説明

表示装置の駆動方法およびそれを利用した表示装置

【課題】 走査線の単位で配置された異なった色の発光素子に対して、異なった値の電圧を印加する。
【解決手段】 有機EL素子30は、それぞれ赤色、緑色、青色で発光する。走査線駆動回路14は、走査信号を生成する。R電源18、G電源20、B電源22は、電圧の値が異なった電源である。選択回路16は、タイミング信号210にもとづいて、R電源18、G電源20、B電源22、GND24のうちからいずれかひとつを選択する。選択回路16は、電圧印加線214を介して、選択した電源の電圧を少なくとも駆動対象の有機EL素子30に印加する。PWM回路26は、パルス信号212として入力した画素値にもとづいて、選択回路16で選択された電源の電圧をパルス幅変調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の駆動技術に関し、特にマトリクス状に配置された発光素子を駆動させる表示装置の駆動方法およびそれを利用した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子として有機EL(electroluminescence)素子やLED(Light Emitting Diode)を使用した表示装置は、一般的に複数の発光素子をマトリクス状に配置させる。このような表示装置において、一般的にマトリクスの列方向に発光素子を発光させるための信号を入力し、マトリクスの行方向に走査信号を入力する。また、マトリクスにおいて、赤色、緑色、青色に発光する発光素子がひとつの組み合わせとして配置されることによって、表示装置はカラーの画像を表示する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−333863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子が有機EL素子である場合、発光させるためには所定の電圧を印加する。その際、赤色の発光、緑色の発光、青色の発光の間の輝度を調節するためには、それらの輝度が同一であっても、赤色に発光すべき有機EL素子、緑色に発光すべき有機EL素子、青色に発光すべき有機EL素子に印加する電圧の値を異なった値にする。その際に、各色に対応した有機EL素子に電圧を印加するための電源を別々に備えれば、装置の制御が容易になる。一方、表示領域が横長の表示装置においては、左右の方向のスクロール表示をスムーズにすれば、表示装置での表示内容の変化をスムーズにできる。これを実現するためにマトリクスの列の方向に同色に発光される有機EL素子を配列する。その場合に、マトリクスの列の方向から、各色に対応した電源から電圧を印加する。
【0005】
本発明者はこうした状況下、以下の課題を認識するに至った。表示領域が縦長の表示装置においては、上下の方向のスクロールをスムーズにすることが望ましいが、そのためには、同一の色に発光される有機EL素子を行の方向に配列すべきである。その際に、有機EL素子に印加すべき電圧は色単位で異なるので、有機EL素子に電圧を印加するための印加電圧線も行の方向に配列されるべきである。しかしながら、行の方向には走査線が設けられているので、信号線の取り回しが困難になり、有機EL素子に電圧を印加するための電圧印加線を設けることが困難になる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、走査線の方向に同一の色に発光される発光素子が配列している場合であっても、発光素子に信号を印加する表示装置の駆動方法およびそれを利用した表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の表示装置の駆動方法は、表示装置を構成する画素を駆動する際、複数の電源電圧から、駆動しようとしている画素の色に対応して定められた電源電圧を選択し、その電源電圧を画素に印加することによって当該画素を駆動する。
【0008】
「画素」とは、一般的に画像を構成する最小単位であるが、色の構成要素がRGBの3原色であれば、画像を構成する最小単位に含まれたRGBのそれぞれ、例えばRGBディスプレイのそれぞれの発光素子を画素という場合もある。
【0009】
この態様によると、駆動しようとしている画素の色に応じた複数の電源電圧からひとつを選択し、選択した電源電圧を画素に印加するので、画素の色に応じた電源電圧を印加できる。
【0010】
電源電圧は、異なる画素の色を実現する素子の特性に応じて設定されていてもよい。この態様によると、素子の特性に適した電源電圧を設定できる。
【0011】
本発明の別の態様は、表示装置である。この装置は、走査線方向と電圧印加線方向が直交するマトリクス型の表示装置であって、同一の走査線上に同じ色の画素が配置され、かつ隣接した走査線上に異なる色の画素が配置されるように、走査線上にそれぞれ配置された複数の画素と、画素の色にそれぞれ対応した複数の電源と、複数の電源からいずれかひとつの電源を選択し、電圧印加線を介して、選択した電源の電圧を少なくとも駆動対象の画素に印加する選択回路とを備える。選択回路は、画素の駆動が所定の走査線に対して行われているとき、所定の走査線上に配置された画素の色に対応する電源を選択し、選択した電源の電圧を少なくとも所定の走査線上に配置された画素に対して印加する。
【0012】
この態様によると、駆動しようとしている画素の色に応じた複数の電源からひとつを選択し、選択した電源の電圧を画素に印加するので、走査線の方向に同一の色に発光される画素が配列されている場合であっても、回路が複雑になることを抑えつつ、画素の色に応じた電源電圧を画素に印加できる。
【0013】
同一の走査線上に配置されたそれぞれの画素に対して所望の画素値を書き込む複数のパルス幅変調回路をさらに備えてもよい。パルス幅変調回路は、選択回路で選択した電源の電圧の印加期間を制御してもよい。この態様によると、所望の画素値に応じて電源の電圧の印加期間を制御してから画素に印加するので、異なった色の画素での輝度を調節しつつ、画素を所望の輝度で発光できる。
【0014】
本発明のさらに別の態様もまた、表示装置である。この装置は、走査線方向と電圧印加線方向が直交するマトリクス型の表示装置であって、同一の走査線上に同じ色の画素が配置され、かつ隣接した走査線上に異なる色の画素が配置されるように、走査線上にそれぞれ配置された複数の画素と、各走査線上にそれぞれ配置された画素を駆動するための走査パルスの幅をその走査線上に配置された画素の色に応じて設定する設定回路と、ひとつの走査線上に配置された各画素に対して所望の画素値を書き込むために、電圧印加線で各画素に電源電圧を印加すべき期間を制御し、かつ走査線上に配置された画素の数だけ設けられたパルス幅変調回路とを備える。パルス幅変調回路は、電圧印加線で各画素に電源電圧を印加すべき期間を画素の色単位で当該色に対応した走査パルスの幅に比例せしめた。
【0015】
この態様によると、画素を表示させる際の輝度に応じて画素に電圧を印加する期間を調節しつつ、画素に電圧を印加する期間の最大値を画素の色に応じて調節するので、電源がひとつであっても、画素の色に応じて輝度を調節できる。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、走査線の方向に同一の色に発光される発光素子が配列している場合であっても、発光素子に信号を印加できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例1は、発光素子としての有機EL素子をマトリクス状に配置した表示装置に関する。また、本実施例に係る表示装置は、パッシブマトリクス駆動であるとし、マトリクスの行方向に走査線を配列し、マトリクスの列方向に電圧印加線を配列して、走査線と電圧印加線での電圧に応じて、有機EL素子がそれぞれ発光する。さらに、電圧印加線を介して有機EL素子に印加されるべき電圧は、電源から供給されるが、電源は有機EL素子で発光される色の数に応じて複数の個数だけ備えられる。すなわち、有機EL素子は赤色、緑色、青色に発光するので、それらに応じて赤色用の電源(以下、「R電源」という)、緑色用の電源(以下、「G電源」という)、青色用の電源(以下、「B電源」という)が備えられる。これらの電源は、異なった値の電圧を供給する。
【0019】
ここで、ひとつの走査線上に同一の色で発光される有機EL素子が配置されている。ひとつの走査線上に配置された有機EL素子が駆動の対象となるので、本実施例に係る表示装置は、該当する走査線上の有機EL素子の色に対応した電源を選択して、選択した電源の電圧を有機EL素子に印加する。駆動される走査線は逐次変更されるので、選択される電源もそれに同期して変更される。さらに、有機EL素子に印加される電圧は、該当する有機EL素子で表示すべき画素値にもとづいてPWM(Pulse Width Modulation)されてから、有機EL素子に印加される。本実施例において、有機EL素子に電圧を印加するための電圧印加線は、走査線と直交するように配置されるので、表示装置に電圧印加線を設けることができる。
【0020】
図1は、実施例1に係る表示装置100の構成を示す。表示装置100は、制御回路10、電圧印加線駆動回路12、走査線駆動回路14、選択回路16、R電源18、G電源20、B電源22、GND24、PWM回路26と総称される第1PWM回路26a、第2PWM回路26b、第3PWM回路26c、第NPWM回路26n、表示パネル28を備える。また、表示パネル28は、有機EL素子30と総称される第11有機EL素子30aa、第12有機EL素子30ab、第13有機EL素子30ac、第1N有機EL素子30an、第21有機EL素子30ba、第22有機EL素子30bb、第23有機EL素子30bc、第2N有機EL素子30bn、第31有機EL素子30ca、第32有機EL素子30cb、第33有機EL素子30cc、第3N有機EL素子30cn、第M1有機EL素子30ma、第M2有機EL素子30mb、第M3有機EL素子30mc、第MN有機EL素子30mnを備える。
【0021】
また、信号および信号線として、表示データ200、同期データ202、表示データ204、電圧印加線用同期データ206、走査線用同期データ208、タイミング信号210、パルス信号212と総称される第1パルス信号212a、第2パルス信号212b、第3パルス信号212c、第Nパルス信号212n、電圧印加線214と総称される第1電圧印加線214a、第2電圧印加線214b、第3電圧印加線214c、第N電圧印加線214n、走査線216と総称される第1走査線216a、第2走査線216b、第3走査線216c、第M走査線216mを含む。
【0022】
制御回路10は、外部から表示データ200、同期データ202を入力する。表示データ200は、後述の表示パネル28で表示されるべき画像のデータである。ここでは、表示パネル28はM行×N列のマトリクス表示になっているので、M×N個の有機EL素子30を備えている。有機EL素子30のそれぞれは、赤色、緑色、青色に発光するので、表示データ200は、それぞれの階調に対応したデータである。同期データ202は、表示データ200に対応すべき行と列の情報を含む。制御回路10は、表示データ200と同等の情報を表示データ204として出力し、表示データ204に対応したタイミングの情報を電圧印加線用同期データ206として出力する。また、制御回路10は、行の切り替え、すなわち走査の情報を走査線用同期データ208として出力する。
【0023】
有機EL素子30は、それぞれ赤色、緑色、青色で発光する。図中では、赤色に発光する有機EL素子30を「R」で示し、緑色に発光する有機EL素子30を「G」で示し、青色に発光する有機EL素子30を「B」で示す。すなわち、複数の有機EL素子30は、同一の走査線216上に同じ色の有機EL素子30が配置され、かつ隣接した走査線216上に異なる色の有機EL素子30が配置される。また、有機EL素子30は、M本の走査線216とN本の電圧印加線214が直交するマトリクスの交点に配置される。さらに、有機EL素子30はパッシブマトリクス駆動するので、電圧印加線214と走査線216の電圧の値に応じて発光する。
【0024】
走査線駆動回路14は、制御回路10から入力した走査線用同期データ208にもとづいて走査信号を生成する。ここでは、M本の走査線216のうちのひとつだけから、走査信号を出力するように、第1走査線216a、第2走査線216bの順に複数の走査線216のうちのひとつを選択し、走査信号を出力する。
【0025】
R電源18、G電源20、B電源22は、電圧の値が異なった電源である。また、24はグランドである。ここで、R電源18は、赤色に表示される有機EL素子30、例えば、第11有機EL素子30aa、第12有機EL素子30abに印加すべき電圧を出力する。また、G電源20は、緑色に表示される有機EL素子30、例えば、第21有機EL素子30ba、第22有機EL素子30bbに印加すべき電圧を出力する。さらに、B電源22は、青色に表示される有機EL素子30、例えば、第31有機EL素子30ca、第32有機EL素子30cbに印加すべき電圧を出力する。
【0026】
選択回路16は、タイミング信号210にもとづいて、R電源18、G電源20、B電源22、GND24のうちからいずれかひとつを選択する。すなわち、走査線駆動回路14で生成される走査信号に同期して、走査信号によって駆動される有機EL素子30の色に応じた電源を選択する。これは、有機EL素子30の駆動が所定の電圧印加線214に対して行われているとき、所定の電圧印加線214上に配置された有機EL素子30の色に対応する電源を選択することに相当する。例えば、走査線駆動回路14が第1走査線216aから走査信号を出力している場合に、選択回路16はR電源18を選択し、走査線駆動回路14が第2走査線216bから走査信号を出力している場合に、選択回路16はG電源20を選択する。図2は、選択回路16の動作概要を示す。図の左側が行番号、すなわち走査線216の番号を示し、図の左側が行の番号に応じて選択されるべき電源を示す。図1に戻る。選択回路16は、電圧印加線214を介して、選択した電源の電圧を少なくとも駆動対象の有機EL素子30に印加する。
【0027】
電圧印加線駆動回路12は、表示データ204、電圧印加線用同期データ206を入力する。電圧印加線用同期データ206は、走査線駆動回路14で生成される走査信号のタイミングと同期しており、さらに表示データ204には、表示すべき色についての情報も含まれているので、電圧印加線駆動回路12は、走査信号のタイミングに従って選択すべき電源の情報をタイミング信号210として生成し、選択回路16に出力する。また、走査信号のタイミングに従って表示すべき画素値の情報をパルス信号212として生成し、PWM回路26に出力する。
【0028】
PWM回路26は、パルス信号212として入力した画素値にもとづいて、選択回路16で選択された電源の電圧をパルス幅変調する。これは、同一の走査線216上に配置されたそれぞれの有機EL素子30に対して所望の画素値を書き込むことに相当する。その結果、PWM回路26によって、選択回路16で選択した電源の電圧を有機EL素子30に印加すべき期間が制御される。例えば、所定の色の輝度を大きくするために、有機EL素子30に印加すべき期間を長くするような信号を生成する。
【0029】
図3(a)−(d)は、PWM回路26と走査線駆動回路14から出力される信号を示す。図3(a)は、選択回路16で選択された電源の電圧を示す。ここでは、有機EL素子30が赤色、緑色、青色の順に発光するので、選択回路16はR電源18、G電源20、B電源22を順に選択する。その結果、図3(a)に示されたピークのうち、「P1」はR電源18から出力された電圧に相当し、「P2」はG電源20から出力された電圧に相当し、「P3」はB電源22から出力された電圧に相当する。図示のごとく、R電源18、B電源22、G電源20の順に電圧が大きくなっている。なお、図中において「P1」、「P2」、「P3」以外のLowレベルで示された部分はグランド電圧に相当し、その際に選択回路16はGND24を選択している。
【0030】
図3(b)は、電圧印加線駆動回路12から出力される第1パルス信号212aを示す。第1パルス信号212aは、選択される走査線216に対応しており、「P1’」、「P2’」、「P3’」はそれぞれ第11有機EL素子30aa、第21有機EL素子30ba、第31有機EL素子30caに対応した輝度の情報である。ここでは、第31有機EL素子30ca、第11有機EL素子30aa、第21有機EL素子30baの順に輝度が大きいとするために、それらの順でパルスの幅も大きくなる。
【0031】
図3(c)は、第1PWM回路26aでパルス振幅変調され、第1電圧印加線214aを介して出力される信号である。図の「P1’’」は「P1」と「P1’」に対応し、「P2’’」は「P2」と「P2’」に対応し、「P3’’」は「P3」と「P3’」に対応する。その結果、「P1’’」の信号は、図3(a)の「P1」に示した電圧を有しつつ、図3(b)の「P1’」に示したパルスの幅を有する。「P2’’」と「P3’’」に示された信号も同様である。図3(d)は、第1走査線216aを介して走査線駆動回路14から出力される走査信号であり、図中のLowレベルの場合に第11有機EL素子30aa、第12有機EL素子30ab等が選択されたものとする。以上の信号によって、第11有機EL素子30aaが「P1’’」の信号に対応した輝度で発光する。
【0032】
図4は、表示装置100における表示の手順を示すフローチャートである。選択回路16は、タイミング信号210にもとづいて、走査線216の番号Lをカウントする(S10)。なお、新たな画像を表示する際には、Lを1に設定する。選択回路16は、Lを3で除算する(S12)。余りが1であれば(S14のY)、R電源18を選択する(S16)。余りが1でなく(S14のN)、余りが2であれば(S18のY)、G電源20を選択する(S20)。余りが2でなければ(S18のN)、B電源22を選択する(S22)。選択回路16は、選択した電源の電圧をPWM回路26に出力する(S24)。PWM回路26でパルス振幅変調された信号は、電圧印加線214を介して、有機EL素子30に印加される(S26)。
【0033】
本発明の実施例によれば、駆動しようとしている有機EL素子の発光色に応じた複数の電源電圧からひとつを選択し、選択した電源電圧を有機EL素子に印加するので、有機EL素子の色に応じた電源電圧を印加できる。また、駆動しようとしている有機EL素子の発光色に応じた複数の電源からひとつを選択し、選択した電源の電圧を有機EL素子に印加するので、走査線の方向に同一の色に発光される有機EL素子が配列している場合であっても、表示装置の構成が複雑になることを抑えつつ、有機EL素子の色に応じた電源の電圧を有機EL素子に印加できる。また、所望の画素値に応じて電源の電圧の印加期間を制御してから有機EL素子に印加するので、異なった色の有機EL素子での輝度を調節しつつ、有機EL素子を所望の輝度で発光できる。また、走査線の方向に同一の色に発光される有機EL素子を配列できるので、表示領域が縦長の表示装置で表示した画像の動きをスムーズにできる。また、異なった電圧の電源を切り替えるだけなので、制御が容易になる。
【0034】
(実施例2)
本発明の実施例2は、実施例1と同様に発光素子としての有機EL素子をマトリクス状に配置した表示装置に関する。また、マトリクスでの有機EL素子、走査線、電圧印加線の配置は、実施例1と同様である。しかしながら、実施例2に係る表示装置は、実施例1と異なって、有機EL素子で発光すべき色が複数であるにもかかわらず、ひとつの電源を備える。そのかわりに、有機EL素子で発光すべき色に応じて、当該有機EL素子に電圧を印加すべき期間を変更する。すなわち、走査線での信号の期間を当該走査線に配列された有機EL素子の色に応じて変更する。また、電圧印加線を介して、有機EL素子に印加する電圧はPWMされているが、PWMされた信号の期間も発光すべき有機EL素子の色に応じて変更する。すなわち、赤色、緑色、青色を高い輝度で発光させる場合に、電圧印加線から電圧を印加する期間を長くすべきであるが、同一輝度を実現するために必要な電圧が「赤色:緑色:青色」に対して「5:1:2」であれば、電圧を印加する期間もこれに応じるように調節する。
【0035】
図5は、実施例2に係る表示装置100の構成を示す。表示装置100は、図1の表示装置100と同様に制御回路10、電圧印加線駆動回路12、走査線駆動回路14、PWM回路26と総称される第1PWM回路26a、第2PWM回路26b、第3PWM回路26c、第NPWM回路26n、表示パネル28を備える。また、表示パネル28に含まれる有機EL素子30の構成も図1と同じである。さらに、表示装置100は、電源40、設定回路42を含む。また、信号および信号線として、図1の表示装置100と同様に表示データ200、同期データ202、表示データ204、電圧印加線用同期データ206、走査線用同期データ208、パルス信号212、電圧印加線214、走査線216、設定回路用同期データ220、PWM用設定信号222、走査線駆動回路用設定信号224を含む。
【0036】
制御回路10は、図1の制御回路10と同様に動作するが、電圧印加線用同期データ206、走査線用同期データ208に対応した設定回路用同期データ220を出力する。有機EL素子30の配置は、図1と同様である。
【0037】
設定回路42は、設定回路用同期データ220にもとづいて、各走査線216上にそれぞれ配置された有機EL素子30を駆動するための走査信号の幅をその走査線216上に配置された有機EL素子30の色に応じて設定する。実施例2では、有機EL素子30に印加すべき電圧の値は同一なので、電圧を印加する期間を有機EL素子30が発光する色に応じて変更させる。例えば、同一の輝度で有機EL素子30を発光させるために、赤色の有機EL素子30に電圧を印加する期間を長くし、その反面、緑色の有機EL素子30に電圧を印加する期間を短くする。図5の表示装置100の構成にあわせて説明すれば、第1走査線216a、第2走査線216b、第3走査線216cの順に走査信号が出力される場合、それぞれに対応した有機EL素子30が発光する色は、赤色、緑色、青色の順番なので、設定回路42は、それらの色に応じて走査信号の幅を変えるための信号をPWM用設定信号222、走査線駆動回路用設定信号224として出力する。
【0038】
走査線駆動回路14は、走査線駆動回路用設定信号224にもとづいて、走査信号を生成する。当該走査信号の幅は、有機EL素子30が発光すべき色に応じて変えられる。図6(a)−(d)は、走査線駆動回路14から出力される信号を示す。図6(a)は、設定回路42で生成された走査線駆動回路用設定信号224を示す。図6(a)の「P1」で示された山の部分とそれに続く谷の部分は、有機EL素子30を赤色で発光させるべき期間に相当し、「P2」で示された山の部分とそれに続く谷の部分は、有機EL素子30を緑色で発光させるべき期間に相当する。また、「P3」で示された山の部分とそれに続く谷の部分は、有機EL素子30を青色で発光させるべき期間に相当する。図示のごとく、赤色、青色、緑色の順で信号の期間が長くなる。なお、「P4」は、「P1」と同様であるので、「P1」から「P3」が周期的に繰り返される。
【0039】
図6(b)は、第1走査線216aに出力される走査信号であり、図6(a)の「P1」に関連した信号の期間にLowレベルとなる。このような信号の生成のために、走査線駆動回路14はカウンタ等を備えており、「P1」に関連した信号の開始から終了までの期間をカウントして、当該信号を生成する。図6(c)と図6(d)は、それぞれ第2走査線216bと第3走査線216cに出力される走査信号であり、図6(b)と同様に、それぞれ図1(a)の「P2」と「P3」に関連した信号の期間にLowレベルとなる。すなわち、走査線駆動回路14は、有機EL素子30が発光する色に応じて信号の期間を変更した走査信号を出力する。
【0040】
図5に戻る。電源40は、有機EL素子30に電圧を印加するための電源であるが、実施例1と異なって1種類の電圧の値である。電圧印加線駆動回路12は、表示データ204、電圧印加線用同期データ206を入力して、パルス信号212を出力する。
【0041】
PWM回路26は、パルス信号212として入力した画素値にもとづいて、電源40の電圧をパルス幅変調する。これは、ひとつの走査線216上に配置された各有機EL素子30に対して所望の画素値を書き込むために、電圧印加線214で各有機EL素子30に電源電圧を印加すべき期間を制御することに相当する。なお、PWM回路26は、電圧印加線214で各有機EL素子30に電源電圧を印加すべき期間を有機EL素子30の色単位で当該色に対応した走査信号の幅に比例させる。
【0042】
これを具体的に説明すれば次の通りになる。前述のごとく、有機EL素子30で発光すべき色に応じて、走査信号の期間は変更されている。一方、所定の色でかつ最高の輝度で有機EL素子30を発光させる場合には、有機EL素子30に電圧を印可すべき期間を長くする。ここでは、両者を調節するために、最大の輝度で発光させる場合に電圧を印加する期間を走査信号の期間に応じて変更する。例えば、赤色、緑色、青色に対応した走査信号の期間が、「50μs:10μs:20μs」であるとし、最大の輝度で発光させるために電圧を印加する期間は、赤色、緑色、青色に対して「50μs:10μs:20μs」とする。一方、中間の輝度で発光させるために電圧を印加する期間は、赤色、緑色、青色に対して「25μs:5μs:10μs」とする。このように、電圧を印加する期間は、各色に対応した走査信号の期間によって正規化される。
【0043】
図7(a)−(c)は、PWM回路26から出力される信号を示す。図7(a)は、設定回路42で生成されたPWM用設定信号222を示す。図7(a)の「P1」で示された山の部分とそれに続く谷の部分は、有機EL素子30を赤色で発光させるべき期間に相当し、「P2」で示された山の部分とそれに続く谷の部分は、有機EL素子30を緑色で発光させるべき期間に相当する。また、「P3」で示された山の部分とそれに続く谷の部分は、有機EL素子30を青色で発光させるべき期間に相当する。図示のごとく、赤色、青色、緑色の順で信号の期間が長くなる。なお、「P4」は、「P1」と同様であるので、「P1」から「P3」が周期的に繰り返される。このように、PWM用設定信号222の信号の内容は、走査線駆動回路用設定信号224の信号の内容と同様である。
【0044】
図7(b)は、第1パルス信号212aを示す。パルス信号212は、Hiレベルの期間で輝度を示す。すなわち、Hiレベルの期間が長ければ、輝度も高くなる。図7(b)に示した「P1’」、「P2’」、「P3’」のHiレベルの期間は同一の長さであり、それぞれが最大輝度に対応した期間であるとする。また、「P1’」は「P1」に対応し、「P2’」は「P2」に対応し、「P3’」は「P3」に対応する。ここで、対応したこれらのタイミングがずれている理由に関しては、後述する。
【0045】
図7(c)は、第1PWM回路26aでパルス幅変調した信号を示す。図7(b)のように最大輝度に対応した期間が、図7(a)のような各色に対応した走査信号の期間にもとづいて正規化される。すなわち、図7(b)では、同一であった「P1’」、「P2’」、「P3’」のHiレベルの期間が、図7(a)の走査信号の期間に応じて調節されている。ここで、「P1’’」、「P2’’」、「P3’’」は、それぞれ「P1’」、「P2’」、「P3’」に対応する。このように、PWM回路26が走査信号の幅に応じて、パルス幅変調した信号の期間を調節するためには、予め走査信号の幅を認識している必要があるので、図7(b)の「P1’」、「P2’」、「P3’」よりも、図7(a)の「P1」、「P2」、「P3」の方が先になるようなタイミングで入力されている。
【0046】
図8は、表示装置100における表示の手順を示すフローチャートである。PWM回路26は、PWM用設定信号222によって走査信号の幅に関する情報を入力する(S40)。PWM回路26は、輝度に関する情報にもとづいて、電源40の電圧をパルス幅変調する(S42)と共に、走査信号の幅に応じてパルス幅変調した信号の幅を調節する(S44)。さらに、PWM回路26でパルス幅変調された信号は、電圧印加線214を介して、有機EL素子30に印加される。
【0047】
本発明の実施例によれば、有機EL素子を表示させる際の輝度に応じて有機EL素子に電圧を印加する期間を調節しつつ、有機EL素子に電圧を印加する期間の最大値を有機EL素子の色に応じて調節するので、電源がひとつであっても、有機EL素子の色に応じて輝度を調節できる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0049】
本発明の実施例1と2において、表示装置100は、発光素子として有機EL素子30を備える。しかしながらこれに限らず例えば、各色に対応したLED、VFD、無機EL素子であってもよい。その際に、電源電圧や電圧の印加期間は、異なる色を実現する発光素子の特性に応じて設定されていてもよい。本変形例によれば、さまざまな発光素子を適用できる。また、素子の特性に適した電源電圧や印加期間を設定できる。つまり、発光素子の輝度が調節されればよい。
【0050】
本発明の実施例1と2において、表示装置100は、マトリクスの行の方向に走査線216を配置し、列の方向に電圧印加線214を配置した。しかしながらこれに限らず例えば、マトリクスの列の方向に走査線216を配置し、行の方向に電圧印加線214を配置してもよい。本変形例によれば、マトリクス上のさまざまな配置に本発明を適用できる。つまり、ひとつの走査線の方向に、同一の色で発光される発光素子が配置されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1に係る表示装置の構成を示す図である。
【図2】図1の選択回路の動作概要を示す図である。
【図3】図3(a)−(d)は、図1のPWM回路と走査線駆動回路から出力される信号を示す図である。
【図4】図1の表示装置における表示の手順を示すフローチャートである。
【図5】実施例2に係る表示装置の構成を示す図である。
【図6】図6(a)−(d)は、図5の走査線駆動回路から出力される信号を示す図である。
【図7】図7(a)−(c)は、図5のPWM回路から出力される信号を示す図である。
【図8】図5の表示装置における表示の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
10 制御回路、 12 電圧印加線駆動回路、 14 走査線駆動回路、 16 選択回路、 18 R電源、 20 G電源、 22 B電源、 24 GND、 26 PWM回路、 28 表示パネル、 30 有機EL素子、 40 電源、 42 設定回路、 100 表示装置、 200 表示データ、 202 同期データ、 204 表示データ、 206 電圧印加線用同期データ、 208 走査線用同期データ、 210 タイミング信号、 212 パルス信号、 214 電圧印加線、 216 走査線、 220 設定回路用同期データ、 222 PWM用設定信号、 224 走査線駆動回路用設定信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置を構成する画素を駆動する際、複数の電源電圧から、駆動しようとしている画素の色に対応して定められた電源電圧を選択し、その電源電圧を前記画素に印加することによって当該画素を駆動することを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項2】
前記電源電圧は、異なる画素の色を実現する素子の特性に応じて設定されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項3】
走査線方向と電圧印加線方向が直交するマトリクス型の表示装置であって、
同一の走査線上に同じ色の画素が配置され、かつ隣接した走査線上に異なる色の画素が配置されるように、走査線上にそれぞれ配置された複数の画素と、
画素の色にそれぞれ対応した複数の電源と、
複数の電源からいずれかひとつの電源を選択し、電圧印加線を介して、選択した電源の電圧を少なくとも駆動対象の画素に印加する選択回路とを備え、
前記選択回路は、画素の駆動が所定の走査線に対して行われているとき、所定の走査線上に配置された画素の色に対応する電源を選択し、選択した電源の電圧を少なくとも所定の走査線上に配置された画素に対して印加することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
同一の走査線上に配置されたそれぞれの画素に対して所望の画素値を書き込む複数のパルス幅変調回路をさらに備え、
前記パルス幅変調回路は、前記選択回路で選択した電源の電圧の印加期間を制御することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
走査線方向と電圧印加線方向が直交するマトリクス型の表示装置であって、
同一の走査線上に同じ色の画素が配置され、かつ隣接した走査線上に異なる色の画素が配置されるように、走査線上にそれぞれ配置された複数の画素と、
各走査線上にそれぞれ配置された画素を駆動するための走査パルスの幅をその走査線上に配置された画素の色に応じて設定する設定回路と、
ひとつの走査線上に配置された各画素に対して所望の画素値を書き込むために、電圧印加線で各画素に電源電圧を印加すべき期間を制御し、かつ走査線上に配置された画素の数だけ設けられたパルス幅変調回路とを備え、
前記パルス幅変調回路は、電圧印加線で各画素に電源電圧を印加すべき期間を画素の色単位で当該色に対応した走査パルスの幅に比例せしめたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−23585(P2006−23585A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202192(P2004−202192)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】