説明

表示装置

【課題】本発明は、画面全体を処理することなく焼付け現象が発生した表示領域のみ処理して輝度ムラを目立たなくすることができる表示装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】映像表示装置の本体CPU10には、RAM11に設定された発光輝度に関する設定データに基づいて表示画面の輝度レベルを制御する映像信号制御部100、焼付け緩和領域を指定する処理領域指定部101及び処理時間を規制するタイマ設定部102を備えている。処理領域指定部101は、焼付け現象が生じた表示領域を囲むように処理領域をリモコン操作に基づいて指定する。指定された処理領域には、映像信号制御部100が、中心部を輝度レベル100%として周辺部にいくに従い連続的にレベル低下するように設定された輝度レベルで発光させる。発光時間の上限はタイマ設定部102により規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電界放出ディスプレイ(FED)等の蛍光体を発光させて映像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体の発光原理を利用して、映像を表示する表示装置としては、陰極線管(CRT)を用いたテレビジョン受像機が広く普及しているが、近年、マトリクス状に配設された放電セル内でネオン(Ne)やキセノン(Xe)等の希ガスの放電によって紫外線を発生させて蛍光体を励起発光させるプラズマディスプレイパネル(PDP)を用いた薄型表示装置が実用化されている。薄型表示装置としては、この他にも、多数の電子放出素子をマトリクス状に配設して各電子放出素子から蛍光体に電子線を照射し、蛍光体を励起発光させる電界放出ディスプレイ(FED)が開発されている。
【0003】
こうした蛍光体の発光原理を利用する表示装置では、長時間にわたって輝度レベルの高い静止画像を表示していると静止画像を表示する領域の蛍光体の劣化が急速に進み、その領域とそれ以外の領域との間に輝度の差が生じる、いわゆる焼付け現象が発生してしまう問題があった。
【0004】
そのため、静止画像が継続する場合には、輝度レベルを低下させたり、画像の表示位置を所定時間毎に移動させたりすることで、同じ位置で長時間にわたって輝度レベルが高くならないようにし、蛍光体の焼付け現象が発生しないようにしている。こうした焼付け現象を防止する観点からの対策以外にも、例えば、特許文献1では、予め画面全体に白表示等を行ってバーニング処理することで、焼付け現象が生じても輝度ムラが小さくなるようにした点が記載されている。
【特許文献1】特開平9−191465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した焼付け防止技術では、時計表示等のように所定位置に継続して表示する場合には、輝度レベルを下げると見にくくなり、また表示位置を移動すると他の画像表示に重なる等問題が生じてしまうため、結局焼付け防止には限界がある。また、特許文献1のように、予めバーニング処理を行うと、画面全体の蛍光体が劣化して暗くなり、表示機能自体が低下してしまう問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、画面全体を処理することなく焼付け現象が発生した表示領域のみ処理して輝度ムラを目立たなくすることができる表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表示装置は、蛍光体の発光により映像を表示する表示体と、前記表示体の表示領域において処理領域を指定する指定手段と、指定された処理領域の中心部の発光輝度を蛍光体の焼付け現象が生じるレベルに設定するとともに中心部から周辺部にいくに従い発光輝度のレベルを連続的に低下させる発光輝度制御手段とを備えていることを特徴とする。さらに、前記表示体は、三原色を発光させて表示するカラー表示体であることを特徴とする。さらに、白、青又は赤の単色画面のいずれか1つを表示する確認画面表示手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のような構成を有することで、焼付けが発生した表示領域を囲むように処理領域を指定手段で指定して、指定した処理領域の中心部の発光輝度を蛍光体の焼付けが生じるレベルに設定するとともに中心部から周辺部にいくに従い発光輝度のレベルを連続的に低下させ、焼付けで生じた輝度ムラを目立たなくすることができる。
【0009】
すなわち、発光輝度のレベルを中心部から周辺部にいくに従い連続的に低下させれば、処理領域の蛍光体を中心部から周辺部に向けてグラデーションがかかるように焼付けが付与される。そのため、焼付けによる輝度ムラが目立つ部分を中心部となるように処理領域を設定すれば、輝度ムラの境界がぼけた状態に緩和されるようになり、輝度ムラが目立たなくなる。
【0010】
そして、焼付け現象が発生した表示領域のみを局所的に処理するので、それ以外の表示領域に影響を与えることなく輝度ムラを目立たなくすることができる。
【0011】
また、表示体をカラー表示体とした場合には、白、青又は赤の単色画面のいずれか1つを表示する確認画面表示手段を備えることで、いずれかの色について焼付け現象が生じているか容易に確認することができるようになり、焼付け現象による輝度ムラに対して早期に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る実施形態の全体ブロック図である。映像表示装置本体1は、全体制御に関する情報処理を行う制御部としての本体CPU10、記憶手段であるRAM11及びROM12が設けられており、ROM12に記憶されたプログラムやRAM11に記憶された様々な設定データ等を本体CPU10が読み出して制御を行う。
【0014】
外部からのテレビジョン信号を受信するチューナ13、映像を表示する表示部としてのモニタ14、モニタ14に内蔵された左右のスピーカ15及び16を有する。そして、チューナ13からの出力信号は、映像信号処理回路17で処理されて映像信号はモニタ14に送信されて表示制御され、映像信号処理回路17で抽出された音声信号は音声信号処理回路18に送信されて左右のスピーカ15、16から音声出力される。映像信号処理回路17及び音声信号処理回路18は、本体CPU10からの制御信号により映像表示制御及び音声出力制御が行われるようになっている。
【0015】
モニタ14は、蛍光体の発光により映像を表示する表示体で、例えば、PDPが挙げられる。そして、モニタ14は、RGBの三原色を用いてカラー表示が可能とされている。
【0016】
また、視聴者がリモコン31を操作すると、その操作情報が操作情報入力部30に受信されて本体CPU10に送信されるようになっている。リモコン31には、チャンネル選択キーのほか各種機能キー、メニュー選択キー、画面表示されたカーソルを移動させる移動キー等が配設されている。
【0017】
表示画面の明るさ及びコントラストに関する設定データはRAM11に記憶されており、本体CPU10は、必要に応じてRAM11から設定データを読み出して映像信号処理回路17に送信し表示画面の発光輝度が設定される。そして、設定データは明るさの程度に応じて数段階に設定可能となっており、例えば、省エネ設定に基づいて表示画面を暗くする場合にはそれに対応した段階の設定データをリモコン31により入力してRAM11に記憶しておき、本体CPU10がその変更された設定データをRAM11から読み出して映像信号処理回路17に送信し発光輝度が下げられる。
【0018】
一方、装置本体1には、記録ディスク再生装置2が併設されており、CDやDVD等の複数種類の記録ディスクを再生する。記録ディスク再生装置2は、再生制御に関する情報処理を行う制御部としての再生用CPU20、プログラム等を記憶するROM21及び設定データ等を記憶するRAM22を有している。そして、図示しない回転制御装置により回転するディスク23からピックアップ24により記録された情報が読み取られ、MPEGデコーダ25により復号化される。復号化された情報はデジタル情報であるため、ビデオエンコーダ26によりアナログ化されて映像信号処理回路17及び音声信号処理回路18に送信され、装置本体1のモニタ14で映像表示されるとともに内蔵スピーカ15及び16で音声出力される。
【0019】
また、チューナ13に記録ディスク再生装置2側のビデオデコーダ27を接続して、チューナ13で受信されたアナログ信号をデジタル信号に変換した後MPEGエンコーダ28で圧縮した後ピックアップ24によりディスク23に記録処理することもできる。
【0020】
以上のような映像表示装置では、モニタ14に蛍光体を発光させて表示するようにしているため、長時間にわたって静止画像を表示すると、その表示領域だけ蛍光体の劣化が周囲よりも進み、輝度ムラが発生する。例えば、時刻表示を画面の隅に表示させておくと、長時間同じ表示状態が継続することから、時刻表示がなくなると、その部分だけ黒ずんだ輝度ムラが発生するようになる。こうした焼付け現象が発生してしまった場合に、輝度ムラが目立たないようにして映像表示への影響を極力抑えることが望ましい。そのため、本実施形態では、以下に説明する焼付け緩和処理を行う。
【0021】
図2は、焼付け緩和処理を行うためのブロック構成図を示している。本体CPU10には、RAM11に設定された発光輝度に関する設定データに基づいて表示画面の輝度レベルを制御する映像信号制御部100、焼付け緩和領域を指定する処理領域指定部101及び処理時間を規制するタイマ設定部102を備えている。
【0022】
映像信号制御部100は、処理領域指定部101から入力された処理領域の設定位置データに基づいて、処理領域内の輝度レベルを制御する。輝度レベルの制御は、例えば、図3のグラフに示すように設定する。図3のグラフでは縦軸に輝度レベルをとり、横軸に処理領域の中心0からの距離をとっている。処理領域Sは円形状とし(グラフの下方に示す)、その中心Oにおいて輝度レベルを100%とする。輝度レベルを100%に設定すると、中心に位置する蛍光体は短時間で焼付け現象が生じるようになる。そして、中心から離れるに従い連続して輝度レベルが低下するように設定し、周辺部では輝度レベルを50%にする。このように設定することで、中心から周辺部にいくに従い焼付け現象による黒ずんだ状態が徐々に薄くなって、グラデーションのように焼付けが付与されるようになる。そのため、処理領域内に既に生じていた焼付け現象による輝度ムラは、グラデーションにオーバーラップされて境界がぼけた状態に緩和され、目立たなくなる。なお、処理領域Sの中心部から周辺部への輝度レベルの低下は、連続的に変化するように適当な数式(一次式等)を予め設定して中心部からの距離データから輝度レベルを求めるようにすればよい。
【0023】
また、映像信号制御部100は、リモコン31で焼付け緩和処理が選択されると、焼付け現象が生じた領域を確認するための確認画面をモニタ14に表示するように制御する。確認画面は、画面全体が白色の単色画面に表示される白ラスタ、青色に表示される青ラスタ及び赤色に表示される赤ラスタがあり、視聴者の選択により各単色表示画面が順次表示されるようになっている。
【0024】
処理領域指定部101は、視聴者のリモコン操作に従って表示画面上で焼付け緩和処理を行う領域を指定する。図4(a)に示すように、処理領域Sは円形状に画面14aに表示される。リモコン31で焼付け緩和処理が選択されると、処理領域指定部101は、画面14aの中央部に初期設定された基準円を表示する。
【0025】
そして、基準円の中心位置をリモコン31のカーソル移動キーKR、KL、KU及びKD(図4(b)参照)を適宜操作して移動させ、焼付け現象が生じた表示領域の中心部に基準円を配置する。カーソル移動キーKRは基準円を右方向に移動させ、カーソル移動キーKLは左方向に移動させ、カーソル移動キーKUは上方向に移動させ、カーソル移動キーKDは下方向に移動させる。基準円の移動後決定キーDを操作すると、基準円の中心位置が決定される。次に、決定された基準円の範囲を拡大縮小するために再度カーソル移動キーを操作する。すなわち、基準円を右方向Rに拡大したい場合にはカーソル移動キーKRを操作し、左方向Lに拡大したい場合にはカーソル移動キーKLを操作し、上方向Uに拡大したい場合にはカーソル移動キーKUを操作し、下方向Dに拡大したい場合にはカーソル移動キーKDを操作する。こうして焼付け現象が発生した表示領域を囲むように基準円を拡大して処理領域Sを設定したら、再度決定キーDを操作して処理領域Sを確定する。
【0026】
タイマ設定部102は、タイマ回路19からのクロック信号をカウントして予め設定された時間が経過すると映像信号制御部100にカウントアップ信号を出力する。映像信号制御部100が焼付け緩和処理を行っている間に視聴者は緩和処理の状態を確認して輝度ムラが目立たなくなったところでリモコン操作して処理停止を行うが、必要以上に処理が行われると蛍光体が過剰に劣化してしまうため、所定の上限時間(例えば10分)を設定してその上限時間をタイマ設定部102がカウントするとカウントアップ信号を出力して焼付け緩和処理を自動的に停止する。
【0027】
図5は、焼付け緩和処理に関するフローを示している。リモコン31で焼付け緩和処理が選択操作されると、まず白ラスタの単色画面が表示される。そして、選択キーを操作すると順次青ラスタ、赤ラスタが表示されて、視聴者はどの単色画面で焼付け現象が発生しているか確認し、焼付け現象が生じている単色画面を選択表示する(S100、S101)。単色画面が選択されると、その中心部に基準円が表示されて、上述したように処理領域指定処理が行われる(S102)。すなわち、視聴者は、カーソル移動キーKR、KL、KU及びKDを適宜操作して基準円を焼付け現象が発生した表示領域の中心部に移動させその領域を囲むように基準円を拡大して処理領域を指定する。
【0028】
処理領域が指定されると、その範囲を規定する位置データが映像信号制御部100に入力されて処理領域の輝度レベルが設定される(S103)。処理領域の中心部を輝度レベル100%にして、予め設定された数式に従って中心からの距離データに基づき各位置における輝度レベルを算出し、周辺部にいくに従い連続的に低下するように設定される。輝度レベルが設定されると、そのレベルデータにしたがって処理領域内の蛍光体が発光されて焼付け緩和処理が開始される(S104)。それと同時にタイマ設定部102においてタイマカウントが開始される(S105)。その後リモコン31で停止キーの操作が行われたかチェックされ(S106)、停止キーの操作があった場合には処理を終了する。また、停止キーの操作がない場合にはタイマが所定時間カウントしたかチェックし(S107)、所定時間カウントした場合には処理を終了し、所定時間カウントしていない場合にはステップS106に戻る。
【0029】
以上説明したように、表示画面に焼付け現象による輝度ムラが生じた場合に、その表示領域を囲むように処理領域を指定して処理領域内を焼付け緩和処理するので、輝度ムラが目立たなくなるとともに処理領域以外の表示領域の蛍光体には劣化等の影響を及ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る実施形態に関する全体ブロック図である。
【図2】焼付け緩和処理を行うためのブロック構成図である。
【図3】処理領域の輝度レベルを示すグラフである。
【図4】処理領域を指定する場合の画面表示(図4(a))及びリモコンの操作キーの配置(図4(b))を示す説明図である。
【図5】焼付け緩和処理フローである。
【符号の説明】
【0031】
1 映像表示装置本体
2 記録ディスク再生装置
10 本体CPU
11 RAM
12 ROM
13 チューナ
14 モニタ
15 スピーカ
16 スピーカ
17 映像信号処理回路
18 音声信号処理回路
19 タイマ回路
30 操作情報入力部
31 リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体の発光により映像を表示する表示体と、前記表示体の表示領域において処理領域を指定する指定手段と、指定された処理領域の中心部の発光輝度を蛍光体の焼付け現象が生じるレベルに設定するとともに中心部から周辺部にいくに従い発光輝度のレベルを連続的に低下させる発光輝度制御手段とを備えていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示体は、三原色を発光させて表示するカラー表示体であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
白、青又は赤の単色画面のいずれか1つを表示する確認画面表示手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−33490(P2007−33490A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212188(P2005−212188)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(390001959)オリオン電機株式会社 (427)
【Fターム(参考)】