説明

表示装置

【課題】
非偏光の映像光によって表示を行なうディスプレイに、外光の映り込みを防止する偏光板を備えるタッチパネルを組合わせた場合における、タッチパネルの偏光板の透過軸以外の映像光の成分がカットされてしまうことによるディスプレイの輝度の低下を防止する。

【解決手段】
非偏光の映像光によって表示を行なう表示装置において、偏光板14を備えるタッチパネル11を用いたときに、ディスプレイ32とタッチパネル11との間に反射型偏光板35と拡散層36とを設けることによって、外光の映り込みの低減を実現しながら、しかもタッチパネル11の偏光板14による輝度低下を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、とくに非偏光の映像光によって表示を行なう表示部の表面に、偏光板を備えるタッチパネルを配した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2004−246380号公報や、特開2003−114766号公報に開示されているように、表示装置の表示部を構成する外表面上に、透明タッチパネルを配することによって、表示を見ながら指等で各種の入力操作を行なうことが可能なタッチパネル式ディスプレイが提供される。
【0003】
このようなタッチパネル式ディスプレイにおいて、外光の映り込みを低減し、照明下や屋内においての視認性を向上させるために、タッチパネルの外表面に偏光板を取付けるようにしている。とくに液晶ディスプレイから成る表示装置においては、偏光板を取付けることによって、外部照明等の外光下のコントラストである明所コントラストを向上させている。
【0004】
図1に示す構成は、液晶ディスプレイ10上にタッチパネル11を重合わせた構成を採っている。ここでタッチパネル11は、外光の映り込みを防止する偏光板14の内側に一対の等方性フィルム15、16を配し、さらに偏光板17を介して液晶ディスプレイ10上に配するようにしている。等方性フィルム15、16の互いに対向する面には透明電極19、20が形成され、これらの透明電極19、20が空気層21を介して対向している。なお液晶ディスプレイ10の下面には、バックライトを構成する光源23が光源側偏光板24を介して取付けられる。
【0005】
図2に示す構成は、さらに一対の1/4波長板27、28を加えたものである。上側の1/4波長板27は、上側の等方性フィルム15と透明電極19との間に配される。これに対して下側の1/4波長板28は、下側の等方性フィルム16上において透明電極20と等方性フィルム16との間に介在される。
【0006】
図3A〜Fは、上記図2に示す構成の液晶ディスプレイ10からの光の出射の状態を示しており、光源23からの光は図3Aに示すように非偏光である。この非偏光が偏光板24を通過すると、図3Bに示すように偏光に変換される。そしてこの後に液晶ディスプレイ10の上面の偏光板17によって図3Cに示すように、角度が90度変換された偏光に変換される。この後に下側の1/4波長板28で円偏光に変換され(図3D参照)、さらに上側の1/4波長板27によって偏光板17の出射光とは90度角度の異なる偏光に変換される(図3E参照)。そしてこの偏光が偏光板14を通して出射される(図3F参照)。
【0007】
このように図1あるいは図2に示す液晶表示装置は、映像光が直線偏光で出射されるために、タッチパネル11の偏光板14の透過軸を映像光の偏光方向と一致させることによって、映像光の輝度低下を伴わずに映り込みの低減を行なうことが可能になる。
【0008】
図3G〜Jは、外光の映り込み低減の動作を示している。外光Gは非偏光であって、この非偏光がタッチパネル11に入射すると偏光板14によって図3Hに示す直線偏光に変換され、さらに1/4波長板27、28によって円偏光に変換される(図3I参照)。このような光は、タッチパネル11内の空気層21の界面で反射されて1/4波長板27を通過すると、図3Hの直線偏光とは90度角度が異なる直線偏光(図3J参照)に変換される。従ってこの偏光は偏光板14によって遮断される。従って映像光の輝度低下を伴わずに映り込みの低減、すなわちコントラストの低下の低減を行なうことが可能になる。
【0009】
一方図4は、非偏光から成る映像光を出射するディスプレイ32と、タッチパネル層11とを組合わせた構成を示している。なお図4に示す構成は、タッチパネル層11が一対の1/4波長板27、28を備えない構成である。これに対して図5に示す構成は、一対の1/4波長板27、28をそれぞれ等方性フィルム15、16上に配した構成である。
【0010】
図4あるいは図5に示すような、映像光が偏光でないディスプレイ、例えばCRT、プラズマディスプレイパネル、ELパネル、等において、同様の目的で偏光板付きタッチパネル11を用いると、タッチパネル11の偏光板14の透過軸以外の映像光の成分をカットしてしまうために、ディスプレイ32からの映像光の輝度が半分以下に低減する。従って偏光板14を搭載しないタッチパネルと同等の輝度にする場合には、ディスプレイ32の発光輝度を2倍以上に設定する必要があり、これによってディスプレイ32の消費電力が大幅に増えてしまう。
【特許文献1】特開2004−246380号公報
【特許文献2】特開2003−114766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明の課題は、非偏光の映像光を発生するディスプレイパネルと偏光板付きタッチパネルとを組合わせた場合における輝度の低下を防止するようにした表示装置を提供することである。
【0012】
本願発明の別の課題は、消費電力を抑えたままで、しかも外光の映り込みによるコントラストの低下を防止するようにした表示装置を提供することである。
【0013】
本願発明のさらに別の課題は、表示装置から出た光を半分以上出射することができ、しかも外光の映り込みによる輝度低下を防止できるようにした表示装置を提供することである。
【0014】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の主要な発明は、非偏光の映像光によって表示を行なう表示部の表面に、偏光板を備えるタッチパネルを配した表示装置において、
前記表示部と前記タッチパネルとの間に反射型偏光板を配し、さらに前記表示部と前記反射型偏光板との間に拡散層を設けたことを特徴とする表示装置に関するものである。
【0016】
ここで、前記反射型偏光板は前記表示部からの映像光を反射するようにしてよい。また前記反射型偏光板の透過軸方向は、該反射型偏光板を通過した光が前記タッチパネルの偏光板を通過する方向であってよい。また前記拡散層は前記反射型偏光板を前記表示部の外表面に接合する粘着剤層であってよい。また前記粘着剤層内に光を不規則に反射させる粒子が分散されてよい。また前記タッチパネルが一対のフィルムを有し、該フィルムの内表面に透明電極が空気層を挟んで対向していてよい。また前記表示部がCRT(陰極線管)であってよい。また前記表示部がプラズマディスプレイパネルであってよい。また前記表示部がEL(エレクトロルミネッセンス)パネルであってよい。
【0017】
タッチパネル付きディスプレイは、入力可能な表示装置として数多く存在するが、最も一般的な方式である抵抗膜式タッチパネルは、一対の透明電極付きフィルム間に空気層を挟んだ構造になっており、空気と透明電極との間の屈折率の差が大きいために、外光が入射したときに、上記の空気と透明電極との間の界面での反射が非常に大きくなってしまい、屋外での視認性が著しく低下する。このために液晶ディスプレイ等の偏光を利用したディスプレイについては、タッチパネルの外表面上に偏光板を配することによって、外光がタッチパネルで反射するのを低減させ、屋外視認性を確保することになる。
【0018】
しかるにCRT(陰極線管)、プラズマディスプレイパネル、EL(エレクトロルミネッセンスパネル)等の偏光を利用していない非偏光の映像光を発する表示装置に対しては、偏光板付タッチパネルを表示部の上に搭載すると、このタッチパネル上の偏光板によって透過軸以外の偏光成分が吸収されてしまうために、表示装置から出る映像光の輝度が半分以下に低下する。
【0019】
そこで本願発明は、非偏光の映像光を出射するディスプレイパネルにおいて、偏光板付タッチパネルの搭載による輝度低下を低減させるために、表示装置の表示部とタッチパネルとの間に反射型偏光板を配し、さらに表示部と反射型偏光板との間に拡散層を設けるようにし、これによって輝度低下を低減させるようにしたものである。
【0020】
映像光が非偏光の表示装置に対して、偏光板付タッチパネルを搭載すると、上述の如く輝度が半分以下になる。従来は偏光板を備えないタッチパネルを搭載して外光の映り込みによるコントラストの低下を許容して我慢するか、偏光板付きタッチパネルを搭載して映り込みは低減できるが、輝度の低下あるいは消費電力のアップを許容せざるを得なかった。しかるに本願発明によると、偏光板付きタッチパネルの搭載による映り込みの低減を、輝度低下や消費電力の増加等のデメリットを大幅に抑えて達成することができる。とくにモバイル向けの製品は、屋外での使用が多いために、外光が強く入射する場面が多く、また消費電力のアップは、バッテリの持続時間の低下となるために、とくに効果が大きい。
【発明の効果】
【0021】
本願の主要な発明は、非偏光の映像光によって表示を行なう表示部の表面に、偏光板を備えるタッチパネルを配した表示装置において、表示部とタッチパネルとの間に反射型偏光板を配し、さらに表示部と反射型偏光板との間に拡散層を設けたものである。
【0022】
従ってこのような表示装置によれば、反射型偏光板を透過した映像光はそのままタッチパネルの偏光板を通して出射されるが、反射型偏光板によって反射された映像光は再び表示部に向かうが、このときに拡散層の内部で散乱され、さらに表示部表面もしくは内部で一部反射され、再び反射型偏光板へ入射する。このときに反射型偏光板に向かう映像光は拡散層を2回通過しているために、偏光状態が無秩序にリセットされ、反射型偏光板の透過軸方向成分の光は反射型偏光板およびタッチパネルの偏光板を通して出射される。これに対して反射型偏光板で反射された光は再び反射されて拡散層を2度通過し、再び反射型偏光板に至る。この一連の透過・反射の動作を繰返すことによって、表示部から出射された映像光の半分以上の光が反射型偏光板およびタッチパネルの偏光板を透過して出射されるようになる。従って映像光の輝度低下を大幅に低減できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下本願の発明を図示の実施の形態によって説明する。図6は、非偏光を発生するディスプレイ32とタッチパネル11との組合わせを示している。ここでタッチパネル11は、透明電極19、20をそれぞれ内表面に備える等方性フィルム15、16を、それらの透明電極19、20が空気層21を介して互いに対向するように配置して構成される。そして外表面上に外光の映り込みを低減するために偏光板14が配される。そしてこのようなタッチパネル層11とディスプレイ32との間に、反射型偏光板35と拡散層36とが介在される。ここで拡散層36は、例えば粘着剤層から構成され、反射型偏光板35をディスプレイ32の表面に接合する接合手段を構成している。なお拡散層36内には、光を無秩序に反射散乱させるための粒子を分散させておくことが好ましい。とくに本実施の形態の特徴は、上記反射型偏光板35と拡散層36とを、タッチパネル11とディスプレイ32との間に介在させたことである。
【0024】
図7に示す構成は、上側の等方性フィルム15上に、1/4波長板27を配し、下側の等方性フィルム16上に1/4波長板28を配した構成になっている。これらの1/4波長板27、28はそれぞれ透明電極19、20の下側に位置するように等方性フィルム15、16上に形成される。
【0025】
図8は図7に示す構成において、ディスプレイ32から出射した光がタッチパネル11を通して出射する状態を示している。ディスプレイ32の映像光は、図8Kに示すように非偏光である。このような非偏向光は反射型偏光板35によって直線偏光に変換される。そしてこの後に1/4波長板28によって円偏向光に変換され、さらに1/4波長板27によって円偏光から逆方向の直線偏光に変換される(図8L参照)。そしてこのような直線偏光がタッチパネル11の上側の偏向板14を通して出射される。
【0026】
ここでディスプレイ32からの出射光の内、反射型偏光板35の偏光方向と異なる方向の光は、この反射型偏光板35によってディスプレイ32側に反射される。そして再びディスプレイ32の表面もしくは内部で反射された後に、再び反射型偏光板35に入射する際に、拡散層36を通過し、このときに偏光がほぼ非偏光に変換される。そして再び反射型偏光板35で反射された光は、再びディスプレイ32の表面もしくは内部で反射されるとともに、このときに拡散層36によって非偏光に変換される。従ってやがてほとんどの映像光がタッチパネル層11を通して出射されることになる。図8Mは反射型偏光板35で反射された偏光角が逆の直線偏光を示しており、図8Nは、拡散層36を2回通過することによって、偏光から非偏光に変換された状態を示している。
【0027】
このように本実施の形態の表示装置は、映像光が偏光でないディスプレイ32と、偏光板14を備えるタッチパネル11との間に、図6あるいは図7に示すように、反射型偏光板35を挿入し、ディスプレイ32との間には拡散のり等の拡散層36を挿入する。ディスプレイ32から出射された映像光は、反射型偏光板35によって、この反射型偏光板35の透過軸方向成分の映像光を出射する。そしてそれと直交する偏光成分がこの反射型偏光板35によってディスプレイ32の中に反射される。なお反射型偏光板35として、例えば住友スリーエム株式会社製の反射型偏光フィルムDBEF−D(商品名)等を用いることができる。
【0028】
タッチパネル11の偏光板14は、上記ディスプレイ32上に設けられた反射型偏光板35を透過した映像光が透過できる軸角度に設定されている。従って反射型偏光板35を透過した映像光はそのままタッチパネル11の偏光板14を通して出射される。反射型偏光板35によって内部で反射された映像光は、再びディスプレイ32側に戻る方向に向かう。ここで戻り光の一部はディスプレイ32の表面および内部で反射され、再び反射型偏光板35に入射する。このような再度の反射型偏光板35に向かう映像光は、上述の拡散層36を2回通過しているために、光の偏光状態が無秩序の状態に戻っており、偏光のリセットが行なわれる。反射型偏光板35の透過軸方向の成分の光は、この反射型偏光板35を透過し、直交する成分は再びこの反射型偏光板35で反射される。
【0029】
これら一連の光の透過および反射の動作を繰返すことによって、ディスプレイ32から出射された映像光の半分以上が反射型偏光板35を通過することができるようになる。結果として、映像光が偏光でないディスプレイ32に、偏光板14を有するタッチパネル11を搭載した場合の、映像光の輝度の低下を大幅に低減できるようになる。またこのことは、ディスプレイ32の輝度を不必要に増大させる必要がなく、これによって消費電力の増加等のデメリットを抑えることが可能になる。従ってとくに屋外で使用され、しかも外光が強く入る場面で使用されるディスプレイにおいては、コントラストの向上に大きく寄与することになる。
【0030】
以上本願発明を図示の一実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願に含まれる発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態は、CRT(陰極線管)、プラズマディスプレイパネル、ELパネル、その他各種の非偏光の映像光によって表示を行なうディスプレイと、外表面に偏光板を備えるタッチパネルとの各種の組合わせが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願発明は、タッチパネル式表示装置に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来のタッチパネル付き液晶表示装置の要部縦断面図である。
【図2】別のタッチパネル付き液晶表示装置の縦断面図である。
【図3】図2に示す液晶表示装置における、映像光の偏光状態の変化を示すグラフである。
【図4】タッチパネルと非偏光型のディスプレイとの組合わせを示す表示装置の要部縦断面図である。
【図5】別の非偏光の表示装置とタッチパネルとの組合わせを示す要部縦断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る表示装置の要部縦断面図である。
【図7】別の実施の形態の表示装置の要部縦断面図である。
【図8】表示装置の偏光の変化の状態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0033】
10…液晶ディスプレイ、11…タッチパネル、14…偏光板、15、16…等方性フィルム、17…偏光板(液晶側)、19、20…透明電極、21…空気層、23…光源(バックライト)、24…偏光板(光源側)、27、28…1/4波長板、32…ディスプレイ、35…反射型偏光板、36…拡散層(粘着剤層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非偏光の映像光によって表示を行なう表示部の表面に、偏光板を備えるタッチパネルを配した表示装置において、
前記表示部と前記タッチパネルとの間に反射型偏光板を配し、さらに前記表示部と前記反射型偏光板との間に拡散層を設けたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記反射型偏光板は前記表示部からの映像光を反射することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記反射型偏光板の偏光方向は、該反射型偏光板を通過した光が前記タッチパネルの偏光板を通過する方向であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記拡散層は前記反射型偏光板を前記表示部の外表面に接合する粘着剤層であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記粘着剤層内に光を不規則に散乱させる粒子が分散されることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記タッチパネルが一対のフィルムを有し、該フィルムの内表面に透明電極が空気層を挟んで対向していることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示部がCRT(陰極線管)であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示部がプラズマディスプレイパネルであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示部がEL(エレクトロルミネッセンス)パネルであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−350873(P2006−350873A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178657(P2005−178657)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】