ15、および第2トランジスタスキャナ16は、画素アレイ部11を駆動制御する駆動部として動作する。
【0026】
画素21−(1,1)乃至21−(N,M)のうちの第1行目の画素21−(1,1)乃至21−(N,1)は、走査線WSL−1でライトスキャナ13と、電源制御線DSL−1で電源スキャナ14とそれぞれ接続されている。また、第1行目の画素21−(1,1)乃至21−(N,1)は、第1トランジスタ制御線AZ1L−1で第1トランジスタスキャナ15と、第2トランジスタ制御線AZ2L−1で第2トランジスタスキャナ16と、それぞれ接続されている。
【0027】
画素21−(1,1)乃至21−(N,M)のうちの第M行目の画素21−(1,M)乃至21−(N,M)は、走査線WSL−Mでライトスキャナ13と、電源制御線DSL−Mで電源スキャナ14とそれぞれ接続されている。また、第M行目の画素21−(1,M)乃至21−(N,M)は、第1トランジスタ制御線AZ1L−Mで第1トランジスタスキャナ15と、第2トランジスタ制御線AZ2L−Mで第2トランジスタスキャナ16と、それぞれ接続されている。
【0028】
即ち、1本の走査線WSL、電源制御線DSL、第1トランジスタ制御線AZ1L、および第2トランジスタ制御線AZ2Lは、行方向の画素21に共通に配線されている。画素21−(1,1)乃至21−(N,M)の行方向に並ぶその他の画素21についても同様の接続となっている。
【0029】
列方向に配線されている映像信号線DTL−1乃至Nについてみると、画素21−(1,1)乃至21−(N,M)のうちの第1列目の画素21−(1,1)乃至21−(1,M)は、映像信号線DTL−1で水平セレクタ12と接続されている。
【0030】
画素21−(1,1)乃至21−(N,M)のうちの第N列目の画素21−(N,1)乃至21−(N,M)は、映像信号線DTL−Nで水平セレクタ12と接続されている。従って、1本の映像信号線DTLは、列方向の画素21に共通に配線されている。画素21−(1,1)乃至21−(N,M)の列方向に並ぶその他の画素21についても同様の接続となっている。
【0031】
ライトスキャナ13は、選択制御信号を水平周期(1F)で走査線WSL−1乃至Mに順次供給して、画素21を行単位で線順次走査する。電源スキャナ14は、線順次走査に合わせて電源制御線DSL−1乃至Mに電源制御信号を供給する。水平セレクタ12は、映像信号線DTL−1乃至Mを順次切り替えながら、映像信号に対応する信号電位Vsigを画素21に供給する。
【0032】
第1トランジスタスキャナ15は、線順次走査に合わせて第1トランジスタ制御線AZ1L−1乃至Mに選択制御信号を供給する。第2トランジスタスキャナ16は、線順次走査に合わせて第2トランジスタ制御線AZ2L−1乃至Mに選択制御信号を供給する。
【0033】
[画素21の配列構成]
図2は、ELパネル10の各画素21が発光する色の配列を示している。
【0034】
画素アレイ部11の各画素21は、赤(R)、緑(G)、または青(B)のいずれかの色を発光する。そして、各色は、例えば、行方向には赤、緑、青の順となり、列方向には同一の色となるように、配列されている。従って、各画素21は、いわゆる副画素(サブピクセル)に相当し、行方向(図面左右方向)に並ぶ赤、緑、および青の3つの画素21で表示単位としての1画素が構成される。なお、ELパネル10の色の配列が図2に示した配列に限定されるものではない。
【0035】
[画素21の詳細回路構成]
図3は、ELパネル10に含まれるN×M個の画素21のうちの1つの画素21を拡大することにより、画素21の等価回路(画素回路)の構成を示したブロック図である。
【0036】
なお、図3において画素21が画素21−(n,m)(n=1,2,・・・,N,m=1,2,・・・,M)であるとすると、走査線WSL、映像信号線DTL、および電源制御線DSLのそれぞれは、次のようになる。即ち、走査線WSL、映像信号線DTL、および電源制御線DSLは、それぞれ、画素21−(n,m)に対応する走査線WSL−m、映像信号線DTL−n、および電源制御線DSL−mとなる。また、第1トランジスタ制御線AZ1Lおよび第2トランジスタ制御線AZ2Lは、それぞれ、画素21−(n,m)に対応する第1トランジスタ制御線AZ1L−mおよび第2トランジスタ制御線AZ2L−mとなる。
【0037】
画素21は、サンプリング用トランジスタ31、駆動用トランジスタ32、蓄積容量33、発光素子34、第1トランジスタ35、第2トランジスタ36、および第3トランジスタ37を有する。
【0038】
サンプリング用トランジスタ31のゲートは、走査線WSLと接続され、サンプリング用トランジスタ31のドレインは、映像信号線DTLと接続される。また、サンプリング用トランジスタ31のソースは、駆動用トランジスタ32のゲートと接続されている。サンプリング用トランジスタ31は、走査線WSLを介してライトスキャナ13から供給される選択制御信号に応じてオンまたはオフし、水平セレクタ12が映像信号線DTLに出力した映像信号をサンプリングする。サンプリング用トランジスタ31がオンした場合、映像信号線DTLに出力された水平セレクタ12からの映像信号が駆動用トランジスタ32のゲートに供給される。
【0039】
駆動用トランジスタ32のソースは、発光素子34のアノードに接続され、ドレインが、第3トランジスタ37を介して電源電位Vddに接続されており、駆動用トランジスタ32はソースフォロア回路を形成している。駆動用トランジスタ32は、蓄積容量33に保持された電位に応じて駆動電流Idsを発光素子34に供給する。
【0040】
蓄積容量33は、駆動用トランジスタ32のゲートと発光素子34のアノード(駆動用トランジスタ32のソース)に接続されている。蓄積容量33は、サンプリング用トランジスタ31を介して供給される映像信号により、所定の電荷を蓄積して保持する。
【0041】
発光素子34は、有機EL素子で構成される。有機EL素子はダイオード特性を有する電流発光素子である。発光素子34のアノードは、駆動用トランジスタ32のソースおよび蓄積容量33の一方の電極と接続され、発光素子34のカソードは、GNDレベルの所定の電位Vcat(カソード電位Vcat)に接地されている。発光素子34は、供給される電流値Idsに応じた階調の発光を行う。
【0042】
第1トランジスタ35のゲートは、第1トランジスタ制御線AZ1Lに接続され、ドレインが、蓄積容量33の一方の電極、かつ、駆動用トランジスタ32のソースと接続されている。第1トランジスタ35のソースは、第1接地電位Vini1に接続されている。第1トランジスタ35は、第1トランジスタ制御線AZ1Lを介して第1トランジスタスキャナ15から供給される選択制御信号に基づいて、駆動用トランジスタ32のソースと第1接地電位Vini1との接続を制御する。
【0043】
第2トランジスタ36のゲートは、第2トランジスタ制御線AZ2Lに接続され、ドレインが、サンプリング用トランジスタ31のソース、かつ、駆動用トランジスタ32のゲートと接続されている。第2トランジスタ36のソースは、第2接地電位Vini2に接続されている。第2トランジスタ36は、第2トランジスタ制御線AZ2Lを介して第2トランジスタスキャナ16から供給される選択制御信号に基づいて、駆動用トランジスタ32のソースと第2接地電位Vini2との接続を制御する。
【0044】
第3トランジスタ37のゲートは、電源制御線DSLに接続され、ドレインが電源電位Vddに、ソースが、駆動用トランジスタ32のドレインに接続されている。第3トランジスタ37は、電源スキャナ14から供給される電源制御信号に基づいて、駆動用トランジスタ32への電源電位Vddの供給をスイッチングする。
【0045】
画素21が有する5個のトランジスタのうち、第3トランジスタ37のみがPチャネル型トランジスタであり、それ以外はNチャネル型トランジスタである。従って、サンプリング用トランジスタ31、第1トランジスタ35、および第2トランジスタ36は、選択制御信号の信号電位が高電位(Hi)のときオン(ON)となり、低電位(Lo)のときオフ(OFF)となる。一方、第3トランジスタ37は、選択制御信号の信号電位が低電位(Lo)のときオン(ON)となり、高電位(Hi)のときオフ(OFF)となる。ここで、オンとは、トランジスタが導通し、ドレイン−ソース間に電流が流れることを意味する。画素21を構成する各トランジスタが、上述したPチャネル型またはNチャネル型のいずれか一方に限定されるわけではない。
【0046】
ここで、第1接地電位Vini1、第2接地電位Vini2、およびカソード電位Vcatの関係について説明する。第2の接地電位Vini2は、第1の接地電位Vini1から駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthを差し引いたレベルよりも低く設定されている。即ち、Vini2<(Vini1−Vth)となっている。
【0047】
また、カソード電位Vcatと発光素子34の閾値電圧Vthelの和は、第2の接地電位Vini2から駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthを差し引いたレベルよりも高く設定されている。即ち、(Vcat+Vthel)>(Vini2−Vth)となっている。この条件を満たすことにより、後述するように、画素21が正常な発光動作を行うことができる。
【0048】
画素21の等価回路は、以上のように構成される。
【0049】
[画素21の従来の駆動制御の説明]
次に、図4を参照して、従来の駆動制御について説明する。
【0050】
図4は、従来の駆動制御を説明するタイミングチャートである。
【0051】
図4の横軸は、時間軸を表し、図面横方向における同一の位置は、同一の時刻を表す。
【0052】
時刻tまでの期間は、前の水平期間(1F)の発光がなされている発光期間である。
【0053】
時刻tにおいて、電源スキャナ14が、電源制御線DSLに流れる選択制御信号の信号電位(以下、電源制御線電位と称する)を高電位に切換え、第3トランジスタ37をオフさせる。これにより、駆動用トランジスタ32のゲート電位Vgおよびソース電位Vsが低下し、前の水平期間(1F)の発光期間が終了する。
【0054】
時刻tにおいて、第1トランジスタスキャナ15が、第1トランジスタ制御線AZ1Lに流れる選択制御信号の信号電位(以下、第1トランジスタ制御線電位と称する)を高電位に切換え、第1トランジスタ35をオンさせる。これにより、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsが第1接地電位Vini1に初期化される。
【0055】
時刻tにおいて、第2トランジスタスキャナ16が、第2トランジスタ制御線AZ2Lに流れる選択制御信号の信号電位(以下、第2トランジスタ制御線電位と称する)を高電位に切換え、第2トランジスタ36をオンさせる。これにより、駆動用トランジスタ32のゲート電位Vgが第2接地電位Vini2に初期化される。
【0056】
時刻tにおいて、第1トランジスタスキャナ15が、第1トランジスタ制御線電位を低電位に切換え、第1トランジスタ35をオフさせる。その後、時刻tにおいて、電源スキャナ14が、電源制御線電位を低電位に切換え、第3トランジスタ37をオンさせる。これにより、駆動用トランジスタ32のゲート電位Vgとソース電位Vsの電位差により、駆動用トランジスタ32に電流Idsが流れる。
【0057】
上述したように、(Vcat+Vthel)>(Vini2−Vth)となるように、第2接地電位Vini2が設定されている。従って、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsがカソード電位Vcatよりも高く、発光素子34は逆バイアス状態となるため、駆動用トランジスタ32のドレイン−ソース間電流Idsは蓄積容量33に流れ、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsが上昇する。従って、発光素子34に駆動用トランジスタ32のドレイン−ソース間電流Idsが流れることなく、発光素子34が発光することはない。時刻tまでには、駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsが、閾値電圧Vthに等しくなる。これにより、駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthに相当する電圧を蓄積容量33に保持させ、ELパネル10の各画素の駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthの影響をキャンセルする閾値補正期間が終了する。
【0058】
時刻tにおいて、電源スキャナ14が、電源制御線電位を高電位に切換え、第3トランジスタ37をオフさせ、時刻tにおいて、第2トランジスタスキャナ16が、第2トランジスタ制御線電位を低電位に切換え、第2トランジスタ36をオフさせる。
【0059】
時刻tにおいて、ライトスキャナ13が、走査線WSLに流れる選択制御信号の信号電位(以下、走査線電位と称する)を高電位に切換え、サンプリング用トランジスタ31をオンさせる。これにより、映像信号線DTLを介して水平セレクタ12から、階調に応じた信号電位VsigAの映像信号が、駆動用トランジスタ32のゲートに供給される。その結果、駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsは、信号電位VsigAが加算され、(VsigA+Vth)となる。時刻tから時刻tまでの蓄積容量33に信号電位VsigAを書き込む信号書き込み期間は、走査線WSL−mに割り当てられる水平走査期間(1F)に一致する。
【0060】
信号書き込み期間が終了する時刻tから、移動度補正期間が開始する。即ち、時刻tにおいて、電源スキャナ14が、電源制御線電位を低電位に切換え、第3トランジスタ37をオンさせる。これにより、駆動用トランジスタ32のドレイン−ソース間電流Idsが蓄積容量33に流れ、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsが上昇する。
【0061】
この移動度補正期間では、移動度μが高い駆動用トランジスタ32のソース電位Vsの上昇量△Vは大きく、移動度μが低い駆動用トランジスタ32のソース電位Vs上昇量△Vは小さくなる。従って、時刻tから、走査線電位を低電位とする時刻t10までの移動度補正期間Tを所定の時間に調整することにより、ELパネル10の各画素21の駆動用トランジスタ32の移動度のばらつきを補正することができる。逆に言うと、ELパネル10の各画素21の駆動用トランジスタ32の移動度のばらつきを補正するように、移動度補正期間Tが決定される。
【0062】
信号電位VsigAから移動度補正による駆動用トランジスタ32のソース電位Vsの上昇量△Vを引いた差(VsigA−△V)をVaで表すと、移動度補正終了後の駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsは(Va+Vth)である。移動度補正終了後は、移動度μの違う駆動用トランジスタ32で同じ電流値Idsを流すことができるようになる。
【0063】
走査線電位が低電位となる時刻t10以降、ブートストラップ動作により、駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgs=Va+Vthを一定に維持したまま、駆動用トランジスタ32のゲート電位Vg及びソース電位Vsが上昇し、発光素子34が発光する。
【0064】
以上のように、移動度補正は、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsを上昇させながら駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsをそろえる。そのため、発光時の駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsは、入力された映像信号の信号電位VsigAから、移動度補正による駆動用トランジスタ32のソース電位Vsの上昇量△Vを差し引いた(Va+Vth)となる。従って、発光時の駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsは、入力された映像信号の信号電位VsigAよりも、かなり小さくなってしまう。換言すれば、入力する映像信号の信号電位Vsigとしては、より高いものが必要になってしまう。そのため、従来の駆動制御によれば、消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【0065】
[ELパネル10における画素21の駆動制御の説明]
そこで、図5を参照して、消費電力を低減することができるようにした、ELパネル10の駆動制御について説明する。
【0066】
図5は、ELパネル10の駆動制御を説明するタイミングチャートである。
【0067】
図5において、時刻t11から時刻t18までの制御は、上述した図4の時刻tから時刻tまでの制御と同様であるので、その説明は省略する。ただし、映像信号線DTLに流れる映像信号の信号電位Vsigが、信号電位VsigAではなく、それよりも低いVsig1となっている点は異なる。
【0068】
時刻t18から時刻t19までの第1の映像信号書き込み期間において、1回目の映像信号の書き込みが行われる。即ち、ライトスキャナ13が、走査線電位を高電位に切換え、サンプリング用トランジスタ31をオンさせる。これにより、映像信号線DTLを介して水平セレクタ12から、信号電位Vsig1の映像信号が、駆動用トランジスタ32のゲートに供給される。その結果、駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsは、駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthに信号電位Vsig1が加算され、(Vsig1+Vth)となる。
【0069】
時刻t19から時刻t20までは、駆動用トランジスタ32の移動度補正を行う移動度補正期間である。即ち、時刻t19から時刻t20までのT時間、サンプリング用トランジスタ31はオンのまま、電源制御線電位が、一旦、低電位となり、第3トランジスタ37がオンする。これにより、駆動用トランジスタ32のドレイン−ソース間電流Idsは蓄積容量33に流れ、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsが上昇する。この駆動用トランジスタ32のソース電位Vsの上昇量△Vは、上述したように、駆動用トランジスタ32の移動度μに対応する。
【0070】
ここで、電源制御線電位を低電位とする期間であるT時間は、移動度補正後の各画素21の駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsが図4と同一の(Va+Vth)となるような時間である。
【0071】
また、T時間を図4のT時間と比較すると、映像信号線DTLの信号電位が、信号電位VsigAではなく、それよりも低いVsig1となっているため、T時間は、T時間よりも短くなる(T<T)。
【0072】
時刻t20において、再び、電源制御線電位が電源スキャナ14により高電位に切換えられ、第3トランジスタ37がオフする。続く時刻t21において、水平セレクタ12は、映像信号線DTLに出力される映像信号の信号電位Vsigを、信号電位Vsig1から、それよりも高電位の信号電位Vsig2に変更する。ここで、信号電位Vsig2は、信号電位VsigAと比較すると、ΔVcだけ低い。
【0073】
その後、時刻t22から時刻t23までの第2の映像信号書き込み期間において、2回目の映像信号の書き込みが行われる。即ち、ライトスキャナ13が、走査線電位を高電位に切換え、サンプリング用トランジスタ31をオンさせる。これにより、映像信号線DTLを介して水平セレクタ12から、階調に応じた信号電位Vsig2の映像信号が、駆動用トランジスタ32のゲートに供給される。
【0074】
その結果、駆動用トランジスタ32のゲート電位Vgが上昇し、駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsは、(Vb+Vth)となる。ここで、駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgs=(Vb+Vth)は、Va+Vth+(Vsig2−Vsig1)である。
【0075】
時刻t23において、ライトスキャナ13が、走査線電位を低電位に切換え、サンプリング用トランジスタ31をオフさせる。続く時刻t24において、電源スキャナ14が、電源制御線電位を低電位に切換え、第3トランジスタ37をオフさせる。時刻t24以降、ブートストラップ動作により、駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgs=Vb+Vthを一定に維持したまま、駆動用トランジスタ32のゲート電位Vg及びソース電位Vsが上昇し、発光素子34が発光する。
【0076】
以上のように、ELパネル10は、移動度補正終了までと、それ以降とで、映像信号線DTLに流す映像信号の信号電位Vsigを切り替える。即ち、水平セレクタ12は、移動度補正終了までは信号電位Vsig1の映像信号を映像信号線DTLに供給し、移動度補正終了後は信号電位Vsig2の映像信号を映像信号線DTLに供給する。
【0077】
このとき、移動度補正終了時点の駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsは、図4における場合と同様の(Va+Vth)である。そして、ELパネル10は、移動度補正終了後、さらに、信号電位Vsig1よりも高い信号電位Vsig2を駆動用トランジスタ32のゲートに供給する。その結果、駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsは、移動度補正終了後の(Va+Vth)よりも大きい(Vb+Vth)となる。換言すれば、駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgsを、(Vsig2−Vsig1)だけ、図4における場合よりも大きくすることができる。これにより、映像信号として水平セレクタ12が入力する映像信号の信号電位が、図4の信号電位VsigAよりも、ΔVcだけ低い信号電位Vsig2で済む。
【0078】
[本発明の効果]
図6は、本発明の効果を示した図である。
【0079】
図6の横軸は、駆動用トランジスタ32のゲートに供給する信号電位Vsigを示し、縦軸は、そのときの発光素子34の輝度を示している。
【0080】
図4で説明した従来の駆動制御では、所定の輝度LVを得るためには、駆動用トランジスタ32のゲートに、信号電位VsigAを供給していた。これに対して、本発明を適用したELパネル10の駆動制御によれば、ΔVcだけ低い信号電位Vsig2を駆動用トランジスタ32のゲートに供給することで、同一の輝度LVを得ることができる。
【0081】
従って、ELパネル10の駆動制御によれば、同一の輝度で、入力する信号電位を低くすることができ、従来に比べて、消費電力を低減することができる。また、入力する信号電位を低くすることができるために、ELパネル10に電源を供給する電源回路なども簡略化することができ、表示装置1としての構成を簡略化することもできる。
【0082】
本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0083】
即ち、本発明は、電源電位Vddと駆動用トランジスタ32との間に、駆動用トランジスタ32への電源電位Vddの供給をスイッチングするスイッチングトランジスタを有するその他の画素回路に適用することができる。
【0084】
例えば、上述の5個のトランジスタと1個のキャパシタの画素回路(5Tr/1C画素回路)のうち、第2トランジスタ36を省略し、4個のトランジスタと1個のキャパシタからなる構成とした画素回路(4Tr/1C画素回路)を採用することができる。第2トランジスタ36を省略した4Tr/1C画素回路では、例えば、水平セレクタ12からサンプリング用トランジスタ31に供給する映像信号の信号電位が、VsigとVini2で切り替えられる。
【0085】
また、4Tr/1C画素回路に、さらに第1トランジスタ35をも省略した3個のトランジスタと1個のキャパシタからなる構成とした画素回路(3Tr/1C画素回路)を採用することもできる。
【0086】
さらに、5Tr/1C画素回路または4Tr/1C画素回路などに、発光素子34の容量成分を補うための補助容量を発光素子34と並列に追加するなどしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 表示装置, 10 ELパネル, 11 画素アレイ部, 21 画素, 31 サンプリング用トランジスタ, 32 駆動用トランジスタ, 33 蓄積容量, 34 発光素子, 35 第1トランジスタ, 36 第2トランジスタ, 37 第3トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオード特性を有し、駆動電流に応じて発光する発光素子と、
映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、
前記駆動電流を前記発光素子に供給する駆動用トランジスタと、
前記駆動用トランジスタへの電源電位の供給をスイッチングするスイッチングトランジスタと、
前記駆動用トランジスタのゲートと前記発光素子のアノードに接続される蓄積容量と
を少なくとも有する画素を行列状に複数配置した画素アレイ部を備え、
前記サンプリング用トランジスタが、前記駆動用トランジスタのゲートに第1の信号電位の前記映像信号を供給することにより、前記駆動用トランジスタの移動度を補正し、その後、前記第1の信号電位と異なる第2の信号電位の前記映像信号を、前記駆動用トランジスタのゲートに供給する
を備える表示装置。
【請求項2】
前記第2の信号電位は、前記第1の信号電位より高電位である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の信号電位および前記第2の信号電位の映像信号を前記駆動用トランジスタのゲートに供給する場合、
前記スイッチングトランジスタが、前記駆動用トランジスタを介して所定の電流を前記蓄積容量に供給して、前記駆動用トランジスタの閾値電圧に相当する電圧を前記蓄積容量に保持させ、
前記サンプリング用トランジスタが、前記第1の信号電位の前記映像信号をサンプリングして、前記第1の信号電位を前記蓄積容量に加算させ、
前記スイッチングトランジスタが、前記駆動用トランジスタの移動度に対応する電位だけ前記駆動用トランジスタのソース電位を上昇させ、
前記サンプリング用トランジスタが、前記第2の信号電位の前記映像信号をサンプリングして、前記駆動用トランジスタのゲートに供給する
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記駆動用トランジスタのソースと第1の接地電位との接続を制御する第1のトランジスタと、
前記駆動用トランジスタのゲートと第2の接地電位との接続を制御する第2のトランジスタと
をさらに備える
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
ダイオード特性を有し、駆動電流に応じて発光する発光素子と、映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタと、前記駆動電流を前記発光素子に供給する駆動用トランジスタと、前記駆動用トランジスタへの電源電位の供給をスイッチングするスイッチングトランジスタと、前記駆動用トランジスタのゲートと前記発光素子のアノードに接続される蓄積容量とを少なくとも有する画素を行列状に複数配置した画素アレイ部を備える表示装置の、
前記サンプリング用トランジスタが、前記駆動用トランジスタのゲートに第1の信号電位の前記映像信号を供給することにより、前記駆動用トランジスタの移動度を補正し、その後、前記第1の信号電位と異なる第2の信号電位の前記映像信号を、前記駆動用トランジスタのゲートに供給する
駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−261998(P2010−261998A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110414(P2009−110414)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】