説明

表面処理剤及び該処理剤を塗布してなる表面処理方法

【課題】
木質基材等の基材の保護、美観維持に適し、且つ人体や環境に配慮した表面処理剤及び該処理剤を塗布してなる表面処理方法を提供する。
【解決手段】
生分解性樹脂(a)及びグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)を含む組成物を水中に分散してなり、生分解性樹脂(a)及びグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)の合計量が処理剤の全固形分中60質量%以上であることを特徴とする表面処理剤、基材面に、該表面処理剤を塗布してなる表面処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球環境に配慮し、木質基材等の基材に適した表面処理剤及び該処理剤を塗布してなる表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や土木構造物等における床、壁面、扉、窓枠等や木材加工品等において多く用いられている木質基材は、その表面の保護や美観を目的として各種の表面処理が施されている。近年、こうした木質基材の処理において、地球環境保全への意識の高まりから、植物資源など再生可能原料を利用した塗料が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、天然ヒバ油と植物油を含有してなる木材保護塗料組成物が開示されている。かかる塗料組成物によれば抗菌・防カビ、防虫効果、芳香性を長期間発揮し得る塗膜を形成することができるが、塗装作業時に使用したウエスが自然発火する恐れがあり、さらに、希釈を行なうに際し有機溶剤を使用しなければならないという問題点も有している。
【0004】
このような状況下、水系の材料開発も行われており、例えば特許文献2には、水性アルキド樹脂を基体樹脂成分とする常乾型水性塗料を下塗り塗料として塗装する塗装仕上げ方法が記載されている。かかる塗装仕上げ方法に用いられる水性塗料は一液型であり、木材に非常に馴染みやすく、また、平滑性を有する塗膜を常温で形成することができるものであるが、水性アルキド樹脂による独特の臭気や再生可能原料の使用量が少ないなどの問題点があり、人体や環境により一層配慮した水系の材料による木質基材等の基材に適した表面処理剤の開発が必要である。
【0005】
【特許文献1】特開平10−212457号公報
【特許文献2】特開2004−238524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、木質基材等の基材の保護、美観維持に適し、且つ人体や環境に配慮した表面処理剤及び該処理剤を塗布してなる表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記した課題に鋭意検討した結果、生分解性樹脂およびグリセリン誘導体の脂肪酸エステルを特定量含む組成物を水中に分散してなる分散物が、環境に対して悪影響を与えず、木質基材等の基材面の表面処理剤として適していることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、
1. 生分解性樹脂(a)及びグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)を含む組成物を水中に分散してなり、生分解性樹脂(a)及びグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)の合計量が処理剤の全固形分中60質量%以上であることを特徴とする表面処理剤、
2. 生分解性樹脂(a)が、変性澱粉である1項に記載の表面処理剤、
3. 生分解性樹脂(a)及びグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)の使用割合が、生分解性樹脂(a)/グリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)質量比で99/1〜80/20の範囲内にある1項または2項に記載の表面処理剤、
4. ポリオキシエチレン基を有するアニオン性界面活性剤(c)をさらに含有する1項ないし3項のいずれか1項に記載の表面処理剤、
5. 油脂及び/又は脂肪酸(d)を含有する1項ないし4項のいずれか1項に記載の表面処理剤、
6. 可塑剤(e)をさらに含有する1項ないし5項のいずれか1項に記載の表面処理剤、
7. 平均粒子径が50〜1000nmの範囲内にある1項ないし6項のいずれか1項に記載の表面処理剤、
8. 基材面に、1項ないし7項のいずれか1項に記載の表面処理剤を塗布してなる表面処理方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従う表面処理剤は、環境や人体に対して悪影響を及ぼさない利点を有するものであり、基材に対して浸透しつつ造膜することができるので、塗布することで基材の表層を改質し保護することができるとともに基材の質感をより一層際立たせる効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
生分解性樹脂(a);
本発明において生分解性樹脂(a)は、本発明の表面処理剤(以下処理剤と記する)の被膜形成成分となり得るものであり、従来公知のものを制限なく使用することができる。その具体例としては、澱粉、変性澱粉等の澱粉誘導体;セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテート誘導体;キチン、キトサン等の多糖類;ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリ乳酸類;ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル類;ポリカプロラクトン、カプロラクトンとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリカプロラクトン類;ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリヒドロキシブチレート類;ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ酪酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等の脂肪族ポリエステル類;ポリアミノ酸類;ポリエステルポリカーボネート類;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子;シェラック、ロジン等の天然樹脂;等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0010】
上記生分解性樹脂(A)の重量平均分子量としては、例えば、5,000〜2,000,000、好ましくは10,000〜1,000,000の範囲内が好適である。
【0011】
本明細書において重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムとしては、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製)を挙げることができる。
【0012】
本発明において上記生分解性樹脂(A)として変性澱粉を使用すると木質基材等の基材に対する親和性や造膜性が良好であり、しかも耐水性が良好な処理膜を形成することができるので好適である。
【0013】
上記変性澱粉としては、とうもろこし、米、芋、馬鈴薯、麦等から得られる澱粉に天然油脂等を共重合させたもの、あるいは澱粉を主成分としてラクトース、グルコース等の糖類、糖蜜、カゼイン等の有機物質で修飾されたもの;澱粉又は澱粉分解物に、脂肪族飽和炭化水素基、脂肪族不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などを、エステル結合及び/又はエーテル結合を介して結合させてなる変性澱粉が包含される。
【0014】
ここで、原料の澱粉としては、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、米澱粉などの各種天然澱粉の1種又は2種以上をブレンドしたものが用いられ、また、澱粉分解物としては、該澱粉に、酵素、酸または酸化剤で低分子量化処理を施したものが挙げられる。この中で、重量平均分子量が5,000〜2,000,000、特に10,000〜1,000,000の範囲内にある澱粉または澱粉分解物が処理膜の造膜性、耐久性などの点から好ましい。
【0015】
上記変性澱粉の好ましい変性方法としてはエステル化変性が挙げられ、好ましい変性基としては炭素数2〜18のアシル基が挙げられる。変性は炭素数2〜18の有機酸を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることにより行うことができる。
【0016】
グリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b);
本発明においてグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)は、上記生分解性樹脂(a)を水中に分散させるために用いられるものであり、このものを使用することによって本発明に従う処理剤は木質基材等の基材面に対して浸透性を有することができ、その表層を改質させるとともに処理後の外観として木目等の素材感がより一層際立つ効果を奏することができるものである。
【0017】
本発明において上記グリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)は、グリセリン誘導体の部分脂肪酸エステル化物であり、グリセリン誘導体としては、グリセリン及びグリセリンを重合してなるポリグリセリンを挙げることができる。一方、エステル化に用いられる脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸、エルカ酸等を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
このような脂肪酸エステル(b)の具体例としては、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノミリスチレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレートなどのグリセリンモノ脂肪酸エステル;グリセリンジラウレート、グリセリンジミリスチレート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、グリセリンジベヘネート、グリセリンジオレートなどのグリセリンジ脂肪酸エステル;ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノミリスチレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノオレートなどのジグリセリンモノ脂肪酸エステル;等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明においては上記脂肪酸エステル(b)は、その成分の一部としてポリグリセリンの部分脂肪酸エステルを含むことが処理剤の貯蔵安定性の点から適している。
【0020】
本発明において、上記生分解性樹脂(a)およびグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)は、その合計量が処理剤の固形分中に60質量%以上であることを特徴とする。
【0021】
上記生分解性樹脂(a)およびグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)の合計量が60質量%未満では、木質基材等の基材に塗布された処理膜の仕上がり性、処理膜の耐水性などの基材に対する保護機能が損なわれるので好ましくない。
【0022】
上記生分解性樹脂(a)およびグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)の合計量としては、処理剤固形分中に75〜90質量%の範囲内にあることがより好ましい。
【0023】
また、上記生分解性樹脂(a)およびグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)の使用割合としては、処理剤の貯蔵安定性、木質基材等の基材に対する浸透性、塗布後の素材感が際立つなどの点から、生分解性樹脂(a)/グリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)質量比で99/1〜80/20、好ましくは98/2〜90/10の範囲内にあることが適している。
【0024】
ポリオキシエチレン基を有するアニオン性界面活性剤(c);
本発明において上記処理剤は、上記生分解性樹脂(a)の分散性を向上させることを目的としてポリオキシエチレン基を有するアニオン性界面活性剤(c)をさらに含ませることができる。
【0025】
かかるポリオキシエチレン基を有するアニオン性界面活性剤(c)としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等を挙げることができ、これらは単独でもしくは2種以上選択して使用できる。
【0026】
このようなアニオン性界面活性剤と塩を形成する対イオンとしては、カリウム、ナトリウム、アンモニウムなどの無機イオン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類が好ましい。
【0027】
上記ポリオキシエチレン基を有するアニオン性界面活性剤(c)の含有量としては、生分解性樹脂(a)の質量を基準として、0.01〜15質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲内にあることが生分解性樹脂(a)の水分散安定性と塗布後の処理膜の耐水性の点から適している。
【0028】
油脂及び/又は脂肪酸(d);
また、上記処理剤は、処理膜の乾燥性を向上させることを目的として油脂及び/又は脂肪酸(d)をさらに含ませることができる。かかる油脂の具体例としては、例えば、大豆油、サフラワー油、アマニ油、トール油、やし油、パーム核油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、魚油、桐油などを挙げることができる。油脂としては、中でもヨウ素価が100以上の乾性油又は半乾性油が好ましく、特に大豆油、サフラワー油、アマニ油などが好適である。また、脂肪酸としては、例えば、大豆油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、トール油脂肪酸、やし油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、魚油脂肪酸、桐油脂肪酸などを挙げることができる。脂肪酸としては、中でもヨウ素価が100以上の乾性油脂肪酸又は半乾性油脂肪酸が好ましく、特に大豆油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸などが好適である。
【0029】
これら油脂及び/又は脂肪酸(d)の含有量としては、生分解性樹脂(a)の質量を基準として、0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%の範囲内にあることが処理膜の乾燥性の点から好適である。
【0030】
これら油脂及び/又は脂肪酸(d)を使用する際、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸カルシウムなどの金属ドライヤーを併用することにより処理膜の乾燥性をさらに向上させることができる。かかる金属ドライヤーの配合量としては油脂及び/又は脂肪酸(d)の質量を基準として0.1〜7質量%、特に0.5〜5質量%の範囲内が適している。
【0031】
可塑剤(e);
本発明において上記処理剤は、造膜性を向上させることを目的として可塑剤(e)をさらに含ませることができる。かかる可塑剤(e)の具体例としては、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸誘導体;ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート等のエーテルエステル誘導体;グリセリントリアセテート、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等のグリセリン誘導体;アジピン酸と1、4−ブタンジオールとの縮合体等のアジピン酸誘導体;ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン等のポリヒドロキシカルボン酸等を挙げることができ、これらは単独でもしくは2種以上選択して使用できる。
【0032】
上記可塑剤(e)を配合する場合その配合量としては、生分解性樹脂(a)の質量を基準として、1〜30質量%、特に3〜20質量%の範囲内に調整されることが望ましい。
【0033】
表面処理剤;
本発明の上記処理剤には必要に応じて防虫剤を配合してもよい。かかる防虫剤としては、従来公知のものを制限なく使用できるが、具体的には、フェニトロチオン、ダイアジノン、ジクロルボス、フェンチオン、トリクロルホン、プロペタンホス、プロチオホス、ピリダフェンチオン、ホキシム等の有機リン系殺虫剤、フェノブカルブ、カルバリル、メソミル等のカーバメート系殺虫剤、フェノトリン、ペルメトリン 、アレスリン、フタルスリン、プラレトリン、ビフェントリン、イミプロトリン、シフェノトリン、エトフェンプロクス等のピレスロイド系殺虫剤;イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、チアメトキサム等のネオニコチノイド系、天然ピレトリン、フィプロニルおよびクロロフェナピル等が挙げられ、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
上記防虫剤の使用量としては、生分解性樹脂(a)の質量を基準として、0.1〜5質量%、特に0.1〜3質量%の範囲内であることができる。
【0035】
また、上記処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、有機樹脂、有機溶剤、顔料、顔料分散剤、艶消し剤、表面調整剤、沈降防止剤、帯電防止剤、架橋剤、抗菌剤、香料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、硬化触媒、消泡剤、増粘剤、造膜助剤、防腐剤、防カビ剤、防藻剤、凍結防止剤、pH調整剤等の添加剤を適宣選択し組み合わせて含有することができる。
【0036】
上記処理剤の固形分濃度としては、塗布作業性、処理剤の貯蔵安定性などの点から5〜50%、特に5〜40%の範囲内に調整されることが望ましい。
【0037】
本明細書において、固形分濃度は、試料約2gをブリキ皿に秤量し、105℃、3時間乾燥させたのちの残存物質量の乾燥前質量に対する割合を質量百分率で表したものである。
【0038】
上記本発明の処理剤は、例えば、攪拌装置を有する密閉容器内に、生分解性樹脂(a)、グリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)及び水を同時に仕込み、加熱攪拌しながら加圧して製造する方法;常圧又は加圧下に保持されている熱水中に、生分解性樹脂(a)及びグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)を含む溶融物を添加攪拌して製造する方法;生分解性樹脂(a)の有機溶媒溶液及びグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)を含む溶液中に水を攪拌しながら徐々に添加し、分散させた後、有機溶媒を除去して製造する方法;生分解性樹脂(a)を加熱溶融させ、これにグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)を含む水溶液を攪拌添加して水に分散させ、製造する方法等により得ることができる。製造に当たっては必要に応じて高圧乳化装置等の分散装置を併用しても良い。
【0039】
また、上記処理剤の平均粒子径は、50〜1000nm、特に50〜500nmの範囲内であることが、処理剤の貯蔵安定性と処理剤の木質基材等の基材に対する浸透性の点から適している。
【0040】
本明細書において平均粒子径は、ベックマン・コールター社製のサブミクロン粒子アナライザーを用いて光散乱法により測定した値とする。
【0041】
本発明の表面処理方法は、基材に対して上記の通り得られる処理剤を塗布するものである。
【0042】
本発明の表面処理方法に適用される基材としては特に制限されるものではないが浸透性基材、特に木質基材が適している。
【0043】
かかる木質基材としては、建築物内部の壁面、扉、窓枠、天井、梁、柱等や木工製品等に使用される木質基材を挙げることができ、例えば、ブナ、ヒノキ、すぎ、なら、チーク、ラワン等の木質素材;これら木質素材を原料とする積層材、普通合板、木質繊維板、パーティクルボード等を挙げることができる。
【0044】
塗布手段としては、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテ、ロールコーターなど用途等に応じて適宜選択することができる。
【0045】
塗布量としては、塗装する基材の種類などに応じて変えることができるが、1回あたり通常50〜500g/m、好ましくは80〜200g/mの範囲内とすることができる。また、塗膜外観を損なわない範囲で複数回塗り重ねてもよい。
【0046】
形成される処理膜の乾燥は、常温乾燥することができるが、必要に応じて加熱乾燥、強制乾燥を行ってもよい。
【0047】
上記本発明の表面処理方法によれば、木質基材等の基材の素材感を生かした外観とすることができるが、必要に応じて処理剤を塗装した後、上塗り塗装をしても差し支えない。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0049】
表面処理剤の製造
実施例1
2Lの内面コート缶に下記成分を入れ、ディスパーにて均一になるまで攪拌した。その後、ディスパーの回転数を2000rpmに固定しながら、徐々に脱イオン水500部を加え、転相乳化させた後、トルエンを減圧除去し、表面処理剤(A−1)を得た。該表面処理剤(A−1)の平均粒子径は、430nmであった。
20%変性澱粉(注1) 500部
「ポエムDL−100」(注2) 5部
(注1)20%変性澱粉:「コーンポールCP−5」(商品名、日本コーンスターチ社製、エステル化澱粉)100部にトルエン400部を加え、ディスパーにて均一になるまで攪拌することにより製造した。
(注2)「ポエムDL−100」:商品名、理研ビタミン社製、ジグリセリンモノラウレート。
【0050】
実施例2〜5及び比較例1〜2
製造例1において配合組成を表1に示すように変更する以外は製造例1と同様にして表面処理剤(A−2)〜(A−5)及び(A−7)〜(A−8)を得た。
【0051】
【表1】

【0052】
(注3)「ポエムO−80」:商品名、理研ビタミン社製、ソルビタン脂肪酸エステル、
(注4)「エマール20T」:商品名、花王社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、有効成分40%。
【0053】
実施例6
2Lの内面コート缶に20%変性澱粉(注1)500部、「ポエムDL−100」(注2)5部、「エマール20T」(注4)10部、アマニ油5部、アセチルクエン酸トリブチル10部、ペルメトリン1部を入れ、ディスパーにて均一になるまで攪拌した。その後、ディスパーの回転数を2000rpmに固定しながら、徐々に脱イオン水500部を加え、転相乳化させた後、高圧エネルギーを加えて流体同士を衝突させる高圧乳化装置による処理を行った。その後、トルエンを減圧除去し、表面処理剤(A−6)を得た。該表面処理剤(A−6)の平均粒子径は、210nmであった。
(*1)貯蔵安定性
表1に示した表面処理剤(A−1)〜(A−8)を容量が1Lの内面コート缶に500部入れ、40℃の恒温室中で14日間貯蔵した。その後、室温に戻し、容器の中の状態を目視にて観察し、次の基準で評価した。
○:分離が認められない、
△:ソフトケーキングや分離が認められるが、攪拌により均一となる、
×:ハードケーキングや分離が認められ、攪拌により均一にならない。
【0054】
実施例7〜12及び比較例3〜4
実施例1〜6および比較例1〜2で製造した表面処理剤(A−1)〜(A−8)に対して表2に示す各成分を順次仕込み、ディスパーで均一になるまで攪拌することにより塗布用表面処理剤(B−1)〜(B−8)を調整した。該表面処理剤(B−1)〜(B−8)について下記の基準にて評価を行った。結果を表2に併せて示す。
【0055】
【表2】

【0056】
(注5)「スラオフ72N」:商品名、武田薬品工業社製、防腐剤、
(注6)「SNデフォーマー380」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤、
(注7)「DICNATE 3111」:商品名、大日本インキ化学工業社製、ドライヤー、Co含有率3%。
【0057】
評価試験
(*2)仕上がり性
ラワン材に各処理剤(B−1)〜(B−8)を刷毛にて処理剤としての塗布量が150g/mになるように塗装し、気温20℃、相対湿度60%の条件下で24時間乾燥させて各試験塗板を得た。その後、仕上がり性を目視にて評価した。
○:吸い込みムラがなく良好、
△:吸い込みムラが認められる、
×:ワレやヒビなどの塗膜欠陥が認められる。
(*3)乾燥性
上記(*2)と同様にして得た各試験塗板の指触乾燥性を次の基準で評価した。
◎:全く指紋がつかない、
○:指紋がつくが、しばらくすると元に戻る、
△:指紋がついて元に戻らない、
×:塗膜が指に付着する。
(*4)浸透性
表2に示す各処理剤(B−1)〜(B−8)にフタロシアニンブルーを1%添加した後、ラワン材に各処理剤(B−1)〜(B−8)を刷毛にて処理剤としての塗布量が150g/mになるように塗装し、気温20℃、相対湿度60%の条件下で24時間乾燥させて各試験塗板を得た。その後、試験塗板を切断し、断面を目視にて評価した。
◎:表面から7mm以上の深さまで青色の着色が認められる、
○:表面から4以上で且つ7mm未満の深さまで青色の着色が認められる、
△:表面から1以上で且つ4mm未満の深さまで青色の着色が認められる、
×:表面から0以上で且つ1mm未満の深さまで青色の着色が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂(a)及びグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)を含む組成物を水中に分散してなり、生分解性樹脂(a)及びグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)の合計量が処理剤の全固形分中60質量%以上であることを特徴とする表面処理剤。
【請求項2】
生分解性樹脂(a)が、変性澱粉である請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
生分解性樹脂(a)及びグリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)の使用割合が、生分解性樹脂(a)/グリセリン誘導体の脂肪酸エステル(b)質量比で99/1〜80/20の範囲内にある請求項1または2に記載の表面処理剤。
【請求項4】
ポリオキシエチレン基を有するアニオン性界面活性剤(c)をさらに含有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項5】
油脂及び/又は脂肪酸(d)を含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項6】
可塑剤(e)をさらに含有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項7】
平均粒子径が50〜1000nmの範囲内にある請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項8】
基材面に、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の表面処理剤を塗布してなる表面処理方法。

【公開番号】特開2008−239772(P2008−239772A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81516(P2007−81516)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】