説明

表示装置の駆動方法

【課題】発光素子等を用いた表示装置において、表示品質を損なうことなく、消費電力を低減する。
【解決手段】トランジスタの閾値電圧を容量素子に保持する第1の動作と、容量素子による容量結合を用いることによって、映像信号に対応する信号電位に閾値電圧を加算した電位を当該トランジスタのゲートに入力し、当該トランジスタのドレイン電流を発光素子に流す第2の動作とを行い、第1の動作は複数フレームに1回行う。ここで、容量素子と電源電位が入力される配線との電気的接続を選択するスイッチを有し、当該スイッチはチャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トランジスタを用いた半導体装置やその駆動方法に関する。特に、各画素にトランジスタと負荷素子とを設け、負荷素子に流れる電流を制御することによって表示を行う表示装置やその駆動方法に関する。負荷素子は、流れる電流値によって輝度が制御される電気光学素子とすることができる。例えば、当該負荷素子は、エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子ともいう)等の発光素子とすることができる。また、当該半導体装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を用いた表示装置は視認性が高く、薄型化に最適であると共に、視野角にも制限が無いため注目されている。発光素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置は、少なくとも発光素子と、画素へのビデオ信号の入力を制御するトランジスタ(スイッチング用トランジスタ)と、該発光素子に供給する電流値を制御するトランジスタ(駆動用トランジスタ)とが、各画素に設けられる構成を採用することができる。
【0003】
ここで、駆動用トランジスタのドレイン電流(トランジスタがオン状態のときに、ソースとドレインの間を流れる電流)が発光素子に供給される。画素間において駆動用トランジスタの閾値電圧にばらつきが生じると、駆動用トランジスタのドレイン電流もばらつき、発光素子の輝度にもそのばらつきが反映されてしまう。また、経時劣化等によって駆動用トランジスタの閾値電圧が変動すると、駆動用トランジスタのドレイン電流も変動し、それに伴い発光素子の輝度も変化してしまう。従って、駆動用トランジスタの閾値電圧のばらつきや変動を見越して駆動用トランジスタのゲートとソース間に印加する電圧を補正することができる画素構成の提案は、表示装置の画質向上を図る上で、重要な課題である。例えば、特許文献1に記載されているような画素構成が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の表示装置では、駆動用トランジスタ(特許文献1中、ドライブトランジスタ)の閾値電圧を容量素子に保持した後、映像信号(特許文献1中、Vsig)に当該閾値電圧を加算して、駆動用トランジスタのゲートとソース間に印加する。こうして、閾値電圧がばらつくまたは変動した場合においても、駆動用トランジスタのドレイン電流のばらつきや変動を低減し、当該ドレイン電流が供給される発光素子の輝度のばらつきや変動を抑制して、表示品質を向上させる構成が提案されている(特許文献1中、図4及び図5、並びにその説明参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−345722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の表示装置では、1フィールド(フレームともいう)毎に駆動用トランジスタの閾値電圧を容量素子に保持させる動作を行う。ある画素において閾値電圧を容量素子に保持させる動作を行っている間は、当該画素において表示を行うことができない。また、閾値電圧を容量素子に保持させる動作では、スイッチとしての機能を有する複数のトランジスタをスイッチングさせる必要がある。1フレーム毎に当該動作を行うので、これらスイッチを駆動する駆動回路も動作させる必要があり、消費電力が大きい。
【0007】
そこで、発光素子等を用いた表示装置において、表示品質を損なうことなく、消費電力を低減することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表示装置の駆動方法の一態様は、トランジスタの閾値電圧を容量素子に保持する第1の動作(以下、閾値電圧取得動作ともいう)と、容量素子による容量結合を用いることによって、映像信号に対応する信号電位に閾値電圧を加算した電位を当該トランジスタのゲートに入力し、当該トランジスタのドレイン電流を負荷素子に流す第2の動作とを行い、第1の動作は複数フレームに1回行う。例えば、第1の動作は10フレーム以上に1回行う。例えば、第1の動作は3600フレーム以上に1回行う。第1の動作は1分以上に1回行う。
【0009】
本発明の表示装置の駆動方法の一態様は、トランジスタの閾値電圧を容量素子に保持する第1の動作と、映像信号に対応する信号電位を容量素子の一対の電極のうちに一方に入力し、容量素子の一対の電極のうちの他方の電位を当該トランジスタのゲートに入力し、当該トランジスタのドレイン電流を負荷素子に流す第2の動作とを行い、第1の動作は複数フレームに1回行う。例えば、第1の動作は10フレーム以上に1回行う。例えば、第1の動作は3600フレーム以上に1回行う。第1の動作は1分以上に1回行う。
【0010】
例えば、第1の動作を行う頻度を第2の動作を行う頻度よりも低くする。
【0011】
ここで、容量素子と電源電位が入力される配線との電気的接続を選択するスイッチを有し、当該スイッチはオフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成してもよい。当該スイッチを複数有し、複数のスイッチのいずれかまたは全てはオフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成してもよい。また、容量素子と第1の電源電位が入力される第1の配線との電気的接続を選択する第1のスイッチと、容量素子と第1の電源電位とは異なる第2の電源電位が入力される第2の配線との電気的接続を選択する第2のスイッチと、を有し、第1のスイッチ及び第2のスイッチはオフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成してもよい。当該第1のスイッチを複数有し、複数の第1のスイッチのいずれかまたは全てはオフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成してもよい。当該第2のスイッチを複数有し、複数の第2のスイッチのいずれかまたは全てはオフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成してもよい。
【0012】
負荷素子は、流れる電流値によって輝度が制御される電気光学素子を用いることができる。例えば、当該負荷素子として、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)等の発光素子を用いることができる。
【0013】
ここで、トランジスタのオフ電流とは、nチャネル型トランジスタにおいては、ドレインをソースよりも高い電位とした状態において、ソースの電位を基準としたときのゲートの電位が0V以下であるときに、ソースとドレインの間に流れる電流のことを意味する。或いは、pチャネル型トランジスタにおいては、ドレインをソースよりも低い電位とした状態において、ソースの電位を基準としたときのゲートの電位が0V以上であるときに、ソースとドレインの間に流れる電流のことを意味する。
【0014】
ここで、オフ電流が極めて小さいトランジスタとしては、シリコンよりも広いバンドギャップを有する半導体でなる層や基板中にチャネルが形成されるトランジスタを用いることができる。シリコンよりも広いバンドギャップを有する半導体として化合物半導体があり、例えば、酸化物半導体、窒化物半導体などがある。例えば、オフ電流が極めて小さいトランジスタとして、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
複数フレームに1回の割合で閾値電圧取得動作を行うことによって、表示装置の消費電力を低減することができる。
【0016】
特に、容量素子と電源電位が入力される配線との電気的接続を選択するスイッチとして、オフ電流が極めて小さいトランジスタを用いることによって、閾値電圧取得動作を行った後に、容量素子に保持された電荷が当該スイッチを介してリークするのを防止することができる。こうして、長期間に渡って容量素子に取得した閾値電圧を保持させ続けることができる。そのため、閾値電圧取得動作を行う頻度をより低減することができる。その結果、表示品質を損なうことなく、消費電力を低減した表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】画素回路の構成を示す図、及び駆動方法を示すタイミングチャート。
【図2】画素回路の構成を示す図、及び駆動方法を示すタイミングチャート。
【図3】画素回路の構成を示す図、及び駆動方法を示すタイミングチャート。
【図4】画素回路の構成を示す図、及び駆動方法を示すタイミングチャート。
【図5】表示装置の構成を示す断面図。
【図6】酸化物半導体層の結晶構造を説明する図。
【図7】酸化物半導体層の結晶構造を説明する図。
【図8】酸化物半導体層の結晶構造を説明する図。
【図9】酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタの特性を示す図。
【図10】酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタの特性を示す図。
【図11】酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタの特性を示す図。
【図12】XRDスペクトルを示す図。
【図13】酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタの特性を示す図。
【図14】酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタの特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0019】
なお、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れかわることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れかえて用いることができるものとする。
【0020】
「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限はない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0021】
回路図上は独立している構成要素どうしが電気的に接続しているように図示されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極としても機能する場合など、一の導電層が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。本明細書において電気的に接続とは、このような、一の導電層が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0022】
「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0023】
図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0024】
「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものである。
【0025】
(実施の形態1)
本発明の表示装置の駆動方法の一態様について説明する。
【0026】
(表示装置の構成)
まず、表示装置の構成について説明する。図1(A)に、表示装置の一態様を示す。表示装置は画素100を複数有する。画素100は、トランジスタ11、負荷素子200、容量素子12、スイッチ201、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ204、及びスイッチ205を有する。トランジスタ11が駆動用トランジスタに相当する。
【0027】
トランジスタ11のソース及びドレインの一方は、スイッチ203を介して端子V1と電気的に接続される。トランジスタ11のソース及びドレインの一方は負荷素子200の一対の電極のうちの一方と電気的に接続される。トランジスタ11のソース及びドレインの一方はスイッチ205を介して容量素子12の一対の電極のうちの一方と電気的に接続される。容量素子12の一対の電極のうちの一方はスイッチ201を介して端子Dと電気的に接続される。容量素子12の一対の電極のうちの他方はトランジスタ11のゲートと電気的に接続される。負荷素子200の一対の電極のうちの他方は端子V0と電気的に接続される。トランジスタ11のソース及びドレインの他方は、スイッチ204を介して端子V2と電気的に接続される。トランジスタ11のソース及びドレインの他方は、スイッチ202を介してゲートと電気的に接続される。
【0028】
端子V0、端子V1、端子V2には、電源電位が与えられる。つまり、高電源電位または低電源電位が与えられる。つまり、端子V0、端子V1、端子V2は、電源電位が与えられる配線と電気的に接続されているということもできる。例えば、トランジスタ11をnチャネル型トランジスタとして、端子V0及び端子V1には低電源電位が与えられ、端子V2には高電源電位が与えられる構成とすることができる。また例えば、トランジスタ11をpチャネル型トランジスタとして、端子V0及び端子V1には高電源電位が与えられ、端子V2には低電源電位が与えられる構成とすることができる。
【0029】
ここで、負荷素子200は、一対の電極間を流れる電流の電流値によって輝度が制御される電気光学素子を用いることができる。例えば、負荷素子200として、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)等の発光素子を用いることができる。負荷素子200としてEL素子を用いる場合、負荷素子200の一対の電極のうち一方は陽極とし、一対の電極のうちの他方は陰極とすることができる。なお、負荷素子200の一対の電極のうち一方は陰極とし、一対の電極のうちの他方は陽極としてもよい。
【0030】
なお、スイッチ201、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ204、及びスイッチ205は、それぞれトランジスタを用いて構成することができる。ここで、トランジスタ11、並びに、スイッチ201、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ204、及びスイッチ205を構成するトランジスタは、nチャネル型トランジスタであってもpチャネル型トランジスタであってもよい。画素100に用いられるトランジスタは全て同じ導電型のトランジスタであっても良いし、異なる導電型のトランジスタを組み合わせて画素100を構成してもよい。画素100に用いられるトランジスタを全て同じ導電型のトランジスタとすることによって、表示装置の作製工程を簡略化することができる。
【0031】
(表示装置の駆動方法)
図1(A)に示した構成の画素100の駆動方法について説明する。図1(B)は、図1(A)に示した構成の画素100の駆動方法を示すタイミングチャートである。図1(B)では、第1のフレームF1及び第2フレームF2の期間T1乃至T3それぞれにおける、スイッチ201、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ204、及びスイッチ205それぞれの状態(オン状態であるかオフ状態であるか)を「201」、「202」、「203」、「204」、「205」の欄に示す。なお、第1のフレーム中期間T2において、スイッチ203及びスイッチ204の一方又は両方がオフ状態であればよいことを「一方or両方off」と表記している。また、トランジスタ11の状態を「11」の欄に示す。なお「11」の欄において、「on→off」は、トランジスタ11がオン状態からオフ状態に変化することを示している。「11」の欄において、「sig1」はトランジスタ11が映像信号の信号電位Vsig1に対応するドレイン電流を流すことが可能な状態を示している。「sig2」はトランジスタ11が映像信号の信号電位Vsig2に対応するドレイン電流を流すことが可能な状態を示している。端子Dに入力される信号を「D」の欄に示す。「D」の欄において、「Vsig1」は、映像信号に対応した信号電位Vsig1が端子Dに入力されていることを示し、「Vsig2」は、映像信号に対応した信号電位Vsig2が端子Dに入力されていることを示している。なお、信号電位Vsig1及び信号電位Vsig2は表示する映像によって異なるため、同じであっても異なっていてもよい。また、「D」の欄における網掛け部分は任意の電位とすることができる。
【0032】
以下、各期間の動作について詳細に説明する。第1のフレームF1中期間T1において、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ204、スイッチ205がオン状態となることによって、容量素子12に電荷が蓄積される。こうして、容量素子12の一対の電極間に、トランジスタ11の閾値電圧(以下、Vthともいう)以上の電圧を保持する。このとき、トランジスタ11は、容量素子12に保持された電圧がゲートとソース間に印加されており、オン状態である。
【0033】
次いで、第1のフレームF1中期間T2において、スイッチ202及びスイッチ205をオン状態としたまま、スイッチ203及びスイッチ204の一方または両方をオフ状態とする。こうして、容量素子12に蓄積された電荷は、トランジスタ11のソースとドレイン間を介して移動する。その後、容量素子12の一対の電極間の電圧がトランジスタ11の閾値電圧(Vth)に等しくなったとき、トランジスタ11はオフ状態となって当該電荷の移動が停止する。こうして、容量素子12の一対の電極間に、トランジスタ11の閾値電圧(Vth)が保持され、トランジスタ11の閾値電圧(Vth)を取得することができる。第1のフレームF1中期間T1及び期間T2に行う動作が、閾値電圧取得動作に相当する。
【0034】
その後、第1のフレームF1中期間T3において、スイッチ201をオン状態とし、スイッチ202、スイッチ203及びスイッチ205をオフ状態とし、スイッチ204をオン状態とする。また、端子Dには、信号電位Vsig1を入力する。こうして、容量素子12による容量結合によって、トランジスタ11のゲートには、信号電位Vsig1にトランジスタ11の閾値電圧(Vth)を加算した電位が入力される。そして、トランジスタ11は、映像信号の信号電位Vsig1に対応するドレイン電流を流し、負荷素子200には当該ドレイン電流が供給される。こうして、表示装置は表示を行う。
【0035】
第1のフレームF1で閾値電圧取得動作を行った後、連続する第2のフレームF2では閾値電圧取得動作を行わない。第2のフレームF2では、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ205はオフ状態のままである。またスイッチ204はオン状態のままである。こうして、第2のフレームF2では、これらスイッチを駆動する駆動回路を動作させる必要が無く、表示装置の消費電力を低減することができる。
【0036】
第2のフレームF2中期間T3において、端子Dに映像信号の信号電位Vsig2が入力され、容量素子12による容量結合によって、トランジスタ11のゲートには、信号電位Vsig2にトランジスタ11の閾値電圧(Vth)を加算した電位が入力される。そして、トランジスタ11は、映像信号の信号電位Vsig2に対応するドレイン電流を流し、負荷素子200には当該ドレイン電流が供給される。こうして、表示装置は表示を行う。
【0037】
なお、図1(B)では、第1のフレームF1と第2のフレームF2を代表で示したがこれに限定されない。閾値電圧取得動作は複数のフレームに1回行うことができる。閾値電圧取得動作を行うフレームでは第1のフレームF1と同様の駆動を行い、閾値電圧取得動作を行わないフレームでは第2のフレームF2と同様の駆動を行う。
【0038】
ここで、容量素子12と電源電位が入力される端子(端子V1、端子V2、端子V0)との電気的接続を選択するスイッチを、オフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成することによって、閾値電圧取得動作を行った後に、容量素子12から電荷がリークするのを抑制することができる。例えば、容量素子12と端子V2との電気的接続を選択するスイッチ202をオフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成することによって、容量素子12からのリークを低減することができる。オフ電流が極めて小さいトランジスタとしては、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いることができる。
【0039】
閾値電圧取得動作を行った後に、容量素子12から電荷がリークするのを抑制することによって、閾値電圧取得動作を行う頻度をより低減することができる。例えば、閾値電圧取得動作は10フレーム以上に1回行うことができる。例えば、閾値電圧取得動作は3600フレーム以上に1回行う。閾値電圧取得動作は1分以上に1回行うことができる。こうして、表示品質を損なうことなく、表示装置の消費電力をより低減することができる。
【0040】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0041】
(実施の形態2)
本発明の表示装置の駆動方法の別の一態様について説明する。
【0042】
(表示装置の構成)
まず、表示装置の構成について説明する。図2(A)に、表示装置の一態様を示す。表示装置は画素100を複数有する。図2(A)に示した画素100は図1(A)に示した画素100において、スイッチ204を省略した構成に相当する。その他の構成については図1(A)と同様であるため説明は省略する。
【0043】
(表示装置の駆動方法)
図2(A)に示した構成の画素100の駆動方法について説明する。図2(B)は、図2(A)に示した構成の画素100の駆動方法を示すタイミングチャートである。図2(B)では、第1のフレームF1及び第2フレームF2の期間T1乃至T3それぞれにおける、スイッチ201、スイッチ202、スイッチ203、及びスイッチ205それぞれの状態(オン状態であるかオフ状態であるか)を「201」、「202」、「203」、「205」の欄に示す。また、トランジスタ11の状態を「11」の欄に示す。なお「11」の欄において、「on→off」は、トランジスタ11がオン状態からオフ状態に変化することを示している。「11」の欄において、「sig1」はトランジスタ11が映像信号の信号電位Vsig1に対応するドレイン電流を流すことが可能な状態を示している。「sig2」はトランジスタ11が映像信号の信号電位Vsig2に対応するドレイン電流を流すことが可能な状態を示している。端子Dに入力される信号を「D」の欄に示す。「D」の欄において、「Vsig1」は、映像信号に対応した信号電位Vsig1が端子Dに入力されていることを示し、「Vsig2」は、映像信号に対応した信号電位Vsig2が端子Dに入力されていることを示している。なお、信号電位Vsig1及び信号電位Vsig2は表示する映像によって異なるため、同じであっても異なっていてもよい。また、「D」の欄における網掛け部分は任意の電位とすることができる。
【0044】
以下、各期間の動作について詳細に説明する。第1のフレームF1中期間T1において、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ205がオン状態となることによって、容量素子12に電荷が蓄積される。こうして、容量素子12の一対の電極間に、トランジスタ11の閾値電圧(以下、Vthともいう)以上の電圧を保持する。このとき、トランジスタ11は、容量素子12に保持された電圧がゲートとソース間に印加されており、オン状態である。
【0045】
次いで、第1のフレームF1中期間T2において、スイッチ202及びスイッチ205をオン状態としたまま、スイッチ203をオフ状態とする。こうして、容量素子12に蓄積された電荷は、トランジスタ11のソースとドレイン間を介して移動する。その後、容量素子12の一対の電極間の電圧がトランジスタ11の閾値電圧(Vth)に等しくなったとき、トランジスタ11はオフ状態となって当該電荷の移動が停止する。こうして、容量素子12の一対の電極間に、トランジスタ11の閾値電圧(Vth)が保持され、トランジスタ11の閾値電圧(Vth)を取得することができる。第1のフレームF1中期間T1及び期間T2に行う動作が、閾値電圧取得動作に相当する。
【0046】
その後、第1のフレームF1中期間T3において、スイッチ201をオン状態とし、スイッチ202、スイッチ203及びスイッチ205をオフ状態とする。また、端子Dには、信号電位Vsig1を入力する。こうして、容量素子12による容量結合によって、トランジスタ11のゲートには、信号電位Vsig1にトランジスタ11の閾値電圧(Vth)を加算した電位が入力される。そして、トランジスタ11は、映像信号の信号電位Vsig1に対応するドレイン電流を流し、負荷素子200には当該ドレイン電流が供給される。こうして、表示装置は表示を行う。
【0047】
第1のフレームF1で閾値電圧取得動作を行った後、連続する第2のフレームF2では閾値電圧取得動作を行わない。第2のフレームF2では、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ205はオフ状態のままである。こうして、第2のフレームF2では、これらスイッチを駆動する駆動回路を動作させる必要が無く、表示装置の消費電力を低減することができる。
【0048】
第2のフレームF2中期間T3において、端子Dに映像信号の信号電位Vsig2が入力され、容量素子12による容量結合によって、トランジスタ11のゲートには、信号電位Vsig2にトランジスタ11の閾値電圧(Vth)を加算した電位が入力される。そして、トランジスタ11は、映像信号の信号電位Vsig2に対応するドレイン電流を流し、負荷素子200には当該ドレイン電流が供給される。こうして、表示装置は表示を行う。
【0049】
なお、図2(B)では、第1のフレームF1と第2のフレームF2を代表で示したがこれに限定されない。閾値電圧取得動作は複数のフレームに1回行うことができる。閾値電圧取得動作を行うフレームでは第1のフレームF1と同様の駆動を行い、閾値電圧取得動作を行わないフレームでは第2のフレームF2と同様の駆動を行う。
【0050】
ここで、容量素子12と電源電位が入力される端子(端子V1、端子V2、端子V0)との電気的接続を選択するスイッチを、オフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成することによって、閾値電圧取得動作を行った後に、容量素子12から電荷がリークするのを抑制することができる。例えば、容量素子12と端子V2との電気的接続を選択するスイッチ202をオフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成することによって、容量素子12からのリークを低減することができる。オフ電流が極めて小さいトランジスタとしては、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いることができる。
【0051】
閾値電圧取得動作を行った後に、容量素子12から電荷がリークするのを抑制することによって、閾値電圧取得動作を行う頻度をより低減することができる。例えば、閾値電圧取得動作は10フレーム以上に1回行うことができる。例えば、閾値電圧取得動作は3600フレーム以上に1回行う。閾値電圧取得動作は1分以上に1回行うことができる。こうして、表示品質を損なうことなく、表示装置の消費電力をより低減することができる。
【0052】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0053】
(実施の形態3)
本発明の表示装置の駆動方法の別の一態様について説明する。
【0054】
(表示装置の構成)
まず、表示装置の構成について説明する。図3(A)に、表示装置の一態様を示す。表示装置は画素100を複数有する。画素100は、トランジスタ11、負荷素子200、容量素子12、スイッチ201、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ204、及びスイッチ205を有する。トランジスタ11が駆動用トランジスタに相当する。
【0055】
トランジスタ11のソース及びドレインの一方は、スイッチ203を介して端子V1と電気的に接続される。トランジスタ11のソース及びドレインの一方は、スイッチ204を介して負荷素子200の一対の電極のうちの一方と電気的に接続される。トランジスタ11のソース及びドレインの一方はスイッチ205を介して容量素子12の一対の電極のうちの一方と電気的に接続される。容量素子12の一対の電極のうちの一方はスイッチ201を介して端子Dと電気的に接続される。容量素子12の一対の電極のうちの他方はトランジスタ11のゲートと電気的に接続される。負荷素子200の一対の電極のうちの他方は端子V0と電気的に接続される。トランジスタ11のソース及びドレインの他方は端子V2と電気的に接続される。トランジスタ11のゲートは、スイッチ202を介して端子V3と電気的に接続される。
【0056】
端子V0、端子V1、端子V2、端子V3には、電源電位が与えられる。つまり、高電源電位または低電源電位が与えられる。つまり、端子V0、端子V1、端子V2、端子V3は、電源電位が与えられる配線と電気的に接続されているということもできる。例えば、トランジスタ11をnチャネル型トランジスタとして、端子V0及び端子V1には低電源電位が与えられ、端子V2及び端子V3には高電源電位が与えられる構成とすることができる。また例えば、トランジスタ11をpチャネル型トランジスタとして、端子V0及び端子V1には高電源電位が与えられ、端子V2及び端子V3には低電源電位が与えられる構成とすることができる。
【0057】
ここで、負荷素子200は、一対の電極間を流れる電流の電流値によって輝度が制御される電気光学素子を用いることができる。例えば、負荷素子200として、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)等の発光素子を用いることができる。負荷素子200としてEL素子を用いる場合、負荷素子200の一対の電極のうち一方は陽極とし、一対の電極のうちの他方は陰極とすることができる。なお、負荷素子200の一対の電極のうち一方は陰極とし、一対の電極のうちの他方は陽極としてもよい。
【0058】
なお、スイッチ201、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ204、及びスイッチ205は、それぞれトランジスタを用いて構成することができる。ここで、トランジスタ11、並びに、スイッチ201、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ204、及びスイッチ205を構成するトランジスタは、nチャネル型トランジスタであってもpチャネル型トランジスタであってもよい。画素100に用いられるトランジスタは全て同じ導電型のトランジスタであっても良いし、異なる導電型のトランジスタを組み合わせて画素100を構成してもよい。画素100に用いられるトランジスタを全て同じ導電型のトランジスタとすることによって、表示装置の作製工程を簡略化することができる。
【0059】
(表示装置の駆動方法)
図3(A)に示した構成の画素100の駆動方法について説明する。図3(B)は、図3(A)に示した構成の画素100の駆動方法を示すタイミングチャートである。図3(B)では、第1のフレームF1及び第2フレームF2の期間T1乃至T3それぞれにおける、スイッチ201、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ204、及びスイッチ205それぞれの状態(オン状態であるかオフ状態であるか)を「201」、「202」、「203」、「204」、「205」の欄に示す。なお、第1のフレーム中期間T1及び期間T2において、スイッチ204はオン状態であってもオフ状態であってもよいことを「on/off」と表記している。また、トランジスタ11の状態を「11」の欄に示す。なお「11」の欄において、「on→off」は、トランジスタ11がオン状態からオフ状態に変化することを示している。「11」の欄において、「sig1」はトランジスタ11が映像信号の信号電位Vsig1に対応するドレイン電流を流すことが可能な状態を示している。「sig2」はトランジスタ11が映像信号の信号電位Vsig2に対応するドレイン電流を流すことが可能な状態を示している。端子Dに入力される信号を「D」の欄に示す。「D」の欄において、「Vsig1」は、映像信号に対応した信号電位Vsig1が端子Dに入力されていることを示し、「Vsig2」は、映像信号に対応した信号電位Vsig2が端子Dに入力されていることを示している。なお、信号電位Vsig1及び信号電位Vsig2は表示する映像によって異なるため、同じであっても異なっていてもよい。また、「D」の欄における網掛け部分は任意の電位とすることができる。
【0060】
以下、各期間の動作について詳細に説明する。第1のフレームF1中期間T1において、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ205がオン状態となることによって、容量素子12に電荷が蓄積される。こうして、容量素子12の一対の電極間に、トランジスタ11の閾値電圧(以下、Vthともいう)以上の電圧を保持する。このとき、トランジスタ11は、容量素子12に保持された電圧がゲートとソース間に印加されており、オン状態である。
【0061】
次いで、第1のフレームF1中期間T2において、スイッチ202及びスイッチ205をオン状態としたまま、スイッチ203をオフ状態とする。こうして、容量素子12に蓄積された電荷は、トランジスタ11のソースとドレイン間を介して移動する。その後、容量素子12の一対の電極間の電圧がトランジスタ11の閾値電圧(Vth)に等しくなったとき、トランジスタ11はオフ状態となって当該電荷の移動が停止する。こうして、容量素子12の一対の電極間に、トランジスタ11の閾値電圧(Vth)が保持され、トランジスタ11の閾値電圧(Vth)を取得することができる。第1のフレームF1中期間T1及び期間T2に行う動作が、閾値電圧取得動作に相当する。
【0062】
その後、第1のフレームF1中期間T3において、スイッチ201をオン状態とし、スイッチ202、スイッチ203及びスイッチ205をオフ状態とし、スイッチ204をオン状態とする。また、端子Dには、信号電位Vsig1を入力する。こうして、容量素子12による容量結合によって、トランジスタ11のゲートには、信号電位Vsig1にトランジスタ11の閾値電圧(Vth)を加算した電位が入力される。そして、トランジスタ11は、映像信号の信号電位Vsig1に対応するドレイン電流を流し、負荷素子200には当該ドレイン電流が供給される。こうして、表示装置は表示を行う。
【0063】
第1のフレームF1で閾値電圧取得動作を行った後、連続する第2のフレームF2では閾値電圧取得動作を行わない。第2のフレームF2では、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ205はオフ状態のままである。またスイッチ204はオン状態のままである。こうして、第2のフレームF2では、これらスイッチを駆動する駆動回路を動作させる必要が無く、表示装置の消費電力を低減することができる。
【0064】
第2のフレームF2中期間T3において、端子Dに映像信号の信号電位Vsig2が入力され、容量素子12による容量結合によって、トランジスタ11のゲートには、信号電位Vsig2にトランジスタ11の閾値電圧(Vth)を加算した電位が入力される。そして、トランジスタ11は、映像信号の信号電位Vsig2に対応するドレイン電流を流し、負荷素子200には当該ドレイン電流が供給される。こうして、表示装置は表示を行う。
【0065】
なお、図3(B)では、第1のフレームF1と第2のフレームF2を代表で示したがこれに限定されない。閾値電圧取得動作は複数のフレームに1回行うことができる。閾値電圧取得動作を行うフレームでは第1のフレームF1と同様の駆動を行い、閾値電圧取得動作を行わないフレームでは第2のフレームF2と同様の駆動を行う。
【0066】
ここで、容量素子12と電源電位が入力される端子(端子V1、端子V2、端子V3、端子V0)との電気的接続を選択するスイッチを、オフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成することによって、閾値電圧取得動作を行った後に、容量素子12から電荷がリークするのを抑制することができる。例えば、容量素子12と端子V3との電気的接続を選択するスイッチ202をオフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成することによって、容量素子12からのリークを低減することができる。オフ電流が極めて小さいトランジスタとしては、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いることができる。
【0067】
閾値電圧取得動作を行った後に、容量素子12から電荷がリークするのを抑制することによって、閾値電圧取得動作を行う頻度をより低減することができる。例えば、閾値電圧取得動作は10フレーム以上に1回行うことができる。例えば、閾値電圧取得動作は3600フレーム以上に1回行う。閾値電圧取得動作は1分以上に1回行うことができる。こうして、表示品質を損なうことなく、表示装置の消費電力をより低減することができる。
【0068】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0069】
(実施の形態4)
本発明の表示装置の駆動方法の別の一態様について説明する。
【0070】
(表示装置の構成)
まず、表示装置の構成について説明する。図4(A)に、表示装置の一態様を示す。表示装置は画素100を複数有する。図4(A)に示した画素100は図3(A)に示した画素100において、端子V2と端子V3を共有した構成に相当する。その他の構成については図3(A)と同様であるため説明は省略する。
【0071】
(表示装置の駆動方法)
図4(A)に示した構成の画素100の駆動方法について説明する。図4(B)は、図4(A)に示した構成の画素100の駆動方法を示すタイミングチャートである。図4(B)では、第1のフレームF1及び第2フレームF2の期間T1乃至T3それぞれにおける、スイッチ201、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ204、及びスイッチ205それぞれの状態(オン状態であるかオフ状態であるか)を「201」、「202」、「203」、「204」、「205」の欄に示す。なお、第1のフレーム中期間T1及び期間T2において、スイッチ204はオン状態であってもオフ状態であってもよいことを「on/off」と表記している。また、トランジスタ11の状態を「11」の欄に示す。なお「11」の欄において、「on→off」は、トランジスタ11がオン状態からオフ状態に変化することを示している。「11」の欄において、「sig1」はトランジスタ11が映像信号の信号電位Vsig1に対応するドレイン電流を流すことが可能な状態を示している。「sig2」はトランジスタ11が映像信号の信号電位Vsig2に対応するドレイン電流を流すことが可能な状態を示している。端子Dに入力される信号を「D」の欄に示す。「D」の欄において、「Vsig1」は、映像信号に対応した信号電位Vsig1が端子Dに入力されていることを示し、「Vsig2」は、映像信号に対応した信号電位Vsig2が端子Dに入力されていることを示している。なお、信号電位Vsig1及び信号電位Vsig2は表示する映像によって異なるため、同じであっても異なっていてもよい。また、「D」の欄における網掛け部分は任意の電位とすることができる。
【0072】
以下、各期間の動作について詳細に説明する。第1のフレームF1中期間T1において、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ205がオン状態となることによって、容量素子12に電荷が蓄積される。こうして、容量素子12の一対の電極間に、トランジスタ11の閾値電圧(以下、Vthともいう)以上の電圧を保持する。このとき、トランジスタ11は、容量素子12に保持された電圧がゲートとソース間に印加されており、オン状態である。
【0073】
次いで、第1のフレームF1中期間T2において、スイッチ202及びスイッチ205をオン状態としたまま、スイッチ203をオフ状態とする。こうして、容量素子12に蓄積された電荷は、トランジスタ11のソースとドレイン間を介して移動する。その後、容量素子12の一対の電極間の電圧がトランジスタ11の閾値電圧(Vth)に等しくなったとき、トランジスタ11はオフ状態となって当該電荷の移動が停止する。こうして、容量素子12の一対の電極間に、トランジスタ11の閾値電圧(Vth)が保持され、トランジスタ11の閾値電圧(Vth)を取得することができる。第1のフレームF1中期間T1及び期間T2に行う動作が、閾値電圧取得動作に相当する。
【0074】
その後、第1のフレームF1中期間T3において、スイッチ201をオン状態とし、スイッチ202、スイッチ203及びスイッチ205をオフ状態とし、スイッチ204をオン状態とする。また、端子Dには、信号電位Vsig1を入力する。こうして、容量素子12による容量結合によって、トランジスタ11のゲートには、信号電位Vsig1にトランジスタ11の閾値電圧(Vth)を加算した電位が入力される。そして、トランジスタ11は、映像信号の信号電位Vsig1に対応するドレイン電流を流し、負荷素子200には当該ドレイン電流が供給される。こうして、表示装置は表示を行う。
【0075】
第1のフレームF1で閾値電圧取得動作を行った後、連続する第2のフレームF2では閾値電圧取得動作を行わない。第2のフレームF2では、スイッチ202、スイッチ203、スイッチ205はオフ状態のままである。またスイッチ204はオン状態のままである。こうして、第2のフレームF2では、これらスイッチを駆動する駆動回路を動作させる必要が無く、表示装置の消費電力を低減することができる。
【0076】
第2のフレームF2中期間T3において、端子Dに映像信号の信号電位Vsig2が入力され、容量素子12による容量結合によって、トランジスタ11のゲートには、信号電位Vsig2にトランジスタ11の閾値電圧(Vth)を加算した電位が入力される。そして、トランジスタ11は、映像信号の信号電位Vsig2に対応するドレイン電流を流し、負荷素子200には当該ドレイン電流が供給される。こうして、表示装置は表示を行う。
【0077】
なお、図4(B)では、第1のフレームF1と第2のフレームF2を代表で示したがこれに限定されない。閾値電圧取得動作は複数のフレームに1回行うことができる。閾値電圧取得動作を行うフレームでは第1のフレームF1と同様の駆動を行い、閾値電圧取得動作を行わないフレームでは第2のフレームF2と同様の駆動を行う。
【0078】
ここで、容量素子12と電源電位が入力される端子(端子V1、端子V2、端子V0)との電気的接続を選択するスイッチを、オフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成することによって、閾値電圧取得動作を行った後に、容量素子12から電荷がリークするのを抑制することができる。例えば、容量素子12と端子V2との電気的接続を選択するスイッチ202をオフ電流が極めて小さいトランジスタを用いて構成することによって、容量素子12からのリークを低減することができる。オフ電流が極めて小さいトランジスタとしては、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いることができる。
【0079】
閾値電圧取得動作を行った後に、容量素子12から電荷がリークするのを抑制することによって、閾値電圧取得動作を行う頻度をより低減することができる。例えば、閾値電圧取得動作は10フレーム以上に1回行うことができる。例えば、閾値電圧取得動作は3600フレーム以上に1回行う。閾値電圧取得動作は1分以上に1回行うことができる。こうして、表示品質を損なうことなく、表示装置の消費電力をより低減することができる。
【0080】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0081】
(実施の形態5)
本実施の形態では、図1(A)、図2(A)、図3(A)、図4(A)に示した画素100を有する表示装置の具体的な構成の一態様について説明する。
【0082】
図5は、表示装置の構成を示す断面図である。図5において、スイッチ203を構成するトランジスタ2202と、トランジスタ11、容量素子12、負荷素子200として用いるEL素子2200を代表で示す。その他のスイッチも、トランジスタ2202やトランジスタ11と同様の構成とすることができる。
【0083】
トランジスタ2202は、絶縁表面を有する基板800上に、ゲートとして機能する導電層801と、導電層801上のゲート絶縁膜802と、導電層801と重なる位置においてゲート絶縁膜802上に位置する半導体層803と、ソースまたはドレインとして機能し、半導体層803上に位置する導電層804及び導電層805とを有する。
【0084】
トランジスタ11は、絶縁表面を有する基板800上に、ゲートとして機能する導電層806と、導電層806上のゲート絶縁膜802と、導電層806と重なる位置においてゲート絶縁膜802上に位置する半導体層807と、ソースまたはドレインとして機能し、半導体層807上に位置する導電層808及び導電層809とを有する。
【0085】
容量素子12は、絶縁表面を有する基板800上に、導電層806と、導電層806上のゲート絶縁膜802と、導電層806と重なる位置においてゲート絶縁膜802上に位置する導電層810とを有する。
【0086】
また、導電層804、導電層805、導電層808、導電層809、導電層810上には、絶縁膜823及び絶縁膜824が順に形成されている。そして、絶縁膜824上には、アノードとして機能する導電層825が設けられている。
【0087】
また、導電層825の一部が露出するような開口部を有した絶縁層827が、絶縁膜824上に設けられている。導電層825の一部及び絶縁層827上には、電界発光層828と、カソードとして機能する導電層829とが、順に積層するように設けられている。導電層825と、電界発光層828と、導電層829とが重なっている領域が、EL素子2200に相当する。
【0088】
半導体層803として、酸化物半導体層を用いることができる。半導体層803として酸化物半導体層を用いることによって、トランジスタ2202のオフ電流を著しく低減することができる。こうして、表示装置は、閾値電圧取得動作を行った後に、容量素子12から電荷がリークするのを抑制することによって、閾値電圧取得動作を行う頻度をより低減することができる。例えば、閾値電圧取得動作は10フレーム以上に1回行うことができる。例えば、閾値電圧取得動作は3600フレーム以上に1回行う。閾値電圧取得動作は1分以上に1回行うことができる。そのため、表示品質を損なうことなく、表示装置の消費電力をより低減することができる。
【0089】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0090】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態5において図5で示した表示装置のより具体的な構成について説明する。
【0091】
図5における半導体層803及び半導体層807を酸化物半導体層によって形成する構成について説明する。
【0092】
用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0093】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0094】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0095】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0096】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0097】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0098】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、
(a―A)+(b―B)+(c―C)≦r
を満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0099】
なお、酸化物半導体層は、電子供与体(ドナー)となる水分又は水素などの不純物が低減されることが好ましい。具体的には、酸化物半導体層は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)による水素濃度の測定値が、5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1017/cm以下、更に好ましくは1×1016/cm以下である。
【0100】
ここで、酸化物半導体層中の、水素濃度の分析について触れておく。半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法で行う。SIMS分析は、その原理上、試料表面近傍や、材質が異なる層との積層界面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。そこで、層中における水素濃度の厚さ方向の分布をSIMSで分析する場合、対象となる層が存在する範囲において、値に極端な変動がなく、ほぼ一定の値が得られる領域における平均値を、水素濃度として採用する。また、測定の対象となる層の厚さが小さい場合、隣接する層内の水素濃度の影響を受けて、ほぼ一定の値が得られる領域を見いだせない場合がある。この場合、当該層が存在する領域における、水素濃度の極大値又は極小値を、当該層中の水素濃度として採用する。更に、当該層が存在する領域において、極大値を有する山型のピーク、極小値を有する谷型のピークが存在しない場合、変曲点の値を水素濃度として採用する。
【0101】
酸化物半導体層は、絶縁表面を有する基板800上に形成した酸化物半導体膜をエッチング加工することで、形成することができる。酸化物半導体膜の膜厚は、2nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下、更に好ましくは3nm以上20nm以下とする。酸化物半導体膜は、酸化物半導体をターゲットとして用い、スパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(例えばアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。
【0102】
酸化物半導体としてIn−Sn−Zn−O系の材料を用いる場合、原子数比でIn:Sn:Znが、1:2:2、2:1:3、1:1:1、または20:45:35などとなる酸化物ターゲットを用いることができる。
【0103】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、原子数比でIn:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=1.5:1〜15:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)となる酸化物ターゲットを用いる。例えば、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとなる酸化物ターゲットを用いることができる。
【0104】
スパッタリング法を用いて酸化物半導体膜を作製する場合には、ターゲット中の水素濃度のみならず、チャンバー内に存在する水、水素を極力低減しておくことが重要である。具体的には、当該形成以前にチャンバー内をベークする、チャンバー内に導入されるガス中の水、水素濃度を低減する、及びチャンバーからガスの排気する排気系における逆流を防止するなどを行うことが効果的である。
【0105】
また、酸化物半導体膜をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行い、被成膜表面に付着している塵埃を除去してもよい。逆スパッタリングとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを用いてもよい。また、アルゴン雰囲気に酸素、亜酸化窒素などを加えた雰囲気で行ってもよい。また、アルゴン雰囲気に塩素、四フッ化炭素などを加えた雰囲気で行ってもよい。
【0106】
また、酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で基板800を予備加熱し、基板800に吸着した水分又は水素などの不純物を脱離し排気してもよい。なお、予備加熱の温度は、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下である。また、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。
【0107】
例えば、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、及びZn(亜鉛)を含むターゲットを用いたスパッタリング法により得られる膜厚30nmのIn−Ga−Zn系酸化物半導体の薄膜を、酸化物半導体膜として用いる。上記ターゲットとして、例えば、各金属の組成比がIn:Ga:Zn=1:1:0.5、In:Ga:Zn=1:1:1、又はIn:Ga:Zn=1:1:2であるターゲットを用いることができる。また、In、Ga、及びZnを含むターゲットの相対密度は90%以上100%以下、好ましくは95%以上100%未満である。相対密度の高いターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0108】
例えば、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタリングガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体膜を成膜する。成膜時に、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下としても良い。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて処理室を排気すると、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0109】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する塵埃が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0110】
また、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における酸化物半導体膜への、アルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として上述した吸着型の真空ポンプを用いることで、排気系からのアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0111】
また、ターゲットの純度を、99.99%以上とすることで、酸化物半導体膜に混入するアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等を低減することができる。また、当該ターゲットを用いることで、酸化物半導体膜において、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の濃度を低減することができる。
【0112】
なお、酸化物半導体は不純物に対して鈍感であり、膜中にはかなりの金属不純物が含まれていても問題がなく、ナトリウム(Na)のようなアルカリ金属が多量に含まれる廉価なソーダ石灰ガラスも使えると指摘されている(神谷、野村、細野、「アモルファス酸化物半導体の物性とデバイス開発の現状」、固体物理、2009年9月号、Vol.44、pp.621−633.)。しかし、このような指摘は適切でない。アルカリ金属は酸化物半導体を構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成する元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちNaは、酸化物半導体層に接する絶縁膜が酸化物である場合、当該絶縁膜中に拡散してNaとなる。また、Naは、酸化物半導体層内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分断する、或いは、その結合中に割り込む。その結果、例えば、閾値電圧がマイナス方向にシフトすることによるノーマリオン化、移動度の低下等の、トランジスタの特性の劣化が起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。この不純物によりもたらされるトランジスタの特性の劣化と、特性のばらつきは、酸化物半導体層中の水素濃度が十分に低い場合において顕著に現れる。従って、酸化物半導体層中の水素濃度が1×1018/cm以下、より好ましくは1×1017/cm以下である場合には、上記不純物の濃度を低減することが望ましい。具体的に、二次イオン質量分析法によるNa濃度の測定値は、5×1016/cm以下、好ましくは1×1016/cm以下、更に好ましくは1×1015/cm以下とするとよい。同様に、Li濃度の測定値は、5×1015/cm以下、好ましくは1×1015/cm以下とするとよい。同様に、K濃度の測定値は、5×1015/cm以下、好ましくは1×1015/cm以下とするとよい。
【0113】
酸化物半導体膜は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)または非晶質などの状態をとる。
【0114】
好ましくは、酸化物半導体膜は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
【0115】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0116】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0117】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0118】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0119】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0120】
なお、酸化物半導体膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
【0121】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
【0122】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0123】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の式にて定義される。
【0124】
【数1】

【0125】
なお、上記において、Sは、測定面(座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Zは測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0126】
CAAC−OS膜は、スパッタリング法によって作製することができる。ターゲット材料は上述のとおりの材料を用いることができる。スパッタリング法を用いてCAAC−OS膜を成膜する場合には、雰囲気中の酸素ガス比が高い方が好ましい。例えば、アルゴン及び酸素の混合ガス雰囲気中でスパッタリング法を行う場合には、酸素ガス比を30%以上とすることが好ましく、40%以上とすることがより好ましい。雰囲気中からの酸素の補充によって、CAAC−OS膜の結晶化が促進されるからである。
【0127】
また、スパッタリング法を用いてCAAC−OS膜を成膜する場合には、CAAC−OS膜が成膜される基板を150℃以上に加熱しておくことが好ましく、170℃以上に加熱しておくことがより好ましい。基板温度の上昇に伴って、CAAC−OS膜の結晶化が促進されるからである。
【0128】
また、CAAC−OS膜に対して、窒素雰囲気中又は真空中において熱処理を行った後には、酸素雰囲気中又は酸素と他のガスとの混合雰囲気中において熱処理を行うことが好ましい。先の熱処理で生じる酸素欠損(または酸素欠陥)を後の熱処理における雰囲気中からの酸素供給によって低減することができるからである。
【0129】
また、CAAC−OS膜が成膜される膜表面(被成膜面)は平坦であることが好ましい。CAAC−OS膜は、当該被成膜面に概略垂直となるc軸を有するため、当該被成膜面に存在する凹凸は、CAAC−OS膜における結晶粒界の発生を誘発することになるからである。よって、CAAC−OS膜が成膜される前に当該被成膜表面に対して化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)などの平坦化処理を行うことが好ましい。また、当該被成膜面の平均ラフネスは、0.5nm以下であることが好ましく、0.3nm以下であることがより好ましい。
【0130】
なお、スパッタリング等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物としての水分又は水素(水酸基を含む)が含まれていることがある。本発明の一態様では、酸化物半導体膜中の水分又は水素などの不純物を低減(脱水化または脱水素化)するために、酸化物半導体膜に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で、酸化物半導体膜に加熱処理を施す。
【0131】
酸化物半導体膜に加熱処理を施すことで、酸化物半導体膜中の水分又は水素を脱離させることができる。具体的には、250℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満の温度で加熱処理を行えば良い。例えば、500℃、3分間以上6分間以下で行えばよい。加熱処理にRTA法を用いれば、短時間に脱水化又は脱水素化が行えるため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。
【0132】
本実施の形態では、加熱処理装置の一つである電気炉を用いる。
【0133】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Annealing)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Annealing)装置等のRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、又は窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0134】
加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水分又は水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0135】
以上の工程により、酸化物半導体膜中の水素の濃度を低減することができる。
【0136】
こうして酸化物半導体膜中の水分又は水素を脱離させた後、酸化物半導体膜(または、これを用いて形成した酸化物半導体層)に酸素を添加(供給)する。こうして、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)中やその界面等における酸素欠陥を低減し、酸化物半導体層をi型化又はi型に限りなく近くすることができる。
【0137】
酸素の添加は、例えば、酸化物半導体膜(または、これを用いて形成した酸化物半導体層)に接して化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を形成し、その後加熱することによって行うことができる。こうして、絶縁膜中の過剰な酸素を酸化物半導体膜(酸化物半導体層)に供給することができる。こうして、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)を酸素を過剰に含む状態とすることができる。過剰に含まれる酸素は、例えば、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)を構成する結晶の格子間に存在する。
【0138】
なお、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜は、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)に接する絶縁膜のうち、上層に位置する絶縁膜又は下層に位置する絶縁膜のうち、どちらか一方のみに用いても良いが、両方の絶縁膜に用いる方が好ましい。化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)に接する絶縁膜の、上層及び下層に位置する絶縁膜に用い、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)を挟む構成とすることで、上記効果をより高めることができる。
【0139】
ここで、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜は、単層の絶縁膜であっても良いし、積層された複数の絶縁膜で構成されていても良い。なお、当該絶縁膜は、水分や、水素などの不純物を極力含まないことが望ましい。絶縁膜に水素が含まれると、その水素が酸化物半導体膜(酸化物半導体層)へ侵入し、又は水素が酸化物半導体膜(酸化物半導体層)中の酸素を引き抜き、酸化物半導体膜が低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、絶縁膜はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。また、絶縁膜には、バリア性の高い材料を用いるのが望ましい。例えば、バリア性の高い絶縁膜として、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、酸化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いることができる。複数の積層された絶縁膜を用いる場合、窒素の含有比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を、上記バリア性の高い絶縁膜よりも、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)に近い側に形成する。そして、窒素の含有比率が低い絶縁膜を間に挟んで、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)と重なるように、バリア性の高い絶縁膜を形成する。バリア性の高い絶縁膜を用いることで、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)内や他の絶縁膜の界面とその近傍に、水分又は水素などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。また、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)に接するように窒素の比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を形成することで、バリア性の高い材料を用いた絶縁膜が直接酸化物半導体膜(酸化物半導体層)に接するのを防ぐことができる。
【0140】
また、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)中の水分又は水素を脱離させた後の酸素添加は、酸素雰囲気下で酸化物半導体膜(酸化物半導体層)に加熱処理を施すことによっておこなってもよい。上記酸素雰囲気下の加熱処理に用いられる酸素ガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する酸素ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0141】
或いは、酸化物半導体膜(酸化物半導体層)中の水分又は水素を脱離させた後の酸素添加は、イオン注入法又はイオンドーピング法などを用い行ってもよい。例えば、2.45GHzのマイクロ波でプラズマ化した酸素を酸化物半導体膜(酸化物半導体層)に添加すれば良い。
【0142】
上述のように形成した酸化物半導体膜をエッチングして酸化物半導体層を形成し、半導体層803や半導体層807として用いる。
【0143】
なお、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807に接する絶縁膜(図5では、ゲート絶縁膜802及び絶縁膜823が該当する。)は、第13族元素及び酸素を含む絶縁材料を用いるようにしても良い。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は酸化物半導体との相性が良く、これを酸化物半導体層に接する絶縁膜に用いることで、酸化物半導体層との界面の状態を良好に保つことができる。
【0144】
第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一又は複数の第13族元素を含むことを意味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0145】
例えば、ガリウムを含有する酸化物半導体層に接して絶縁膜を形成する場合に、絶縁膜に酸化ガリウムを含む材料を用いることで酸化物半導体層と絶縁膜の界面特性を良好に保つことができる。例えば、酸化物半導体層と酸化ガリウムを含む絶縁膜とを接して設けることにより、酸化物半導体層と絶縁膜の界面における水素のパイルアップを低減することができる。なお、絶縁膜に酸化物半導体の成分元素と同じ族の元素を用いる場合には、同様の効果を得ることが可能である。例えば、酸化アルミニウムを含む材料を用いて絶縁膜を形成することも有効である。なお、酸化アルミニウムは、水を透過させにくいという特性を有しているため、当該材料を用いることは、酸化物半導体層への水の侵入防止という点においても好ましい。
【0146】
また、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807に接する絶縁膜は、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープなどにより、絶縁材料を化学量論的組成比より酸素が多い状態とすることが好ましい。酸素ドープとは、酸素をバルクに添加することをいう。なお、当該バルクの用語は、酸素を薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、酸素ドープには、プラズマ化した酸素をバルクに添加する酸素プラズマドープが含まれる。また、酸素ドープは、イオン注入法又はイオンドーピング法を用いて行ってもよい。
【0147】
例えば、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807に接する絶縁膜として酸化ガリウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムの組成をGa(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0148】
また、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807に接する絶縁膜として酸化アルミニウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化アルミニウムの組成をAl(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0149】
また、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807に接する絶縁膜として酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)の組成をGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)とすることができる。
【0150】
酸素ドープ処理を行うことにより、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を形成することができる。このような領域を備える絶縁膜と酸化物半導体層が接することにより、絶縁膜中の過剰な酸素が酸化物半導体層に供給され、酸化物半導体層中、又は酸化物半導体層と絶縁膜の界面における酸素欠陥を低減し、酸化物半導体層をi型化又はi型に限りなく近くすることができる。
【0151】
なお、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜は、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807に接する絶縁膜のうち、上層に位置する絶縁膜又は下層に位置する絶縁膜のうち、どちらか一方のみに用いても良いが、両方の絶縁膜に用いる方が好ましい。化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807に接する絶縁膜の、上層及び下層に位置する絶縁膜に用い酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807を挟む構成とすることで、上記効果をより高めることができる。
【0152】
また、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807の上層又は下層に用いる絶縁膜は、上層と下層で同じ構成元素を有する絶縁膜としても良いし、異なる構成元素を有する絶縁膜としても良い。例えば、上層と下層とも、組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとしても良いし、上層と下層の一方を組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとし、他方を組成がAl(X=3+α、0<α<1)の酸化アルミニウムとしても良い。
【0153】
また、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807に接する絶縁膜は、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。例えば、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807の上層に組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムを形成し、その上に組成がGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)の酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を形成してもよい。なお、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807の下層を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良いし、酸化物半導体層でなる半導体層803や半導体層807の上層及び下層の両方を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。
【0154】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0155】
(実施の形態7)
本実施の形態では、CAAC−OS膜について説明する。
【0156】
CAAC−OS膜に含まれる結晶構造の一例について図6乃至図8を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図6乃至図8は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図6において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸は3配位のOを示す。
【0157】
図6(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図6(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図6(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図6(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0158】
図6(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図6(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図6(B)に示す構造をとりうる。図6(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0159】
図6(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図6(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図6(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図6(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0160】
図6(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図6(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図6(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0161】
図6(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図6(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図6(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0162】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0163】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図6(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図6(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。図6(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が上半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0164】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0165】
図7(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図7(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図7(C)は、図7(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0166】
図7(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図7(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図7(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0167】
図7(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0168】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図6(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0169】
具体的には、図7(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0170】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn−O系酸化物、Sn−Ga−Zn−O系酸化物、Al−Ga−Zn−O系酸化物、Sn−Al−Zn−O系酸化物や、In−Hf−Zn−O系酸化物、In−La−Zn−O系酸化物、In−Ce−Zn−O系酸化物、In−Pr−Zn−O系酸化物、In−Nd−Zn−O系酸化物、In−Sm−Zn−O系酸化物、In−Eu−Zn−O系酸化物、In−Gd−Zn−O系酸化物、In−Tb−Zn−O系酸化物、In−Dy−Zn−O系酸化物、In−Ho−Zn−O系酸化物、In−Er−Zn−O系酸化物、In−Tm−Zn−O系酸化物、In−Yb−Zn−O系酸化物、In−Lu−Zn−O系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物、Sn−Zn−O系酸化物、Al−Zn−O系酸化物、Zn−Mg−O系酸化物、Sn−Mg−O系酸化物、In−Mg−O系酸化物や、In−Ga−O系酸化物などを用いた場合も同様である。
【0171】
例えば、図8(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0172】
図8(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0173】
図8(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図8(C)は、図8(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0174】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0175】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図8(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0176】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0177】
(実施の形態8)
本実施の形態では、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタの特性について詳細に説明する。
【0178】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタは、酸化物半導体膜を形成する際に基板を加熱して成膜すること、或いは酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。なお、主成分とは組成比で5atomic%以上含まれる元素をいう。
【0179】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜の成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリ・オフ化させることが可能となる。
【0180】
例えば、図9(A)乃至図9(C)は、In、Sn、Znを主成分とし、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmである酸化物半導体膜と、厚さ100nmのゲート絶縁膜を用いたトランジスタの特性である。なお、Vは10Vとした。
【0181】
図9(A)は基板を意図的に加熱せずにスパッタリング法でIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性である。このとき電界効果移動度は18.8cm/Vsecが得られている。一方、基板を意図的に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成すると電界効果移動度を向上させることが可能となる。図9(B)は基板を200℃に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm/Vsecが得られている。
【0182】
電界効果移動度は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図9(C)は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を200℃でスパッタリング成膜した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm/Vsecが得られている。
【0183】
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水分が酸化物半導体膜中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体膜から水素や水酸基若しくは水分を放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体は、理想的には100cm/Vsecを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
【0184】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体に含まれる水素や水酸基若しくは水分を放出させ、その熱処理と同時に又はその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させても良い。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性の良い非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
【0185】
基板を意図的に加熱して成膜すること及び/又は成膜後に熱処理することの効果は、電界効果移動度の向上のみならず、トランジスタのノーマリ・オフ化を図ることにも寄与している。基板を意図的に加熱しないで形成されたIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域としたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスシフトしてしまう傾向がある。しかし、基板を意図的に加熱して形成された酸化物半導体膜を用いた場合、このしきい値電圧のマイナスシフト化は解消される。つまり、しきい値電圧はトランジスタがノーマリ・オフとなる方向に動き、このような傾向は図9(A)と図9(B)の対比からも確認することができる。
【0186】
なお、しきい値電圧はIn、Sn及びZnの比率を変えることによっても制御することが可能であり、組成比としてIn:Sn:Zn=2:1:3とすることでトランジスタのノーマリ・オフ化を期待することができる。また、ターゲットの組成比をIn:Sn:Zn=2:1:3とすることで結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。
【0187】
意図的な基板加熱温度若しくは熱処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは400℃以上であり、より高温で成膜し或いは熱処理することでトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることが可能となる。
【0188】
また、意図的に基板を加熱した成膜及び/又は成膜後に熱処理をすることで、ゲートバイアス・ストレスに対する安定性を高めることができる。例えば、2MV/cm、150℃、1時間印加の条件において、ドリフトがそれぞれ±1.5V未満、好ましくは1.0V未満を得ることができる。
【0189】
実際に、酸化物半導体膜成膜後に加熱処理を行っていない試料1と、650℃の加熱処理を行った試料2のトランジスタに対してBT試験を行った。
【0190】
まず基板温度を25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I特性の測定を行った。なお、Vはドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を示す。次に、基板温度を150℃とし、Vを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が2MV/cmとなるようにVに20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I測定を行った。これをプラスBT試験と呼ぶ。
【0191】
同様に、まず基板温度を25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が−2MV/cmとなるようにVに−20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I測定を行った。これをマイナスBT試験と呼ぶ。
【0192】
試料1のプラスBT試験の結果を図10(A)に、マイナスBT試験の結果を図10(B)に示す。また、試料2のプラスBT試験の結果を図11(A)に、マイナスBT試験の結果を図11(B)に示す。
【0193】
試料1のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ1.80Vおよび−0.42Vであった。また、試料2のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ0.79Vおよび0.76Vであった。
試料1および試料2のいずれも、BT試験前後におけるしきい値電圧の変動が小さく、信頼性が高いことがわかる。
【0194】
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、または減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行っても良い。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体膜に注入する方法を適用しても良い。
【0195】
酸化物半導体中及び該酸化物半導体と接する膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体中に酸素を過剰に含ませることにより、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016/cm以上2×1020/cm以下とすれば、結晶に歪み等を与えることなく酸化物半導体中に含ませることができる。
【0196】
また、熱処理によって酸化物半導体に結晶が少なくとも一部に含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体膜を得ることができる。例えば、組成比In:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体膜は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体膜を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
【0197】
実際に、In−Sn−Zn−O膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、Out−of−Plane法で測定した。
【0198】
XRD分析を行った試料として、試料Aおよび試料Bを用意した。以下に試料Aおよび試料Bの作製方法を説明する。
【0199】
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn−O膜を100nmの厚さで成膜した。
【0200】
In−Sn−Zn−O膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、原子数比で、In:Sn:Zn=1:1:1のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
【0201】
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し加熱処理を650℃の温度で行った。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の加熱処理を行っている。このようにして作製した試料を試料Bとした。
【0202】
図12に試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍および37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
【0203】
このように、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は成膜時に意図的に加熱すること及び/又は成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
【0204】
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体にとって悪性の不純物である水素や水酸基を膜中に含ませないようにすること、或いは膜中から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体中でドナー不純物となる水素を除去することで高純度化を図ることができ、それによってトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることができ、酸化物半導体が高純度化されることによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
【0205】
具体的には、図13に示すように、基板温度が125℃の場合には1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、85℃の場合には100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、室温(27℃)の場合には1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。好ましくは、125℃において0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下に、85℃において10zA/μm(1×10−20A/μm)以下に、室温において0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下にすることができる。
【0206】
もっとも、酸化物半導体膜の成膜時に水素や水分が膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタガスは水分が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素や水分などの不純物が含まれていていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は熱処理によって膜中の水分を除去することができるが、In、Ga、Znを主成分とする酸化物半導体と比べて水分の放出温度が高いため、好ましくは最初から水分の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
【0207】
また、酸化物半導体膜成膜後に650℃の加熱処理を行った試料Bを用いたトランジスタにおいて、基板温度と電気的特性の関係について評価した。
【0208】
測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μm、Lovが片側3μm(合計6μm)、dWが0μmである。なお、Vは10Vとした。なお、基板温度は−40℃、−25℃、25℃、75℃、125℃および150℃で行った。ここで、トランジスタにおいて、ゲート電極と一対の電極との重畳する幅をLovと呼び、酸化物半導体膜に対する一対の電極のはみ出しをdWと呼ぶ。
【0209】
図14(A)に基板温度としきい値電圧の関係を、図14(B)に基板温度と電界効果移動度の関係を示す。
【0210】
図14(A)より、基板温度が高いほどしきい値電圧は低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で1.09V〜−0.23Vであった。
【0211】
また、図14(B)より、基板温度が高いほど電界効果移動度が低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で36cm/Vs〜32cm/Vsであった。従って、上述の温度範囲において電気的特性の変動が小さいことがわかる。
【0212】
上記のようなIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm/Vsec以上、好ましくは40cm/Vsec以上、より好ましくは60cm/Vsec以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。
【0213】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0214】
実施の形態において説明した表示装置の駆動方法は、様々な電子機器に設けられた表示装置において採用することができる。
【0215】
例えば、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)等に設けられた表示装置において、実施の形態において説明した表示装置の駆動方法を採用することができる。
【0216】
こうして、表示画面の表示品質を損なうことなく、消費電力を低減した電子機器を提供することが可能である。
【0217】
本実施例は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0218】
11 トランジスタ
12 容量素子
100 画素
200 負荷素子
201 スイッチ
202 スイッチ
203 スイッチ
204 スイッチ
205 スイッチ
800 基板
801 導電層
802 ゲート絶縁膜
803 半導体層
804 導電層
805 導電層
806 導電層
807 半導体層
808 導電層
809 導電層
810 導電層
823 絶縁膜
824 絶縁膜
825 導電層
827 絶縁層
828 電界発光層
829 導電層
2200 EL素子
2202 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタの閾値電圧を容量素子に保持する第1の動作と、
前記容量素子による容量結合を用いることによって、映像信号に対応する信号電位に前記閾値電圧を加算した電位を前記トランジスタのゲートに入力し、前記トランジスタのドレイン電流を負荷素子に流す第2の動作と、を行い、
前記第1の動作は複数フレームに1回行うことを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項2】
トランジスタの閾値電圧を容量素子に保持する第1の動作と、
映像信号に対応する信号電位を前記容量素子の一対の電極のうちに一方に入力し、前記容量素子の一対の電極のうちの他方の電位を前記トランジスタのゲートに入力し、前記トランジスタのドレイン電流を負荷素子に流す第2の動作と、を行い、
前記第1の動作は複数フレームに1回行うことを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記容量素子と電源電位が入力される配線との電気的接続を選択するスイッチを有し、
前記スイッチはチャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いて構成されることを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記容量素子と第1の電源電位が入力される第1の配線との電気的接続を選択する第1のスイッチと、前記容量素子と前記第1の電源電位とは異なる第2の電源電位が入力される第2の配線との電気的接続を選択する第2のスイッチと、を有し、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチはチャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いて構成されることを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記第1の動作は10フレーム以上に1回行うことを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記第1の動作を行う頻度は前記第2の動作を行う頻度よりも低いことを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記負荷素子は、流れる電流値によって輝度が制御される電気光学素子であることを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記負荷素子は、エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252326(P2012−252326A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105116(P2012−105116)
【出願日】平成24年5月2日(2012.5.2)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】