説明

表示装置

【課題】 投影型の表示装置において、より簡素な方法で画像枠の台形歪みによる違和感を低減でき、また、新規な表現が可能な表示装置を提供する
【解決手段】 表示画像20を示す表示光Lを出射する表示器11と、表示光Lが投影され表示画像20を表示する被投影部材14と、表示画像20を記憶する記憶手段16と、前記記憶手段から表示画像20を取得して表示器1を制御する制御手段15と、を備えてなる表示装置10である。記憶手段16は、表示画像20の一部からなる有効表示部31とこの有効表示部31を囲み外側に向かって明るさが徐々に下がる階調調整部32とを有するように生成された補正画像30を記憶し、制御手段15は、補正画像30を取得して補正画像30を示す表示光Lを出射するように表示器1を制御可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示器から出射される表示光を被投影部材に投影して表示画像を表示する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーン(被投影部材)に表示器から出射される表示光を投影させ、画像を表示する投影型の表示装置が知られている。
【0003】
投影型の表示装置においては、表示器から出射される表示光がスクリーン面に対して垂直でなく斜めに入射する場合に、画像に台形状の歪みが生じるという問題がある。このような歪みが生じる場合、観察者は画像内容自体の歪みもさることながら、正しく表示されれば矩形状となるはずの画像枠の歪みによって強い違和感を覚える。この画像枠の歪みを解消する方法としては、例えば特許文献1に開示されるように、表示器に供給される映像信号における水平帰線消去期間の長さを垂直走査期間に応じて単調に変化させ、水平帰線消去期間の電位を黒レベルに固定し、画像枠における台形歪み部分を黒の状態として歪みのない画像枠を有する画像を表示する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−89784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、画像枠の歪みを補正するための専用の補正回路が必要であって、歪みのない画像枠に補正するため手段が複雑であり、また画像枠が矩形状に限られる点で、更なる改良の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題に着目してなされたものであり、投影型の表示装置において、より簡素な方法で画像枠の台形歪みによる違和感を低減でき、また、新規な表現が可能な表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、表示画像を示す表示光を出射する表示器と、前記表示光が投影され前記表示画像を表示する被投影部材と、前記表示画像を記憶する記憶手段と、前記記憶手段から前記表示画像を取得して前記表示器を制御する制御手段と、を備えてなる表示装置であって、
前記記憶手段は、前記表示画像の一部からなる有効表示部とこの有効表示部を囲み外側に向かって明るさが徐々に下がる階調調整部とを有するように生成された補正画像を記憶し、
前記制御手段は、前記補正画像を取得して前記補正画像を示す表示光を出射するように前記表示器を制御可能であることを特徴とする。
【0008】
また、前記階調調整部は、外側に向かって明るさが非線形に下がることを特徴とする。
【0009】
また、前記階調調整部は、前記表示画像の前記有効表示部以外の他の部分からなることを特徴とする。
【0010】
また、前記表示器の表示可能領域のうち前記補正画像でない領域は、画像表示のない非表示部であることを特徴とする。
【0011】
また、前記補正画像は、複数の前記有効表示部及び階調調整部を有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、投影型の表示装置において、より簡素な方法で画像枠の台形歪みによる違和感を低減でき、また、新規な表現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態である表示装置の概観を示す図。
【図2】同上の表示装置の電気的構成を示す図。
【図3】同上の表示装置における表示画像を示す図。
【図4】同上の表示装置における補正画像の一例を示す図。
【図5】同上の表示装置における階調調整部の明るさの変化を示す図。
【図6】同上の表示装置における補正画像の一例を示す図。
【図7】同上の表示装置における階調調整部の明るさの変化を示す図。
【図8】同上の表示装置における補正画像の一例を示す図。
【図9】同上の表示装置における補正画像の一例を示す図。
【図10】同上の表示装置における補正画像の一例を示す図。
【図11】同上の表示装置における補正画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1及び図2を用いて表示装置10の全体構成を説明する。表示装置10は、プロジェクタ(表示器)11と、第1のミラー12と、第2のミラー13と、スクリーン(被投影部材)14と、制御手段15と、記憶手段16と、から主に構成されている。
【0016】
プロジェクタ11は、表示画像を示す表示光Lをスクリーン14に向けて出射するものであり、例えば光源からの光を液晶パネルを透過させて表示光を形成する液晶プロジェクタからなる。
【0017】
第1、第2のミラー12、13は、例えばポリカーボネートなどの樹脂材料に例えばアルミニウムなどの金属を蒸着させて反射面を形成してなる反射部材である。プロジェクタ11から出射された表示光Lは、第1、第2のミラー12、13を反射し、スクリーン14に投影される。
【0018】
スクリーン14は、プロジェクタ11から出射された表示光Lが投影されて表示画像20を映し出す(表示する)ものである。本実施形態において、スクリーン14は、表示光Lを透過して表示画像20を表示する透過スクリーンであるが、表示光Lを反射して表示画像20を表示する反射スクリーンを適用してもよい。
【0019】
制御手段15は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェイス等を備えたマイクロコンピュータから構成される。制御手段15は、記憶手段16から画像データを取得し、前記画像データに応じた駆動信号を所定周期でプロジェクタ11へ出力してスクリーン14に表示画像20を示す表示光Lを出射させるべく発光表示駆動制御をするものである。また、制御手段15は、所定の切換信号に応じて、記憶手段16から後述する補正画像を示す画像データを取得し、プロジェクタ11を制御して表示画像20に替えて補正画像30を示す表示光Lを出射させてスクリーン14上に表示させる機能を有している。
【0020】
記憶手段16は、EPROMなどの不揮発性メモリからなり、表示装置10にて表示する表示画像あるいは補正画像を示す画像データを記憶する。
【0021】
以上の各部によって表示装置10が構成されている。次に、表示装置10における補正画像30の表示機能について説明する。
【0022】
図3は、スクリーン14上に表示される表示画像20の一例を示すものである。本実施形態においてはプロジェクタ11及び第1、第2のミラー12、13とスクリーン14との配置関係が、表示光Lがスクリーン14の表示面に対して垂直でなく上向きに傾斜して入射する配置関係となっているため、図3に示すように表示画像20に下辺よりも上辺が長い台形状の歪みが生じている。
【0023】
制御手段15は、前記切換信号として例えば所定のスイッチ入力を検出すると、記憶手段16から補正画像30を示す画像データを取得し、プロジェクタ11を制御して補正画像30を示す表示光Lを出射させてスクリーン14上に補正画像30を表示させる。図4は、スクリーン14上に表示される補正画像30の一例を示すものである。補正画像30は、表示画像20の一部からなる有効表示部31と、有効表示部31を囲み外側に向かって明るさが徐々に下がる階調調整部32と、を有する。有効表示部31は、表示画像20の一部領域をスクリーン14上で台形歪みのない所定の形状(図4中では矩形状)に選択してなる。階調調整部32は、表示画像20の有効表示部31以外の領域を、外側に向かって明るさが100%(階調補正を開始する位置の輝度)から最小で0%(輝度の最小値である黒表示)まで徐々に下がるように階調補正してなる。また、図5に示すように階調調整部32において明るさは外側に向かって非線形に下げられる。ここで、有効表示部31の横方向(x軸方向)の長さをA、縦方向(y軸方向)の長さをBとした場合、階調調整部32において明るさが100%から0%となるまでのx軸方向の長さx1は3mm<x1<A/2とし、y軸方向の長さy1は3mm<y1<B/2とすることが望ましい。階調調整部32が短すぎると後述するように画像枠を不鮮明とする目的が達せられず、また、階調調整部32が長すぎると画像全体が視認しづらくなるためである。なお、階調調整部32のうち、x軸方向あるいはy軸方向の長さがx1、y1未満の個所は明るさが0%まで下がらず、x1、y1より長い個所はx1、y1地点より明るさが0%となる。
また、図4においては有効表示部31はスクリーン14上で台形歪みのない矩形状となっているが、プロジェクタ11を含む投射光学系の配置位置が固定である場合には、その配置位置により生じる台形歪みと逆方向に歪み補正を加えた形状で有効表示部31を選択すればスクリーン14上で台形歪みのない形状で有効表示部31を選択することができる。また、投射光学系が移動可能である場合は、有効表示部31の選択を行う形状に例えば手動によってある程度の台形歪み補正を行ってもよい。
なお、補正画像30は、予め生成されて記憶手段16に記憶されてもよいし、表示装置10が設置された後に行う初期設定機能の1つや観察者が任意に行う歪み補正機能として制御手段15によって補正画像30を生成し、一度生成した補正画像30を記憶手段16に記憶してもよい。
【0024】
かかる表示装置10では、スクリーン14上に表示される補正画像30の外周に階調調整部32が設けられているため、台形に歪んだ画像枠が不鮮明となり、画像枠の台形歪みによる観察者の違和感を低減できる。特に階調調整部32において明るさは外側に向かって非線形に下げることで画像枠を観察者に認識させにくくすることができる。また、プロジェクタ11に専用の補正回路も必要とせず、より簡素な方法で台形歪みによる違和感を低減することができる。また、階調調整部32にも表示画像20の一部の画像を表示することで、矩形状でない新規な表現が可能となる。
【0025】
次に、本発明における補正画像の他の実施例について説明する。
【0026】
図6は、他の実施例である補正画像40を示している。補正画像40は、表示画像20の一部領域をスクリーン14上で台形歪みのない所定の形状(図6中では略円状)で切り出し(トリミング)し、補正画像40の中央領域を表示画像20の一部からなる有効表示部41とし、補正画像40の外周から内側10%までの領域を外側に向かって明るさが徐々に下がる階調調整部42とした画像である。階調調整部42は、補正画像40の有効表示部41以外の領域を、外側に向かって明るさが100%(階調補正を開始する画素の輝度)から表示部41の外周で0%(輝度の最小値である黒表示)となるように徐々に下がるように階調補正してなる。また、図7に示すように、階調調整部42において(図7中は有効表示部41の外周上の階調補正開始点aから補正画像40の外周上の階調補正終了点bまでの間)、明るさは外側に向かって非線形に下げられる。なお、補正画像40は表示画像20よりも面積が小さくなるため、プロジェクタ11の表示可能領域Rのうち補正画像40でない(補正画像40より外側の)領域は画像表示のない(黒表示である)非表示部となる。
かかる実施例によっても、台形歪みが生じている表示画像20の一部を切り出して補正画像40とし、さらにスクリーン14上に表示される補正画像41の外周部分に階調調整部42が設けられているため、台形に歪んだ画像枠が目立たなくなり、画像枠の台形歪みによる観察者の違和感を低減できる。また、プロジェクタ11に専用の補正回路も必要とせず、より簡素な方法で台形歪みによる違和感を低減することができる。また、表示画像20の一部を切り出し、さらに階調調整部42に表示画像20の一部の画像を表示することで、矩形状でない新規な表現が可能となる。
なお、本実施例において補正画像40の切り出し形状は、略円状に限定されず、図8に示すように矩形状であってもよい。
【0027】
また、スクリーン14上に矩形状でない新規な表現を表示する作用及び効果の点からは、表示装置10は、プロジェクタ11の表示光Lがスクリーン14に対して傾斜しておらず、スクリーン14上の表示画像20に台形歪みが生じてない場合にも、図9、10に示すように補正画像50、60を表示可能としてもよい。図9において、補正画像50は、表示画像20の中央領域を有効表示部51とし、表示画像20の外周から内側10%までの領域を外側に向かって明るさが徐々に下がる階調調整部52とした画像である。また、図10において、補正画像60は、表示画像20の一部領域を所定の形状(図10中では略楕円状)で切り出し(トリミング)し、補正画像60の中央領域を表示画像20の一部からなる有効表示部61とし、補正画像60の外周から内側10%までの領域を外側に向かって明るさが徐々に下がる階調調整部62とした画像である。
【0028】
また、本発明においては、図11に示すように複数の有効表示部71、73とこれらをそれぞれ囲む複数の階調調整部72、74を有する補正画像70を生成し、表示させてもよい。この例は、表示画像20が2つのアナログメータを描画したものであるなど、間隔を開けて複数の物が描画される画像である場合に有効である。なお、図11は、スクリーン14上の表示画像20に台形歪みが生じてない場合の表示例であるが、台形歪みが生じる場合は、台形歪みのない複数の有効表示部及び複数の階調調整部を有する補正画像が生成、表示される。なお、補正画像70は表示画像20よりも面積が小さくなるため、プロジェクタ11の表示可能領域Rのうち補正画像70でない領域は画像表示のない(黒表示である)非表示部となる。
【符号の説明】
【0029】
10 表示装置
11 プロジェクタ(表示器)
12 第1のミラー
13 第2のミラー
14 スクリーン(被投影部材)
15 制御手段
16 記憶手段
20 表示画像
30、40、50、60、70 補正画像
31、41、51、61、71、73 有効表示部
32、42、52、62、72、74 階調調整部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画像を示す表示光を出射する表示器と、前記表示光が投影され前記表示画像を表示する被投影部材と、前記表示画像を記憶する記憶手段と、前記記憶手段から前記表示画像を取得して前記表示器を制御する制御手段と、を備えてなる表示装置であって、
前記記憶手段は、前記表示画像の一部からなる有効表示部とこの有効表示部を囲み外側に向かって明るさが徐々に下がる階調調整部とを有するように生成された補正画像を記憶し、
前記制御手段は、前記補正画像を取得して前記補正画像を示す表示光を出射するように前記表示器を制御可能であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記階調調整部は、外側に向かって明るさが非線形に下がることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記階調調整部は、前記表示画像の前記有効表示部以外の他の部分からなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示器の表示可能領域のうち前記補正画像でない領域は、画像表示のない非表示部であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記補正画像は、複数の前記有効表示部及び階調調整部を有してなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−231356(P2012−231356A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99038(P2011−99038)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】