説明

表面に官能基を有するポリオレフィン磁性微小粒子

本発明は、所望の磁性粒子を包含した微小粒子において取り扱いが容易で表面積が大きく、沈降しにくく、かつ緻密な粒子表面にカルボキシル基等の官能基を有する微小粒子に関する。微小粒子は、少なくとも1種のポリオレフィン又はポリオレフィン共重合体および少なくとも1種の磁性材料を含み、密度が0.9乃至1.5g/ccであり、平均粒子径が0.5μm乃至1000μmの略球状粒子であって、該粒子表面に官能基を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性微小粒子に関し、さらに詳しくは、粒子の表面にカルボキシル基などの官能基を有する磁性微小粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁性粒子を包含した微小粒子は重合性単量体中に親油化処理した磁性粒子を分散し、これを懸濁重合法(例えば特許文献1)もしくは乳化重合法(例えば特許文献2)等により製造されてきた。さらに、粒子表面に有用なカルボキシル基を導入する方法が開示されている(特許文献3)。しかし、これらの方法はいずれも重合性単量体を出発原料に用いるため、添加した磁性粒子が重合反応を阻害する。このため磁性粒子含有量が制限されたり、生成する磁性微小粒子の粒子径も概ね1μm以下と小さくなる場合が多い。したがって、磁性粒子の含有量にかかわらず、粒子径が1μm以上好ましくは5μm以上の取り扱いが容易で表面積の大きな磁性微小粒子を効率よく製造することが求められている。また、これらの粒子は単量体を重合したままの状態であり、熱可塑性樹脂等で溶融成型した微小粒子に比べて緻密度が低く強酸や強アルカリの分散媒体中で溶媒が浸潤しやすい。また、使用される樹脂種としてスチレンもしくはスチレン誘導体を重合したものが多く、磁性粒子を包含していない状態でも密度が1より大きい。したがって磁性粒子を包含させた微小粒子はさらに重く、水系の分散媒中で使用する場合、沈降し易い等の不都合が生じる場合が多い。特に粒子径が5μm以上では沈降しやすくなる。
【0003】
これに対して本発明者らは相溶性のない2種類の熱可塑性樹脂を溶融し海島構造をとるように分相させることで0.1〜1000μm好ましくは5〜500μmからなる略球状の微小粒子を効率よく製造する方法(溶融分相法)を開発し(特許文献4)、種々の熱可塑性樹脂からなる微小粒子の製造を可能にした。また、この方法を基にこれらの微小粒子中に磁性粒子等の無機材料を包含させた複合微小粒子の製造方法を開発した(特許文献5)。しかしながらこれらの微小粒子表面は原料樹脂の特性がそのまま反映されたものであり、表面に有用な官能基を多く保有するものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−221302号公報
【特許文献2】特公平3−57921号公報
【特許文献3】特開平10−87711号公報
【特許文献4】特開昭61−9433号公報
【特許文献5】特開2001−114901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、所望の磁性粒子を包含した微小粒子において取り扱いが容易で表面積が大きく、沈降しにくく、かつ緻密な粒子表面にカルボキシル基等の官能基を有する微小粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、項1の発明によって解決された。その好ましい実施態様である項2〜項10と共に以下に記載する。
項1)少なくとも1種のポリオレフィン又はポリオレフィン共重合体および少なくとも1種の磁性材料を含み、密度が0.9乃至1.5g/ccであり、平均粒子径が0.5μm乃至1000μmの略球状粒子であって、該粒子表面に官能基を有することを特徴とする微小粒子、
項2)ポリオレフィンがポリプロピレン及び/又はポリエチレンであり、ポリオレフィン共重合体がプロピレンの共重合体及び/又はエチレンの共重合体である項1記載の微小粒子、
項3)官能基が、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、スルホン酸基、及びグリシジル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種である項1又は2記載の微小粒子、
項4)官能基が、(1)粒子に表面グラフト重合されたグラフトポリマー中の官能基、(2)粒子中に混練され粒子表面に存在する脂肪族炭化水素に結合した官能基、又は(3)ポリオレフィン共重合体の主鎖に共重合された単量体中の官能基である項3記載の微小粒子、
項5)平均粒子径が1.0μm乃至100μmである項1乃至4いずれか1つに記載の微小粒子、
項6)密度が1.0乃至1.1g/ccである項1乃至5いずれか1つに記載の微小粒子、
項7)磁性材料が軟磁性材料である項1乃至6いずれか1つに記載の微小粒子、
項8)磁性材料が超常磁性体である項1乃至7いずれか1つに記載の微小粒子、
項9)軟磁性材料がマンガンジンクフェライト及び/又はニッケルジンクフェライトである項7記載の微小粒子、
項10)磁性材料の含有量が、微小粒子の総重量に対し10乃至25重量%である項1乃至9いずれか1つに記載の微小粒子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、沈降しにくく、表面に化学反応性の高い官能基を有する微小粒子が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の微小粒子は、少なくとも1種のポリオレフィン又はポリオレフィン共重合体および少なくとも1種の磁性材料を含み、密度が0.9乃至1.5g/ccであり、平均粒子径が0.5μm乃至1000μmの略球状粒子であって、該粒子表面に官能基を有することを特徴とする。
本発明において「官能基」とは、重合体、共重合体、又は有機化合物の分子内に存在し、その化合物の特徴的な反応性の原因となるような原子又は原子団をいう。「略球状」とは、粒子の直交3軸の比が2以下のものをいう。本発明の微小粒子は真球状であることが好ましい。「真球状」とは、粒子の直交3軸の比が0.9〜1.1のものをいう。本発明において、「粒子径」とは、粒子直径を意味する。また、「平均粒子径」とは、粒子直径の数平均をいう。
【0009】
以下に、本発明の微小粒子について詳しく説明する。
<樹脂材料>
本発明によれば、磁性材料を包含する微小粒子の材料としてはポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンの密度が0.83〜0.95と小さいため磁性粒子添加後も粒子全体の密度を比較的小さく抑えることが可能となる。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブチレン等が好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレンがより好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。これらのポリオレフィンは、1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0010】
また、樹脂材料として、ポリオレフィン又はポリオレフィン共重合体を用いることができる。ポリオレフィン共重合体としては、2種以上のオレフィンモノマーの共重合体、オレフィンモノマーと官能基を有するモノマーとの共重合体等が挙げられる。
オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、メチルペンテン、1−ブテン、イソブチレン等が好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましい。
オレフィンモノマー以外のモノマーとしては、アクリル酸等の官能基(カルボキシル基)を有するエチレン性不飽和化合物(「官能基を有するモノマー」ともいう。)、及び、酢酸ビニル等のアルカリ加水分解等の化学処理により水酸基等の官能基に変換可能なエチレン性不飽和化合物が好ましい。官能基を有するモノマーについては後に詳しく説明する。
2種以上のオレフィンモノマーの共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体が例示できる。オレフィンモノマーとオレフィンモノマー以外のモノマーとの共重合体としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が例示できる。
本発明の微小粒子は、樹脂材料としてポリオレフィン及び/又はポリオレフィン共重合体以外の樹脂を含有しないことが好ましい。
【0011】
<微小粒子表面の官能基>
微小粒子表面に存在する官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、スルホン酸基、及びグリシジル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシル基及びアミノ基が特に好ましい。これらの官能基は微小粒子の用途に応じて選択することができる。
【0012】
<官能基の導入>
前記項4)に記載した(1)〜(3)について順に詳述する。
官能基を導入する手段は種々の方法が採用される。一つの方法としては本発明者らが開発した溶融分相法を採用して磁性粒子を包含したポリオレフィンの微小粒子を作製した後に、表面グラフト重合法を採用する。表面グラフト重合法は、当業者に周知の方法であり、粒子表面に発生させた重合開始点から、所望の官能基を有するモノマーを粒子表面にグラフト重合する。重合開始点は、微小粒子とモノマーとの共存下にγ線などを照射して発生させることができる。また、重合開始点を予め微小粒子表面に電子線照射等により発生させてからモノマーと接触させてグラフト鎖を成長させても良い。
グラフト重合に用いるモノマーの含量は、磁性粒子を包含したポリオレフィンの微小粒子に対して、1〜30重量%であることが好ましい。
官能基を有するモノマーとしては、アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ビニルスルホン酸、スルホン酸を含有する共役ジエン系モノマー(1,3−ブタジエン等)が例示できる。
なお、官能基を微小粒子表面に導入する方法として、エチル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステルを共重合したポリオレフィン共重合体を使用して微小粒子を形成した後に、アルカリ加水分解することにより粒子表面にカルボキシル基を生成させることができる。
【0013】
粒子表面に官能基を導入する他の方法としては、同じ溶融分相法を採用し、ポリオレフィン又はポリオレフィン共重合体に、所望の官能基を好ましくは分子末端に有する脂肪族炭化水素(好ましくは飽和のパラフィン;官能基結合脂肪族炭化水素)を混練し、分相させることで粒子表面に所望の官能基を導入することができる。官能基結合脂肪族炭化水素としては、炭素数(C)16〜22の、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪族アミン、各種金属石鹸等が好ましく使用される。
好ましい高級脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸が例示できる。
好ましい高級アルコールとしては、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクタデカニルアルコール、ノナデカニルアルコールが例示できる。
好ましい高級脂肪族アミンとしては、オクタデシルアミン、(Z,Z)−9,12−オクタデカジエニルアミン、オレイルアミンが例示できる。
ポリオレフィン(共重合体)に添加した、官能基を末端に有する脂肪族炭化水素は溶融分相過程でその炭化水素鎖部分がポリオレフィンと親和的に共存し、逆に末端のカルボキシル基等の官能基が分相した海成分(親水性)の方に引き寄せられるために所望の構造が実現する。
ポリオレフィンに混合溶融する官能基結合脂肪族炭化水素の含量は、ポリオレフィンに対して、1〜10重量%であることが好ましい。
【0014】
粒子表面に官能基を導入するさらに他の方法としては溶融分相法を採用し、溶融分相させるポリマーとして、オレフィンと、所望の官能基を有するモノマーとの共重合体(グラフト重合体を含む。)を用いることで、磁性粒子を包含したポリオレフィン粒子の外側に所望の官能基を有するポリマーを存在させることができる。
官能基を有するモノマー(単量体)としては、アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート等のグリシジル基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル等のヒドロキシル基含有モノマー、ビニルスルホン酸やスルホン酸を含有する共役ジエン系モノマー等が好ましい。
官能基を有するポリマーとしては、上記モノマーを共重合成分として有するポリオレフィン共重合体が好ましく使用できる。
オレフィンに共重合(グラフト共重合体を含む。)させる官能基を有するモノマーの量は、ポリオレフィンに対して1〜30重量%であることが好ましい。
オレフィンとしては、プロピレン、エチレン、メチルペンテン、1−ブテン、イソブチレン等が好ましく、プロピレン、エチレンがより好ましく、エチレンが特に好ましい。
官能基含有モノマーを共重合したポリオレフィンの具体例として、アクリル酸を1〜20重量%共重合したポリエチレンが挙げられる。
【0015】
微小粒子表面の官能基は、好ましくは微小粒子形成後に、有機化学的手段により、他の官能基に変換することもできる。例えば、カルボキシル基を水素化アルミニウムリチウム等の還元剤で還元すると水酸基が得られる。水酸基を三酸化硫黄ピリジン錯体等の酸化剤で酸化するとホルミル基が得られる。さらに、ホルミル基を還元的アミノ化反応によりアミノ基へと変換することができる。
【0016】
本発明の微小粒子の平均粒子径は、0.5μm乃至1,000μmであり、好ましくは1.0μm乃至200μmであり、より好ましくは1.0μm乃至100μmであり、さらに好ましくは10μm乃至100μmであり、特に好ましくは20μm乃至50μmである。
本発明の微小粒子の粒子径分布は単分散でも多分散でも良いが、粒子径が揃った単分散であることが好ましい。多分散の粒径分布を有する微小粒子に、湿式分級法又は乾式分級法を適用して、所望の平均粒子径を有する微小粒子を得ることができる。
本発明の微小粒子の密度は、好ましくは0.9乃至1.5g/ccであり、より好ましくは1.0乃至1.1g/ccである。密度が前記範囲内であると、水系分散媒中で沈降しにくくなる。
本発明の微小粒子1コあたりの表面積は、好ましくは7.5×10-13〜3×10-62であり、 より好ましくは3×10-10〜3×10-82であり、 さらに好ましくは6×10-10〜7.5×10-92である。
【0017】
<磁性粒子>
本発明で使用できる磁性粒子としては目的とする微小粒子のサイズより小さい粒子であればいかなるものも使用できる。磁性粒子を微小粒子に包含させる目的の一つは外部磁界により、微小粒子を各種化学環境下の微小領域で駆動し、分散、分離、回収、攪拌、混合、流速制御、バルブ操作などの単位操作を行うことにある。このような目的に使用される磁性粒子には、自発磁化を有する強磁性材料を用いることが好ましい。ここで、強磁性材料とは、フェロ磁性、フェリ磁性など自発磁化を有する磁性材料である。このような材料は金属、合金、金属間化合物、酸化物、金属化合物など多岐にわたる。また、本発明の磁性微小粒子の利用形態によっては残留磁化の少ない磁性材料が求められる。そのような用途には一般的に軟磁性を示す磁性材料が好適である。また、強磁性材料をナノオーダーのサイズにした超常磁性材料もさらに好ましい。超常磁性粒子のサイズとしては、5〜100nmが好ましく、10〜50nmがより好ましい。
磁性粒子の充填量は、用いるポリオレフィン系ポリマーや磁性材料の密度や自発磁化によるが、微小粒子の総重量に対し1〜50重量%が好ましく、10〜25重量%がより好ましく、10〜15重量%が特に好ましい。
【0018】
金属材料としては遷移金属のFe、Ni、Coが代表的であるが、これらの金属との合金として、Fe−V、Fe−Cr、Fe−Ni、Fe−Co、Ni−Co、Ni−Cu、Ni−Zn、Ni−V、Ni−Cr、Ni−Mn、Co−Cr、Co−Mn、50Ni50Co−V、50Ni50Co−Cr系なども使用できる。これらのうち、飽和磁気モーメントの大きいFeや、Niを含む系が好ましく、Fe−Ni系が特に好ましい。飽和磁気モーメントの大きい材料を用いた場合、少ない充填量で上記目的を達成し、本発明の規定する密度の微小粒子が得られやすい。他の金属材料としては、希土類のGdおよびその合金が挙げられる。
【0019】
金属間化合物としては、ZrFe2、HfFe2、FeBe2の他、REFe2、(RE=Sc、Y、Ce、Sn、Gd、Dy、Ho、Er、Tm)、GdCo2などが挙げられる。また、RECo5(RE=Y、La、Ce、Sm)、Sm2Co17、Gd217、さらに、Ni3Mn、FeCa、FeNi、Ni3Fe、CrPt3、MnPt3、FePd、FePd3、Fe3Pt、FePt、CoPt、CoPt3、Ni3Ptなどが挙げられる。
【0020】
一方、酸化物としてはスピネル構造、ガーネット構造、ペロブスカイト構造、マグネトプランバイト構造などの結晶構造を有する磁性酸化物が使用できる。
スピネル型の例として、MFe24(M=Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Zn、Li0.5Fe0.5)、FeMn24、FeCo24、NiCo24、γ−Fe23、などが挙げられる。γ−Fe23はマグヘマイトと呼ばれる酸化鉄である。これは顔料として知られているα−Fe23(べんがら)とは異なり、比較的低密度(約3.6g/cc)で飽和磁気モーメントの大きい材料として知られており、本発明に用いる充填剤として特に好ましい。これらはいずれも軟磁性材料として知られているが、特にM=(Mn,Zn)、(Ni,Zn)すなわちマンガンジンクフェライト、ニッケルジンクフェライト等は残留磁化が少なく、磁性微小粒子の磁場による回収・分散操作特性が良好となる。
【0021】
ガーネット構造の酸化物としては、希土類鉄ガーネットが使用できる。一般式 R3Fe512で表現したとき、R=Y、Sm、Zn、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luにおいてフェリ磁性を示すことが知られている。このうち、Y、Sm、Yb、Luなどが飽和磁化が大きい点で好ましい。中でも、Yは密度が低く(5.17g/cc)特に好ましい。
【0022】
マグネトプランバイト構造の酸化物としては、MF1219(M=Ba、Sr、Ca、Pb、Ag0.5La0.5、Ni0.5La0.5)、M2BaFe1627(M=Mn、Fe、Ni、Fe0.5Zn0.5、Mn0.5Zn0.5)、M2Ba3Fe2441(M=Co、Ni、Cu、Mg、Co0.75Fe0.25)、M2Ba2Fe1222( M=Mn、Co、Ni、Mg、Zn、Fe0.25Zn0.75)などが挙げられる。
ペロブスカイト構造の酸化物としてはRFeO3(R=希土類イオン)が挙げられる。
【0023】
他方、金属化合物としては、ホウ化物(Co3B、CoB、Fe3B、MnB、FeBなど)、Al化合物(Fe3Al、Cu2MnAlなど)、炭化物(Fe3C、Fe2C、Mn3ZnC、Co2Mn2Cなど)、珪化物(Fe3Si、Fe5Si3、Co2MnSiなど)、窒化物( Mn4N、Fe4N、Fe8N、Fe3NiN、F3PtN、Fe20.75、Mn40.75Co0.25、Mn40.50.5、Fe41-xxなど)の他、リン化物、ヒ素化合物、Sb化合物、Bi化合物、硫化物、Se化合物、Te化合物、ハロゲン化合物、希土類元素なども使用できる。
その他の磁性材料は、近角聰信著「強磁性体の物理」裳華房(S58.4第4版)に記載されている。
一方、超常磁性体としては強磁性材料を数nmから数十nmサイズの粒子として得られるものであればいかなるものも使用できる。特に、マグネタイト等のナノ粒子が好ましい。具体的には、5〜100nmのナノ粒子が好ましく、10〜50nmのナノ粒子がより好ましく使用される。
【0024】
本発明の微小粒子の用途としては、診断薬担体、細胞分離担体、細胞培養担体、核酸分離精製担体、蛋白分離精製担体、固定化酵素担体、固定化触媒担体、ドラッグデリバリー担体、マイクロ流路中での反応媒体、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料などが挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を示すが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例における表面に官能基を有する磁性微小粒子の評価は以下の方法によった。
<粒子径>
微小粒子サンプルの光学顕微鏡写真を撮影し、これに1mm方眼のグリッドを重ねて無作為に抽出した100〜150個の粒子について測定し、90%を含む粒子径の範囲を求めた。
<密度>
微小粒子サンプルを乾燥した後、ヘリウム置換ピクノメーターを用いて10回測定し最後の3回の測定値の平均値をもってサンプルの密度とした。
<樹脂および微小粒子表面の官能基の同定>
微小粒子サンプルを乾燥させた後、拡散反射赤外吸収スペクトルの測定により樹脂の同定を行った。また、表面官能基についても上記スペクトルからその有無を判定した。
<磁気応答性>
微小粒子0.1gのサンプルを10ccのポリ容器中5ccの水に分散し、永久磁石を用いて容器の外から磁場(約50kA/m)を印加したとき磁性樹脂粒子が数秒以内で容器の壁に引き寄せられ、かつ磁石を取り除いたときに粒子が凝集せずに元の状態に分散した場合を良好とした。
【0026】
(実施例1)
密度0.91のポリプロピレン850gにあらかじめ親油化処理をしたマンガンジンクフェライト粒子(粒子径:0.13μm)を、最終的に得られる微小粒子の総重量に対して5、10、15、20、25、30、又は50重量%となるように加え、さらにポリエチレングリコール1.5kg(P20000:P10000=1:1混合物、三洋化成株式会社製)を分散媒として用いて、2軸型の加圧混練機中で190℃に加熱しながら混合し、展開溶媒である水に投入した。この溶融分相法によりマンガンジンクフェライト含有ポリプロピレン微小粒子を得た。
ついで粒子表面に約10重量%のアクリル酸を表面グラフト重合させた。その後湿式篩いを用いて分級し、得られた微小粒子の粒子径、比重、樹脂の同定、官能基の有無、及び磁気応答性を評価した。なお、磁性粒子の含有量が20重量%の場合については種々製造条件を変えて粒子径の異なる微小粒子を作製し、同様な評価を行った。これらの結果を表1に示す。また、比較例としてグラフト重合を行わなかった微小粒子についても評価し同表に示した。
【0027】
【表1】

以上の実施例から、いずれの場合も本発明の目的を満たすものであるが、密度として1.03〜1.10g/ccの場合に良好な磁気応答性が見られることが分かる。
【0028】
(実施例2)
実施例1においてグラフト重合を行う代りにポリプロピレン原料中に重量で1%、5%、及び10%のステアリン酸を混合し、マンガンジンクフェライトを17重量%含む組成で同様に溶融分相法により磁性粒子含有微小粒子を作製した。評価の結果、粒子径はいずれも10〜50μmであり、密度は1.03〜1.06g/ccであった。また、微小粒子はポリプロピレンを主成分とし、粒子表面の官能基としてカルボキシル基を有していることが認められ、磁気応答特性も良好であった。
【0029】
(実施例3)
実施例1において後処理のグラフト重合を行う代りに、ポリプロピレンをエチレンアクリル酸共重合体(アクリル酸8%)(ニュクレル N1108、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)に代え、マンガンジンクフェライトを15重量%含む組成で同様に溶融分相法により磁性粒子含有微小粒子を作製した。評価の結果、粒子径は10〜50μmであり、密度は1.07g/ccであった。また、微小粒子はポリエチレンを主成分とし、粒子表面の官能基としてカルボキシル基を有することが認められ、磁気応答特性も良好であった。
【0030】
(実施例4)
実施例1においてマンガンジンクフェライトの代わりに、種々の磁性材料を各々17%添加して同様に磁性粒子含有微小粒子を作製した。評価の結果を表2に示した。
【0031】
【表2】

【0032】
(実施例5)
実施例2において、ステアリン酸の代わりにオクタデシルアミンを用いた他は同条件で微小粒子を作製した。評価の結果、粒子径は10〜50μmであり、密度は1.03〜1.06g/ccであった。また、微笑粒子はポリプロピレンを主成分とし、粒子表面の官能基としてアミノ基を有することが認められ、磁気応答特性も良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリオレフィン又はポリオレフィン共重合体および少なくとも1種の磁性材料を含み、
密度が0.9乃至1.5g/ccであり、
平均粒子径が0.5μm乃至1000μmの略球状粒子であって、
該粒子表面に官能基を有することを特徴とする
微小粒子。
【請求項2】
ポリオレフィンがポリプロピレン及び/又はポリエチレンであり、ポリオレフィン共重合体がプロピレンの共重合体及び/又はエチレンの共重合体である請求項1記載の微小粒子。
【請求項3】
官能基が、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、スルホン酸基、及びグリシジル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載の微小粒子。
【請求項4】
官能基が、
(1)粒子に表面グラフト重合されたグラフトポリマー中の官能基、
(2)粒子中に混練され粒子表面に存在する脂肪族炭化水素に結合した官能基、又は
(3)ポリオレフィン共重合体の主鎖に共重合された単量体中の官能基である請求項3記載の微小粒子。
【請求項5】
平均粒子径が1.0μm乃至100μmである請求項1乃至4いずれか1つに記載の微小粒子。
【請求項6】
密度が1.0乃至1.1g/ccである請求項1乃至5いずれか1つに記載の微小粒子。
【請求項7】
磁性材料が軟磁性材料である請求項1乃至6いずれか1つに記載の微小粒子。
【請求項8】
磁性材料が超常磁性体である請求項1乃至7いずれか1つに記載の微小粒子。
【請求項9】
軟磁性材料がマンガンジンクフェライト及び/又はニッケルジンクフェライトである請求項7記載の微小粒子。
【請求項10】
磁性材料の含有量が、微小粒子の総重量に対し10乃至25重量%である請求項1乃至9いずれか1つに記載の微小粒子。

【国際公開番号】WO2005/042622
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515130(P2005−515130)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015887
【国際出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(302050123)トライアル株式会社 (19)
【出願人】(591081697)プレシジョン・システム・サイエンス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】