説明

表示装置及び表示装置の駆動方法

【課題】各画素に表示素子を備える表示装置において残像現象を改善する。
【解決手段】各行の画素に設けられた表示素子に対し、素子駆動トランジスタが、電源PVDDから供給する電力量を制御する。保持容量は素子駆動トランジスタのゲート電極に第1電極が、容量ライン12に第2電極が接続されている。容量ライン12に出力する容量制御信号SCnの電圧レベルを周期的に保持容量Csを介して素子駆動トランジスタをオフ制御する電圧レベルとする。パネルの表示部周辺に形成されたVドライバ220は、Vスタート信号STVのHレベル期間に応じて、素子駆動トランジスタのオフ制御期間が決まるよう、STVに応じた信号を順次転送出力する各レジスタの出力を利用して容量制御信号SCnを作成する作成部を有する。この容量制御信号の電圧レベルにより、行毎に、STVに応じた期間素子駆動トランジスタがオフ制御され、残像を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各画素の表示素子として、例えば有機EL素子などを用いた表示装置の残像制御に関する。
【背景技術】
【0002】
各画素の表示素子として、電流駆動型の発光素子である有機EL素子を用いた表示装置が知られており、特に各画素に設けられた有機EL素子を画素毎に個別に駆動するためのトランジスタ(薄膜トランジスタ:TFT)を各画素に備えるいわゆるアクティブマトリクス型表示装置の開発が進んでいる。
【0003】
このようなアクティブマトリクス型表示装置において、水平走査方向(行方向)にゲートラインGL、垂直走査方向(列方向)はデータラインDLおよび電源ラインPLが設けられ、これらによって画素が定義される。各画素の等価回路としては、図9に示すようなものが知られており、各画素は、nチャネル型TFTからなる選択トランジスタTs、保持容量Cs、pチャネルの素子駆動トランジスタTd、有機EL素子ELを有する。選択トランジスタTsは、そのドレインが垂直走査方向に並んだ各画素に対してデータ電圧を供給するデータラインDLに接続され、そのゲートは水平走査方向に並んだ画素を選択するゲートラインGL接続され、そのソースは、素子駆動トランジスタTdのゲートに接続されている。
【0004】
また、素子駆動トランジスタTdは、pチャネル型TFTであり、そのソースが電源ラインPLに接続され、ソースは有機EL素子ELのアノードに接続されている。なお、この有機EL素子ELのカソードは、各画素共通に形成され、カソード電源CVに接続されている。また、素子駆動トランジスタTdのゲート及び選択トランジスタTsのソースとの間には、保持容量Csの一方の電極が接続され、この保持容量Csの他方の電極は、例えばグランドなどの一定電圧の電源に接続されている。
【0005】
このような回路において、ゲートラインGLがHレベルになると、選択トランジスタTsがオンになりデータラインDLのデータ電圧が、選択トランジスタTsを介して素子駆動トランジスタTdのゲートに供給され、保持容量Csにデータ電圧に応じた電圧が保持される。これによって、素子駆動トランジスタTdがそのゲート電圧(保持容量Csに保持された電圧)に応じた駆動電流を流し、ゲートラインGLがLレベルになっても、保持容量Csに保持された電圧に応じて、素子駆動トランジスタTdは有機EL素子ELに駆動電源PVDDに接続された電源ラインPLからの駆動電流を供給し、有機EL素子ELは、この駆動電流に応じた強度で発光する。
【0006】
なお、本発明に関連する文献としては、下記特許文献1及び特許文献2が挙げられる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−24604号
【特許文献2】特開2003−150127号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記有機EL素子は、電流の供給・停止に対する応答性が非常に良く、本質的には残像が発生し難いにも拘わらず、上述のような画素回路を用いる表示装置において、残像が発生し、表示品質が劣化するという問題がある。これは、pチャネル型の素子駆動トランジスタのヒステリシスに起因していると考えられる。すなわち、素子駆動トランジスタは、保持容量に保持されゲートに供給されるデータ電圧に応じ、電源Pvddからの駆動電流をほぼ1フレーム期間にわたって流し、次のデータ電圧が保持容量Csに書き込まれることで、次のフレーム期間、新たなデータ電圧に応じた駆動電流を流す。このように1フレーム期間中素子駆動トランジスタTdは、同一の電流を流し続けるため、その状態が記憶され、次のデータ電圧が供給された場合にも、前に書き込まれたデータ電圧の影響が残ってしまう。この現象は、データ電圧が中間レベルの場合に顕著となり、また、データ電圧の変化の大きい動画を表示する場合に特に問題となる。
【0009】
このような残像が発生する詳細な機構は必ずしも明らかになっていないが、素子駆動トランジスタのチャネルに流れるキャリア(正孔)がゲート絶縁膜中にトラップされてしまい、このキャリアにより素子駆動トランジスタの閾電圧が変動するなどが原因と考えられている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これに対し、本発明は、残像の改善を可能とする。
【0011】
本発明は、マトリクス状に配置された複数の画素を備える表示装置であって、前記複数の画素のぞれぞれは、被駆動素子と、水平走査方向に延在する選択ラインに出力される選択信号に応じて、垂直走査方向に延在するデータラインからデータ信号を取り込む選択トランジスタと、第1電極及び第2電極を有し、前記第1電極に供給される前記選択トランジスからのデータ信号を、前記第2電極に容量ラインから供給される電圧に対する電圧として保持する保持容量と、前記保持容量の前記第1電極にゲートが接続され、該保持容量に保持されたデータ電圧に応じた電力を電源から前記被駆動素子に供給する素子駆動トランジスタと、を備え、前記選択ラインは、それぞれが水平走査方向に延在するように複数設けられ、垂直方向駆動部は、1垂直走査期間の開始タイミングを示す垂直スタート信号を取り込んで順次転送する複数段のレジスタを有する垂直転送レジスタ、前記選択ラインに供給される選択信号を作成する選択信号作成部、及び前記容量ラインに供給される容量制御信号を作成する容量制御信号作成部を有する。この選択信号作成部は、前記垂直スタート信号に基づいて、前記選択ラインに順次供給するための互いに1水平走査期間ずれたタイミングの前記選択信号を作成し、容量制御信号作成部は、前記垂直転送レジスタの各段のレジスタからの前記垂直スタート信号に対応した出力に基づいて、前記容量制御信号を作成し、該容量制御信号は、前記データ信号に応じた電圧を、前記容量ラインを介して前記保持容量に保持させると共に、前記保持した電圧に応じて前記素子駆動トランジスタを動作させる第1電圧レベル状態と、対応する前記素子駆動トランジスタをオフ制御させる第2電圧レベル状態を有する。
【0012】
本発明の他の態様では、上記表示装置において、前記容量ラインは、行毎に、それぞれ水平走査方向に延在するように設けられ、該容量ラインには、前記垂直方向駆動部から、順次、互いに1水平走査期間ずれたタイミングで前記容量制御信号が出力される。
【0013】
本発明の他の態様では、上記表示装置において、前記垂直方向駆動部の前記垂直転送レジスタは、前記垂直スタート信号を垂直転送クロック信号に応じて1水平期間毎に次段のレジスタに転送し、前記選択信号作成部及び前記容量制御信号作成部が、前記垂直転送レジスタの各段の出力のタイミングの違いに基づいて、対応する選択ラインに供給するための前記選択信号及び前記容量ラインに供給するための前記容量制御信号を作成する。
【0014】
本発明の他の態様では、上記表示装置において、前記垂直方向駆動部は、前記垂直スタート信号の開始指示レベルの継続期間に基づいて、前記容量制御信号の前記素子駆動トランジスタをオフ制御させる第2電圧レベルの継続期間を決定する。
【0015】
本発明の他の態様では、上記表示装置において、前記垂直方向駆動部の少なくとも、前記垂直転送レジスタ、前記選択信号作成部及び前記容量制御信号作成部は、前記複数の画素が形成された基板上の前記表示部の周辺位置に形成されている。
【0016】
本発明の他の態様では、上記表示装置において、前記選択信号作成部及び前記容量制御信号作成部は、前記垂直転送レジスタの対応する段のレジスタからの出力と、該レジスタに隣段するレジスタからの出力との差を用いた論理演算を行う論理演算部を備え、前記選択信号及び前記容量制御信号を作成する。
【0017】
本発明の他の態様では、上記表示装置において、前記容量制御信号作成部は、前記垂直転送レジスタの対応する段のレジスタからの出力を反転して前記容量制御信号を作成し、前記選択信号作成部は、前記垂直転送レジスタの対応する段のレジスタからの出力と、該レジスタに隣段するレジスタからの出力の反転信号とに基づいて前記選択信号を作成する。
【0018】
本発明の他の態様は、表示装置の駆動方法であり、表示装置は、n行m列のマトリクス状に配置された複数の画素を備え、水平走査方向には行毎に選択ライン及び容量ラインが形成され、垂直走査方向には列毎に形成されたデータラインが形成され、前記複数の画素のぞれぞれは、被駆動素子と、前記選択ラインにゲートが接続され、前記データラインに第1導電領域が接続され、前記選択ラインに出力される選択信号に応じて、該データラインからデータ信号を取り込む選択トランジスタと、前記選択トランジスタの第2導電領域にゲートが接続され、電源から前記駆動素子に供給する電力を制御する素子駆動トランジスタと、第1電極及び第2電極を備える保持容量であって、前記第1電極が前記選択トランジスタの前記第2導電領域及び前記素子駆動トランジスタのゲートに接続され、前記第2電極が前記容量ラインに接続され、前記選択トランジスタを介して前記第1電極に供給されるデータ信号を、前記容量ラインから前記第2電極に供給される容量制御信号との電位差として保持する保持容量と、を備える。そして、n行目の前記選択ラインに選択信号を出力してn行目の各画素の前記選択トランジスタをオン制御して前記保持容量にデータ信号に応じた電圧を書き込むと共に、n行目の前記容量ラインに出力する容量制御信号の電位を、前記選択トランジスタを介して供給されるデータ信号に応じて前記素子駆動トランジスタがオン動作可能な第1電圧レベルとし、1垂直走査期間の開始タイミングを示す垂直スタート信号の開始指示レベルの継続期間に応じた期間、前記第1電圧レベルを維持した後、前記n行目の前記選択ラインが非選択状態であって、かつ次の1垂直走査期間の開始までの間、前記容量ラインを介して前記素子駆動トランジスタをオフ制御する第2電圧レベルに変更し、前記素子駆動トランジスタ及び前記被駆動素子をオフ制御する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、各行の画素に出力する選択信号を形成するための垂直走査方向(マトリクスの列方向)駆動部の容量制御信号作成部が、各画素の保持容量に接続されている容量ラインに、1垂直走査期間の開始タイミングを示す垂直スタート信号に基づいて、対応する画素の素子駆動トランジスタを強制的にオフ制御することができる電位を周期的に出力する。垂直走査方向駆動部は、選択信号を垂直スタート信号を利用して作成しており、容量制御信号を、同様に垂直スタート信号を利用して作成することにより、簡易な構成で容量制御信号を作成することが可能となる。
【0020】
また、この垂直走査方向駆動部は、マトリクス配置された画素を行毎に、1水平走査期間毎ずれたタイミングで順次選択する選択信号を出力することができ、従って、容量制御信号作成部は、選択信号作成部と共通した構成や共通の信号を利用して容量制御信号を作成することができ、容量ラインを行毎に制御することも可能となる。さらに、行毎の容量制御信号を作成することで、素子駆動トランジスタのオフ制御期間を行毎に制御でき、マトリクスのどの行位置でも同じ期間だけ、素子駆動トランジスタをオフでき、残像を確実に改善することができる。
【0021】
また、垂直スタート信号を1水平走査期間毎に転送する垂直転送レジスタの各レジスタの出力を利用して容量制御信号を作成することにより、垂直スタート信号(Vスタート信号)の開始指示レベルの継続期間(Vスタート信号のパルス幅)を調整することで、対応する行の素子駆動トランジスタのオフ制御期間を調整することができる。
【0022】
また、垂直走査方向駆動部内に容量制御信号を作成する作成部を設けることにより、この容量制御信号作成部は簡易な構成で、かつ制御信号作成部や垂直転送レジスタなどと共に、表示部の形成された基板と同じ基板上に内蔵形成することができ、表示装置の外部駆動ICなどとの接続端子を増加させることなく、行毎に容量ラインを制御して、素子駆動トランジスタをオフさせ、残像を解消することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0024】
(実施形態1)
本実施形態において、表示装置は、具体的にはアクティブマトリクス型の有機EL表示装置であり、複数の画素が、ガラスなどのパネル基板上110にマトリクス状に配置されている。図1は、この実施形態に係るアクティブマトリクス型表示装置の等価回路構成を示す図である。このパネル基板110のマトリクスの水平走査(行)方向には、順次選択信号が出力されるゲートライン(選択ライン)10(GL)が形成されており、垂直走査(列)方向には、データ信号が出力されるデータライン14(DL)と、被駆動素子である有機EL素子に動作電源(PVDD)を供給するための電源ライン16(PL)が設けられている。
【0025】
各画素は、概ねこれらのラインによって定義される領域に設けられており、各画素は回路構成としては、被駆動素子として有機EL素子、nチャネルのTFTより構成された選択トランジスタTr1、保持容量Cs、pチャネルのTFTより構成された素子駆動トランジスタTr2を有する。
【0026】
選択トランジスタTr1は、そのドレインが垂直走査方向に並ぶ各画素にデータ電圧を供給するデータライン14に接続され、ゲートが1水平走査ライン上に並ぶ画素を選択するためのゲートライン10に接続され、そのソースは素子駆動トランジスタTr2のゲートに接続されている。
【0027】
素子駆動トランジスタTr2は、そのソースが電源ライン16に接続され、ドレインが有機EL素子ELのアノードに接続されている。また、有機EL素子ELのカソードは各画素共通で形成されておりカソード電源CVに接続されている。
【0028】
また、素子駆動トランジスタTr2のゲート及び選択トランジスタTr1のソースには、保持容量Csの第1電極が接続され、この保持容量Csの第2電極は容量ライン12(SC)に接続されている。容量ライン12は、選択ライン10と平行して行方向に延在形成されており、後述するように各画素における残像を改善するために、周期的に電圧が変動する容量制御信号が供給される。
【0029】
なお、上記選択トランジスタTr1及び素子駆動トランジスタTr2は、いずれも、能動層に、例えばレーザアニールなどによって多結晶化された多結晶シリコンなど、結晶性シリコンが用いられ、かつ不純物としてそれぞれn導電型と、p導電型がドープされたnチャネル型、pチャンネル型の薄膜トランジスタ(TFT)で構成することができる。
【0030】
画素回路のトランジスタとして、上記のように結晶性シリコンを能動層に用いたTFTを採用した場合、この結晶性シリコンTFTは、各画素回路だけでなく、各画素を順次選択、制御するための周辺駆動回路の回路素子としても用いることができる。そこで、本実施形態では、表示部100が形成されるパネル基板110において、画素回路用トランジスタの製造と同時に、更に表示部100の外側に、画素回路と同様の結晶性シリコンTFTを形成し、周辺駆動回路200を内蔵する。なお、表示部100は、上述のような構成の複数の画素がマトリクス状に配置されている。
【0031】
駆動部200は、表示部100の各画素を駆動するための各種制御信号を出力する。具体的には、駆動部200は、Hドライバ(水平方向駆動回路)210と、Vドライバ(垂直方向駆動回路)220を有し、Hドライバ210は、マトリクスの列方向に延びる複数のデータライン14に対して対応するデータ信号を出力する。Vドライバ220は、マトリクスの行方向に延びる複数の選択ライン10に対し、1水平走査(1H)期間毎に第1TFTr10をオンさせるための選択信号を作成して順次出力する選択信号作成部(選択出力部)と、周期的に容量ライン12の電位を変動させる保持容量制御信号を作成して出力する容量制御信号作成部(容量制御出力部)を備える。
【0032】
次に、図1の構成の駆動方法について具体的に説明する。各画素回路において、選択ライン10に出力される選択信号がHレベルになると、選択トランジスタTr1がオンし、データライン14のデータ信号に応じたデータ電圧が選択トランジスタTr1のドレインソースドレイン間を介し、素子駆動トランジスタTr2のゲート及び保持容量Csの第1電極に印加される。
【0033】
保持容量Csは、その第1電極に印加されたデータ電圧と、第2電極に接続された容量ライン12から供給される容量制御電圧の電位差に応じた電圧を保持する。本実施形態において、データ電圧の書き込み時には、容量ライン12の容量制御信号の電圧は、第1電圧レベルVsc1として例えばグランドレベル(0V)等の低い一定電圧に維持されており、保持容量Csの第1電極に印加されるデータ電圧が、素子駆動トランジスタTr2のゲート電圧として保持される。より正確には、該データ電圧が、容量ライン12に印加される第1電圧レベルとの電位差として保持容量Csに保持される。データ電圧は、素子駆動トランジスタTr2がpチャネル型であるため、電源電圧PVDDに対してどの程度低いかによって素子駆動トランジスタTr2が流す駆動電流を決定しており、データ電圧が電源電圧に対して低いほど駆動電流が大きく、即ち、有機EL素子の発光輝度が大きくなる。
【0034】
選択ライン10の選択信号がLレベルになって、選択トランジスタTr1がオフしても、保持容量Csがデータ信号に応じた電圧を保持する。よって、素子駆動トランジスタTr2は有機EL素子ELへの駆動電流の供給を維持し、データ電圧に応じて有機EL素子ELが発光する。本実施形態では、対応する画素が次の垂直走査(1フレーム)期間に選択されて新たなデータ信号が書き込まれるまで、前のデータ信号に応じて有機EL素子を発光させ続けるのではなく、データ電圧に応じて所定期間有機EL素子を発光させた後、次のフレーム期間までの間に、素子駆動トランジスタTr2をオフ制御し、有機EL素子を消灯させる。
【0035】
具体的には、容量ライン12に出力する容量制御信号の第1電圧レベルVsc1を所定期間経過後、素子駆動トランジスタTr2をオフ制御するために十分高い第2電圧レベルVsc2(例えば10V)に昇圧させる。この保持容量Csの第1電極は、上述のように素子駆動トランジスタTr2のゲート及び選択トランジスタTr1のソースに接続されており、この保持容量Csの第2電極の電位が容量制御ラインSCによって第2電圧Vsc2に昇圧されると、昇圧分ΔV(Vsc2−Vsc1)に応じて保持容量Csの第1電極電位が上昇する。また、電源電圧PVDDは、例えば8Vに設定されている。従って、容量制御信号が第2電位レベルVsc2に上昇すると、素子駆動トランジスタTr2のゲート電圧Vgは、ソース電位である電源電圧PVDDよりも高くなり(低い場合でも、該トランジスタTr2の動作閾値Vthpより小さい電位差となる)、素子駆動トランジスタTr2はオフする。
【0036】
このため、ある画素について着目した場合に、この着目画素が次のフレーム期間に再び選択され新たなデータ信号に応じて有機EL素子が発光する前に、素子駆動トランジスタTr2がオフ制御され、有機EL素子を強制的に消灯される。このように一旦素子駆動トランジスタTr2がオフ制御されて有機EL素子が消灯され、残像の改善効果が得られる。本実施形態では、さらに、素子駆動トランジスタTr2のゲート絶縁膜にキャリア(正孔)がトラップされていた場合にも、次のフレーム期間の表示が開始される前に、素子駆動トランジスタTr2のゲート電圧Vgが保持容量Csの第1電極の昇圧ΔVに応じて昇圧されるため、上記トラップされていたキャリアが、ゲートより低電位のソースへとトンネル電流となって引き抜かれる。従って、素子駆動トランジスタTr2の電気的特性が一旦初期化され、確実に有機EL素子への駆動電流の供給を一旦完全に停止することができる。
【0037】
このように、容量ライン12に第1電圧レベルVsc1と第2電圧レベルVsc2を有する容量制御信号を供給する方法として、図1に示すような表示部100と周辺駆動回路(ドライバ)200が形成されたパネル基板110に対する外付けの駆動ICに、容量制御電圧切換回路を設けることが考えられる。そして、この容量制御電圧切換回路から例えば垂直帰線期間中に各行の容量ライン12の全電位が電源電圧PVDD程度の電圧となるように、容量制御信号を高電圧レベルに切り換え、これを容量ライン12に供給する方法である。このようにいわゆる外付け回路に容量制御電圧切換回路を設けることで、パネル内に内蔵される回路(本実施形態のVドライバ220等)に変更を加えることなく、残像の改善を図ることができる。
【0038】
しかし、本実施形態では、この容量制御電圧切換のための構成をパネル基板上に内蔵させている。上記のように外付けICによって容量ライン12の電圧を制御する場合、外付け回路からの信号を受けるパネル接続端子数には制限があるため、全容量ライン12を一括して制御することが望ましく、上記のように帰線期間中に一括して容量制御信号の電位を昇圧する。しかし、以下に説明するように内蔵ドライバ中に設けることにより、行毎に制御することが容易となり、そのため、昇圧期間も任意に設定することが可能となる。また行毎に容量ライン12の電位を制御することで、どの画面上のどの行位置の画素に対しても等しい期間、素子駆動トランジスタTr2のオフ制御をすることが可能となる。外付けICで帰線期間中に一括して全容量ライン12の電位を昇圧する場合、垂直帰線期間直前に選択される画素についてみると、データ信号を保持容量に書き込んだ後、直ぐに容量ラインから該保持容量に高電圧が印加されることとなるため、選択トランジスタのリーク電流が大きくなって表示すべきであったデータが失われやすくなり、表示品位が低下する可能性がある。
【0039】
さらに、外部ICから容量ライン12の電圧を第1及び第2電圧レベルの間で制御するので、実際の素子駆動トランジスタのゲート到達電圧は、配線抵抗や配線に対する寄生容量などの影響で低下し、外部ICからの出力電圧の振幅を大きくするなど外部ICの駆動能力が要求され、或いは外部ICにおける消費電力が大きくなる。パネルに内蔵されるドライバ内にこのような容量ライン12に出力する容量制御信号を作成する回路を設ければ、上述のようにその振幅は選択信号等と大差ないので、選択信号作成回路の電源などを共通利用することなどにより、ドライバの消費電力の上昇を最小限としつつ必要な振幅の容量制御信号を簡易な構成により作成することができる。また、内蔵ドライバで作成した容量制御信号を容量ラインに出力するため、第2電圧レベルVsc2を出力した際の素子駆動トランジスタのゲート電圧Vgの目標到達電位が、外部ICによる制御と比較して例えば10%〜20%程度、又はそれ以上高くなり、また到達時間の短縮を図ることも容易となる。
【0040】
以下、本実施形態に係る容量ライン12の制御回路をパネル内に内蔵した場合のドライバ構成及び動作例について、図2〜図4を更に参照して説明する。
【0041】
まず、図1に示すHドライバ210及びVドライバ220の基本構成を説明する。ここで、Hドライバ210は、図には具体的には示していないが、表示部100の列数mに応じた段数のレジスタを有する水平転送レジスタ、サンプリング回路などを備える。水平転送レジスタは、1水平走査期間の開始を指示するHスタート信号STHを1水平走査方向の画素数に応じた周波数の水平クロックCKHに応じて順次、次段(隣列)のレジスタにを転送する。また、サンプリング回路は、例えば、R,G,B,W(ホワイト)それぞれの表示信号Vdataを、水平転送レジスタの各段のレジスタから順次出力されるSTHに応じた選択信号によってサンプリングし、これをデータ信号DLとして対応するデータライン14に出力する。
【0042】
Vドライバ220は、図2に示すように、表示部100の行数nに応じた段数k(図2ではk=n+2)のレジスタを有する垂直転送レジスタ222、レジスタVSRのデータ転送方向を制御する転送制御ゲート224、及び選択信号と容量制御信号を作成する信号作成部230(信号発生論理部)を有する。信号発生論理部230は、レジスタVSRが転送するVスタート信号STVに基づいて、各容量ライン12に出力する容量制御信号SC1〜SCkを作成する論理部と、各選択ライン10に順次出力する選択信号GL1〜GLkを作成する論理部と、を有する。また、上記レジスタVSRのデータ転送方向の制御と同様に、信号作成論理部230内で論理演算すべき隣接行を切り替える論理制御ゲート228を有する。
【0043】
各レジスタVSR1〜VSRkは、1垂直走査期間の開始を指示するV(垂直)スタート信号STVを、1水平走査期間の2分の1の周波数の垂直クロックCKVに応じて順次、隣(隣行)レジスタVSR1〜VSRkに転送する。転送制御ゲート回路224は、転送方向制御信号CSVに応じて各レジスタVSR1〜VSRkのVスタート信号STVの転送方向を制御する。図2の例では、CSVがHレベルのとき、CSVがゲートに入力されるnチャネル型TFTが全てオンし、逆にCSVがゲートに入力されているpチャネルTFTは全てオフすることで、レジスタVSR1の入力端子inにVスタート信号STVが供給され、このレジスタVSR1の出力端子outがレジスタVSR2の入力端子inに接続され、同様に、レジスタVSR2の出力端子outがレジスタVSR3の入力端子inに接続されるように、レジスタへの入出力が切り替え制御される。このため、CSVがHレベルの時は、図4のタイミングチャートに示すように、垂直転送レジスタ222のデータ転送方向は、VSR1、VSR2、・・・、VSRkへと順次に進む。逆にCSVがLレベルの時は、Vスタート信号STVがVSRkの入力端子inに供給され、VSRk、・・・VSR1へと順にこのVスタート信号STVに応じたデータが転送される。
【0044】
ここで、図4に示すように、Vスタート信号STVは、1垂直走査(1フレーム)期間の初めにスタートを意味するHレベルになって1フレーム内の所定の期間、そのHレベルを保ち、残余の期間がLレベルとなる。このVスタート信号STVのHレベル期間は、通常は1水平走査期間程度の長さであるが、本実施形態では、例えば200水平走査期間分程度と長く設定されており、このHレベル期間の長さが、後述するように各容量ライン12へ出力する保持制御信号の点灯期間の長さを決定するよう論理回路が設けられている。なお、図4では、図示の都合上、上記Hレベル期間の長さは4水平走査期間程度で表している。もちろん図4に示すとおり4水平走査期間程度のHレベル期間に設定される場合もある。
【0045】
以下、CSV信号がHレベルで、順方向にデータを転送する場合を例に、具体的に、各部の動作を説明する。まず、Vスタート信号STVは、垂直転送クロックCKVの立ち上がりで、最初のレジスタVSR1に取り込まれ、同時にレジスタVSR1の出力SR1はHレベルとなる。この出力SR1のHレベル期間は、レジスタVSR1に供給されるVスタート信号がLレベルとなってから最初のCKVの立ち上がりタイミングでLレベルとなるまで継続する。つまり、このレジスタ出力SR1のHレベル期間は、Vスタート信号STVのHレベル継続期間(パルス幅)に応じた長さとなる。
【0046】
各レジスタのデータ取り込みタイミングは、互いに垂直クロック信号CKVの半周期毎ずれており、したがって、図4に示すように、CSVの次の立ち下がりタイミング(CSV反転信号(CSV2)の立ち上がり)で、2番目のレジスタVSR2がレジスタVSR1の出力SR1を取り込み、これに応じてその出力SR2がHレベルとなる。このようにして、順次、後ろの行のレジスタVSR3,VSRk-1,VSRkが前段レジスタの出力を取り込んでこれを転送していく。従って、各レジスタVSR1〜VSRkの出力SR1〜SRkは、図4に示すように、順次、Vスタート信号に応じた期間Hレベルを維持する波形となる。
【0047】
垂直転送レジスタ222の出力側には、信号発生論理部230の論理積回路232が設けられている。この論理積回路232は、隣接段のレジスタ出力SRk-1とSRk、のNAND演算するNAND回路と、その出力側に設けられた反転機能付きレベルシフタ(L/S)により構成されている。
【0048】
ここで、図2に示す中段のレジスタVSR7〜VSR9の出力SR7〜SR9から6行目の画素へ供給する選択信号GL7、容量制御信号SC7を作成する構成を拡大して表した図3を更に参照し、この中段のレジスタ出力に基づく選択信号GL7と、容量制御信号SC7の作成手順を説明する。レジスタVSR7とVSR8の出力が、対応する論理積回路232−7のNAND回路でNAND演算され、かつ反転機能付L/SによりそのNAND出力のレベルがシフトされ、またH,Lレベルを反転して出力する。得られた反転出力は図4にG7−8として示されており、論理積回路232−7で、レジスタVSR7とVSR8の出力のタイミングの違いに応じて論理積信号(G7−8)が得られる。また、レジスタVSR8とVSR9の出力が、対応する論理積回路232−8のNAND回路でNAND演算され、さらに、反転機能付L/SによりそのNAND出力のレベルがシフトされ、かつレベル反転されて出力される。得られるこの反転出力は、図4にG8−9で示されており、論理積回路232−8で、レジスタVSR8とVSR9の出力のタイミングの違いに応じて論理積信号(G8−9)が得られる。
【0049】
上記反転機能付きレベルシフタL/Sは、後段のNOR回路を経て選択ライン10に出力される選択信号のレベルが、対応する行の選択トランジスタTr1を確実にオンオフさせるために必要なレベルとなるように設けられている。具体的には、論理積回路232のNAND回路の出力のLレベルが0V、Hレベルが10Vであった場合に、Hレベルが−2V、Lレベルが10Vとなるようにシフト・レベル反転している。以上のようにして、論理積回路232−7及び232−8からは、図4のG7−8、G8−9のようなタイミングで論理積信号が出力される。
【0050】
論理積信号G7−8、G8−9は、論理制御ゲート228を経てNOR回路234,240にそれぞれ供給される。論理制御ゲート228は、CSV信号がHレベルであるから、論理積回路232−7からの出力G7−8と、論理積回路232−8からの出力G8−9が6行目の画素用のNOR回路234−7,240−7のそれぞれに供給されるように切り替え制御されている。
【0051】
6行目の画素に対して選択信号GL7を出力する選択信号用NOR回路234−7には、インバータ236−7で反転された論理積出力G7−8の反転信号と、8番目の論理積出力G8−9と、1水平走査(1H)期間の切り替わりタイミングでの選択信号の出力を禁止するためのイネーブル信号ENB(本実施形態の回路構成では実際には図4に示すような反転イネーブル信号XENB)とが供給される。
【0052】
したがって、この7番目のNOR回路234−7からは、3つの入力信号の全てがLレベルになるときだけ、Hレベル(10V)となるNOR演算信号が出力される。ここで、7番目の論理積回路232−7の出力G7−8の反転信号と、8番目の論理積回路232−8の出力G8−9のいずれもがLとなるのは、図4において出力G7−8がHレベルになってから、次に出力G8−9がHレベルとなるまでのCKVの半周期(1H期間)であり、さらに、XENB信号の1Hの最初と最後の期間以外の期間である。よって、XENB信号がLレベルとなったタイミングからHレベルに立ち上がるまでの期間、NOR回路234−7から、図4にGL7として示すようにHレベルの選択信号GL7が出力される。なお、XENB信号及びENB信号は、いずれも外部駆動ICから例えば0V、3Vの振幅で供給されるが、各NOR回路234に供給される前に、例えばレベルシフタL/Sによって、−2V、10Vの振幅の信号にシフトされている。
【0053】
容量制御信号を出力する7番目のNOR回路240−7は、論理積回路232−7の出力G7−8と、論理積回路232−8の出力G8−9のいずれもがLとなる期間、Hレベルとなり、いずれか一方及び両方がHレベルとなる期間、Lレベルとなる容量制御信号SC7を出力する。このような容量制御信号SCは、上述のように対応する行の画素の保持容量Csの第2電極に供給され、Hレベルとなることで、pチャネル型の素子駆動トランジスタTr2のゲート電位を上昇させ、この素子駆動トランジスタTr2をオフ制御する。容量制御信号SCは、そのLレベル(第1電圧レベルVsc1)期間は、各論理積回路232から出力のHレベル期間に、1水平走査期間(隣接行との取り込み差期間)を足した期間となる。また、1垂直走査期間の内の残りの期間がHレベル(第2電圧レベルVsc2)、即ち、素子駆動トランジスタTr2のオフ制御期間(EL素子の消灯期間)となる。つまり、各行のEL素子の消灯期間は、Vスタート信号STVのHレベル期間に対応しており、STVのHレベル期間(パルス幅)を調整することで消灯期間を調整することが可能となる。
【0054】
また、図4に示すように、次行の画素のための選択信号GL8は、GL7がHレベルとなった次の1水平走査期間にHレベルとなり、この際、次行の容量制御信号SC8は、Lレベルである。具体的には、論理積出力G8−9がHレベルとなってから、論理積出力G9−10がLレベルになるまでの期間、Lレベルを維持し、論理積出力G9−10がLレベルとなったタイミングからHレベルとなって、7行目の各画素のEL素子を消灯させる。このように、各行の容量ライン12には、行毎に1水平走査期間ずれ、かつ、それぞれ同じ期間、EL素子が消灯するようにHレベルとなる制御信号が出力される。この消灯期間(容量制御信号の昇圧期間)は、上記のようにVスタート信号STVによって可変であり、例えば2ms程度の長さとでき、EL素子の発光にちらつき(フリッカ)が生じない範囲で更に長くすることもでき、1垂直走査期間(1フレーム)中の16msの中で、人の目にフリッカとして認識される最長の時間である4ms程度まで延長可能である。外付ICによって、垂直帰線期間に全容量ライン12に対して消灯レベルとなるよう制御する場合、消灯期間として確保できる期間は900μs程度である。これに対し、内蔵ドライバによって容量ライン12に容量制御信号を作成することにより、行毎に各画素の素子駆動トランジスタTr2及びEL素子をオフ制御することが可能となり、長期間このオフ制御期間を設定することができ確実に残像を解消することが可能となる。
【0055】
以上説明したように、図2に示すようなVドライバの構成により、選択信号は、
GLs=Gs−(s+1) AND XG(s+1)−(s+2)
で表される論理演算により得られる。なお、ここでsは、画素の行数で1〜nの範囲となり、XGは、対応するG信号の反転信号を意味する。
【0056】
また、容量制御信号は、
SCs=Gs−(s+1) NOR G(s+1)−(s+2)
で表される論理演算により得られる。
【0057】
また、図2の回路構成において、PVDD=8V、GND=0V、VVDD=10V、VVBB=−2V、CV=−2V等の電圧を用意し、容量ライン12及びゲートライン10に出力する容量制御信号SC、選択信号GLのいずれも、Hレベル=VVDD、Lレベル=VVBBに設定することができる。このような電圧関係とすることで、各画素の選択トランジスタTr1のオンオフ、素子駆動トランジスタTr2のオンオフ、EL素子の点灯、消灯を確実かつ正確に制御することが可能となる。
【0058】
なお、図2において、レジスタは、画素の行数n+2に等しいk段設けられている。また、1行目の画素の前行のダミー画素と、n行目の画素の次行のダミー画素に選択信号GL1、GLk−1、容量制御信号SC1、SCk−1が出力されている。このダミー画素は現実にパネル上に形成されていなくとも良い。レジスタがk段設けられているのは、図2の回路構成では上述のように、s−1〜s+1までの合計3段のレジスタ出力を用いてs番目の出力(s−1行画素用出力)を作成するためである。
【0059】
(実施形態2)
次に、垂直転送レジスタ222の各レジスタからの出力に基づいて上記実施形態1と同様な選択信号GLと、容量制御信号SCを作成するためのより簡易な回路構成及びその動作について、図1、図5及び図6を参照して説明する。
【0060】
垂直転送レジスタ222の各レジスタVSRへの入出力順が転送制御ゲート224によって制御される点までは、上記図2の構成と共通する。相違する点は、まず、図2の論理制御ゲート228、論理積回路232が省略されていること、そして、容量ライン12に出力する容量制御信号の作成部がインバータ250のみに簡略化されている点、さらに、選択信号作成部の構成(論理)である。また、図2では、ダミー画素が、パネルの最上行及び最下行に設けられており、これらの行に対しても選択信号GL、容量制御信号SCを作成して出力しているが、図5の構成例では、このようなダミー画素が上下2行ずつ設けられていることである。このため、1行目の画素用のレジスタVSR1の前段には、ダミー用レジスタVSRd1、VSRd2が設けられている。
【0061】
以下、図5の回路及びその動作を説明をする。転送方向制御信号CSVがHのとき、1番目のダミー用レジスタVSRd1の入力端子inにVスタート信号STVが供給され、レジスタVSRd1は、これを垂直クロックCKV1の立ち上がりで取り込んで出力端子outから出力する。レジスタVSRd1からの出力SRd1は、2番目のダミー用レジスタVSRd2に入力され、レジスタVSRd2は、CKV1の次の立ち下がりタイミング(CKV2の立ち上がりタイミング)で、この出力SRd1を取り込んで、出力端子outからSRd2を出力する。レジスタVSR1の入力端子inには、上記レジスタVSRd2の出力SRd2が供給され、レジスタVSR1は、CKV1の次の立ち上がりタイミングで出力SRd2を取り込み、出力端子outからSR1を出力する。レジスタVSR1〜VSRnは、実際の画素に選択信号GL1〜GLn及び容量制御信号SC1〜SCnを出力するためのレジスタであり、レジスタVSRnの後段には、ダミー画素に対応するVSRd3及びVSRd4が設けられているが、いずれも、順次、CKV1の立ち上がり又は立ち下がりに従って前段のレジスタの出力を取り込んで後段レジスタへ出力する。
【0062】
n段目のレジスタVSRnと容量ライン12との間には容量制御信号作成部として、インバータ250が設けられている。よって、このインバータ250で、レジスタVSRnへの入力(レジスタVSRn-1の出力)が反転され、n行目の画素の容量制御信号SCnとして容量ライン12に出力される。なお、インバータ250には、Lレベル用電源としてGND、Hレベル用電源としてVVDDが供給されている。従って、インバータ250から出力する容量制御信号SCのLレベル(第1電圧レベルVsc1)は、GNDと等しい0Vとなり、Hレベル(第2電位Vsc2)は、VVDDと同じ例えば10Vとなる。
【0063】
レジスタVSRnと選択ライン10nとの間には、選択信号作成部として選択信号用論理回路260が設けられている。この論理回路260は、NOR回路262、インバータ264及び266を有する。NOR回路262は、レジスタVSRnの出力SRnと、レジスタVSRnへの入力信号の反転信号(XSRn−1、即ち、容量制御信号SCn)及びイネーブル信号の反転信号XENBとのNOR演算を行う。インバータ264は、NOR回路262の出力を反転し、インバータ266が、このインバータ264の出力をさらに反転し、これをn行目の画素の選択ライン10に供給する。このように、NOR回路262、インバータ264及び266は、全体として、出力SRn−1と出力SRnのNOR演算をするNORゲートを構成し、NOR演算結果をn行目の選択ライン10に選択信号GLnとして出力する。なお、インバータ264は、図2において論理積回路232の出力側に設けられている反転機能付きのレベルシフタを採用し、出力の極性を反転すると共に信号の電圧レベルを必要に応じて電圧レベルへとシフトし、これをインバータ266に出力してもよい。
【0064】
なお、1行目のレジスタVSR1の入力は、前段レジスタであるダミー用のレジスタVSRd2の出力SRd2であり、この出力SRd2がインバータ250で反転され、1行目の画素の容量制御信号SC1として容量ライン12に出力されている。また、1行目の選択信号用論理回路260は、レジスタVSR1の出力SRd2の反転信号XSRd2と、レジスタVSR1の出力SR1とのNOR演算の結果を1行目の選択ライン10に選択信号GL1として出力している。
【0065】
以上のように、図5のようなVドライバの回路構成によっても、Vスタート信号STVのLレベル期間に応じた期間が、容量制御信号SCnのHレベル、即ち対応する行の画素のEL素子の消灯期間となる。よって、実施形態2の回路構成でも、Vスタート信号STVの調整により、行毎に、EL素子の消灯及び素子駆動トランジスタTr2のオフ制御を実行することが可能となる。また、上述のように、図2の回路構成に比べて転送ゲートや論理回路の省略が可能となっており、Vドライバ220を最小限の回路素子数で構成でき、Vドライバの面積を小さくすることが可能となっている。パネル上における回路面積低減が強く求められる小型表示装置、例えば電子ビューファインダー(EVF)等では、パネル上に内蔵される回路素子面積を削減する必要がある。したがって、実施形態2に説明したような構成は、このEVFなどの表示装置用として有利であり、またこの構成を採用することにより消費電力の低減を図ることも可能となる。
【0066】
図7は、上記図5において具体的に説明した回路構成をより一般化した場合の論理回路構成を示している。具体的には、図7は、垂直転送レジスタ222の各レジスタから、選択ライン10に出力する選択信号と、容量ライン12に出力する容量制御信号とを作成する他の論理回路構成を示している。図8は、図7に示す構成でのタイミングチャートである。なお、図7の回路構成においても、図2の転送制御ゲート224と同様のゲートは存在するが、転送方向制御信号CSVがHレベルであって、レジスタVSRn−1からVSRnに向かってデータ(Vスタート信号STV)が転送される場合を例に挙げ、図7では図示を省略している。
【0067】
図7では、Vドライバの中間段部分として、レジスタVSR6〜VSR8とその出力を用いて選択信号GL7〜GL9及び容量制御信号SC7〜SC9を作成する信号作成部を示している。スタート信号STVは、垂直クロックCKVに従って順次のレジスタに転送される。そして、前段レジスタVSR5の出力SR5が、レジスタVSR6に入力されると、レジスタVSR6は、CKVに応じてこの出力SR5を取り込み、SR6を出力する。出力SR6は、7行目の選択ライン用の論理積回路280に供給され、またインバータ270に供給される。インバータ270は、出力SR6のH,Lレベルを反転すると共に、例えばそのHレベルが10Vで、Lレベルが−2Vとなるようレベルシフトし、得られた信号を容量制御信号SC7として、7行目の画素の容量ラインに出力する。
【0068】
7行目の選択信号作成回路(選択信号用論理積回路)280は、上記のようにレジスタVSR6の出力SR6と、次段のシフトレジスタVSR7の出力SR7の反転出力XSR8、及びイネーブル信号ENBの論理積を演算する。従って、出力SR6と、反転出力XSR7のいずれもがHレベルとなり、かつENBが立ち上がって各選択ラインへの選択信号の許可された期間に、Hレベルとなる選択信号GL7を7行目の画素の選択ラインに出力する。なお、論理積回路280から出力される選択信号GLのレベルが各画素の選択トランジスタを十分駆動できるようにするため、レジスタVSRnから対応する論理積回路280の経路、又は回路280内には、レジスタ出力SRnのHレベル、Lレベルを、それぞれ10V、−2Vとするためのレベルシフタが設けられていることが必要である。
【0069】
以上のように、図7のような論理回路構成によって、上記図5に示す具体的な回路構成と同様に、各行の容量ラインに、Vスタート信号STVのHレベル期間に応じた期間Hレベルとなる容量制御信号SCnを出力することができる。また、各選択ライン10に1水平走査期間毎に選択信号を出力して、対応する画素に表示内容に応じたデータ信号を書き込むと共に、容量ライン12に対し上記ように容量制御信号SCを出力し、EL素子の消灯制御及び素子駆動トランジスタTr2のオフ制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係る発光表示装置の概略等価回路を示す説明図である。
【図2】実施形態1に係るVドライバの回路構成の一例を示す図である。
【図3】図2の構成の一部を拡大した図である。
【図4】図2の回路構成の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】実施形態2に係るVドライバの回路構成の一例を示す図である。
【図6】図5の回路構成の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】図5の回路構成を一般化した論理回路構成を説明する図である。
【図8】図7の回路構成の動作を示すタイミングチャートである。
【図9】従来の発光表示装置の1画素についての等価回路を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
10 選択ライン、12 容量ライン、14 データライン、16 電源ライン、100 表示部、110 パネル基板、200 ドライバ(周辺駆動回路)、210 Hドライバ、220 Vドライバ、222 垂直転送レジスタ、224 転送制御ゲート、228 論理制御ゲート、230 信号発生論理部、232 論理積回路、234 選択ライン用NOR回路、236,250,270 インバータ、240 容量ライン用NOR回路、260 選択ライン用NOR回路、280 選択信号用論理積回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の画素を備える表示装置であって、
前記複数の画素のそれぞれは、被駆動素子と、
水平走査方向に延在する選択ラインに出力される選択信号に応じて、垂直走査方向に延在するデータラインからデータ信号を取り込む選択トランジスタと、
第1電極及び第2電極を有し、前記第1電極に供給される前記選択トランジスからのデータ信号を、前記第2電極に容量ラインから供給される電圧に対する電圧として保持する保持容量と、
前記保持容量の前記第1電極にゲートが接続され、該保持容量に保持されたデータ電圧に応じた電力を電源から前記被駆動素子に供給する素子駆動トランジスタと、を備え、
前記選択ラインは、それぞれが水平走査方向に延在するように複数設けられ、
垂直方向駆動部は、1垂直走査期間の開始タイミングを示す垂直スタート信号を取り込んで順次転送する複数段のレジスタを有する垂直転送レジスタ、前記選択ラインに供給される選択信号を作成する選択信号作成部、及び前記容量ラインに供給される容量制御信号を作成する容量制御信号作成部を有し、
前記選択信号作成部は、前記垂直スタート信号に基づいて、前記選択ラインに順次供給するための互いに1水平走査期間ずれたタイミングの前記選択信号を作成し、
前記容量制御信号作成部は、前記垂直転送レジスタの各段のレジスタからの前記垂直スタート信号に対応した出力に基づいて、前記容量制御信号を作成し、
該容量制御信号は、
前記データ信号に応じた電圧を、前記容量ラインを介して前記保持容量に保持させると共に、前記保持した電圧に応じて前記素子駆動トランジスタを動作させる第1電圧レベル状態と、
対応する前記素子駆動トランジスタをオフ制御させる第2電圧レベル状態を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記容量ラインは、行毎に、それぞれ水平走査方向に延在するように設けられ、
該容量ラインには、前記垂直方向駆動部から、順次、互いに1水平走査期間ずれたタイミングで前記容量制御信号が出力されることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の表示装置において、
前記垂直方向駆動部の前記垂直転送レジスタは、前記垂直スタート信号を垂直転送クロック信号に応じて1水平期間毎に次段のレジスタに転送し、
前記選択信号作成部及び前記容量制御信号作成部が、前記垂直転送レジスタの各段の出力のタイミングの違いに基づいて、対応する選択ラインに供給するための前記選択信号及び前記容量ラインに供給するための前記容量制御信号を作成することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表示装置において、
前記垂直方向駆動部は、前記垂直スタート信号の開始指示レベルの継続期間に基づいて、前記容量制御信号の前記素子駆動トランジスタをオフ制御させる第2電圧レベルの継続期間を決定することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の表示装置において、
前記垂直方向駆動部の少なくとも、前記垂直転送レジスタ、前記選択信号作成部及び前記容量制御信号作成部は、前記複数の画素が形成された基板上の前記表示部の周辺位置に形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の表示装置において、
前記選択信号作成部及び前記容量制御信号作成部は、
前記垂直転送レジスタの対応する段のレジスタからの出力と、該レジスタに隣段するレジスタからの出力との差を用いた論理演算を行う論理演算部を備え、前記選択信号及び前記容量制御信号を作成することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の表示装置において、
前記容量制御信号作成部は、前記垂直転送レジスタの対応する段のレジスタからの出力を反転して前記容量制御信号を作成し、
前記選択信号作成部は、前記垂直転送レジスタの対応する段のレジスタからの出力と、該レジスタに隣段するレジスタからの出力の反転信号とに基づいて前記選択信号を作成することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
n行m列のマトリクス状に配置された複数の画素を備え、
水平走査方向には行毎に選択ライン及び容量ラインが形成され、垂直走査方向には列毎に形成されたデータラインが形成され、
前記複数の画素のそれぞれは、
被駆動素子と、
前記選択ラインにゲートが接続され、前記データラインに第1導電領域が接続され、前記選択ラインに出力される選択信号に応じて、該データラインからデータ信号を取り込む選択トランジスタと、
前記選択トランジスタの第2導電領域にゲートが接続され、電源から前記駆動素子に供給する電力を制御する素子駆動トランジスタと、
第1電極及び第2電極を備える保持容量であって、前記第1電極が前記選択トランジスタの前記第2導電領域及び前記素子駆動トランジスタのゲートに接続され、前記第2電極が前記容量ラインに接続され、前記選択トランジスタを介して前記第1電極に供給されるデータ信号を、前記容量ラインから前記第2電極に供給される容量制御信号との電位差として保持する保持容量と、を備える表示装置の駆動方法であり、
n行目の前記選択ラインに選択信号を出力してn行目の各画素の前記選択トランジスタをオン制御して前記保持容量にデータ信号に応じた電圧を書き込むと共に、n行目の前記容量ラインに出力する容量制御信号の電位を、前記選択トランジスタを介して供給されるデータ信号に応じて前記素子駆動トランジスタがオン動作可能な第1電圧レベルとし、
1垂直走査期間の開始タイミングを示す垂直スタート信号の開始指示レベルの継続期間に応じた期間、前記第1電圧レベルを維持した後、
前記n行目の前記選択ラインが非選択状態であって、かつ次の1垂直走査期間の開始までの間、前記容量ラインを介して前記素子駆動トランジスタをオフ制御する第2電圧レベルに変更し、前記素子駆動トランジスタ及び前記被駆動素子をオフ制御することを特徴とする表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−284798(P2006−284798A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103181(P2005−103181)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】