説明

表面ミクロドメインを形成するポリマー材料

隆起ミクロドメインを含む表面を有するポリマー材料は、ポリオール、ポリイソシアネート、および、ポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンを含む組成物を反応させることによって調製されうる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
政府の権利に関する声明
米国政府は、本発明において支払い済みの認可を有し、限定的な状況において、米国国防省海軍研究所(Office of Naval Research)によって与えられた助成金番号N00014-03-1-0702およびN00014-04-1-0597によって提供された項目に関して、他者に認可を与えるように特許所有者に要求する権利を有する。
【0002】
背景
ポリ(ジメチルシロキサン)を含むブロックコポリマー(PDMS)は周知である。典型的に、これらは、もう一つのポリマーに共有結合したPDMSの長い鎖から作られる直線状のコポリマーである。例えば、多様なポリマーとのPDMSのジブロック、トリブロック、およびセグメント/マルチブロックコポリマーが調製されている。
【0003】
PDMSと他のポリマーとのブロックコポリマーは、典型的に、異なる二つのブロックが混合しない結果として相分離する。しかし、ブロック間の共有結合のために、相分離は制限され、ミクロまたはナノスケールの相分離が起こるにすぎない。多くのPDMSブロックコポリマー系において、PDMSは第二のブロックより有意に低い表面エネルギーを有し、このように、コポリマーの表面で多く存在する傾向がある。
【0004】
PDMSとポリウレタンとのブロックコポリマーも同様に公知である。多くの場合、これらはわずかに接着性の表面として機能する可能性がある。しかし、時間が経つにつれて、より親水性のポリウレタン成分が表面に移動して、それによって低い表面エネルギーが失われる可能性がある。このことは、コポリマーが水性環境に曝露される場合(例えば、海でのコーティングとして用いられる場合等)には特に問題である。
【0005】
したがって、改善されたポリマー材料、特に水に曝露された場合に安定な表面ミクロドメインを形成することができるポリマー材料を提供することが望ましいであろう。明確に定められた地形学を有する改善されたポリマー材料を提供することも、同様に望ましいであろう。
【発明の開示】
【0006】
概要
本明細書において、ポリオルガノシロキサンおよびポリウレタン成分を含み、水性環境において安定となりうる地形学的表面構造を形成する可能性がある架橋ポリマー材料が記述される。ポリマー材料には、隆起ミクロドメイン、例えばポリウレタンマトリクスによって取り囲まれたポリシロキサン成分から主に作られる隆起ミクロドメインが含まれてもよい。ミクロドメインは、規則的なミクロドメインであってもよい。
【0007】
一つの態様において、ポリマー材料は、ポリオール、ポリイソシアネート、およびポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンが含まれる組成物を反応させることによって調製してもよい。ポリマー材料は、隆起ミクロドメインが含まれる表面を有してもよい。ミクロドメインはまた、水に14日より長い間曝露された場合でも安定である可能性がある。ポリオルガノシロキサンには、ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン(例えば、ヒドロキシアルキル官能性ポリジメチルシロキサン)のようなヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンが含まれてもよい。ポリオールには、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、およびアクリルポリオールが含まれてもよい。一つの態様において、ポリオールには、少なくとも三つのヒドロキシ基を有するポリオールが含まれてもよい。ポリイソシアネートには、少なくとも三つのイソシアネート基を有するポリイソシアネートが含まれてもよい。
【0008】
もう一つの態様において、ポリマー材料は、ポリオール、ポリイソシアネート、およびポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンが含まれる組成物を反応させることによって調製してもよい。ポリオールは典型的に、少なくとも三つのヒドロキシ基を有し、および/またはポリイソシアネートは少なくとも三つのイソシアネート基を有する。少なくとも三官能性のポリオールおよび/またはイソシアネートを用いることによって、ポリマー材料は互いに架橋して、より安定な表面構造を形成することができる。
【0009】
もう一つの態様において、架橋ポリマー材料は、ポリマー材料の総固体含有量に基づいて、15重量%までのポリヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンを、ポリオールおよびポリイソシアネートと共に含む組成物を反応させることによって調製してもよい。
【0010】
もう一つの態様において、架橋ポリマー材料は、ポリオール、ポリイソシアネート、およびポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンを含む組成物を反応させて、周囲のポリマーマトリクスより疎水性である表面ミクロドメインが含まれるポリマー材料を形成することによって調製してもよい。表面ミクロドメインには、シロキサンポリマーが含まれてもよく、周辺のマトリクスにはポリウレタンが含まれてもよい。表面ドメインは、14日間水に曝露された場合に認識可能に変化しない疎水性を有してもよい。
【0011】
重合した場合に、コーティング組成物が既に記述されたポリマー材料を形成するように、金属、木材、ガラス等のような支持層をコーティングするために用いてもよいコーティング組成物を調製してもよい。一つの態様において、コーティング組成物には、コーティング組成物が重合した後にコーティング組成物における総固体に基づいて15重量%までのポリオール、ポリイソシアネート、ポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサン、および溶媒成分が含まれてもよい。溶媒成分には、アルキルアルコキシプロピオネート、ジアルキルケトン、および/またはアルキルアセテートが含まれてもよい。コーティング組成物にはまた、アルカン-2,4-ジオン、N,N-ジアルキルアセトアセタミド、アルキルアセトアセテートのようなポットライフ延長剤が含まれてもよい。有機スズ化合物または三級アミンのようなイソシアネート反応触媒を用いて、組成物における成分の反応を触媒してもよい。
【0012】
もう一つの態様において、コーティング組成物を調製および用いるための方法は、イソシアネート反応触媒を、ポリオール、ポリイソシアネート、およびポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンを含む組成物に加えて、コーティング組成物を形成する段階、およびコーティング組成物を支持層に適用する段階を含む。コーティング組成物は、支持層において重合して、隆起ミクロドメインを有するポリマー材料を形成する。
【0013】
本明細書において記述されるポリマー材料は、接着ラベルの離型紙、らくがき防止コーティング、および海洋船舶の耐汚損コーティングとして有用となる可能性がある、わずかに接着性の表面を作製するためのような、多くの異なる状況において用いられてもよい。
【0014】
詳細な説明
架橋ポリマー材料が本明細書において記述される。特定の態様において、ポリマー材料は、水性環境において安定である地形的表面構造を形成することができる可能性がある。そのような表面構造は、水性環境において安定である可能性があり、ポリマー材料は、船舶コーティング、医学機器または装置のコーティング等のような応用においてより有用であり、その特性はより安定である。
【0015】
一般的に、ポリマー材料は、ポリオール、ポリイソシアネート、およびポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンが含まれる組成物を反応させることによって調製してもよい。ポリマー材料を架橋させるために、ポリオール、ポリイソシアネート、またはポリオルガノシロキサンの少なくとも一つには、組成物中の他の成分と反応することができる少なくとも三つの官能基が含まれる。例えば、一つの態様において、ポリオールには、三つもしくはそれより多いヒドロキシ基が含まれてもよく、またはポリイソシアネートには三つもしくはそれより多いイソシアネート基が含まれてもよい。より多くの架橋が望ましいいくつかの態様において、組成物には、少なくとも三つのヒドロキシ基を有するポリオールおよび少なくとも三つのイソシアネート基を有するポリシアネートが含まれてもよい。
【0016】
一つの態様において、ポリマー材料は、ポリウレタンマトリクスによって取り囲まれたシロキサンポリマーの規則的な隆起ミクロドメインが含まれる表面を有する。シロキサンポリマーは、ポリウレタンより疎水性であることから、ポリシロキサンに富むミクロドメインは、周囲のポリウレタンに富むマトリクスより疎水性である。いくつかの態様において、水に14日より多く曝露した場合に、ミクロドメインがその大きさおよび形状を認識可能に変化させないように、表面形態学がその場で固定されてもよい。他の態様において、ミクロドメインは、水に曝露されても残っていてもよいが、多様な程度の変化または方向の変化を受ける可能性がある。
【0017】
ミクロドメインは、任意の多数の大きさであってもよい。ミクロドメインの平均直径は、約0.1ミクロン〜10ミクロン、望ましくは約0.5ミクロン〜5ミクロン、またはふさわしくは約1ミクロン〜3ミクロンの範囲であってもよい。ミクロドメインの平均高さは、約0.01ミクロン〜0.2ミクロン、望ましくは約0.025ミクロン〜0.15ミクロン、またはふさわしくは約0.03ミクロン〜0.1ミクロンの範囲であってもよい。一つの態様において、ミクロドメインは、規則的な間隔で空間的に離れてもよく、実質的に均一な大きさであってもよい。例えば、ミクロドメインは、約0.5ミクロン〜10ミクロン、または望ましくは約1ミクロン〜5ミクロンの平均的な間隔を有してもよい。
【0018】
ポリマー材料はまた、約0.1〜1.5ミクロドメイン/ミクロン2、または典型的に約0.2〜0.65ミクロドメイン/ミクロン2のミクロドメイン表面密度を有してもよい。ポリマー材料は、任意の適したミクロドメイン表面密度を有してもよいと認識されるべきである。
【0019】
ポリマー材料を調製するために用いられるポリオールは、多数の任意のポリオールであってもよい。適したポリオールには、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、およびアクリルポリオールが含まれてもよい。既に言及したように、ポリオールは、ポリマー材料の架橋を促進するために、少なくとも三つのヒドロキシ基を有してもよい。一つの態様において、ポリオールには、ポリカプロラクトントリオールのようなポリカプロラクトンポリオールが含まれてもよい。もう一つの態様において、ポリオールは約100〜300、または望ましくは150〜200の平均ヒドロキシル当量を有してもよい。ポリマー材料には、ポリマー材料の総固体含有量に基づいて、約10重量%〜40重量%、または望ましくは約20重量%〜30重量%のポリオールが含まれてもよい。
【0020】
任意の多数の適したポリイソシアネートを用いてポリマー材料を調製してもよい。既に言及したように、ポリイソシアネートは、ポリマー材料の架橋を促進するために、少なくとも三つのイソシアネート基を有してもよい。一つの態様において、ポリイソシアネートには、イソホロンに基づくポリイソシアネートが含まれてもよい。もう一つの態様において、ポリイソシアネートは、約150〜600、または望ましくは約250〜450のイソシアネート当量を有してもよい。ポリマー材料には、ポリマー材料の総固体含有量に基づいてポリイソシアネート約30重量%〜85重量%、または望ましくは約50重量%〜75重量%が含まれてもよい。
【0021】
ポリイソシアネートと反応することができる限り、任意の多数のポリオルガノシロキサンを用いてもよい。例えば、ポリオルガノシロキサンには、ヒドロキシまたはアミノ官能性PDMSのような、ヒドロキシまたはアミノ官能性ポリオルガノシロキサンが含まれてもよい。一つの態様において、ポリオルガノシロキサンには、ヒドロキシおよび/またはアミノプロピル官能性ポリオルガノシロキサンのような、ヒドロキシまたはアミノアルキル官能性ポリオルガノシロキサンが含まれてもよい。もう一つの態様において、ポリオルガノシロキサンは、約200〜800、または望ましくは350〜700の平均ヒドロキシル当量を有してもよい。一つの適したポリオルガノシロキサンは、α,ω-ビス[3-(2'-ヒドロキシエトキシ)プロピル]ポリジメチルシロキサンであってもよい。いくつかの態様において、ポリマー材料には、ポリマー材料の総固体含有量に基づいて約1重量%〜15重量%までのポリオルガノシロキサンが含まれてもよいが、他の態様において、ポリマー材料には、約15重量%未満または約14重量%以下のポリオルガノシロキサンが含まれてもよい。他の態様において、ポリマー材料には、約2重量%〜14重量%、約3重量%〜13重量%、またはふさわしくは5重量%〜12重量%が含まれてもよい。PDMSはまた、任意の適した分子量を有してもよい。一つの態様において、PDMSの分子量は、約10,000 g/モル以下、約7,500 g/モル以下、またはふさわしくは約5,000 g/モル以下であってもよい。他の態様において、PDMSは10,000 g/モルを超える分子量を有してもよい。
【0022】
重合時に本明細書に記述のポリマー材料が形成されるように、支持層に適用することができるコーティング組成物を調製してもよい。コーティング組成物には、ポリオール、ポリイソシアネート、ポリオルガノシロキサン、および溶媒成分が含まれてもよい。溶媒成分には、アルキルプロピオネート(例えば、好ましくは炭素原子5〜10個を有する低級アルキルプロピオネート)、アルコキシプロピオネート、アルキルアルコキシプロピオネート(例えば、好ましくは炭素原子5〜10個を有する低級アルキルアルコキシプロピオネート)、アルコキシアルキルプロピオネート(例えば、炭素原子5〜10個を有するアルコキシアルキルプロピオネート)、ジアルキルケトン(例えば、炭素原子5〜10個を有するジアルキルケトン)、アルキルアセテート(例えば、好ましくは炭素原子5〜10個を有する低級アルキルアセテート)、アルキルアルコキシアセテート(例えば、好ましくは炭素原子5〜10個を有する低級アルキルアルコキシアセテート)、アルコキシアルキルアセテート(例えば、炭素原子5〜10個を有するアルコキシアルキルアセテート)、トルエン、および/またはキシレンが含まれてもよい。一つの態様において、溶媒成分には、エチル3-エトキシプロピオネート(EEP)、メチルn-アミルケトン(MAK)、および/またはブチルアセテートが含まれてもよい。コーティング組成物にはまた、アルカン-2,4-ジオン(例えば、2,4-ペンタジオン)、N,N-ジアルキルアセトアミド、またはアルキルアセトアセテートのようなポットライフ延長剤が含まれてもよい。コーティング組成物における成分の量は、以下の実施例における量であってもよく、または実施例の章における任意の実施例の任意の特定の成分の量より15%以内上もしくは下の量であってもよい
【0023】
一つの態様において、溶媒成分には、BuAc、EEP、およびMAKが含まれてもよい。MAK:EEPの比は45:5〜5:45まで変化してもよい。一般的に、比がより多量のEEPを含むように変化すれば、形成されるドメインの平均直径は増大しうる。もう一つの態様において、溶媒成分は、約12 mm Hg以下、または望ましくは約11 mm Hg以下である形成蒸気圧を有してもよい。
【0024】
コーティング組成物にはまた、反応を開始させるために用いられるジアルキルスズジカルボキシレート、トリアルキルスズヒドロキシド、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズジアルコキシド、ジアルキルスズジハライドまたはその混合物のようなイソシアネート反応触媒が含まれてもよい。イソシアネート反応触媒の適した例には、ジエチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジラウリルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート、またはその混合物が含まれる。一つの態様において、イソシアネート反応触媒にはスズ触媒が含まれる。
【0025】
一般的に、コーティング組成物は、ポリイソシアネートおよびイソシアネート反応触媒を除く全ての成分を混合することによって調製してもよい。ポリイソシアネートおよびイソシアネート反応触媒を加えて、組成物をしばらく反応させた後、これを支持層に適用する。コーティングを支持層に適用するまでの期間は、イソシアネート反応触媒の含有レベルおよび/またはポリオルガノシロキサン、ポリオール、および/またはポリイソシアネートの含有レベルに依存する。コーティング組成物を支持層に適用した後、これを室温で重合させた後80℃で強制乾燥させる。
【0026】
実施例
以下の実施例は、説明のために提供され、特許請求の範囲を制限すると解釈されない。特に明記していなければ百分率は全て重量である。表1に示す材料を実施例において用い、これは以下に示す供給元から供給された。
【0027】
【表1】

1 ヒドロキシ末端、α,ω-ビス[3-(2'-ヒドロキシエトキシ)プロピル]ポリジメチルシロキサン
2 3-アミノプロピル末端PDMS
3 イソホロンジイソシアネートに基づくポリイソシアヌレートタイマー(timer)
4 ヘキサンジイソシアネートに基づく。
【0028】
PDMS Bを以下のように合成した。250 ml三頚丸底フラスコにおいて、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン2.04 gおよびオクタメチルシクロテトラシロキサン10 gを混合した。溶液を窒素下で撹拌しながら加熱した。温度が80℃に達するまでに、0.1%触媒(テトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレート)を溶液に入れた。1時間加熱した後、粘度はわずかに増加して、残りのオクタメチルシクロテトラシロキサン(90 g)を滴下漏斗に入れて、溶液に滴下した。オクタメチルシクロテトラシロキサンの滴下は7〜10時間かけて行った。全てのオクタメチルシクロテトラシロキサンの添加を終了した後、加熱をさらに2〜3時間継続した。次に、温度を80℃から150℃に増加させて、その温度で触媒を分解した。分解後、溶液を室温まで冷却した。
【0029】
PDMS Cは、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン1.02 g+最初に加えたオクタメチルシクロテトラシロキサン5 gを用いて、オクタメチルシクロテトラシロキサン95 gを滴下漏斗を用いて添加して、PDMS Bに関する前記の技法に従って合成した。
【0030】
原子間力顕微鏡(AFM)試験を、Nanoscope IIIaコントローラー(Digital Instruments, Inc. California)を備えたDimension 3100顕微鏡によって行った。実験は周囲条件でタッピングモードによって、または水中でコンタクトモードで行った。ばね定数0.1〜0.4 N/mのシリコンプローブおよび共振周波数17〜24 kHzを用いた。TMAFMデータを取得するためのセットポイント比は0.9であった。
【0031】
バーコビッチ(Berkovich)型ダイヤモンド圧子硬度計プローブを備えたDimension 3100顕微鏡を用いてナノインデンテーション測定を行った。プローブのばね定数は177.3 N/mであった。標準的なサファイヤ基板からの力偏向曲線を偏向電圧の較正のために用いたところ、平均で220.8 nm/Vであることが判明した。力の閾値20μNを用いて、コーティングの表面に対するインデンテーションのアレイを得た。
【0032】
SEM(走査型電子顕微鏡)実験に関して、試料をアルミニウム封入剤に封入して、Technics Hummer IIスパッターコーティング装置によって金をコーティングした。JEOL JSM-6300走査型電子顕微鏡を用いて画像を得た。VANTAGE Digital Acquisition Engineを用いてThermoNoran EDS検出器によってX-線情報を得た。
【0033】
TEM(透過型電子顕微鏡)実験に関して、試料をエポン-アラルダイト-DDSAに抱埋して、ミクロトームを用いて厚さ60 nmの断面を作製した。断面の画像をJEOL JEM-100CX II電子顕微鏡を用いて得た。
【0034】
実施例1
表2における試料1〜9に示すポリマー材料製剤を、以下の技法に従って調製した。EEP中の30重量%PDMS A、EEP中の30重量%PDMS B、EEP中の30重量%PDMS C、MAK中の90重量%PCLトリオール、EEP中の90重量%PCLトリオール、MAK中の1重量%DBTDAの保存液を調製した。各試料に関して、0.075重量%DBTDAおよび10重量%2,4-ペンタンジオンを樹脂固体に基づいてに加えた。試料1〜4および9に関して、NCO:OH当量比を1.1:1.0の一定に維持した。PDMS、PCLトリオール(実施例2に関しては90%EEP溶液、試料の残りに関しては90%MAK溶液)、および2,4-ペンタンジオンを量り取って20 mlバイアルにおいて磁気攪拌子によって十分に混合することによって試料1〜9を調製した。十分に混合した後、DBTDAおよびポリイソシアネートを加えて、表2において示される明記された時間混合した。コーティングをアルミニウムパネルの上に塗装して、周囲条件で24時間維持した後、80℃の乾燥器での45分間の重合を行った。コーティング被膜の厚さは50〜70 μmであった。
【0035】
【表2】

*触媒の重量%はポリマー材料の総固体重量に関して与えられる。
【0036】
試料1〜9において調製されたコーティングは、触媒(DBTDA)と既に記述されたポットライフ延長剤(2,4-ペンタンジオン)の溶媒混合物中の反応性オリゴマー(例えば、PDMS、PCLトリオール、ポリイソシアネートを表2において示される量で)の溶液として鋳造された。PDMSはポリウレタンよりかなり低い表面エネルギーを有することから、PDMSは、被膜形成および架橋の際にコーティング表面に対して層をなすと予想され、それによって丈夫なポリウレタン下層を有する滑らかで低い表面エネルギーのPDMS外層を有するポリウレタンコーティングが得られた。20および30%シロキサン-ウレタンコーティング組成物(試料3および4)のタッピングモードAFM試験は、PDMSによって完全に覆われた滑らかな表面を示した。試料3に関するSEMおよびAFM画像を図4および5にそれぞれ示す。PDMSを含まないポリウレタン対照(実施例9)も同様に特徴的構造のない表面を有した。同様に、試料5〜8は滑らかな表面を有した。試料1および2のみが隆起ミクロドメインを示した。
【0037】
10%PDMS Aを含む試料1は、図1に示される不連続のドメインを有する微小構造表面を生じた。ドメインは、平均直径約1.4μmおよび高さ約50 nmを有した。試料1からのポリマー製剤の表面の平面図を図2に示す。試料1のSEM画像を図3に示す。より大きいドメインのあいだに多数のより小さいドメインも同様に存在した。大きいドメインの大きさの分布はかなり均一である。ドメインは主にPDMSで構成されると仮定される可能性があるが、ドメインの大きさは、それらが1000 g/mol PDMS Aブロックのみで構成される場合の予想よりかなり大きい。このように、これらのドメインには、PDMS Aと共にいくつかのポリウレタン成分の混合物が含まれる可能性がある。
【0038】
試料1からの微小構造シロキサン-ウレタン表面、および同様に対照ポリウレタン表面において、同じ力閾値20μNを適用した場合のナノインデンテーション測定を行った。ミクロドメインの最大負荷(hmax)時のインデンテーションの深さは周辺領域(83.6±1.8 nm)よりかなり高かった(179.5±3.7 nm)。純粋なポリウレタン表面に対して得られたhmax値は、78.3±10.4 nmであり、微小構造表面のマトリクスに関して得られた値に近似した。このように、インデンデーションの深さがより高いことは、ミクロドメイン係数が周辺材料の係数より有意に低く、このようにミクロドメインが主にPDMS Aで構成されるが、周辺材料はPDMS Aをほとんどまたは全く含まないポリウレタンからなることを示している。
【0039】
試料1の表面のSEM画像も同様に、図6(a)に示されるように、ポリマー表面の微小構造性質を確認した。シリコンのエネルギー分散型X-線マッピングにより、図6(b)において示されるように、表面で形成された微小構造ドメインがシリコンに富むことが示された。対照的に、特徴的構造のないシロキサン-ウレタンコーティング(試料3)に対するSEM画像およびSiマッピングから、シリコンが表面に均一に分布することが判明した。
【0040】
表面ドメインが、コーティング表面上で未反応PDMSからなるのではないことを確認するために、試料1からのコーティングを、未結合のPDMSオリゴマーを溶解するであろうトルエンによって処置した。AFM試験により、ドメインは膨張したものの、それらは除去されず、このようにネットワークに共有結合していることが示された。
【0041】
水中での試料1の微小構造表面の安定性を試験するために、水に2週間浸した後にタッピングモードAFM画像を作製した。比較目的のために、図2からのAFM画像を図7(a)として再現し、水に2週間浸した後の試料1からのコーティングのAFM画像を図7(b)に示す。PDMSドメインは、大きさおよび大きさの分布が変化したものの、消失しなかった。ドメインの平均直径は、水に浸す前後で1.4μmであり、図7(b)におけるより大きいドメインの平均直径は3.82 μmであった。いくつかのドメインが大きさを成長させることができるという事実は、このコーティング表面におけるポリマーにある程度の運動性が存在することを示している。水はポリウレタンマトリクスを可塑化して、PDMSに富むポリマーをドメイン間に拡散させることができる。
【0042】
ミクロドメインを形成した他の試料は試料2であり、これも同様に10重量%PDMS Aを含んだ。図8(a)および(c)はそれぞれ、水に浸す前に空気中のタッピングモードで得られた、および水に浸す前の水中でのコンタクトモードで得られた試料2のコーティング表面のAFM画像を示す。図8(b)および(d)はそれぞれ、水に浸した後の空気中のタッピングモードで得られた、および水に浸した後の水中でのコンタクトモードで得られた、水に2週間浸した後のコーティングのAFM画像を示す。試料2のコーティングの微小構造表面ドメインは、コーティングを水に浸した場合に平均直径に0.17μmの変化を示した。
【0043】
実施例2
本実施例において、多くの試料を調製して、ポリマー材料におけるミクロドメインの形成に及ぼす溶媒の効果を決定した。全ての試料における樹脂の製剤は、10重量%PDMS A、26.67重量%PCLトリオール、および63.33重量%ポリイソシアネートDであった。D-オプティマルスペシャルキュービックミクスチャー(D-optimal special cubic mixture)デザインに基づく統計学的実験デザインアプローチを用いて、溶媒試験を行った。本試験において調べた溶媒はMAK、トルエン、EEP、BuAc、およびIPAであった。BuAcにおいて供給されたポリイソシアネートDは、架橋剤として用いられることから、溶媒組成物は全て最少量のBuAcを有した。したがって、実験のデザインによって、BuAcの量は45%〜100%に変化して、溶媒のバランスは0%〜55%に変化した。デザインの概要を以下の表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
試料は以下のように調製した。用いた溶媒組成物35個を以下の表4に示す。30重量%PDMS A、90重量%PCL、1重量%DBTDAの保存液を、調べた溶媒5個(MAK、トルエン、EEP、BuAc、およびIPA)において個別に調製した。それぞれの試料に関して、0.075重量%DBTDAおよび10重量%2,4-ペンタンジオンを樹脂固体に基づいて加えた。PDMS A、PCLトリオール、2,4-ペンタンジオン、およびDBTDAのそれぞれの保存溶液を量りとって20 mlバイアルにおいて磁気攪拌子によって混合することによって、試料を調製した。十分に混合した後、ポリイソシアネートDを加えて、4時間十分に混合した。アルミニウムパネルにコーティングを塗装して周囲条件で24時間維持した後、80℃の乾燥器において45分間重合させた。コーティング被膜の厚さは50〜70μmであった。実験は無作為な順序で行った。
【0046】
【表4】

【0047】
コーティングの適用および重合後、35個全てのコーティングのAFM画像(40μm×40μm)を、空気中でのタッピングモードで撮影した。ミクロドメインの形成およびその表面密度は、その溶媒組成によって誘導された。AFM画像35個全てを図9に示す。用いた溶媒組成物に応じて広範囲の挙動が観察される。ドメインはいくつかのコーティングでは存在せず、存在しても一連の大きさのドメインが明白である。挙動の定量的モデルを開発するために、数値反応を作製した。ドメインの形成を反応の一つとして見なした。表面での「ドメインなし」を「0」に割付して、ドメインが存在すればその大きさにかかわらず「1」を割付した。ドメインを有する表面に関して、ドメイン数/μm2を画像分析ソフトウェアによって計算して、数値を反応において考慮した。反応を統計モデルに適合させた。等式1および2はそれぞれ、ドメイン形成およびドメイン密度の適合度モデルの等式である。
ドメイン=0.97 A+0.99 B+1.17 C+1.01 D+0.34 E−3.17 BD (1)
Sqrt(ドメイン密度+0.01)=0.47 A+0.66 B+0.35 C+0.76 D+0.18 E−1.85 BD−1.26 DE (2)
【0048】
これらの両モデルによって、溶媒間の交互作用項が存在することが判明した。ドメイン形成に関する交互作用項BD、およびドメイン密度に関して交互作用項BDおよびDEは、有意な要因であった。これらの交互作用項は全て負の係数を有したことから、それらはドメイン形成にとって不都合であろう。このことは、任意の溶媒組成物におけるより速く蒸発する溶媒(BuAc、トルエン、およびIPA)の組み合わせが構造表面の形成に不都合であろうことを意味している。溶媒組成物は全て何らかの量のBuAcを有することから、溶媒組成物におけるトルエンまたはIPAの存在は一般的に、BuAcとの相互作用により、構造表面の形成に不都合であろう。
【0049】
ドメイン形成に及ぼす溶媒組成物の効果に関するさらなる洞察は、標的条件を指定して、溶液の組を作製することによって得ることができる。二組の溶液を得た。第一の組は、表5に示すように、ゼロに等しい(すなわち、ドメインなし)ドメイン形成を条件として指定することによって得て、第二の組は表6に示すように、1に等しいドメイン形成(ドメイン形成)を条件として指定することによって得た。表5において提案された溶媒組成は、MAKおよびEEPが存在しないか最少量であって、IPAのみが多量に存在する、またはトルエンとBuAcの双方が多量に存在することは、微小構造ドメインを有する表面の形成にとって不都合であることが判明した。表6から、提案された溶媒組成は、IPAが存在しないまたは最少量であって、MAKおよびEEPが存在すると、微小構造表面ドメインの形成にとって好都合であろうことが判明した。これらの二組の溶媒組成物は、蒸気圧および溶解度パラメータに関して分離することができる。「ドメインなし」の場合、溶媒組成物の形成蒸気圧は13.95 mm Hg〜24.89 mm Hgの範囲であって、溶解度パラメータは8.61(cal/cm3)0.5〜9.84(cal/cm3)0.5の範囲であった。ドメイン形成に関して、溶媒組成物の蒸気圧は、5.27 mm Hg〜10.54 mm Hgであり、溶解度パラメータは、8.56(cal/cm3)0.5〜8.62(cal/cm3)0.5の範囲であった。
【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
実施例3
本実施例において、モデルにおける負の交互作用項(トルエン-ブチルアセテートおよびブチルアセテート-IPA)および表6から提案される溶媒組成を検討した後、トルエンおよびIPAを含まない異なる8個の溶媒組成物を、さらなる評価のために選択した。溶媒組成以外の、製剤および製剤を調製するための方法は、実施例2において調製された製剤(例えば、同じ量のPDMS A、PCLトリオール、およびポリイソシアネートD)と類似であった。選択された溶媒組成物を表7に示す。BuAcの量を最少レベルの45%に維持して、MAK:EEP比を45:10〜10:45まで系統的に変化させた。コーティングは自動製剤適用ユニットを用いて調製し、コーティング8個のそれぞれを3回調製して、試料24個のライブラリ1個を作製した。塗装は、下塗りしたアルミニウムパネルおよび裸のアルミニウムパネルに対して行った。もう一つの組のコーティングは、裸のアルミニウムパネルに対して研究室で調製した。タッピングモードによるAFM画像により、これらの溶媒組成物8個が予想どおり、常に微小構造表面を生成することが判明した。したがって、微小構造表面の形成は、最少量のBuAcを用いることと共にモデル反応によって示されるように、溶媒組成物からトルエンおよびIPAを消失させることによって好都合となった。
【0053】
【表7】

【0054】
ドメインの大きさに及ぼす溶媒組成の効果を理解するために、ドメインの平均直径を、図10に示されるようにMAK:EEP比に対してプロットした。自動ユニットを用いて調製されたコーティングに関して、ドメインの平均直径は、下塗りしたアルミニウムパネルに適用した場合に0.41μm〜1.35μmまで変化し、裸のアルミニウムパネルに適用した場合には0.53μm〜0.97μmまで変化した。実験室で調製したコーティングの場合、MAK:EEP比を45:10〜10:45まで変化させると、平均直径は1.2μm〜1.9μmまで増加した。これらは比較的厚い被膜であることから、支持層は表面ドメインの形成に有意な影響を及ぼさないと期待され、このことは、自動装置を用いて二つの支持層において調製したコーティングに反映される。
【0055】
このシリーズの製剤においてMAKをEEPに置換すると、二つの事柄が起こった。溶媒組成物の全体的な溶解度パラメータは、水素結合相互作用パラメータからの関与により増加する。さらに全体的な蒸発速度は遅くなる。このことは、溶媒とポリウレタンのとあいだの都合のよい水素結合相互作用がより長い間起こることを意味している。より多量のEEPは、適用後の相分離プロセスを遅らせる可能性があり、それによってドメインの大きさを成長させる。被膜全体のドメインの配列を理解するために、製剤Si-PU 8の断面のTEM画像を図11に示す。TEM分析から、これらのドメインが主にPDMSで構成されていることから予想されるように、ドメインが主に空気との界面で濃縮されて、周辺のマトリクスより暗くなることが判明した。類似の大きさのドメインはまた、試料のバルクにおいても観察された。
【0056】
実施例4
実施例2および3において試験した試料において、成分の混合とコーティングの支持層への適用までの時間は4時間で一定であった。本実施例において、ドメイン形成に及ぼす混合時間の効果を理解するために、同じ樹脂組成(すなわち、実施例2と同じ量のPDMS A、PCLトリオール、およびポリイソシアネートD)、同じ溶媒組成(MAK:EEP:BuAc=12:43:45)、およびポットライフ延長剤(2,4-ペンタンジオン、樹脂固体に関して10%)を有するが、異なる二つのレベルのDBTDA触媒(0.075%、シリーズAおよび0.15%、シリーズB)を有する二つの製剤を用いた。コーティング調製の際に、イソシアネート以外の試薬は全て十分に混合した。イソシアネートを添加して十分に混合した後、シリーズAおよびシリーズBに関してそれぞれ、30分から8時間までまたは4時間まで30分間隔で塗装を行った。
【0057】
重合した被膜のAFM画像を、そのシリーズのコーティングのタッピングモードで作製した。シリーズA(0.075%DBTDA)およびシリーズB(0.15%DBTDA)の画像を図12に示す。シリーズAを三つの段階に細分することができる:1)混合の最初の2時間以内ではドメインは形成されなかった(a1〜a4)2)ドメインは2.5時間混合した後初めて観察され(a5)、3時間混合後では均一となった(a6)。4.5時間まで混合するとドメインの大きさは均一となった(a7〜a9)。3)5時間混合後ではドメインの大きさは減少し始め(a10)、7時間混合後に調製したコーティングでは、ドメインは完全に消失して、なめらかで均一な表面を生成した(a14)。このことは、微小構造表面ドメインの形成が混合時間の関数であり、速度論によって制御されうることを示している。
【0058】
イソシアネートとヒドロキシル基との反応速度は、触媒レベルの増加と共に増加することから、ドメインの形成は、2倍量の触媒を有する製剤ではより早期に出現すると期待された。シリーズBの2倍量の触媒を有するコーティングでは、均一な大きさのドメインが、1.5時間混合後に起こり(b3)、これはシリーズAにおいて必要な時間の半分に正確に等しかった。同様に、ドメインは、シリーズAにおける5時間混合(a10)と比較して、2.5時間混合後(b5)に大きさが減少し始め、シリーズAにおける7時間(a14)と比較して3.5時間混合(b7)後では完全に消失した。0.075%および0.15%DBTDA触媒によるドメインの大きさ対時間のプロットを、図13に示す。2.5時間でのシリーズA試料では広範な大きさの分布が存在することから、観察されたそれぞれの主要なドメインの大きさに関して一つずつの三つのデータポイントをプロットした。
【0059】
結果から、シリーズAおよびBの製剤は、コーティングの表面上にドメインを形成するために最小の混合時間に供しなければならないことが認められうる。結果はさらに、表面ドメインを形成するためには、コーティングおよび被膜形成までのあいだにオリゴマー種のあいだで何らかの反応が起こっていることを示している。シリーズAコーティングに関して、ドメインの大きさが比較的一定である3.5時間から5.5時間までの興味深い「ウィンドウ」も同様に存在する。最終的に、ドメインの大きさが減少して最後には表面ドメインが消失し、このことは、さらなる反応の結果、表面の相分離が起こらないより均一な系が得られることを示している。2倍量の触媒を用いた場合により短時間で類似の段階のドメイン形成が起こること、ドメインの形成および大きさがいずれも速度論的に制御されうることを示している。
【0060】
表面のSEM撮像を用いて、微小構造ポリマー表面の生成をさらに確認した。混合の0.5、3.5、および7.5時間後(図12のシリーズAのa1、a7、a15)での表面のSEM画像から、0.5および7.5時間では微小構造ドメインが存在しないが、3.5時間ではドメインが存在することが示された(図14a〜c)。対応するシリコンのエネルギー分散型X-線マッピングにより、図14eに示されるように、ドメインがシリコンに富むことが示されたが、混合時間が0.5時間の場合、シリコンのエネルギー分散型X-線マッピングにより、散在性のシリコンに富む領域が存在することが判明した(図14d)。混合時間が7.5時間の場合には、シリコンは表面上に均一に分布した(図14f)。X-線マッピングによるこのSEM試験から、架橋反応の初期段階において、PDMSはいくつかの不連続な領域に分離して、反応が進行すると、シリコンに富むミクロドメインが表面に生成され、最後にはシリコンが均一に分布する特徴的構造のない表面を形成することが判明した。
【0061】
コーティングの形態学に及ぼす反応速度論の効果をさらに理解するために、PDMSを含まない対照ポリウレタンと共に、選択されたシロキサン-ウレタン試料について動的力学的分析(DMA)を行った。動的力学的試験はTA Instruments Q-800 DMAアナライザーによって行った。試料を張力下で-140℃から200℃まで加熱速度2℃/分で歪み0.3%で試験した。典型的に、シロキサン-ウレタン系は、良好な相分離PDMSセグメントにより、-128℃〜-90℃付近で遷移を示すと予想される。低い分子量のPDMS(1000 g/モル)を用いたが、混合の初期段階において(0.5時間)、PDMSに関連した遷移は、図15における損失弾性率対温度曲線において示されるように、約-90℃で観察された。反応が進行すると(4.5時間)、中間相は5℃付近に集まって現れるが、-90℃で残っている遷移をなおも示唆する。理論に拘束されたくはないが、この中間相は、PDMSおよびポリウレタンの双方からなり、それによって観察された相分離表面構造が得られるように思われる。しかし、混合の後期段階では、低い温度および中間相は消失して、上部遷移帯が広がり、このことはこの系が均一になったことを示している。このように、後期段階では、ドメイン形成は観察されない。
【0062】
実施例5
本実施例において、表面ドメインの形成に及ぼすPDMSの重量%の効果は、固体樹脂に基づいて5重量%、8重量%、12重量%、および15重量%PDMSを製剤に導入することによって決定した。表8における試料10〜17において示されるポリマー材料製剤は、実施例1において記述された技法に従って調製した。溶媒組成および混合時間の効果は、それぞれの重量%PDMSに関して二つの異なる溶媒組成を用いる段階、ならびに混合の3、4、および5時間後にコーティングに適用することによって評価した。
【0063】
【表8】

*触媒の重量%は、ポリマー材料の総固体重量に関して与えられる。
【0064】
試料10〜17の結果を表8に示す。より多量のBuAcおよびより少量のEEPを有する製剤は、より多量のEEPおよびより少量のBuAcを有する製剤より小さいドメインを形成した。12重量%製剤に関して、より急速に蒸発する溶媒組成を用いた試料14は、混合4時間後にドメインを形成し始めたが、より遅く蒸発する溶媒成分を用いた試料15は、混合5時間後にドメインを形成し始めた。塗装前に18時間混合した後でも、15重量%PDMS製剤ではドメインは形成されなかったことに注意しなければならない。
【0065】
実施例6
本実施例において、ドメインの形成に及ぼす重合条件の効果を決定した。本実施例において調製した試料の全てにおける樹脂の形成は、10重量%PDMS A、26.67重量%PCLトリオール、および63.33重量%ポリイソシアネートDであった。重合条件の異なる三つの組を試験した。重合条件の三つの組は:(1)成分を4時間混合して、Alパネルに混合物を適用して、混合物を直ちに80℃に設定した乾燥器に45分間入れる、(2)成分を4時間混合して、Alパネルに混合物を適用して、室温で1時間放置して、パネルを80℃に設定した乾燥器に45分間入れる、および(3)成分を4時間混合して、Alパネルに混合物を適用し、室温で終夜放置した後、80℃に設定した乾燥器に45分間入れることである。最初の組の重合条件で重合したポリマー材料は、平均直径約0.927 ミクロンを有するミクロドメインを形成した。第二の組および第三の組の重合条件で重合したポリマー材料は、平均直径約1.35〜1.5ミクロンを有するミクロドメインを形成した。
【0066】
本明細書(すなわち、特許請求の範囲および明細書)において用いられるように、「その」、「一つの」、および「一つの(an)」のような冠詞は、単数形または複数形を意味しうる。同様に、本明細書において用いられるように、先に「いずれか」という用語(または、「または」が排他的であることを明白に意味することを示している他の類似の言語、例えばxまたはyの一つのみ等)がなくて用いられる場合の「または」という用語は、包括的に解釈すべきであり、すなわち単独で現れる場合は「および」および「または」の双方を意味すると解釈すべきである。同様に、本明細書において用いられるように、「および/または」という用語もまた、この用語が「および」と「または」の双方を意味するという点において包括的であると解釈すべきである。「および/または」または「または」が三つまたはそれより多い項目の群に関して共に用いられる状況において、その群には、一つの項目単独、全ての項目を共に、または項目の任意の組み合わせもしくは数が含まれると解釈すべきである。その上、有する、有している、含まれる、および含まれているのような、本明細書および特許請求の範囲において用いられる用語は、含む(comprise)および含んでいるという用語と同義語であると解釈すべきである。
【0067】
説明となる態様
以下において、本明細書に記述の対象物質の説明となる多数の態様を参照する。以下の態様は、現在記述されている対象物質の様々な特徴、特徴、および長所が含まれてもよいいくつかの選択された態様のみを説明する。したがって、以下の態様は可能性がある態様の全てに包括的であると見なされるべきである。
【0068】
一つの態様に従って、ポリオール、ポリイソシアネート、およびポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンを含む組成物を反応させることによって、隆起ミクロドメインが含まれる表面を有する架橋ポリマー材料が調製される。ミクロドメインは、14日より長い期間水に曝露しても認識可能に変化しない可能性がある。ポリオルガノシロキサンは、ヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。ポリオルガノシロキサンは、ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンを含んでもよい。ポリオールは、少なくとも三つのヒドロキシ基を有してもよい。ポリオールは、ポリカプロラクトンポリオールを含んでもよい。ポリカプロラクトンポリオールは少なくとも三つのヒドロキシ基を有してもよい。ポリイソシアネートは、少なくとも三つのイソシアネート基を有してもよい。ポリイソシアネートは、イソホロンに基づくポリイソシアネートを含んでもよい。
【0069】
もう一つの態様に従って、ポリオール、ポリイソシアネート、およびポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンを含む組成物を反応させることによって、ポリマー材料が調製され、ポリカプロラクトンポリオールには少なくとも三つのヒドロキシ基を有するポリオールが含まれ、および/またはポリイソシアネートには、少なくとも三つのイソシアネート基を有するイソシアネートが含まれる。ポリマー材料は、ミクロドメインが含まれる表面を有してもよい。ミクロドメインは、水に14日間曝露しても寸法が認識可能に変化しない可能性がある。ミクロドメインは、約0.5ミクロン〜5ミクロンの平均直径を有してもよい。ミクロドメインは、約0.01ミクロン〜0.2ミクロンの平均高さを有してもよい。ミクロドメインは、約0.5ミクロン〜10ミクロンの平均間隔を有してもよい。組成物は、少なくとも三つのヒドロキシ基を有するポリカプロラクトンポリオール、および少なくとも三つのイソシアネート基を有するポリイソシアネートとを含んでもよい。ポリオルガノシロキサンは、ヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。ポリオルガノシロキサンは、約200〜800、望ましくは約350〜700の平均ヒドロキシル当量を有してもよい。ポリオルガノシロキサンは、α,ω-ビス[3-(2'-ヒドロキシエトキシ)プロピル]ポリジメチルシロキサンを含んでもよい。ポリオルガノシロキサンは、ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンを含んでもよい。ポリオルガノシロキサンは、ヒドロキシアルキル官能性ポリジメチルシロキサンを含んでもよい。ポリオルガノシロキサンは、アミノ官能性ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。ポリオルガノシロキサンはアミノアルキル官能性ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。ポリマー材料は、約10重量%〜40重量%ポリカプロラクトンポリオールを含んでもよい。ポリマー材料は、約30重量%〜85重量%ポリイソシアネートを含んでもよい。ポリイソシアネートは、約150〜600、望ましくは約250〜450の平均イソシアネート当量を有してもよい。ポリマー材料は、少なくとも三つのヒドロキシ基を有するポリオールが含まれる約20〜30重量%ポリカプロラクトンポリオール;少なくとも三つのイソシアネート基を有するイソシアネートが含まれる約50〜75重量%ポリイソシアネート;および約3〜13重量%ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンを含んでもよい。ポリカプロラクトンポリオールは、約150〜200の平均ヒドロキシル当量を有するポリカプロラクトントリオールを含んでもよい;ポリイソシアネートは、約250〜450の平均イソシアネート当量を有するイソホロンジイソシアネートに基づくポリイソシアネートを含んでもよく、およびヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンは、約350〜700の平均ヒドロキシル当量を有するα,ω-ビス[3-(2'-ヒドロキシエトキシ)プロピル]ポリジメチルシロキサンを含んでもよい。ポリマー材料は、約10〜40重量%ポリカプロラクトンポリオール、約30〜85重量%ポリイソシアネート、および約2〜14重量%ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。
【0070】
もう一つの態様に従って、架橋ポリマー材料は、以下を含む前駆体を反応させることによって調製される:ポリマー材料の総固体含有量に基づいて15重量%未満のポリヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサン;ポリオール、およびポリイソシアネート。
【0071】
もう一つの態様に従って、架橋ポリマー材料は、ポリオール;ポリイソシアネート;およびポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンを含む組成物を反応させることによって調製され、ポリマー材料には、周辺マトリクスより疎水性である表面ミクロドメインが含まれる。ミクロドメインは、水に14日間曝露した場合に認識可能に変化しない疎水性を有してもよい。ミクロドメインは、水に14日間曝露した場合に認識可能に変化しない形態を有してもよい。
【0072】
もう一つの態様に従って、コーティング組成物は、コーティング組成物が重合した後にコーティング組成物における総固体に基づいて15重量%未満のヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサン;ポリカプロラクトンポリオール;ポリイソシアネート;および溶媒成分を含む。溶媒成分には、アルキルアルコキシプロピオネート、ジアルキルケトンおよび/またはアルキルアセテートが含まれてもよい。溶媒成分には、低級アルキルアルコキシプロピオネート;炭素原子4〜10個を有するジアルキルケトン;および/または低級アルキルアセテートが含まれてもよい。溶媒成分には、エチル3-エトキシプロピオネート、メチルn-アミルケトン、およびブチルアセテートの少なくとも一つが含まれてもよい。コーティング組成物は、ポットライフ延長剤を含んでもよい。ポットライフ延長剤には、アルカン-2,4-ジオン、N,N-ジアルキルアセトアセタミド、またはアルキルアセトアセテートの少なくとも一つが含まれてもよい。ポットライフ延長剤は、2,4-ペンタンジオンを含んでもよい。コーティング組成物は、イソシアネート反応触媒を含んでもよい。イソシアネート反応触媒は、ジアルキルスズジカルボキシレート、トリアルキルスズヒドロキシド、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズジアルコキシド、ジアルキルスズジハライド、またはその混合物を含んでもよい。イソシアネート反応触媒は、ジエチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジラウリルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート、またはその混合物を含んでもよい。イソシアネート反応触媒はスズ触媒を含んでもよい。
【0073】
もう一つの態様に従って、支持層は、本明細書に記述される任意の態様からのポリマー材料によってコーティングされた表面を含んでもよい。
【0074】
もう一つの態様に従って、コーティング組成物を調製および使用する方法は、以下を含む:ポリオール、ポリイソシアネート、およびポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンを含む組成物にイソシアネート反応触媒を加えて、コーティング組成物を形成する段階;支持層表面にコーティング組成物を適用する段階。コーティング組成物は、重合して、支持層表面上に隆起ミクロドメインを有するポリマーコーティングを形成してもよい。溶媒成分は、約12 mm Hg以下の蒸気圧を有してもよい。溶媒成分は約11 mm Hg以下の蒸気圧を有してもよい。溶媒成分は、約3 mm Hg〜12 mm Hgの蒸気圧を有してもよい。溶媒成分は、約8(cal/cm3)0.5〜8.62(cal/cm3)0.5の溶解度パラメータを有してもよい。アルキルアルコキシプロピオネート対ジアルキルケトンの比は、約45:5〜5:45であってもよい。
【0075】
もう一つの態様に従って、架橋ポリマー材料は、ポリオール;ポリイソシアネート;ポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサン;およびアルキルアルコキシプロピオネート、ジアルキルケトン、および/またはアルキルアセテートが含まれる溶媒成分を含む組成物を反応させることによって調製してもよく;ポリマー材料は隆起ミクロドメインが含まれる表面を有する。
【0076】
本明細書において用いられるように、「左」、「右」、「前」、「後」等のような空間的または方向的な用語は、図面に示されているように対象物質に関する。しかし、本明細書において記述される対象物質は、様々な代わりの方向を仮定してもよく、したがって、そのような用語は、制限的に見なしてはならないと理解すべきである。さらに、本明細書(すなわち、特許請求の範囲および明細書)において用いられるように、「その」、「一つの」、および「一つの(an)」のような冠詞は、単数形または複数形を意味しうる。同様に、本明細書において用いられるように、先に「いずれか」という用語(または、「または」が排他的であることを明白に意味することを示している他の類似の言語、例えばxまたはyの一つのみ等)がなくて用いられる場合の「または」という用語は、包括的に解釈すべきであり、すなわち単独で現れる場合は「および」および「または」の双方を意味すると解釈すべきである。同様に、本明細書において用いられるように、「および/または」という用語もまた、この用語が「および」と「または」の双方を意味するという点において包括的であると解釈すべきである。「および/または」または「または」が三つまたはそれより多い項目の群に関して共に用いられる状況において、その群には、一つの項目単独、全ての項目を共に、または項目の任意の組み合わせもしくは数が含まれると解釈すべきである。その上、有する、有している、含まれる、および含まれているのような、本明細書および特許請求の範囲において用いられる用語は、含む(comprise)および含んでいるという用語と同義語であると解釈すべきである。
【0077】
特にそうでないことを示している場合を除き、本明細書において用いられる寸法、物理的特徴等を表現するための全ての数値または式は、全ての場合において「約」という用語によって改変されると理解される。特許請求の範囲に対する同等物の教義の応用を制限する可能性は非常に少なく、そのような試みではなく、「約」という用語によって改変される本明細書または特許請求の範囲において引用されたそれぞれの数値パラメータは、少なくとも引用された有効数字の数に照らして、および通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。その上、本明細書において開示された範囲は全て、その中に提出された任意のおよび全ての小範囲を含むと理解される。例えば、1〜10という記載の範囲には、最小値1〜最大値10のあいだのおよびそれらを含む全ての小範囲、すなわち、最小値1またはそれより大きい値から始まって、最大値10またはそれより小さい値で終わる全ての小範囲(例えば、5.5〜10)が含まれると見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】表2における試料1からのポリマー材料表面の原子間力顕微鏡画像である。
【図2】表2における試料1からのポリマー材料表面の原子間力顕微鏡画像である。
【図3】表2における試料1からのポリマー材料表面の走査型電子顕微鏡画像である。
【図4】表2における試料3からのポリマー材料表面の走査型電子顕微鏡画像である。
【図5】表2における試料3からのポリマー材料表面の原子間力顕微鏡画像である。
【図6】表2における試料1からのポリマー材料表面のシリコンの(a)走査型電子顕微鏡画像、および(b)X-線マッピングである。
【図7】(a)水に浸す前および(b)水に2週間浸した後の、表2における試料1からのポリマー材料の原子間力顕微鏡画像の比較である。
【図8】水に浸す前(8(a)および(c))および水に2週間浸した後(8(b)および(d))の、表2における試料2からのポリマー材料の原子間力顕微鏡画像の比較を示す。
【図9】表4において示される溶媒組成物を用いて調製されたポリマー材料35個の原子間力顕微鏡画像を示す。
【図10】ポリマー材料を調製するために溶媒において用いられるMAK:EEPの比に対する、様々なポリマー材料において形成されたミクロドメインの平均直径のプロットを示す。
【図11】表7において示されたSi-PU 8からのポリマー材料の透過型電子顕微鏡画像である。
【図12】ポリマー材料の一つの態様におけるミクロドメインの形成に及ぼす速度論の影響を示すために撮影された多数の原子間力顕微鏡画像を示す。
【図13】図12からのシリーズAおよびシリーズBにおいて形成されたポリマー材料に関する時間に対するドメインの大きさのプロットである。
【図14】図12におけるシリーズAからのポリマー材料に関する(a)0.5時間、(b)3.5時間、および(c)7.5時間での走査型電子顕微鏡画像および対応するシリコンマッピング画像を示す。
【図15】図12におけるシリーズAからのポリマー材料に関する混合時間の関数としての温度に対する損失弾性率のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール;
ポリイソシアネート;および
ポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサン
を含む組成物を反応させることによって調製される架橋したポリマー材料であって、隆起したミクロドメインを含む表面を有する、ポリマー材料。
【請求項2】
ミクロドメインが、水に14日間より長く曝露した場合に認識可能に変化しない、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項3】
ポリオルガノシロキサンがヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンを含む、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項4】
ポリオルガノシロキサンが、約200〜800、および望ましくは約350〜700の平均ヒドロキシル当量を有する、請求項3記載のポリマー材料。
【請求項5】
ポリオールが少なくとも三つのヒドロキシ基を有するポリオールを含む、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項6】
ポリオールがポリカプロラクトンポリオールを含む、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項7】
ポリイソシアネートが少なくとも三つのイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含む、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項8】
ミクロドメインが約0.1ミクロン〜5ミクロンの平均直径を有する、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項9】
ミクロドメインが約0.01ミクロン〜0.2ミクロンの平均高さを有する、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項10】
ミクロドメインが約0.5ミクロン〜10ミクロンの平均間隔を有する、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項11】
ポリオルガノシロキサンがアミノ官能性ポリオルガノシロキサンを含む、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項12】
組成物が溶媒成分をさらに含む、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項13】
溶媒成分が、アルキルアセテート、アルキルプロピオネート、アルキルアルコキシアセテート、アルコキシプロピオネート、アルコキシアルキルアセテート、アルコキシアルキルプロピオネート、トルエン、キシレン、および/またはジアルキルケトンを含む、請求項12記載のポリマー材料。
【請求項14】
表面が約0.1〜1.5ミクロドメイン/ミクロン2のミクロドメイン密度を有する、請求項1記載のポリマー材料。
【請求項15】
ポリカプロラクトンポリオール;
ポリイソシアネート;および
ポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサン
を含む組成物を反応させることによって調製されるポリマー材料であって、ポリカプロラクトンポリオールが少なくとも三つのヒドロキシ基を有するポリオールを含み、かつ/またはポリイソシアネートが少なくとも三つのイソシアネート基を有するイソシアネートを含む、ポリマー材料。
【請求項16】
約10重量%〜40重量%のポリカプロラクトンポリオールを含む、請求項15記載のポリマー材料。
【請求項17】
約30重量%〜85重量%のポリイソシアネートを含む、請求項15記載のポリマー材料。
【請求項18】
ポリイソシアネートが約150〜600、および望ましくは約250〜450の平均イソシアネート当量を有する、請求項15記載のポリマー材料。
【請求項19】
以下を含む、請求項15記載のポリマー材料:
少なくとも三つのヒドロキシ基を有するポリオールを含む、約20〜30重量%のポリカプロラクトンポリオール;
少なくとも三つのイソシアネート基を有するイソシアネートを含む、約50〜75重量%のポリイソシアネート;および
約3〜13重量%ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン。
【請求項20】
ポリカプロラクトンポリオールが、約150〜200の平均ヒドロキシル当量を有するポリカプロラクトントリオールを含み;
ポリイソシアネートが、約250〜450の平均イソシアネート当量を有する、イソホロンジイソシアネートに基づくポリイソシアネートを含み;および
ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンが、約350〜700の平均ヒドロキシル当量を有するα,ω-ビス[3-(2'-ヒドロキシエトキシ)プロピル]ポリジメチルシロキサンを含む、請求項19記載のポリマー材料。
【請求項21】
以下を含む、請求項15記載のポリマー材料:
約10〜40重量%ポリカプロラクトンポリオール;
約30〜85重量%ポリイソシアネート;および
約2〜14重量%ポリオルガノシロキサン。
【請求項22】
以下を含む前駆体を反応させることによって調製される架橋ポリマー材料:
ポリオール;
ポリイソシアネート;および
ポリマー材料の総固体含有量に基づいて約14重量%以下のポリヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサン。
【請求項23】
ポリオール;
ポリイソシアネート;および
ポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサン
を含む組成物を反応させることによって調製される架橋ポリマー材料であって、周囲のマトリクスより疎水性である表面ミクロドメインが含まれる、架橋ポリマー材料。
【請求項24】
ミクロドメインが、水に14日間曝露した場合に認識可能に変化しない疎水性を有する、請求項23記載のポリマー材料。
【請求項25】
ミクロドメインが、水に14日間曝露した場合に認識可能に変化しない形態を有する、請求項23記載のポリマー材料。
【請求項26】
以下を含む、コーティング組成物:
コーティング組成物が重合した後に、コーティング組成物における総固体に基づいて約14重量%以下のヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサン;
ポリカプロラクトンポリオール;
ポリイソシアネート;および
溶媒成分。
【請求項27】
ポットライフ延長剤をさらに含む、請求項26記載のコーティング組成物。
【請求項28】
請求項1もしくは12記載のポリマー材料または請求項26記載のコーティング組成物によってコーティングされた表面を含む、支持層。
【請求項29】
イソシアネート反応触媒を、ポリオール、ポリイソシアネート、およびポリイソシアネートと反応することができる官能基を有するポリオルガノシロキサンを含む組成物に加えて、コーティング組成物を形成する段階;ならびに
コーティング組成物を支持層表面に適用する段階
を含む、コーティングされた支持層を調製する方法であって、コーティング組成物が重合して、支持層表面において隆起ミクロドメインを有するポリマーコーティングを形成する、方法。
【請求項30】
溶媒成分が約12 mm Hg以下の形成蒸気圧を有する、請求項29記載のコーティング組成物。
【請求項31】
溶媒成分が約8(cal/cm3)0.5〜8.7(cal/cm3)0.5の溶解度パラメータを有する、請求項29記載のコーティング組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−527145(P2008−527145A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551289(P2007−551289)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/000166
【国際公開番号】WO2006/086092
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507226732)エヌディーエスユー リサーチ ファウンデーション (2)
【Fターム(参考)】