説明

表面保護フィルム

【課題】ポリプロピレンの優れた耐熱性、耐傷つき性および剛性を生かした電子部品用の表面保護フィルムを提供すること。
【解決手段】基材の片面に粘着層を設けてなる表面保護フィルムにおいて、基材がMFR(230℃、2.16kgf)が0.5〜30(g/10min)であり、塩素含有量が5重量ppm以下である、プロピレンの単独重合体、または、プロピレンとエチレンおよび/または炭素原子数4〜12のα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体からなることを特徴とする表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムに関するものであり、更に詳しくは、表面保護フィルム中の塩素イオンの移行による製品不良現象や製品の腐蝕あるいは汚染を防止する表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは機械的強度、剛性、耐熱性、傷つき性(表面硬度)、電気絶縁性および光学特性に優れることから、食品包装用、または産業用のシートもしくはフィルムなどに使用されている。近年薄型表示パネル(液晶デイスプレイ(LCD),エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ,プラズマディスプレイパネル(PDP))や、プリント配線基板等の電子部品材料の表面保護や製造工程での中間製品表面を保護するフィルムの需要が高まっている。このような表面保護フィルムは、ポリエチレンを基材としたタイプが主に使用されているが、耐熱性や耐傷つき性があり、かつ省資源化可能(フィルムの薄肉化)な剛性を持つポリプロピレンが性能を認められ使用され始めている。ところが、ポリプロピレン樹脂中に含まれる塩素イオンによる不良現象が問題となっている。例えば薄型表示パネルに使用されている金属薄膜層を付与した樹脂フィルムを用いた透明電極や電磁波遮断フィルムにポリプロピレン製保護フィルムを使用した場合、塩素イオンの影響により金属薄膜層に点状欠陥が発生するため使用できない。
【特許文献1】特開平2004−296140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は前記の問題を改良した表面保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)基材の片面に粘着層を設けてなる表面保護フィルムにおいて、基材がMFR(230℃、2.16kgf)が0.5〜30(g/10min)であり、塩素含有量が5重量ppm以下であるポリプロピレンからなることを特徴とする表面保護フィルム。
(2)前記ポリプロピレンが、プロピレンの単独重合体、または、プロピレンとエチレンおよび/または炭素原子数4〜12のα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする(1)に記載の表面保護フィルム。
(3)前記基材が前記ポリプロピレンからなる層を含む2層以上の積層体であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面保護フィルム。
【発明の効果】
【0005】
本発明に依れば、ポリプロピレンの優れた機械的強度、剛性、耐熱性、傷つき性(表面硬度)、電気絶縁性および光学特性を生かして電子部品材料等の表面保護フィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、ポリプロピレン組成物、フィルムの視点から詳細に述べる。
ポリプロピレン組成物
本発明のポリプロピレンは、結晶性のポリプロピレン樹脂であり、プロピレンの単独重合体、または、プロピレンとエチレンおよび/または炭素原子数4〜12のα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体である。これら共重合に用いられるコモノマーは、α−オレフィンおよびエチレン単独で、あるいは2種類以上組合わせて用いられる。
【0007】
上記の共重合体のコモノマー含量は、プロピレン・エチレン、プロピレン・α−オレフィン共重合体100モル%に対して0.5〜8.0モル%、好ましくは、0.5〜5.0モル%、さらに好ましくは0.5〜3.0モル%の範囲にある。
【0008】
本発明のポリプロピレンは、MFR(230℃、2.16kgf)は0.5〜30(g/10min)の範囲にあり、好ましくは、1〜10、さらに好ましくは2〜7である。MFRが0.5未満であると、押出特性が好ましくなく、また30を超えるとTダイ製膜が困難であるので好ましくない。
【0009】
本発明のポリプロピレン塩素含有量は5重量ppm以下、好ましくは3重量ppm以下である。塩素含有量が5ppmより多いと塩素イオンによる不良現象が発生するので好ましくない。
【0010】
このような塩素含有量が少ないポリプロピレンは高活性の触媒を用いるか、重合したポリプロピレン樹脂中の触媒を分解、あるいは除去することにより製造することができる。
【0011】
本発明のポリプロピレンには、必要に応じて他の樹脂またはゴム等の他の重合体を本発明の目的を損なわない範囲内で添加してもよい。前記他樹脂またはゴムとして例えばポリエチレン、ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1等のポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン・ブテン−1等のエチレンまたはα−オレフィン・α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体等のエチレンまたはα−オレフィン・α−オレフィン・ジエン単量体共重合体;スチレン・ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体・ジエン単量体ランダム共重合体;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体等のビニル単量体・ジエン単量体・ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン・ブタジエンランダム共重合体)等の水素化(ビニル単量体・ジエン単量体・ビニル単量体ブロック共重合体)等が挙げられる。
【0012】
他の重合体の添加量は、添加する樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前記のように本発明の目的を損なわない範囲であれば良いが、通常ポリプロピレン100重量部に対して約5重量部以下であることが好ましい。
【0013】
本発明のポリプロピレンには、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属石鹸、塩酸吸収剤等の安定剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤や着色剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しても良い。
【0014】
フィルム
本発明の表面保護フィルムに使用される基材フィルムは、本発明のポリプロピレンを用いた基材フィルムからなる層を含んで構成される層を少なくとも1層有する、2層以上の多層積層体として使用することもできる。かかる積層体としては、各層を構成する材料が相互に同じでも、異なっていてもかまわなく、かかる各層を構成する材料としては、本発明に使用されるポリプロピレン以外の公知の各種熱可塑性樹脂が本発明の目的を損なわない範囲で使用できる。各種熱可塑性樹脂としては、各種エチレン系樹脂、各種ポリブテン系樹脂、各種ポリメチルペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系モノマー共重合樹脂、エチレン-アクリル酸系モノマー共重合樹脂、エチレン-メタクリル酸系モノマーとの共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂が挙げられる。
【0015】
本発明の基材フィルムの厚みは特に限定されないが、好ましくは10−300μm、さらに好ましくは、20−100μmである。
【0016】
本発明の基材フィルムを成形するには、公知の各種の方法を採用することができる。例えば、Tダイからフィルム状に製膜する方法、サーキュラーダイからチューブ状に製膜する方法により単層/多層の基材フィルムを得ることができる。また、これらの方法により製膜した基材フィルムをドライラミネート法、押出ラミネート法により多層積層化することもできる。
【0017】
また、上記のような方法で形成されたポリプロピレンフィルムは適宜延伸して使用することができる。
【0018】
上記の基材フィルムは、片面に粘着剤層を有する。この粘着剤は特に限定されず、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体、アタクッティックポリプロピレン、プロピレン-α−オレフィン共重合体、天然ゴム系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤等の表面保護フィルム用途に用いられる各種粘着剤が使用できる。
【0019】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、1−100μmが好ましい。また、必要に応じて軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤等や着色剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しても良い。
【0020】
粘着剤層は、公知の各種の方法により形成される。例えば、塗工機で基材上に粘着剤をコーティングする方法、基材と粘着剤をTダイやサーキュラーダイから多層フィルム状に製膜する共押出法等が挙げられる。
【0021】
このようにして得られたポリプロピレン製表面保護フィルムは、薄型表示パネル等に使用される金属薄膜層や、プリント配線基板等の電子部品材料の表面保護に用いた場合、フィルム中の塩素イオンが少ないので、金属薄膜層に点状欠陥が発生する等の不良現象が少なく、好適である。
【0022】
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。実施例における物性の測定方法は次の通りである。
1)メルトフローレート(MFR)
ASTM D−1238の方法により、温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
2)塩素含有量
ポリプロピレン0.8gを三菱化成社製燃焼装置でアルゴン/酸素気流下で、400〜900℃で燃焼した後、燃焼ガスを超純水で捕集し、濃縮後の試料液を、日本ダイオネック(株)DIONEX−DX300型イオンクロマト測定装置を用いて、陰イオンカラムAS4A−SC(ダイオネックス社製)を用いて測定した。
3)塩素イオンによる不良現象評価(点状欠陥/面抵抗評価)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに銀薄膜を付与した透明導電性膜積層体の透明導電性積層体側に表面保護フィルムを取り付け、温度60℃、湿度90%の恒温槽に500時間保存後に表面保護フィルムを剥がして測定した視感透過率(T)と保存前の視感透過率(T0)の比(T/T0)ならびに保存後の透明導電性積層体の表面抵抗で不良現象を評価した。表面保護フィルムから転移した塩素イオンにより発生する銀凝集による光線透過率の低下が1≧T/T0≧0.8、好ましくは1≧T/T0≧0.9、でかつ表面抵抗が15Ω/□以下であれば、塩素イオンによる不良現象による影響は実用性能上問題ない。
【0023】
本評価に使用した透明導電性膜積層体は、PETフィルム(厚さ75μm)に直流マグネトロンスパッタリング法を用いて、インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層(a)、銀とインジウムとスズの合金薄膜層(b)をPET/a/b/aの構成(75μm/40nm/10nm/40nm)で積層することにより作製した。なお、インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層が透明高屈折率薄膜層となり、銀とインジウムとスズの合金薄膜層が、金属薄膜層を構成する。
【0024】
本評価で測定した視感透過率は、日立製作所製分光光度計(U−3400)を用いて測定した全光線透過率をJIS R−3106に従い求めた。また、表面抵抗は、共和理研製4端針表面抵抗測定装置を用いて測定した。
【実施例1】
【0025】
1)ポリプロピレンの製造
固形状チタン触媒成分(A)の調整
内容積10リットルのガラス製容器に、無水塩化マグネシウム952g、デカン4420mlおよび2−エチルヘキシルアルコール3906gを130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間拡販混合を行って無水フタル酸を溶解させた。
【0026】
このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却し、10時間放置した後、この均一溶液の液面から10cmの位置より上澄みを50ml/分で750ml抜き出した。別の10リットル容器の−20℃の四塩化チタン2000ml中に上記塩化マグネシウムの溶液を1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間撹拌しながら同温度に保持した。次いで熱ろ過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。
【0027】
加熱終了後、再び熱ろ過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。上記のように調製された固体状チタン触媒成分(A)は、ヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分(A)は、チタンを3重量%、塩素を58重量%、マグネシウムを18重量%およびDIBPを21重量%の量で含有していた。
【0028】
重合
内容積5リットルの撹拌機付きオートクレーブに液化プロピレンを1.5kg挿入した。更に前記で得られたMgCl2担持型固体状チタン触媒成分(A)を18mg、トリエチルアルミニウムをAl/Ti(モル比)=70となるよう、ジクロロペンチルジメトキシシランをTiに対して70倍モル量挿入し、温度70℃で2時間重合した。なお、水素は2nl量を仕込んだ。重合後、ポリプロピレンパウダーをイソプロパノールとヘプタンの混合溶媒で洗浄し、パウダーをろ過分別し、加熱乾燥を行った。
【0029】
ペレット化
得られたパウダー100重量部に対して、酸化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを0.2重量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.01重量部配合し、神戸製鋼製30mmφ二軸押出機を用いて、樹脂温度250℃で溶融混練してペレット化を行った。
【0030】
フィルム成形
上記で得られたペレットを基材とし、粘着剤としてエチレン-α-オレフィン共重合体(三井化学(株)タフマーA−2085S)を用いて片面に粘着剤層を付与したフィルム(トータル厚み50μm:基材40μm/粘着剤層10μm)をSHIモダンマシナリー製多層Tダイ成形により樹脂温度240℃、冷却ロール温度20℃,製膜速度20m/minで共押出製膜した。
【実施例2】
【0031】
プロピレン1.5kgの他にエチレンを60g挿入した以外は実施例1と同様に行った。
【0032】
〔比較例1〕
重合後、ポリプロピレンパウダーをイソプロパノールとヘプタンの混合溶媒で洗浄しないこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面に粘着剤層を設けてなる表面保護フィルムにおいて、基材がMFR(230℃、2.16kgf)が0.5〜30(g/10min)であり、塩素含有量が5重量ppm以下であるポリプロピレンからなることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記ポリプロピレンが、プロピレンの単独重合体、または、プロピレンとエチレンおよび/または炭素原子数4〜12のα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記基材が前記ポリプロピレンからなる層を含む2層以上の積層体であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2006−282761(P2006−282761A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102117(P2005−102117)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】