説明

表示装置

【課題】 消費電力が小さく、簡易な構造で、応答速度が速く、かつ表示サイズがコンパクトな表示装置を提供する。
【解決手段】 ガラス基板3上に形成された液室30内に発熱体51を有する表示部を具備し、発熱体51を駆動させて液室30に充填されている液体6内に気泡を発生させ、この気泡により生じる圧力によって液室51に隣接して設けられた可動部材33の位置を変位させることで、ガラス基板3の一面側から照射される可視光を制御して表示を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の一面側から照射された光を制御することにより、画像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より知られている表示装置にはCRT、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイなどがある。特に液晶ディスプレイは装置の薄型化、小型化を可能とする点で優れている。このような表示装置はその用途から、カラー化、簡易な構造、応答速度、表示サイズ等の点で優れた特性が要求されており、近年これらに代わる表示装置として気泡を用いた表示装置が提案されている。
【0003】
この気泡を用いた表示装置は、例えば特許文献1乃至4などに開示されている。
これらのうち特許文献2は、抵抗発熱体へ駆動回路からパルス信号を出力し、抵抗発熱体上に蒸気膜を形成し、膜沸騰に基づく蒸気気泡を急激に成長させ、着色層に施した色を透明基板、蒸気気泡を介して表示し、この処理を他の同じ構成の画素でも実行することにより全体として画像表示を行うものである。
【0004】
また、特許文献4に開示されている表示装置の原理を図7を用いて説明する。図において11は着色液体12を一部に充填し、残りが気泡13である直方体状の透明な容器であり、容器11の外側には透明な電極141・142・143・144が、電極141・142および電極143・144の上下の対となるように取り付けられている。電極141・142と電極143・144とはそれぞれ1組ずつのコンデンサー151・152となっており、コンデンサー151・152にはそれぞれ電源161・162およびスイッチ171・172が接続されている。
【0005】
なお着色液体12・気泡13はほぼ同体積であり、電極14はそれぞれ図中のAで示す長さのほぼ半分であって、ほぼ同じ大きさである。スイッチ172を切った状態でスイッチ171を入れコンデンサー151に電圧を印加すると、着色液体12がコンデンサー151の電極141・142間に吸い込まれるように入っていき、電極141・142間が着色液体12で満たされる。このときもう一方の電極143・144間は気泡13で満たされることになる。
【0006】
次にスイッチ171を切って充電されていたコンデンサー151を放電させ、スイッチ172を入れてコンデンサー152に電圧を印加すると、今度は電極143・144間に着色液体12が移動する。
【0007】
このようにコンデンサー15による静電力によって複数の容器11内の着色液体12の位置をそれぞれ動かし、複数の容器11を並べてこれを画素として用いることで表示装置の表示が可能となる。
【0008】
【特許文献1】特開平4−166885号公報
【特許文献2】特開平5−127603号公報
【特許文献3】特開平5−127604号公報
【特許文献4】特開平8−254962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来の表示装置においては、以下に記載するような問題点がある。
特許文献2に開示されている表示装置では、着色層に施した色を表示(維持)するには、抵抗発熱体へ駆動回路からパルス信号を出力し、蒸気気泡を成長し続ける必要がある。
また、特許文献4に開示されている表示装置では、容器内の着色液体あるいは気泡の位置を維持するには、スイッチを入れた状態とし、コンデンサーに電圧を印加し続ける必要がある。
【0010】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、消費電力が小さく、簡易な構造で、応答速度が速く、かつ表示サイズがコンパクトな表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表示装置は、基材上に形成された液室内に発熱体を有する表示部を具備し、前記発熱体を駆動させて前記液室に充填されている液体内に気泡を発生させ、該気泡により生じる圧力によって前記液室に隣接して設けられた可動部材の位置を変位させることで、前記基材の一面側から照射される可視光を制御して表示を行うことを特徴とするものである。
また、前記基材は透光性部材であり、前記可動部材の位置を変位させることで前記透光性部材の一面側から照射される可視光の遮光および透光を制御することを特徴とする。
また、前記可動部材の変位は、前記可動部材の位置を前記液室と反対側へ変位させるものであり、前記可動部材の弾性力によって前記可動部材の位置を前記液室側へ戻すことを特徴とする。
また、前記発熱体の駆動が電気エネルギーによる発熱であることを特徴とする。
また、前記液体の色が互いに異なる複数の前記表示部を備え、カラー表示を行うことを特徴とする。
また、前記液体の色と前記発熱体の色と前記基材の色の組合せが異なる複数の前記表示部を備え、カラー表示を行うことを特徴とする。
【0012】
また本発明の表示装置は、基材上に形成された第1と第2の液室内にそれぞれ第1と第2の発熱体を有する表示部を具備し、前記第1と第2の発熱体をそれぞれ駆動させて前記第1と第2の液室にそれぞれ充填されている液体内に気泡を発生させ、該気泡により生じる圧力によって前記第1と第2の液室の間に設けられた可動部材の位置を変位させることで、前記基材の一面側から照射される可視光を制御して表示を行うことを特徴とするものである。
また、前記基材は透光性部材であり、前記第1の液室あるいは前記第2の液室の何れかに遮光性液体を充填し、前記可動部材の位置を変位させることで前記透光性部材の一面側から照射される可視光の遮光および透光を制御することを特徴とする。
また、前記可動部材の変位は、前記第1の発熱体を駆動して発生した気泡の圧力によって前記可動部材の位置を前記第2の液室側へ変位させ、前記第2の発熱体を駆動して発生した気泡の圧力によって前記可動部材の位置を前記第1の液室側へ戻すことを特徴とする。
また、前記発熱体の駆動が電気エネルギーによる発熱であることを特徴とする。
また、前記液体の色が互いに異なる複数の前記表示部を備え、カラー表示を行うことを特徴とする。
また、前記液体の色と前記発熱体の色と前記基材の色の組合せが異なる複数の前記表示部を備え、カラー表示を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の表示装置によれば、発熱体に電気エネルギー等を印加して熱を常に発生し続ける必要がなくなり、消費電力の少ない表示制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、具体的な実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0015】
[実施例1]
図1は、本実施例における表示装置の中の1画素である表示部の断面図であり、可動部材の変位を表わしたものである。
【0016】
(表示部の構造)
図1において、液体6に熱エネルギーを作用させる発熱体51がガラス基板3に設けられており、このガラス基板3上に発熱体51に対応して液室30が配されており、この液室30には無色透明な液体6が弾性膜7に覆われて充填されている。この液室30に隣接してガラス基板3上には可動部材33がレジスト膜をパターニングして形成した土台52に固定されている。これによって、可動部材33は保持されると共に支点53を構成している。この可動部材33の位置により、ガラス基板3の一面側(図1においては下側)から液室30側に照射される可視光(不図示)の遮光および透光を制御している。具体的には、図1(a)に示すように液室30側に可動部材33が位置しているときは遮光状態となり、図1(c)に示すように液室30とは反対側(液室30に隣接して設けられた土台52側)に可動部材33が位置しているときは透光状態となる。
【0017】
尚、可動部材33の支持部材である土台52に不透明な部材を用いることにより、ガラス基板3の下側から照射される可視光が液室30側以外から漏れないようにしている。
【0018】
(表示部の原理)
図1(a)に示される状態は、発熱体51に電気エネルギー等のエネルギーが印加される前の状態である。ここで重要なことは、可動部材33が液室30側に位置しているため、ガラス基板3の一面側から照射されている可視光が遮光されていることである。
【0019】
図1(b)に示される状態は、発熱体51に電気エネルギー等が印加されて発熱体51が発熱し、発生した熱によって液体6の一部が加熱され、膜沸騰に伴う気泡8が発生した状態である。このように気泡8の成長に応じて液室30内の体積が増えて弾性膜7が押し広げられ、気泡8が移動のしやすい方向、すなわち液室30の反対側へ成長することにより、図1(c)に示されるように可動部材33が液室30の反対側へ変位した状態になる。
【0020】
図1(d)に示される状態は、気泡8が前述した膜沸騰後、収縮し、消滅した状態を示している。この状態において、液室30の反対側へ変位した可動部材33は、可動部材33の元の状態へ戻ろうとする弾性力により、液室30側へ変位し、最終的には図1(a)に示される状態へ戻る。
【0021】
図2は、膜沸騰に伴う気泡の成長を表したものであり、図2(a)に示されるような状態においては、発生した気泡8の成長に応じて、液室30内の体積が増え、弾性膜7が押し広げられる方向を規制する構成はない。このため気泡8が成長する方向は各矢印のように気泡表面の垂直方向となり様々な方向を向いていた。
【0022】
これに対して、図2(b)に示されるような状態においては、左壁の高さと右壁の高さの違いからくる抵抗およびガラス基板3と接着されている弾性膜7の影響により、様々な方向を向いていた気泡8が上方向あるいは左方向へ変化してきているのが分かる。
【0023】
そして、図2(c)に示されるような状態においては、気泡8の成長方向自体がほとんど左方向へ成長するようになる。これにより、可動部材33を大きく変位させることができる。
【0024】
以上のように、図1では、表示装置の中の1画素である表示部を説明した。同図においては、液室30側に可動部材33が位置するときの表示部(画素)は黒く表示され、液室30の反対側に可動部材33が位置するときの画素は白く表示され、白黒画像を作成することができる。
【0025】
(表示装置の製造方法)
次に、本実施例における表示部の製造方法について説明する。
図3は、本実施例で使用する表示部の製造工程フローを示した図である。
【0026】
図3(a)に示すように、例えば、透光性部材であるガラス基板3上に、スパッタリングにより、例えば膜厚が1μmのCr膜21を成膜する。次に図3(b)で、Cr膜21上にレジスト膜22を形成し、このレジスト膜22を液室30と土台52の形状にパターニングした後、レジスト膜22をマスクとしてCr膜21をエッチングし、液室30と土台52のパターンを有するCrマスクを作製する。次に図3(c)で、ArとSF6との混合ガスを使用してガラス基板3をプラズマエッチングし、例えば深さが10μmから100μmの液室30と土台52の座ぐり孔を形成する。
【0027】
図3(d)ではガラス基板3上に、スパッタリングにより、例えば膜厚が1μmのSiN膜24を成膜する。SiN膜24は、後述するようにプラズマエッチングにより発熱体51を形成する際のエッチングストップ層として機能する。次に発熱体51を高抵抗ポリシリコンにより形成する。即ち、発熱体51となるn型ポリシリコン膜23を化学気相成長法(CVD)により例えば400nmの膜厚に形成する。次に、n型ポリシリコン膜23上にレジスト膜22を形成し、レジスト膜22を発熱体51の形状にパターニングする。次に図3(e)で、このレジスト膜22をマスクにして、n型ポリシリコン膜23をプラズマエッチングすることにより、発熱体51を形成する。更に図3(f)では、液体6を液室30に満たした後、例えば、シリコンゴム又はポリイミドからなる弾性膜7をガラス基板3に接着する。なお、液体6は無色透明なものである。
【0028】
次に、可動部材33の製造方法について説明する。
図4(a)〜(d)は、母型を用いて電鋳を行うことにより、可動部材33を作製する工程を段階的に示す模式的断面図である。
【0029】
図4(a)に示すように、SUS基板41に、約2μm厚のレジスト膜22を設け、凹部上方となる部分をアッシングしながらアルコール、塩酸、過酸化水素の混合液を用いたエッチングをSUS基板41に対して施し、図4(a)点線部分を除去して深さ10μm程度の凹部を形成した。その後、図4(b)に示すように、レジスト膜22を除去することにより、凹部を有するSUS基板41からなる母型43を得た。
【0030】
母型43を用意したら、次に図4(c)に示すように、母型43の上面および凹部の内面全体に電気メッキにより5μm程度のニッケルメッキ層42を形成した。メッキ液としてはスルフォミン酸ニッケルに応力減少剤ゼロオール(商標名:ワールドメタル社製)、ほう酸、ピット防止剤NS−APS(商品名:ワールドメタル社製)、塩化ニッケルを使用した。
電着時の電界のかけ方は、アノード側に電極をつけ、カソード側に先にパターニングした母型43を取り付け、メッキ液の温度を50℃、電流密度を5A/cm2とした。
【0031】
次に、図4(d)に示すように、母型43からニッケルメッキ層42からなるニッケル板を剥がすことにより、可動部材33として使用されるニッケル板を得た。
【0032】
以上のようにして得られた可動部材33を、図1に示したように液室30に隣接してレジスト膜をパターニングして形成した土台52に固定して本実施例の表示部が形成される。
【0033】
本実施例では、画素の大きさを約50μm×50μm、弾性膜7の厚さを約5μmとし、液体6として水とエタノールの混合液(水:エタノール=6:4)を用いたところ、画素の駆動に要する時間(発熱体を駆動→液体が発泡→可動部材が移動するまでの時間)は、数〜数十μsであり、高速表示処理が可能であった。また、本実施例では、従来例のように気泡を成長し続けたり、電圧を印加し続けたりするのではなく、可動部材33の位置を制御したい時だけ、発熱体51にエネルギーを印加すればよく、消費電力の少ない表示制御を行うことができる。
【0034】
なお、本発明で用いる液体としては、発熱体の発熱によって良好に発泡を生じさせるものであれば特に限定されるものではなく、上記以外にも例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、トルエン、キシレン、二塩化メチレン、トリクレン、フレオンTF、フレオンBF、エチルエーテル、ジオキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、水等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
[実施例2]
本実施例における表示部の構造・原理・製造方法は、前述の実施例1とほぼ同じであるが、図1において下側から可視光を照射した実施例1に対して、本実施例では図1において上側から可視光を照射して、反射型で表示するようにしている。
【0036】
(表示部の構造)
実施例1においては基材として透光性部材であるガラス基板3を用いているが、本実施例ではガラス基板3の下側に白色で不透明な染料が塗布されているものを用いた。これは、図1における上側から照射される光(不図示)を反射させるためのものである。なお、本実施例のように反射型で表示する場合には、不透明で反射率が高い基材を用いるか、あるいはガラス基板3の下側に拡散板を形成したものを用いることもできる。
【0037】
また、本実施例では、可動部材33や土台52に不透明でかつ反射率の低い部材を用いている。
【0038】
本実施例では、液室30に隣接してガラス基板3上に固定されている可動部材33の位置により、ガラス基板3の一面側(図1においては上側)から液室30側に照射される光(不図示)の反射光を制御している。具体的には、図1(a)に示すように液室30側に可動部材33が位置しているときは、可動部材33や土台52に不透明でかつ反射率の低い部材を用いているため、反射光が抑制されており反射率が低くなっている。これに対して、図1(c)に示すように液室30とは反対側に可動部材33が位置しているときは、液室30内の液体6や発熱体51やガラス基板3の下側からの反射光により反射率が高くなるようにしている。
【0039】
(表示部の原理)
図1(a)に示される状態は、発熱体51にエネルギーが印加される前の状態である。この場合は、可動部材33が液室30側に位置しているため、ガラス基板3の上側から照射されている光(不図示)は、可動部材33や土台52に反射するだけであるため、反射率が低い状態である。
【0040】
図1(b)に示される状態は、発熱体51が発熱し、発生した熱によって液体6の一部が加熱され、膜沸騰に伴う気泡8が発生した状態である。このように気泡8の成長に応じて液室30内の体積が増えて弾性膜7が押し広げられ、気泡8が移動のしやすい方向、すなわち液室30の反対側へ成長することにより、図1(c)に示されるように可動部材33が液室30の反対側へ変位した状態になる。この場合は、可動部材33が液室30の反対側に位置しているため、ガラス基板3の上側から照射されている光(不図示)は、液室30内の液体6や発熱体51やガラス基板3の下側からの反射があり反射率が高い状態である。
【0041】
そして、図1(d)に示される状態は、気泡8が前述した膜沸騰後、収縮し、消滅した状態を示している。この状態において、液室30の反対側へ変位した可動部材33は、可動部材33の元の状態へ戻ろうとする弾性力により、液室30側へ変位し、最終的には図1(a)に示される状態へ戻る。
【0042】
以上のように、本実施例では、図1において液室30側に可動部材33が位置するときの表示部(画素)は黒く表示され、液室30の反対側に可動部材33が位置するときの画素は白く表示され、白黒画像を作成することができる。
【0043】
[実施例3]
図5は、本実施例における表示装置の中の1画素である表示部を格子状に配列して複数個形成した斜視図である。本実施例における表示部の構造・原理・製造方法は、前述の実施例1とほぼ同じである。
【0044】
図5において、液体6に赤(R)、緑(G)、青(B)の色の3原色を用い、図5における1列目の表示部に赤(R)を、2列目に緑(G)を、3列目に青(B)を表示し、この3色を切替えることによりカラー画像を作成することができる。また、液体6は無色透明とし、発熱体51を赤(R)、又は緑(G)、又は青(B)の色に着色することによってもカラー画像を作成することができる。またさらに、液体6は無色透明とし、発熱体51も透明とし、透光部材であるガラス基板3を赤(R)、又は緑(G)、又は青(B)の色に着色することによってもカラー画像を作成することができる。
【0045】
尚、本実施例では液体6や発熱体51やガラス基板3を赤(R)、又は緑(G)、又は青(B)に着色した場合について説明したが、対応する色をイエロー(Y)、又はマゼンタ(M)、又はシアン(C)に着色した場合でも、同様にカラー画像を作成することができる。
【0046】
[実施例4]
図6は、本実施例における表示装置の中の1画素である表示部の断面図であり、可動部材の変位を表わしたものである。
【0047】
(表示部の構造)
図6において、液体6に熱エネルギを作用させる第1発熱体1と第2発熱体2がガラス基板3に設けられており、このガラス基板3上に第1発熱体1に対応して第1液室31が配されており、さらに第2発熱体2に対応して第2液室32が配されており、第1液室31には無色透明な液体6aが、また第2液室32には遮光性の液体6bが弾性膜7に覆われて充填されている。この第1液室31と第2液室32の間のガラス基板3上には可動部材33がレジスト膜をパターニングして形成した土台52に固定されている。これによって、可動部材33は保持されると共に支点53を構成している。また、可動部材33の先端が接触する部分には磁性体44が設けられている。
【0048】
本実施例では、可動部材33の位置により、ガラス基板3の一面側(図においては下側)から第1液室31側に照射される可視光10の遮光および透光を制御している。具体的には、図6(a)に示すように第1液室31側に可動部材33が位置しているときは遮光状態となり、図6(b)に示すように第2液室32側に可動部材33が位置しているときは透光状態となる。
【0049】
尚、第2液室32に遮光性の液体6bを充填することにより、第1液室31側に可動部材33が位置している遮光状態の時に、ガラス基板3の下側から照射される可視光が第2液室32側から漏れないようにしている。
【0050】
(表示部の原理)
図6(a)に示される状態は、第1発熱体1に電気エネルギー等のエネルギーが印加される前の状態である。ここで重要なことは、可動部材33が第1液室31側に位置しているため、ガラス基板3の一面側から照射されている可視光10が遮光されていることである。
【0051】
尚、可動部材33が接触している磁性体44は、永久磁石のように磁気を発するものであり、その磁気吸引力により、表示部全体を90°あるいは180°傾けた場合においても、可動部材33が第1液室31側に拘束状態となることができる。
【0052】
次に第1発熱体1に電気エネルギー等が印加されて第1発熱体1が発熱し、発生した熱によって液体6aの一部が加熱され、膜沸騰に伴う気泡が発生すると、前述の図1(b)と同様に気泡8の成長に応じて第1液室31内の体積が増えて弾性膜7が押し広げられ、気泡8が移動のしやすい方向、すなわち第2液室32側へ成長することにより、図6(b)に示されるように可動部材33が第2液室32側へ変位した状態になる。
【0053】
図6(b)に示される状態は、気泡が前述した膜沸騰後、収縮し、消滅した状態を示している。この場合においても、可動部材33が磁性体44と接触していることによって、表示部全体を90°あるいは180°傾けた場合においても、可動部材33が第2液室32側に拘束状態となることができる。ここで重要なことは、可動部材33が第2液室32側へ変位した事により、ガラス基板3の一面側から照射されている可視光10が透光されていることである。
【0054】
以上のように、図6では、表示装置の中の1画素である表示部を説明した。同図においては、第1液室31側に可動部材33が位置するときの表示部(画素)は黒く表示され、第2液室32側に可動部材33が位置するときの画素は白く表示され、白黒画像を作成することができる。
【0055】
本実施例では、画素の大きさを約50μm×50μm、弾性膜7の厚さを約5μmとし、液体として水とエタノールの混合液(水:エタノール=6:4)を用いたところ、画素の駆動に要する時間(発熱体を駆動→液体が発泡→可動部材が移動するまでの時間)は、数〜数十μsであり、高速表示処理が可能であった。また、本実施例では、従来例のように気泡を成長し続けたり、電圧を印加し続けたりするのではなく、可動部材の位置を制御したい時だけ、発熱体にエネルギーを印加すればよく、消費電力の少ない表示制御を行うことができる。
【0056】
また、本実施例においても、実施例3と同様に、例えば液体6aの色が互いに異なる複数の表示部を備えたり、例えば液体6aの色と第1発熱体1の色とガラス基板3の色の組合せが異なる複数の表示部を備えることにより、カラー表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施例における表示装置の中の1画素である表示部の断面図である。
【図2】膜沸騰に伴う気泡の成長を説明する図である。
【図3】本発明の第1実施例における表示装置の製造工程フローを示した図である。
【図4】本発明の第1実施例で使用する可動部材の製造工程フローを示した図である。
【図5】本発明の第3実施例における表示装置の表示部を格子状に配列して複数個形成した斜視図である。
【図6】本発明の第4実施例における表示装置の中の1画素である表示部の断面図である。
【図7】従来例の表示装置を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
1 第1発熱体
2 第2発熱体
3 ガラス基板
6、6a、6b 液体
7 弾性膜
8、13 気泡
10 可視光
11 容器
12 着色液体
14 電極
15 コンデンサー
16 電源
17 スイッチ
21 Cr膜
22 レジスト膜
23 n型ポリシリコン膜
24 SiN膜
30 液室
31 第1液室
32 第2液室
33 可動部材
41 SUS基板
42 ニッケルメッキ層
43 母型
44 磁性体
51 発熱体
52 土台
53 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された液室内に発熱体を有する表示部を具備し、前記発熱体を駆動させて前記液室に充填されている液体内に気泡を発生させ、該気泡により生じる圧力によって前記液室に隣接して設けられた可動部材の位置を変位させることで、前記基材の一面側から照射される可視光を制御して表示を行うことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記基材は透光性部材であり、前記可動部材の位置を変位させることで前記透光性部材の一面側から照射される可視光の遮光および透光を制御することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記可動部材の変位は、前記可動部材の位置を前記液室と反対側へ変位させるものであり、前記可動部材の弾性力によって前記可動部材の位置を前記液室側へ戻すことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記発熱体の駆動が電気エネルギーによる発熱であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記液体の色が互いに異なる複数の前記表示部を備え、カラー表示を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記液体の色と前記発熱体の色と前記基材の色の組合せが異なる複数の前記表示部を備え、カラー表示を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
基材上に形成された第1と第2の液室内にそれぞれ第1と第2の発熱体を有する表示部を具備し、前記第1と第2の発熱体をそれぞれ駆動させて前記第1と第2の液室にそれぞれ充填されている液体内に気泡を発生させ、該気泡により生じる圧力によって前記第1と第2の液室の間に設けられた可動部材の位置を変位させることで、前記基材の一面側から照射される可視光を制御して表示を行うことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記基材は透光性部材であり、前記第1の液室あるいは前記第2の液室の何れかに遮光性液体を充填し、前記可動部材の位置を変位させることで前記透光性部材の一面側から照射される可視光の遮光および透光を制御することを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記可動部材の変位は、前記第1の発熱体を駆動して発生した気泡の圧力によって前記可動部材の位置を前記第2の液室側へ変位させ、前記第2の発熱体を駆動して発生した気泡の圧力によって前記可動部材の位置を前記第1の液室側へ戻すことを特徴とする請求項7又は8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記発熱体の駆動が電気エネルギーによる発熱であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の表示装置。
【請求項11】
前記液体の色が互いに異なる複数の前記表示部を備え、カラー表示を行うことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の表示装置。
【請求項12】
前記液体の色と前記発熱体の色と前記基材の色の組合せが異なる複数の前記表示部を備え、カラー表示を行うことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−171161(P2006−171161A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360993(P2004−360993)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】