説明

表示装置

【課題】表示の立ち上がりを早くするためのプリチャージによる表示の不明瞭さや、余分なプリチャージによる消費電流の無駄等を無くす。
【解決手段】表示装置は、容量成分を有する表示素子53−11・・・と、表示データDAに対応したパルス幅の駆動電流又は駆動電圧を各表示素子53−11・・・にそれぞれ供給して点灯駆動する出力ドライバ62−1・・・と、走査スイッチ71−1・・・と、予め表示素子53−11・・・の容量成分をプリチャージするプリチャージスイッチ63−1・・・と、データDAが特定状態か否かを判定して、特定状態の時にはプリチャージを停止させるプリチャージ停止手段とを備えている。プリチャージ停止手段は、データDAと特定状態とを比較判定するコンパレータ81と、その比較判定結果が一致の時には、プリチャージスイッチ63−1・・・のプリチャージを停止させるドライバ制御手段83,85,86とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子等の発光素子といった各種の表示素子により構成された表示パネルを点灯駆動する表示装置、特に、表示素子を点灯駆動する前に予め電荷をプリチャージして応答速度を速くするプリチャージ方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子を発光駆動する表示装置として、例えば、次のような文献に記載されるものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−232074号公報(図9〜図12)
【特許文献2】特開2005−18038号公報(図1)
【0004】
図5は、特許文献1、2等に記載された従来の有機EL表示装置の概略を示す構成図である。
【0005】
この有機EL表示装置は、陰極線走査・陽極線ドライブの単純マトリックス駆動方式を示すもので、表示パネル10と、陽極線を駆動する陽極線駆動回路20と、陰極線を走査する陰極線走査回路30と、陽極線駆動回路20及び陰極線走査回路30を制御する表示制御回路40とを備えている。
【0006】
表示パネル10は、複数の陽極線11−1〜11−N及び複数の陰極線12−1〜12−Mがマトリックス状に配置され、これらの陽極線11−1〜11−N及び陰極線12−1〜12−Mの交差箇所に、有機EL素子からなる表示素子13−11〜13−MNがそれぞれ接続されている。有機EL素子からなる各表示素子13−11〜13−MNは、電極から電子と正孔(ホール)を注入し、有機固体内部で再結合させて発光させる電流注入型の発光ダイオードであり、発光体に有機材が使用され、陽極と陰極の間に容量成分を有している。
【0007】
複数の陽極線11−1〜11−Nには、これらを駆動するための陽極線駆動回路20が接続されている。陽極線駆動回路20は、電源電位VDDHノードと各陽極線11−1〜11−Nとの間に直列接続された各定電流回路21−1〜21−N及び各出力ドライバ22−1〜22−Nからなる複数の直列回路と、この各直列回路にそれぞれ並列接続された複数のプリチャージドライバ用のプリチャージスイッチ23−1〜23−Nとを有している。各定電流回路21−1〜21−Nは、所定のパルス幅の各駆動用制御信号C1〜CNによりオン/オフ動作してオン状態の時に定電流を出力する回路である。各プリチャージスイッチ23−1〜23−Nは、所定のパルス幅の各プリチャージ用制御信号P1〜PNによりオン/オフ動作して、オン状態の時に電源電位VDDHにより各表示素子13−11〜13−MNをプリチャージするスイッチである。有機EL素子からなる各表示素子13−11〜13−MNは、容量成分を持つため、定電圧や定電流を印加した場合に立ち上がりがなまる(即ち、立ち上がりの変化が緩慢になる)。このため、特にパルス幅変調(以下「PWM」という。)制御を行う場合等にパルス幅が正確でなくなるので、各プリチャージスイッチ23−1〜23−Nを介して予め容量に電荷をチャージ(即ち、発光させるための発光電圧よりも低い電圧にチャージ)しておくことにより、実際に駆動する際の立ち上がりがなまらないようにしている。
【0008】
複数の陰極線12−1〜12−Mには、これらを順に走査するための陰極線走査回路30が接続されている。陰極線走査回路30は、各陰極線12−1〜12−Mにそれぞれ接続された複数の走査スイッチ31−1〜31−Mを有している。各走査スイッチ31−1〜31−Mは、所定のパルス幅の各走査用制御信号R1〜RMにより順に切り替えられるスイッチであり、表示素子13−11〜13−MNを発光させる時には陰極線12−1〜12−Mを接地電位VSSHノードに接続し、表示素子13−11〜13−MNを消光する時には陰極線12−1〜12−Mを電源電位VDDHノードに接続する。
【0009】
表示制御回路40は、陽極線駆動回路20及び陰極線走査回路30を制御するための制御信号C1〜CN,P1〜PN,R1〜RMを出力する回路であり、シフトレジスタ41、表示データラッチ回路42、及びドライバ制御部43を有している。シフトレジスタ41は、表示の階調(輝度)を決めるシリアルな表示データDAをクロック信号CLKにより取り込み、これをパラレルな表示データに変換して表示データラッチ回路42へ出力する回路である。表示データラッチ回路42は、シフトレジスタ41から出力されたパラレルな表示データを保持し、この保持したパラレルな表示データをドライバ制御部43へ出力する回路である。ドライバ制御部43は、表示データラッチ回路42から出力されたパラレルな表示データに基づき、所定のタイミングで制御信号C1〜CN,P1〜PN,R1〜RMを出力するものである。
【0010】
図6(A)、(B)は、表示素子(例えば、13−22)に対する駆動波形図であり、同図(A)は低い階調(例えば、黒)で発光させる時の駆動波形図、及び図(B)は高い階調(例えば、白)で発光させる時の駆動波形図である。この図を参照しつつ、表示素子(例えば、13−22)を発光させる時の動作を説明する。
【0011】
制御信号R1により走査スイッチ31−1を接地電位VSSH側に接続して陰極線12−1を走査している状態から、陰極線12−2の走査へ移行する場合、先ず、制御信号R2により走査スイッチ31−2を接地電位VSSH側に接続すると共に、制御信号P2によりプリチャージスイッチ23−2をオン状態にする。すると、電源電位VDDH→プリチャージスイッチ23−2→陽極線11−2→表示素子13−22→陰極線12−2→走査スイッチ31−2→接地電位VSSH、という経路で電源電流が流れて表示素子13−22がプリチャージされる。
【0012】
次に、制御信号P2によりプリチャージスイッチ23−2をオフ状態にし、制御信号C2により定電流回路21−2をオン状態にする。制御信号C2は、表示データDAに対応したパルス幅を有し、図6(A)のように低い階調(例えば、黒)の場合は、そのパルス幅が0であるから、定電流回路21−2が実質的にはオン状態にならずにオフ状態となる。これにより、表示素子13−22は接地電位VSSHにて駆動が開始されることになる。つまり、表示素子13−22にプリチャージされた電荷が、走査スイッチ31−2を介して接地電位VSSH側に放電され、消光状態になって黒色表示される。
【0013】
これに対し、図6(B)のように高い階調(例えば、白)の場合は、制御信号C2のパルス幅が大きいので、定電流回路21−2がそのパルス幅時間だけ電源電位VDDHにて定電流を出力し、これが出力ドライバ23−1により駆動されて表示素子13−22に供給される。これにより、表示素子13−22が発光し、白色表示される。パルス幅時間が終了すると、定電流回路21−2がオフ状態になり、表示素子13−22に蓄積された電荷が走査スイッチ31−2を介して接地電位VSSH側に放電され、消光して黒色表示される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の表示装置では、表示の立ち上がりを早くするために、表示素子13−11〜13−MNをプリチャージし、その後、定電流回路21−1〜21−N及び出力ドライバ22−1〜22−Nにより駆動しているので、表示の階調によらず各表示素子13−11〜13−MNの容量に電荷がプリチャージされ、低い階調のデータを表示する際にプリチャージされた分の電荷が抜けきれず、低い階調が綺麗にでないという課題があった。
【0015】
即ち、図6において、先ず、プリチャージスイッチ23−2がオンして電源電位VDDHにて表示素子13−22をプリチャージする。プリチャージスイッチ23−2がオフしても表示素子13−22に電荷が保持されており、定電流回路21−2及び出力ドライバ22−2からなる駆動回路がオンしている間、表示素子13−22に電源電位VDDHが印加される形となる。ここで、図6(B)のように、階調が高い場合は、しばらく電源電位VDDHで駆動した後に接地電位VSSHに落とすが、図6(A)のように、階調0の場合は、直ぐに接地電位VSSHに落とす必要がある。ところが、階調0の場合であっても、表示素子13−22が電源電位VDDHでプリチャージされているために、接地電位VSSHまでディスチャージ(放電)を行う時間が必要となり、この間、表示素子13−22に電圧が印加され薄く発光してしまい、階調0を綺麗に表示することができなかった。
又、余分なプリチャージによる消費電流の無駄等といった課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、表示データに基づき、容量成分を有する複数の表示素子中の所定の表示素子に対してプリチャージを行った後に、その所定の表示素子に対して駆動電流又は駆動電圧を供給して、前記表示データに対応する輝度で点灯させる表示装置において、前記表示データが特定状態の時には前記所定の表示素子に対する前記プリチャージを停止させるプルチャージ停止手段を設けている。
【0017】
本発明の他の表示装置では、第1の電極及び第2の電極間に容量成分を有する複数の表示素子と、表示データに対応した第1のパルス幅の駆動電流又は駆動電圧を前記各表示素子の第1の電極にそれぞれ供給して前記各表示素子を点灯駆動する出力ドライバと、前記表示データに対応して走査され、前記出力ドライバにより点灯駆動される前記表示素子の第2の電極を固定電位ノードに接続する複数の走査スイッチと、前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動する前に、予め前記表示素子の第1の電極を介して前記表示素子の容量成分をプリチャージするプリチャージドライバと、前記表示データが特定状態か否かを判定して、特定状態の時には前記プリチャージドライバに対して前記プリチャージを停止させるプリチャージ停止手段とを備えている。
【0018】
本発明の更に他の表示装置では、第1の電極及び第2の電極間に容量成分を有する複数の表示素子と、表示データに対応した第1のパルス幅の駆動電流又は駆動電圧を前記各表示素子の第1の電極にそれぞれ供給して前記各表示素子を点灯駆動する出力ドライバと、前記表示データに対応して走査され、前記出力ドライバにより点灯駆動される前記表示素子の第2の電極を固定電位ノードに接続する複数の走査スイッチと、前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動する前に、予め前記表示素子の第1の電極を介して前記表示素子の容量成分をプリチャージするプリチャージドライバと、前記表示データがパーシャル非表示領域又はパーシャル表示領域のいずれの領域に属するデータであるかを判定して、この判定結果が前記パーシャル非表示領域に属するデータの時には、前記プリチャージドライバに対して前記プリチャージを停止させるプリチャージ停止手段とを備えている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1、2、3、6に係る発明によれば、表示データが特定状態か否かを判定するプリチャージ停止手段を設けたので、余分なプリチャージを削除でき、これにより、輝度の小さい表示も明瞭に表示でき、しかも、消費電流を低減できる。
【0020】
請求項4、5、6に係る発明によれば、表示データがパーシャル非表示領域又はパーシャル表示領域のいずれの領域に属するデータであるかを判定するプリチャージ停止手段を設けたので、パーシャル非表示領域における余分なプリチャージを削除でき、これにより、回路規模を削減できると共に、消費電流を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の最良の実施形態の表示装置では、第1の電極及び第2の電極間に容量成分を有する複数の表示素子(例えば、発光素子)と、表示データに対応した第1のパルス幅の駆動電流又は駆動電圧を前記各表示素子の第1の電極にそれぞれ供給して前記各表示素子を点灯駆動する出力ドライバと、前記表示データに対応して走査され、前記出力ドライバにより点灯駆動される前記表示素子の第2の電極を固定電位ノードに接続する複数の走査スイッチと、前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動する前に、予め前記表示素子の第1の電極を介して前記表示素子の容量成分をプリチャージするプリチャージドライバと、前記表示データが特定状態か否かを判定して、特定状態の時には前記プリチャージドライバに対して前記プリチャージを停止させるプリチャージ停止手段とを備えている。
【0022】
前記プリチャージ停止手段は、前記表示データと前記特定状態とを比較判定して一致/不一致の判定結果を出力するコンパレータと、ドライバ制御手段とを有している。前記ドライバ制御手段は、前記判定結果が一致の時には、前記表示素子に対する前記プリチャージドライバの前記プリチャージを停止させて、前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動させ、前記判定結果が不一致の時には、前記表示素子に対して前記プリチャージドライバによりプリチャージさせた後に前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動させる。
【実施例1】
【0023】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1を示す表示装置の概略を示す構成図である。
【0024】
この表示装置は、例えば、従来の図5と同様に、陰極線走査・陽極線ドライブの単純マトリックス駆動方式を用いた有機EL表示装置であり、表示パネル50と、陽極線駆動回路60と、陰極線走査回路70と、陽極線駆動回路60及び陰極線走査回路70を制御する表示制御回路80とを備えている。
【0025】
表示パネル50は、複数の陽極線51−1〜51−N及び複数の陰極線52−1〜52−Mがマトリックス状に配置され、これらの陽極線51−1〜51−N及び陰極線52−1〜52−Mの交差箇所において、例えば発光素子の1つである有機EL素子からなる表示素子53−11〜53−MNの陽極が陽極線51−1〜51−Nにそれぞれ接続され、その表示素子53−11〜53−MNの陰極が陰極線52−1〜52−Mにそれぞれ接続されている。
【0026】
複数の陽極線51−1〜51−Nには、これらを駆動するための陽極線駆動回路60が接続されている。陽極線駆動回路60は、電源電位VDDHノードと各陽極線51−1〜51−Nとの間に直列接続された各定電流回路61−1〜61−N及び各出力ドライバ62−1〜62−Nからなる複数の直列回路と、この各直列回路にそれぞれ並列接続された複数のプリチャージドライバ用のプリチャージスイッチ63−1〜63−Nとを有している。各定電流回路61−1〜61−Nは、所定のパルス幅の各駆動用制御信号C1〜CNによりオン/オフ動作してオン状態の時に定電流を出力する回路であり、トランジスタ等で構成されている。各出力ドライバ62−1〜62−Nは、各定電流回路61−1〜61−Nの出力電流を駆動して各陽極線51−1〜51−Nに供給する回路であり、トランジスタ等で構成されている。各プリチャージスイッチ63−1〜63−Nは、所定のパルス幅の各プリチャージ用制御信号P1〜PNによりオン/オフ動作して、オン状態の時に電源電位VDDHにより各表示素子53−11〜53−MNをプリチャージするスイッチであり、スイッチングトランジスタ等で構成されている。
【0027】
複数の陰極線52−1〜52−Mには、これらを順に走査するための陰極線走査回路70が接続されている。陰極線走査回路70は、各陰極線52−1〜52−Mにそれぞれ接続された複数の走査スイッチ71−1〜71−Mを有している。各走査スイッチ71−1〜71−Mは、所定のパルス幅の各走査用制御信号R1〜RMにより順に切り替えられるスイッチであってスイッチングトランジスタ等で構成され、表示素子53−11〜53−MNを発光させる時には陰極線52−1〜52−Mを接地電位VSSHノードに接続し、表示素子53−11〜53−MNを消光する時には陰極線52−1〜52−Mを電源電位VDDHノードに接続する。
【0028】
表示制御回路80は、陽極線駆動回路60及び陰極線走査回路70を制御するための制御信号C1〜CN,P1〜PN,R1〜RMを出力する回路であり、コンパレータ81、Nビットの表示データ用シフトレジスタ82、Nビットのプリチャージ用シフトレジスタ83、Nビットの表示データラッチ回路84、Nビットのプリチャージラッチ回路85、及びドライバ制御部86を有している。
【0029】
コンパレータ81は、表示の階調(輝度)を決めるシリアルな表示データDAを入力し、この表示データDAと特定状態(例えば、階調0を表す論理“0”)とを比較判定して一致/不一致のシリアルな判定結果(例えば、判定結果が一致の時にはフラグ“1”、不一致の時にはフラグ“0”)を出力するものであり、この出力側にプリチャージ用シフトレジスタ83が接続されている。表示データ用シフトレジスタ82は、シリアルな表示データDAをクロック信号CLKにより順に取り込み、これをパラレルなNビットの表示データに変換して出力する回路であり、この出力側に表示データラッチ回路84が接続されている。プリチャージ用シフトレジスタ83は、コンパレータ81から出力されたフラグ“1”をクロック信号CLKにより取り込み、これを順にシフトしてパラレルな判定結果を出力するものであり、この出力側にプリチャージラッチ回路85が接続されている。
【0030】
表示データラッチ回路84は、表示データ用シフトレジスタ82から出力されたパラレルなNビットの表示データを保持する回路であり、この出力側にドライバ制御部86が接続されている。プリチャージラッチ回路85は、プリチャージ用レジスタ83から出力されたパラレルなNビットの判定結果を保持する回路であり、この出力側にドライバ制御部86が接続されている。ドライバ制御部86は、表示データラッチ回路84から出力されたパラレルなNビットの表示データと、プリチャージラッチ回路85から出力されたパラレルなNビットの判定結果とに基づき、PWM処理等を行い、所定のパルス幅の走査用制御信号R1〜RNと、表示データDAの階調に対応したパルス幅の駆動用制御信号C1〜CNと、フラグ“1”に対応する箇所を無効(例えば、“0”)にしたプリチャージ用制御信号P1〜PNとを所定のタイミングで出力して、走査スイッチ71−1〜71−N、定電流回路61−1〜61−N、及びプリチャージスイッチ63−1〜63−Nに与える回路である。
【0031】
プリチャージ用シフトレジスタ83、プリチャージラッチ回路85、及びドライバ制御部86の一部により、ドライバ制御手段が構成され、更に、このドライバ制御手段とコンパレータ81とにより、プリチャージ停止手段が構成されている。
【0032】
(実施例1の動作)
図2は、図1の動作を示すタイミングチャートである。
【0033】
先ず、シリアルな表示用データDA(例えば、01,00,70,09,10,05,・・・)が表示用シフトレジスタ82に入力され、クロック信号CLKによりシフトされていく。同時に、コンパレータ81にて表示データDAを比較判定し、“0”だった場合のみプリチャージ用シフトレジスタ83にフラグ“1”を出力する。これにより、表示データDAの“0”とフラグ“1”がペアとなる。
【0034】
表示データDAが全てシフトされた時点で、シフトレジスタ82から出力されたパラレルなNビットの表示データが全て表示データラッチ回路84に保持されると共に、プリチャージ用レジスタ83から出力されたフラグ“1”を含むパラレルなNビットの判定結果が全てプリチャージラッチ回路85に保持される。ドライバ制御部86は、プリチャージを行うタイミングにてプリチャージラッチ回路84の値を判断し、“1”が立っている出力のプリチャージスイッチ(例えば、63−2,63−3,63−4,・・・)を動作させず、“0”が立っている出力のプリチャージスイッチ(例えば、63−1,63−5,・・・)のみ動作させるためのプリチャージ用制御信号P1〜PNを出力すると共に、走査用制御信号(例えば、R1)を出力する。これにより、走査スイッチ(例えば、71−1)が接地電位VSSH側に切り替えられると共に、“0”が立っている出力のプリチャージスイッチ63−1,63−5,・・・のみがオン状態になり、これらのプリチャージスイッチ63−1,63−5,・・・を介して電源電位VDDHにより表示素子53−11,53−15,・・・がプリチャージされる。
【0035】
次に、表示を行うタイミングにてドライバ制御部86から駆動用制御信号C1〜CNが出力され、表示データDAに従い定電流回路61−1〜61−Nが動作する。すると、定電流回路61−1〜61−Nから定電流が出力され、これが出力ドライバ62−1〜62−Nで駆動されて表示素子53−11,・・・に供給され、表示データDAに対応した階調で発光する。
【0036】
同様に、ドライバ制御部86から、次のプリチャージを行うタイミングにてプリチャージ用制御信号P1〜PNが出力されると共に、走査用制御信号(例えば、R2)が出力され、“0”が立っている箇所の表示素子(例えば、53−22,53−24,・・・)がプリチャージされた後、表示を行うタイミングにてドライバ制御部86から駆動用制御信号C1〜CNが出力され、定電流回路61−1〜61−N及び出力ドライバ62−1〜62−Nにより、表示データDAに対応した階調で表示素子53−21〜53−2Nが発光する。
【0037】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、コンパレータ81によって表示データDAを判断し、ドライバ制御部86にて不要なプリチャージを行わないようにすることにより、階調0を確実に出力できる。更に、余分なプリチャージを削除することにより、消費電流を低減できる。
【実施例2】
【0038】
(実施例2の構成)
図3は、本発明の実施例2を示す表示装置における表示制御回路の概略を示す構成図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。更に、図4は、図1中の表示パネル50の模式図である。
【0039】
図3の表示制御回路80Aは、図1の表示制御回路80に代えて図1の表示装置に設けられる回路である。この表示制御回路80Aでは、図1のコンパレータ81及びプリチャージ用シフトレジスタ83に代えて、表示状態判定手段(例えば、表示状態判定部)87が設けられると共に、図1のドライバ制御部86に代えて、これと異なる構成のドライバ制御部86Aが設けられている点が、図1の表示制御回路80と異なる。
【0040】
図4に示すように、表示パネル50の表示モードによっては、パネルの一部のパーシャル表示領域50aのみ表示を行い、これ以外のパーシャル非表示領域50bについては表示を行わない、というパーシャル表示を行う場合がある。この際、表示対象となる陽極線(51−1〜51−N中のいずれか)がパーシャル非表示領域50bに位置し、1ライン全て黒表示である場合がある。
【0041】
表示状態判定部87では、パーシャル表示を行う際に、このパーシャル表示情報に関する図示しないレジスタの設定値又は制御信号により、現在の表示対象となっている陽極線(51−1〜51−N中のいずれか)の1ライン全てがパーシャル非表示領域50bに位置しているか否かをコンパレータ等で比較判定し、この判定結果が「非表示領域に位置している」ときには、強制的にプリチャージを無効にするためのプリチャージ無効信号をドライバ制御部86Aに与えるものである。ドライバ制御部86Aは、表示データラッチ回路84から出力されたパラレルなNビットの表示データと、表示状態判定部87から出力されたプリチャージ無効信号とに基づき、PWM処理等を行い、所定のパルス幅の走査用制御信号R1〜RNと、表示データDAの階調に対応したパルス幅の駆動用制御信号C1〜CNと、パーシャル非表示領域50bに位置する箇所を無効(例えば、“0”)にしたプリチャージ用制御信号P1〜PNとを所定のタイミングで出力して、走査スイッチ71−1〜71−N、定電流回路61−1〜61−N、及びプリチャージスイッチ63−1〜63−Nに与える回路である。
【0042】
この表示状態判定部87、及びドライバ制御部86A内のドライバ制御手段により、プリチャージ停止手段が構成されている。
【0043】
(実施例2の動作)
パーシャル表示モードの場合は、このパーシャル表示情報が表示状態判定部87に予め設定されているか、あるいは制御信号の形で表示状態判定部87に与えられる。
【0044】
シリアルな表示用データDAが表示用シフトレジスタ82に入力され、クロック信号CLKによりシフトされていく。表示データDAが全てシフトされた時点で、シフトレジスタ82から出力されたパラレルなNビットの表示データが全て表示データラッチ回路84に保持される。ドライバ制御部86Aは、プリチャージを行うタイミングにて、表示状態判定部87から与えられるプリチャージ無効信号の内容を判定し、パーシャル非表示領域50bに位置するプリチャージスイッチ(63−1〜63−N中のいずれか)を動作させず、パーシャル表示領域50aに位置するプリチャージスイッチ(63−1〜63−N中のいずれか)のみ動作させるためのプリチャージ用制御信号P1〜PNを出力すると共に、走査用制御信号(例えば、R1)を出力する。これにより、走査スイッチ(例えば、71−1)が接地電位VSSH側に切り替えられると共に、パーシャル表示領域50aに位置するプリチャージスイッチ(63−1〜63−N中のいずれか)のみがオン状態になり、これらのプリチャージスイッチ(63−1〜63−N中のいずれか)を介して電源電位VDDHにより表示素子53−11,53−15,・・・がプリチャージされる。
【0045】
次に、表示を行うタイミングにてドライバ制御部86Aから駆動用制御信号C1〜CNが出力され、表示データDAに従い定電流回路61−1〜61−Nが動作する。すると、定電流回路61−1〜61−Nから定電流が出力され、これが出力ドライバ62−1〜62−Nで駆動されて表示素子53−11,・・・に供給され、表示データDAに対応した階調でパーシャル表示領域50aが発光する。
【0046】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、パーシャル表示モードの場合、表示対象となる陽極線(51−1〜51−N中のいずれか)がパーシャル非表示領域50bに位置し、1ライン全て黒表示となることがあるので、これを表示状態判定部87にて判定し、強制的にプリチャージを無効にするので、余分なプリチャージを削除することにより、消費電流を低減できる。更に、図1のシフトレジスタ83やプリチャージラッチ回路85を削除することにより、回路規模を削減できる。
【実施例3】
【0047】
本発明は、上記実施例1、2に限定されず、種々の変形が可能である。この変形例である実施例3としては、例えば、次の(1)〜(6)のようなものがある。
【0048】
(1) 実施例1では、コンパレータ81により階調0を判定したが、出力ドライバ22−1〜22−Nの駆動能力が高い場合や、階調1や2等の低い階調が表示できない場合、コンパレータ81により階調2以下を比較判定することにより、プリチャージを行わない階調の幅を広げることできる。
【0049】
(2) 図3の表示状態判定部87を、図1のドライバ制御部86に接続し、このドライバ制御部86により、表示状態判定部87の出力も処理できる構成に変更すれば、実施例1及び2の作用効果を奏することができる。
【0050】
(3) 実施例1、2では、定電流回路61−1〜61−Nを用いた定電流駆動の陽極線駆動回路60について説明したが、本発明は、定電圧回路を用いた定電圧駆動の陽極線駆動回路にも適用できる。
【0051】
(4) 図1において、各陽極線51−1〜51−Nと接地電位VSSHノードとの間に、表示制御回路で制御されるリセットスイッチをそれぞれ接続し、ある陰極線(例えば、52−1)から次の陰極線(例えば、52−2)へ走査が移行する前に、その全リセットスイッチによって全陽極線51−1〜51−Nを接地電位VSSHにリセットする構成にすれば、発光の立ち下がりが早くなって走査速度をより高速化できる。
【0052】
(5) 実施例1、2では、プリチャージ方式に関して説明したが、ある陰極線(例えば、52−1)から次の陰極線(例えば、52−2)へ走査が移行する前に、全陰極線52−1〜52−Nをオールリセットする構成の陰極リセット法を用いた場合でも、リセット後の全陰極線52−1〜52−Nを“H”に切り替える際に発生するオーバシュートによる電流の消費を抑えることができる。
【0053】
(6) 実施例1、2では、陰極線走査・陽極線ドライブ方式について説明したが、陽極線走査・陰極線ドライブ方式についても、本発明を適用できる。又、表示素子53−11〜53−MNとして、有機EL素子を用いたが、容量成分を有する他の発光素子等の種々の表示素子に本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例1を示す表示装置の概略を示す構成図である。
【図2】図1の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施例2の表示装置における表示制御回路の概略を示す構成図である。
【図4】図1中の表示パネル50の模式図である。
【図5】従来の有機EL表示装置の概略を示す構成図である。
【図6】表示素子に対する駆動波形図である。
【符号の説明】
【0055】
50 表示パネル
51−1〜51−N 陽極線
52−1〜52−N 陰極線
53−11〜53−MN 表示素子
60 陽極線駆動回路
61−1〜61−N 定電圧回路
62−1〜62−N 出力ドライバ
63−1〜63−N プリチャージスイッチ
70 陰極線走査回路
71−1〜71−N 走査スイッチ
80,80A 表示制御部
81 コンパレータ
82,83 シフトレジスタ
84 表示データラッチ回路
85 プリチャージラッチ回路
86,86A ドライバ制御部
87 表示状態判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示データに基づき、容量成分を有する複数の表示素子中の所定の表示素子に対してプリチャージを行った後に、その所定の表示素子に対して駆動電流又は駆動電圧を供給して、前記表示データに対応する輝度で点灯させる表示装置において、
前記表示データが特定状態の時には前記所定の表示素子に対する前記プリチャージを停止させるプルチャージ停止手段を設けたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
第1の電極及び第2の電極間に容量成分を有する複数の表示素子と、
表示データに対応した第1のパルス幅の駆動電流又は駆動電圧を前記各表示素子の第1の電極にそれぞれ供給して前記各表示素子を点灯駆動する出力ドライバと、
前記表示データに対応して走査され、前記出力ドライバにより点灯駆動される前記表示素子の第2の電極を固定電位ノードに接続する複数の走査スイッチと、
前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動する前に、予め前記表示素子の第1の電極を介して前記表示素子の容量成分をプリチャージするプリチャージドライバと、
前記表示データが特定状態か否かを判定して、特定状態の時には前記プリチャージドライバに対して前記プリチャージを停止させるプリチャージ停止手段と、
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記プリチャージ停止手段は、
前記表示データと前記特定状態とを比較判定して一致/不一致の判定結果を出力するコンパレータと、
前記判定結果が一致の時には、前記表示素子に対する前記プリチャージドライバの前記プリチャージを停止させて、前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動させ、前記判定結果が不一致の時には、前記表示素子に対して前記プリチャージドライバによりプリチャージさせた後に前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動させるドライバ制御手段と、
を有することを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
第1の電極及び第2の電極間に容量成分を有する複数の表示素子と、
表示データに対応した第1のパルス幅の駆動電流又は駆動電圧を前記各表示素子の第1の電極にそれぞれ供給して前記各表示素子を点灯駆動する出力ドライバと、
前記表示データに対応して走査され、前記出力ドライバにより点灯駆動される前記表示素子の第2の電極を固定電位ノードに接続する複数の走査スイッチと、
前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動する前に、予め前記表示素子の第1の電極を介して前記表示素子の容量成分をプリチャージするプリチャージドライバと、
前記表示データがパーシャル非表示領域又はパーシャル表示領域のいずれの領域に属するデータであるかを判定して、この判定結果が前記パーシャル非表示領域に属するデータの時には、前記プリチャージドライバに対して前記プリチャージを停止させるプリチャージ停止手段と、
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
前記プリチャージ停止手段は、
前記表示データが前記パーシャル非表示領域又は前記パーシャル表示領域のいずれの領域に属するデータであるかを判定する表示状態判定手段と、
前記表示状態判定手段の判定結果が、前記パーシャル非表示領域に属するデータの時には、前記表示素子に対する前記プリチャージドライバの前記プリチャージを停止させて、前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動させ、前記表示状態判定手段の判定結果が、前記パーシャル表示領域に属するデータの時には、前記表示素子に対して前記プリチャージドライバによりプリチャージさせた後に前記出力ドライバにより前記表示素子を点灯駆動させるドライバ制御手段と、
を有することを特徴とする請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示素子は、発光素子である請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−25122(P2007−25122A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205542(P2005−205542)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(503357654)株式会社沖ネットワークエルエスアイ (61)
【Fターム(参考)】