表示装置の放熱構造および表示装置の放熱方法並びに表示装置
【課題】 表示パネルの冷却効果を高めて表示パネルの寿命を長くすることができる表示装置の放熱構造および表示装置の放熱方法並びに表示装置を提供する。
【解決手段】 表示装置10は、有機ELパネル11の表面11aとの間に第1の流路17を形成する透明カバー18を有する。第1の流路17にファン27により強制的に気体を流して有機ELパネル11の表面11aを冷やして、その表面11aの熱を逃がすので、有機ELパネル11の温度を低く抑えることができる。有機ELパネル11の背面11b側に放熱板19を設けてあり、有機ELパネル11の表面11aが第1の流路17に流れる気体により冷却されるのに加えて、その背面11bが放熱板19の放熱により冷却される。
【解決手段】 表示装置10は、有機ELパネル11の表面11aとの間に第1の流路17を形成する透明カバー18を有する。第1の流路17にファン27により強制的に気体を流して有機ELパネル11の表面11aを冷やして、その表面11aの熱を逃がすので、有機ELパネル11の温度を低く抑えることができる。有機ELパネル11の背面11b側に放熱板19を設けてあり、有機ELパネル11の表面11aが第1の流路17に流れる気体により冷却されるのに加えて、その背面11bが放熱板19の放熱により冷却される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示装置の放熱構造および表示装置の放熱方法並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自発光型の素子を使う有機ELディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示装置では、表示パネルに熱を持つため、表示パネルの放熱が必要である。従来、プラズマディスプレイパネル用放熱装置として、例えば特許文献1に記載された技術が知られている。この放熱装置では、所定の隙間をあけて対向配置され、一方がプラズマディスプレイパネルの背面に熱伝導性シートを介して伝熱可能に接合される2枚の伝熱板の間に、放熱フィンが設けられている。放熱フィンは凹凸形状の繰り返しにより形成されたコルゲートフィンからなり、フィン長手方向が伝熱板の長辺及び短辺に対して傾斜することにより、伝熱板の間に傾斜した通気路を形成している。また、特許文献1に記載されたプラズマ表示装置では、プラズマディスプレイパネル用放熱装置がプラズマディスプレイパネルの背面側に伝熱可能に設けられている。
【特許文献1】特開2000−242182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載されているような従来の表示装置では、パネルの背面に設けた伝熱板或いは放熱板により放熱してパネルを冷却する構造をとっていた。そのため、パネルの冷却効果が十分ではなく、パネル温度を十分に下げることができないという問題があった。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、表示パネルの冷却効果を高めて表示パネルの寿命を長くすることができる表示装置の放熱構造および表示装置の放熱方法並びに表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における表示装置の放熱構造は、表示パネルを有する表示装置の放熱構造において、前記表示パネルの表面に第1の流路を形成する流路形成手段を備え、前記第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流すように構成したことを要旨とする。
【0006】
本発明者が実験した結果、表示パネルの表面を空冷により冷却する方が、その背面を空冷により冷却するよりも表示パネルの冷却効果が高くなることがわかった。これによれば、第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流して表示パネルの表面を冷却するので、表示パネルの温度を低く抑えることができる。これにより、表示パネルの冷却効果を高めて表示パネルの寿命を長くすることができる。なお、ここにいう「表示パネルの表面」とは、表示パネルの各発光素子で発光した光が出射される側の面をいう。実験では気体として空気を用いたが、その他の気体を用いてもよい。例えば、窒素ガス、アルゴンガス或いはその他の不活性ガス等を用いることができる。
【0007】
この表示装置の放熱構造において、前記表示パネルの背面側に放熱板を設けたことを要旨とする。これによれば、表示パネルの表面が第1の流路に流れる気体により冷却されるのに加えて、その背面が放熱板の放熱により冷却されるので、表示パネルの温度をより低く抑えることができる。これにより、表示パネルの冷却効果をさらに高めて表示パネルの寿命をさらに長くすることができる。
【0008】
この表示装置の放熱構造において、前記放熱板に気体を流すための第2の流路を形成するとともに、前記流路形成手段が固定されて前記第1の流路を形成する通風カバーを備え、前記通風カバーは前記第1の流路に連通した前通風口と前記第2の流路に連通した後通風口とを有し、さらに、前記前通風口および後通風口から前記第1の流路および第2の流路内にそれぞれ気体を吸い込んで、前記パネルの背面と表面の両方に気体を流すファンを備えることを要旨とする。
【0009】
これによれば、ファンにより前通風口および後通風口から第1の流路および第2の流路内にそれぞれ吸い込まれた気体により表示パネルの背面と表面の両面をそれぞれ冷却するので、表示パネルの温度をより低く抑えることができ、表示パネルの寿命をさらに長くすることができる。
【0010】
この表示装置の放熱構造において、前記流路形成手段は、前記表示パネルの表示領域を外部に見せるための開口部と、該開口部により形成される空間の両側に開口し、前記空間と外部とをそれぞれ連通する複数の通風口とを有し、前記表示パネルの表面に固定されるパネルカバーと、前記開口部を塞ぐように前記パネルカバーの表面に固定される透明カバーとを備え、前記開口部が前記透明カバーにより塞がれて前記空間が前記第1の流路になることを要旨とする。これによれば、パネルカバーの表面に透明カバーを固定すると、パネルカバーの開口部が透明カバーにより塞がれて第1の流路になる。この第1の流路に、各空間の両側にそれぞれ連通する複数の通風口のいずれか一つから自然対流で気体が流入し、表示パネルの表面を冷却するので、表示パネルの温度を低く抑えることができ、表示パネルの寿命を長くすることができる。
【0011】
この表示装置の放熱構造において、前記流路形成手段により形成される前記第1の流路として、互いに独立した複数の空間が形成されていることを要旨とする。これによれば、表示パネルの表面上に独立した複数の気体の流れを作ることができ、これら複数の気体の流れにより表示パネルの表面の冷却効果を高めることができる。
【0012】
この表示装置の放熱構造において、前記流路形成手段は、矩形の環状壁部を有する筒状体で、前記環状壁部の対向する2つの壁部に吸気口がそれぞれ形成され、前記環状壁部の一方の端部が前記表示パネルの表面の周縁部に接合される通風カバーと、前記環状壁部の他方の端部に接合され、前記表示パネルの表面との間に前記環状壁部で囲まれた第1の流路を形成する透明カバーと、前記2つの壁部の一方に、該一方の壁部に形成された前記吸気口から気体を吸い込むファンと、を備えることを要旨とする。
【0013】
これによれば、表示パネルの表面と透明カバーとの間に通風カバーの環状壁部で囲まれた第1の流路が形成される。ファンの作動により、環状壁部の対向する2つの壁部の一方に形成された吸気口側で気体を吸い込むことで、その他方の壁部の吸気口から第1の流路内に気体が吸い込まれ、第1の流路に気体が強制的に流れて表示パネルの表面が冷却される。このようにして、第1の流路にファンにより強制的に気体を流して表示パネルの表面を冷却するので、表示パネルの温度を低く抑えることができ、表示パネルの寿命を長くすることができる。
【0014】
この表示装置の放熱構造において、前記表示パネルはエレクトロルミネッセンスパネルであることを要旨とする。これによれば、エレクトロルミネッセンスパネルの表面を冷却するので、エレクトロルミネッセンスパネルの温度を低く抑えることができ、エレクトロルミネッセンスパネルの寿命を長くすることができる。
【0015】
本発明の表示装置は、前記の放熱構造を有するので、表示パネルの温度を低く抑えるこ
とができ、表示パネルの寿命を長くすることができる。そのため、寿命の長い表示装置を実現することができる。
【0016】
本発明における表示装置の放熱方法は、前記表示パネルの表面と離間して対向し、前記表面との間に第1の流路を形成し、前記第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流すことを要旨とする。これによれば、第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流して表示パネルの表面を冷却するので、表示パネルの温度を低く抑えることができる。これにより、表示パネルの寿命を長くすることができる。
【0017】
この表示装置の放熱方法において、前記表示パネルの背面側に放熱板を設けるとともに、前記放熱板に気体を流すための第2の流路を形成し、前記パネルの背面と表面の両方に気体を流すことを要旨とする。これによれば、表示パネルの表面が第1の流路に流れる気体により冷却されるのに加えて、その背面が放熱板の放熱により冷却されるので、表示パネルの温度をより低く抑えることができ、表示パネルの寿命をさらに長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した各実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、各実施形態の説明において同様の部位には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る表示装置の放熱構造を図1〜図4に基づいて説明する。
【0019】
本例で用いる表示装置10は、エレクトロルミネッセンスパネルとして有機ELパネル11を用いた有機ELディスプレイである。表示パネルとしての有機ELパネル11は、図1に示すように、自発光型のエレクトロルミネッセンス素子としての有機EL素子221をそれぞれ有する複数の画素220がマトリクス状に配置された発光素子基板12と、複数の画素220を密封するように発光素子基板12に接合された封止基板13とを備える。
【0020】
発光素子基板12上には、図1では図示を省略してあるが、陽極として機能する矩形状の画素電極がマトリクス状に形成されており、各画素電極上に、例えば、正孔注入/輸送層と発光層とが順次積層形成され、発光層が形成された基板のほぼ全面に渡って陰極が形成されている。また、各画素電極には、薄膜トランジスタ(TFT)等が電気的に接続されており、各画素電極、その上に形成された正孔注入/輸送層、発光層、および陰極により、各画素220の有機EL素子221が構成されている。なお、図1では複数の画素220のうちの一つのみを示してある。
【0021】
また、発光素子基板12上には、電源線、データ線、走査線、および制御信号線を含む複数の配線の端子部(図示省略)が形成されている。この端子部には、フレキシブル配線基板16上に形成された電源線、データ線、および制御信号線を含む複数の配線の端子部がそれぞれ電気的に接続されている。
【0022】
表示装置10は、図1に示すように、有機ELパネル11の表面11aとの間に第1の流路17(図4参照)を形成する流路形成手段としての透明カバー18を有する。この透明カバー18は、有機ELパネル11の表面11aと離間して対向し、この表面11aとの間に第1の流路17を形成する。透明カバー18は、透過率の高いガラスの板、或いは反射防止膜が表面に成膜された透明なプラスチックの板である。
【0023】
図1および図4に示すように、有機ELパネル11の背面(表示パネルの背面)11b側には、放熱板19が設けられている。ここにいう「有機ELパネル11の背面」とは、
有機ELパネル11の各有機EL素子221で発光した光が出射される側の表面(表示パネルの表面)11aとは反対側の面をいう。つまり、発光素子基板12と封止基板13を備えた有機ELパネル11の場合には、封止基板13の表面が有機ELパネル11の背面11bである。放熱板19には、多数の放熱フィン19aが立設されている。放熱板19は、その上下の壁部19b、19cの各内面を有機ELパネル11の上下の側面に固定して設けられている。なお、ここで用いた「上下」の語や、以下の説明で説明で用いる「左」、「右」、「上」、「下」の語は、有機ELパネル11の表面11aを正面から見た状態、つまり、図4の紙面内で下方から表示装置10の有機ELパネル11を見た状態を基準にして付されている。
【0024】
表示装置10は、図1〜図3に示すように、放熱板19に気体、例えば空気を流すための第2の流路22(図4参照)を形成するとともに、透明カバー18が固定されて第1の流路17を形成する通風カバー23を備える。通風カバー23は、図1および図4に示すように、第1の流路17に連通した前通風口24と第2の流路22に連通した後通風口25とを有する。ここで、符号「24」で示す通風口を前通風口とし、符号「25」で示す通風口を後通風口と呼んでいるのは、後通風口25と連通する第2の流路22が、有機ELパネル11の表面11a側から見て前通風口24と連通する第1の流路17よりも後側にあるからである。
【0025】
通風カバー23は、前通風口24と後通風口25が形成された左壁部23aと、上下の壁部23b、23cと、後壁部23dとを有し、後壁部23dに対向する前壁部と左壁部23aに対向する右壁部とが無い箱型のカバーである。この通風カバー23の前側は、矩形の4辺のうち右側の辺がない3つの辺からなる接合面23h(図1,図4参照)となっている。この接合面23hに透明カバー18の周縁部が接着剤で接合されている。これにより、有機ELパネル11の表面11aとの間に第1の流路17を形成する流路形成手段が、通風カバー23と透明カバー18とにより構成されている。
【0026】
また、通風カバー23の右側は、矩形の4辺のうち前側の辺がない3つの辺からなる接合面23fとなっている。この接合面23fにより、吸気口23gが形成されている。
通風カバー23の上下の壁部23b、23cは、2本の止めねじ26を通風カバー23の上下の壁部23b、23cにそれぞれ設けられた貫通穴23eに通し、放熱板19の上下の壁部19b、19cにそれぞれ設けられた2つのねじ孔19dに螺合して締結することにより、放熱板19に固定される。
【0027】
また、表示装置10は、前通風口24および後通風口25から第1の流路17および第2の流路22内にそれぞれ気体を吸い込んで、有機ELパネル11の背面11bと表面11aの両方に気体を強制的に流すファン27を備え。このファン27は、図4に示すように、その回転軸27aがファンユニット28内に設けられた軸受け30,31により回転可能に支持されている。図4で符号29はファン27用の電源ケーブルであり、符号29aは電源コネクタである。
【0028】
ファンユニット28は、通風カバー23の接合面23fと接合される矩形の接合面28aを有する。また、ファンユニット28の内部は、接合面28aにより形成される吸気口28bから吸い込んだ気体を吸気口28bより小さい排気口28cから排気する気体通路28dとなっている。ファンユニット28の接合面28aを通風カバー23の接合面23fに接合した状態を、図2〜図4で示している。なお、通風カバー23とファンユニット28は、発光素子基板12に接続されたフレキシブル配線基板16の一部が接合面28aと接合面23fの間から外に取り出されるように固定されている。
【0029】
以上のように構成された表示装置10の放熱構造では、ファン27が回転すると、ファ
ン27により気体が引っ張られて、通風カバー23の前通風口24および後通風口25から通風カバー23内の第1の流路17および第2の流路22内にそれぞれ気体が吸い込まれる。第1の流路17内に吸い込まれた気体は、第1の流路17内を有機ELパネル11の表面11aに沿って流れ、その表面11aを冷やした後、吸気口23gおよび吸気口28bからファンユニット28の気体通路28dに流入し、排気口28cから排出される。こうして、ファン27により気体を第1の流路17に強制的に流すことで、有機ELパネル11の表面11aが冷却され、有機ELパネル11の温度が低く抑えられる。
【0030】
一方、第2の流路22内に吸い込まれた気体は、第2の流路22内を放熱板19の多数の放熱フィン19aに沿って流れ、放熱板19を冷やした後、吸気口23gおよび吸気口28bからファンユニット28の気体通路28dに流入し、排気口28cから排出される。こうして、ファン27により気体を第2の流路22に強制的に流すことで、放熱板19が放熱し、この放熱により有機ELパネル11の背面11bが冷却され、有機ELパネル11の温度が低く抑えられる。
【0031】
本発明者が実験した結果を図11に示してある。図11は有機ELパネルの表面温度と輝度劣化の関係を示しており、横軸は有機ELパネルの表面温度を、縦軸は輝度が20%低下する時間をそれぞれ示している。また、同図において、符号Aは有機ELパネルを空冷しない場合の実験結果を、符号Bは同パネルの背面側をファンで空冷した場合の実験結果を、そして、符号Cは同パネルの背面と表面の両面をファンで空冷した場合の実験結果をそれぞれ示している。図11のグラフから、有機ELパネルの背面側をファンで空冷すると、同パネルを冷却しない場合よりも有機ELパネルの温度を低く抑えることができ、輝度が20%低下する時間で表わした有機ELパネルの寿命が長くなることが判る。また、有機ELパネルの背面と表面の両面をファンで空冷すると、その背面側をファンで空冷する場合よりも有機ELパネルの温度をより低く抑えることができ、有機ELパネルの寿命がより長くなることが判る。
【0032】
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○第1の流路17にファン27により強制的に気体を流して有機ELパネル11の表面11aを冷やして、その表面11aの熱を逃がすので、有機ELパネル11の温度を低く抑えることができる。これにより、有機ELパネル11の寿命を長くすることができる。
【0033】
○有機ELパネル11の背面11b側に放熱板19を設けた構成により、有機ELパネル11の表面11aが第1の流路17に流れる気体により冷却されるのに加えて、その背面11bが放熱板19の放熱により冷却されるので、有機ELパネル11の温度をより低く抑えることができ、有機ELパネル11の寿命をさらに長くすることができる。
【0034】
○ファン27により前通風口24および後通風口25から第1の流路17および第2の流路22内にそれぞれ吸い込まれた気体により有機ELパネル11の背面11bと表面11aの両面をそれぞれ冷却するので、有機ELパネル11の温度をより低く抑えることができ、有機ELパネル11の寿命をさらに長くすることができる。
【0035】
○図4に示すように、有機ELパネル11の前側(表面11a側)にその表面11aを空冷で冷却するための第1の流路17と、同パネルの後側(背面11b側)にその背面11bを空冷で冷却するための第2の流路22とが、通風カバー23と透明カバー18とにより形成されるので、全体の厚さが薄い表示装置10を実現できる。
【0036】
図4では、放熱板19と通風カバー23との間に隙間があるが、前通風口24から流入した気体と、後通風口25から流入した気体が混ざらないように、通風カバー23の各壁部23a,23b,23cの内壁と、放熱板19とに隙間が無いように配置してもよい。
こうすることにより、前通風口24から流入した気体と、後通風口25から流入した気体が混ざらないために、流速を確保できるので、よりよい冷却効果がある。隙間が無いようにするためには、パッキンを用いたり、シール剤で覆ったり、変形可能な通風カバー23を用いることで構成できる。
【0037】
○表示装置10は、上記のような放熱構造を有するので、有機ELパネル11の温度を低く抑えることができ、有機ELパネル11の寿命を長くすることができる。そのため、寿命の長い表示装置10を実現することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る表示装置の放熱構造を図5〜図8に基づいて説明する。
【0038】
本実施形態で用いる表示装置10Aは、移動体としての自動車等の車両のインストルメントパネルに搭載される移動体の表示モジュールとして構成したものである。
表示装置10Aの放熱構造は、図5に示すように、一つの細長い有機ELパネル11Aと、このパネルの表面11aに固定されるパネルカバー32と、パネルカバー32の表面32aに固定される透明カバー18Aとを備える。
【0039】
有機ELパネル11Aの左右の端子部(図示省略)には、図1に示す上記フレキシブル配線基板16と同様のフレキシブル配線基板16Aの各端子部がそれぞれ電気的に接続されている。この有機ELパネル11Aは、同パネルの表示エリア内の3つの表示領域2,3,4で、図8に示すような異なる3つの画像を表示するように駆動される。
【0040】
また、本実施形態に係る表示装置10Aの放熱構造では、有機ELパネル11Aの表面11aとの間に第1の流路を形成する流路形成手段が、パネルカバー32と透明カバー18Aとにより構成されている。この透明カバー18Aは、図1に示す上記透明カバー18と同様の板である。
【0041】
パネルカバー32には、有機ELパネル11Aの3つの表示領域2〜4を外部に見せるための3つの開口部(貫通孔)33〜35と、各開口部により形成される3つの独立した空間33a,34a,35aの両側に開口し、各空間と外部とを連通するように、各空間ごとに2つずつ、合計で6つの通風口36a〜36eとが形成されている。
【0042】
パネルカバー32の表面32aに透明カバー18Aを接着等により固定すると、3つの開口部(貫通孔)33,34,35が透明カバー18Aにより塞がれて、3つの空間33a,34a,35aが形成される。これら3つの空間は、上記第1実施形態における第1の流路17に相当する第1の流路になる。
【0043】
このように、本実施形態に係る表示装置10Aの放熱構造では、一つの有機ELパネル11Aの表面11aに気体を流すための第1の流路として、3つの独立した空間33a,34a,35aが形成されている。つまり、前記流路形成手段により形成される第1の流路が3つある。空間33aで形成される第1の流路には、その空間の両側に連通した2つの通風口36a,36bのいずれか一方から自然対流で気体が流入し、有機ELパネル11Aの表面11aを冷却する。同様に、空間34aで形成される第1の流路には、2つの通風口36c、36dのいずれか一方から自然対流で気体が流入し、有機ELパネル11Aの表面11aを冷却する。また、空間35aで形成される第1の流路には、2つの通風口36e、36fのいずれか一方から自然対流で気体が流入し、有機ELパネル11Aの表面11aを冷却する。
【0044】
移動体の表示モジュールとして構成した表示装置10Aが搭載された車両20のインストルメントパネル21を図7で示している。また、表示装置10Aは、例えば図8に示す
ような異なる3つの画像を表示する。この表示装置10Aは、真中の表示領域2で車速を表わすスピードメータの目盛り91、数字92および指針93を画像表示する。また、右側の表示領域3でエンジン回転数を表示するタコメータの目盛り94、数字95および指針96を画像表示し、左側の表示領域4でカーナビゲーション装置の地図情報等の画像97を表示するようになっている。
【0045】
以上のように構成された第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○3つの独立した空間33a,34a,35aでそれぞれ形成される第1の流路に、各空間の両側にそれぞれ連通した2つの通風口のいずれか一方から自然対流で気体が流入し、有機ELパネル11Aの表面11aを冷却するので、有機ELパネル11の温度を低く抑えることができ、有機ELパネル11の寿命を長くすることができる。
【0046】
○有機ELパネル11Aの表面11aをファンを使わずに自然対流による空冷で冷却するので、構造が簡単になり、全体の厚さを薄くすることができる。これにより、自動車等の移動体や、大型テレビ等への組み込みが容易な表示装置の放熱構造を実現できる。
【0047】
○一つの有機ELパネル11Aの表面11aに気体を流すための第1の流路として、3つの独立した空間33a,34a,35aが形成されているので、その表面11a上に独立した3つの気体の流れを作ることができ、これら3つの気体の流れにより表面11aの冷却効果を高めることができる。
【0048】
○パネルカバー32の表面32aに透明カバー18Aを接着等により固定すると、3つの開口部(貫通孔)33,34,35が透明カバー18Aにより塞がれて、3つの空間33a,34a,35aが形成される。これら3つの空間は、上記第1実施形態における第1の流路17に相当する第1の流路になる。このため、表示装置10Aを、図8に示すような異なる3つの画像を表示する移動体の表示モジュールとして構成する場合、有機ELパネル11Aの表面11aを冷却するための流路をデザインカバーであるパネルカバー32と透明カバー18Aとで簡単に構成することができる。しかも、表示装置10Aの放熱構造を薄くすることができる。
【0049】
○表示装置10Aは、上記のような放熱構造を有するので、有機ELパネル11Aの温度を低く抑えることができ、有機ELパネル11Aの寿命を長くすることができる。そのため、寿命の長い表示装置10Aを実現することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る表示装置の放熱構造を図9および図10に基づいて説明する。
【0050】
本実施形態で用いる表示装置10Bの放熱構造は、図9に示すように、有機ELパネル11Bと、通風カバー40と、透明カバー18Bと、ファンユニット28とを備える。有機ELパネル11Bには、図1に示す上記フレキシブル配線基板16と同様のフレキシブル配線基板16Bが2つ接続されている。
【0051】
通風カバー40は矩形の環状壁部41を有する筒状体で、環状壁部41の対向する2つの壁部42,43に吸気口42a,43aがそれぞれ形成されている。環状壁部41の一方の端部41aは、有機ELパネル11Bの表面11aの周縁部37(図9の網掛け部)に接着剤80により接合される。その周縁部37は、有機ELパネル11Bの表示エリア38の周囲の非表示エリア39内にある。
【0052】
透明カバー18Bは、通風カバー40の環状壁部41の他方の端部41bに接合され、有機ELパネル11Bの表面11aとの間に環状壁部41で囲まれた第1の流路17Bを形成する。透明カバー18Bの周縁部18aは、環状壁部41の他方の端部41bにゴム
シール44を押圧変形した状態で接合される(図10参照)。
【0053】
ファンユニット28は、図1で説明したファンユニット28と同様の構造を有し、内部にファン27が設けられている。ファンユニット28は、その接合面28a(図1参照)を、ゴムシール45を押圧変形させた状態で通風カバー40の壁部43に接合することで、通風カバー40に固定される。ファン27により、環状壁部41の壁部43に形成された吸気口43aから気体を吸い込むようになっている。この吸気口43aは、ファン27の作動により多量の気体を吸気口43a側で吸い込めるように吸気口42aよりも大きくなっている。
【0054】
このように構成された表示装置10Bの放熱構造では、有機ELパネル11Bの表面11aと透明カバー18Bとの間に通風カバー40の環状壁部41で囲まれた第1の流路17Bが形成される。ファン27の作動により、環状壁部41の一方の壁部43に形成された吸気口43a側で気体を吸い込まれることで、その他方の壁部42の吸気口42aから第1の流路17B内に気体が吸い込まれ、第1の流路17Bに気体が強制的に流れて有機ELパネル11Bの表面11aが冷却される。
【0055】
以上のように構成された第3実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○第1の流路17Bにファン27により強制的に気体を流して有機ELパネル11Bの表面11aを冷却するので、有機ELパネル11Bの温度を低く抑えることができ、有機ELパネル11Bの表面11aの寿命を長くすることができる。
【0056】
○通風カバー40の環状壁部41の一方の端部41aが有機ELパネル11Bの表面11aの周縁部37に接合され、その他方の端部41bに透明カバー18Bの周縁部18aが接合された構成により、有機ELパネル11Bの表面11aと透明カバー18Bとの間に通風カバー40の環状壁部41で囲まれた第1の流路17Bが形成される。このような構成により、表示装置10Bの放熱構造全体の厚さを薄くすることができる。これにより、自動車等の移動体や、大型テレビ等への組み込みが容易な表示装置の放熱構造を実現できる。
【0057】
○通風カバー40の端部41bと透明カバー18Bの周縁部18aとの接合部にはゴムシール44が、通風カバー40の壁部43とファンユニット28の接合面28aとの接合部にはゴムシール45が、それぞれ押圧変形した状態で介在している。これにより、第1の流路17B内に流れる気体が、それらの接合部から漏れるのが抑制されるので、有機ELパネル11Bの表面11aの冷却効果を高めることができる。
【0058】
○表示装置10Bは、上記のような放熱構造を有するので、有機ELパネル11Bの温度を低く抑えることができ、有機ELパネル11Bの寿命を長くすることができる。そのため、寿命の長い表示装置10Bを実現することができる。
【0059】
(表示装置の放熱方法)
次に、本発明を具体化した表示装置の放熱方法の各実施形態を説明する。
第1実施形態に係る表示装置の放熱方法を図1〜図4に基づいて説明する。
【0060】
この表示装置の放熱方法の特徴は、次の点にある。
・有機ELパネル11の表面11aと離間して対向し、その表面11aとの間に第1の流路17を形成し、第1の流路17にファン27により強制的に気体を流す。
【0061】
・有機ELパネル11の背面11b側に放熱板19を設けるとともに、放熱板19に気体を流すための第2の流路22を形成し、有機ELパネル11の背面11bと表面11a
の両方に気体を流す。
【0062】
第1実施形態に係る表示装置の放熱方法によれば、以下の作用効果を奏する。
○第1の流路17に強制的に気体を流して有機ELパネル11の表面11aを冷却するので、有機ELパネル11の温度を低く抑えることができ、表示パネルの寿命を長くすることができる。
【0063】
○有機ELパネル11の表面11aが第1の流路17に流れる気体により冷却されるのに加えて、その背面11bが放熱板19の放熱により冷却されるので、有機ELパネル11の温度をより低く抑えることができ、表示パネルの寿命をさらに長くすることができる。
【0064】
第2実施形態に係る表示装置の放熱方法を図5および図6に基づいて説明する。
この表示装置の放熱方法の特徴は、次の点にある。
・有機ELパネル11Aの表面11aと離間して対向し、その表面11aとの間に第1の流路17Aを形成し、第1の流路17Aに自然対流で気体を流す。
【0065】
・有機ELパネル11Aの表面11aに気体を流すための第1の流路17Aとして、3つの独立した空間33a,34a,35aを形成した。
第2実施形態に係る表示装置の放熱方法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0066】
○第1の流路17Aに自然対流で気体を流して有機ELパネル11Aの表面11aを冷却するので、有機ELパネル11Aの温度を低く抑えることができ、有機ELパネルの寿命を長くすることができる。
【0067】
○第1の流路17Aとして、3つの独立した空間33a,34a,35aが形成されているので、有機ELパネル11Aの表面11a上に独立した3つの気体の流れを作ることができ、これら3つの気体の流れにより表面11aの冷却効果を高めることができる。
【0068】
第3実施形態に係る表示装置の放熱方法を図9に基づいて説明する。
この表示装置の放熱方法の特徴は、次の点にある。
・有機ELパネル11Bの表面11aと離間して対向し、その表面11aとの間に第1の流路17Bを形成し、第1の流路17Bにファンにより強制的に気体を流す。
【0069】
第3実施形態に係る表示装置の放熱方法によれば、以下の作用効果を奏する。
○第1の流路17Bに強制的に気体を流して有機ELパネル11Bの表面11aを冷却するので、有機ELパネル11Bの温度を低く抑えることができ、有機ELパネルの寿命を長くすることができる。
【0070】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記各実施形態では、表示パネルとして、有機ELディスプレイに用いる有機ELパネル11,11A,11Bを一例として説明したが、放電を用いた蛍光型のプラズマディスプレイに用いる表示パネル、電子放出素子を用いたディスプレイ(FED)やSED(Surface−Conduction Electron−Emitter Display)に用いる表示パネルにも本発明は
適用可能で、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
・図1に示す上記第1実施形態に係る表示装置の放熱構造では、ファン27を使って第1の流路17と第2の流路22の両方に気体を強制的に流すようにしているが、ファン27を使わずに第1の流路17と第2の流路22の両方に気体を自然対流で流すようにした構成にも本発明は適用可能である。
【0072】
・図5に示す上記第2実施形態に係る表示装置の放熱構造では、有機ELパネル11Aは、表示エリア内の3つの表示領域2,3,4で、図8に示すような異なる3つの画像を表示するように駆動される。本発明は、これに限定されず、自動車等の車両のインストルメントパネルに搭載される表示モジュールで、スピードメータ、タコメータ、カーナビゲーション装置の地図画面等の異なる態様の画像をそれぞれ表示する複数の有機ELパネルを備えた移動体の表示モジュールにも適用可能である。
【0073】
・図1〜図4に基づいて説明した第1実施形態に係る表示装置の放熱方法では、第1の流路17にファン27により強制的に気体を流すようにしているが、ファン27を用いずに、第1の流路17に自然対流で気体を流すようにしてもよい。
【0074】
・本発明は、上記各実施形態に係る表示装置の放熱方法に限らず、有機ELパネルの表面と離間して対向し、その表面との間に第1の流路を形成し、第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流す表示装置の放熱方法に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態に係る表示装置の放熱構造を示す分解斜視図。
【図2】同表示装置の放熱構造を示す平面図。
【図3】図2の側面図。
【図4】第1実施形態に係る表示装置を示す縦断面図。
【図5】第2実施形態に係る表示装置の放熱構造を示す分解斜視図。
【図6】図5のX−X線に沿った断面図。
【図7】第2実施形態に係る表示装置が搭載された車両の車室内部を示す斜視図。
【図8】同表示装置による異なる3つの画像の表示状態を示す説明図。
【図9】第3実施形態に係る表示装置の放熱構造を示す分解斜視図。
【図10】図9のY−Y線に沿った断面図。
【図11】有機ELパネルの表面温度と輝度劣化の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0076】
2,3,4…表示領域、10,10A,10B…表示装置、11a…表面、11b…背面、17,17A,17B…第1の流路、18,18A,18B…透明カバー、18a,37…周縁部、19…放熱板、42,43…壁部、22…第2の流路、23,40…通風カバー、42a,43a…吸気口、24…前通風口、25…後通風口、27…ファン、32…パネルカバー、33,34,35…開口部、33a,34a,35a…空間、36a,36b,36c,36d,36e,36f…通風口、41…環状壁部、41a,41b…端部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示装置の放熱構造および表示装置の放熱方法並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自発光型の素子を使う有機ELディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示装置では、表示パネルに熱を持つため、表示パネルの放熱が必要である。従来、プラズマディスプレイパネル用放熱装置として、例えば特許文献1に記載された技術が知られている。この放熱装置では、所定の隙間をあけて対向配置され、一方がプラズマディスプレイパネルの背面に熱伝導性シートを介して伝熱可能に接合される2枚の伝熱板の間に、放熱フィンが設けられている。放熱フィンは凹凸形状の繰り返しにより形成されたコルゲートフィンからなり、フィン長手方向が伝熱板の長辺及び短辺に対して傾斜することにより、伝熱板の間に傾斜した通気路を形成している。また、特許文献1に記載されたプラズマ表示装置では、プラズマディスプレイパネル用放熱装置がプラズマディスプレイパネルの背面側に伝熱可能に設けられている。
【特許文献1】特開2000−242182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載されているような従来の表示装置では、パネルの背面に設けた伝熱板或いは放熱板により放熱してパネルを冷却する構造をとっていた。そのため、パネルの冷却効果が十分ではなく、パネル温度を十分に下げることができないという問題があった。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、表示パネルの冷却効果を高めて表示パネルの寿命を長くすることができる表示装置の放熱構造および表示装置の放熱方法並びに表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における表示装置の放熱構造は、表示パネルを有する表示装置の放熱構造において、前記表示パネルの表面に第1の流路を形成する流路形成手段を備え、前記第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流すように構成したことを要旨とする。
【0006】
本発明者が実験した結果、表示パネルの表面を空冷により冷却する方が、その背面を空冷により冷却するよりも表示パネルの冷却効果が高くなることがわかった。これによれば、第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流して表示パネルの表面を冷却するので、表示パネルの温度を低く抑えることができる。これにより、表示パネルの冷却効果を高めて表示パネルの寿命を長くすることができる。なお、ここにいう「表示パネルの表面」とは、表示パネルの各発光素子で発光した光が出射される側の面をいう。実験では気体として空気を用いたが、その他の気体を用いてもよい。例えば、窒素ガス、アルゴンガス或いはその他の不活性ガス等を用いることができる。
【0007】
この表示装置の放熱構造において、前記表示パネルの背面側に放熱板を設けたことを要旨とする。これによれば、表示パネルの表面が第1の流路に流れる気体により冷却されるのに加えて、その背面が放熱板の放熱により冷却されるので、表示パネルの温度をより低く抑えることができる。これにより、表示パネルの冷却効果をさらに高めて表示パネルの寿命をさらに長くすることができる。
【0008】
この表示装置の放熱構造において、前記放熱板に気体を流すための第2の流路を形成するとともに、前記流路形成手段が固定されて前記第1の流路を形成する通風カバーを備え、前記通風カバーは前記第1の流路に連通した前通風口と前記第2の流路に連通した後通風口とを有し、さらに、前記前通風口および後通風口から前記第1の流路および第2の流路内にそれぞれ気体を吸い込んで、前記パネルの背面と表面の両方に気体を流すファンを備えることを要旨とする。
【0009】
これによれば、ファンにより前通風口および後通風口から第1の流路および第2の流路内にそれぞれ吸い込まれた気体により表示パネルの背面と表面の両面をそれぞれ冷却するので、表示パネルの温度をより低く抑えることができ、表示パネルの寿命をさらに長くすることができる。
【0010】
この表示装置の放熱構造において、前記流路形成手段は、前記表示パネルの表示領域を外部に見せるための開口部と、該開口部により形成される空間の両側に開口し、前記空間と外部とをそれぞれ連通する複数の通風口とを有し、前記表示パネルの表面に固定されるパネルカバーと、前記開口部を塞ぐように前記パネルカバーの表面に固定される透明カバーとを備え、前記開口部が前記透明カバーにより塞がれて前記空間が前記第1の流路になることを要旨とする。これによれば、パネルカバーの表面に透明カバーを固定すると、パネルカバーの開口部が透明カバーにより塞がれて第1の流路になる。この第1の流路に、各空間の両側にそれぞれ連通する複数の通風口のいずれか一つから自然対流で気体が流入し、表示パネルの表面を冷却するので、表示パネルの温度を低く抑えることができ、表示パネルの寿命を長くすることができる。
【0011】
この表示装置の放熱構造において、前記流路形成手段により形成される前記第1の流路として、互いに独立した複数の空間が形成されていることを要旨とする。これによれば、表示パネルの表面上に独立した複数の気体の流れを作ることができ、これら複数の気体の流れにより表示パネルの表面の冷却効果を高めることができる。
【0012】
この表示装置の放熱構造において、前記流路形成手段は、矩形の環状壁部を有する筒状体で、前記環状壁部の対向する2つの壁部に吸気口がそれぞれ形成され、前記環状壁部の一方の端部が前記表示パネルの表面の周縁部に接合される通風カバーと、前記環状壁部の他方の端部に接合され、前記表示パネルの表面との間に前記環状壁部で囲まれた第1の流路を形成する透明カバーと、前記2つの壁部の一方に、該一方の壁部に形成された前記吸気口から気体を吸い込むファンと、を備えることを要旨とする。
【0013】
これによれば、表示パネルの表面と透明カバーとの間に通風カバーの環状壁部で囲まれた第1の流路が形成される。ファンの作動により、環状壁部の対向する2つの壁部の一方に形成された吸気口側で気体を吸い込むことで、その他方の壁部の吸気口から第1の流路内に気体が吸い込まれ、第1の流路に気体が強制的に流れて表示パネルの表面が冷却される。このようにして、第1の流路にファンにより強制的に気体を流して表示パネルの表面を冷却するので、表示パネルの温度を低く抑えることができ、表示パネルの寿命を長くすることができる。
【0014】
この表示装置の放熱構造において、前記表示パネルはエレクトロルミネッセンスパネルであることを要旨とする。これによれば、エレクトロルミネッセンスパネルの表面を冷却するので、エレクトロルミネッセンスパネルの温度を低く抑えることができ、エレクトロルミネッセンスパネルの寿命を長くすることができる。
【0015】
本発明の表示装置は、前記の放熱構造を有するので、表示パネルの温度を低く抑えるこ
とができ、表示パネルの寿命を長くすることができる。そのため、寿命の長い表示装置を実現することができる。
【0016】
本発明における表示装置の放熱方法は、前記表示パネルの表面と離間して対向し、前記表面との間に第1の流路を形成し、前記第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流すことを要旨とする。これによれば、第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流して表示パネルの表面を冷却するので、表示パネルの温度を低く抑えることができる。これにより、表示パネルの寿命を長くすることができる。
【0017】
この表示装置の放熱方法において、前記表示パネルの背面側に放熱板を設けるとともに、前記放熱板に気体を流すための第2の流路を形成し、前記パネルの背面と表面の両方に気体を流すことを要旨とする。これによれば、表示パネルの表面が第1の流路に流れる気体により冷却されるのに加えて、その背面が放熱板の放熱により冷却されるので、表示パネルの温度をより低く抑えることができ、表示パネルの寿命をさらに長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した各実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、各実施形態の説明において同様の部位には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る表示装置の放熱構造を図1〜図4に基づいて説明する。
【0019】
本例で用いる表示装置10は、エレクトロルミネッセンスパネルとして有機ELパネル11を用いた有機ELディスプレイである。表示パネルとしての有機ELパネル11は、図1に示すように、自発光型のエレクトロルミネッセンス素子としての有機EL素子221をそれぞれ有する複数の画素220がマトリクス状に配置された発光素子基板12と、複数の画素220を密封するように発光素子基板12に接合された封止基板13とを備える。
【0020】
発光素子基板12上には、図1では図示を省略してあるが、陽極として機能する矩形状の画素電極がマトリクス状に形成されており、各画素電極上に、例えば、正孔注入/輸送層と発光層とが順次積層形成され、発光層が形成された基板のほぼ全面に渡って陰極が形成されている。また、各画素電極には、薄膜トランジスタ(TFT)等が電気的に接続されており、各画素電極、その上に形成された正孔注入/輸送層、発光層、および陰極により、各画素220の有機EL素子221が構成されている。なお、図1では複数の画素220のうちの一つのみを示してある。
【0021】
また、発光素子基板12上には、電源線、データ線、走査線、および制御信号線を含む複数の配線の端子部(図示省略)が形成されている。この端子部には、フレキシブル配線基板16上に形成された電源線、データ線、および制御信号線を含む複数の配線の端子部がそれぞれ電気的に接続されている。
【0022】
表示装置10は、図1に示すように、有機ELパネル11の表面11aとの間に第1の流路17(図4参照)を形成する流路形成手段としての透明カバー18を有する。この透明カバー18は、有機ELパネル11の表面11aと離間して対向し、この表面11aとの間に第1の流路17を形成する。透明カバー18は、透過率の高いガラスの板、或いは反射防止膜が表面に成膜された透明なプラスチックの板である。
【0023】
図1および図4に示すように、有機ELパネル11の背面(表示パネルの背面)11b側には、放熱板19が設けられている。ここにいう「有機ELパネル11の背面」とは、
有機ELパネル11の各有機EL素子221で発光した光が出射される側の表面(表示パネルの表面)11aとは反対側の面をいう。つまり、発光素子基板12と封止基板13を備えた有機ELパネル11の場合には、封止基板13の表面が有機ELパネル11の背面11bである。放熱板19には、多数の放熱フィン19aが立設されている。放熱板19は、その上下の壁部19b、19cの各内面を有機ELパネル11の上下の側面に固定して設けられている。なお、ここで用いた「上下」の語や、以下の説明で説明で用いる「左」、「右」、「上」、「下」の語は、有機ELパネル11の表面11aを正面から見た状態、つまり、図4の紙面内で下方から表示装置10の有機ELパネル11を見た状態を基準にして付されている。
【0024】
表示装置10は、図1〜図3に示すように、放熱板19に気体、例えば空気を流すための第2の流路22(図4参照)を形成するとともに、透明カバー18が固定されて第1の流路17を形成する通風カバー23を備える。通風カバー23は、図1および図4に示すように、第1の流路17に連通した前通風口24と第2の流路22に連通した後通風口25とを有する。ここで、符号「24」で示す通風口を前通風口とし、符号「25」で示す通風口を後通風口と呼んでいるのは、後通風口25と連通する第2の流路22が、有機ELパネル11の表面11a側から見て前通風口24と連通する第1の流路17よりも後側にあるからである。
【0025】
通風カバー23は、前通風口24と後通風口25が形成された左壁部23aと、上下の壁部23b、23cと、後壁部23dとを有し、後壁部23dに対向する前壁部と左壁部23aに対向する右壁部とが無い箱型のカバーである。この通風カバー23の前側は、矩形の4辺のうち右側の辺がない3つの辺からなる接合面23h(図1,図4参照)となっている。この接合面23hに透明カバー18の周縁部が接着剤で接合されている。これにより、有機ELパネル11の表面11aとの間に第1の流路17を形成する流路形成手段が、通風カバー23と透明カバー18とにより構成されている。
【0026】
また、通風カバー23の右側は、矩形の4辺のうち前側の辺がない3つの辺からなる接合面23fとなっている。この接合面23fにより、吸気口23gが形成されている。
通風カバー23の上下の壁部23b、23cは、2本の止めねじ26を通風カバー23の上下の壁部23b、23cにそれぞれ設けられた貫通穴23eに通し、放熱板19の上下の壁部19b、19cにそれぞれ設けられた2つのねじ孔19dに螺合して締結することにより、放熱板19に固定される。
【0027】
また、表示装置10は、前通風口24および後通風口25から第1の流路17および第2の流路22内にそれぞれ気体を吸い込んで、有機ELパネル11の背面11bと表面11aの両方に気体を強制的に流すファン27を備え。このファン27は、図4に示すように、その回転軸27aがファンユニット28内に設けられた軸受け30,31により回転可能に支持されている。図4で符号29はファン27用の電源ケーブルであり、符号29aは電源コネクタである。
【0028】
ファンユニット28は、通風カバー23の接合面23fと接合される矩形の接合面28aを有する。また、ファンユニット28の内部は、接合面28aにより形成される吸気口28bから吸い込んだ気体を吸気口28bより小さい排気口28cから排気する気体通路28dとなっている。ファンユニット28の接合面28aを通風カバー23の接合面23fに接合した状態を、図2〜図4で示している。なお、通風カバー23とファンユニット28は、発光素子基板12に接続されたフレキシブル配線基板16の一部が接合面28aと接合面23fの間から外に取り出されるように固定されている。
【0029】
以上のように構成された表示装置10の放熱構造では、ファン27が回転すると、ファ
ン27により気体が引っ張られて、通風カバー23の前通風口24および後通風口25から通風カバー23内の第1の流路17および第2の流路22内にそれぞれ気体が吸い込まれる。第1の流路17内に吸い込まれた気体は、第1の流路17内を有機ELパネル11の表面11aに沿って流れ、その表面11aを冷やした後、吸気口23gおよび吸気口28bからファンユニット28の気体通路28dに流入し、排気口28cから排出される。こうして、ファン27により気体を第1の流路17に強制的に流すことで、有機ELパネル11の表面11aが冷却され、有機ELパネル11の温度が低く抑えられる。
【0030】
一方、第2の流路22内に吸い込まれた気体は、第2の流路22内を放熱板19の多数の放熱フィン19aに沿って流れ、放熱板19を冷やした後、吸気口23gおよび吸気口28bからファンユニット28の気体通路28dに流入し、排気口28cから排出される。こうして、ファン27により気体を第2の流路22に強制的に流すことで、放熱板19が放熱し、この放熱により有機ELパネル11の背面11bが冷却され、有機ELパネル11の温度が低く抑えられる。
【0031】
本発明者が実験した結果を図11に示してある。図11は有機ELパネルの表面温度と輝度劣化の関係を示しており、横軸は有機ELパネルの表面温度を、縦軸は輝度が20%低下する時間をそれぞれ示している。また、同図において、符号Aは有機ELパネルを空冷しない場合の実験結果を、符号Bは同パネルの背面側をファンで空冷した場合の実験結果を、そして、符号Cは同パネルの背面と表面の両面をファンで空冷した場合の実験結果をそれぞれ示している。図11のグラフから、有機ELパネルの背面側をファンで空冷すると、同パネルを冷却しない場合よりも有機ELパネルの温度を低く抑えることができ、輝度が20%低下する時間で表わした有機ELパネルの寿命が長くなることが判る。また、有機ELパネルの背面と表面の両面をファンで空冷すると、その背面側をファンで空冷する場合よりも有機ELパネルの温度をより低く抑えることができ、有機ELパネルの寿命がより長くなることが判る。
【0032】
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○第1の流路17にファン27により強制的に気体を流して有機ELパネル11の表面11aを冷やして、その表面11aの熱を逃がすので、有機ELパネル11の温度を低く抑えることができる。これにより、有機ELパネル11の寿命を長くすることができる。
【0033】
○有機ELパネル11の背面11b側に放熱板19を設けた構成により、有機ELパネル11の表面11aが第1の流路17に流れる気体により冷却されるのに加えて、その背面11bが放熱板19の放熱により冷却されるので、有機ELパネル11の温度をより低く抑えることができ、有機ELパネル11の寿命をさらに長くすることができる。
【0034】
○ファン27により前通風口24および後通風口25から第1の流路17および第2の流路22内にそれぞれ吸い込まれた気体により有機ELパネル11の背面11bと表面11aの両面をそれぞれ冷却するので、有機ELパネル11の温度をより低く抑えることができ、有機ELパネル11の寿命をさらに長くすることができる。
【0035】
○図4に示すように、有機ELパネル11の前側(表面11a側)にその表面11aを空冷で冷却するための第1の流路17と、同パネルの後側(背面11b側)にその背面11bを空冷で冷却するための第2の流路22とが、通風カバー23と透明カバー18とにより形成されるので、全体の厚さが薄い表示装置10を実現できる。
【0036】
図4では、放熱板19と通風カバー23との間に隙間があるが、前通風口24から流入した気体と、後通風口25から流入した気体が混ざらないように、通風カバー23の各壁部23a,23b,23cの内壁と、放熱板19とに隙間が無いように配置してもよい。
こうすることにより、前通風口24から流入した気体と、後通風口25から流入した気体が混ざらないために、流速を確保できるので、よりよい冷却効果がある。隙間が無いようにするためには、パッキンを用いたり、シール剤で覆ったり、変形可能な通風カバー23を用いることで構成できる。
【0037】
○表示装置10は、上記のような放熱構造を有するので、有機ELパネル11の温度を低く抑えることができ、有機ELパネル11の寿命を長くすることができる。そのため、寿命の長い表示装置10を実現することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る表示装置の放熱構造を図5〜図8に基づいて説明する。
【0038】
本実施形態で用いる表示装置10Aは、移動体としての自動車等の車両のインストルメントパネルに搭載される移動体の表示モジュールとして構成したものである。
表示装置10Aの放熱構造は、図5に示すように、一つの細長い有機ELパネル11Aと、このパネルの表面11aに固定されるパネルカバー32と、パネルカバー32の表面32aに固定される透明カバー18Aとを備える。
【0039】
有機ELパネル11Aの左右の端子部(図示省略)には、図1に示す上記フレキシブル配線基板16と同様のフレキシブル配線基板16Aの各端子部がそれぞれ電気的に接続されている。この有機ELパネル11Aは、同パネルの表示エリア内の3つの表示領域2,3,4で、図8に示すような異なる3つの画像を表示するように駆動される。
【0040】
また、本実施形態に係る表示装置10Aの放熱構造では、有機ELパネル11Aの表面11aとの間に第1の流路を形成する流路形成手段が、パネルカバー32と透明カバー18Aとにより構成されている。この透明カバー18Aは、図1に示す上記透明カバー18と同様の板である。
【0041】
パネルカバー32には、有機ELパネル11Aの3つの表示領域2〜4を外部に見せるための3つの開口部(貫通孔)33〜35と、各開口部により形成される3つの独立した空間33a,34a,35aの両側に開口し、各空間と外部とを連通するように、各空間ごとに2つずつ、合計で6つの通風口36a〜36eとが形成されている。
【0042】
パネルカバー32の表面32aに透明カバー18Aを接着等により固定すると、3つの開口部(貫通孔)33,34,35が透明カバー18Aにより塞がれて、3つの空間33a,34a,35aが形成される。これら3つの空間は、上記第1実施形態における第1の流路17に相当する第1の流路になる。
【0043】
このように、本実施形態に係る表示装置10Aの放熱構造では、一つの有機ELパネル11Aの表面11aに気体を流すための第1の流路として、3つの独立した空間33a,34a,35aが形成されている。つまり、前記流路形成手段により形成される第1の流路が3つある。空間33aで形成される第1の流路には、その空間の両側に連通した2つの通風口36a,36bのいずれか一方から自然対流で気体が流入し、有機ELパネル11Aの表面11aを冷却する。同様に、空間34aで形成される第1の流路には、2つの通風口36c、36dのいずれか一方から自然対流で気体が流入し、有機ELパネル11Aの表面11aを冷却する。また、空間35aで形成される第1の流路には、2つの通風口36e、36fのいずれか一方から自然対流で気体が流入し、有機ELパネル11Aの表面11aを冷却する。
【0044】
移動体の表示モジュールとして構成した表示装置10Aが搭載された車両20のインストルメントパネル21を図7で示している。また、表示装置10Aは、例えば図8に示す
ような異なる3つの画像を表示する。この表示装置10Aは、真中の表示領域2で車速を表わすスピードメータの目盛り91、数字92および指針93を画像表示する。また、右側の表示領域3でエンジン回転数を表示するタコメータの目盛り94、数字95および指針96を画像表示し、左側の表示領域4でカーナビゲーション装置の地図情報等の画像97を表示するようになっている。
【0045】
以上のように構成された第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○3つの独立した空間33a,34a,35aでそれぞれ形成される第1の流路に、各空間の両側にそれぞれ連通した2つの通風口のいずれか一方から自然対流で気体が流入し、有機ELパネル11Aの表面11aを冷却するので、有機ELパネル11の温度を低く抑えることができ、有機ELパネル11の寿命を長くすることができる。
【0046】
○有機ELパネル11Aの表面11aをファンを使わずに自然対流による空冷で冷却するので、構造が簡単になり、全体の厚さを薄くすることができる。これにより、自動車等の移動体や、大型テレビ等への組み込みが容易な表示装置の放熱構造を実現できる。
【0047】
○一つの有機ELパネル11Aの表面11aに気体を流すための第1の流路として、3つの独立した空間33a,34a,35aが形成されているので、その表面11a上に独立した3つの気体の流れを作ることができ、これら3つの気体の流れにより表面11aの冷却効果を高めることができる。
【0048】
○パネルカバー32の表面32aに透明カバー18Aを接着等により固定すると、3つの開口部(貫通孔)33,34,35が透明カバー18Aにより塞がれて、3つの空間33a,34a,35aが形成される。これら3つの空間は、上記第1実施形態における第1の流路17に相当する第1の流路になる。このため、表示装置10Aを、図8に示すような異なる3つの画像を表示する移動体の表示モジュールとして構成する場合、有機ELパネル11Aの表面11aを冷却するための流路をデザインカバーであるパネルカバー32と透明カバー18Aとで簡単に構成することができる。しかも、表示装置10Aの放熱構造を薄くすることができる。
【0049】
○表示装置10Aは、上記のような放熱構造を有するので、有機ELパネル11Aの温度を低く抑えることができ、有機ELパネル11Aの寿命を長くすることができる。そのため、寿命の長い表示装置10Aを実現することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る表示装置の放熱構造を図9および図10に基づいて説明する。
【0050】
本実施形態で用いる表示装置10Bの放熱構造は、図9に示すように、有機ELパネル11Bと、通風カバー40と、透明カバー18Bと、ファンユニット28とを備える。有機ELパネル11Bには、図1に示す上記フレキシブル配線基板16と同様のフレキシブル配線基板16Bが2つ接続されている。
【0051】
通風カバー40は矩形の環状壁部41を有する筒状体で、環状壁部41の対向する2つの壁部42,43に吸気口42a,43aがそれぞれ形成されている。環状壁部41の一方の端部41aは、有機ELパネル11Bの表面11aの周縁部37(図9の網掛け部)に接着剤80により接合される。その周縁部37は、有機ELパネル11Bの表示エリア38の周囲の非表示エリア39内にある。
【0052】
透明カバー18Bは、通風カバー40の環状壁部41の他方の端部41bに接合され、有機ELパネル11Bの表面11aとの間に環状壁部41で囲まれた第1の流路17Bを形成する。透明カバー18Bの周縁部18aは、環状壁部41の他方の端部41bにゴム
シール44を押圧変形した状態で接合される(図10参照)。
【0053】
ファンユニット28は、図1で説明したファンユニット28と同様の構造を有し、内部にファン27が設けられている。ファンユニット28は、その接合面28a(図1参照)を、ゴムシール45を押圧変形させた状態で通風カバー40の壁部43に接合することで、通風カバー40に固定される。ファン27により、環状壁部41の壁部43に形成された吸気口43aから気体を吸い込むようになっている。この吸気口43aは、ファン27の作動により多量の気体を吸気口43a側で吸い込めるように吸気口42aよりも大きくなっている。
【0054】
このように構成された表示装置10Bの放熱構造では、有機ELパネル11Bの表面11aと透明カバー18Bとの間に通風カバー40の環状壁部41で囲まれた第1の流路17Bが形成される。ファン27の作動により、環状壁部41の一方の壁部43に形成された吸気口43a側で気体を吸い込まれることで、その他方の壁部42の吸気口42aから第1の流路17B内に気体が吸い込まれ、第1の流路17Bに気体が強制的に流れて有機ELパネル11Bの表面11aが冷却される。
【0055】
以上のように構成された第3実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○第1の流路17Bにファン27により強制的に気体を流して有機ELパネル11Bの表面11aを冷却するので、有機ELパネル11Bの温度を低く抑えることができ、有機ELパネル11Bの表面11aの寿命を長くすることができる。
【0056】
○通風カバー40の環状壁部41の一方の端部41aが有機ELパネル11Bの表面11aの周縁部37に接合され、その他方の端部41bに透明カバー18Bの周縁部18aが接合された構成により、有機ELパネル11Bの表面11aと透明カバー18Bとの間に通風カバー40の環状壁部41で囲まれた第1の流路17Bが形成される。このような構成により、表示装置10Bの放熱構造全体の厚さを薄くすることができる。これにより、自動車等の移動体や、大型テレビ等への組み込みが容易な表示装置の放熱構造を実現できる。
【0057】
○通風カバー40の端部41bと透明カバー18Bの周縁部18aとの接合部にはゴムシール44が、通風カバー40の壁部43とファンユニット28の接合面28aとの接合部にはゴムシール45が、それぞれ押圧変形した状態で介在している。これにより、第1の流路17B内に流れる気体が、それらの接合部から漏れるのが抑制されるので、有機ELパネル11Bの表面11aの冷却効果を高めることができる。
【0058】
○表示装置10Bは、上記のような放熱構造を有するので、有機ELパネル11Bの温度を低く抑えることができ、有機ELパネル11Bの寿命を長くすることができる。そのため、寿命の長い表示装置10Bを実現することができる。
【0059】
(表示装置の放熱方法)
次に、本発明を具体化した表示装置の放熱方法の各実施形態を説明する。
第1実施形態に係る表示装置の放熱方法を図1〜図4に基づいて説明する。
【0060】
この表示装置の放熱方法の特徴は、次の点にある。
・有機ELパネル11の表面11aと離間して対向し、その表面11aとの間に第1の流路17を形成し、第1の流路17にファン27により強制的に気体を流す。
【0061】
・有機ELパネル11の背面11b側に放熱板19を設けるとともに、放熱板19に気体を流すための第2の流路22を形成し、有機ELパネル11の背面11bと表面11a
の両方に気体を流す。
【0062】
第1実施形態に係る表示装置の放熱方法によれば、以下の作用効果を奏する。
○第1の流路17に強制的に気体を流して有機ELパネル11の表面11aを冷却するので、有機ELパネル11の温度を低く抑えることができ、表示パネルの寿命を長くすることができる。
【0063】
○有機ELパネル11の表面11aが第1の流路17に流れる気体により冷却されるのに加えて、その背面11bが放熱板19の放熱により冷却されるので、有機ELパネル11の温度をより低く抑えることができ、表示パネルの寿命をさらに長くすることができる。
【0064】
第2実施形態に係る表示装置の放熱方法を図5および図6に基づいて説明する。
この表示装置の放熱方法の特徴は、次の点にある。
・有機ELパネル11Aの表面11aと離間して対向し、その表面11aとの間に第1の流路17Aを形成し、第1の流路17Aに自然対流で気体を流す。
【0065】
・有機ELパネル11Aの表面11aに気体を流すための第1の流路17Aとして、3つの独立した空間33a,34a,35aを形成した。
第2実施形態に係る表示装置の放熱方法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0066】
○第1の流路17Aに自然対流で気体を流して有機ELパネル11Aの表面11aを冷却するので、有機ELパネル11Aの温度を低く抑えることができ、有機ELパネルの寿命を長くすることができる。
【0067】
○第1の流路17Aとして、3つの独立した空間33a,34a,35aが形成されているので、有機ELパネル11Aの表面11a上に独立した3つの気体の流れを作ることができ、これら3つの気体の流れにより表面11aの冷却効果を高めることができる。
【0068】
第3実施形態に係る表示装置の放熱方法を図9に基づいて説明する。
この表示装置の放熱方法の特徴は、次の点にある。
・有機ELパネル11Bの表面11aと離間して対向し、その表面11aとの間に第1の流路17Bを形成し、第1の流路17Bにファンにより強制的に気体を流す。
【0069】
第3実施形態に係る表示装置の放熱方法によれば、以下の作用効果を奏する。
○第1の流路17Bに強制的に気体を流して有機ELパネル11Bの表面11aを冷却するので、有機ELパネル11Bの温度を低く抑えることができ、有機ELパネルの寿命を長くすることができる。
【0070】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記各実施形態では、表示パネルとして、有機ELディスプレイに用いる有機ELパネル11,11A,11Bを一例として説明したが、放電を用いた蛍光型のプラズマディスプレイに用いる表示パネル、電子放出素子を用いたディスプレイ(FED)やSED(Surface−Conduction Electron−Emitter Display)に用いる表示パネルにも本発明は
適用可能で、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
・図1に示す上記第1実施形態に係る表示装置の放熱構造では、ファン27を使って第1の流路17と第2の流路22の両方に気体を強制的に流すようにしているが、ファン27を使わずに第1の流路17と第2の流路22の両方に気体を自然対流で流すようにした構成にも本発明は適用可能である。
【0072】
・図5に示す上記第2実施形態に係る表示装置の放熱構造では、有機ELパネル11Aは、表示エリア内の3つの表示領域2,3,4で、図8に示すような異なる3つの画像を表示するように駆動される。本発明は、これに限定されず、自動車等の車両のインストルメントパネルに搭載される表示モジュールで、スピードメータ、タコメータ、カーナビゲーション装置の地図画面等の異なる態様の画像をそれぞれ表示する複数の有機ELパネルを備えた移動体の表示モジュールにも適用可能である。
【0073】
・図1〜図4に基づいて説明した第1実施形態に係る表示装置の放熱方法では、第1の流路17にファン27により強制的に気体を流すようにしているが、ファン27を用いずに、第1の流路17に自然対流で気体を流すようにしてもよい。
【0074】
・本発明は、上記各実施形態に係る表示装置の放熱方法に限らず、有機ELパネルの表面と離間して対向し、その表面との間に第1の流路を形成し、第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流す表示装置の放熱方法に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態に係る表示装置の放熱構造を示す分解斜視図。
【図2】同表示装置の放熱構造を示す平面図。
【図3】図2の側面図。
【図4】第1実施形態に係る表示装置を示す縦断面図。
【図5】第2実施形態に係る表示装置の放熱構造を示す分解斜視図。
【図6】図5のX−X線に沿った断面図。
【図7】第2実施形態に係る表示装置が搭載された車両の車室内部を示す斜視図。
【図8】同表示装置による異なる3つの画像の表示状態を示す説明図。
【図9】第3実施形態に係る表示装置の放熱構造を示す分解斜視図。
【図10】図9のY−Y線に沿った断面図。
【図11】有機ELパネルの表面温度と輝度劣化の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0076】
2,3,4…表示領域、10,10A,10B…表示装置、11a…表面、11b…背面、17,17A,17B…第1の流路、18,18A,18B…透明カバー、18a,37…周縁部、19…放熱板、42,43…壁部、22…第2の流路、23,40…通風カバー、42a,43a…吸気口、24…前通風口、25…後通風口、27…ファン、32…パネルカバー、33,34,35…開口部、33a,34a,35a…空間、36a,36b,36c,36d,36e,36f…通風口、41…環状壁部、41a,41b…端部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルを有する表示装置の放熱構造において、
前記表示パネルの表面に第1の流路を形成する流路形成手段を備え、
前記第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流すように構成したことを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置の放熱構造において、
前記表示パネルの背面側に放熱板を設けたことを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置の放熱構造において、
前記放熱板に気体を流すための第2の流路を形成するとともに、前記流路形成手段が固定されて前記第1の流路を形成する通風カバーを備え、前記通風カバーは前記第1の流路に連通した前通風口と前記第2の流路に連通した後通風口とを有し、さらに、前記前通風口および後通風口から前記第1の流路および第2の流路内にそれぞれ気体を吸い込んで、前記パネルの背面と表面の両方に気体を流すファンを備えることを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置の放熱構造において、
前記流路形成手段は、前記表示パネルの表示領域を外部に見せるための開口部と、該開口部により形成される空間の両側に開口し、前記空間と外部とをそれぞれ連通する複数の通風口とを有し、前記表示パネルの表面に固定されるパネルカバーと、前記開口部を塞ぐように前記パネルカバーの表面に固定される透明カバーとを備え、前記開口部が前記透明カバーにより塞がれて前記空間が前記第1の流路になることを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置の放熱構造において、
前記流路形成手段により形成される前記第1の流路として、互いに独立した複数の空間が形成されていることを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項6】
請求項1に記載の表示装置の放熱構造において、
前記流路形成手段は、矩形の環状壁部を有する筒状体で、前記環状壁部の対向する2つの壁部に吸気口がそれぞれ形成され、前記環状壁部の一方の端部が前記表示パネルの表面の周縁部に接合される通風カバーと、前記環状壁部の他方の端部に接合され、前記表示パネルの表面との間に前記環状壁部で囲まれた第1の流路を形成する透明カバーと、前記2つの壁部の一方に、該一方の壁部に形成された前記吸気口から気体を吸い込むファンと、を備えることを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の表示装置の放熱構造において、
前記表示パネルはエレクトロルミネッセンスパネルであることを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の表示装置の放熱構造を有することを特徴とする表示装置。
【請求項9】
表示パネルを有する表示装置の放熱方法において、
前記表示パネルの表面と離間して対向し、前記表面との間に第1の流路を形成し、
前記第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流すことを特徴とする表示装置の放熱方法。
【請求項10】
請求項9に記載の表示装置の放熱方法において、
前記表示パネルの背面側に放熱板を設けるとともに、前記放熱板に気体を流すための第2の流路を形成し、前記パネルの背面と表面の両方に気体を流すことを特徴とする表示装置の放熱方法。
【請求項1】
表示パネルを有する表示装置の放熱構造において、
前記表示パネルの表面に第1の流路を形成する流路形成手段を備え、
前記第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流すように構成したことを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置の放熱構造において、
前記表示パネルの背面側に放熱板を設けたことを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置の放熱構造において、
前記放熱板に気体を流すための第2の流路を形成するとともに、前記流路形成手段が固定されて前記第1の流路を形成する通風カバーを備え、前記通風カバーは前記第1の流路に連通した前通風口と前記第2の流路に連通した後通風口とを有し、さらに、前記前通風口および後通風口から前記第1の流路および第2の流路内にそれぞれ気体を吸い込んで、前記パネルの背面と表面の両方に気体を流すファンを備えることを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置の放熱構造において、
前記流路形成手段は、前記表示パネルの表示領域を外部に見せるための開口部と、該開口部により形成される空間の両側に開口し、前記空間と外部とをそれぞれ連通する複数の通風口とを有し、前記表示パネルの表面に固定されるパネルカバーと、前記開口部を塞ぐように前記パネルカバーの表面に固定される透明カバーとを備え、前記開口部が前記透明カバーにより塞がれて前記空間が前記第1の流路になることを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置の放熱構造において、
前記流路形成手段により形成される前記第1の流路として、互いに独立した複数の空間が形成されていることを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項6】
請求項1に記載の表示装置の放熱構造において、
前記流路形成手段は、矩形の環状壁部を有する筒状体で、前記環状壁部の対向する2つの壁部に吸気口がそれぞれ形成され、前記環状壁部の一方の端部が前記表示パネルの表面の周縁部に接合される通風カバーと、前記環状壁部の他方の端部に接合され、前記表示パネルの表面との間に前記環状壁部で囲まれた第1の流路を形成する透明カバーと、前記2つの壁部の一方に、該一方の壁部に形成された前記吸気口から気体を吸い込むファンと、を備えることを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の表示装置の放熱構造において、
前記表示パネルはエレクトロルミネッセンスパネルであることを特徴とする表示装置の放熱構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の表示装置の放熱構造を有することを特徴とする表示装置。
【請求項9】
表示パネルを有する表示装置の放熱方法において、
前記表示パネルの表面と離間して対向し、前記表面との間に第1の流路を形成し、
前記第1の流路に自然対流で或いは強制的に気体を流すことを特徴とする表示装置の放熱方法。
【請求項10】
請求項9に記載の表示装置の放熱方法において、
前記表示パネルの背面側に放熱板を設けるとともに、前記放熱板に気体を流すための第2の流路を形成し、前記パネルの背面と表面の両方に気体を流すことを特徴とする表示装置の放熱方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−227465(P2006−227465A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43514(P2005−43514)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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