説明

表面保護フィルム用基材および表面保護フィルム

【課題】透明性と耐ブロッキング性とのバランスに優れ、また耐衝撃強度にも優れた表面保護フィルム用基材を提供すること。
【解決手段】表面保護フィルム用基材は、メタロセン触媒を用いて得られ、下記要件(1)〜(5)を満たすポリプロピレン単独重合体(A)を必須成分とすることを特徴としている。(1)MFRが1.0〜30g/10分の範囲にあること(2)DSCによって測定された融点が155℃以上であること(3)GPCによって測定された分子量分布指標(Mw/Mn)が3.5以下であること(4)13C−NMRで測定したメソトライアッド分率が97.0〜99.9%の範囲にあること(5)CFC法において90℃までの溶出積分量が1%以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、表面外観に優れ、かつ良好な耐ブロッキング特性を有する表面保護フィルム用基材および該基材を有する表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年薄型表示パネル(液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP))に使用される偏光フィルム、位相差フィルム、アンチリフレクション(AR)フィルム等の光学フィルムの表面保護や、プリント配線基板等の電子部品材料の表面保護や製造工程において中間製品の表面を保護する表面保護フィルムの需要が高まっている。
【0003】
このような表面保護フィルムに要求される物性としては、剛性、衝撃強度、透明性、耐熱性、低FE(フィッシュアイ)等を挙げることができる。
【0004】
特に最近、被着体に表面保護フィルムを付けたままの状態で被着体の検査をすることが可能になるように、透明性の高い表面保護フィルムの要求が強くなっている。透明性の高い表面保護フィルム材料としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)を基材としたタイプが主に使用されているが、PEは、フィルム成形時にFEが発生しやすく、また耐熱性が不足しており、PPは、耐熱性はあるが、高透明性と高耐ブロッキング性との両立が困難であり、PETは、耐熱性、耐衝撃性に問題はないが、コストが高い等の問題がある。
【0005】
また、表面保護フィルムには、基材フィルムあるいは基材フィルムに形成された粘着層に含まれる物質が表面保護フィルムの表面に浮き出し被着体を汚染したり、または粘着層が剥離して被着体に残留したりする等の問題もある。
【0006】
このような問題点を解決するための表面保護フィルムに関する従来技術としては、例えば、特開2004−094012号公報には、ポリエステル系の基材にアクリル系粘着剤を塗布した保護フィルムが開示されている。この表面保護フィルムは良好な透明性を有すると考えられるものの、非常に剛性が高いために被着体の凹凸が大きいケースでは被着体への追従性が不十分であり、保護フィルムが剥離し易い問題がある。また、コストも高い。
【0007】
特開2005−281328号公報には、LLDPE系の基材にエチレン−メチルメタクリレートと非結晶性のPPの混合物を粘着層とする表面保護フィルムが開示されている。この表面保護フィルムは、剛性、耐熱性にやや劣るものであり、また樹脂劣化によるフィッシュアイ発生の懸念を有する。
【0008】
特開2006−299162号公報には、表層にLDPE、中間層にLLDPE、粘着層にEVAを積層した表面保護フィルムが開示されている。この表面保護フィルムは、表面粗度が大きく保護フィルムの巻き出しをし易いと考えられるが、透明性、剛性、耐熱性が不十分であり、また樹脂劣化によるフィッシュアイ発生の懸念を有するものである。
【0009】
ポリプロピレン樹脂を主原料とする例としては、特開2003−213229号公報に、基材が80〜99重量%のポリプロピレンと1〜20%の重量%のEVAとのブレンド物からなる、基材の粘着剤層を設けていない表面の算術平均粗さが0.15μm以上の表面保護フィルムが開示されている。しかし、この表面保護フィルムは、表面粗度は良好だ
が、透明性が考慮されていない。またフィッシュアイについての言及もない。
【0010】
特開2000−301677号公報には、両外層がメタロセンPP、中間層の沸騰n−ヘプタン不溶量が60wt%以下のポリオレフィンと結晶性PPの組成物よりなる積層フィルムが開示され、表面保護フィルムに使用可能との記載がある。しかしながら、このフィルムは柔軟性は良好だが、耐ブロッキング性に課題を有し、また耐熱性についてもいまだ不十分であると考えられる。
【0011】
特開2002−128923号公報には、2,1−挿入に基づく位置不規則性単位の割合が0.05〜1.50モル%のランダムPPを用いたフィルムが開示されている。しかし本公報にはこのフィルムは、食品包装用のフィルムや容器に使用可能との記載があるものの、表面保護フィルムに使用することについて記載されていない。また、本フィルムは良好なヒートシール性が特徴だが、表面保護フィルム用途には耐熱性、耐ブロッキング性は十分とはいえないと考えられる。
【0012】
特開2002−47313号公報には、アイソタクティックトライアッド分率0.629〜0.960、融点が146〜154℃、プロピレンモノマーの2,1−挿入反応に起因するプロピレン単位のモル数およびプロピレンモノマーの1,3−挿入反応に起因するプロピレン単位のモル数の占める割合がともに0.02mol%未満であるプロピレン重合体が具体的に開示されている。しかし本公報には本組成物を用いて得られたフィルムは、食品包装フィルムや食品保存容器に使用可能との記載があるものの、表面保護フィルムに使用することについて記載されていない。また、本組成物を用いて得られたフィルムは、融点が低く、表面保護フィルム用途には耐熱性が充分とはいえないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−094012号公報
【特許文献2】特開2005−281328号公報
【特許文献3】特開2006−299162号公報
【特許文献4】特開2003−213229号公報
【特許文献5】特開2000−301677号公報
【特許文献6】特開2002−128923号公報
【特許文献7】特開2002−047313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上のような事情からなされたものである。すなわち本発明は、透明性と耐ブロッキング性とのバランスに優れ、表面保護フィルム用基材および該基材を用いる表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、メタロセン触媒を用いて得られた高立体規則性ポリプロピレン単独重合体には低立体規則性・低分子量成分が殆ど含まれていないことに着眼した。前記ポリプロピレン単独重合体からなるフィルムおよびシートでは、高透明性と耐ブロッキング性を高度に両立でき、表面保護フィルム用基材として好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明に係る表面保護フィルム用基材は、メタロセン触媒を用いて得られ、下記要件(1)〜(5)を満たすポリプロピレン単独重合体(A)を必須成分とすることを特徴としている。
(1)メルトフローレート(MFR)が1.0〜30g/10分の範囲にあること
(2)示差走査熱量計(DSC)によって測定された融点が155℃以上であること
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された分子量分布指標(Mw/Mn)が3.5以下であること
(4)13C−NMRで測定したメソトライアッド分率が97.0〜99.9%の範囲にあること
(5)クロス分別クロマトグラフ法(CFC)により測定した90℃までの溶出積分量が1%以下であること。
【0017】
前記ポリプロピレン単独重合体(A)は、13C−NMRスペクトルから求められる、全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1−挿入に基づく異種結合の割合および1,3−挿入に基づく異種結合の割合の和が0.1mol%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る表面保護フィルム用基材は、滑剤およびアンチブロッキング剤を含有しないことが好ましい。
【0019】
本発明に係る表面保護フィルムは、基材層の片面に粘着層を有する表面保護フィルムであって、前記基材層が前記表面保護フィルム用基材であることを特徴としている。前記表面保護フィルムは、例えば共押出により製造されたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の表面保護フィルム用基材および表面保護フィルムは、特定の要件を満たすプロピレン単独重合体(A)を基材材料として用いているので、透明性と耐ブロッキング性とのバランスに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る表面保護フィルム用基材および表面保護フィルムについて具体的に説明する。
【0022】
[表面保護フィルム用基材]
本発明に係る表面保護フィルム用基材は、メタロセン触媒を用いて得られ、下記要件(1)〜(5)を満たすポリプロピレン単独重合体(A)を必須成分とする。
(1)MFRが1.0〜30g/10分の範囲にあること
(2)DSCによって測定された融点が155℃以上であること
(3)GPCによって測定された分子量分布指標(Mw/Mn)が3.5以下であること(4)13C−NMRで測定したメソトライアッド分率が97.0〜99.9%の範囲にあること
(5)CFC法により測定した90℃までの溶出積分量が1%以下であること。
【0023】
《要件(1)》
本発明で用いられるポリプロピレン単独重合体(A)は、MFRが1.0〜30g/10分、好ましくは3〜15g/10分の範囲にある。MFRは、重合温度を変更したり、連鎖移動剤としての水素を用いることによって調節することができる。
【0024】
ポリプロピレン単独重合体(A)のMFRが前記範囲にあると、フィルム成形加工時の成形性(ネックインや樹脂圧力等)の点から好ましい。
【0025】
《要件(2)》
本発明で用いられるポリプロピレン単独重合体(A)は、DSCによって測定された融
点が155℃以上、好ましくは155℃以上かつ167℃以下、さらに好ましくは157℃以上かつ167℃以下の範囲にある。触媒として後述するメタロセン触媒系を用いることにより、融点が前記範囲内にある重合体を得ることができる。また、用いるメタロセン化合物を変更することにより融点の異なる重合体を製造することができる。
【0026】
ポリプロピレン単独重合体(A)のDSCによって測定された融点が前記範囲にあるとプロテクトフィルムの耐熱性付与の観点から好ましい。
【0027】
《要件(3)》
本発明で用いられるポリプロピレン単独重合体(A)は、GPCによって測定された分子量分布指標(Mw/Mn)が3.5以下、好ましくは2.0〜3.0の範囲にある。触媒として後述するメタロセン触媒系を用いることにより、Mw/Mnが前記範囲内にある重合体を得ることができる。また、用いるメタロセン化合物を変更することによりMw/Mnの異なる重合体を製造することができる。
【0028】
ポリプロピレン単独重合体(A)のMw/Mnが前記範囲にあると、低分子量成分が少ないためブリードアウトが少なく、得られる表面保護フィルムは透明性、耐ブロッキング性に優れる。又成形加工時のネックイン、樹脂圧力の観点からも好ましい(Mw/Mnが小さすぎると成形加工性に問題が生じることがある)。
【0029】
《要件(4)》
本発明で用いられるポリプロピレン単独重合体(A)は、13C−NMRで測定したメソトライアッド分率が97.0〜99.9%、好ましくは97.5〜99.9%の範囲にある。メソトライアッド分率(mm分率)は、分子鎖中のトライアッド単位でのアイソタクティック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンモノマー単位が3個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。触媒として後述するメタロセン触媒系を用いることにより、メソトライアッド分率が前記範囲内にある重合体を得ることができる。また、重合温度を変更することによりメソトライアッド分率を調節することができる。
【0030】
ポリプロピレン単独重合体(A)のメソトライアッド分率が前記範囲にあると、得られる表面保護フィルムは立体規則性が高く、耐熱性、剛性に優れる。
【0031】
《要件(5)》
本発明で用いられるポリプロピレン単独重合体(A)は、CFC法により測定した90℃までの溶出積分量が1%以下、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。触媒として後述するメタロセン触媒系を用いることにより、溶出積分量が前記範囲内にある重合体を得ることができる。また、用いるメタロセン化合物を変更することにより溶出積分量の異なる重合体を製造することができる。
【0032】
ポリプロピレン単独重合体(A)のCFC法において90℃までの溶出積分量が前記範囲にあると、低分子量成分が少ないためブリードアウトが少なく、得られる表面保護フィルムは透明性、耐ブロッキング性に優れる。
【0033】
本発明で用いられるポリプロピレン単独重合体(A)は、前記要件(1)〜(5)に加えて、さらに下記要件(6)を満たすことが好ましい。
【0034】
《要件(6)》
本発明で用いられるポリプロピレン単独重合体(A)は、13C−NMRスペクトルから求められる、全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1−挿入に基づく異種
結合の割合および1,3−挿入に基づく異種結合の割合の和が0.1mol%以下、好ましくは0.05mol%以下である。触媒として後述するメタロセン触媒系を用いることにより、異種結合の割合の和が前記範囲内にある重合体を得ることができる。また、重合温度を変更することにより異種結合の割合の和の値を調節することができる。
【0035】
ポリプロピレン単独重合体(A)の2,1−挿入に基づく異種結合の割合および1,3−挿入に基づく異種結合の割合の和が前記範囲にあると、得られる表面保護フィルムは耐熱性に優れる。
【0036】
前記各物性の測定方法については後述する。
【0037】
表面保護フィルムの基材として前記プロピレン単独重合体(A)を用いることにより、透明性と耐ブロッキング性とのバランスに優れた表面保護フィルムを得ることができる。
【0038】
(プロピレン単独重合体(A)の製造方法)
以下、プロピレン単独重合体(A)の製造方法を説明する。
【0039】
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)の製造方法は、該プロピレン単独重合体(A)が前記要件(1)〜(5)、好ましくは前記要件(1)〜(6)を満たす限りにおいて何ら限定されるものではないが、通常はシクロペンタジエニル骨格を分子内に持つメタロセン化合物を含む重合触媒の存在下でプロピレンを単独重合することによって製造される。
【0040】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を分子内に持つメタロセン化合物としては、その化学構造から下記一般式[I]で表される非架橋型メタロセン化合物および下記一般式[II]で表される架橋型メタロセン化合物の二種類を例示することができる。これらの中では、一般式[II]で表される架橋型メタロセン化合物が好ましい。
【0041】
【化1】

【0042】
前記一般式[I]および[II]において、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示し、
Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子、および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、
jは1〜4の整数であり、
Cp1およびCp2は、互いに同一か又は異なっていてもよく、Mと共にサンドイッチ構造を形成することができるシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基である。ここで、置換シクロペンタジエニル基は、インデニル基、フルオレニル基、アズレニル基およびこれらが一つ以上の炭化水素基で置換された基も包含し、インデニル基、フルオレニル基、アズレニル基の場合はシクロペンタジエニル基に縮合する不飽和環の二重結合の一部ないし全部は水添されていてもよい。
【0043】
一般式[II]においてYは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−Ge−、−
Sn−、−NRa−、−P(Ra)−、−P(O)(Ra)−、−BRa−または−AlRa
−を示す。(但し、Raは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の
炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子または窒素原子に炭素原子数1〜20の炭化水素基が1個または2個結合した窒素化合物残基である。)
本発明において好んで用いられる重合触媒は、本願出願人の出願に係る国際公開(WO01/27124号)に開示されている下記一般式[III]で表される架橋型メタロセン化合物、並びに、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物から選ばれる少なくても1種以上の化合物、さらに必要に応じて粒子状担体とからなるメタロセン触媒である。
【0044】
【化2】

【0045】
前記一般式[III]において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、そ
れぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0046】
炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、tert−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基;ベンジル基、クミル基、1,1−ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基などの環状不飽和炭化水素基で置換された飽和炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、フリル基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−フェニルアミノ基、ピリル基、チエニル基などのヘテロ原子含有炭化水素基等を挙げることができる。
【0047】
ケイ素含有基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニル
シリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基などを挙げることができる。
【0048】
また、R5からR12の隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。このよう
な置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基などを挙げることができる。
【0049】
前記一般式[III]においては、シクロペンタジエニル環に置換するR1、R2、R3
、R4は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、R2とR4が炭素原子数1〜20の炭化水素基であることがより好ましく、R1とR3が水素原子で
あり、R2とR4が炭素数1〜5の直鎖状または分岐状アルキル基であることが特に好ましい。
【0050】
また、前記一般式[III]において、フルオレニル環に置換する、R5からR12は水
素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。R5からR12の隣
接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。好ましい態様は、R6、R7、R10およびR11が同時に水素原子ではないフルオレニル環である。
【0051】
前記一般式[III]においては、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環を架橋するYが第14族元素であることが好ましく、炭素、ケイ素、ゲルマニウムがより好ましく、炭素原子がより好ましい。
【0052】
また、Yに置換するR13、R14は相互に同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1〜3のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基から選ばれる。このような置換基としては、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基などが好ましい。なお、R13、R14はR5からR12の任意の置換基(但し、通常はR5またはR12である。)またはR1から
4の任意の置換基(但し、通常はR1またはR4である。)と互いに結合して環を形成し
ても良い。
【0053】
前記一般式[III]において、Mは好ましくは第4族遷移金属であり、さらに好ましくはチタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子である。
【0054】
また、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれる。
【0055】
jは1〜4の整数であり、jが2以上の時は、Qは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0056】
ハロゲンの具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、炭化水素基の具体例としては前述と同様のものなどが挙げられる。
【0057】
アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシなどのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基等が挙げられる。
【0058】
孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン
化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類等が挙げられる。
【0059】
Qは少なくとも1つがハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
【0060】
前記の好ましい架橋メタロセン化合物としては、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、1−フェニルエチリデン(4−tert−ブチル−2−メチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、[3−(1',1',4',4',7',7',10',10'−オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3−トリメチル−5−tert−ブチル−1,2,3,3a−テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド等を例示することができる。
【0061】
なお、プロピレン単独重合体(A)の製造に用いられるメタロセン触媒において、前記一般式[III]で表わされるメタロセン化合物とともに用いられる、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(共触媒)、さらには必要に応じて用いられる粒子状担体については、本願出願人による前記公報(WO01/27124)や特開平11−315109号公報中に開示された化合物を制限無く使用することができる。
【0062】
プロピレン単独重合体(A)は、一つの反応機または一つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用い、前記メタロセン触媒の存在下、例えば重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧の重合条件で、プロピレンを重合させることにより製造することができる。
【0063】
(エラストマー(B))
本発明では、前記プロピレン単独重合体(A)を単味で表面保護フィルム用基材として使用することが好ましいが、耐衝撃性、柔軟性等の特性を付与する目的で、エラストマー(B)を添加することができる。
【0064】
エラストマー(B)としては、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−a)、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−b)、水素添加ブロック共重体(B−c)、プロピレン・α−オレフィン共重合体(B−d)、その他の弾性重合体、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0065】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴム(B−a)としては、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体ゴムが挙げられる。エチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴム(B−a)においては、エチレンから誘導される構成単位とα−オレフィンから誘導される構成単位とのモル比(エチレンから誘導される構成単位/α−オレフィンから誘導される構成単位)は、通常は95/5〜15/85、好ましくは80/20〜25/75である。
【0066】
また、このエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−a)について230℃、荷重2.16kgで測定したMFRは、通常は0.1g/10分以上、好ましくは0.5〜30g/10分の範囲内にある。
【0067】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−b)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとのランダム共重合体ゴムである。前記炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、前記と同じものが挙げられる。
【0068】
非共役ポリエチレンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−5−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの非環状ジエン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどの鎖状の非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネンなどのトリエン等が挙げられる。これらの中では、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましく用いられる。
【0069】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−b)は、エチレンから誘導される構成単位が通常は94.9〜0.1モル%、好ましくは89.5〜40モル%であり、α−オレフィンから誘導される構成単位が通常は5〜45モル%、好ましくは10〜40モル%であり、非共役ポリエンから誘導される構成単位が通常は0.1〜25モル%、好ましくは0.5〜20モル%である。ただし、本発明では、エチレンから誘導される構成単位と、α−オレフィンから誘導される構成単位と、非共役ポリエンから誘導される構成単位との合計を100モル%とする。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−b)について230℃、荷重2.16kgで測定したMFRは通常は0.05g/10分以上、好ましくは0.1〜30g/10分の範囲内にある。
【0070】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−b)の具体例としては、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)などが挙げられる。
【0071】
水素添加ブロック共重合体(B−c)は、ブロックの形態が下式(a)または(b)で表されるブロック共重合体の水素添加物であり、水素添加率が通常は90モル%以上、好ましくは95モル%以上の水素添加ブロック共重合体である。
【0072】
X(YX)n …(a)
(YX)n …(b)
前記式(a)または式(b)におけるXで示される重合ブロックを構成するモノビニル置換芳香族炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、低級アルキル置換スチレン、ビニルナフタレン等のスチレンまたはその誘導体などが挙げられる。これらは一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。式(a)または(b)のYで示される重合ブロックを構成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。これらは一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。nは通常は1〜5の整数、好ましくは1または2である。
【0073】
水素添加ブロック共重合体(B−c)の具体的な例としては、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)等のスチレン系ブロック共重合体などが挙げられる。水素添加前のブロック共重合体は、例えば不活性溶媒中で、リチウム触媒またはチーグラー触媒の存在下に、ブロック共重合を行わせる方法により製造することができる。詳細な製造方法は、例えば特公昭40−23798号公報などに記載されている。
【0074】
水素添加処理は、不活性溶媒中で公知の水素添加触媒の存在下に行うことができる。詳細な方法は、例えば特公昭42−8704号公報、同43−6636号公報、同46−2
0814号公報などに記載されている。共役ジエンモノマーとしてブタジエンが用いられる場合、ポリブタジエンブロックにおける1,2−結合量の割合は通常は20〜80質量%、好ましくは30〜60質量%である。水素添加ブロック共重合体(B−c)としては市販品を使用することもできる。具体的なものとしては、クレイトンG1657(登録商標)(シェル化学(株)製)、セプトン2004(登録商標)((株)クラレ製)、タフテックH1052(登録商標)(旭化成(株)製)などが挙げられる。
【0075】
プロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム(B−d)は、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体ゴムである。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−d)においては、プロピレンから誘導される構成単位とα−オレフィンから誘導される構成単位とのモル比(プロピレンから誘導される構成単位/α−オレフィンから誘導される構成単位)が通常は95/5〜5/95、好ましくは80/15〜20/80である。また、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴム(B−d)においては、2種以上のα−オレフィンを使用しても良く、その1つはエチレンであっても良い。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴム(B−d)について230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが通常は0.1g/10分以上、好ましくは0.5〜30g/10分の範囲内にある。
【0076】
エラストマー(B)は一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。
【0077】
本発明において前記エラストマー(B)は、プロピレン単独重合体(A)100質量部に対して、通常は0〜50質量部、好ましくは1〜20質量部の範囲内の量で用いられる。
【0078】
(ポリエチレン樹脂(C))
本発明の表面保護フィルム用基材には、耐衝撃性、法安定性、高速押出シート成形性付与等の機能を付与する目的で、エラストマー(B)と共に、あるいはエラストマー(B)の代わりにポリエチレン樹脂(C)を添加しても良い。
【0079】
例えば、透明性の低下を抑えながら耐衝撃性を付与させる場合、メタロセン触媒の存在下で、エチレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとを共重合させて製造した、密度0.900〜0.930kg/m3の直鎖状低密度ポリエチレンを添加することが好ましい

【0080】
その他の例として、高速押出成形性を改良する場合、高圧法ポリエチレンを添加することが望ましい。ここで高圧法ポリエチレンとは、100kg/cm2以上の圧力において
、パーオキサイドの存在下に、エチレンをラジカル重合することにより得られる、長鎖分岐を有するポリエチレンである。高圧法ポリエチレンの好ましいメルトフローレート(ASTM D1238、190℃、荷重2.16kgで測定)は、通常は0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜10g/10分の範囲内にある。また密度(ASTM D1505)は、通常は0.900〜0.940g/cm3、好ましくは0.910〜0
.930g/cm3の範囲内にある。
【0081】
プロピレン単独重合体(A)とポリエチレン樹脂(C)とを含むプロピレン系樹脂組成物に占めるポリエチレン樹脂(C)の含有量は、付与される特性により異なるが、通常0〜30質量%、好ましくは1〜20質量%である。ポリエチレン樹脂(C)は一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0082】
また、プロピレン単独重合体(A)とエラストマー(B)とポリエチレン樹脂(C)と
からなるプロピレン系樹脂組成物の場合、プロピレン単独重合体(A)の量は、付与される特性により異なるが、通常70〜99質量%、好ましくは80〜97質量%の範囲内にある。また、エラストマー(B)とポリエチレン樹脂(C)の合計量は、プロピレン単独重合体(A)100質量部に対して、通常0〜30質量部、好ましくは1〜20質量部である。なお、エラストマーとポリエチレンとの比率は目的に応じて任意に調整することができる。
【0083】
(他の成分)
本発明の表面保護フィルム用基材は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、ビタミン類、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、ミネラルオイル等の添加物を含んでいてもよいが、透明性の観点から滑剤およびアンチブロッキング剤は含まないことが好ましい。
【0084】
(表面保護フィルム用基材)
本発明に係る表面保護フィルム用基材の厚みとしては8〜150μmとすることができる。
【0085】
本発明の表面保護フィルム用基材を成形するには、公知の各種の方法を採用することができる。例えば、溶融した樹脂をTダイを通して押出すことによりフィルム状に製膜する方法、溶融した樹脂をサーキュラーダイからチューブ状に押出すことによりフィルム状に製膜する方法により、単層/多層の基材フィルムを得ることができる。また、これらの方法により製膜した基材フィルムをドライラミネート法、押出ラミネート法により多層積層化することもできる。
【0086】
さらに、前記のような方法で形成されたフィルムを延伸して表面保護フィルム用基材として使用することができる。
【0087】
[表面保護フィルム]
本発明の表面保護フィルムは、少なくとも基材層と粘着層とを有し、通常基材層の片面に粘着層を設けてなる。基材層は、被着体を保護する機能を有し、粘着層は、被着体へ付着する機能を有する。また粘着層に、被着体を保護する機能を付与することもできる。
【0088】
(基材層)
本発明の表面保護フィルムにおける基材層は、前記プロピレン単独重合体(A)からなる。本発明の表面保護フィルムにおける基材層は、単層または多層にすることができる。多層構造を有する基材層は、プロピレン単独重合体(A)からなる層を含む2層以上の積層体となる。基材層を多層構造にする場合、その基材層を構成する少なくとも1層が前記プロピレン単独重合体(A)により形成される。
【0089】
基材層が、プロピレン単独重合体(A)により形成される層のみから構成される多層構造である場合、基材層を構成する各層を形成するプロピレン単独重合体(A)としては、特に制限はなく、前記規定を充足するプロピレン単独重合体(A)を任意に組み合わせて使用することができる。この場合、同一のプロピレン単独重合体(A)を積層して多層構造とすることもできる。
【0090】
基材層が、プロピレン単独重合体(A)により形成される層とプロピレン単独重合体(A)以外の材料により形成される層とから構成される多層構造である場合、前記プロピレン単独重合体(A)以外の材料としては、プロピレン単独重合体(A)により形成される層の前記機能を阻害しない限り特に制限はなく、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)や、メタロセン触媒系で合成された直鎖状低密度ポリエチレンホモポリマー(LLDP
E)、ポリプロピレンホモポリマーおよびポリプロピレンランダムコポリマー等のメタロセン触媒系で合成されたポリプロピレン等(mPP)等を挙げることができる。
【0091】
(粘着層)
粘着層を形成する材料としては、表面保護フィルムを被着体に貼付することができる限り特に制限されず、例えばEVA系、SBR系、SIS系、SBS系、SEBS系、ブチルゴム系、天然ゴム系、およびアクリル系等の粘着剤を挙げることができる。
【0092】
粘着層を形成する材料として、密度が0.900kg/m3以下の直鎖状低密度ポリエ
チレン(LLDPE)を用いることもできる。
【0093】
また、前記粘着層を形成する材料として、メタロセン触媒系で重合された、メルトフローレートが1〜30g/10分、融点が110〜120℃の範囲にあるプロピレン系ブロック共重合体で、下記要件〔1〕〜〔3〕を満たす室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜60質量%と要件〔4〕〜〔6〕を満たす室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)10〜40質量%とから構成されたプロピレン系ランダムブロック共重合体(D)を用いることもできる。
〔1〕DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
〔2〕Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0.5〜13モル%
〔3〕Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量の和が0.2
モル%以下
〔4〕DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
〔5〕Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜4dl/g
〔6〕Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜35モル%。
【0094】
粘着層が前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)からなると、表面保護フィルムの透明性を高くすることができ、かつ透明性と汚染防止性とのバランスを良好にすることが可能になる。
【0095】
以下、前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)について説明する。
【0096】
前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)は、メタロセン触媒系の存在下で、第一重合工程にてプロピレンとエチレンとを共重合してプロピレン・エチレンランダム共重合体を製造し、引き続き第二重合工程でプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムを製造して得られる。該共重合体は、メルトフローレートが1〜30g/10分、示差走査熱量計(DSC)で測定された融点が110〜120℃の範囲にあり、第一重合工程で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体を主成分とする室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜60質量%と、第二重合工程で製造されるプロピレン−エチレン
ランダム共重合体ゴムを主成分とする室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)10〜40
質量%とから構成される。
【0097】
そして、前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)において、前記Dinsol
要件〔1〕〜〔3〕を満たし、さらに前記Dsolが要件〔4〕〜〔6〕を満たす。
【0098】
以下、前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)が備える前記要件〔1〕〜〔6〕について詳細に説明する。
【0099】
《要件〔1〕》
前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)の室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)から求めた分子量分布(
Mw/Mn)が1.0〜3.5、好ましくは、1.5〜3.2、さらに好ましくは2.0〜3.0である。このように該共重合体に含有される室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)について、GPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)を上述のように狭くできる
のは、触媒としてメタロセン触媒系を用いているからである。そして、Mw/Mnが3.5よりも大きいと、低分子量成分が増える為、フィルムのブリードアウトが発生し、被着体を汚染する等の不具合が発生する。
【0100】
《要件〔2〕》
前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)の室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量が0.5〜13モル%、好ましくは0.7
〜10モル%、さらに好ましくは1.0〜8モル%である。Dinsol中のエチレンに由来
する骨格の含有量が0.5モル%未満であると、該共重合体の融点(Tm)が高くなり、各種成形体での透明性が低下し、又粘着力が不十分となる。また、Dinsol中のエチレン
に由来する骨格の含有量が13モル%よりも多いと、プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)の融点が低くなり、高温下での剛性低下、耐熱性低下。被着体への汚染物等の不具合が発生することがある。
【0101】
《要件〔3〕》
前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)の室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量との和が0.2モル
%以下、好ましくは0.1モル%以下である。Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結
合量と1,3−挿入結合量との和が0.2モル%よりも多い場合、プロピレンとエチレンとのランダム共重合性が低下し、その結果、室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)中の
プロピレン−エチレン共重合体ゴムの組成分布が広くなる為、被着体への汚染などの不具合が発生することがある。
【0102】
《要件〔4〕》
前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)のGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5、好ましくは1.
2〜3.0、さらに好ましくは1.5〜2.5である。このように該共重合体の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)について、GPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)を
上述のように狭くできるのは、触媒としてメタロセン触媒系を用いているからである。そして、Mw/Mnが3.5よりも大きいと、Dsolに低分子量プロピレン−エチレンラン
ダム共重合体ゴムが増えるため、透明性低下や被着体への汚染が発生することがある。
【0103】
《要件〔5〕》
前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)の135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜4dl/g、好ましくは
1.5dl/gを超え3.5dl/g以下であり、さらに好ましくは1.5dl/gを超え2.5dl/g以下である。こうしたランダムブロック共重合体の製造において、本発明において使用されるメタロセン触媒系以外の触媒を用いたのでは、極限粘度[η]が1.5dl/gを超えるプロピレン系ランダムブロック共重合体を製造することは極めて困難であり、特に極限粘度[η]が1.8dl/g以上のプロピレン系ランダムブロック共重合体を製造することはほとんど不可能である。また、Dsolの135℃デカリン中にお
ける極限粘度[η]が4dl/gよりも高いと、第二重合工程でプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムを製造する際に、超高分子量乃至高エチレン量プロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムが微量に副生する。この微量に副生したプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムは、プロピレン系ランダムブロック共重合体中に不均一に存在する為、透明性低下、耐衝撃性の低下やフィッシュアイ等が発生するなどの外観不具合が生ずることがある。
【0104】
《要件〔6〕》
前記プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜35モル%、好ましくは15〜25
モル%である。Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15モル%よりも低いと、
プロピレン系ランダムブロック共重合体(D)の耐衝撃性が低下する。また、Dsol中に
おけるエチレンに由来する骨格の含有量が35モル%よりも高いと透明性が低下する。
【0105】
なお、この室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)中のエチレンに由来する骨格の含有
量を通常は15〜25モル%の範囲内にすることにより、透明性が低下しにくくなる。
【0106】
本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(D)は、好適にはメタロセン触媒の存在下に、第一重合工程([工程1])でホモポリプロピレン、またはプロピレンと少量のエチレンとからなるプロピレン・エチレンランダム共重合体を製造後、第二重合工程([工程2])でプロピレンと第一工程よりも多量のエチレンとを共重合してプロピレン・エチレン共重合体ゴムを製造して得られる。
【0107】
本発明において使用されるメタロセン触媒としては、メタロセン化合物、ならびに、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、さらに必要に応じて粒子状担体とからなるメタロセン触媒であり、好ましくはアイソタクティックまたはシンジオタクティック構造等の立体規則性重合をすることのできるメタロセン触媒を挙げることができる。前記メタロセン化合物の中では、前記プロピレン単独重合体(A)の製造に用いられる架橋型メタロセン化合物が用いられる。また、前記メタロセン化合物とともに用いられる、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、さらには必要に応じて用いられる粒子状担体からなり、これらについては、本出願人による前記公報(WO01/27124号パンフレット)あるいは特開平11−315109号公報中に開示された化合物を制限無く使用することができる。
【0108】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(D)は、二つ以上の反応装置を直列に連結した重合装置を用い、次の二つの工程([工程1]および[工程2])を連続的に実施することによって得られる。
【0109】
[工程1]は、重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧で、プロピレンを単独で重合させ、またはプロピレンとエチレンとを共重合させる。[工程1]では、プロピレンに対してエチレンのフィード量を少量とすることによって、[工程1]で製造されるポリプロピレンまたはプロピレン・エチレンランダム共重合体がDinsolの主成分
となるようにする。
【0110】
[工程2]は、重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧で、プロピレンとエチレンとを共重合させる。[工程2]では、プロピレンに対するエチレンのフィード量を[工程1]のときよりも多くすることによって、[工程2]で製造されるプロピレン・エチレン共重合ゴムがDsolの主成分となるようにする。
【0111】
このようにすることにより、Dinsolに係る要件(1)〜(2)および(6)は、[工
程1]における重合条件の調整によって、Dsolに係る要件(3)〜(5)は、[工程2
]における重合条件の調整によって、満足させることが可能となる。
【0112】
また、本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)が満足
すべき物性については、使用するメタロセン触媒の化学構造により決定されることが多い。具体的には、要件(1)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)、要件
(6)Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量との和、要件
(3)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)、およびプロピレン・エチレ
ンブロック共重合体(D)の融点については、主として、[工程1]および[工程2]において用いられるメタロセン触媒を適切に選択することによって、前記要件を満足するように調節することができる。
【0113】
さらに、要件(2)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量については、[工程
1]におけるエチレンのフィード量などによって調整することが可能である。要件(4)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]については、[工程2]における水
素などの分子量調節剤のフィード量などによって調節することが可能である。要件(5)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量については、[工程2]におけるエチレンのフィード量などによって調節することが可能である。さらに、[工程1]と[工程2]とで製造する重合体の量比を調整することによって、DinsolとDsolとの組成比、およびプロピレン・エチレンブロック共重合体(D)のメルトフローレートを適切に調節することが可能である。
【0114】
なお、DinsolとDsolは以下のようにして求めることができる。
【0115】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(D)のサンプル5gにn−デカン200mlを加え、145℃で30分間加熱溶解した。約3時間かけて、20℃まで冷却させ、30分間放置した。その後、析出物(以下、n−デカン不溶部:Dinsol)を濾別した。濾液
を約3倍量のアセトン中入れ、n−デカン中に溶解していた成分を析出させた(析出物(X))。析出物(X)とアセトンを濾別し、析出物を乾燥した。なお、濾液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。
【0116】
n−デカン可溶部量は、以下の式によって求めた。
n−デカン可溶部量(wt%)=〔析出物(X)重量/サンプル重量〕×100
また、本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(D)は、前記方法の[工程1]で製造されるプロピレン・エチレンランダム共重合体と、前記方法の[工程2]で製造されるプロピレン・エチレンランダム共重合体ゴムを、メタロセン化合物含有触媒の存在下で個別に製造した後に、これら物理的手段を用いてブレンドして製造しても良い。
【0117】
本発明の表面保護フィルムにおける粘着層には、耐衝撃性、透明性、粘着性等の特性を付与する目的で、前記エラストマー(B)を添加することができる。
【0118】
エラストマー(B)は一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0119】
本発明において前記のエラストマー(B)は、粘着層を形成する前記粘着剤100質量部に対して、通常は0〜30質量部、好ましくは1〜20質量部の範囲内の量で使用する。
【0120】
本発明の表面保護フィルムにおける基材層には、耐衝撃性、透明性、粘着性等の機能を付与する目的で、エラストマー(B)と共に、あるいはエラストマー(B)の代わりに前記ポリエチレン樹脂(C)を添加しても良い。
【0121】
前記粘着剤とポリエチレン樹脂(C)とを含む組成物に占めるポリエチレン樹脂(C)
の含有量は、付与される特性により異なるが、通常0〜30質量%、好ましくは1〜20質量%の範囲内にある。ポリエチレン樹脂(C)は一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。
【0122】
また、前記粘着剤とエラストマー(B)とポリエチレン樹脂(C)とからなる組成物の場合、前記粘着剤の量は、付与される特性により異なるが、通常50〜99質量%、好ましくは70〜97質量%、さらに好ましくは75〜95質量%の範囲内にある。また、エラストマー(B)とポリエチレン樹脂(C)の合計量は、前記粘着剤100質量部に対して、通常0〜30質量部、好ましくは3〜20質量部である。なお、エラストマーとポリエチレンとの比率は目的に応じて任意に調整することができる。
【0123】
粘着剤をTダイ共押出成形法で共押出しして製膜する場合は、EVA系、SEBS系、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましく使用可能である。また、粘着剤を基材フィルムに塗布する場合は、アクリル系粘着剤が好ましく使用可能である。
【0124】
(他の成分)
本発明の表面保護フィルムにおける粘着層は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、ビタミン類、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、ミネラルオイル等の添加物を含んでいてもよい。
【0125】
(表面保護フィルム)
本発明の表面保護フィルムの厚みは、目的に応じて適宜決定することができ、例えば10〜200μmとすることができる。粘着層の厚みとしては2〜50μmとすることができる。
【0126】
本発明の表面保護フィルムは、公知の各種の方法により形成される。例えば、空冷上吹インフレーション成形、水冷下吹インフレーション成形、キャスト成形等の公知の成形加工法を用いてフィルム(表面保護フィルム用基材)を製膜した後、塗工機で前記表面保護フィルム用基材上に粘着剤をコーティングする方法、共押出多層成形機を用いて、基材と粘着剤をTダイやサーキュラーダイから多層フィルム状に製膜する共押出法等が挙げられる。
【0127】
本発明に係る表面保護フィルムは、薄型表示パネルに使用される偏光フィルム、位相差フィルム、ARフィルム等の光学フィルムの表面保護、プリント配線基板等の電子部品材料の表面保護や製造工程における中間製品の表面保護をするフィルムとして用いられる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における物性の測定方法は次の通りである。
【0129】
(m1)MFR(メルトフローレート)
MFRは、ASTM D1238(230℃、荷重2.16kg)に従って測定した。
【0130】
(m2)融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)を用いて測定を行った。ここで測定した第3stepにおける吸熱ピークを融点(Tm)と定義した。
<サンプル作成条件>
成形方法 :プレス成形
金型 :厚さ0.2mm(サンプルをアルミホイルで挟み、金型を用いてプレス成形

成形温度 :240℃
プレス圧力:300kg/cm2、プレス時間:1分
プレス成形後、シートを氷水で冷却し、下記測定容器に約0.4gのシートを封入。測定容器 :DSC PANS 10μl BO−14−3015
DSC COVER BO14−3003
〈測定条件〉
第1step:10℃/minで240℃まで昇温し、10min間保持する
第2step:10℃/minで30℃まで降温する
第3step:10℃/minで240℃まで昇温する
(m3)Mw/Mn測定〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)〕
ウォーターズ社製GPC−150C Plusを用い以下の様にして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6−HT及びTSKgel GMH6−HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業(株))および酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業(株))0.025質量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1質量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106
については東ソー(株)製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャー
ケミカル社製を用いた。
【0131】
(m4)メソトライアッド分率
メソトライアッド分率(mm分率)は、13C−NMRスペクトルから求めることができる。具体的には、国際公開第WO94/016009号パンフレットに記載された方法により測定した。
【0132】
(m5)CFC
90℃のo−ジクロロベンゼンに可溶な成分量の測定はクロスクロマト分別測定(CFC)により行った。
【0133】
各温度でのオルトジクロロベンゼンに可溶な成分の分析は、クロスクロマト分別測定(CFC)で行った。CFCは組成分別を行う温度上昇溶離分別(TREF)部と、分子量分別を行うGPC部とを備えた下記装置を用いて、下記条件で測定し、各温度での量を算出した。
【0134】
測定装置:CFC T−150A型、三菱油化(株)製、
カラム :Shodex AT−806MS(×3本)
溶解液 :o−ジクロロベンゼン
流速 :1.0ml/min
試料濃度:0.3wt%/vol%(0.1% BHT入り)
注入量 :0.5ml
溶解性 :完全溶解
検出器 :赤外吸光検出法、3.42μ(2924cm-1)、NaCl板
溶出温度:0〜135℃、28フラクション
0、10、20、30、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、94、97、100、103、106、109、112、115、118、121、124、127、135 (℃)
測定の詳細は、試料を145℃で2時間加熱して溶解してから、135℃で保持した後、0℃まで10℃/hrで降温、さらに0℃で60分保持して試料をコーティングさせた。昇温溶出カラム容量は0.83ml、配管容量は0.07mlである。検出器はFOXBORO社製赤外分光器MIRAN 1A CVF型(CaF2セル)を用い、応答時間
10秒の吸光度モードの設定で、3.42μm(2924cm-1)の赤外光を検知した。溶出温度は0℃〜135℃までを28フラクションに分けた。温度表示は全て整数であり、例えば94℃の溶出画分とは、91〜94℃で溶出した成分のことを示す。0℃でもコーティングされなかった成分および各温度で溶出したフラクションの分子量を測定し、汎用較正曲線を使用して、ポリプロピレン換算分子量を求めた。SEC温度は135℃であり、内標注入量は0.5mlであり、注入位置は3.0mlであり、データサンプリング時間は0.50秒である。データ処理は、装置付属の解析プログラム「CFCデータ処理(バージョン1.50)」で実施した。
【0135】
(m6)2,1−挿入の割合、1,3−挿入の割合の測定
13C−NMRを用いて、特開平7−145212号公報に記載された方法に従って、プロピレンの2,1−挿入の割合、1,3−挿入の割合を測定した。
【0136】
(m7)フィルムのヘイズ(HAZE)
ASTM D−1003に準拠して測定した。
【0137】
また、低分子量物のブリード有無を確認するため、80℃、4日間加熱処理した後のフィルムについても同様にヘイズ測定をした。
【0138】
(m8)フィルムの耐ブロッキング性
MD方向10cm×TD方向10cmのフィルムのチルロール面どうしを重ね合わせ、50℃の恒温槽に200g/cm2の荷重下で3日間保持する(100℃品についても、
恒温槽以外は同条件)。その後、23℃、湿度50%の室内にて24時間以上状態調節した後、引張速度200mm/minで剥離させたときの剥離強度を測定し、剥離強度を試験片幅で割った値をブロッキング係数とし、耐ブロッキング性を評価した。ここで、ブロッキング係数が小さいほど、耐ブロッキング性に優れる。
【0139】
(m9)ヤング率
JIS K6781に準拠してフィルムのヤング率を測定した。
【0140】
(m10)極限粘度[η]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、
濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
【0141】
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)。
【0142】
(m11)粘着力
粘着力の測定は以下のようにして行った。
【0143】
ゴムロールを用いて厚さ2mmのアクリル板に幅25mm、長さ100mmの表面保護フィルムを貼り付け、23℃、50%雰囲気下に24時間放置後、180度の剥離角度でフィルムを剥離し、剥離時の抵抗力を粘着力とした。
【0144】
[合成例1](プロピレン単独重合体(PP1)の合成)
(1)固体触媒担体の製造
1L枝付フラスコにSiO2(洞海化学社製)300gをサンプリングし、トルエン8
00mlを入れ、スラリー化した。次に5L4つ口フラスコへ移液をし、トルエン260
mlを加えた。メチルアルミノキサン(以下、MAO)−トルエン溶液(アルベマール社製10重量%溶液)を2830ml導入した。室温下、30分間攪拌した。1時間で110℃に昇温し、4時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却した。冷却後、上澄みトルエンを抜き出し、フレッシュなトルエンで、置換率が95%になるまで、置換を行った。
【0145】
(2)固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5L4つ口フラスコにジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライドを2.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.46リットルと前記(1)項で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー1.4リット
ルを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。得られたジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn−ヘプ
タンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0146】
(3)前重合触媒の製造
前記の(2)項で調製した固体触媒成分404g、トリエチルアルミニウム218ml、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに装入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを1212g装入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を二回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で4g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを3g含んでいた。
【0147】
(4)本重合
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを28kg/時間、水素を3NL/時間、前記(3)項で調製した触媒スラリーを固体触媒成分として3.8g/時間、トリエチルアルミニウム5.5ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを130kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.14mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを14kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.14mol%になるように供給した。重合温度69℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを18kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.14mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを14kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.14mol%になるように供給した。重合温度67℃、圧力2.8MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体(PP1)を得た。得られたプロピレン単独重合体(PP1)は、80℃で真空乾燥を行った。
【0148】
[合成例2](プロピレン単独重合体(PP2)の合成)
(1)固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5L4つ口フラスコに[3−(1',1’,4’,4’,7
’,7’,10’,10’−オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3−トリメチル−5−tert−ブチル−1,2,3,3a−テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライドを2.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.46リットルと合成例1の(1)項で調製したMAO/SiO2/トルエンス
ラリー1.4リットルを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。得られた[3−(1’,1’,4’,4’,7’,7’,10’,10’−オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3−トリメチル−5−tert−ブチル−1,2,3,3a−テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn−ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.
5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0149】
(2)前重合触媒の製造
前記の(1)項で調製した固体触媒成分404g、トリエチルアルミニウム218ml、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを1212g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で6g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを3g含んでいた。
【0150】
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを35kg/時間、水素を2.5NL/時間、前記(2)項で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として7g/時間、トリエチルアルミニウム8.0ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は30℃であり、圧力は3.0MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを85kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.12mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.12mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体(PP2)を得た。プロピレン単独重合体(PP2)は、80℃で真空乾燥を行った。
【0151】
[合成例3](プロピレン単独重合体(PP3)の合成)
(1)前重合触媒の製造
合成例1の(2)項と同様にして調製した固体触媒成分404g、トリエチルアルミニウム218ml、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに装入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを1212g装入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で6g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを3g含んでいた。
【0152】
(2)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを35kg/時間、水素を2.5NL/時間、前記(1)項で調製した触媒スラリーを固体触媒成分として12g/時間、トリエチルアルミニウム8.0ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであ
った。
得られたスラリーは内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを85kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.22mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.22mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体(PP3)を得た。プロピレン単独重合体(PP3)は、80℃で真空乾燥を行った。
【0153】
[合成例4](プロピレン単独重合体(PP4)の合成)
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム952g、デカン4420mlおよび2−エチルヘキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却した後、この均一溶液の750mlを、−20℃に保持された四塩化チタン2000ml中に1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱時濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2重量%、塩素を57重量%、マグネシウムを21重量%およびDIBPを20重量%の量で含有していた。
【0154】
(2)前重合触媒の製造
前記の固体状チタン触媒成分168g、トリエチルアルミニウム37.3ml、ヘプタン112Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温5℃に保ちプロピレンを1680g挿入し、60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を二回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、遷移金属触媒成分濃度で1.5g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体状チタン触媒成分1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。
【0155】
(3)本重合
内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを130kg/時間、前記の(2)項で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として2.2g/時間、トリエチルアルミニウム8.3ml/時間、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン5.2ml/時間、水素を気相部の水素濃度が0.2mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体(PP4)を得た。得られたプロピレン単独重合体(PP4)は、80℃で真空乾燥を行った。
【0156】
[合成例5](プロピレン単独重合体(PP5)の合成)
合成例4の(3)本重合を以下のように変更した以外は、合成例4と同様の方法で行った。
【0157】
(3)本重合
内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを130kg/時間、合成例4の(2)項で調製した触媒スラリーを固体触媒成分として1.9g/時間、トリエチルアルミニウム7.0ml/時間、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン4.4ml/時間、水素を気相部の水素濃度が0.6mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体(PP5)を得た。得られたプロピレン単独重合体(PP5)は、80℃で真空乾燥を行った。
【0158】
[合成例6](プロピレン単独重合体(PP6)の合成)
(1)前重合触媒の製造
合成例4の(1)項と同様にして調製した固体状チタン触媒成分56g、トリエチルアルミニウム20.7ml、ヘプタン80Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温5℃に保ちプロピレンを560g挿入し、60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を二回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、遷移金属触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体状チタン触媒成分1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。
【0159】
(2)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を46NL/時間、前記(1)項で調製した触媒スラリーを固体触媒成分として0.5g/時間、トリエチルアルミニウム1.8ml/時間、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン1.1ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.6MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が3.0mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.2MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体(PP6)を得た。プロピレン単独重合体(PP6)は、80℃で真空乾燥を行った。
【0160】
[合成例7](プロピレン単独重合体(PP7)の合成)
(1)固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5リットル4つ口フラスコに、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを2.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.46リットルと合成例1の(1)項と同様にして調製したMAO/SiO2/トルエン
スラリー1.4リットルを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。得られたジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO2/トルエンス
ラリーはn−ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0161】
(2)前重合触媒の製造
前記の(1)項で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109ml、ヘプタン100リットルを、内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを2,020g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/リットルとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分
1g当りポリエチレンを10g含んでいた。
【0162】
(3)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を4NL/時間、前記の(2)項で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として2.0g/時間、トリエチルアルミニウム4.0ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量1,000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.08mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.08mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.08mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体(PP7)を得た。80℃、真空乾燥後の性状値を表1に示した。
【0163】
以上のようにして得られたプロピレン単独重合体(PP1〜PP7)の特性を下記表1に示す。
【0164】
【表1】

【0165】
[実施例1〜3および比較例1〜4]
下記表2に記載したポリプロピレン樹脂を用いて下記の成膜条件でキャストフィルム(単層)を成膜した。得られたフィルムについて各種物性を測定した結果を下記表2に示す。
【0166】
(キャストフィルム(単層)製膜条件)
添加剤:イルガノックス1010(商標)/イルガフォス168(商標)/ステアリン酸Ca=750/750/200ppm
混練:単軸混練機(GMエンジニアリング製GMZ−50)
キャスト成形条件:スクリュー径40mmφ単層キャスト機、樹脂温度250℃、キャストロール温度30℃、引取速度11m/分、膜厚50μm
エージング:40℃/24時間
【0167】
【表2】

【0168】
[合成例8](粘着層用樹脂(RB1)の合成)
(1)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を5Nリットル/時間、合成例7の(2)項と同様にして調製した触媒スラリーを固体触媒成分として2.6g/時間、トリエチルアルミニウム1.6g/時間を連続的に供給し、管状重合器内に気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。
【0169】
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.6mol%、水素を気相部の水素濃度が0.25mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
【0170】
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.6mol%、水素を気相部の水素濃度が0.25mol%になるように供給した。重合温度71℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
【0171】
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.6mol%、水素を気相部の水素濃度が0.25mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
【0172】
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、共重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.1mol%になるように供給した。重合温度61℃、圧力2.9MPa/Gを保つようにエチレンを供給し重合を行った。
【0173】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン系ランダムブロック共重合体である粘着層用樹脂(RB1)を得た。得られた粘着層用樹脂(RB1)を80℃で真空乾燥させた。
【0174】
[実施例4〜5および比較例5]
下記表3に記載したポリプロピレン樹脂を用いて下記の成膜条件でキャストフィルム(3層)を成膜した。得られたフィルムについて各種物性を測定した結果を下記表3に示す。
【0175】
(キャストフィルム(3層)製膜条件)
合成例1で製造されたプロピレン単独重合体(PP1)100質量部に対して、熱安定剤 IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.1質量部、熱安定剤 IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム0.1質量部を
タンブラーにて混合後、ナカタニ機械(株)製二軸押出機(同方向2軸混錬機)を用いて190℃にて溶融混錬してペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を調製した。
【0176】
また、プロピレン単独重合体(PP2)、プロピレン単独重合体(PP5)および粘着層用樹脂(RB1)についても、上記と同様の添加剤組成および方法により、ペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を調製した。
【0177】
上記のペレット状の樹脂組成物をSHIモダンマシナリー社製フィードブロック型のTダイ(ダイ幅800mm、リップ開度1.7mm)を備え付けた3種3層キャスト押出機(65mmφ×3)を用いて押出し、ダイ設定温度230℃、チルロール温度30℃、加工速度50m/分の条件で、各層の比率を20/60/20%とした厚み50μmの3層フィルムを製造した。
【0178】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒を用いて得られ、下記要件(1)〜(5)を満たすポリプロピレン単独重合体(A)を必須成分とする表面保護フィルム用基材;
(1)メルトフローレート(MFR)が1.0〜30g/10分の範囲にあること
(2)示差走査熱量計(DSC)によって測定された融点が155℃以上であること
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された分子量分布指標(Mw/Mn)が3.5以下であること
(4)13C−NMRで測定したメソトライアッド分率が97.0〜99.9%の範囲にあること
(5)クロス分別クロマトグラフ法(CFC)により測定した90℃までの溶出積分量が1%以下であること。
【請求項2】
前記ポリプロピレン単独重合体(A)は、13C−NMRスペクトルから求められる、全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1−挿入に基づく異種結合の割合および1,3−挿入に基づく異種結合の割合の和が0.1mol%以下である、請求項1記載の表面保護フィルム用基材。
【請求項3】
滑剤およびアンチブロッキング剤を含有しない、請求項1記載の表面保護フィルム用基材。
【請求項4】
少なくとも基材層と粘着層とを有する表面保護フィルムであって、前記基材層が請求項1〜3のいずれかに記載の表面保護フィルム用基材である表面保護フィルム。
【請求項5】
共押出により製造された請求項4に記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2010−180344(P2010−180344A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25939(P2009−25939)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】