説明

表示装置及び表示パネルの駆動方法

【課題】 選択セルと表示セルとを分離したセル構造を有するプラズマ表示パネルを用いて、消灯状態に設定されるべき画素セルの誤放電を防止することができる表示装置及びその表示パネルの駆動方法を提供する。
【解決手段】 アドレス期間において表示パネルの行電極対の一方の行電極に走査パルスを順次印加しつつ走査パルスと同時に画素データに対応した画素データパルスを1表示ラインずつ列電極各々に順次印加して選択セル内にアドレス放電を生起せしめるアドレス手段と、サスティン期間において行電極対を構成する行電極各々に走査パルスとは逆極性のサスティンパルスを印加するサスティン手段と、アドレス期間の終了後でかつサスティン期間の開始前において、行電極対の一方の行電極と列電極間に補助パルスを印加して選択セル内で選択放電とは逆極性の補助放電を生起せしめる補助放電手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルを搭載した表示装置及びその表示パネルを駆動する駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型で薄型のカラー表示パネルとして面放電方式交流型プラズマディスプレイパネルを搭載したプラズマディスプレイ装置が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−205642号公報 面放電方式交流型プラズマディスプレイパネルとして、各画素を担う画素セルが選択セルと表示セルとから構成されるパネルが知られている(例えば、特許文献2又は特許文献3参照)。そのパネルにおいては、放電空間を挟んで対向配置された前面基板及び背面基板と、その前面基板の内面に設けられている複数の行電極対と、背面基板の内面において行電極対に交差して配列された複数の列電極とが備えられ、行電極対及び列電極の各交差部に表示セルと、基板側に光吸収層が設けられておりかつ背面基板側に光吸収層が設けられた選択セルとからなる画素セルが形成されている。表示セルは、行電極対を構成する一方の行電極と他方の行電極とがその放電空間内で対向しており、選択セルは、列電極と行電極対の一方の行電極とがその放電空間内で対向している。プラズマディスプレイパネルを駆動する場合には、各画素セルの状態を点灯及び消灯のいずれか一方に決定する動作を行うためのアドレス期間と点灯のための放電を維持するサスティン期間とが少なくともあり、点灯状態となるべき画素セルの選択セルではアドレス期間において行電極対の一方と行電極との間で放電(選択放電)が行われ、その画素セルの表示セルではサスティン期間において行電極対間で放電が行われ、これが点灯状態が維持される。一方、消灯状態となるべき画素セルの選択セルではアドレス期間において行電極対の一方と行電極との間で消去放電が行われ、その画素セルの表示セルではサスティン期間において行電極対間で放電が生じることはなく、消灯状態が維持される。
【特許文献2】特開2003−31130号公報
【特許文献3】特開2003−086108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、選択セルと表示セルとを分離したセル構造の表示パネルにおいては、選択セルに生じた選択放電を表示セルに引き込み、表示セルを点灯状態又は消灯状態に設定するためには、比較的高電圧のパルスを行電極の一方(走査電極)と列電極間とに印加する必要がある。しかしながら、アドレス期間直前の選択セル内の壁電荷分布状態によっては、サスティン期間において消灯状態に設定されるべき画素セルの選択セル内において誤放電が生じて、その誤放電によって更に表示セル内の行電極対間でサスティン(維持)放電を生じさせて点灯状態となる可能性があった。
【0004】
本発明が解決しようとする課題には、上記の問題点が一例として挙げられ、選択セルと表示セルとを分離したセル構造を有する表示パネルを用いて、消灯状態に設定されるべき画素セルの誤放電を防止することができる表示装置及びその表示パネルの駆動方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明の表示装置は、入力映像信号に基づく各画素毎の画素データに応じて、1フィールドの表示期間をアドレス期間とサスティン期間とを有する複数のサブフィールドで構成して画像表示を行う表示装置であって、放電空間を挟んで対向配置された前面基板及び背面基板と、前記前面基板の内面に設けられた複数の行電極対と、前記背面基板の内面に前記行電極対に交差して配列された複数の列電極とを有し、前記行電極対と前記列電極との各交差部に、表示セルと、前面基板側に光吸収層が設けられかつ背面基板側に2次電子放出層が設けられた選択セルとからなる単位発光領域が形成されてなる表示パネルと、前記アドレス期間において、前記行電極対の一方の行電極に走査パルスを順次印加しつつ前記走査パルスと同時に前記画素データに対応した画素データパルスを1表示ラインずつ前記列電極各々に順次印加して前記選択セル内にアドレス放電を生起せしめるアドレス手段と、前記サスティン期間において、前記行電極対を構成する行電極各々に前記走査パルスとは逆極性のサスティンパルスを印加するサスティン手段と、前記アドレス期間の終了後でかつ前記サスティン期間の開始前において、前記行電極対の一方の行電極と前記列電極間に補助パルスを印加して前記選択セル内で前記選択放電とは逆極性の補助放電を生起せしめる補助放電手段と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
請求項5に係る発明の表示パネルの駆動方法は、放電空間を挟んで対向配置された前面基板及び背面基板と、前記前面基板の内面に設けられた複数の行電極対と、前記背面基板の内面に前記行電極対に交差して配列された複数の列電極とを有し、前記行電極対と前記列電極との各交差部に、表示セルと、前面基板側に光吸収層が設けられかつ背面基板側に2次電子放出層が設けられた選択セルとからなる単位発光領域が形成されてなる表示パネルを入力映像信号に基づく各画素毎の画素データに応じて駆動して画像表示を行う駆動方法であって、前記入力映像信号についての1フィールドの表示期間をアドレス期間とサスティン期間とを有する複数のサブフィールドで構成し、前記アドレス期間において、前記行電極対の一方の行電極に走査パルスを順次印加しつつ前記走査パルスと同時に前記画素データに対応した画素データパルスを1表示ラインずつ前記列電極各々に順次印加して前記選択セル内にアドレス放電を生起せしめ、前記サスティン期間において、前記行電極対を構成する行電極各々に前記走査パルスとは逆極性のサスティンパルスを印加し、前記アドレス期間の終了後でかつ前記サスティン期間の開始前において、前記行電極対の一方の行電極と前記列電極間に補助パルスを印加して前記選択セル内で前記選択放電とは逆極性の補助放電を生起せしめることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明による表示装置としてのプラズマディスプレイ装置の構成を示す図である。
【0008】
図1に示すように、かかるプラズマディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネルとしてのPDP50、X電極ドライバ51、Y電極ドライバ53、アドレスドライバ55、及び駆動制御回路56から構成される。
【0009】
PDP50には、表示画面における垂直方向に各々伸張している帯状の列電極D1〜Dmが形成されている。更に、PDP50には、表示画面における水平方向に各々伸張している行電極X1〜Xn及び行電極Y1〜Ynが、図1に示すように交互にかつ番号順に配列して形成されている。一対の行電極、つまり行電極対(X1、Y1)〜行電極対(Xn、Yn)の各々がPDP50における第1表示ライン〜第n表示ラインを担う。各表示ラインと列電極D1〜Dm各々との各交差部(図1中の一点鎖線にて囲まれた領域)に、画素を担う画素セル(単位発光領域)PCが形成されている。すなわち、PDP50には、第1表示ラインに属する画素セルPC1、1〜PC1、m、第2表示ラインに属する画素セルPC2、1〜PC2、m、・・・・、第n表示ラインに属する画素セルPCn、1〜PCnmがマトリクス状に配列されているのである。
【0010】
図2〜図5は、PDP50の内部構造の一部を抜粋して示す図である。
【0011】
なお、図2は表示面側から眺めたPDP50の平面図である。図3は図2に示されるV1−V1線から眺めたPDP50の断面図である。図4は図2に示されるV2−V2線から眺めたPDP50の断面図である。図5は図2に示されるW1−W1線から眺めたPDP50の断面図である。
【0012】
図2に示すように、行電極Yは、表示画面の水平方向に伸長する帯状のバス電極Yb(行電極Yの本体部)と、バス電極Ybに接続された複数の透明電極Yaとから構成される。バス電極Ybは例えば黒色の金属膜からなる。透明電極YaはITO等の透明導電膜からなり、バス電極Yb上における各列電極Dに対応した位置に各々配置されている。透明電極Yaは、バス電極Ybとは直交する方向に伸張しており、その一端及び他端が各々図2に示す如く幅広な形状になっている。すなわち、透明電極Yaは、行電極Yの本体部から突起した突起電極と捉えることができる。また、行電極Xは、表示画面の水平方向に伸長する帯状のバス電極Xb(行電極Xの本体部)と、バス電極Xbに接続された複数の透明電極Xaとから構成される。バス電極Xbは例えば黒色の金属膜からなる。透明電極XaはITO等の透明導電膜からなり、バス電極Xb上における各列電極Dに対応した位置に各々配置されている。透明電極Xaは、バス電極Xbとは直交する方向に伸張しており、その一端が図2に示す如く幅広な形状になっている。すなわち、透明電極Xaは、行電極Xの本体部から突起した突起電極と捉えることができる。透明電極Xa及びYa各々の幅広部が、図2に示す如く互いに所定幅の放電ギャップgを介して対向して配置されている。つまり、対を為す行電極X及びY各々の本体部から突起した突起電極としての透明電極Xa及びYaが互いに放電ギャップgを介して対向して配置されているのである。
【0013】
透明電極Ya及びバス電極Ybからなる行電極Yと、透明電極Xa及びバス電極Xbからなる行電極Xとは、図3に示す如く、PDP50の表示面を担う前面透明基板10の裏面に形成されている。更に、これら行電極X及びYを被覆すべく、前面透明基板10の裏面には誘電体層11が形成されている。誘電体層11の表面における選択セルC2(後述する)各々に対応した位置には、誘電体層11から背面側に向かって突出した嵩上げ誘電体層12が形成されている。嵩上げ誘電体層12は、黒色または暗色の顔料を含んだ帯状の光吸収層からなり、図2に示す如く表示面の水平方向に伸張して形成されている。嵩上げ誘電体層12の表面及び嵩上げ誘電体層12が形成されていない誘電体層11の表面は、MgO(酸化マグネシウム)からなる保護層(図示せず)によって被覆されている。前面透明基板10に対して平行配置された背面基板13上には、各々バス電極Xb及びYbと直交する方向(垂直方向)に伸張している複数の列電極Dが互いに所定の間隙を開けて平行に配列されている。背面基板13には、列電極Dを被覆する白色の列電極保護層(誘電体層)14が形成されている。列電極保護層14上には、第1横壁15A、第2横壁15B及び縦壁15Cからなる隔壁15が形成されている。第1横壁15Aは、バス電極Xbと対向した列電極保護層14上の位置において表示面の水平方向に伸張して形成されている。第2横壁15Bは、バス電極Ybと対向した列電極保護層14上の位置において表示面の水平方向に伸張して形成されている。縦壁15Cは、バス電極Xb(Yb)上において等間隙に配置された透明電極Xa(Ya)各々の間の位置において各々、バス電極Xb(Yb)とは直交する方向に伸張して形成されている。
【0014】
また、図3に示すように、列電極保護層14上における嵩上げ誘電体層12に対向した領域(縦壁15C、第1横壁15A及び第2横壁15B各々の側面を含む)には2次電子放出材料層30が形成されている。2次電子放出材料層30は、仕事関数が低い(例えば4.2eV以下)、いわゆる2次電子放出係数の高い高γ材料からなる層である。2次電子放出材料層30として用いる材料としては、例えばMgO、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物、Cs2O等のアルカリ金属酸化物、CaF2、MgF2等のフッ化物、TiO2、Y23、あるいは、結晶欠陥や不純物ドープにより2次電子放出係数を高めた材料、ダイアモンド状薄膜、カーボンナノチューブ等がある。一方、列電極保護層14上における嵩上げ誘電体層12に対向した領域以外の領域(縦壁15C、第1横壁15A及び第2横壁15B各々の側面を含む)には、図3に示す如く蛍光体層16が形成されている。蛍光体層16としては、赤色で発光する赤色蛍光層、緑色で発光する緑色蛍光層、及び青色で発光する青色蛍光層の3系統があり、各画素セルPC毎にその割り当てが決まっている。2次電子放出材料層30及び蛍光体層16と、誘電体層11との間には放電ガスが封入された放電空間が存在する。第1横壁15A、第2横壁15B及び縦壁15C各々の高さは図3及び図5に示すように、嵩上げ誘電体層12又は誘電体層11の表面に到達するほど高くはない。従って、図3に示す如く第2横壁15Bと嵩上げ誘電体層12との間には、放電ガスの流通が可能な間隙rが存在する。第1横壁15A及び嵩上げ誘電体層12間には、放電の干渉を防ぐべく第1横壁15Aに沿った方向に伸張した誘電体層17が形成されている。また、縦壁15C及び嵩上げ誘電体層12間には、図4に示すように縦壁15Cに沿った方向に断続的に誘電体層18が形成されている。
【0015】
ここで、第1横壁15A及び縦壁15Cによって囲まれた領域(図2中の一点鎖線にて囲まれた領域)が画素を担う画素セルPCとなる。更に、図2及び図3に示す如く画素セルPCは、第2横壁15Bによって表示セルC1(第1放電セル)及び選択セルC2(第2放電セル)に区分けされている。表示セルC1は、図2及び図3に示されるように、表示ラインを担う一対の行電極X及びYと、蛍光体層16とを含む。一方、選択セルC2は、その表示ラインを担う一対の行電極の内の行電極Yと、この表示ラインの表示面上方に隣接する表示ラインを担う一対の行電極の内の行電極Xと、嵩上げ誘電体層12と、2次電子放出材料層30とを含む。なお、表示セルC1内では、図2に示すように、行電極Xの透明電極Xaの一端に形成されている幅広部と、行電極Yの透明電極Yaの一端に形成されている幅広部とが放電ギャップgを介して互いに対向して配置されている。一方、選択セルC2内においては、この透明電極Yaの他端に形成されている幅広部が含まれるが、透明電極Xは含まれていない。
【0016】
また、図3に示す如く、表示面の上下方向(図3では左右方向)において互いに隣接する画素セルPC各々の放電空間は、第1横壁15A及び誘電体層17によって遮断されている。ところが、同一の画素セルPCに属する表示セルC1及び選択セルC2各々の放電空間は、図3に示す如き間隙rにて連通している。更に、表示面の左右方向において互いに隣接する選択セルC2各々の放電空間は、図4に示す如き嵩上げ誘電体層12及び誘電体層18によって遮断されているが、表示面の左右方向において互いに隣接する表示セルC1各々の放電空間は互いに連通している。
【0017】
このように、PDP50に形成されている画素セルPC1、1〜PCnmの各々は、互いにその放電空間が連通している表示セルC1及び選択セルC2から構成されている。
【0018】
X電極ドライバ51は、駆動制御回路56から供給されたタイミング信号に応じて、PDP50の行電極X1,X2,X3,X4,X5,・・・・,Xn-1及びXn各々に、各種駆動パルスを印加する。電極ドライバ53は、駆動制御回路56から供給されたタイミング信号に応じて、PDP50の行電極Y1,Y2,Y3,Y4,Y5,・・・・,Yn-1及びYn各々に各種駆動パルスを印加する。アドレスドライバ55は、駆動制御回路56から供給されたタイミング信号に応じて、PDP50の列電極D1〜Dmに画素データパルスを印加する。
【0019】
駆動制御回路56は、先ず、入力映像信号を各画素毎に輝度レベルを表す例えば8ビットの画素データに変換し、この画素データに対して如き誤差拡散処理及びディザ処理を施す。例えば、当該誤差拡散処理では、先ず、画素データの上位6ビット分を表示データ、残りの下位2ビット分を誤差データとする。そして、周辺画素各々に対応した当該画素データの各誤差データを重み付け加算したものを、上記表示データに反映させる。かかる動作により、原画素における下位2ビット分の輝度が上記周辺画素によって擬似的に表現され、それ故に8ビットよりも少ない6ビット分の表示データにて、8ビット分の画素データと同等の輝度階調表現が可能になる。そして、この誤差拡散処理によって得られた6ビットの誤差拡散処理画素データに対してディザ処理を施す。ディザ処理では、互いに隣接する複数の画素を1画素群として処理し、この1画素群内の各画素に対応した誤差拡散処理画素データに各々、互いに異なる係数値からなるディザ係数を各々割り当てて加算してディザ加算画素データを得る。かかるディザ係数の加算によれば、各画素群では、ディザ加算画素データの上位4ビット分だけでも8ビットに相当する輝度を表現することが可能となる。
【0020】
駆動制御回路56は、これら誤差拡散処理及びディザ処理により8ビットの画素データを4ビットの多階調化画素データPDSに変換し、更に、この多階調化画素データPDSを図6に示す如きデータ変換テーブルに従って15ビットの画素駆動データGDに変換する。これにより、8ビットで256階調を表現し得る画素データは、全部で16パターンからなる15ビットの画素駆動データGDに変換される。次に、駆動制御回路56は、1画面分の画素駆動データGD1,1〜GDn,m毎に、これら画素駆動データGD1,1〜GDn,m各々を同一ビット桁同士にて分離することにより、画素駆動データビット群DB1〜DB15を得る。駆動制御回路56は、サブフィールドSF1〜SF15毎に、そのサブフィールドに対応した画素駆動データビット群DBにおけるデータビットを1表示ライン分(m個)ずつアドレスドライバ55に供給する。
【0021】
図7は、選択消去アドレス法を適用してPDP50を階調駆動する際の発光駆動シーケンスを示す図である。
【0022】
図7に示す発光駆動シーケンスでは、映像信号における各フィールドの表示期間を15個のサブフィールドSF1〜SF15に分割し、各サブフィールドにおいてアドレス行程W、及びサスティン行程Iを実行する。複数のサブフィールドのうちの先頭のサブフィールドSF1ではアドレス行程Wに先立ち一斉リセット行程Rを実行し、最後尾のサブフィールドSF15ではサスティン行程Iの直後に消去行程Eを実行する。更に、アドレス行程Wにおいて消去アドレス放電が生じた画素セルについてはサスティン行程Iの開始前に補助放電行程ADが設けられている。なお、アドレス行程Wが実行される期間がアドレス期間であり、サスティン行程Iが実行される期間がサスティン期間である。
【0023】
先ず、サブフィールドSF1の一斉リセット行程Rでは、Y電極ドライバ53が、後述するサスティンパルスに比して下がり変化の緩やかなリセットパルスRPYを発生してPDP50の行電極Y1〜Ynの各々に同時に印加する。また、かかるリセットパルスRPYと同一タイミングにて、X電極ドライバ51が、リセットパルスRPXを発生してPDP50の行電極X1〜Xnの各々に同時に印加する。この間、アドレスドライバ55は、リセットパルスRPDを発生してPDP50の列電極D1〜Dmの各々に同時に印加する。これらリセットパルスRPD、RPY及びRPXの印加に応じて、PDP50の全ての画素セルPC各々の選択セルC2内の列電極D及び行電極Y間においてリセット放電(書込放電)が生起され、この選択セルC2内に壁電荷が形成される。そして、リセット放電が図3に示した間隙rを介して表示セルC1側に移行し、表示セルC1内の行電極Y及びX間において放電を生起させる。かかる放電移行により、全ての画像セルPCの表示セルC1内には壁電荷が形成される。
【0024】
上記した如く、選択消去アドレス法に基づく一斉リセット行程Rでは、PDP50の全ての画素セルPCの表示セルC1内に壁電荷が形成され、これら画素セルPCは全て点灯セルモードに初期化される。
【0025】
次に、サブフィールドSF1〜SF15各々のアドレス行程Wでは、Y電極ドライバ53が負極性の電圧V1を全ての行電極Y1〜Ynに印加しつつ、正極性の電圧V2(V2>V1)を有する走査パルスSPを行電極Y2〜Yn各々に順次印加して行く。この間、X電極ドライバ51は、行電極X1〜Xn各々を0Vにさせる。アドレスドライバ55は、このサブフィールドSF1に対応した画素駆動データビット群DB1における各データビットをその論理レベルに応じたパルス電圧を有する画素データパルスDPに変換する。例えば、アドレスドライバ55は、論理レベル0の画素駆動データビットを正極性の高電圧の画素データパルスDPに変換する一方、論理レベル1の画素駆動データビットを低電圧(0ボルト)の画素データパルスDPに変換する。そして、かかる画素データパルスDPを走査パルスSPの印加タイミングに同期して1表示ライン分(m個)ずつ列電極D1〜Dmに印加して行く。つまり、アドレスドライバ55は、先ず、第1表示ラインに対応したm個の画素データパルスDPからなる画素データパルス群DP1を列電極D1〜Dmに印加し、次に、第2表示ラインに対応したm個の画素データパルスDPからなる画素データパルス群DP2を列電極D1〜Dmに印加して行くのである。正極性の電圧V2を有する走査パルスSPと低電圧(0ボルト)の画素データパルスDPとが同時に印加された画素セルPCの選択セルC2内の列電極D及び行電極Y間において消去アドレス放電が生起される。そして、消去アドレス放電に伴いその放電が図3に示した間隙rを介して表示セルC1側に移行し、表示セルC1内の行電極Y及びX間で放電が生起される。上述した如き選択セルC2から表示セルC1への放電移行により、表示セルC1内に形成されていた壁電荷が消滅する。一方、走査パルスSPが印加されたものの高電圧の画素データパルスDPが印加された画素セルPCの選択セルC2内では上記の如き消去アドレス放電は生起されない。よって、上述した如き選択セルC2から表示セルC1への放電移行も生じないので、表示セルC1内の壁電荷の形成状態も現状を維持する。つまり、表示セルC1内に壁電荷が存在する場合にはこれがそのまま残留し、存在しない場合には壁電荷のこの壁電荷の非形成状態が維持される。
【0026】
このように、選択消去アドレス法に基づくアドレス行程Wでは、サブフィールドに対応した画素駆動データビット群の各データビットに応じて選択的に画素セルPC各々の選択セルC2内に消去アドレス放電を生起させて壁電荷を消去させる。これにより、壁電荷の残留する画素セルPCを点灯セルモード、壁電荷が消去された画素セルPCを消灯セルモードに設定するのである。
【0027】
次に、サブフィールドSF1〜SF15各々のサスティン行程Iでは、X電極ドライバ51及びY電極ドライバ53各々が、行電極X1〜Xn及びY1〜Ynに対して交互にサスティンパルスIPX及びIPYを印加する。サスティンパルスIPの印加回数は、各サブフィールドSF1〜SF15毎に輝度重み付けに対応した回数となっている。サスティンパルスIPX及びIPYの印加によりサスティン放電が生じ、この放電に伴う発光状態を維持させる。
【0028】
各サブフィールド内のアドレス行程Wにおいて点灯セルに設定された画素セルのみが、その直後のサスティン行程Iにて発光を繰り返す。この際、1フィールド内での各サブフィールドSF1〜SF15において実施された発光の総数によって中間調の輝度が表現される。
【0029】
サブフィールドSF15の消去行程Eでは、アドレスドライバ55が消去パルスEP1を発生してこれを列電極D1〜Dmに印加する。更に、第2サスティンドライバ8は、かかる消去パルスEP1の印加タイミングと同時に消去パルスEP1と逆極性の消去パルスEP2を発生してこれを行電極Y1〜Yn各々に印加する。これら消去パルスEP1及びEP2の同時印加により、PDP50における全画素セルPCの選択セルC2内において消去放電が生起され、全ての画素セル内に残存している壁電荷が消滅する。すなわち、かかる消去放電により、PDP50における全ての画素セルが消灯セルになるのである。
【0030】
消灯セルモードに設定された画素セルPCについては、補助放電行程ADが実行される。補助放電行程ADでは、列電極Dに正極性の第1補助パルスAP1が印加され、それと同時に行電極Yに負極性の第2補助パルスAP2が印加される。第1補助パルスAP1は方形波形のパルスであり、第2補助パルスAP2は緩やかに降下する波形のパルスである。この第1及び第2補助パルスAP1,AP2の印加によって画素PCの選択セルC2内の列電極D及び行電極Y間において弱い放電が生じる。
【0031】
図8は、サブフィールドSFi(iは2〜15のうちのいずれか)のアドレス行程Wにおいて画素セルPCの選択セルC2内の列電極D及び行電極Y間において消去アドレス放電が生起された後に補助放電行程ADにおける第1及び第2補助パルスが印加される場合の各パルス及び壁電荷分布状態を示している。サブフィールドSFiの前のサブフィールドSFi−1のサスティン行程Iにおいてる行電極X,Y間でサスティン放電が生じた後、サブフィールドSFiの開始時点における壁電荷分布状態としては、選択セルC2内の列電極D上には負極性の壁電荷−、行電極Y上には正極性の壁電荷+が形成される。表示セルC1内の行電極X上には負極性の壁電荷−、行電極Y上には正極性の壁電荷+が形成される。なお、図8においては壁電荷−は−を有する○マークで示され、壁電荷+は+を有する○マークで示されている。サブフィールドSFiのアドレス行程Wにおいて低電圧の画素データパルスDPが列電極Dに印加され、走査パルスSPが行電極Yに印加される。これにより、選択セルC2内の列電極D及び行電極Y間において消去アドレス放電が生起される。消去アドレス放電に伴いその放電が図3に示した間隙rを介して表示セルC1側に移行し(図8の矢印A1)、この結果、表示セルC1及び選択セルC2内各々において行電極Y上には負極性の壁電荷−が形成される。表示セルC1の列電極上は正極性の壁電荷+が形成される。表示セルC1の行電極X,Y間の壁電荷による電位が所定値未満となり、画素セルPCは消灯セル状態となる。
【0032】
その後の補助放電行程ADにおいて第1補助パルスAP1が列電極Dに印加され、それと同時に第2補助パルスAP2が行電極Yに印加される。よって、画素PCの選択セルC2内の列電極D及び行電極Y間において弱い放電が生じ、その結果、選択セルC2内の列電極D上には負極性の壁電荷−が形成され、行電極Y上には正極性の壁電荷+が形成される(図8においては○マーク内にハッチングが施されている壁電荷)。すなわち、選択セルC2内の列電極D及び行電極Yの壁電荷の極性が反転する。一方、この時点における表示セルC1内の行電極X及び行電極Yにおける壁電荷に変化はない。従って、サブフィールドSFiのサスティン行程IにおいてサスティンパルスIPX及びIPYの印加によっても行電極X,Y間でサスティン放電は生じることはなく、選択セルC2内では誤放電は生じない。
【0033】
図9は、サブフィールドSFiのアドレス行程Wにおいて画素セルPCの選択セルC2内の列電極D及び行電極Y間において消去アドレス放電が生起された後に上記の第1及び第2補助パルスが印加されない場合の壁電荷分布状態を示している。サブフィールドSFiのアドレス行程Wの終了時点までのパルス印加及び壁電荷分布状態は図8に示したものと同一である。図9の場合には、アドレス行程Wの終了後、直ちにサスティン行程に移行し、サブフィールドSFiのサスティン行程Iにおいて行電極Yに印加されるサスティンパルスIPYによって画素PCの選択セルC2内の列電極D及び行電極Y間において図9に示したように誤放電が生じる可能性がある。誤放電が生じると、その誤放電が図3に示した間隙rを介して表示セルC1側に移行し(図9の矢印A2)、その結果として表示セルC1内の行電極Yには正極性の壁電荷+が形成される。よって、点灯セルとして書込が行われた状態と同じになり、その後、交互に発生するサスティンパルスIPX及びIPYによってサスティン放電が繰り返される。
【0034】
これに対し、上記した実施例においては、補助放電行程ADにおいて第1及び第2補助パルスの印加によって選択セルC2内の列電極D及び行電極Yの壁電荷の極性が反転して列電極D上には負極性の壁電荷−が形成され、行電極Y上には正極性の壁電荷+が形成される。よって、サスティン行程IにおいてサスティンパルスIPYの印加によって選択セルC2内の列電極D及び行電極Y間において誤放電が生じることが防止される。
【0035】
なお、上記した実施例では、補助放電行程ADにおいて列電極Dに第1補助パルスAP1を印加し、行電極Yに第2補助パルスAP2を印加して選択セルC2内で弱い補助放電を生じせしめる構成を示したが、補助放電行程ADにおいて第1補助パルスAP1の印加を省略し、行電極Yにのみ第2補助パルスAP2を印加して選択セルC2内で行電極Yと列電極Dとの間に弱い補助放電を生じせしめるように構成しても良い。
【0036】
また、上記した実施例において用いたフィールド及びサブフィールドという単位はNTSC方式等のインターレース方式の映像信号を考慮した場合であって、ノンイーターレース方式の映像信号ではフレーム(画面)及びフレームの表示期間の分割期間であるサブフレームに該当する。
【0037】
以上のように、本発明によれば、アドレス期間において表示パネルの行電極対の一方の行電極に走査パルスを順次印加しつつ走査パルスと同時に画素データに対応した画素データパルスを1表示ラインずつ列電極各々に順次印加して選択セル内にアドレス放電を生起せしめるアドレス手段と、サスティン期間において行電極対を構成する行電極各々に走査パルスとは逆極性のサスティンパルスを印加するサスティン手段と、アドレス期間の終了後でかつサスティン期間の開始前において、行電極対の一方の行電極と列電極間に補助パルスを印加して選択セル内で選択放電とは逆極性の補助放電を生起せしめる補助放電手段と、を備えているので、選択セルと表示セルとを分離したセル構造を有する表示パネルを用いて消灯状態に設定されるべき画素セルの誤放電を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用したプラズマディスプレイ装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1の装置中のPDPの構造の一部を表示面側から眺めた平面図である。
【図3】図2に示されるV1−V1線上でのPDPの断面を示す図である。
【図4】図2に示されるV2−V2線上でのPDPの断面を示す図である。
【図5】図2に示されるW1−W1線上でのPDPの断面を示す図である。
【図6】選択消去アドレス法における画素データ変換テーブルと、この画素データ変換テーブルによって得られた画素駆動データGDに基づく発光駆動パターンを示す図である。
【図7】選択消去アドレス法による駆動時における発光駆動シーケンスの一例を示す図である。
【図8】消去アドレス放電が生起された後、補助放電行程に第1及び第2補助パルスが印加される場合の各パルス及び壁電荷分布状態を示している。
【図9】消去アドレス放電が生起された後、第1及び第2補助パルスが印加されない場合の各パルス及び壁電荷分布状態を示している。
【符号の説明】
【0039】
50 PDP
51 X電極ドライバ
53 Y電極ドライバ
55 アドレスドライバ
56 駆動制御回路
C1 表示セル
C2 選択セル
PC 画素セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力映像信号に基づく各画素毎の画素データに応じて、1フィールドの表示期間をアドレス期間とサスティン期間とを有する複数のサブフィールドで構成して画像表示を行う表示装置であって、
放電空間を挟んで対向配置された前面基板及び背面基板と、前記前面基板の内面に設けられた複数の行電極対と、前記背面基板の内面に前記行電極対に交差して配列された複数の列電極とを有し、前記行電極対と前記列電極との各交差部に、表示セルと、前面基板側に光吸収層が設けられかつ背面基板側に2次電子放出層が設けられた選択セルとからなる単位発光領域が形成されてなる表示パネルと、
前記アドレス期間において、前記行電極対の一方の行電極に走査パルスを順次印加しつつ前記走査パルスと同時に前記画素データに対応した画素データパルスを1表示ラインずつ前記列電極各々に順次印加して前記選択セル内にアドレス放電を生起せしめるアドレス手段と、
前記サスティン期間において、前記行電極対を構成する行電極各々に前記走査パルスとは逆極性のサスティンパルスを印加するサスティン手段と、
前記アドレス期間の終了後でかつ前記サスティン期間の開始前において、前記行電極対の一方の行電極と前記列電極間に補助パルスを印加して前記選択セル内で前記選択放電とは逆極性の補助放電を生起せしめる補助放電手段と、を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記走査パルスは正極性のパルスであり、前記画素データパルスは走査パルスに対して負極性となるパルスであることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記補助パルスは、前記列電極に印加される第1極性の第1補助パルスと、前記第1補助パルスと同時に前記前記行電極対の一方の行電極に印加される緩やかに降下する波形の第2極性の第2補助パルスからなることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記補助放電により、前記選択放電内における前記列電極上及び前記行電極対の一方の行電極上の壁電荷の極性を反転させることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
放電空間を挟んで対向配置された前面基板及び背面基板と、前記前面基板の内面に設けられた複数の行電極対と、前記背面基板の内面に前記行電極対に交差して配列された複数の列電極とを有し、前記行電極対と前記列電極との各交差部に、表示セルと、前面基板側に光吸収層が設けられかつ背面基板側に2次電子放出層が設けられた選択セルとからなる単位発光領域が形成されてなる表示パネルを入力映像信号に基づく各画素毎の画素データに応じて駆動して画像表示を行う駆動方法であって、
前記入力映像信号についての1フィールドの表示期間をアドレス期間とサスティン期間とを有する複数のサブフィールドで構成し、
前記アドレス期間において、前記行電極対の一方の行電極に走査パルスを順次印加しつつ前記走査パルスと同時に前記画素データに対応した画素データパルスを1表示ラインずつ前記列電極各々に順次印加して前記選択セル内にアドレス放電を生起せしめ、
前記サスティン期間において、前記行電極対を構成する行電極各々に前記走査パルスとは逆極性のサスティンパルスを印加し、
前記アドレス期間の終了後でかつ前記サスティン期間の開始前において、前記行電極対の一方の行電極と前記列電極間に補助パルスを印加して前記選択セル内で前記選択放電とは逆極性の補助放電を生起せしめることを特徴とする駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−3792(P2006−3792A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182401(P2004−182401)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】