説明

表示装置

【課題】車両に搭載された場合であっても、車両の振動に起因する押圧操作および押圧位置の誤検出を防止すること。
【解決手段】押圧操作を受け付けるタッチパネルを有し、車両に搭載される表示装置は、タッチパネルに対する圧力値を検知し、検知された圧力値から車両の振動状態に対応する周波数帯を遮断し、遮断された結果に基づいて押圧位置を算出するように構成する。また、かかる表示装置は、車両の振動状態を推定し、推定された振動状態に基づいて周波数帯を変更するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載され、入力操作を受け付ける表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力操作を受け付けるタッチパネルを有する表示装置が知られている。また、かかる表示装置は、圧力を感知して反応する感圧式や、指と導電膜との間での静電容量の変化で反応する静電容量式等、種々の方式によって押圧位置を検出することができる。
【0003】
たとえば、特許文献1には、タッチパネルの背面の四隅に設置された圧力センサによって検出された圧力値に基づいて、押圧位置を算出する感圧式のタッチパネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−126997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の感圧式のタッチパネルを車両に搭載される表示装置に適用させた場合に、車両の振動による影響によって操作者が意図する押圧位置とは異なる位置を押圧位置として誤検出してしまうといった問題があった。
【0006】
また、車両に搭載される感圧式のタッチパネルでは、操作者が押圧操作を行っていないにも関わらず、車両の振動による影響によって押圧操作されたと誤検出してしまうといった問題もあった。
【0007】
これらのことから、車両に搭載された場合であっても、車両の振動に起因する押圧操作および押圧位置の誤検出を防止することができる表示装置をいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、車両に搭載された場合であっても、車両の振動に起因する押圧操作および押圧位置の誤検出を防止することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、押圧操作を受け付けるタッチパネルを有し、車両に搭載される表示装置であって、前記タッチパネルに対する圧力値を検知する複数の検知手段と、前記検知手段によって検知された前記圧力値から前記車両の振動状態に対応する周波数帯を遮断する遮断手段と、前記遮断手段によって遮断された結果に基づいて押圧位置を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、押圧操作を受け付けるタッチパネルを有し、車両に搭載される表示装置は、タッチパネルに対する圧力値を検知し、検知された圧力値から車両の振動状態に対応する周波数帯を遮断し、遮断された結果に基づいて押圧位置を算出することとしたので、車両に搭載された場合であっても、車両の振動に起因する押圧操作および押圧位置の誤検出を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施例に係る表示装置の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、閾値情報の一例を示す図である。
【図4】図4は、LPFを説明するための図である。
【図5】図5は、圧力値によるノイズカット処理を説明するための図である。
【図6】図6は、押圧位置補正処理を説明するための図である。
【図7】図7は、振動状態推定処理手順の概要を示すフローチャートである。
【図8】図8は、押圧位置算出処理手順の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る表示装置の好適な実施例を詳細に説明する。まず、本発明に係る表示装置の概要について図1を用いて説明した後に、本発明に係る表示装置についての実施例を図2〜図8を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る表示装置の概要を示す図である。本発明に係る表示装置は、複数の圧力センサによって検知された各圧力値を周波数軸へ展開し、車両の振動に起因する周波数帯域を減衰させることによってノイズをカットする。なお、ノイズとは、運転中の車両の振動に起因する圧力値の乱れのことを指す。
【0014】
そして、ノイズカットされた各圧力値に基づいて押圧位置を算出する。したがって、本発明に係る表示装置は、車両に搭載された場合であっても、車両の振動に起因する押圧操作および押圧位置の誤検出を防止することができる点に主たる特徴がある。
【0015】
まず、図1の(A)に示した斜視図を用いて表示装置についての説明をしておく。図1の(A)は、表示装置を右上方から見た図である。以下では同図右側に図示する座標軸を適宜用いて説明を行うこととする。
【0016】
図1の(A)に示したように、車両に搭載される表示装置が備える押圧操作を受け付ける前面パネルの背面には、四隅に圧力センサが設置されており、四つの圧力センサを挟むように設置される表示用のTFT(Thin Film Transistor)液晶パネルには、各種操作ボタンが表示される。
【0017】
そして、表示装置は、四つの圧力センサが検知したすべての圧力値に基づいて押圧位置を算出する。各圧力センサは、車両の走行中に、人の押圧操作による圧力値だけでなく、車両の振動による影響による圧力値を検知する。これにより、表示装置は、操作者が意図する押圧位置とは異なる位置を押圧位置として誤検出してしまう。
【0018】
たとえば、表示装置は、押圧操作を行っていないにも関わらず、車両の振動による圧力値を検知することによって押圧操作されたと誤検出してしまうこともある。また、表示装置は、人による押圧操作があった場合であっても、車両の振動に基づく検知結果と、人の押圧操作に基づく検知結果との合算値が検知されるため誤検出してしまう。そこで、本発明に係る表示装置は、車両の振動に起因する周波数帯域を減衰させる遮断フィルタによってノイズをカットすることとした。
【0019】
以下に、具体的な手法について図1の(B)を用いて説明する。図1の(B)に示す横軸は周波数、縦軸はレベル値である。同図に示したように、人の押圧操作によって検知される圧力値は、車両の振動による影響によって検知される圧力値よりも低い周波数に分布する傾向にある。
【0020】
そこで、本発明に係る表示装置は、各圧力値について周波数軸へ展開し、展開した周波数成分を所定の閾値(以下、「カットオフ周波数」と記載する)よりも高い周波数帯域を減衰させるLPF(Low pass filter)によってノイズをカットする。
【0021】
なお、ノイズカットの手法としては、LPFに限定されるものではなく、必要な範囲の周波数以外の帯域を減衰させるバンドパスフィルタによってノイズをカットしてもよい。
【0022】
さらに、本発明に係る表示装置は、周波数軸へ展開前の圧力値に基づいて車両の振動による影響をカットする。図1の(C)は、各圧力センサが検知した圧力値を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸は圧力値を示す。同図の実線のグラフは、人による押圧操作の場合を示し同図の波線のグラフは、車両の振動による影響による場合を示す。
【0023】
人による押圧操作の継続時間(t1)は、車両の振動による圧力値の継続時間(t2)と比較して長い傾向にある。なぜならば、人による押圧操作の場合、押圧をしてから表示装置からの応答があるまで、たとえば、「ピッ」と音がするまで押圧を継続するためである。
【0024】
また、図1の(C)に示したように、車両の振動による圧力値のピークが、人の押圧操作による圧力値と比較して、非常に高い値となることもある。逆に、車両の振動による圧力値のピークが非常に低い値となる場合もある。
【0025】
このような特徴に基づき、本発明に係る表示装置は、継続時間が所定の閾値以下である場合や、圧力値が所定の上限閾値以上または所定の下限閾値以下である場合は、人の押圧操作によるものではないとみなす。したがって、本発明に係る表示装置は、人の押圧操作によるものではない場合に、圧力値に基づく押圧位置の算出をしないこととする。
【0026】
このように、本発明に係る表示装置は、車両の振動による影響を排除し、人の押圧操作による圧力値のみを抽出する。これにより、本発明に係る表示装置は、車両の振動に起因する押圧操作および押圧位置の誤検出を防止することができる。
【0027】
また、車両に搭載される表示装置は、車両の振動による影響のみならず、圧力センサが車両の速度や加速度による影響を受けることによって押圧位置の誤検出をすることもある。したがって、本発明に係る表示装置は、ノイズカットする際に、車両の速度や加速度等の車両状態によってカットオフ周波数を変更することもできる。なお、詳細については図3〜図5を用いて後述することとする。
【0028】
以下では、図1を用いて説明した本発明に係る表示装置についての実施例を詳細に説明する。まず、本実施例に係る表示装置の構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施例に係る表示装置10の構成を示すブロック図である。なお、図2では、表示装置10の特徴点を説明するために必要な構成要素についてのみ記載している。
【0029】
図2に示すように、本実施例に係る表示装置10は、タッチパネル11と、通信I/F(インターフェース)12と、振動検知部13と、車速センサ14と、圧力センサ15と、人検知用センサ16と、表示駆動部17と、記憶部18と、制御部19とを備えている。また、制御部19は、道路情報取得部19aと、振動状態推定部19bと、フィルタ部19cと、押圧位置算出部19dと、押圧位置補正部19eとをさらに備えており、記憶部18は、振動状態情報18aと、閾値情報18bを記憶する。
【0030】
タッチパネル11は、表示装置10の前面に備える感圧式のパネルであり、押圧されたことを検知することにより、入力操作を受け付ける。通信I/F12は、他装置との通信を可能にする通信デバイスで構成され、たとえば、図示しないナビ装置と表示装置10との間のデータ送受信を行う。
【0031】
振動検知部13は、車両の加速度、角度および角速度を検知/計測する機器であり、たとえば、Gセンサ等の加速度計や角度や角速度を検知するジャイロセンサに相当する。振動検知部13は、検知された計測値を振動状態推定部19bへ通知する。
【0032】
車速センサ14は、車両の速度を検知/計測する機器であり、たとえば、車輪の角速度から速度を求める速度計であってもよい。また、車速センサ14は、GPS(Global Positioning System)衛星から受信した車両の位置情報によって速度を算出する機器であってもよい。車速センサ14は、検知された車両の車速を振動状態推定部19bへ通知する。
【0033】
圧力センサ15は、図1の(A)を用いて説明したように、タッチパネル11の背面の四隅に設置されており、タッチパネル11が押圧された圧力値を含む圧力値情報を検知するセンサである。
【0034】
圧力センサ15によって検知された圧力値を含む圧力値情報は、ノイズカットを行うためフィルタ部19cへ渡される。なお、ここでは、圧力センサ15とフィルタ部19cとを一組のみ記載したが、タッチパネル11の背面の四隅に設置される各圧力センサ15には、別々のフィルタ部19cが接続されており、四つのフィルタ部19cが個別にノイズカットを行うものとする。ただし、必ずしも四つの圧力センサ15と四つのフィルタ部19cとで構成される必要はなく、たとえば、表示装置10は、かかる二つの機器を六組備えることとしてもよい。
【0035】
人検知用センサ16は、タッチパネル11付近に設置されており、人による押圧操作を検知する機器である。たとえば、赤外センサや音波センサであってもよいし、また、カメラによって撮像された画像に基づいて人による押圧操作を検知することとしてもよい。また、人検知用センサ16は、人による押圧操作を検知したならば、その旨をフィルタ部19cへ通知する。
【0036】
表示駆動部17は、押圧操作による押圧位置に対応する操作や各種機能に関する情報を図示しないTFT液晶パネルへ表示させる制御部19へ指示を行う処理部である。
【0037】
たとえば、表示駆動部17は、ナビゲーション機能を有する表示装置10の場合は、地図とともに操作ボタン等をTFT液晶パネルへ表示させるよう制御部19へ指示し、オーディオ機能を有する表示装置10の場合は、曲名等とともに再生ボタン、停止ボタン等の操作ボタンをTFT液晶パネルへ表示させるよう制御部19へ指示する。なお、表示機能を有するパネルはTFT液晶パネルに限定されるものではない。
【0038】
記憶部18は、イグニッションスイッチがオフの間もバッテリから電源供給が行われることで記憶内容が保持されるスタンバイRAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリおよびハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部である。
【0039】
この記憶部18は、振動状態推定部19bによって推定された車両の振動状態に関する情報を振動状態情報18aとして記憶する。振動状態情報18aは、車両の振動状態を示すレベルであり、たとえば「高」、「中」および「低」のように三種類に分類することとしてもよいし、数値によって分類してもよいし、さらに細分化してもよい。
【0040】
また、この記憶部18は、フィルタ部19cがノイズカットする際に使用するカットオフ周波数や圧力値に基づいてノイズカットする際の閾値情報18bとして記憶する。
【0041】
ここで、閾値情報18bの詳細について図3を用いて説明しておく。図3は、閾値情報18bの一例を示す図である。まず、図3の(A)に示すように、閾値情報18bは、「振動レベル」項目と、「カットオフ周波数」項目とを含んでいる。なお、閾値情報18bは、かかる項目で構成される情報を1レコードとしたレコードの集合体である。
【0042】
「振動レベル」項目は、車両の速度や加速度等によって予め定める振動状態のレベルであり、振動状態推定部19bによって推定される振動状態情報18aと関連付けられており、また、振動状態情報18aと同一値であってもよい。「カットオフ周波数」項目は、LPFによってノイズカットする際の閾値となる周波数である。
【0043】
閾値情報18bは、「振動レベル」項目に対応して「カットオフ周波数」項目が記憶される。フィルタ部19cは、車両の振動状態に応じた「振動レベル」項目に対応する「カットオフ周波数」より高い周波数の帯域を減衰させるLPFによりノイズカットする。
【0044】
さらに、圧力値に基づいてノイズカットする場合には、図3の(B)に示すように、上述した項目以外に、閾値情報18bは、「継続時間」項目と、「上限閾値」項目と、「下限閾値」項目とを含むように構成する。
【0045】
「継続時間」項目は、押圧操作の継続時間によってノイズカットする際の閾値である。「上限閾値」項目および「下限閾値」項目は、圧力値情報に含まれる圧力値によってノイズカットする際の上限値および下限値である。
【0046】
なお、振動レベルに対応して各閾値を記憶することとしたが、速度や加速度に対応して各閾値を記憶してもよい。また、閾値情報18bに、種々のノイズカット処理に関する閾値を記憶することとしたが、LPFによるノイズカットと圧力値によるノイズカットとの処理別に閾値情報を分けて記憶させるような構成としてもよい。
【0047】
図2に戻り表示装置10の構成についての説明を続ける。制御部19は、表示装置10の全体制御を行う制御部であり、たとえば、パネルマイコンに相当する。道路情報取得部19aは、通信I/F12経由で車両が走行中の道路に関する情報を取得する処理を行う処理部である。
【0048】
道路情報とは、たとえば、「ハイウェイ」、「山道」、「一般道」といった路面種別や、道路の傾斜角、および、道路のR値(カーブ半径)のように、ナビ装置の地図情報に含まれる情報を指す。
【0049】
また、道路情報取得部19aは、取得した道路情報を振動状態推定部19bへ渡すことにより、振動状態推定部19bは、かかる道路情報に基づいて車両の振動状態を推定することとなる。
【0050】
振動状態推定部19bは、道路情報取得部19aから受け付けた道路情報、振動検知部13から受け付けた車両の加速度、角度および角速度、車速センサ14から受け付けた車速に基づいて車両の振動状態を推定する処理を行う処理部である。
【0051】
たとえば、振動状態推定部19bは、道路情報取得部19aから受け付けた道路情報に含まれる路面種別が「山道」の場合は、路面の状態が悪いと判定し、振動状態のレベルを「高」と推定する。
【0052】
一方、振動状態推定部19bは、路面種別が「ハイウェイ」の場合は、路面の状態が良いと判定し、振動状態のレベルを「低」と推定する。また、振動状態推定部19bは、推定した振動状態を振動状態情報18aとしてフィルタ部19cへ渡す処理を併せて行う。
【0053】
また、振動状態推定部19bは、通信I/F12経由でナビ装置等から天気情報を取得して、雪による路面状態や風雨の影響等も加味して、車両の振動状態を推定することとしてもよい。
【0054】
フィルタ部19cは、圧力センサ15によって検出された各圧力値を周波数軸へ展開し、展開した周波数成分のうち車両の振動に起因する周波数帯域を減衰させるLPFにより、個別にノイズカットする処理を行う処理部である。
【0055】
その際、フィルタ部19cは、振動状態推定部19bによって推定された振動状態に対応する閾値情報18bを取得し、取得した閾値情報18bに含まれるカットオフ周波数によってノイズカットする。また、フィルタ部19cは、上記した手法によってノイズカットした周波数成分を押圧位置算出部19dへ渡す処理を併せて行う。
【0056】
なお、フィルタ部19cは、LPF以外のノイズカット手法、たとえば、バンドパスフィルタによって、車両の振動に起因する周波数帯域を減衰させることとしてもよい。
【0057】
また、表示装置10は、車両の振動に起因する周波数成分を予め記憶部18へ記憶しておくこととしてもよい。そして、フィルタ部19cは、圧力センサ15によって検出された圧力値を周波数軸へ展開し、展開した周波数成分から記憶部18へ記憶された周波数成分を減算することによってノイズカットすることとしてもよい。また、記憶部18へ振動状態ごとに車両の振動に起因する周波数成分を記憶しておき、振動状態に基づいて減算する周波数成分を決定することとしてもよい。
【0058】
さらに、フィルタ部19cは、上述したLPFによるノイズカットとともに圧力値によるノイズカットを行うこととしてもよい。ここで、フィルタ部19cが行うノイズカット処理の詳細について図4および図5を用いて説明しておく。
【0059】
まず、図4は、LPFを説明するための図である。図4の(A)および図4の(B)は車両の振動が検知された圧力値を周波数軸へ展開し、展開した周波数成分のグラフであり、横軸は周波数、縦軸は所定のレベル値を示す。なお、図4の(A)は、図4の(B)と比較して車速が速い場合の周波数成分のグラフを示す。
【0060】
車速が速い場合(図4の(A))は、車速が遅い場合(図4の(B))と比較して高い周波数に分布する傾向にある。そこで、図4の(A)に示したように、フィルタ部19cは、カットオフ周波数βより高いカットオフ周波数αによりノイズカットする。
【0061】
このように、表示装置10は、車速や加速度等によって変化する振動状態に対応するカットオフ周波数によってノイズカットすることにより、正確に車両の振動による影響を排除することができる。
【0062】
なお、表示装置10は、カットオフ周波数よりも高い周波数帯域を減衰させることによってノイズカットすることとしたが、同時に、周波数成分のレベルを減衰させることによりノイズカットすることとしてもよい。
【0063】
つづいて、フィルタ部19cが実行する圧力値によるノイズカット処理の詳細について図5を用いて説明する。図5は、圧力値によるノイズカット処理を説明するための図である。
【0064】
図5の(A)〜(C)は、人の押圧操作による圧力値と車両の振動による圧力値とを比較したグラフであり、横軸は時間、縦軸は圧力値を示す。
【0065】
図5の(A)に示したように、車両の振動による圧力値の継続時間(t6)は、人の押圧操作による継続時間(t5)より短い傾向にある。そこで、フィルタ部19cは、継続時間が所定の閾値以下である場合に、車両の振動による影響とみなし、かかる圧力値を排除してノイズカットする。
【0066】
しかし、車両の車速が速い場合に、操作者が同じ押圧位置を継続して押圧することが困難な場合がある。また、加速度が大きい場合、たとえば、急発進時には、押圧位置から操作者の指が離れてしまい、継続時間が短くなってしまうこともある。
【0067】
このため、継続時間が所定の閾値以下であっても、速度が所定の速度以上、または、加速度が所定値以上であれば、人の押圧操作による圧力値である場合がある。したがって、上記の場合には、フィルタ部19cは、車両の振動による影響によって検知された圧力値であるとはみなさないで、ノイズカットは行わない。
【0068】
また、図5の(B)および(C)に示したように、車両の振動による圧力値のピーク値(ピーク2)は、人の押圧操作による圧力値のピーク値(ピーク1)と比較すると、非常に高い値である場合や、人の押圧操作では不可能なほど微かな圧力値のピーク値(ピーク3)である場合も考えられる。
【0069】
そこで、フィルタ部19cは、圧力値のピーク値が所定の上限閾値以上または下限閾値以下である場合は、車両の振動による影響によって検知された圧力値とみなし、かかる圧力値を排除してノイズカットする。
【0070】
なお、フィルタ部19cは、ノイズカットする際に、振動状態推定部19bによって推定された振動状態に対応する閾値情報18bを取得し、取得した閾値情報18bに含まれる継続時間の閾値、上限閾値および下限閾値を使用する。
【0071】
また、フィルタ部19cは、上述してきたようにノイズカット処理をすることとした。しかし、振動状態推定部19bによって車両が停車していると推定された場合は、車両の振動による影響を受けにくい。この場合、フィルタ部19cによるノイズカットをしないこととするようにしてもよい。
【0072】
図2に戻り表示装置10の構成についての説明を続ける。押圧位置算出部19dは、四つのフィルタ部19cによってノイズカットされた各周波数成分に基づいて押圧位置を算出する処理を行う処理部である。
【0073】
なお、各周波数成分による押圧位置の算出手法については公知の技術であるため、ここでは説明を省略する。また、押圧位置算出部19dは、算出された押圧位置を押圧位置補正部19eへ渡す処理を併せて行う。
【0074】
押圧位置補正部19eは、押圧位置算出部19dによって算出された押圧位置を補正する処理を行う処理部である。ここで、押圧位置補正部19eが行う押圧位置補正処理の詳細について図6を用いて説明しておく。
【0075】
図6は、押圧位置補正処理を説明するための図である。まず、タッチパネル11の所定の位置を操作者によって押圧された場合について図6の(A)および(B)を用いて説明する。以下では同図右側に図示する座標軸を適宜用いて説明を行うこととする。
【0076】
図6の(A)に示したように、タッチパネル11の座標値(x,y)で示す位置Pが押圧された場合、圧力センサ15は、押圧操作の継続時間中の圧力値を連続検知する。そして、押圧位置算出部19dは、連続検知された圧力値に基づき、時刻ごとの押圧位置の算出を行う。
【0077】
具体的には、連続検知された圧力値に基づいて算出された押圧位置のX座標値について時間軸上に展開したグラフを図6の(B)に示した。なお、同図に示す横軸は時間、縦軸はX座標値である。
【0078】
図6の(B)に示したように、時刻t7から時刻t11までについて、押圧位置算出部19dによって算出されたX座標値には、数値のばらつきが見受けられる。そこで、押圧位置補正部19eは、連続検知された圧力値に基づいて算出された押圧位置について所定の時間内で平滑化した値を押圧位置とするよう補正する。
【0079】
なお、補正手法としては、移動平均によって平滑化してもよいし、所定の時間内の座標値の平均値をとることとしてもよい。また、ここでは、X座標値について示したが、Y座標値についても同様である。
【0080】
また、制御部19は、押圧操作の継続時間が所定の閾値以下の場合に、検知された圧力値を無効とする。さらに、押圧位置補正部19eは、振動状態情報18aから取得した振動状態に基づいて閾値を変化させることにより、人の押圧操作によるか否かを判定してもよい。たとえば、押圧位置補正部19eは、速度が所定の速度以上、または、加速度が所定値以上であれば、かかる閾値を短く設定する。
【0081】
つづいて、押圧位置算出部19dによって所定時間内に離れた場所が押圧されたような座標値が算出された場合、押圧位置補正部19eは、かかる座標値を無効とする。具体的には、図6の(C)に示したように、連続する時刻t12とt13について、押圧位置算出部19dによって算出された座標値が、P(t12)およびP(t13)であったとする。この場合、押圧位置補正部19eは、P(t12)またはP(t13)のいずれかの座標値を無効とするよう補正する。
【0082】
このように、押圧位置補正部19eは、押圧位置算出部19dによって算出された押圧位置を補正する。これにより、表示装置10は、精度良く押圧位置を算出することができる。なお、補正する手法としては、上述した手法に限定されるものではなく、他の手法によって補正することとしてもよい。
【0083】
つぎに、本実施例に係る表示装置10が実行する制御処理の詳細について図7〜図8を用いて説明する。図7は、振動状態推定処理手順の概要を示すフローチャートであり、図8は、押圧位置算出処理手順の概要を示すフローチャートである。
【0084】
まず、制御部19では、以下のようにして車両の振動状態を推定する。図7に示すように、道路情報取得部19aは、車両が走行中の道路に関する情報を取得する(ステップS101)。
【0085】
そして、振動状態推定部19bは、振動検知部13から車両の加速度、角度および角速度等の振動に関する情報を取得し(ステップS102)、車速センサ14から車速を取得する(ステップS103)。
【0086】
つぎに、振動状態推定部19bは、取得した道路情報、振動情報および車速に基づいて振動状態を推定し(ステップS104)、推定した振動状態を振動状態情報18aへ更新し(ステップS105)、制御部19が行う一連の振動状態推定処理を終了する。
【0087】
つづいて、制御部19が実行する押圧位置算出処理手順の詳細について図8を用いて説明する。図8に示すように、四つのフィルタ部19cが、四つの圧力センサからそれぞれ圧力値を取得する(ステップS201)。
【0088】
つぎに、フィルタ部19cは、振動状態情報18aを取得し(ステップS202)、取得した振動状態情報18aに対応する振動レベルに関連付けられた閾値情報18bを取得する(ステップS203)。
【0089】
そして、フィルタ部19cは、取得した閾値情報18bに基づいてステップS201で取得した各圧力値から車両の振動による影響を排除してノイズカットする(ステップS204)。
【0090】
その後、押圧位置算出部19dは、フィルタ部19cによってノイズカットされた各圧力値に基づいて押圧位置を算出する(ステップS205)。そして、押圧位置補正部19eは、押圧位置算出部19dによって算出された押圧位置を補正して(ステップS206)、制御部19が行う一連の押圧位置算出処理を終了する。
【0091】
なお、制御部19は、人による押圧操作である旨を人検知用センサ16から受け付けた場合にのみ、上述した一連の押圧位置算出処理を行うこととしてもよい。これにより、車両の振動による影響を排除し、人の押圧操作による圧力値のみを抽出することができる。
【0092】
ここで、ナビゲーション機能を有する表示装置10の場合は、制御部19によって算出された押圧位置とともに操作ボタンの内容を、図示しないナビ装置へ送信し、ナビ装置は、押圧位置に対応する地図情報やルート情報等を表示装置10へ送信する。そして、表示装置10は、ナビ装置から受信した地図情報やルート情報等をTFT液晶パネルへ表示させることとなる。
【0093】
このように、本発明に係る表示装置10を、ナビゲーション機能を有するナビ装置の表示装置10として適用してもよいし、CDやDVDを再生するオーディオ装置やテレビ受信装置の表示装置10として適用してもよい。
【0094】
このように、本発明に係る表示装置10は、感圧式のタッチパネル11の背面の四隅に設置された複数の圧力センサ15によって検知された各圧力値を周波数軸へ展開し、車両の振動に起因する周波数帯域を減衰させることによってノイズをカットする。そして、ノイズカットされた各圧力値に基づいて押圧位置を算出することとしたので、表示装置10が車両に搭載された場合であっても、車両の振動に起因する押圧操作および押圧位置の誤検出を防止することができる。
【符号の説明】
【0095】
10 表示装置
11 タッチパネル
12 通信I/F
13 振動検知部
14 車速センサ
15 圧力センサ
16 人検知用センサ
17 表示駆動部
18 記憶部
18a 振動状態情報
18b 閾値情報
19 制御部
19a 道路情報取得部
19b 振動状態推定部
19c フィルタ部
19d 押圧位置算出部
19e 押圧位置補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧操作を受け付けるタッチパネルを有し、車両に搭載される表示装置であって、
前記タッチパネルに対する圧力値を検知する複数の検知手段と、
前記検知手段によって検知された前記圧力値から前記車両の振動状態に対応する周波数帯を遮断する遮断手段と、
前記遮断手段によって遮断された結果に基づいて押圧位置を算出する算出手段と
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記車両の振動状態を推定する振動推定手段
をさらに備え、
前記遮断手段は、
前記振動推定手段によって推定された前記車両の振動状態に基づいて前記周波数帯を変更することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
道路の状態に関する情報を含む地図情報を取得する地図情報取得手段
をさらに備え、
前記振動推定手段は、
前記地図情報取得手段によって取得された前記地図情報に基づいて前記振動状態を推定することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記算出手段によって算出された前記押圧位置を前記振動推定手段によって推定された前記振動状態に基づいて補正する押圧位置補正手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記算出手段は、
前記検知手段によって検知された前記圧力値が下限閾値を連続して上回った時間を示す継続時間が所定の閾値未満である場合、または、前記圧力値が所定の範囲に含まれない場合に、前記押圧位置を算出しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の表示装置。
【請求項6】
前記押圧操作を受け付けたか否かを検知する押圧操作検知手段
をさらに備え、
前記算出手段は、
前記押圧操作検知手段によって前記押圧操作を受け付けたことが検知された場合に、前記押圧位置を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−181703(P2012−181703A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44480(P2011−44480)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】