表示装置
【課題】共振器構造を備え、更に一層の光取出し効率の向上を図ることができる構造、構成を有する表示装置を提供する。
【解決手段】(A)第1電極21、有機層23及び第2電極22が積層されて成り、第1電極21と第2電極22と間で発光層23で発光した光を共振させて第2電極22から出射する複数の発光素子10、並びに、(B)第2電極22の上方に固定された透明上部基板33を具備した表示装置であって、発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、これらは所定の式を満たし、透明上部基板33には光反射部40が形成されており、透明上部基板33の第1面には、発光層から第2電極22を介して出射された光が通過するレンズ部50が形成されている。
【解決手段】(A)第1電極21、有機層23及び第2電極22が積層されて成り、第1電極21と第2電極22と間で発光層23で発光した光を共振させて第2電極22から出射する複数の発光素子10、並びに、(B)第2電極22の上方に固定された透明上部基板33を具備した表示装置であって、発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、これらは所定の式を満たし、透明上部基板33には光反射部40が形成されており、透明上部基板33の第1面には、発光層から第2電極22を介して出射された光が通過するレンズ部50が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、より具体的には、共振器構造を有する発光素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に、有機EL素子と略称する)を発光素子として用いた照明装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、単に、有機EL表示装置と略称する)が普及しつつある。そして、有機EL表示装置にあっては、効率良く光を取り出す技術の開発が強く求められている。光取出し効率が低いと、有機EL素子における実際の発光量を有効に活用していないことになり、消費電力等の点で大きな損失を生じる要因となるからである。
【0003】
このことから有機EL表示装置においては、突起構造を設けることで光取出し効率の向上を図る技術が、例えば、特開2003−077648号に開示されており、マイクロレンズを設けることで光取出し効率の向上を図る技術が、例えば、特開2002−184567号や特表2005−531102号に開示されている。また、太陽電池の集光器として用いられる複合放物面集光器(CPC,Compound Parabolic Concentrator)の構造を含む各種リフレクターを有する有機EL表示装置が、同じく、特表2005−531102号に開示されている。
【0004】
また、有機EL素子において、共振器構造を導入することによって、発光色の色純度を向上させたり、発光効率を高めるなど、発光層で発生する光を制御する試みが行われてきている(例えば、国際公開第01/39554号参照)。更には、共振器構造の中で発生する光と、それぞれの反射端部で反射して戻ってきた光とを互いに強め合う関係にすることで、発光強度を最大にすることができることが、例えば、特許第3703028号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−077648号
【特許文献2】特開2002−184567号
【特許文献3】特表2005−531102号
【特許文献4】国際公開第01/39554号
【特許文献5】特許第3703028号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1〜特許文献3にあっては、発光素子内における全反射に起因して無駄になってしまう光を有効利用することで消費電力の低減を図っているが、有機EL素子における光学条件、具体的には、光取出し効率を向上させるための有機EL素子の発光層を含む有機層の最適化に関しては、何ら、言及されていない。また、特許文献4〜特許文献5にあっては、共振器構造を導入することによって光取出し効率を高めることができるが、更に一層の光取出し効率の向上が強く求められている。
【0007】
従って、本発明の目的は、共振器構造を備え、更に一層の光取出し効率の向上を図ることができる構造、構成を有する表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置は、
(A)第1電極、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、及び、第2電極が積層されて成り、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、第2電極と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射する、複数の発光素子、並びに、
(B)第2電極と対向する第1面、及び、該第1面と対向する第2面を有し、第2電極の上方に固定された透明上部基板、
を具備した表示装置である。そして、発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)及び式(1−4)を満たしている。
【0009】
そして、本発明の第1の態様に係る表示装置は、透明上部基板の第1面から内部に亙り、発光層から第2電極を介して出射され、透明上部基板に入射した光の一部を反射して、透明上部基板の第2面から出射する光反射部(リフレクター部)が形成されていることを特徴とする。
【0010】
一方、本発明の第2の態様に係る表示装置は、透明上部基板の第1面には、発光層から第2電極を介して出射された光が通過するレンズ部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
L1<L2 (1−3)
m1<m2 (1−4)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長(あるいは又、発光層で発生し た光の内の所望の波長)
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【0012】
尚、発光層の最大発光位置から第1界面までの距離L1とは、発光層の最大発光位置から第1界面までの実際の距離(物理的距離)を指し、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離L2とは、発光層の最大発光位置から第2界面までの実際の距離(物理的距離)を指す。また、光学距離とは、光路長とも呼ばれ、一般に、屈折率nの媒質中を距離Lだけ光線が通過したときのn×Lを指す。以下においても、同様である。従って、有機層の平均屈折率をnaveとしたとき、
OL1=L1×nave
OL2=L2×nave
の関係がある。ここで、平均屈折率naveとは、有機層を構成する各層の屈折率と厚さの積を合計し、有機層の厚さで除したものである。
【0013】
本発明の第1の態様に係る表示装置において、複数の発光素子の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子に対して複数の光反射部が設けられている形態とすることができる。あるいは又、複数の発光素子の配列は、ダイアゴナル配列、デルタ配列、又は、レクタングル配列であり、1つの発光素子に対して1つの光反射部が設けられている形態とすることができる。尚、以上の技術的事項は、後述する本発明の第3の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0014】
上記の好ましい形態を含む本発明の第1の態様に係る表示装置において、
光反射部は、回転体の表面の一部から構成され、
光反射部の下端部は、透明上部基板の第1面内に位置し、
光反射部の上端部は、透明上部基板内部に位置し、且つ、透明上部基板の第2面と平行であり、
回転体の回転軸である光反射部の軸線をz軸とし、光反射部の下端部の半径をrRef-B、光反射部の上端部の半径をrRef-T、光反射部の下端部から上端部までのz軸に沿った距離をLRefとし、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
(rRef-T+rRef-B)/LRef≦(nSub-T2−1)-1/2
を満足することが望ましい。そして、この場合、
z軸を含む仮想平面で光反射部を切断したときの光反射部の断面形状は、放物線の一部であり、
放物線の焦点から準線に引いた垂線は、z軸に対して傾いており、
該仮想平面で光反射部を切断したときの該仮想平面と光反射部の下端部の交わる点から放物線の焦点までの距離をLFocusとしたとき、
0.1≦rRef-B/LFocus<0.5
を満足することが望ましく、これによって、有効視覚範囲内における輝度向上を図ることができ、表示装置の一層の消費電力の低減を図りつつ、明るい画面を得ることができる。更には、放物線の焦点から準線に引いた垂線のz軸に対する傾斜角θParaは、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θPara)<1/nSub-T
を満足することが望ましく、あるいは又、放物線の焦点は、透明上部基板の第1面に含まれることが望ましい。尚、z軸を含む仮想平面で光反射部を切断したときの光反射部の断面として対称な2つの形状が得られるが、z軸を含む仮想平面で光反射部を切断したときの光反射部の断面形状を議論するとき、係る2つの形状の内の一方の形状を対象に議論を行う。また、以上の技術的事項は、「透明上部基板」を『透明下部基板』と読み替え、「第2電極」を『第1電極』と読み替え、「nSub-T」を『nSub-B』と読み替えることで、後述する本発明の第3の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0015】
あるいは又、本発明の第1の態様に係る表示装置において、
光反射部は、回転体の表面の一部から構成され、
光反射部の下端部は、透明上部基板の第1面内に位置し、
光反射部の上端部は、透明上部基板内部に位置し、且つ、透明上部基板の第2面と平行であり、
回転体の回転軸である光反射部の軸線をz軸とし、z軸が第2電極と交わる点における第2電極から出射する光の第2電極側においてz軸と成す角度をθO-2、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θO-2)>1/nSub-T
を満足する構成とすることができる。尚、以上の技術的事項は、「透明上部基板」を『透明下部基板』と読み替え、「第2電極」を『第1電極』と読み替え、「nSub-T」を『nSub-B』と読み替え、「θO-2」を『θO-1』と読み替えることで、後述する本発明の第3の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0016】
一方、本発明の第2の態様に係る表示装置において、複数の発光素子の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子に対して複数のレンズ部が設けられている形態とすることができる。あるいは又、複数の発光素子の配列は、ダイアゴナル配列、デルタ配列、又は、レクタングル配列であり、1つの発光素子に対して1つのレンズ部が設けられている形態とすることができる。尚、以上の技術的事項は、後述する本発明の第4の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0017】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係る表示装置において、
光学軸であるレンズ部の軸線をz軸とし、z軸が第2電極と交わる点における第2電極から出射する光の第2電極側においてz軸と成す角度をθO-2、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θO-2)>1/nSub-T
を満足することが望ましい。尚、以上の技術的事項は、「第2電極」を『第1電極』と読み替え、「θO-2」を『θO-1』と読み替え、「nSub-T」を『nSub-B』と読み替えることで、後述する本発明の第4の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0018】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置において、第1電極の平均光反射率は50%以上、好ましくは80%以上であり、第2電極の平均光透過率は50%乃至90%、好ましくは60%乃至90%であることが望ましい。尚、以上の技術的事項は、「第2電極」を『第1電極』と読み替え、「第2電極」を『第1電極』と読み替えることで、後述する本発明の第3の態様あるいは第4の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0019】
また、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置において、第1電極は光反射材料から成り、第2電極は半光透過材料から成り、最も光取出し効率を高くし得るm1=0,m2=1である形態とすることができる。本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置、あるいは、後述する第5の態様に係る表示装置にあっては、正孔輸送層(正孔供給層)よりも電子輸送層(電子供給層)を厚くすることで、低い駆動電圧で高効率化に必要十分な発光層への電子供給が可能となる。即ち、アノード電極に相当する第1電極と発光層との間に正孔輸送層を配置し、しかも、電子輸送層よりも薄い膜厚で形成することで、正孔の供給を増大させることが可能となる。そして、これにより、正孔と電子の過不足がなく、且つ、キャリア供給量も十分多いキャリアバランスを得ることができるため、高い発光効率を得ることができる。また、正孔と電子の過不足がないことで、キャリアバランスが崩れ難く、駆動劣化が抑制され、発光寿命を長くすることができる。
【0020】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置において、第2電極と透明上部基板の間には、第2電極側から、保護膜及び接着層が形成されている形態とすることができる。ここで、保護膜を構成する材料として、発光層で発光した光に対して透明であり、緻密で、水分を透過させない材料を用いることが好ましく、具体的には、例えば、アモルファスシリコン(α−Si)、アモルファス炭化シリコン(α−SiC)、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xNx)、アモルファス酸化シリコン(α−Si1-yOy)、アモルファスカーボン(α−C)、アモルファス酸化・窒化シリコン(α−SiON)、Al2O3を挙げることができるし、接着層を構成する材料として、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤といった熱硬化型接着剤や、紫外線硬化型接着剤を挙げることができる。尚、後述する本発明の第3の態様〜第5の態様に係る表示装置にあっても、第2電極の上方に第2基板を配し、第1電極と第2基板の間には、第1電極側から、上述した保護膜及び接着層が形成されている形態とすることができる。
【0021】
上記の目的を達成するための本発明の第3の態様あるいは第4の態様に係る表示装置は、
(A)第1面、及び、該第1面と対向する第2面を有する透明下部基板、並びに、
(B)透明下部基板の第1面上、若しくは、透明下部基板の第1面の上方に設けられ、第1電極、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、及び、第2電極が積層されて成り、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、第2電極と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第1電極から出射する、複数の発光素子、
を具備した表示装置である。そして、発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)及び式(2−4)を満たす。
【0022】
そして、本発明の第3の態様に係る表示装置は、透明下部基板の第1面から内部に亙り、発光層から第1電極を介して出射され、透明下部基板に入射した光の一部を反射して、透明下部基板の第2面から出射する光反射部(リフレクター部)が形成されていることを特徴とする。
【0023】
一方、本発明の第4の態様に係る表示装置は、透明下部基板の第1面には、発光層から第1電極を介して出射された光が通過するレンズ部が形成されていることを特徴とする。
【0024】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (2−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (2−2)
L1>L2 (2−3)
m1>m2 (2−4)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長(あるいは又、発光層で発生し た光の内の所望の波長)
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【0025】
本発明の第3の態様あるいは第4の態様に係る表示装置において、第1電極は半光透過材料から成り、第2電極は光反射材料から成り、最も光取出し効率を高くし得るm1=1,m2=0である形態とすることができる。本発明の第3の態様あるいは第4の態様に係る表示装置にあっても、正孔輸送層よりも電子輸送層を厚くすることで、低い駆動電圧で高効率化に必要十分な発光層への電子供給が可能となる。即ち、アノード電極に相当する第2電極と発光層との間に正孔輸送層を配置し、しかも、電子輸送層よりも薄い膜厚で形成することで、正孔の供給を増大させることが可能となる。そして、これにより、正孔と電子の過不足がなく、且つ、キャリア供給量も十分多いキャリアバランスを得ることができるため、高い発光効率を得ることができる。また、正孔と電子の過不足がないことで、キャリアバランスが崩れ難く、駆動劣化が抑制され、発光寿命を長くすることができる。
【0026】
上記の目的を達成するための本発明の第5の態様に係る表示装置は、第1電極、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、及び、第2電極が積層されて成り、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、第2電極と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射する、複数の発光素子を具備した表示装置であって、
発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(3−1)、式(3−2)、式(3−3)及び式(3−4)を満たすことを特徴とする。
【0027】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (3−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (3−2)
L1<L2 (3−3)
m1<m2 (3−4)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長(あるいは又、発光層で発生し た光の内の所望の波長)
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【0028】
本発明の第5の態様に係る表示装置において、第1電極の平均光反射率は50%以上、好ましくは80%以上であり、第2電極の平均光透過率は50%乃至90%、好ましくは60%乃至90%であることが望ましい。
【0029】
上記の好ましい形態を含む本発明の第5の態様に係る表示装置において、第1電極は光反射材料から成り、第2電極は半光透過材料から成り、最も光取出し効率を高くし得るm1=0,m2=1である構成とすることができる。
【0030】
本発明の第1の態様、第2の態様あるいは第5の態様に係る表示装置(これらの表示装置を総称して、『上面発光型の表示装置』と呼ぶ場合がある)における第1電極、あるいは又、本発明の第3の態様〜第4の態様に係る表示装置(これらの表示装置を総称して、『下面発光型の表示装置』と呼ぶ場合がある)における第2電極(これらの電極を、便宜上、『光反射電極』と呼ぶ場合がある)を構成する材料(光反射材料)として、光反射電極をアノード電極として機能させる場合、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)といった仕事関数の高い金属あるいは合金(例えば、銀を主成分とし、0.3重量%乃至1重量%のパラジウム(Pd)と、0.3重量%〜1重量%の銅(Cu)とを含むAg−Pd−Cu合金や、Al−Nd合金)を挙げることができる。更には、アルミニウム(Al)及びアルミニウムを含む合金等の仕事関数の値が小さく、且つ、光反射率の高い導電材料を用いる場合には、適切な正孔注入層を設けるなどして正孔注入性を向上させることで、アノード電極として用いることができる。光反射電極の厚さとして、0.1μm乃至1μmを例示することができる。あるいは又、誘電体多層膜やアルミニウム(Al)といった光反射性の高い反射膜上に、インジウムとスズの酸化物(ITO)やインジウムと亜鉛の酸化物(IZO)等の正孔注入特性に優れた透明導電材料を積層した構造とすることもできる。一方、光反射電極をカソード電極として機能させる場合、仕事関数の値が小さく、且つ、光反射率の高い導電材料から構成することが望ましいが、アノード電極として用いられる光反射率の高い導電材料に適切な電子注入層を設けるなどして電子注入性を向上させることで、カソード電極として用いることもできる。
【0031】
一方、本発明の第1の態様、第2の態様あるいは第5の態様に係る表示装置(上面発光型の表示装置)における第2電極、あるいは又、本発明の第3の態様〜第4の態様に係る表示装置(下面発光型の表示装置)における第1電極(これらの電極を、便宜上、『半光透過電極』と呼ぶ場合がある)を構成する材料(半光透過材料)として、半光透過電極をカソード電極として機能させる場合、発光光を透過し、しかも、有機層に対して電子を効率的に注入できるように仕事関数の値の小さな導電材料から構成することが望ましく、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)、アルミニウム(Al)とリチウム(Li)の合金(Al−Li合金)等の仕事関数の小さい金属あるいは合金を挙げることができ、中でも、Mg−Ag合金が好ましく、マグネシウムと銀との体積比として、Mg:Ag=5:1〜30:1を例示することができる。半光透過電極の厚さとして、4nm乃至50nm、好ましくは、4nm乃至20nm、より好ましくは6nm乃至12nmを例示することができる。あるいは又、半光透過電極を、有機層側から、上述した材料層と、例えばITOやIZOから成る所謂透明電極(例えば、厚さ3×10-8m乃至1×10-6m)との積層構造とすることもできる。あるいは又、半光透過電極に対して、低抵抗材料から成るバス電極(補助電極)を設け、半光透過電極全体として低抵抗化を図ってもよい。一方、半光透過電極をアノード電極として機能させる場合、発光光を透過し、しかも、仕事関数の値の大きな導電材料から構成することが望ましい。
【0032】
第1電極や第2電極の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、メタルマスク印刷法といった各種印刷法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法等を挙げることができる。各種印刷法やメッキ法によれば、直接、所望の形状(パターン)を有する第1電極や第2電極を形成することが可能である。尚、有機層を形成した後、第1電極や第2電極を形成する場合、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さな成膜方法、あるいは又、MOCVD法といった成膜方法に基づき形成することが、有機層のダメージ発生を防止するといった観点から好ましい。有機層にダメージが発生すると、リーク電流の発生による「滅点」と呼ばれる非発光画素(あるいは非発光副画素)が生じる虞がある。また、有機層の形成からこれらの電極の形成までを大気に暴露することなく実行することが、大気中の水分による有機層の劣化を防止するといった観点から好ましい。
【0033】
第1電極及び第2電極は入射した光の一部を吸収し、残りを反射する。従って、反射光に位相シフトが生じる。この位相シフト量Φ1,Φ2は、第1電極及び第2電極を構成する材料の複素屈折率の実数部分と虚数部分の値を、例えばエリプソメータを用いて測定し、これらの値に基づく計算を行うことで求めることができる(例えば、"Principles of Optic", Max Born and Emil Wolf, 1974(PERGAMON PRESS) 参照)。尚、有機層、その他の屈折率もエリプソメータを用いて測定することで求めることができる。
【0034】
本発明の第1の態様あるいは第3の態様に係る表示装置における光反射部は、例えば、透明上部基板あるいは透明下部基板に形成された光反射層から構成されている。ここで、光反射層として、アルミニウム(Al)層、アルミニウム合金層(例えば、Al−Nd層)、クロム(Cr)層、銀(Ag)層、銀合金層(例えば、Ag−Pd−Cu層、Ag−Sm−Cu層)を挙げることができ、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法等によって形成することができる。光反射部を備えた透明上部基板あるいは透明下部基板は、構成する材料にも依るが、例えば、第1面に凹部をスタンパを用いて形成し、あるいは又、第1面に凹部を切削加工に基づき形成し、係る凹部の露出した表面に光反射層を形成した後、凹部を埋め込むといった方法で作製することができる。
【0035】
本発明の第1の態様あるいは第3の態様に係る表示装置において、例えば、発光素子の発光領域の平面形状が矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1)としたとき、1つの発光素子に対して設ける複数の光反射部の具体的な数として、係数αの整数部、あるいは、(係数αの整数部−1)を例示することができる。
【0036】
本発明の第1の態様あるいは第3の態様に係る表示装置において、光反射部は回転体の表面の一部から構成されており、回転体の回転軸である光反射部の軸線をz軸としたとき、z軸を含む仮想平面で光反射部を切断したときの光反射部の断面形状は、放物線の一部から構成されていることが好ましいが、それ以外から構成されていてもよく、回転体として、例えば、球面、回転楕円面、回転放物面とすることもできるし、3次以上の多項式、二葉線、三葉線、四葉線、連珠形、蝸牛線、正葉線、螺獅線、疾走線、公算曲線、引弧線、懸垂線、擺線、餘擺線、星芒形、半3次放物線、リサジュー曲線、アーネシー曲線、外サイクロイド、心臓形、内サイクロイド、クロソイド曲線、螺線に例示される曲線の一部を回転させて得られる曲面とすることもできる。また、場合によっては、1本の線分、あるいは、複数の線分の組合せ、線分と曲線の組合せを回転させて得られる面とすることもできる。
【0037】
本発明の第2の態様あるいは第4の態様に係る表示装置におけるレンズ部を構成する材料として、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、アクリル系樹脂、ABS樹脂といったプラスチックや、ガラスを挙げることができる。レンズ部を凸レンズから構成する場合、レンズ部を構成する凸レンズは、球面レンズであってもよいが、非球面レンズとすることがより好ましい。また、凸レンズは、平凸レンズ、両凸レンズ、メニスカス凸レンズから構成することができる。レンズ部は、周知の方法に基づき形成することができる。
【0038】
本発明の第2の態様あるいは第4の態様に係る表示装置において、例えば、発光素子の発光領域の平面形状が矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1)としたとき、1つの発光素子に対して設ける複数のレンズ部の具体的な数として、係数αの整数部、あるいは、(係数αの整数部−1)を例示することができる。
【0039】
本発明の第1の態様〜第5の態様に係る表示装置(以下、これらを総称して、単に、本発明の表示装置と呼ぶ)にあっては、複数の発光素子は第1基板上に形成されている。ここで、第1基板として、あるいは又、第2基板として、高歪点ガラス基板、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)基板、硼珪酸ガラス(Na2O・B2O3・SiO2)基板、フォルステライト(2MgO・SiO2)基板、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)基板、表面に絶縁層が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁層が形成された石英基板、表面に絶縁層が形成されたシリコン基板、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。但し、下面発光型の表示装置にあっては、第1基板は、発光素子が出射する光に対して透明であることが要求される。また、下面発光型の表示装置にあっては、第1基板は、透明下部基板を兼ねていてもよい。第1基板が、透明下部基板を兼ねていない場合、透明下部基板を構成する材料として、上述の材料を挙げることができる。また、本発明の第1の態様〜第2の態様に係る表示装置にあっては、透明上部基板を構成する材料として、上述の材料を挙げることができる。第1基板と第2基板の構成材料、透明上部基板、透明下部基板は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0040】
本発明の表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置と略称する)を挙げることができ、有機EL表示装置をカラー表示の有機EL表示装置としたとき、有機EL表示装置を構成する有機EL素子のそれぞれによって、副画素が構成される。ここで、1画素は、例えば、赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、及び、青色を発光する青色発光副画素の3種類の副画素から構成されている。従って、この場合、有機EL表示装置を構成する有機EL素子の数をN×M個とした場合、画素数は(N×M)/3である。あるいは又、本発明の表示装置として、その他、液晶表示装置用のバックライト装置や面状光源装置を含む照明装置を挙げることができる。
【0041】
有機層は有機発光材料から成る発光層を備えているが、具体的には、例えば、正孔輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造、正孔輸送層と電子輸送層を兼ねた発光層との積層構造、正孔注入層と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と電子注入層との積層構造から構成することができる。有機層の形成方法として、真空蒸着法等の物理的気相成長法(PVD法);スクリーン印刷法やインクジェット印刷法といった印刷法;転写用基板上に形成されたレーザ吸収層と有機層の積層構造に対してレーザを照射することでレーザ吸収層上の有機層を分離して、有機層を転写するといったレーザ転写法、各種の塗布法を例示することができる。有機層を真空蒸着法に基づき形成する場合、例えば、所謂メタルマスクを用い、係るメタルマスクに設けられた開口を通過した材料を堆積させることで有機層を得ることができる。
【0042】
光反射電極は、例えば、層間絶縁層上に設けられている。そして、この層間絶縁層は、第1基板上に形成された発光素子駆動部を覆っている。発光素子駆動部は、1又は複数の薄膜トランジスタ(TFT)から構成されており、TFTと第1電極とは、層間絶縁層に設けられたコンタクトプラグを介して電気的に接続されている。層間絶縁層の構成材料として、SiO2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料;SiN系材料;ポリイミド等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。層間絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、各種印刷法等の公知のプロセスが利用できる。下面発光型の表示装置にあっては、層間絶縁層は、発光素子からの光に対して透明な材料から構成する必要があるし、発光素子駆動部は発光素子からの光を遮らないように形成する必要がある。
【0043】
有機層の上方には、有機層への水分の到達防止を目的として、上述したとおり、絶縁性あるいは導電性の保護膜を設けることが好ましい。保護膜は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、あるいは又、MOCVD法といった成膜方法に基づき形成することが、下地に対して及ぼす影響を小さくすることができるので好ましい。あるいは又、有機層の劣化による輝度の低下を防止するために、成膜温度を常温に設定し、更には、保護膜の剥がれを防止するために保護膜のストレスが最小になる条件で保護膜を成膜することが望ましい。また、保護膜の形成は、既に形成されている電極を大気に暴露することなく形成することが好ましく、これによって、大気中の水分や酸素による有機層の劣化を防止することができる。更には、表示装置が上面発光型である場合、保護膜は、有機層で発生した光を例えば80%以上、透過する材料から構成することが望ましく、具体的には、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えば、上述した材料を例示することができる。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを生成しないため、透水性が低く、良好な保護膜を構成する。尚、保護膜を導電材料から構成する場合、保護膜を、ITOやIZOのような透明導電材料から構成すればよい。
【0044】
発光素子からの光が通過する透明上部基板や第1基板(透明下部基板)には、必要に応じて、カラーフィルターや遮光膜(ブラックマトリクス)を形成してもよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明の第1の態様〜第4の態様に係る表示装置にあっては、発光素子における全反射に起因した光取出し効率の低下といった問題を光反射部やレンズ部を備えることで解決し、しかも、本発明の第1の態様〜第5の態様に係る表示装置にあっては、発光素子の有機層と第1電極と第2電極によって構成される光の干渉条件あるいは共振条件を所望の条件、L1<L2且つm1<m2を満足することによって、即ち、発光層の最大発光位置を半光透過電極よりも光反射電極に近づけることにより、光取出し効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、実施例1の表示装置の模式的な一部断面図である。
【図2】図2は、実施例1の表示装置における光反射部の模式図である。
【図3】図3の(A)は、実施例1の表示装置における有機層等の模式図であり、図3の(B)は、比較例1の表示装置における有機層等の模式図である。
【図4】図4は、実施例1の表示装置における光反射部の概念図である。
【図5】図5は、実施例1の表示装置における光反射部や、実施例2の表示装置におけるレンズ部等の模式的な配置図である。
【図6】図6は、実施例2の表示装置の模式的な一部断面図である。
【図7】図7は、実施例2の表示装置におけるレンズ部の模式図である。
【図8】図8は、実施例3の表示装置の模式的な一部断面図である。
【図9】図9は、実施例3の表示装置における有機層等の模式図である。
【図10】図10は、実施例4の表示装置の模式的な一部断面図である。
【図11】図11は、実施例1及び比較例1のそれぞれの場合における窒化シリコン(Si1-xNx)から成る保護膜中での発光エネルギー分布の計算を示すグラフである。
【図12】図12は、実施例1及び比較例1のそれぞれにおいて、保護膜から接着層中に出射された光の発光エネルギー分布を計算したグラフである。
【図13】図13の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1及び比較例1における相対輝度の視野角依存性を示すグラフである。
【図14】図14の(A)、(B)及び(C)は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図15】図15の(A)及び(B)は、図14の(C)に引き続き、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図16】図16は、図15の(B)に引き続き、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図17】図17の(A)〜(D)は、光反射部を有する透明上部基板の製造方法の概要を説明するためのガラス基板等の模式的な一部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例1】
【0048】
実施例1は、本発明の第1の態様及び第5の態様に係る表示装置、具体的には、有機EL表示装置に関する。実施例1の表示装置(以下、有機EL表示装置と呼ぶ場合がある)の模式的な一部断面図を図1に示し、光反射部の模式図を図2に示し、有機層等の模式図を図3の(A)に示す。実施例1の有機EL表示装置は、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置であり、上面発光型である。即ち、上部電極に相当する第2電極を通して光が出射される。
【0049】
実施例1の有機EL表示装置、あるいは、後述する実施例2〜実施例4の有機EL表示装置は、発光素子(具体的には、有機EL素子)10を、複数(例えば、N×M=2880×540)、有する。尚、1つの発光素子10は、1つの副画素を構成する。従って、有機EL表示装置は、(N×M)/3の画素を有する。ここで、1画素は、赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、及び、青色を発光する青色発光副画素の3種類の副画素から構成されている。
【0050】
図1及び図3の(A)に示すように、実施例1あるいは後述する実施例2の有機EL表示装置は、本発明の第1の態様、第2の態様、第5の態様に係る表示装置に沿って表現すれば、
(A)第1電極21、有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、及び、第2電極22が積層されて成り、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面21Aと、第2電極22と有機層23との界面によって構成された第2界面22Aとの間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極22から出射する、複数の発光素子10、
を具備した表示装置である。
【0051】
そして、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置に沿って表現すれば、更に、
(B)第2電極22と対向する第1面33A、及び、この第1面33Aと対向する第2面33Bを有し、第2電極22の上方に固定された透明上部基板33、
を具備している。
【0052】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例4の有機EL表示装置における各発光素子(有機EL素子)10は、より具体的には、
(a)第1電極21、
(b)開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した絶縁層24、
(c)開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上に少なくとも設けられ、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層23、及び、
(d)第2電極22、
を具備している。
【0053】
実施例1あるいは後述する実施例2においては、第1電極21をアノード電極として用い、第2電極22をカソード電極として用いる。第1電極21は、光反射材料、具体的には、Al−Nd合金から成り、第2電極22は、半光透過材料、具体的には、マグネシウム(Mg)を含む導電材料、より具体的には、厚さ10nmのMg−Ag合金から成る。第1電極21は、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき形成されている。また、第2電極22は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法によって成膜されている。第1電極21及び第2電極22の屈折率測定結果、第1電極21の光反射率測定結果、第2電極22の光透過率測定結果を、以下の表1に示す。尚、測定は、波長530nmにおいて行った結果である。
【0054】
また、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4において、絶縁層24は、平坦性に優れ、しかも、有機層23の水分による劣化を防止して発光輝度を維持するために吸水率の低い絶縁材料、具体的には、ポリイミド樹脂から構成されている。更には、有機層23は、例えば、正孔輸送層、及び、電子輸送層を兼ねた発光層の積層構造から構成されているが、図面では1層で表す場合がある。
【0055】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4において、有機EL素子を構成する第1電極21は、CVD法に基づき形成されたSiO2から成る層間絶縁層16(より具体的には、上層層間絶縁層16B)上に設けられている。そして、この層間絶縁層16は、第1基板11上に形成された有機EL素子駆動部を覆っている。有機EL素子駆動部は、複数のTFTから構成されており、TFTと第1電極21とは、層間絶縁層(より具体的には、上層層間絶縁層16B)に設けられたコンタクトプラグ18、配線17、コンタクトプラグ17Aを介して電気的に接続されている。尚、図面においては、1つの有機EL素子駆動部につき、1つのTFTを図示した。TFTは、第1基板11上に形成されたゲート電極12、第1基板11及びゲート電極12上に形成されたゲート絶縁膜13、ゲート絶縁膜13上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域14、並びに、ソース/ドレイン領域14の間であって、ゲート電極12の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域15から構成されている。尚、図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極12は、走査回路(図示せず)に接続されている。
【0056】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4において、第2電極22上には、有機層23への水分の到達防止を目的として、真空蒸着法に基づき、窒化シリコン(Si1-xNx)から成る絶縁性の保護膜31が設けられている。保護膜31の上には透明上部基板(本発明の第5の態様における第2基板)33が配されているが、保護膜31と透明上部基板33とは、アクリル系接着剤から成る接着層32によって接着されている。保護膜31及び接着層32の屈折率測定結果を、以下の表1に示す。尚、屈折率は、波長530nmにおける測定結果である。
【0057】
[表1]
第1電極21の屈折率
実数部:0.755
虚数部:5.466
第2電極22の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
第1電極21の光反射率:85
第2電極22の光透過率:57%
保護膜31の屈折率
実数部:1.87
虚数部:0
接着層32の屈折率
実数部:1.53
虚数部:0
【0058】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4において、第1基板11や透明上部基板33、第2基板、あるいは又、後述する透明下部基板35は、ソーダガラスから構成されている。
【0059】
そして、実施例1あるいは後述する実施例2において、図3の(A)に示すように、発光層23Aの最大発光位置から第1界面21Aまでの距離をL1、光学距離をOL1、発光層23Aの最大発光位置から第2界面22Aまでの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)及び式(1−4)[あるいは式(3−1)、式(3−2)、式(3−3)及び式(3−4)]を満たしている。
【0060】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1),(3−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2),(3−2)
L1<L2 (1−3),(3−3)
m1<m2 (1−4),(3−4)
【0061】
ここで、
λ :発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長(あるいは又、発光層2 3Aで発生した光の内の所望の波長)
Φ1:第1界面21Aで生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面22Aで生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【0062】
そして、実施例1の有機EL表示装置にあっては、透明上部基板33の第1面33Aから内部に亙り、発光層23Aから第2電極22を介して出射され、透明上部基板33に入射した光の一部を反射して、透明上部基板33の第2面33Bから出射する光反射部(リフレクター部)40が形成されている。図5に模式的な配置図を示すように、複数の発光素子10の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子10に対して複数の光反射部40が設けられている。具体的には、発光素子10の発光領域の平面形状は矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1であり、実施例1にあっては、α=3)としたとき、1つの発光素子10に対して設けられた複数の光反射部40の具体的な数を、係数αの整数部、即ち、「3」とした。
【0063】
具体的には、光反射部40は、Al−Nd層から成る光反射層から構成されている。光反射部40は、例えば、透明上部基板33の第1面33Aに凹部41を切削加工に基づき形成し、係る凹部41の露出した表面に、例えば、真空蒸着法に基づき光反射層を形成した後、凹部41を、例えば、アクリル系樹脂から成る充填材料42で埋め込むといった方法で作製することができる。尚、充填材料42を用いる代わりに、接着層32によって、透明上部基板33を貼り合わせると同時に凹部41を埋め込んでもよい。
【0064】
実施例1の有機EL表示装置にあっては、図2に光反射部の模式図を示し、図4に概念図を示すように、光反射部40は、回転体の表面の一部から構成されている。そして、光反射部40の下端部40Aは、透明上部基板33の第1面33A内に位置し、光反射部40の上端部40Bは、透明上部基板33内部に位置し、且つ、透明上部基板33の第2面33Bと平行である。ここで、回転体の回転軸である光反射部40の軸線をz軸とし、光反射部40の下端部40Aの半径をrRef-B、光反射部40の上端部40Bの半径をrRef-T、光反射部40の下端部40Aから上端部40Bまでのz軸に沿った距離をLRefとし、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
(rRef-T+rRef-B)/LRef≦(nSub-T2−1)-1/2
を満足している。LRef,rRef-T,rRef-Bの具体的な数値を、以下の表2に例示する。
【0065】
そして、この場合、z軸を含む仮想平面で光反射部40を切断したときの光反射部40の断面形状は、放物線の一部である。ここで、放物線の焦点から準線に引いた垂線は、z軸に対して傾いており、この仮想平面で光反射部40を切断したときのこの仮想平面と光反射部40の下端部40Aの交わる点から放物線の焦点までの距離をLFocusとしたとき、
0.1≦rRef-B/LFocus<0.5
を満足している。更には、放物線の焦点から準線に引いた垂線のz軸に対する傾斜角θParaは、透明上部基板33の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θPara)<1/nSub-T
を満足している。尚、放物線の焦点は、透明上部基板33の第1面33Aに含まれている。ここで、放物線の焦点から準線に引いた垂線をY’軸、放物線の焦点から準線に垂直に下ろした線分の垂直二等分線をX’軸とするガウス座標を想定したとき、放物線の方程式は、画素ピッチを100μmとしたときを例にとると、
y’=3.57×10-3・x’2
で表すことができる。
【0066】
尚、光反射部40の形状を分析したとき、放物線の方程式y’=k・x’2(但し、kは定数)からy’の値が±5μmの範囲内でばらついている場合にも、係る形状は放物線に包含される。後述する実施例3においても同様である。
【0067】
あるいは又、実施例1の有機EL表示装置において、光反射部40は、回転体の表面の一部から構成され、光反射部40の下端部40Aは、透明上部基板33の第1面33A内に位置し、光反射部40の上端部40Bは、透明上部基板33内部に位置し、且つ、透明上部基板33の第2面33Bと平行である。そして、回転体の回転軸である光反射部40の軸線をz軸とし、z軸が第2電極22と交わる点における第2電極22から出射する光の第2電極22側においてz軸と成す角度をθO-2、透明上部基板33の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θO-2)>1/nSub-T
を満足する。
【0068】
[表2]
LRef :81(μm)
rRef-T:50(μm)
rRef-B:30.6(μm)
LFocus:42(μm)
θPara :41.8度
θO-2 :41.8度
nSub-T:1.5
【0069】
実施例1あるいは後述する実施例2において、各有機層23は、具体的には、赤色発光副画素を構成する赤色発光有機EL素子における赤色発光有機層、緑色発光副画素を構成する緑色発光有機EL素子における緑色発光有機層、及び、青色発光副画素を構成する青色発光有機EL素子における青色発光有機層から構成されている。
【0070】
具体的には、赤色発光有機層は、第1電極側から、
[正孔注入層](厚さ10nm) :LGケミカル社製 LGHIL
[正孔輸送層](厚さ26nm) :出光興産株式会社製 HT320
[発光層] (厚さ50nm) :出光興産株式会社製 RH001 及び
東レ株式会社製 D125(0.5%ドープ)
[電子輸送層](厚さ220nm):出光興産株式会社製 ET085
から構成されている。尚、最大発光位置は、電子輸送層と発光層との界面に存在している。
【0071】
また、緑色発光有機層は、第1電極側から、
[正孔注入層](厚さ10nm) :LGケミカル社製 LGHIL
[正孔輸送層](厚さ35nm) :出光興産株式会社製 HT320
[発光層] (厚さ30nm) :出光興産株式会社製 BH232 及び
GD206(10%ドープ)
[電子輸送層](厚さ175nm):出光興産株式会社製 ETS085
から構成されている。尚、最大発光位置は、正孔輸送層と発光層との界面に存在している。
【0072】
更には、青色発光有機層は、第1電極側から、
[正孔注入層](厚さ10nm) :LGケミカル社製 LGHIL
[正孔輸送層](厚さ24nm) :出光興産株式会社製 HT320
[発光層] (厚さ30nm) :出光興産株式会社製 BH232 及び
BD218(10%ドープ)
[電子輸送層](厚さ141nm):出光興産株式会社製 ET085
から構成されている。尚、最大発光位置は、正孔輸送層と発光層との界面に存在している。
【0073】
赤色発光有機層、緑色発光有機層及び青色発光有機層におけるλ,L1,OL1,2OL1/λ,L2,OL2,2OL2/λ,nave,{−2Φ1/(2π)+m1},{−2Φ2/(2π)+m2}の値を、以下の表3に例示する。但し、m1=0,m2=1である。
【0074】
[表3]
【0075】
以下、実施例1の有機EL表示装置の発光素子10に関する詳細を説明する。ここで、実施例1のm1=0且つm2=1の条件と対比するために、比較例1として、m1=1且つm2=0の条件を有する発光素子を考える。尚、比較例1の発光素子の有機層等の模式図を図3の(B)に示す。即ち、図3の(A)及び(B)に示すように、実施例1にあっては、第1界面寄りで発光し、比較例1にあっては、第2界面寄りで発光する。
【0076】
図11に、緑色発光素子において、実施例1及び比較例1のそれぞれの場合における窒化シリコン(Si1-xNx)から成る保護膜31中での発光エネルギー分布の計算結果を示す。尚、実施例1によって得られた発光エネルギー分布を曲線「A」で示し、比較例1によって得られた発光エネルギー分布を曲線「B」で示す。尚、図11の横軸は、保護膜31中を進行する光が、保護膜31の頂面に衝突するときの保護膜31の頂面の法線との成す角度である。尚、便宜上、この角度を『保護膜中の進行角度』と呼ぶ。発光エネルギー分布は、各波長毎に共振(干渉)による所望媒質中への光取出し効率を計算し、媒質中の発光強度を掛け合わせて、所望媒質中での光強度を得た後、全波長域に亙り積分し、特定角度でのトータルエネルギーを計算することで得ることができる。
【0077】
ところで、窒化シリコン(Si1-xNx)の屈折率は約1.8であり、透明上部基板33の屈折率は約1.45である。従って、図11から、保護膜中の進行角度が約34度までの光は、光反射部あるいは後述するレンズ部を設けなくとも、保護膜31から透明上部基板33を経由して空気中に出射できる光である。一方、保護膜中の進行角度が34度〜53度までの光は、保護膜31から接着剤及び透明上部基板33へは入射するが、透明上部基板33と空気との界面で全反射を起こし、空気中に出射できない光である。 また、53度以上の光は、保護膜と接着剤との界面で全反射を起こし、接着剤及び透明上部基板33へも入射できない光である。従って、光反射部あるいは後述するレンズ部によって、進路を曲げられて、光取出し効率の向上に寄与する光は、保護膜中の進行角度が34度〜53度までの光である。
【0078】
そして、図11から、保護膜中の進行角度が34度〜53度までの光にあっては、比較例1に比べて、実施例1の方が顕著に高い発光エネルギー分布を有している。従って、光反射部やレンズ部を設けることで、透明上部基板33から出射する光のエネルギー(取り出すことのできる光のエネルギー)に関して、比較例1よりも実施例1の方が多くなる。全体のキャビティー効果を考えるときに、反射界面両端部でのm=1キャビティー効果と共に、第1界面側での干渉効果(次数m1)と第2界面側での干渉効果(次数m2)の3つが重なったモードになっていることを考える必要があることを見出した。即ち、干渉次数m1、m2が0の場合は法線方向でのみ光を強め合う条件となり、そのほかの方向で強め合う条件は存在しない。一方、m1、m2が1の場合には、法線方向の他に、斜め方向62度〜64度でも強め合う条件となり、光反射部(リフレクター部)によっても空気中に取り出すことができない光エネルギーが多くなってしまう。干渉の効果は反射率が高いほど大きくなるため、高反射率側の干渉の次数をより低くすることで、光反射部(リフレクター部)によって取り出すことができる光を多くできることになる。
【0079】
正確に見積もるために、保護膜31から接着層(屈折率約1.5)32中に出射された光の発光エネルギー分布を計算した結果を、図12に示す。尚、実施例1によって得られた発光エネルギー分布を曲線「A」で示し、比較例1によって得られた発光エネルギー分布を曲線「B」で示す。光反射部やレンズ部によって接着層32から出射された光を全て空気中に出射することができると仮定した場合、比較例1に比べて、実施例1にあっては、約1.4倍の光エネルギーを取り出すことができる。
【0080】
従って、光取出し効率を向上させる光反射部やレンズ部と組み合わせて有機EL発光素子を構成した場合、反射率の高い光反射電極に近い側で発光させて、適切な共振あるいは干渉条件を選択することによって、取り出される光エネルギーを大幅に高めることができ、消費電力を低減することができる。あるいは又、図13の(A)及び(B)に示すように、法線方向の輝度(視野角0度における輝度)は同じでも、視野角特性に優れた有機EL表示装置を実現することができる。尚、図13の(A)は、実施例1における相対輝度を示し、図13の(A)中、曲線「A」は、光反射部40を備えた有機EL表示装置のデータであり、曲線「A’」は、光反射部40を備えていない有機EL表示装置のデータを参考のために示す。また、図13の(B)は、比較例1における相対輝度を示し、図13の(B)中、曲線「B」は、光反射部40を備えた有機EL表示装置のデータであり、曲線「B’」は、光反射部40を備えていない有機EL表示装置のデータを参考のために示す。尚、図13の(A)及び(B)のグラフは、図12にて得られた発光エネルギー分布に従って光反射部に入射する光線の追跡シミュレーションを行い、光反射部を経由して最終的に空気中に出射されるエネルギー角度分布を計算し、輝度に変換して得られたグラフである。
【0081】
また、比較のために、rRef-B=LFocus/2である光反射部を有する有機EL表示装置を試作した(比較例2)。尚、このような条件を満足する光反射部は、複合放物面集光器(CPC)と呼ばれる。また、放物線の焦点から準線に引いた垂線がz軸と一致する光反射部を有する有機EL表示装置を試作した(比較例3)。比較例2、比較例3におけるLRef,rRef-T,rRef-Bの値は、実施例1と同じとした。実施例1における光取出しエネルギー、正面輝度の値(視野角0度における輝度)、視野角45度における輝度を1.00としたときの、比較例2及び比較例3のそれぞれの値を、以下の表4に示す。
【0082】
[表4]
実施例1 比較例2 比較例3
光取出しエネルギー 1.00 0.88 0.75
視野角0度における輝度 1.00 0.84 0.95
視野角45度における輝度 1.00 0.95 0.75
【実施例2】
【0083】
実施例2は、本発明の第2の態様及び第5の態様に係る表示装置、具体的には、有機EL表示装置に関する。実施例2の有機EL表示装置の模式的な一部断面図を図6に示し、レンズ部の模式図を図7に示す。尚、有機層の概念図は、図3の(A)に示したと同様である。実施例2の有機EL表示装置も、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置であり、上面発光型である。即ち、上部電極に相当する第2電極を通して光が出射される。
【0084】
実施例2の有機EL表示装置にあっては、透明上部基板33の第1面33Aに、発光層23Aから第2電極22を介して出射された光が通過するレンズ部50が形成されている。図5に模式的な配置図を示したと同様に、複数の発光素子10の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子10に対して複数のレンズ部50が設けられている。具体的には、発光素子10の発光領域の平面形状は矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1であり、実施例1にあっては、α=3)としたとき、1つの発光素子10に対して設けられた複数のレンズ部50の具体的な数を、係数αの整数部、即ち、「3」とした。また、レンズ部50は平凸レンズ(非球面レンズ)から構成されており、周知の方法で形成されている。後述する実施例4においても同様である。
【0085】
実施例2の有機EL表示装置にあっては、図7に光反射部の模式図を示すように、レンズ部50は凸レンズから構成されている。そして、光学軸であるレンズ部50の軸線をz軸とし、z軸が第2電極22と交わる点における第2電極22から出射する光の第2電極22側においてz軸と成す角度をθO-2、透明上部基板33の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θO-2)>1/nSub-T
を満足している。尚、θO-2の値、及び、nSub-Tの値は、表2に示したとおりである。
【実施例3】
【0086】
実施例3は、本発明の第3の態様に係る表示装置、具体的には、有機EL表示装置に関する。実施例3の有機EL表示装置の模式的な一部断面図を図8に示し、有機層等の概念図を図9に示す。実施例3の有機EL表示装置も、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置であるが、下面発光型である。即ち、下部電極に相当する第1電極を通して光が出射される。
【0087】
実施例3あるいは後述する実施例4の有機EL表示装置は、
(A)第1面11A、及び、この第1面11Aと対向する第2面11Bを有する透明下部基板(実施例3にあっては、第1基板11が兼ねている)、並びに、
(B)透明下部基板(第1基板11)の第1面11A上に設けられ、第1電極21、有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、及び、第2電極22が積層されて成り、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面21Aと、第2電極22と有機層23との界面によって構成された第2界面22Aとの間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を第1電極21から出射する、複数の発光素子10、
を具備した表示装置である。
【0088】
尚、実施例3あるいは後述する実施例4の下面発光型の表示装置にあっては、層間絶縁層16は、発光素子10からの光に対して透明な材料から構成する必要があるし、発光素子駆動部は発光素子10からの光を遮らないように形成する必要がある。図8及び図10においては、発光素子駆動部の図示を省略している。また、保護膜31と第2基板34とは、アクリル系接着剤から成る接着層32によって接着されている。
【0089】
実施例3あるいは後述する実施例4においては、第2電極22をアノード電極として用い、第1電極21をカソード電極として用いる。第2電極22は、光反射材料、具体的には、Al−Nd合金から成り、第1電極21は、半光透過材料、具体的には、マグネシウム(Mg)を含む導電材料、より具体的には、厚さ10nmのMg−Ag合金から成る。第2電極22は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法によって成膜されている。また、第1電極21は、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき形成されている。第1電極21及び第2電極22の屈折率測定結果、第1電極21の平均光反射率測定結果、第2電極22の平均光透過率測定結果は、表1に示したと同様である。但し、表1において、「第1電極21」を『第2電極22』と読み替え、「第2電極22」を『第1電極21』と読み替える。
【0090】
そして、実施例3あるいは後述する実施例4において、図9に示すように、発光層23Aの最大発光位置から第1界面21Aまでの距離をL1、光学距離をOL1、発光層23Aの最大発光位置から第2界面22Aまでの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)及び式(2−4)を満たす。
【0091】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (2−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (2−2)
L1>L2 (2−3)
m1>m2 (2−4)
ここで、
λ :発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長(あるいは又、発光層2 3Aで発生した光の内の所望の波長)
Φ1:第1界面21Aで生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面22Aで生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【0092】
そして、実施例3の有機EL表示装置にあっては、透明下部基板(第1基板11)の第1面11Aから内部に亙り、発光層23Aから第1電極21を介して出射され、透明下部基板(第1基板11)に入射した光の一部を反射して、透明下部基板(第1基板11)の第2面11Bから出射する光反射部(リフレクター部)60が形成されている。図5に模式的な配置図を示したと同様に、複数の発光素子10の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子10に対して複数の光反射部60が設けられている。具体的には、発光素子10の発光領域の平面形状は矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1であり、実施例3にあっては、α=3)としたとき、1つの発光素子10に対して設けられた複数の光反射部60の具体的な数を、係数αの整数部、即ち、「3」とした。
【0093】
具体的には、光反射部60は、Al−Nd層から成る光反射層から構成されている。光反射部60は、例えば、第11の第1面11Aに凹部61を切削加工に基づき形成し、係る凹部61の露出した表面に、例えば、真空蒸着法に基づき光反射層を形成した後、凹部61を、例えば、アクリル系樹脂から成る充填材料62あるいはゲート絶縁膜13で埋め込むといった方法で作製することができる。
【0094】
実施例3の有機EL表示装置にあっては、光反射部60は、回転体の表面の一部から構成されている。そして、光反射部60の下端部60Aは、透明下部基板(第1基板11)の第1面11A内に位置し、光反射部60の上端部60Bは、透明下部基板(第1基板11)内部に位置し、且つ、透明下部基板(第1基板11)の第2面11Bと平行である。ここで、回転体の回転軸である光反射部60の軸線をz軸とし、光反射部60の下端部60Aの半径をrRef-B、光反射部60の上端部60Bの半径をrRef-T、光反射部60の下端部60Aから上端部60Bまでのz軸に沿った距離をLRefとし、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
(rRef-T+rRef-B)/LRef≦(nSub-T2−1)-1/2
を満足している。LRef,rRef-T,rRef-Bの具体的な数値は、表2に示したとおりである。
【0095】
そして、この場合、図4に示したと同様に、z軸を含む仮想平面で光反射部60を切断したときの光反射部60の断面形状は、放物線の一部である。ここで、放物線の焦点から準線に引いた垂線は、z軸に対して傾いており、この仮想平面で光反射部60を切断したときのこの仮想平面と光反射部60の下端部60Aの交わる点から放物線の焦点までの距離をLFocusとしたとき、
0.1≦rRef-B/LFocus<0.5
を満足している。更には、放物線の焦点から準線に引いた垂線のz軸に対する傾斜角θParaは、透明下部基板(第1基板11)の屈折率をnSub-Bとしたとき、
sin(θPara)<1/nSub-B
を満足している。尚、放物線の焦点は、透明下部基板(第1基板11)の第1面11Aに含まれている。ここで、放物線の焦点から準線に引いた垂線をY’軸、放物線の焦点から準線に垂直に下ろした線分の垂直二等分線をX’軸とするガウス座標を想定したとき、放物線の方程式は、画素ピッチを100μmとしたときを例にとると、
y’=3.57×10-3・x’2
で表すことができる。
【0096】
あるいは又、実施例3の有機EL表示装置において、光反射部60は、回転体の表面の一部から構成され、光反射部60の下端部60Aは、透明下部基板(第1基板11)の第1面11A内に位置し、光反射部60の上端部60Bは、透明下部基板(第1基板11)内部に位置し、且つ、透明下部基板(第1基板11)の第2面11Bと平行である。そして、回転体の回転軸である光反射部60の軸線をz軸とし、z軸が第1電極21と交わる点における第1電極21から出射する光の第1電極21側においてz軸と成す角度をθO-1、透明下部基板(第1基板11)の屈折率をnSub-Bとしたとき、
sin(θO-1)>1/nSub-B
を満足する。
【0097】
実施例3あるいは後述する実施例4においても、各有機層23は、具体的には、赤色発光副画素を構成する赤色発光有機EL素子における赤色発光有機層、緑色発光副画素を構成する緑色発光有機EL素子における緑色発光有機層、及び、青色発光副画素を構成する青色発光有機EL素子における青色発光有機層から構成されている。尚、赤色発光有機層、緑色発光有機層、青色発光有機層の積層順は、上下が逆である点を除き、実施例1にて説明した赤色発光有機層、緑色発光有機層、青色発光有機層の積層構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0098】
赤色発光有機層、緑色発光有機層及び青色発光有機層におけるλ,L1,OL1,2OL1/λ,L2,OL2,2OL2/λ,nave,{−2Φ1/(2π)+m1},{−2Φ2/(2π)+m2}の値は、表3に示したとおりである。但し、m1=1,m2=0である。
【実施例4】
【0099】
実施例4は、本発明の第4の態様に係る表示装置、具体的には、有機EL表示装置に関する。実施例4の有機EL表示装置の模式的な一部断面図を図10に示す。尚、有機層の概念図は、図9に示したと同様である。実施例4の有機EL表示装置も、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置であり、下面発光型である。即ち、下部電極に相当する第1電極を通して光が出射される。
【0100】
実施例4の有機EL表示装置にあっては、実施例3と異なり、第1基板11と透明下部基板35とは、接着層36を介して接着されており、発光素子10は、透明下部基板35の第1面35Aの上方に設けられている。そして、透明下部基板35の第1面35Aには、発光層23Aから第1電極21を介して出射された光が通過するレンズ部70が形成されている。図5に模式的な配置図を示したと同様に、複数の発光素子10の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子10に対して複数のレンズ部70が設けられている。具体的には、発光素子10の発光領域の平面形状は矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1であり、実施例1にあっては、α=3)としたとき、1つの発光素子10に対して設けられた複数のレンズ部70の具体的な数を、係数αの整数部、即ち、「3」とした。
【0101】
実施例4の有機EL表示装置にあっては、レンズ部70は非球面の凸レンズから構成されている。そして、光学軸であるレンズ部70の軸線をz軸とし、z軸が第1電極21と交わる点における第1電極21から出射する光の第1電極21側においてz軸と成す角度をθO-1、透明下部基板35の屈折率をnSub-Bとしたとき、
sin(θO-1)>1/nSub-B
を満足している。尚、θO-1の値、及び、nSub-Bの値は、表2に示したとおりである。
【0102】
以下、実施例1の有機EL表示装置の製造方法の概要を、図14の(A)〜(C)、図15の(A)〜(B)、及び、図16を参照して説明する。
【0103】
[工程−100]
先ず、第1基板11上に、副画素毎にTFTを、周知の方法で作製する。TFTは、第1基板11上に形成されたゲート電極12、第1基板11及びゲート電極12上に形成されたゲート絶縁膜13、ゲート絶縁膜13上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域14、並びに、ソース/ドレイン領域14の間であって、ゲート電極12の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域15から構成されている。尚、図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極12は、走査回路(図示せず)に接続されている。次に、第1基板11上に、TFTを覆うように、SiO2から成る下層層間絶縁層16AをCVD法にて成膜した後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、下層層間絶縁層16Aに開口16’を形成する(図14の(A)参照)。
【0104】
[工程−110]
次いで、下層層間絶縁層16A上に、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき、アルミニウムから成る配線17を形成する。尚、配線17は、開口16’内に設けられたコンタクトプラグ17Aを介して、TFTのソース/ドレイン領域14に電気的に接続されている。配線17は、信号供給回路(図示せず)に接続されている。そして、全面にSiO2から成る上層層間絶縁層16BをCVD法にて成膜する。次いで、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、上層層間絶縁層16B上に開口18’を形成する(図14の(B)参照)。
【0105】
[工程−120]
その後、上層層間絶縁層16B上に、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき、Al−Nd合金から成る第1電極21を形成する(図14の(C)参照)。尚、第1電極21は、開口18’内に設けられたコンタクトプラグ18を介して、配線17に電気的に接続されている。
【0106】
[工程−130]
次いで、開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した絶縁層24を、第1電極21を含む層間絶縁層16上に形成する(図15の(A)参照)。具体的には、スピンコーティング法及びエッチング法に基づき、厚さ1μmのポリイミド樹脂から成る絶縁層24を、層間絶縁層16の上、及び、第1電極21の周辺部の上に形成する。尚、開口部25を囲む絶縁層24の部分は、なだらかな斜面を構成していることが好ましい。
【0107】
[工程−140]
次に、開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙り、有機層23を形成する(図15の(B)参照)。尚、有機層23は、例えば、有機材料から成る正孔輸送層、電子輸送層を兼ねた発光層が順次積層されている。具体的には、絶縁層24を一種のスペーサとし、絶縁層24の上に各副画素を構成する有機層23を形成するためのメタルマスク(図示せず)を絶縁層24の突起部の上に載置した状態で、抵抗加熱に基づき、有機材料を真空蒸着する。有機材料は、メタルマスクに設けられた開口を通過し、副画素を構成する開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分の上に亙り堆積する。
【0108】
[工程−150]
その後、表示領域の全面に第2電極22を形成する(図16参照)。第2電極22は、N×M個の有機EL素子を構成する有機層23の全面を覆っている。但し、第2電極22は、有機層23及び絶縁層24によって第1電極21とは絶縁されている。第2電極22は、有機層23に対して影響を及ぼすことのない程度に成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法である真空蒸着法に基づき形成されている。また、有機層23を大気に暴露することなく、有機層23の形成と同一の真空蒸着装置内において連続して第2電極22の形成を行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。具体的には、Mg−Ag(体積比10:1)の共蒸着膜を厚さ10nm成膜することで、第2電極22を得ることができる。
【0109】
[工程−160]
次いで、第2電極22上に、窒化シリコン(Si1-xNx)から成る絶縁性の保護膜31を真空蒸着法に基づき形成する。保護膜31の形成は、第2電極22を大気に暴露することなく、第2電極22の形成と同一の真空蒸着装置内において連続して行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。その後、保護膜31と透明上部基板33とを、アクリル系接着剤から成る接着層32によって接着する。最後に、外部回路との接続を行うことで、有機EL表示装置を完成させることができる。
【0110】
尚、実施例2〜実施例4における有機EL表示装置も、実質的に同様の方法で製造することができる。
【0111】
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例における有機EL表示装置や有機EL素子の構成、構造、有機EL表示装置や有機EL素子を構成する材料等は例示であり、適宜変更することができる。実施例3にあっては、第1基板11と別に透明下部基板を配してもよいし、実施例4にあっては、第1基板11は透明下部基板を兼ねていてもよい。
【0112】
光反射部40を有する例えば透明上部基板33の別の作製方法を、以下、図17を参照して説明する。具体的には、先ず、光反射部40と相補的な形状を有するスタンパ(雌型)63を、電鋳、エッチング、その他の切削加工等の公知技術を利用して形成する。そして、例えば、光透過性を有するガラス基板33’上に、紫外線硬化型の樹脂組成物64を塗布して(図17の(A)参照)、この樹脂組成物64をスタンパ63を用いて賦形する。具体的には、この樹脂組成物64にスタンパ63を押し付けた状態で紫外線を照射することで、樹脂組成物硬化物64Aを得た後(図17の(B)参照)、スタンパ63を取り除くことで、樹脂組成物硬化物64Aの表面に光反射部40の形状を有する凹凸部を形成することができる。その後、樹脂組成物硬化物64Aの表面に、AlやAg等の光反射率の高い金属反射層(又は多層薄膜)40Cを、例えば真空蒸着法によって形成する。そして、金属反射層40Cが積層された樹脂組成物硬化物64Aの一部(凸部)を、例えばラッピング加工によって切削削除する(図17の(D)参照)。その後、凹部41を充填材料62あるいは接着層32で埋め込むことで、光反射部40を有する透明上部基板33を得ることができる。
【符号の説明】
【0113】
10・・・発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子、11・・・第1基板、11A・・・第1基板の第1面、11B・・・第1基板の第2面、12・・・ゲート電極、13・・・ゲート絶縁膜、14・・・ソース/ドレイン領域、15・・・チャネル形成領域、16・・・層間絶縁層、16A・・・下層層間絶縁層、16’,18’・・・開口、16B・・・上層層間絶縁層、17・・・配線、17A,18・・・コンタクトプラグ、21・・・第1電極、21A・・・第1界面、22・・・第2電極、22A・・・第2界面、23・・・有機層、23A・・・発光層、24・・・絶縁層、25・・・補助配線、26・・・開口部、31・・・保護膜、32,36・・・接着層、33・・・透明上部基板、33A・・・透明上部基板の第1面、33B・・・透明上部基板の第2面、33’・・・ガラス基板、34・・・第2基板、35・・・透明下部基板、35A・・・透明下部基板の第1面、35B・・・透明下部基板の第2面、40,60・・・光反射部、40A,60A・・・光反射部の下端部、40B,60B・・・光反射部の上端部、40C・・・金属反射層(多層薄膜)、41,61・・・凹部、42,62・・・充填材料、50,70・・・レンズ部、63・・・スタンパ(雌型)、64・・・樹脂組成物、64A・・・樹脂組成物硬化物
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、より具体的には、共振器構造を有する発光素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に、有機EL素子と略称する)を発光素子として用いた照明装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、単に、有機EL表示装置と略称する)が普及しつつある。そして、有機EL表示装置にあっては、効率良く光を取り出す技術の開発が強く求められている。光取出し効率が低いと、有機EL素子における実際の発光量を有効に活用していないことになり、消費電力等の点で大きな損失を生じる要因となるからである。
【0003】
このことから有機EL表示装置においては、突起構造を設けることで光取出し効率の向上を図る技術が、例えば、特開2003−077648号に開示されており、マイクロレンズを設けることで光取出し効率の向上を図る技術が、例えば、特開2002−184567号や特表2005−531102号に開示されている。また、太陽電池の集光器として用いられる複合放物面集光器(CPC,Compound Parabolic Concentrator)の構造を含む各種リフレクターを有する有機EL表示装置が、同じく、特表2005−531102号に開示されている。
【0004】
また、有機EL素子において、共振器構造を導入することによって、発光色の色純度を向上させたり、発光効率を高めるなど、発光層で発生する光を制御する試みが行われてきている(例えば、国際公開第01/39554号参照)。更には、共振器構造の中で発生する光と、それぞれの反射端部で反射して戻ってきた光とを互いに強め合う関係にすることで、発光強度を最大にすることができることが、例えば、特許第3703028号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−077648号
【特許文献2】特開2002−184567号
【特許文献3】特表2005−531102号
【特許文献4】国際公開第01/39554号
【特許文献5】特許第3703028号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1〜特許文献3にあっては、発光素子内における全反射に起因して無駄になってしまう光を有効利用することで消費電力の低減を図っているが、有機EL素子における光学条件、具体的には、光取出し効率を向上させるための有機EL素子の発光層を含む有機層の最適化に関しては、何ら、言及されていない。また、特許文献4〜特許文献5にあっては、共振器構造を導入することによって光取出し効率を高めることができるが、更に一層の光取出し効率の向上が強く求められている。
【0007】
従って、本発明の目的は、共振器構造を備え、更に一層の光取出し効率の向上を図ることができる構造、構成を有する表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置は、
(A)第1電極、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、及び、第2電極が積層されて成り、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、第2電極と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射する、複数の発光素子、並びに、
(B)第2電極と対向する第1面、及び、該第1面と対向する第2面を有し、第2電極の上方に固定された透明上部基板、
を具備した表示装置である。そして、発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)及び式(1−4)を満たしている。
【0009】
そして、本発明の第1の態様に係る表示装置は、透明上部基板の第1面から内部に亙り、発光層から第2電極を介して出射され、透明上部基板に入射した光の一部を反射して、透明上部基板の第2面から出射する光反射部(リフレクター部)が形成されていることを特徴とする。
【0010】
一方、本発明の第2の態様に係る表示装置は、透明上部基板の第1面には、発光層から第2電極を介して出射された光が通過するレンズ部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
L1<L2 (1−3)
m1<m2 (1−4)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長(あるいは又、発光層で発生し た光の内の所望の波長)
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【0012】
尚、発光層の最大発光位置から第1界面までの距離L1とは、発光層の最大発光位置から第1界面までの実際の距離(物理的距離)を指し、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離L2とは、発光層の最大発光位置から第2界面までの実際の距離(物理的距離)を指す。また、光学距離とは、光路長とも呼ばれ、一般に、屈折率nの媒質中を距離Lだけ光線が通過したときのn×Lを指す。以下においても、同様である。従って、有機層の平均屈折率をnaveとしたとき、
OL1=L1×nave
OL2=L2×nave
の関係がある。ここで、平均屈折率naveとは、有機層を構成する各層の屈折率と厚さの積を合計し、有機層の厚さで除したものである。
【0013】
本発明の第1の態様に係る表示装置において、複数の発光素子の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子に対して複数の光反射部が設けられている形態とすることができる。あるいは又、複数の発光素子の配列は、ダイアゴナル配列、デルタ配列、又は、レクタングル配列であり、1つの発光素子に対して1つの光反射部が設けられている形態とすることができる。尚、以上の技術的事項は、後述する本発明の第3の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0014】
上記の好ましい形態を含む本発明の第1の態様に係る表示装置において、
光反射部は、回転体の表面の一部から構成され、
光反射部の下端部は、透明上部基板の第1面内に位置し、
光反射部の上端部は、透明上部基板内部に位置し、且つ、透明上部基板の第2面と平行であり、
回転体の回転軸である光反射部の軸線をz軸とし、光反射部の下端部の半径をrRef-B、光反射部の上端部の半径をrRef-T、光反射部の下端部から上端部までのz軸に沿った距離をLRefとし、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
(rRef-T+rRef-B)/LRef≦(nSub-T2−1)-1/2
を満足することが望ましい。そして、この場合、
z軸を含む仮想平面で光反射部を切断したときの光反射部の断面形状は、放物線の一部であり、
放物線の焦点から準線に引いた垂線は、z軸に対して傾いており、
該仮想平面で光反射部を切断したときの該仮想平面と光反射部の下端部の交わる点から放物線の焦点までの距離をLFocusとしたとき、
0.1≦rRef-B/LFocus<0.5
を満足することが望ましく、これによって、有効視覚範囲内における輝度向上を図ることができ、表示装置の一層の消費電力の低減を図りつつ、明るい画面を得ることができる。更には、放物線の焦点から準線に引いた垂線のz軸に対する傾斜角θParaは、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θPara)<1/nSub-T
を満足することが望ましく、あるいは又、放物線の焦点は、透明上部基板の第1面に含まれることが望ましい。尚、z軸を含む仮想平面で光反射部を切断したときの光反射部の断面として対称な2つの形状が得られるが、z軸を含む仮想平面で光反射部を切断したときの光反射部の断面形状を議論するとき、係る2つの形状の内の一方の形状を対象に議論を行う。また、以上の技術的事項は、「透明上部基板」を『透明下部基板』と読み替え、「第2電極」を『第1電極』と読み替え、「nSub-T」を『nSub-B』と読み替えることで、後述する本発明の第3の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0015】
あるいは又、本発明の第1の態様に係る表示装置において、
光反射部は、回転体の表面の一部から構成され、
光反射部の下端部は、透明上部基板の第1面内に位置し、
光反射部の上端部は、透明上部基板内部に位置し、且つ、透明上部基板の第2面と平行であり、
回転体の回転軸である光反射部の軸線をz軸とし、z軸が第2電極と交わる点における第2電極から出射する光の第2電極側においてz軸と成す角度をθO-2、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θO-2)>1/nSub-T
を満足する構成とすることができる。尚、以上の技術的事項は、「透明上部基板」を『透明下部基板』と読み替え、「第2電極」を『第1電極』と読み替え、「nSub-T」を『nSub-B』と読み替え、「θO-2」を『θO-1』と読み替えることで、後述する本発明の第3の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0016】
一方、本発明の第2の態様に係る表示装置において、複数の発光素子の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子に対して複数のレンズ部が設けられている形態とすることができる。あるいは又、複数の発光素子の配列は、ダイアゴナル配列、デルタ配列、又は、レクタングル配列であり、1つの発光素子に対して1つのレンズ部が設けられている形態とすることができる。尚、以上の技術的事項は、後述する本発明の第4の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0017】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係る表示装置において、
光学軸であるレンズ部の軸線をz軸とし、z軸が第2電極と交わる点における第2電極から出射する光の第2電極側においてz軸と成す角度をθO-2、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θO-2)>1/nSub-T
を満足することが望ましい。尚、以上の技術的事項は、「第2電極」を『第1電極』と読み替え、「θO-2」を『θO-1』と読み替え、「nSub-T」を『nSub-B』と読み替えることで、後述する本発明の第4の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0018】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置において、第1電極の平均光反射率は50%以上、好ましくは80%以上であり、第2電極の平均光透過率は50%乃至90%、好ましくは60%乃至90%であることが望ましい。尚、以上の技術的事項は、「第2電極」を『第1電極』と読み替え、「第2電極」を『第1電極』と読み替えることで、後述する本発明の第3の態様あるいは第4の態様に係る表示装置に対しても適用することができる。
【0019】
また、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置において、第1電極は光反射材料から成り、第2電極は半光透過材料から成り、最も光取出し効率を高くし得るm1=0,m2=1である形態とすることができる。本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置、あるいは、後述する第5の態様に係る表示装置にあっては、正孔輸送層(正孔供給層)よりも電子輸送層(電子供給層)を厚くすることで、低い駆動電圧で高効率化に必要十分な発光層への電子供給が可能となる。即ち、アノード電極に相当する第1電極と発光層との間に正孔輸送層を配置し、しかも、電子輸送層よりも薄い膜厚で形成することで、正孔の供給を増大させることが可能となる。そして、これにより、正孔と電子の過不足がなく、且つ、キャリア供給量も十分多いキャリアバランスを得ることができるため、高い発光効率を得ることができる。また、正孔と電子の過不足がないことで、キャリアバランスが崩れ難く、駆動劣化が抑制され、発光寿命を長くすることができる。
【0020】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置において、第2電極と透明上部基板の間には、第2電極側から、保護膜及び接着層が形成されている形態とすることができる。ここで、保護膜を構成する材料として、発光層で発光した光に対して透明であり、緻密で、水分を透過させない材料を用いることが好ましく、具体的には、例えば、アモルファスシリコン(α−Si)、アモルファス炭化シリコン(α−SiC)、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xNx)、アモルファス酸化シリコン(α−Si1-yOy)、アモルファスカーボン(α−C)、アモルファス酸化・窒化シリコン(α−SiON)、Al2O3を挙げることができるし、接着層を構成する材料として、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤といった熱硬化型接着剤や、紫外線硬化型接着剤を挙げることができる。尚、後述する本発明の第3の態様〜第5の態様に係る表示装置にあっても、第2電極の上方に第2基板を配し、第1電極と第2基板の間には、第1電極側から、上述した保護膜及び接着層が形成されている形態とすることができる。
【0021】
上記の目的を達成するための本発明の第3の態様あるいは第4の態様に係る表示装置は、
(A)第1面、及び、該第1面と対向する第2面を有する透明下部基板、並びに、
(B)透明下部基板の第1面上、若しくは、透明下部基板の第1面の上方に設けられ、第1電極、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、及び、第2電極が積層されて成り、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、第2電極と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第1電極から出射する、複数の発光素子、
を具備した表示装置である。そして、発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)及び式(2−4)を満たす。
【0022】
そして、本発明の第3の態様に係る表示装置は、透明下部基板の第1面から内部に亙り、発光層から第1電極を介して出射され、透明下部基板に入射した光の一部を反射して、透明下部基板の第2面から出射する光反射部(リフレクター部)が形成されていることを特徴とする。
【0023】
一方、本発明の第4の態様に係る表示装置は、透明下部基板の第1面には、発光層から第1電極を介して出射された光が通過するレンズ部が形成されていることを特徴とする。
【0024】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (2−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (2−2)
L1>L2 (2−3)
m1>m2 (2−4)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長(あるいは又、発光層で発生し た光の内の所望の波長)
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【0025】
本発明の第3の態様あるいは第4の態様に係る表示装置において、第1電極は半光透過材料から成り、第2電極は光反射材料から成り、最も光取出し効率を高くし得るm1=1,m2=0である形態とすることができる。本発明の第3の態様あるいは第4の態様に係る表示装置にあっても、正孔輸送層よりも電子輸送層を厚くすることで、低い駆動電圧で高効率化に必要十分な発光層への電子供給が可能となる。即ち、アノード電極に相当する第2電極と発光層との間に正孔輸送層を配置し、しかも、電子輸送層よりも薄い膜厚で形成することで、正孔の供給を増大させることが可能となる。そして、これにより、正孔と電子の過不足がなく、且つ、キャリア供給量も十分多いキャリアバランスを得ることができるため、高い発光効率を得ることができる。また、正孔と電子の過不足がないことで、キャリアバランスが崩れ難く、駆動劣化が抑制され、発光寿命を長くすることができる。
【0026】
上記の目的を達成するための本発明の第5の態様に係る表示装置は、第1電極、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、及び、第2電極が積層されて成り、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、第2電極と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射する、複数の発光素子を具備した表示装置であって、
発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(3−1)、式(3−2)、式(3−3)及び式(3−4)を満たすことを特徴とする。
【0027】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (3−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (3−2)
L1<L2 (3−3)
m1<m2 (3−4)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長(あるいは又、発光層で発生し た光の内の所望の波長)
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【0028】
本発明の第5の態様に係る表示装置において、第1電極の平均光反射率は50%以上、好ましくは80%以上であり、第2電極の平均光透過率は50%乃至90%、好ましくは60%乃至90%であることが望ましい。
【0029】
上記の好ましい形態を含む本発明の第5の態様に係る表示装置において、第1電極は光反射材料から成り、第2電極は半光透過材料から成り、最も光取出し効率を高くし得るm1=0,m2=1である構成とすることができる。
【0030】
本発明の第1の態様、第2の態様あるいは第5の態様に係る表示装置(これらの表示装置を総称して、『上面発光型の表示装置』と呼ぶ場合がある)における第1電極、あるいは又、本発明の第3の態様〜第4の態様に係る表示装置(これらの表示装置を総称して、『下面発光型の表示装置』と呼ぶ場合がある)における第2電極(これらの電極を、便宜上、『光反射電極』と呼ぶ場合がある)を構成する材料(光反射材料)として、光反射電極をアノード電極として機能させる場合、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)といった仕事関数の高い金属あるいは合金(例えば、銀を主成分とし、0.3重量%乃至1重量%のパラジウム(Pd)と、0.3重量%〜1重量%の銅(Cu)とを含むAg−Pd−Cu合金や、Al−Nd合金)を挙げることができる。更には、アルミニウム(Al)及びアルミニウムを含む合金等の仕事関数の値が小さく、且つ、光反射率の高い導電材料を用いる場合には、適切な正孔注入層を設けるなどして正孔注入性を向上させることで、アノード電極として用いることができる。光反射電極の厚さとして、0.1μm乃至1μmを例示することができる。あるいは又、誘電体多層膜やアルミニウム(Al)といった光反射性の高い反射膜上に、インジウムとスズの酸化物(ITO)やインジウムと亜鉛の酸化物(IZO)等の正孔注入特性に優れた透明導電材料を積層した構造とすることもできる。一方、光反射電極をカソード電極として機能させる場合、仕事関数の値が小さく、且つ、光反射率の高い導電材料から構成することが望ましいが、アノード電極として用いられる光反射率の高い導電材料に適切な電子注入層を設けるなどして電子注入性を向上させることで、カソード電極として用いることもできる。
【0031】
一方、本発明の第1の態様、第2の態様あるいは第5の態様に係る表示装置(上面発光型の表示装置)における第2電極、あるいは又、本発明の第3の態様〜第4の態様に係る表示装置(下面発光型の表示装置)における第1電極(これらの電極を、便宜上、『半光透過電極』と呼ぶ場合がある)を構成する材料(半光透過材料)として、半光透過電極をカソード電極として機能させる場合、発光光を透過し、しかも、有機層に対して電子を効率的に注入できるように仕事関数の値の小さな導電材料から構成することが望ましく、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)、アルミニウム(Al)とリチウム(Li)の合金(Al−Li合金)等の仕事関数の小さい金属あるいは合金を挙げることができ、中でも、Mg−Ag合金が好ましく、マグネシウムと銀との体積比として、Mg:Ag=5:1〜30:1を例示することができる。半光透過電極の厚さとして、4nm乃至50nm、好ましくは、4nm乃至20nm、より好ましくは6nm乃至12nmを例示することができる。あるいは又、半光透過電極を、有機層側から、上述した材料層と、例えばITOやIZOから成る所謂透明電極(例えば、厚さ3×10-8m乃至1×10-6m)との積層構造とすることもできる。あるいは又、半光透過電極に対して、低抵抗材料から成るバス電極(補助電極)を設け、半光透過電極全体として低抵抗化を図ってもよい。一方、半光透過電極をアノード電極として機能させる場合、発光光を透過し、しかも、仕事関数の値の大きな導電材料から構成することが望ましい。
【0032】
第1電極や第2電極の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、メタルマスク印刷法といった各種印刷法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法等を挙げることができる。各種印刷法やメッキ法によれば、直接、所望の形状(パターン)を有する第1電極や第2電極を形成することが可能である。尚、有機層を形成した後、第1電極や第2電極を形成する場合、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さな成膜方法、あるいは又、MOCVD法といった成膜方法に基づき形成することが、有機層のダメージ発生を防止するといった観点から好ましい。有機層にダメージが発生すると、リーク電流の発生による「滅点」と呼ばれる非発光画素(あるいは非発光副画素)が生じる虞がある。また、有機層の形成からこれらの電極の形成までを大気に暴露することなく実行することが、大気中の水分による有機層の劣化を防止するといった観点から好ましい。
【0033】
第1電極及び第2電極は入射した光の一部を吸収し、残りを反射する。従って、反射光に位相シフトが生じる。この位相シフト量Φ1,Φ2は、第1電極及び第2電極を構成する材料の複素屈折率の実数部分と虚数部分の値を、例えばエリプソメータを用いて測定し、これらの値に基づく計算を行うことで求めることができる(例えば、"Principles of Optic", Max Born and Emil Wolf, 1974(PERGAMON PRESS) 参照)。尚、有機層、その他の屈折率もエリプソメータを用いて測定することで求めることができる。
【0034】
本発明の第1の態様あるいは第3の態様に係る表示装置における光反射部は、例えば、透明上部基板あるいは透明下部基板に形成された光反射層から構成されている。ここで、光反射層として、アルミニウム(Al)層、アルミニウム合金層(例えば、Al−Nd層)、クロム(Cr)層、銀(Ag)層、銀合金層(例えば、Ag−Pd−Cu層、Ag−Sm−Cu層)を挙げることができ、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法等によって形成することができる。光反射部を備えた透明上部基板あるいは透明下部基板は、構成する材料にも依るが、例えば、第1面に凹部をスタンパを用いて形成し、あるいは又、第1面に凹部を切削加工に基づき形成し、係る凹部の露出した表面に光反射層を形成した後、凹部を埋め込むといった方法で作製することができる。
【0035】
本発明の第1の態様あるいは第3の態様に係る表示装置において、例えば、発光素子の発光領域の平面形状が矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1)としたとき、1つの発光素子に対して設ける複数の光反射部の具体的な数として、係数αの整数部、あるいは、(係数αの整数部−1)を例示することができる。
【0036】
本発明の第1の態様あるいは第3の態様に係る表示装置において、光反射部は回転体の表面の一部から構成されており、回転体の回転軸である光反射部の軸線をz軸としたとき、z軸を含む仮想平面で光反射部を切断したときの光反射部の断面形状は、放物線の一部から構成されていることが好ましいが、それ以外から構成されていてもよく、回転体として、例えば、球面、回転楕円面、回転放物面とすることもできるし、3次以上の多項式、二葉線、三葉線、四葉線、連珠形、蝸牛線、正葉線、螺獅線、疾走線、公算曲線、引弧線、懸垂線、擺線、餘擺線、星芒形、半3次放物線、リサジュー曲線、アーネシー曲線、外サイクロイド、心臓形、内サイクロイド、クロソイド曲線、螺線に例示される曲線の一部を回転させて得られる曲面とすることもできる。また、場合によっては、1本の線分、あるいは、複数の線分の組合せ、線分と曲線の組合せを回転させて得られる面とすることもできる。
【0037】
本発明の第2の態様あるいは第4の態様に係る表示装置におけるレンズ部を構成する材料として、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、アクリル系樹脂、ABS樹脂といったプラスチックや、ガラスを挙げることができる。レンズ部を凸レンズから構成する場合、レンズ部を構成する凸レンズは、球面レンズであってもよいが、非球面レンズとすることがより好ましい。また、凸レンズは、平凸レンズ、両凸レンズ、メニスカス凸レンズから構成することができる。レンズ部は、周知の方法に基づき形成することができる。
【0038】
本発明の第2の態様あるいは第4の態様に係る表示装置において、例えば、発光素子の発光領域の平面形状が矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1)としたとき、1つの発光素子に対して設ける複数のレンズ部の具体的な数として、係数αの整数部、あるいは、(係数αの整数部−1)を例示することができる。
【0039】
本発明の第1の態様〜第5の態様に係る表示装置(以下、これらを総称して、単に、本発明の表示装置と呼ぶ)にあっては、複数の発光素子は第1基板上に形成されている。ここで、第1基板として、あるいは又、第2基板として、高歪点ガラス基板、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)基板、硼珪酸ガラス(Na2O・B2O3・SiO2)基板、フォルステライト(2MgO・SiO2)基板、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)基板、表面に絶縁層が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁層が形成された石英基板、表面に絶縁層が形成されたシリコン基板、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。但し、下面発光型の表示装置にあっては、第1基板は、発光素子が出射する光に対して透明であることが要求される。また、下面発光型の表示装置にあっては、第1基板は、透明下部基板を兼ねていてもよい。第1基板が、透明下部基板を兼ねていない場合、透明下部基板を構成する材料として、上述の材料を挙げることができる。また、本発明の第1の態様〜第2の態様に係る表示装置にあっては、透明上部基板を構成する材料として、上述の材料を挙げることができる。第1基板と第2基板の構成材料、透明上部基板、透明下部基板は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0040】
本発明の表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置と略称する)を挙げることができ、有機EL表示装置をカラー表示の有機EL表示装置としたとき、有機EL表示装置を構成する有機EL素子のそれぞれによって、副画素が構成される。ここで、1画素は、例えば、赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、及び、青色を発光する青色発光副画素の3種類の副画素から構成されている。従って、この場合、有機EL表示装置を構成する有機EL素子の数をN×M個とした場合、画素数は(N×M)/3である。あるいは又、本発明の表示装置として、その他、液晶表示装置用のバックライト装置や面状光源装置を含む照明装置を挙げることができる。
【0041】
有機層は有機発光材料から成る発光層を備えているが、具体的には、例えば、正孔輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造、正孔輸送層と電子輸送層を兼ねた発光層との積層構造、正孔注入層と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と電子注入層との積層構造から構成することができる。有機層の形成方法として、真空蒸着法等の物理的気相成長法(PVD法);スクリーン印刷法やインクジェット印刷法といった印刷法;転写用基板上に形成されたレーザ吸収層と有機層の積層構造に対してレーザを照射することでレーザ吸収層上の有機層を分離して、有機層を転写するといったレーザ転写法、各種の塗布法を例示することができる。有機層を真空蒸着法に基づき形成する場合、例えば、所謂メタルマスクを用い、係るメタルマスクに設けられた開口を通過した材料を堆積させることで有機層を得ることができる。
【0042】
光反射電極は、例えば、層間絶縁層上に設けられている。そして、この層間絶縁層は、第1基板上に形成された発光素子駆動部を覆っている。発光素子駆動部は、1又は複数の薄膜トランジスタ(TFT)から構成されており、TFTと第1電極とは、層間絶縁層に設けられたコンタクトプラグを介して電気的に接続されている。層間絶縁層の構成材料として、SiO2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料;SiN系材料;ポリイミド等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。層間絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、各種印刷法等の公知のプロセスが利用できる。下面発光型の表示装置にあっては、層間絶縁層は、発光素子からの光に対して透明な材料から構成する必要があるし、発光素子駆動部は発光素子からの光を遮らないように形成する必要がある。
【0043】
有機層の上方には、有機層への水分の到達防止を目的として、上述したとおり、絶縁性あるいは導電性の保護膜を設けることが好ましい。保護膜は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、あるいは又、MOCVD法といった成膜方法に基づき形成することが、下地に対して及ぼす影響を小さくすることができるので好ましい。あるいは又、有機層の劣化による輝度の低下を防止するために、成膜温度を常温に設定し、更には、保護膜の剥がれを防止するために保護膜のストレスが最小になる条件で保護膜を成膜することが望ましい。また、保護膜の形成は、既に形成されている電極を大気に暴露することなく形成することが好ましく、これによって、大気中の水分や酸素による有機層の劣化を防止することができる。更には、表示装置が上面発光型である場合、保護膜は、有機層で発生した光を例えば80%以上、透過する材料から構成することが望ましく、具体的には、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えば、上述した材料を例示することができる。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを生成しないため、透水性が低く、良好な保護膜を構成する。尚、保護膜を導電材料から構成する場合、保護膜を、ITOやIZOのような透明導電材料から構成すればよい。
【0044】
発光素子からの光が通過する透明上部基板や第1基板(透明下部基板)には、必要に応じて、カラーフィルターや遮光膜(ブラックマトリクス)を形成してもよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明の第1の態様〜第4の態様に係る表示装置にあっては、発光素子における全反射に起因した光取出し効率の低下といった問題を光反射部やレンズ部を備えることで解決し、しかも、本発明の第1の態様〜第5の態様に係る表示装置にあっては、発光素子の有機層と第1電極と第2電極によって構成される光の干渉条件あるいは共振条件を所望の条件、L1<L2且つm1<m2を満足することによって、即ち、発光層の最大発光位置を半光透過電極よりも光反射電極に近づけることにより、光取出し効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、実施例1の表示装置の模式的な一部断面図である。
【図2】図2は、実施例1の表示装置における光反射部の模式図である。
【図3】図3の(A)は、実施例1の表示装置における有機層等の模式図であり、図3の(B)は、比較例1の表示装置における有機層等の模式図である。
【図4】図4は、実施例1の表示装置における光反射部の概念図である。
【図5】図5は、実施例1の表示装置における光反射部や、実施例2の表示装置におけるレンズ部等の模式的な配置図である。
【図6】図6は、実施例2の表示装置の模式的な一部断面図である。
【図7】図7は、実施例2の表示装置におけるレンズ部の模式図である。
【図8】図8は、実施例3の表示装置の模式的な一部断面図である。
【図9】図9は、実施例3の表示装置における有機層等の模式図である。
【図10】図10は、実施例4の表示装置の模式的な一部断面図である。
【図11】図11は、実施例1及び比較例1のそれぞれの場合における窒化シリコン(Si1-xNx)から成る保護膜中での発光エネルギー分布の計算を示すグラフである。
【図12】図12は、実施例1及び比較例1のそれぞれにおいて、保護膜から接着層中に出射された光の発光エネルギー分布を計算したグラフである。
【図13】図13の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1及び比較例1における相対輝度の視野角依存性を示すグラフである。
【図14】図14の(A)、(B)及び(C)は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図15】図15の(A)及び(B)は、図14の(C)に引き続き、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図16】図16は、図15の(B)に引き続き、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図17】図17の(A)〜(D)は、光反射部を有する透明上部基板の製造方法の概要を説明するためのガラス基板等の模式的な一部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例1】
【0048】
実施例1は、本発明の第1の態様及び第5の態様に係る表示装置、具体的には、有機EL表示装置に関する。実施例1の表示装置(以下、有機EL表示装置と呼ぶ場合がある)の模式的な一部断面図を図1に示し、光反射部の模式図を図2に示し、有機層等の模式図を図3の(A)に示す。実施例1の有機EL表示装置は、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置であり、上面発光型である。即ち、上部電極に相当する第2電極を通して光が出射される。
【0049】
実施例1の有機EL表示装置、あるいは、後述する実施例2〜実施例4の有機EL表示装置は、発光素子(具体的には、有機EL素子)10を、複数(例えば、N×M=2880×540)、有する。尚、1つの発光素子10は、1つの副画素を構成する。従って、有機EL表示装置は、(N×M)/3の画素を有する。ここで、1画素は、赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、及び、青色を発光する青色発光副画素の3種類の副画素から構成されている。
【0050】
図1及び図3の(A)に示すように、実施例1あるいは後述する実施例2の有機EL表示装置は、本発明の第1の態様、第2の態様、第5の態様に係る表示装置に沿って表現すれば、
(A)第1電極21、有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、及び、第2電極22が積層されて成り、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面21Aと、第2電極22と有機層23との界面によって構成された第2界面22Aとの間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極22から出射する、複数の発光素子10、
を具備した表示装置である。
【0051】
そして、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置に沿って表現すれば、更に、
(B)第2電極22と対向する第1面33A、及び、この第1面33Aと対向する第2面33Bを有し、第2電極22の上方に固定された透明上部基板33、
を具備している。
【0052】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例4の有機EL表示装置における各発光素子(有機EL素子)10は、より具体的には、
(a)第1電極21、
(b)開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した絶縁層24、
(c)開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上に少なくとも設けられ、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層23、及び、
(d)第2電極22、
を具備している。
【0053】
実施例1あるいは後述する実施例2においては、第1電極21をアノード電極として用い、第2電極22をカソード電極として用いる。第1電極21は、光反射材料、具体的には、Al−Nd合金から成り、第2電極22は、半光透過材料、具体的には、マグネシウム(Mg)を含む導電材料、より具体的には、厚さ10nmのMg−Ag合金から成る。第1電極21は、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき形成されている。また、第2電極22は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法によって成膜されている。第1電極21及び第2電極22の屈折率測定結果、第1電極21の光反射率測定結果、第2電極22の光透過率測定結果を、以下の表1に示す。尚、測定は、波長530nmにおいて行った結果である。
【0054】
また、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4において、絶縁層24は、平坦性に優れ、しかも、有機層23の水分による劣化を防止して発光輝度を維持するために吸水率の低い絶縁材料、具体的には、ポリイミド樹脂から構成されている。更には、有機層23は、例えば、正孔輸送層、及び、電子輸送層を兼ねた発光層の積層構造から構成されているが、図面では1層で表す場合がある。
【0055】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4において、有機EL素子を構成する第1電極21は、CVD法に基づき形成されたSiO2から成る層間絶縁層16(より具体的には、上層層間絶縁層16B)上に設けられている。そして、この層間絶縁層16は、第1基板11上に形成された有機EL素子駆動部を覆っている。有機EL素子駆動部は、複数のTFTから構成されており、TFTと第1電極21とは、層間絶縁層(より具体的には、上層層間絶縁層16B)に設けられたコンタクトプラグ18、配線17、コンタクトプラグ17Aを介して電気的に接続されている。尚、図面においては、1つの有機EL素子駆動部につき、1つのTFTを図示した。TFTは、第1基板11上に形成されたゲート電極12、第1基板11及びゲート電極12上に形成されたゲート絶縁膜13、ゲート絶縁膜13上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域14、並びに、ソース/ドレイン領域14の間であって、ゲート電極12の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域15から構成されている。尚、図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極12は、走査回路(図示せず)に接続されている。
【0056】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4において、第2電極22上には、有機層23への水分の到達防止を目的として、真空蒸着法に基づき、窒化シリコン(Si1-xNx)から成る絶縁性の保護膜31が設けられている。保護膜31の上には透明上部基板(本発明の第5の態様における第2基板)33が配されているが、保護膜31と透明上部基板33とは、アクリル系接着剤から成る接着層32によって接着されている。保護膜31及び接着層32の屈折率測定結果を、以下の表1に示す。尚、屈折率は、波長530nmにおける測定結果である。
【0057】
[表1]
第1電極21の屈折率
実数部:0.755
虚数部:5.466
第2電極22の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
第1電極21の光反射率:85
第2電極22の光透過率:57%
保護膜31の屈折率
実数部:1.87
虚数部:0
接着層32の屈折率
実数部:1.53
虚数部:0
【0058】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4において、第1基板11や透明上部基板33、第2基板、あるいは又、後述する透明下部基板35は、ソーダガラスから構成されている。
【0059】
そして、実施例1あるいは後述する実施例2において、図3の(A)に示すように、発光層23Aの最大発光位置から第1界面21Aまでの距離をL1、光学距離をOL1、発光層23Aの最大発光位置から第2界面22Aまでの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)及び式(1−4)[あるいは式(3−1)、式(3−2)、式(3−3)及び式(3−4)]を満たしている。
【0060】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1),(3−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2),(3−2)
L1<L2 (1−3),(3−3)
m1<m2 (1−4),(3−4)
【0061】
ここで、
λ :発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長(あるいは又、発光層2 3Aで発生した光の内の所望の波長)
Φ1:第1界面21Aで生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面22Aで生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【0062】
そして、実施例1の有機EL表示装置にあっては、透明上部基板33の第1面33Aから内部に亙り、発光層23Aから第2電極22を介して出射され、透明上部基板33に入射した光の一部を反射して、透明上部基板33の第2面33Bから出射する光反射部(リフレクター部)40が形成されている。図5に模式的な配置図を示すように、複数の発光素子10の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子10に対して複数の光反射部40が設けられている。具体的には、発光素子10の発光領域の平面形状は矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1であり、実施例1にあっては、α=3)としたとき、1つの発光素子10に対して設けられた複数の光反射部40の具体的な数を、係数αの整数部、即ち、「3」とした。
【0063】
具体的には、光反射部40は、Al−Nd層から成る光反射層から構成されている。光反射部40は、例えば、透明上部基板33の第1面33Aに凹部41を切削加工に基づき形成し、係る凹部41の露出した表面に、例えば、真空蒸着法に基づき光反射層を形成した後、凹部41を、例えば、アクリル系樹脂から成る充填材料42で埋め込むといった方法で作製することができる。尚、充填材料42を用いる代わりに、接着層32によって、透明上部基板33を貼り合わせると同時に凹部41を埋め込んでもよい。
【0064】
実施例1の有機EL表示装置にあっては、図2に光反射部の模式図を示し、図4に概念図を示すように、光反射部40は、回転体の表面の一部から構成されている。そして、光反射部40の下端部40Aは、透明上部基板33の第1面33A内に位置し、光反射部40の上端部40Bは、透明上部基板33内部に位置し、且つ、透明上部基板33の第2面33Bと平行である。ここで、回転体の回転軸である光反射部40の軸線をz軸とし、光反射部40の下端部40Aの半径をrRef-B、光反射部40の上端部40Bの半径をrRef-T、光反射部40の下端部40Aから上端部40Bまでのz軸に沿った距離をLRefとし、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
(rRef-T+rRef-B)/LRef≦(nSub-T2−1)-1/2
を満足している。LRef,rRef-T,rRef-Bの具体的な数値を、以下の表2に例示する。
【0065】
そして、この場合、z軸を含む仮想平面で光反射部40を切断したときの光反射部40の断面形状は、放物線の一部である。ここで、放物線の焦点から準線に引いた垂線は、z軸に対して傾いており、この仮想平面で光反射部40を切断したときのこの仮想平面と光反射部40の下端部40Aの交わる点から放物線の焦点までの距離をLFocusとしたとき、
0.1≦rRef-B/LFocus<0.5
を満足している。更には、放物線の焦点から準線に引いた垂線のz軸に対する傾斜角θParaは、透明上部基板33の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θPara)<1/nSub-T
を満足している。尚、放物線の焦点は、透明上部基板33の第1面33Aに含まれている。ここで、放物線の焦点から準線に引いた垂線をY’軸、放物線の焦点から準線に垂直に下ろした線分の垂直二等分線をX’軸とするガウス座標を想定したとき、放物線の方程式は、画素ピッチを100μmとしたときを例にとると、
y’=3.57×10-3・x’2
で表すことができる。
【0066】
尚、光反射部40の形状を分析したとき、放物線の方程式y’=k・x’2(但し、kは定数)からy’の値が±5μmの範囲内でばらついている場合にも、係る形状は放物線に包含される。後述する実施例3においても同様である。
【0067】
あるいは又、実施例1の有機EL表示装置において、光反射部40は、回転体の表面の一部から構成され、光反射部40の下端部40Aは、透明上部基板33の第1面33A内に位置し、光反射部40の上端部40Bは、透明上部基板33内部に位置し、且つ、透明上部基板33の第2面33Bと平行である。そして、回転体の回転軸である光反射部40の軸線をz軸とし、z軸が第2電極22と交わる点における第2電極22から出射する光の第2電極22側においてz軸と成す角度をθO-2、透明上部基板33の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θO-2)>1/nSub-T
を満足する。
【0068】
[表2]
LRef :81(μm)
rRef-T:50(μm)
rRef-B:30.6(μm)
LFocus:42(μm)
θPara :41.8度
θO-2 :41.8度
nSub-T:1.5
【0069】
実施例1あるいは後述する実施例2において、各有機層23は、具体的には、赤色発光副画素を構成する赤色発光有機EL素子における赤色発光有機層、緑色発光副画素を構成する緑色発光有機EL素子における緑色発光有機層、及び、青色発光副画素を構成する青色発光有機EL素子における青色発光有機層から構成されている。
【0070】
具体的には、赤色発光有機層は、第1電極側から、
[正孔注入層](厚さ10nm) :LGケミカル社製 LGHIL
[正孔輸送層](厚さ26nm) :出光興産株式会社製 HT320
[発光層] (厚さ50nm) :出光興産株式会社製 RH001 及び
東レ株式会社製 D125(0.5%ドープ)
[電子輸送層](厚さ220nm):出光興産株式会社製 ET085
から構成されている。尚、最大発光位置は、電子輸送層と発光層との界面に存在している。
【0071】
また、緑色発光有機層は、第1電極側から、
[正孔注入層](厚さ10nm) :LGケミカル社製 LGHIL
[正孔輸送層](厚さ35nm) :出光興産株式会社製 HT320
[発光層] (厚さ30nm) :出光興産株式会社製 BH232 及び
GD206(10%ドープ)
[電子輸送層](厚さ175nm):出光興産株式会社製 ETS085
から構成されている。尚、最大発光位置は、正孔輸送層と発光層との界面に存在している。
【0072】
更には、青色発光有機層は、第1電極側から、
[正孔注入層](厚さ10nm) :LGケミカル社製 LGHIL
[正孔輸送層](厚さ24nm) :出光興産株式会社製 HT320
[発光層] (厚さ30nm) :出光興産株式会社製 BH232 及び
BD218(10%ドープ)
[電子輸送層](厚さ141nm):出光興産株式会社製 ET085
から構成されている。尚、最大発光位置は、正孔輸送層と発光層との界面に存在している。
【0073】
赤色発光有機層、緑色発光有機層及び青色発光有機層におけるλ,L1,OL1,2OL1/λ,L2,OL2,2OL2/λ,nave,{−2Φ1/(2π)+m1},{−2Φ2/(2π)+m2}の値を、以下の表3に例示する。但し、m1=0,m2=1である。
【0074】
[表3]
【0075】
以下、実施例1の有機EL表示装置の発光素子10に関する詳細を説明する。ここで、実施例1のm1=0且つm2=1の条件と対比するために、比較例1として、m1=1且つm2=0の条件を有する発光素子を考える。尚、比較例1の発光素子の有機層等の模式図を図3の(B)に示す。即ち、図3の(A)及び(B)に示すように、実施例1にあっては、第1界面寄りで発光し、比較例1にあっては、第2界面寄りで発光する。
【0076】
図11に、緑色発光素子において、実施例1及び比較例1のそれぞれの場合における窒化シリコン(Si1-xNx)から成る保護膜31中での発光エネルギー分布の計算結果を示す。尚、実施例1によって得られた発光エネルギー分布を曲線「A」で示し、比較例1によって得られた発光エネルギー分布を曲線「B」で示す。尚、図11の横軸は、保護膜31中を進行する光が、保護膜31の頂面に衝突するときの保護膜31の頂面の法線との成す角度である。尚、便宜上、この角度を『保護膜中の進行角度』と呼ぶ。発光エネルギー分布は、各波長毎に共振(干渉)による所望媒質中への光取出し効率を計算し、媒質中の発光強度を掛け合わせて、所望媒質中での光強度を得た後、全波長域に亙り積分し、特定角度でのトータルエネルギーを計算することで得ることができる。
【0077】
ところで、窒化シリコン(Si1-xNx)の屈折率は約1.8であり、透明上部基板33の屈折率は約1.45である。従って、図11から、保護膜中の進行角度が約34度までの光は、光反射部あるいは後述するレンズ部を設けなくとも、保護膜31から透明上部基板33を経由して空気中に出射できる光である。一方、保護膜中の進行角度が34度〜53度までの光は、保護膜31から接着剤及び透明上部基板33へは入射するが、透明上部基板33と空気との界面で全反射を起こし、空気中に出射できない光である。 また、53度以上の光は、保護膜と接着剤との界面で全反射を起こし、接着剤及び透明上部基板33へも入射できない光である。従って、光反射部あるいは後述するレンズ部によって、進路を曲げられて、光取出し効率の向上に寄与する光は、保護膜中の進行角度が34度〜53度までの光である。
【0078】
そして、図11から、保護膜中の進行角度が34度〜53度までの光にあっては、比較例1に比べて、実施例1の方が顕著に高い発光エネルギー分布を有している。従って、光反射部やレンズ部を設けることで、透明上部基板33から出射する光のエネルギー(取り出すことのできる光のエネルギー)に関して、比較例1よりも実施例1の方が多くなる。全体のキャビティー効果を考えるときに、反射界面両端部でのm=1キャビティー効果と共に、第1界面側での干渉効果(次数m1)と第2界面側での干渉効果(次数m2)の3つが重なったモードになっていることを考える必要があることを見出した。即ち、干渉次数m1、m2が0の場合は法線方向でのみ光を強め合う条件となり、そのほかの方向で強め合う条件は存在しない。一方、m1、m2が1の場合には、法線方向の他に、斜め方向62度〜64度でも強め合う条件となり、光反射部(リフレクター部)によっても空気中に取り出すことができない光エネルギーが多くなってしまう。干渉の効果は反射率が高いほど大きくなるため、高反射率側の干渉の次数をより低くすることで、光反射部(リフレクター部)によって取り出すことができる光を多くできることになる。
【0079】
正確に見積もるために、保護膜31から接着層(屈折率約1.5)32中に出射された光の発光エネルギー分布を計算した結果を、図12に示す。尚、実施例1によって得られた発光エネルギー分布を曲線「A」で示し、比較例1によって得られた発光エネルギー分布を曲線「B」で示す。光反射部やレンズ部によって接着層32から出射された光を全て空気中に出射することができると仮定した場合、比較例1に比べて、実施例1にあっては、約1.4倍の光エネルギーを取り出すことができる。
【0080】
従って、光取出し効率を向上させる光反射部やレンズ部と組み合わせて有機EL発光素子を構成した場合、反射率の高い光反射電極に近い側で発光させて、適切な共振あるいは干渉条件を選択することによって、取り出される光エネルギーを大幅に高めることができ、消費電力を低減することができる。あるいは又、図13の(A)及び(B)に示すように、法線方向の輝度(視野角0度における輝度)は同じでも、視野角特性に優れた有機EL表示装置を実現することができる。尚、図13の(A)は、実施例1における相対輝度を示し、図13の(A)中、曲線「A」は、光反射部40を備えた有機EL表示装置のデータであり、曲線「A’」は、光反射部40を備えていない有機EL表示装置のデータを参考のために示す。また、図13の(B)は、比較例1における相対輝度を示し、図13の(B)中、曲線「B」は、光反射部40を備えた有機EL表示装置のデータであり、曲線「B’」は、光反射部40を備えていない有機EL表示装置のデータを参考のために示す。尚、図13の(A)及び(B)のグラフは、図12にて得られた発光エネルギー分布に従って光反射部に入射する光線の追跡シミュレーションを行い、光反射部を経由して最終的に空気中に出射されるエネルギー角度分布を計算し、輝度に変換して得られたグラフである。
【0081】
また、比較のために、rRef-B=LFocus/2である光反射部を有する有機EL表示装置を試作した(比較例2)。尚、このような条件を満足する光反射部は、複合放物面集光器(CPC)と呼ばれる。また、放物線の焦点から準線に引いた垂線がz軸と一致する光反射部を有する有機EL表示装置を試作した(比較例3)。比較例2、比較例3におけるLRef,rRef-T,rRef-Bの値は、実施例1と同じとした。実施例1における光取出しエネルギー、正面輝度の値(視野角0度における輝度)、視野角45度における輝度を1.00としたときの、比較例2及び比較例3のそれぞれの値を、以下の表4に示す。
【0082】
[表4]
実施例1 比較例2 比較例3
光取出しエネルギー 1.00 0.88 0.75
視野角0度における輝度 1.00 0.84 0.95
視野角45度における輝度 1.00 0.95 0.75
【実施例2】
【0083】
実施例2は、本発明の第2の態様及び第5の態様に係る表示装置、具体的には、有機EL表示装置に関する。実施例2の有機EL表示装置の模式的な一部断面図を図6に示し、レンズ部の模式図を図7に示す。尚、有機層の概念図は、図3の(A)に示したと同様である。実施例2の有機EL表示装置も、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置であり、上面発光型である。即ち、上部電極に相当する第2電極を通して光が出射される。
【0084】
実施例2の有機EL表示装置にあっては、透明上部基板33の第1面33Aに、発光層23Aから第2電極22を介して出射された光が通過するレンズ部50が形成されている。図5に模式的な配置図を示したと同様に、複数の発光素子10の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子10に対して複数のレンズ部50が設けられている。具体的には、発光素子10の発光領域の平面形状は矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1であり、実施例1にあっては、α=3)としたとき、1つの発光素子10に対して設けられた複数のレンズ部50の具体的な数を、係数αの整数部、即ち、「3」とした。また、レンズ部50は平凸レンズ(非球面レンズ)から構成されており、周知の方法で形成されている。後述する実施例4においても同様である。
【0085】
実施例2の有機EL表示装置にあっては、図7に光反射部の模式図を示すように、レンズ部50は凸レンズから構成されている。そして、光学軸であるレンズ部50の軸線をz軸とし、z軸が第2電極22と交わる点における第2電極22から出射する光の第2電極22側においてz軸と成す角度をθO-2、透明上部基板33の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θO-2)>1/nSub-T
を満足している。尚、θO-2の値、及び、nSub-Tの値は、表2に示したとおりである。
【実施例3】
【0086】
実施例3は、本発明の第3の態様に係る表示装置、具体的には、有機EL表示装置に関する。実施例3の有機EL表示装置の模式的な一部断面図を図8に示し、有機層等の概念図を図9に示す。実施例3の有機EL表示装置も、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置であるが、下面発光型である。即ち、下部電極に相当する第1電極を通して光が出射される。
【0087】
実施例3あるいは後述する実施例4の有機EL表示装置は、
(A)第1面11A、及び、この第1面11Aと対向する第2面11Bを有する透明下部基板(実施例3にあっては、第1基板11が兼ねている)、並びに、
(B)透明下部基板(第1基板11)の第1面11A上に設けられ、第1電極21、有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、及び、第2電極22が積層されて成り、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面21Aと、第2電極22と有機層23との界面によって構成された第2界面22Aとの間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を第1電極21から出射する、複数の発光素子10、
を具備した表示装置である。
【0088】
尚、実施例3あるいは後述する実施例4の下面発光型の表示装置にあっては、層間絶縁層16は、発光素子10からの光に対して透明な材料から構成する必要があるし、発光素子駆動部は発光素子10からの光を遮らないように形成する必要がある。図8及び図10においては、発光素子駆動部の図示を省略している。また、保護膜31と第2基板34とは、アクリル系接着剤から成る接着層32によって接着されている。
【0089】
実施例3あるいは後述する実施例4においては、第2電極22をアノード電極として用い、第1電極21をカソード電極として用いる。第2電極22は、光反射材料、具体的には、Al−Nd合金から成り、第1電極21は、半光透過材料、具体的には、マグネシウム(Mg)を含む導電材料、より具体的には、厚さ10nmのMg−Ag合金から成る。第2電極22は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法によって成膜されている。また、第1電極21は、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき形成されている。第1電極21及び第2電極22の屈折率測定結果、第1電極21の平均光反射率測定結果、第2電極22の平均光透過率測定結果は、表1に示したと同様である。但し、表1において、「第1電極21」を『第2電極22』と読み替え、「第2電極22」を『第1電極21』と読み替える。
【0090】
そして、実施例3あるいは後述する実施例4において、図9に示すように、発光層23Aの最大発光位置から第1界面21Aまでの距離をL1、光学距離をOL1、発光層23Aの最大発光位置から第2界面22Aまでの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)及び式(2−4)を満たす。
【0091】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (2−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (2−2)
L1>L2 (2−3)
m1>m2 (2−4)
ここで、
λ :発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長(あるいは又、発光層2 3Aで発生した光の内の所望の波長)
Φ1:第1界面21Aで生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面22Aで生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【0092】
そして、実施例3の有機EL表示装置にあっては、透明下部基板(第1基板11)の第1面11Aから内部に亙り、発光層23Aから第1電極21を介して出射され、透明下部基板(第1基板11)に入射した光の一部を反射して、透明下部基板(第1基板11)の第2面11Bから出射する光反射部(リフレクター部)60が形成されている。図5に模式的な配置図を示したと同様に、複数の発光素子10の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子10に対して複数の光反射部60が設けられている。具体的には、発光素子10の発光領域の平面形状は矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1であり、実施例3にあっては、α=3)としたとき、1つの発光素子10に対して設けられた複数の光反射部60の具体的な数を、係数αの整数部、即ち、「3」とした。
【0093】
具体的には、光反射部60は、Al−Nd層から成る光反射層から構成されている。光反射部60は、例えば、第11の第1面11Aに凹部61を切削加工に基づき形成し、係る凹部61の露出した表面に、例えば、真空蒸着法に基づき光反射層を形成した後、凹部61を、例えば、アクリル系樹脂から成る充填材料62あるいはゲート絶縁膜13で埋め込むといった方法で作製することができる。
【0094】
実施例3の有機EL表示装置にあっては、光反射部60は、回転体の表面の一部から構成されている。そして、光反射部60の下端部60Aは、透明下部基板(第1基板11)の第1面11A内に位置し、光反射部60の上端部60Bは、透明下部基板(第1基板11)内部に位置し、且つ、透明下部基板(第1基板11)の第2面11Bと平行である。ここで、回転体の回転軸である光反射部60の軸線をz軸とし、光反射部60の下端部60Aの半径をrRef-B、光反射部60の上端部60Bの半径をrRef-T、光反射部60の下端部60Aから上端部60Bまでのz軸に沿った距離をLRefとし、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
(rRef-T+rRef-B)/LRef≦(nSub-T2−1)-1/2
を満足している。LRef,rRef-T,rRef-Bの具体的な数値は、表2に示したとおりである。
【0095】
そして、この場合、図4に示したと同様に、z軸を含む仮想平面で光反射部60を切断したときの光反射部60の断面形状は、放物線の一部である。ここで、放物線の焦点から準線に引いた垂線は、z軸に対して傾いており、この仮想平面で光反射部60を切断したときのこの仮想平面と光反射部60の下端部60Aの交わる点から放物線の焦点までの距離をLFocusとしたとき、
0.1≦rRef-B/LFocus<0.5
を満足している。更には、放物線の焦点から準線に引いた垂線のz軸に対する傾斜角θParaは、透明下部基板(第1基板11)の屈折率をnSub-Bとしたとき、
sin(θPara)<1/nSub-B
を満足している。尚、放物線の焦点は、透明下部基板(第1基板11)の第1面11Aに含まれている。ここで、放物線の焦点から準線に引いた垂線をY’軸、放物線の焦点から準線に垂直に下ろした線分の垂直二等分線をX’軸とするガウス座標を想定したとき、放物線の方程式は、画素ピッチを100μmとしたときを例にとると、
y’=3.57×10-3・x’2
で表すことができる。
【0096】
あるいは又、実施例3の有機EL表示装置において、光反射部60は、回転体の表面の一部から構成され、光反射部60の下端部60Aは、透明下部基板(第1基板11)の第1面11A内に位置し、光反射部60の上端部60Bは、透明下部基板(第1基板11)内部に位置し、且つ、透明下部基板(第1基板11)の第2面11Bと平行である。そして、回転体の回転軸である光反射部60の軸線をz軸とし、z軸が第1電極21と交わる点における第1電極21から出射する光の第1電極21側においてz軸と成す角度をθO-1、透明下部基板(第1基板11)の屈折率をnSub-Bとしたとき、
sin(θO-1)>1/nSub-B
を満足する。
【0097】
実施例3あるいは後述する実施例4においても、各有機層23は、具体的には、赤色発光副画素を構成する赤色発光有機EL素子における赤色発光有機層、緑色発光副画素を構成する緑色発光有機EL素子における緑色発光有機層、及び、青色発光副画素を構成する青色発光有機EL素子における青色発光有機層から構成されている。尚、赤色発光有機層、緑色発光有機層、青色発光有機層の積層順は、上下が逆である点を除き、実施例1にて説明した赤色発光有機層、緑色発光有機層、青色発光有機層の積層構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0098】
赤色発光有機層、緑色発光有機層及び青色発光有機層におけるλ,L1,OL1,2OL1/λ,L2,OL2,2OL2/λ,nave,{−2Φ1/(2π)+m1},{−2Φ2/(2π)+m2}の値は、表3に示したとおりである。但し、m1=1,m2=0である。
【実施例4】
【0099】
実施例4は、本発明の第4の態様に係る表示装置、具体的には、有機EL表示装置に関する。実施例4の有機EL表示装置の模式的な一部断面図を図10に示す。尚、有機層の概念図は、図9に示したと同様である。実施例4の有機EL表示装置も、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置であり、下面発光型である。即ち、下部電極に相当する第1電極を通して光が出射される。
【0100】
実施例4の有機EL表示装置にあっては、実施例3と異なり、第1基板11と透明下部基板35とは、接着層36を介して接着されており、発光素子10は、透明下部基板35の第1面35Aの上方に設けられている。そして、透明下部基板35の第1面35Aには、発光層23Aから第1電極21を介して出射された光が通過するレンズ部70が形成されている。図5に模式的な配置図を示したと同様に、複数の発光素子10の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子10に対して複数のレンズ部70が設けられている。具体的には、発光素子10の発光領域の平面形状は矩形であり、係る発光領域の一辺の長さをLp、この一辺と直交する他方の辺の長さをα×Lp(但し、係数α>1であり、実施例1にあっては、α=3)としたとき、1つの発光素子10に対して設けられた複数のレンズ部70の具体的な数を、係数αの整数部、即ち、「3」とした。
【0101】
実施例4の有機EL表示装置にあっては、レンズ部70は非球面の凸レンズから構成されている。そして、光学軸であるレンズ部70の軸線をz軸とし、z軸が第1電極21と交わる点における第1電極21から出射する光の第1電極21側においてz軸と成す角度をθO-1、透明下部基板35の屈折率をnSub-Bとしたとき、
sin(θO-1)>1/nSub-B
を満足している。尚、θO-1の値、及び、nSub-Bの値は、表2に示したとおりである。
【0102】
以下、実施例1の有機EL表示装置の製造方法の概要を、図14の(A)〜(C)、図15の(A)〜(B)、及び、図16を参照して説明する。
【0103】
[工程−100]
先ず、第1基板11上に、副画素毎にTFTを、周知の方法で作製する。TFTは、第1基板11上に形成されたゲート電極12、第1基板11及びゲート電極12上に形成されたゲート絶縁膜13、ゲート絶縁膜13上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域14、並びに、ソース/ドレイン領域14の間であって、ゲート電極12の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域15から構成されている。尚、図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極12は、走査回路(図示せず)に接続されている。次に、第1基板11上に、TFTを覆うように、SiO2から成る下層層間絶縁層16AをCVD法にて成膜した後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、下層層間絶縁層16Aに開口16’を形成する(図14の(A)参照)。
【0104】
[工程−110]
次いで、下層層間絶縁層16A上に、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき、アルミニウムから成る配線17を形成する。尚、配線17は、開口16’内に設けられたコンタクトプラグ17Aを介して、TFTのソース/ドレイン領域14に電気的に接続されている。配線17は、信号供給回路(図示せず)に接続されている。そして、全面にSiO2から成る上層層間絶縁層16BをCVD法にて成膜する。次いで、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、上層層間絶縁層16B上に開口18’を形成する(図14の(B)参照)。
【0105】
[工程−120]
その後、上層層間絶縁層16B上に、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき、Al−Nd合金から成る第1電極21を形成する(図14の(C)参照)。尚、第1電極21は、開口18’内に設けられたコンタクトプラグ18を介して、配線17に電気的に接続されている。
【0106】
[工程−130]
次いで、開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した絶縁層24を、第1電極21を含む層間絶縁層16上に形成する(図15の(A)参照)。具体的には、スピンコーティング法及びエッチング法に基づき、厚さ1μmのポリイミド樹脂から成る絶縁層24を、層間絶縁層16の上、及び、第1電極21の周辺部の上に形成する。尚、開口部25を囲む絶縁層24の部分は、なだらかな斜面を構成していることが好ましい。
【0107】
[工程−140]
次に、開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙り、有機層23を形成する(図15の(B)参照)。尚、有機層23は、例えば、有機材料から成る正孔輸送層、電子輸送層を兼ねた発光層が順次積層されている。具体的には、絶縁層24を一種のスペーサとし、絶縁層24の上に各副画素を構成する有機層23を形成するためのメタルマスク(図示せず)を絶縁層24の突起部の上に載置した状態で、抵抗加熱に基づき、有機材料を真空蒸着する。有機材料は、メタルマスクに設けられた開口を通過し、副画素を構成する開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分の上に亙り堆積する。
【0108】
[工程−150]
その後、表示領域の全面に第2電極22を形成する(図16参照)。第2電極22は、N×M個の有機EL素子を構成する有機層23の全面を覆っている。但し、第2電極22は、有機層23及び絶縁層24によって第1電極21とは絶縁されている。第2電極22は、有機層23に対して影響を及ぼすことのない程度に成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法である真空蒸着法に基づき形成されている。また、有機層23を大気に暴露することなく、有機層23の形成と同一の真空蒸着装置内において連続して第2電極22の形成を行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。具体的には、Mg−Ag(体積比10:1)の共蒸着膜を厚さ10nm成膜することで、第2電極22を得ることができる。
【0109】
[工程−160]
次いで、第2電極22上に、窒化シリコン(Si1-xNx)から成る絶縁性の保護膜31を真空蒸着法に基づき形成する。保護膜31の形成は、第2電極22を大気に暴露することなく、第2電極22の形成と同一の真空蒸着装置内において連続して行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。その後、保護膜31と透明上部基板33とを、アクリル系接着剤から成る接着層32によって接着する。最後に、外部回路との接続を行うことで、有機EL表示装置を完成させることができる。
【0110】
尚、実施例2〜実施例4における有機EL表示装置も、実質的に同様の方法で製造することができる。
【0111】
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例における有機EL表示装置や有機EL素子の構成、構造、有機EL表示装置や有機EL素子を構成する材料等は例示であり、適宜変更することができる。実施例3にあっては、第1基板11と別に透明下部基板を配してもよいし、実施例4にあっては、第1基板11は透明下部基板を兼ねていてもよい。
【0112】
光反射部40を有する例えば透明上部基板33の別の作製方法を、以下、図17を参照して説明する。具体的には、先ず、光反射部40と相補的な形状を有するスタンパ(雌型)63を、電鋳、エッチング、その他の切削加工等の公知技術を利用して形成する。そして、例えば、光透過性を有するガラス基板33’上に、紫外線硬化型の樹脂組成物64を塗布して(図17の(A)参照)、この樹脂組成物64をスタンパ63を用いて賦形する。具体的には、この樹脂組成物64にスタンパ63を押し付けた状態で紫外線を照射することで、樹脂組成物硬化物64Aを得た後(図17の(B)参照)、スタンパ63を取り除くことで、樹脂組成物硬化物64Aの表面に光反射部40の形状を有する凹凸部を形成することができる。その後、樹脂組成物硬化物64Aの表面に、AlやAg等の光反射率の高い金属反射層(又は多層薄膜)40Cを、例えば真空蒸着法によって形成する。そして、金属反射層40Cが積層された樹脂組成物硬化物64Aの一部(凸部)を、例えばラッピング加工によって切削削除する(図17の(D)参照)。その後、凹部41を充填材料62あるいは接着層32で埋め込むことで、光反射部40を有する透明上部基板33を得ることができる。
【符号の説明】
【0113】
10・・・発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子、11・・・第1基板、11A・・・第1基板の第1面、11B・・・第1基板の第2面、12・・・ゲート電極、13・・・ゲート絶縁膜、14・・・ソース/ドレイン領域、15・・・チャネル形成領域、16・・・層間絶縁層、16A・・・下層層間絶縁層、16’,18’・・・開口、16B・・・上層層間絶縁層、17・・・配線、17A,18・・・コンタクトプラグ、21・・・第1電極、21A・・・第1界面、22・・・第2電極、22A・・・第2界面、23・・・有機層、23A・・・発光層、24・・・絶縁層、25・・・補助配線、26・・・開口部、31・・・保護膜、32,36・・・接着層、33・・・透明上部基板、33A・・・透明上部基板の第1面、33B・・・透明上部基板の第2面、33’・・・ガラス基板、34・・・第2基板、35・・・透明下部基板、35A・・・透明下部基板の第1面、35B・・・透明下部基板の第2面、40,60・・・光反射部、40A,60A・・・光反射部の下端部、40B,60B・・・光反射部の上端部、40C・・・金属反射層(多層薄膜)、41,61・・・凹部、42,62・・・充填材料、50,70・・・レンズ部、63・・・スタンパ(雌型)、64・・・樹脂組成物、64A・・・樹脂組成物硬化物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1電極、発光層を備えた有機層、及び、第2電極が積層されて成り、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、第2電極と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射する、複数の発光素子、並びに、
(B)第2電極と対向する第1面、及び、該第1面と対向する第2面を有し、第2電極の上方に固定された透明上部基板、
を具備した表示装置であって、
発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)及び式(1−4)を満たし、
透明上部基板の第1面には、発光層から第2電極を介して出射された光が通過するレンズ部が形成されていることを特徴とする表示装置。
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
L1<L2 (1−3)
m1<m2 (1−4)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【請求項2】
複数の発光素子の配列はストライプ配列であり、
1つの発光素子に対して複数のレンズ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
光学軸であるレンズ部の軸線をz軸とし、z軸が第2電極と交わる点における第2電極から出射する光の第2電極側においてz軸と成す角度をθO-2、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θO-2)>1/nSub-T
を満足することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
第1電極の平均光反射率は50%以上であり、
第2電極の平均光透過率は50%乃至90%であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
第1電極は光反射材料から成り、第2電極は半光透過材料から成り、
m1=0,m2=1であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
第2電極と透明上部基板の間には、第2電極側から、保護膜及び接着層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
(A)第1面、及び、該第1面と対向する第2面を有する透明下部基板、並びに、
(B)透明下部基板の第1面上、若しくは、透明下部基板の第1面の上方に設けられ、第1電極、発光層を備えた有機層、及び、第2電極が積層されて成り、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、第2電極と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第1電極から出射する、複数の発光素子、
を具備した表示装置であって、
発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)及び式(2−4)を満たし、
透明下部基板の第1面には、発光層から第1電極を介して出射された光が通過するレンズ部が形成されていることを特徴とする表示装置。
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (2−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (2−2)
L1>L2 (2−3)
m1>m2 (2−4)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【請求項1】
(A)第1電極、発光層を備えた有機層、及び、第2電極が積層されて成り、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、第2電極と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射する、複数の発光素子、並びに、
(B)第2電極と対向する第1面、及び、該第1面と対向する第2面を有し、第2電極の上方に固定された透明上部基板、
を具備した表示装置であって、
発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)及び式(1−4)を満たし、
透明上部基板の第1面には、発光層から第2電極を介して出射された光が通過するレンズ部が形成されていることを特徴とする表示装置。
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
L1<L2 (1−3)
m1<m2 (1−4)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【請求項2】
複数の発光素子の配列はストライプ配列であり、
1つの発光素子に対して複数のレンズ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
光学軸であるレンズ部の軸線をz軸とし、z軸が第2電極と交わる点における第2電極から出射する光の第2電極側においてz軸と成す角度をθO-2、透明上部基板の屈折率をnSub-Tとしたとき、
sin(θO-2)>1/nSub-T
を満足することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
第1電極の平均光反射率は50%以上であり、
第2電極の平均光透過率は50%乃至90%であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
第1電極は光反射材料から成り、第2電極は半光透過材料から成り、
m1=0,m2=1であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
第2電極と透明上部基板の間には、第2電極側から、保護膜及び接着層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
(A)第1面、及び、該第1面と対向する第2面を有する透明下部基板、並びに、
(B)透明下部基板の第1面上、若しくは、透明下部基板の第1面の上方に設けられ、第1電極、発光層を備えた有機層、及び、第2電極が積層されて成り、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、第2電極と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第1電極から出射する、複数の発光素子、
を具備した表示装置であって、
発光層の最大発光位置から第1界面までの距離をL1、光学距離をOL1、発光層の最大発光位置から第2界面までの距離をL2、光学距離をOL2とし、m1及びm2を整数としたとき、以下の式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)及び式(2−4)を満たし、
透明下部基板の第1面には、発光層から第1電極を介して出射された光が通過するレンズ部が形成されていることを特徴とする表示装置。
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (2−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (2−2)
L1>L2 (2−3)
m1>m2 (2−4)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ1≦0
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)
但し、−2π<Φ2≦0
である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−34074(P2010−34074A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255988(P2009−255988)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【分割の表示】特願2007−212956(P2007−212956)の分割
【原出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【分割の表示】特願2007−212956(P2007−212956)の分割
【原出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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