説明

表示装置の製造方法

【課題】表示品位の良好な表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板上において画素毎に第1電極60を形成する工程と、蒸着法により第1電極60上に複数の薄膜を積層して光活性層64を形成する工程と、各画素の光活性層64を覆うように第2電極66を形成する工程と、を備え、光活性層64を形成する工程は、蒸着マスクを介して画素毎に第1薄膜材料を蒸着し発光層64Aを形成する工程と、発光層64Aを形成した後に第2薄膜材料を成膜する工程と、成膜された第2薄膜材料をその融点以上の温度で加熱する工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自発光性の表示素子を備えた表示装置の製造方法に係り、特に、表示素子を構成する光活性層を低分子系材料により蒸着法によって形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が注目されている。この有機EL表示装置は、自発光性素子であることから、視野角が広く、バックライトを必要とせず薄型化が可能であり、消費電力が抑えられ、且つ応答速度が速いといった特徴を有している。
【0003】
これらの特徴から、有機EL表示装置は、液晶表示装置に代わる、次世代平面表示装置の有力候補として注目を集めている。このような有機EL表示装置は、第1電極(陽極)と第2電極(陰極)との間に発光機能を有する有機化合物を含む光活性層を保持した有機EL素子をマトリックス状に配置することにより構成されたアレイ基板を備えている。このような構成において、例えば、第1電極(陽極)及び発光層は、画素毎に配置されている。また、第2電極は、複数の画素に共通に配置されている。
【0004】
このような有機EL素子の製造工程において、低分子系の有機化合物からなる光活性層を形成する工程においては、蒸着源から飛散した材料源を蒸着する蒸着法を適用可能である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−323888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カラー表示可能な有機EL表示装置を実現するための代表的な方法として、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色にそれぞれ発光する複数種類の色画素を配置する方法が挙げられる。これらの各色画素にそれぞれ配置される光活性層、特に発光層の形成方法として、画素パターンに対応した開口パターンを有する蒸着マスクを介して低分子系の有機化合物を蒸着するマスク蒸着法が適用可能である。
【0006】
発光層の形成工程においてマスク蒸着法を適用する場合、蒸着マスクを配置する際に、蒸着マスクに付着していた異物が発光層よりも先に形成されていた薄膜にダメージを与えるおそれがある。例えば、発光層よりも先に形成されていたホール輸送層に異物が食い込んで、光活性層を構成する薄膜を貫通してしまうことがある。
【0007】
この場合、後に光活性層上に第2電極を形成した際、第1電極と第2電極とがショートし、画素が発光しないいわゆる滅点不良となるおそれがある。また、1表示装置内に所定数以上の滅点不良が発生した場合には、不良品と判定されてしまい、製造歩留まりの低下を招く。
【0008】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、表示品位の良好な表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の態様による表示装置の製造方法は、
基板上において画素毎に第1電極を形成する工程と、
蒸着法により前記第1電極上に複数の薄膜を積層して光活性層を形成する工程と、
各画素の前記光活性層を覆うように第2電極を形成する工程と、を備え、
前記光活性層を形成する工程は、
蒸着マスクを介して画素毎に第1薄膜材料を蒸着し発光層を形成する工程と、
前記発光層を形成した後に第2薄膜材料を成膜する工程と、
成膜された前記第2薄膜材料をその融点以上の温度で加熱する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、異物混入による滅点不良の発生を抑制し、表示品位の良好な表示装置を製造するための製造方法を提供することができる。これにより、製造歩留まりを向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置の製造方法及び表示装置の製造装置について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態では、表示装置として、自己発光型表示装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を例にして説明する。
【0012】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、画像を表示する表示エリア102を有するアレイ基板100を備えている。表示エリア102は、マトリクス状に配置された複数種類の色画素PX(R、G、B)によって構成されている。
【0013】
また、アレイ基板100は、色画素PXの行方向(すなわち図1のY方向)に沿って配置された複数の走査線Ym(m=1、2、…)と、走査線Ymと略直交する列方向(すなわち図1のX方向)に沿って配置された複数の信号線Xn(n=1、2、…)と、有機EL素子40の第1電極60側に電源を供給するための電源供給線Pと、を備えている。
【0014】
さらに、アレイ基板100は、表示エリア102の外周に沿った周辺エリア104に、走査線Ymのそれぞれに走査信号を供給する走査線駆動回路107の少なくとも一部と、信号線Xnのそれぞれに映像信号を供給する信号線駆動回路108の少なくとも一部と、を備えている。すべての走査線Ymは、走査線駆動回路107に接続されている。また、すべての信号線Xnは、信号線駆動回路108に接続されている。
【0015】
各色画素PX(R、G、B)は、画素回路及び画素回路によって駆動制御される表示素子を備えている。画素回路は、オン画素とオフ画素とを電気的に分離しかつオン画素への映像信号を保持する機能を有する画素スイッチ10と、画素スイッチ10を介して供給される映像信号に基づき表示素子へ所望の駆動電流を供給する駆動トランジスタ20と、駆動トランジスタ20のゲート−ソース間電位を所定期間保持する蓄積容量素子30とを有している。これら画素スイッチ10及び駆動トランジスタ20は、例えば薄膜トランジスタにより構成され、ここでは、ポリシリコン(多結晶シリコン)の半導体層を有している。
【0016】
表示素子は、自発光素子である有機EL素子40(R、G、B)によって構成されている。すなわち、赤色画素PXRは、主に赤色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Rを備えている。緑色画素PXGは、主に緑色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Gを備えている。青色画素PXBは、主に青色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Bを備えている。
【0017】
各種有機EL素子40(R、G、B)の構成は、基本的に同一である。すなわち、図2に示すように、アレイ基板100は、配線基板120の主面側に配置された複数の有機EL素子40を備えている。なお、配線基板120は、ガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性支持基板上に、画素スイッチ10、駆動トランジスタ20、蓄積容量素子30、走査線駆動回路107、信号線駆動回路108、各種配線(走査線、信号線、電源供給線等)などを備えて構成されたものとする。
【0018】
有機EL素子40は、マトリクス状に配置され色画素PX毎に独立島状に配置された第1電極60と、第1電極60に対向して配置され複数の色画素PXに共通に配置された第2電極66と、これら第1電極60と第2電極66との間に保持された光活性層64と、によって構成されている。
【0019】
有機EL素子40を構成する第1電極60は、配線基板120表面の絶縁膜上に配置され、例えば陽極として機能する。配線基板120側から光を取り出す下面発光方式を採用した構成では、この第1電極60は、例えば、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化錫)、In(酸化インジウム)などの光透過性を有する導電材料によって形成され、特にITO、IZOを用いて形成することが好ましい。
【0020】
光活性層64は、第1電極60上に配置され、少なくとも発光層64Aを含んでいる。この光活性層64は、発光層64A以外の機能層を含むことができ、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、バッファ層などの機能層を含むことができる。この光活性層64は、複数の機能層を複合した単層で構成されても良いし、各機能層を積層した多層構造であっても良い。光活性層64においては、発光層64Aが有機系材料であればよく、発光層64A以外の層は無機系材料でも有機系材料でも構わない。
【0021】
光活性層64において、発光層64A以外の機能層は共通層であってもよく、図2に示した例では、発光層64Aの第1電極60側に配置されたホール側共通層64Hは、ホール注入層及びホール輸送層を含み、また、発光層64Aの第2電極66側に配置された電子側共通層64Eは、ブロッキング層及び電子輸送層を含んでいる。発光層64Aは、これらのホール側共通層64Hと電子側共通層64Eとの間に配置されている。発光層64Aは、赤、緑、または青に発光する発光機能を有した有機化合物によって形成されている。
【0022】
ここでは、特に光活性層64のうち、少なくとも画素毎に配置される層、例えば発光層64Aは低分子系材料によって形成するものとし、このような層の形成方法としては、所定の開口パターンを有する蒸着マスクを介して低分子系材料を蒸着するマスク蒸着法を適用している。
【0023】
第2電極66は、各色画素の光活性層64上に共通に配置される。この第2電極66は、電子注入機能を有する金属材料によって形成され、例えば陰極として機能する。下面発光方式を採用した構成では、この第2電極66は、光反射性を有する導電材料を用いて形成され、例えば、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分あるいは3成分の合金系を用いて形成することが好ましい。合金系材料としては、例えばAg・Mg(Ag:1〜20at%)、Al・Li(Li:0.3〜14at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、Al・Ca(Ca:5〜20at%)等が好ましい。
【0024】
また、アレイ基板100は、表示エリア102において、少なくとも隣接する色毎に色画素PX(R、G、B)間を分離する隔壁70を備えている。隔壁70は、例えば各第1電極60の縁に沿って格子状またはストライプ状に配置されている。この隔壁70は、例えば樹脂材料によって形成される。
【0025】
このような構成のアレイ基板100において、少なくとも表示エリア102は、封止体150によって封止されている。
【0026】
ここで、光活性層64を形成するための製造装置すなわち蒸着装置について説明する。
【0027】
図3に示すように、蒸着装置200は、光活性層64の少なくとも1層の薄膜を形成するための薄膜材料を放射する蒸着源210と、所定の開口パターンを有する蒸着マスク220と、を備えている。蒸着対象である処理基板(例えば第1電極60を形成済みの配線基板120)SUBは、蒸着マスク220と対向するように配置される。
【0028】
ところで、発光層64Aの形成工程においてマスク蒸着法を適用する場合、図4に示すように、蒸着マスクに付着していた異物が発光層64Aよりも先に形成されていたホール側共通層64Hに食い込んでしまうことがある。また、異物が混入しなかったものの、蒸着マスクがホール側共通層64Hに接触してしまい、ホール側共通層64Hを傷つけてしまうこともある。このような場合、ホール側共通層64Hを貫通して第1電極60まで到達するような開口が形成されてしまうと、最悪の場合、後に形成される第2電極66が第1電極60とショートすることがある。
【0029】
そこで、この実施の形態においては、光活性層64を形成する工程において、発光層64Aを形成する工程の後に成膜された薄膜をその材料の融点以上の温度で加熱する。つまり、第2電極66を形成する工程よりも前に、光活性層64を構成する少なくとも1つの薄膜を溶融し、再度固化させる工程が含まれている。
【0030】
これにより、例え発光層を形成する過程において、それ以前に形成された薄膜にダメージを与えて第1電極60まで貫通する開口が形成されたとしても、光活性層64を構成する少なくとも1つの薄膜が溶融して流動することにより、光活性層64の開口を塞ぐことが可能となる。
【0031】
このため、後に第2電極66を光活性層64上に形成したとき、第1電極60と第2電極66とのショートの発生を防止することができる。したがって、滅点不良の発生を抑制することが可能となり、表示品位の良好な表示装置を提供することができ、また、不良品の発生を低減することが可能となり、製造歩留まりを向上することができる。
【0032】
次に、有機EL素子の具体的な製造方法の一例について説明する。
【0033】
まず、図5Aに示すように、配線基板120上の表示エリア102において、複数種類の色画素PX(R、G、B)毎に独立島状の第1電極60を形成する。すなわち、配線基板120の一主面側において陽極として機能する金属膜をパターン化し、第1電極60を形成する。この第1電極60については、一般的はフォトリソグラフィプロセスで形成しても良いし、色画素PX(R、G、B)に対応したパターン(すなわち各色画素PXの第1電極60の形状に対応した開口パターン)を有する蒸着マスクを介して金属材料源を蒸着する蒸着法によって形成しても良い。
【0034】
続いて、各色画素PX(R、G、B)を分離する隔壁70を形成する。すなわち、第1電極60上を含む配線基板120の一主面側全体に感光性樹脂材料例えばアクリルタイプのポジティブトーンのレジストを成膜した後に、フォトリソグラフィプロセスなどでパターニングした後に、220℃で60分の焼成処理を行う。これにより、各色画素PX(R、G、B)を囲むように第1電極60の縁に沿った格子状の隔壁70が形成される。
【0035】
続いて、各色画素PX(R、G、B)内における第1電極60上に光活性層64を形成する。ここで、光活性層64は、複数の薄膜を積層して構成されており、ホール注入層及びホール輸送層を含むホール側共通層64H、発光層64A、及び、ブロッキング層及び電子輸送層を含む電子側共通層64Eからなり、これらはすべて低分子系の薄膜材料を蒸着することによって形成される。
【0036】
まず、図5Bに示すように、蒸着法により複数種類の色画素PX(R、G、B)に共通のホール注入層及びホール輸送層を連続して成膜し、ホール側共通層64Hを形成する。ここでは、ホール注入層として、CuPc(銅フタロシアニン)を100オングストロームの膜厚で成膜した。ホール輸送層64HTとして、α−NPD(芳香族ジアミン)を成膜した。
【0037】
その後、図5Cに示すように、マスク蒸着法により色画素PX(R、G、B)のそれぞれに個別の発光層64A(R、G、B)を形成する。ここでは、赤色画素PXRに配置される発光層64ARとして、ホスト材料にAlq(アルミニウムキリノール錯体)、ドーパント材料にDCM色素を用いて400オングストロームの膜厚で成膜した。また、緑色画素PXGに配置される発光層64AGとして、ホスト材料にAlq(アルミニウムキリノール錯体)、ドーパント材料にクマリン誘電体を用いて400オングストロームの膜厚で成膜した。また、青色画素PXBに配置される発光層64ABとして、ホスト材料にAlq(アルミニウムキリノール錯体)、ドーパント材料にペリレンを用いて400オングストロームの膜厚で成膜した。
【0038】
その後、図5Dに示すように、蒸着法により複数種類の色画素PX(R、G、B)に共通のブロッキング層及び電子輸送層を連続して成膜し、電子側共通層64Eを形成する。ここでは、ブロッキング層として、BAlq(キリノール系錯体誘電体)を50オングストロームの膜厚で成膜した。さらに、電子輸送層として、Alq(アルミニウムキリノール錯体)を500オングストロームの膜厚で成膜した。
【0039】
続いて、このようにして成膜されたブロッキング層として機能する薄膜材料をその融点以上の温度で加熱する。この加熱工程は、例えば、窒素雰囲気中において、200℃乃至220℃程度の温度で20乃至60分程度の時間にわたって行われる。また、この加熱工程は、電子側共通層64Eを形成した装置(例えば図3に示したような蒸着装置200)内で電子側共通層64Eを形成済みの基板全体を加熱することによって行っても良いし、他のチャンバに電子側共通層64Eを形成済みの基板を移設した後に基板全体を加熱することによって行っても良い。
【0040】
なお、この実施の形態では、電子側共通層64Eがブロッキング層及び電子輸送層の2層構造である場合について説明しており、加熱温度は、ブロッキング層を構成する薄膜材料の融点以上に設定した。また、電子側共通層64Eがブロッキング層または電子輸送層またはその他の機能層のみの1層構造である場合については、加熱温度は、その単一の薄膜を構成する薄膜材料の融点以上に設定される。
【0041】
この実施の形態において、ブロッキング層として適用したBAlqの融点は約200℃であり、また、電子輸送層として適用したAlqは昇華性の材料であり、昇華温度は280℃から300℃である。この場合には、加熱温度は200℃に設定されている。
【0042】
また、この加熱温度は、発光層64A(R、G、B)の昇華点より低い温度に設定されることが望ましい。この実施の形態において、発光層64A(R、G、B)を形成するために適用された薄膜材料は昇華性の材料であり、その昇華温度は概ね280℃から380℃である。このように、発光層64A(R、G、B)の昇華点より低い加熱温度に設定することにより、発光層への熱的なダメージ(劣化)を抑制することが可能となる。
【0043】
なお、本実施の形態においては、電子輸送層を昇華性の材料で形成したが、例えばAlqなどの溶融性の材料で形成することも可能である。この場合は電子輸送層の融点以上の温度で加熱することで同様の作用・効果を得ることができる。また、本実施の形態における発光層は昇華性の材料を使用したが、溶融性の材料を使用することも可能であり、この場合には、加熱温度は電子側共通層64Eの少なくとも1層の融点以上かつ発光層の融点以下に設定することが望ましい。
【0044】
続いて、図5Eに示すように、光活性層64上に複数種類の色画素PX(R、G、B)に共通の第2電極66を形成する。すなわち、第2電極66は、光活性層64を配置した配線基板120の一主面側に陰極として機能する金属材料源をドライプロセス、例えば蒸着法によって形成可能である。
【0045】
このような工程により、有機EL素子40が形成される。
【0046】
上述したような製造工程において、異物が混入した場合について簡単に説明する。
【0047】
すなわち、図6Aに示すように、第1電極60及びホール側共通層64Hを形成した後に、図6Bに示すように、発光層64Aを形成する過程において異物が混入し、その異物がホール側共通層64Hを貫通して第1電極60まで到達したとする。この後に、図6Cに示すように、電子側共通層64Eを形成するが、電子側共通層64Eを構成する各薄膜材料を成膜したのみでは、異物によって第1電極60を露出するように形成された開口を塞ぐことができない場合がある。
【0048】
そこで、図6Dに示すように、電子側共通層64Eを加熱する。このような加熱工程において、電子側共通層64Eを形成済みの配線基板120を加熱することにより、加熱された電子側共通層64Eは、溶融して流動性を有するようになり、開口に入り込み、露出していた第1電極60がホール側共通層64Hによって覆われる。そして、加熱を停止して放熱することにより、溶融した電子側共通層64Eが再び固化する。その後、図6Eに示すように、電子側共通層64Eの上に第2電極66を形成する。
【0049】
これにより、異物混入によって形成された開口は塞がれ、第1電極60と第2電極66とのショートを防止することができた。同様に、蒸着マスクの接触によりホール側共通層64Hが傷ついてしまった場合であっても、加熱工程によって溶融した電子側共通層64Eによって損傷箇所が被覆されるため、第1電極60と第2電極66とのショートを防止することができた。
【0050】
次に、有機EL表示装置の滅点不良による製造歩留まりについて検討する。すなわち、上述した製造工程のように、電子側共通層64Eを構成する薄膜を成膜した後に加熱する工程を付加した場合と、加熱工程を付加しなかった場合とで、滅点不良に起因した製造歩留まりを比較した。図7に示すように、各ロットにつき製造された25枚の有機EL表示装置についてそれぞれ製造歩留まりを評価したところ、加熱工程を付加する場合の方が高い製造歩留まりが得られることが確認された。
【0051】
以上説明したように、複数の薄膜を積層してなる光活性層を形成する過程において、蒸着マスクを介して第1薄膜材料を蒸着する工程を含む場合、この工程の後に成膜される第2薄膜材料をその融点以上の温度で加熱することにより、蒸着マスクを用いたことに起因する薄膜の損傷箇所を第2薄膜材料によって被覆することが可能であり、光活性層を貫通する開口を介した第1電極と第2電極とのショートを防止することができる。このため、ショートに起因した滅点不良の発生を抑制することができ、表示装置の表示品位を改善することが可能となる。これにより、不良品の発生を抑制することができ、製造歩留まりを改善することが可能となる。
【0052】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置の1画素分の構造を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、有機EL素子を製造するための製造装置(蒸着装置)の構成を概略的に示す図である。
【図4】図4は、光活性層の製造過程で混入した異物による第1電極と第2電極とのショートの発生を説明するための図である。
【図5A】図5Aは、有機EL素子の製造工程を説明するための図であり、第1電極及び隔壁を形成する工程を示す図である。
【図5B】図5Bは、有機EL素子の製造工程を説明するための図であり、光活性層を構成するホール側共通層を形成する工程を示す図である。
【図5C】図5Cは、有機EL素子の製造工程を説明するための図であり、光活性層を構成する発光層を形成する工程を示す図である。
【図5D】図5Dは、有機EL素子の製造工程を説明するための図であり、光活性層を構成する電子側共通層を形成する工程及び加熱する工程を示す図である。
【図5E】図5Eは、有機EL素子の製造工程を説明するための図であり、第2電極を形成する工程を示す図である。
【図6A】図6Aは、有機EL素子の製造工程を説明するための図であり、第1電極及び光活性層を構成するホール側共通層を形成する工程を示す図である。
【図6B】図6Bは、有機EL素子の製造工程を説明するための図であり、光活性層を構成する発光層を形成する工程及び混入した異物を示す図である。
【図6C】図6Cは、有機EL素子の製造工程を説明するための図であり、光活性層を構成する電子側共通層を形成する工程を示す図である。
【図6D】図6Dは、有機EL素子の製造工程を説明するための図であり、光活性層を構成する電子側共通層を加熱する工程を示す図である。
【図6E】図6Eは、有機EL素子の製造工程を説明するための図であり、第2電極を形成する工程を示す図である。
【図7】図7は、滅点不良による製造歩留まりの比較結果を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1…有機EL表示装置、10…画素スイッチ、20…駆動トランジスタ、30…蓄積容量素子、40…有機EL素子、60…第1電極、64…光活性層、64H…ホール側共通層、64A…発光層、64E…電子側共通層、66…第2電極、70…隔壁、100…アレイ基板、120…配線基板、150…封止体、200…蒸着装置、PX(R、G、B)…色画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上において画素毎に第1電極を形成する工程と、
蒸着法により前記第1電極上に複数の薄膜を積層して光活性層を形成する工程と、
各画素の前記光活性層を覆うように第2電極を形成する工程と、を備え、
前記光活性層を形成する工程は、
蒸着マスクを介して画素毎に第1薄膜材料を蒸着し発光層を形成する工程と、
前記発光層を形成した後に第2薄膜材料を成膜する工程と、
成膜された前記第2薄膜材料をその融点以上の温度で加熱する工程と、を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記光活性層を構成し且つ複数の画素に共通の共通層は、前記第2薄膜材料により形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記光活性層を構成する電子輸送層は、前記第2薄膜材料により形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記光活性層を構成するブロッキング層は、前記第2薄膜材料により形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2薄膜材料を加熱する温度は、前記発光層の融点または昇華点より低い温度に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−130517(P2008−130517A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317568(P2006−317568)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】