説明

表示装置

【課題】反射による多重表示のメリットを生かしつつも良好な視認性を確保できる表示装置を提供する。
【解決手段】発光表示部18を形成してなる透明基板11と、この透明基板11と組み合わされて発光表示部18を封止する封止基板17とを有する有機ELパネル1を備える表示装置において、有機ELパネル1の観察者側に少なくとも発光表示部18を覆うように設けられるEC素子2と、発光表示部18を通じて形成される第1,第2の発光表示像(表示情報)D1,D2の種類に応じてEC素子2の透過率を変化させる制御手段3とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用計器に組み込まれ、各種情報を表示する表示装置に関し、特に表示素子として有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)パネルを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の表示装置として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。この表示装置は、少なくとも透明電極、有機EL層及び背面電極を順次積層して発光表示部を形成してなる透明基板と、この透明基板と組み合わされて発光表示部を封止する封止基板とを備えるものである。
【0003】
透明基板の観察者側を向く外表面には、発光表示部の全体を覆うように、ハーフミラー層が形成され、このハーフミラー層によって発光表示部からの光を透過すると共に背面電極側に反射するように構成しており、ハーフミラー層と背面電極との間を光(画像)が複数回反射することにより、複数の反射像が重なって見え、これにより、発光表示に奥行き感を付与する工夫が施されている。
【特許文献1】特開2002−208474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の表示装置にあっては、発光表示部の全体がハーフミラー層によって覆われる構成であり、常に複数の反射像が重なって見えることになるため、表示情報によっては、反射像が重なることで、表示情報を視認性を妨げてしまうことがあった。例えば表示情報が文字情報(メッセージ情報)の場合、複数の文字像が重なって見えることで視認性を阻害することがあった。
【0005】
本発明は前述した問題点に着目し、反射による多重表示のメリットを生かしつつも良好な視認性を確保できる表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述した課題を解決するため、少なくとも透明電極、有機EL層及び背面電極を順次積層して発光表示部を形成してなる透明基板と、この透明基板と組み合わされて前記発光表示部を封止する封止基板とを有する有機ELパネルを備える表示装置において、前記有機ELパネルの観察者側に少なくとも前記発光表示部を覆うように設けられるEC素子と、前記発光表示部を通じて形成される表示情報の種類に応じて前記EC素子の透過率を変化させる制御手段とを設けたことを特徴とする。
【0007】
また本発明は、前記有機ELパネルと前記EC素子との間に透光部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、初期の目的を達成することができ、反射による多重表示のメリットを生かしつつも良好な視認性を確保できる表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を用いて説明する。
【0010】
図1〜図6は、本発明による表示装置を車両用表示装置に適用した第1の実施形態を示すもので、図1は本実施形態による表示装置の正面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図2の有機ELパネルの要部拡大図、図4は図2のEC素子の要部拡大図、図5及び図6は共に同実施形態による表示装置の表示例を示す正面図である。
【0011】
図1及び図2において、本実施形態による表示装置は、有機ELパネル1と、EC(エレクトロ・クロミック)素子2と、制御手段3とから構成されている。
【0012】
有機ELパネル1は、図2、図3に示すように、透明基板11と、透光性の第1電極(陽極)ライン(透明電極)12と、絶縁層13と、リブ(隔壁)14と、有機層(有機EL層)15と、第2電極(陰極)ライン(背面電極)16と、封止基板17とから主に構成される。なお本実施形態の場合、第1電極ライン12と、絶縁層13と、リブ14と、有機層15と、第2電極ライン16とで本発明でいう発光表示部18が形成される。
【0013】
透明基板11は、例えば長方形形状で電気絶縁性の透明ガラス材からなる。この透明基板11の前面、すなわち観察者側を向く面には、円偏光板19が貼着され、これにより有機ELパネル1の内部が透明基板11を通じて見えないようになっている。なお図2では円偏光板19は省略されている。
【0014】
第1電極ライン12は、ITO等の透光性導電材料によって形成され、蒸着法やスパッタリング法等の手段によって透明基板11上に電極膜を形成した後、フォトリソグラフィー法等によって複数のライン状に形成するものである。
【0015】
絶縁層13は、例えばポリイミド系の電気絶縁性材料から構成され、第1電極ライン12と2電極ライン16との間に位置するように第1電極ライン12上に形成され、両電極ライン12,16の短絡を防止するとともに、発光ドット部DT(後述)の輪郭を明確にするものである。
【0016】
リブ4は、例えばフェノール系の電気絶縁性材料からなり、絶縁層3上に形成される。リブ4は、その断面が逆台形形状等のオーバーハング形状となるようにフォトリソグラフィー法等の手段によって形成されてなるものである。また、リブ4は、第1電極ライン12と直交する方向に等間隔にて複数形成される。リブ4は、その上方から蒸着法やスパッタリング法等によって有機層15及び第2電極ライン16となる金属膜を形成する場合にオーバーハング形状によって有機層15及び前記金属膜が段切れを起こす構造を得るものである。
【0017】
有機層15は、第1電極ライン12上に正孔注入層,正孔輸送層,有機層及び電子輸送層を蒸着法やスパッタリング法等の手段によって順次積層形成してなるものである。なお有機層15は、第1電極12及びリブ14上に形成されるものであるが、リブ14によって段切れが生じリブ14の上面に積層されるものがある。
【0018】
第2電極ライン16は、アルミニウム(AL)やマグネシウム銀(Mg:Ag)等の金属性導電性材料を用い、これら材料をスパッタリング法や蒸着法等の手段により形成することで得られるものであり、前記材料にて形成される金属膜が有機層15と同様にリブ14によって段切れが生じ、有機層15上に積層されるものとリブ14上に積層されるものとに区分けされ、有機層15上に積層されたものが第2電極ライン16となる。なお、第2電極ライン16は、第1電極ライン12よりも導電率が高い。
【0019】
そして第1,第2の電極ライン12,16は、マトリクス状を呈するように有機層15を挟んで積層され、各電極ライン12,16への選択的な電力供給により絶縁層13間に挟まれた有機層5が発光し、これが発光ドットDTとして観察者に視認される。本実施形態の場合、制御手段3の制御のもと、発光ドットDTによって、図5に示すように、「BRAKE」なる文字メッセージ情報からなる第1の発光表示像D1と、三角形の図形イメージからなる第2の発光表示像D2とが形成される。
【0020】
封止基板17は、例えば透明基板11と同じ、長方形形状で電気絶縁性の透明ガラス材からなり、透明基板11と組み合わされて発光表示部18を封止する。
【0021】
EC素子2は、有機ELパネル1の観察者側に少なくとも発光表示部18を覆うように設けられている。このEC素子2は、例えば第1のガラス基板21と、ITO等からなる第1の透明電極22と、EC(エレクトロ・クロミック)層23と、ITO等からなる第2の透明電極24と、第2のガラス基板25とを順次積層してなるもので、制御手段3の制御のもと、第1,第2の透明電極22,24を介してEC層23に電圧が加えられると電気化学的な酸化還元反応が同時に起こり、EC層23が所定色に変化し、この色変化がEC素子2全体の透過率を変化させる。なお、EC層23に逆電圧が加えられると逆の反応が起き、EC層23が消色して元の状態に戻る。
【0022】
制御手段3は、例えばマイクロコンピュータや駆動ドライバIC等を含み、有機ELパネル1の動作を制御し、発光表示部18に各発光表示像D1,D2を表示形成させると共に、EC素子2の動作も制御し、EC層23を通じてEC素子2全体の透過率を変化させる。
【0023】
制御手段3によるEC素子2の透過率制御は、有機ELパネル1を通じて表示形成される表示情報の種別に基づいて行われる。
【0024】
すなわち制御手段3は、有機ELパネル1に文字メッセージ情報からなる第1の発光表示像D1を表示する場合は、EC素子2の透過率を低くし、第2の発光表示部D2を表示する場合は、EC素子2の透過率を高くする。
【0025】
有機ELパネル1に第1の発光表示像D1を表示した状態で、EC素子2の透過率を低くすると、発光表示部18からの光がEC素子2内を進む過程で減衰されるため、有機ELパネル1(第2電極ライン16)とEC素子2(第1のガラス基板21の観察者側を向く表面)との間で反射及び透過を繰り返す光によって形成される第1の発光表示像D1の多重表示像が視認しづらくなり、図5に示すように、第1の発光表示像D1が多重反射を伴わない状態で明瞭に視認される。
【0026】
有機ELパネル1に第2の発光表示像D2を表示した状態で、EC素子2の透過率を高くすると、発光表示部18からの光がEC素子2を進む過程で(透過率低下時より)減衰されないため、有機ELパネル1(第2電極ライン16)とEC素子2(第1のガラス基板21の観察者側を向く表面)との間で反射及び透過を繰り返す光によって形成される第2の発光表示像D2の多重表示像が視認されやすくなり、図6に示すように、第2の発光表示像D2とその多重表示像D2aが視認される。
【0027】
以上のように本実施形態では、第1電極ライン(透明電極)12、有機層(有機EL層)15及び第2電極(背面電極)ライン16を順次積層して発光表示部18を形成してなる透明基板11と、この透明基板11と組み合わされて発光表示部18を封止する封止基板17とを有する有機ELパネル1を備える表示装置において、有機ELパネル1の観察者側に少なくとも発光表示部18を覆うように設けられるEC素子2と、発光表示部18を通じて形成される第1,第2の発光表示像(表示情報)D1,D2の種類に応じてEC素子2の透過率を変化させる制御手段3とを有することにより、多重表示像と共に表示することがふさわしくない第1の発光表示像D1を表示する場合は、EC素子2の透過率を低下させて多重表示像を視認しづらくし、多重表示像と共に表示することに不都合のない第2の発光表示像D2を表示する場合は、EC素子2の透過率を向上させて多重表示像を視認しやすくでき、これにより表示情報の種類に応じて多重表示像の表示と非表示を切り換えることができるため、反射による多重表示のメリットを生かしつつも良好な視認性を確保できることができる。
【0028】
なお第1の発光表示像D1としては、文字情報や複雑な図形意匠等、多重表示を行うと判別が困難になる、多重表示に向かないものが好適であり、また第2の発光表示像D2としては、多重表示を行っても読み取り、判別に問題のない単純図形や意匠が好ましい。
【0029】
図7は本発明の第2の実施形態を示す断面図であり、本実施形態では、有機ELパネル1とEC素子2との間に例えば透光性合成樹脂からなる透光部材4を設けたものである。
【0030】
このように構成することによって、有機ELパネル1(第2電極ライン16)とEC素子2(第1のガラス基板21の観察者側を向く表面)との間の間隔を大きく保ち、多重表示を形成する際の光の反射間隔をより大きくし、奥行き感、立体感を強調することができる。
【0031】
なお有機ELパネル1はドットマトリクス型ではなくセグメント型であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態による表示装置の正面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】図2の有機ELパネルの要部拡大図。
【図4】図2のEC素子の要部拡大図。
【図5】同実施形態による表示装置の表示例を示す正面図。
【図6】同実施形態による表示装置の表示例を示す正面図。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 有機ELパネル
2 回路基板
3 制御手段
4 透光部材
11 透明基板
12 第1電極ライン(透明電極)
13 絶縁層
14 リブ
15 有機層(有機EL層)
16 第2電極ライン(背面電極)
17 封止基板
18 発光表示部
19 円偏光板
21 第1のガラス基板
22 第1の透明電極
23 EC(エレクトロ・クロミック)層
24 第2の透明電極
25 第2のガラス基板
D1 第1の発光表示像
D2 第2の発光表示像
D2a 多重表示像
DT 発光ドット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも透明電極、有機EL層及び背面電極を順次積層して発光表示部を形成してなる透明基板と、この透明基板と組み合わされて前記発光表示部を封止する封止基板とを有する有機ELパネルを備える表示装置において、
前記有機ELパネルの観察者側に少なくとも前記発光表示部を覆うように設けられるEC素子と、
前記発光表示部を通じて形成される表示情報の種類に応じて前記EC素子の透過率を変化させる制御手段とを設けたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記有機ELパネルと前記EC素子との間に透光部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−237201(P2009−237201A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82424(P2008−82424)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】