説明

表面処理方法及び装置、圧電素子の製造方法、インクジェット用プリントヘッドの製造方法、液晶パネルの製造方法、並びにマイクロサンプリング方法

【課題】 非常に制限された微小な部分や領域、外部から容易に接近し得ない隙間・管路等の狭小な内部構造を簡単にかつ良好に表面処理する。
【解決手段】 大気圧近傍の圧力下で誘電体材料からなる被処理物1の内部に所定の放電ガスを流しつつ、該被処理物の外部に配置した電極2を通電して被処理物内部で気体放電を生じさせ、それにより生成される放電ガスの励起活性種に被処理物内部の表面を曝露させる。また、放電ガスの供給源7に接続される基端部6と被処理物9に向けて開口する先端のノズル部8との間に狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料の放電管1と、電極2とを備える表面処理装置において、電極を通電することにより放電管内部に大気圧又はその近傍の圧力下で気体放電を生じさせ、放電管先端部から噴出するガス流を被処理物表面の狭い領域10に当てる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被処理材の表面をエッチング、アッシング、改質又は薄膜を形成する表面処理技術に関し、特に大気圧又はその近傍の圧力下でプラズマに生成される励起活性種を用いて表面処理するための方法及び装置に関する。また、本発明は、大気圧付近の圧力下でのプラズマによる表面処理技術を利用して、例えば水晶のような圧電性結晶や圧電セラミック材料で形成された圧電振動子、SAW(表面弾性波)デバイス等の圧電素子を製造する方法、インクジェット用プリンタヘッドを製造する方法、及び液晶パネルを製造する方法に関する。更に本発明は、様々な材料の表面に付着又は没入した異物を採取するためのマイクロサンプリング技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、プラズマ放電により生成される励起活性種を利用して被処理材の表面を様々に処理するための技術が知られている。従来の真空中又は減圧された環境下でプラズマを作るように放電させる表面処理方法は、真空チャンバ等の特別な装置・設備が必要で製造コストが高くなるという問題があった。そこで、最近では、例えば特開平6−2149号公報に記載されるように、大気圧付近の圧力下でプラズマ放電させることにより、真空設備を必要とせず、低コストで装置を簡単かつ小型化することができる表面処理技術が提案されている。
【0003】この大気圧下でのプラズマによる表面処理には、電極と被処理材との間で直接気体放電を生じさせる直接方式と、電源電極と接地電極間での放電により励起活性種を生成しかつこれを含むガス流を被処理材表面に噴出させる間接方式とがある。直接方式は、高い処理レートが得られる反面、チャージアップにより被処理材を損傷したり、被処理材の形状が複雑であったり凹凸がある場合又は処理範囲を制限したい場合に十分に対応できない虞がある。他方、間接方式は、直接方式に比して処理レートが低いので高出力を要求される場合があるが、チャージアップによる被処理材の損傷の虞が無く、しかもガス流を噴出させるノズルの形状を変えたりガスの流量を調整することによって、被処理材の形状や処理範囲の制限に対応した局所的な表面処理が可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来より一般に、被処理材の表面をエッチング、アッシング等により洗浄する場合、有機溶媒やエッチング液を用いたウェット処理が行われている。しかしながら、このような処理液では、制限された狭い領域や部分だけを処理したい場合や周囲に処理したくない部分がある場合には、事前にレジスト材等で周囲をマスク処理する必要があり、工程が面倒で手間を要し、生産性を低下させるという問題がある。また、外部から容易に接近し得ないような狭い隙間、管路や凹部等の内部を処理したい場合には、処理液が入り難く、また気泡が入った場合には抜け難いため、十分に処理できないという問題があった。
【0005】また、上述した真空中でのプラズマ処理の場合には、放電が広範囲に広がるために、制限された狭い領域・部分だけを処理しようとすればウエット処理と同様にマスク処理が必要であり、非常に狭い空間内では放電が発生しないため、所望の表面処理ができないという問題がある。
【0006】ところが、大気圧プラズマを用いた従来の表面処理装置は、概して被処理材表面の比較的広い面積を効率よく表面処理することを前提としている。このため、極めて狭い領域又は部分だけを処理したい場合にその部分だけを選択して局所的に処理することには限界があった。間接方式の場合でも、大気圧近傍の圧力下で放電ガス中に活性なプラズマを作り、その励起活性種を高密度にして被処理材の極めて狭い部分に選択的に当てることは非常に困難であった。また、外部から容易に接近し得ない狭い隙間や管路等の内部を表面処理したい場合に、その中に電源電極を配置して直接気体放電させたり、高密度の励起活性種を含むガス流を外部から送り込むことは極めて困難である。
【0007】そこで、本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、大気圧付近の圧力下で発生させたプラズマの励起活性種を用いて、非常に制限された微小な部分や領域又は外部から容易に接近し得ない隙間・管路等の狭小な内部構造を簡単にかつ良好に表面処理することができる新規な構成の表面処理方法及び装置を提供することにある。
【0008】また、本発明の別の目的は、大気圧付近の圧力下で発生させたプラズマの励起活性種による表面処理を利用して、圧電振動子、SAWデバイス等の圧電素子を製造する方法、インクジェット用プリントヘッドを製造する方法、液晶パネルの製造方法、又は試料から異物を採取するマイクロサンプリング方法を改善することにある。
【0009】より具体的に言えば、圧電体からなる素子片を、その表面に形成した電極のランドにプラグのリード端子をはんだ付けし、ケース内を真空封止して製造される圧電素子の場合、前記電極を腐食させないためにフラックスを使用せずに、熱風を用いたリフロー法等によるはんだ付けが一般的である。しかしながら、はんだ付け面は非常に小さく、また環境空気等により容易に酸化されるため、はんだ付け不良を生じ易く、歩留まりを低下させるという問題がある。
【0010】また、圧電体の表面に櫛形電極を形成したSAW(表面弾性波)片を備えるSAWデバイスの場合、通常SAW片をベース内にマウントした後に周波数調整が行われる。周波数調整は、Al等で形成される前記電極を直接エッチングする方法と、圧電体をエッチングして削り取る方法とが一般的である。微細なAl電極をエッチングする場合には、塩素系のガスを用いたドライエッチングが適当であるが、塩素系のガスはその取扱いや安全上の問題がある。そこで従来は、圧電体のエッチング処理を真空中で行っていたが、装置が高価で大型化し、作業が複雑かつ面倒で生産性が低く、コストを要するという問題があった。
【0011】更に、液晶パネルの製造過程では、液晶材料が、2枚のガラス基板をシールド材で一体的に貼り合わせてセル容器を形成した後、その内部の狭ギャップ内に注入されるので、その中に気泡が入り易いという問題がある。従来は、両ガラス基板の表面をそれらを重ね合わせる前に洗浄していたため、接着時に生じるセル容器内の汚れを十分に洗浄できなかった。そこで、セル容器の形成後にその内面を処理して、液晶材料に対するぬれ性を促進できれば、好都合である。しかしながら、前記ギャップは、4、5μmから10数μm程度であるから、エッチング液などを用いたウェット処理は実質的に不可能である。また、真空中でのプラズマを用いたドライエッチングの場合、前記ギャップが狭すぎるために、セル容器内部では放電が生じない。更に、セル容器内のガラス基板表面には、ラビング処理した配向膜が形成されているので、その配向を壊さないように表面処理する必要がある。
【0012】また、特にインク供給口からノズル開口に通じるインク流路を内設した構造のインクジェット用プリントヘッドの場合、インク流路のインクに対するぬれ性が低いと、インク注入時にインク流路内に気泡が入る虞があり、そのために、インクが十分に噴射されず、印刷が不鮮明になったりドット抜け等の印刷不良を生じるという問題がある。この場合にも、インク流路が非常に狭いために、エッチング液などを用いたウェット処理は不可能であり、かつ真空中でのプラズマによる表面処理は、インク流路内で放電が発生しにくいため、有効な処理は期待できない。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の表面処理方法は、上述した目的を達成するためのものであり、大気圧又はその近傍の圧力下で誘電体材料からなる被処理物の内部に所定の放電ガスを流しながら、該被処理物の外部に配置した電極を通電して被処理物内部で気体放電を生じさせ、この気体放電により生成される放電ガスの励起活性種に被処理物内部の表面を曝露させることを特徴とする。
【0014】本発明の方法によれば、このように被処理物の内部が外部から容易に接近できない隙間や管路等の狭小な空間であっても、被処理物内部をガス流路として外部から放電ガスを流すことによって、被処理物内部に気体放電を発生させかつこれを良好な状態に維持できるから、被処理物内部に生成される放電ガスの励起活性種によって直接に表面処理することができる。実際、被処理物内部は、その寸法が長さをa、狭い方の幅をbとして、b≦1mm、b/a≦1/10の関係にあるような狭小な空間であっても、放電ガスを流通させかつ気体放電を発生させることができ、それによって良好に表面処理することができる。ここで、狭い方の幅bとは、被処理物内部が断面円形の場合にはその内径であり、楕円形であればその短径であり、細長いスリット状であれば短辺方向の幅を指すものとする。
【0015】本発明の表面処理方法を利用して、インク供給口からノズル開口に通じるインク流路を内設したインクジェット用プリントヘッドを製造する場合、インク供給口からノズル開口に向けて放電ガスを流しながら、プリントヘッドの外側に配置した電極を通電してインク流路内で気体放電を生じさせ、それにより生成される放電ガスの励起活性種にインク流路内面を曝露させる。前記放電ガスとしてヘリウムを含むガスを選択すると好都合である。これにより、インク流路の内面は、ヘリウムの励起活性種に曝露されて洗浄され、かつぬれ性が向上し、インクが流れ易くなるので、使用時に印字不良等の虞が無く、より鮮明な印刷を可能にすることができる。
【0016】また、本発明の表面処理方法を利用して液晶パネルを製造する場合には、配向膜を形成した2枚のガラス基板を、それらの間に一定の狭ギャップを有するようにシールド材で一体的に接着してセル容器を形成した後、その中に液晶材料を封入する前に、セル容器内にその液晶注入口から所定の放電ガスを流しながら、セル容器に沿って配置した電極を通電してセル容器内に気体放電を生じさせ、それにより生成される放電ガスの励起活性種にセル容器内部の表面を曝露させる。本発明によれば、前記放電ガスがヘリウムを含むと好都合である。これにより、セル容器内面を洗浄しかつそのぬれ性を向上させることができるので、比較的粘性の高い液晶材料であっても円滑にかつ確実に注入することができる。
【0017】本発明の表面処理装置は、狭小な断面の内部空間を有する誘電体材料からなる被処理物について、該被処理物内部を流れるように放電ガスを供給するための手段と、該被処理物に沿って配置され、その内部において大気圧又はその近傍の圧力下で放電ガスに気体放電させるための電極とを有することを特徴とする。ガス供給手段から送給される放電ガスが被処理物の内部を流れる際に電極を通電することによって、気体放電が被処理物の内部空間で放電ガスの流れに沿って発生する。被処理物内部の表面は、この放電により生成される放電ガスの励起活性種に直接曝露されるので、所望の表面処理を良好にかつ簡単に行うことができる。
【0018】また、本発明の表面処理装置は、放電ガスの供給源に接続される基端部と被処理物に向けて開口する先端部との間に、狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管と、放電管を挟んで対向するように配置される電源電極及び接地電極とを有し、該電源電極を通電することにより両電極間で放電管内部に大気圧又はその近傍の圧力下で放電ガスに気体放電を生じさせるようにしたことを特徴とする。
【0019】このように構成することによって、気体放電が放電管内で放電ガスの流れに沿って発生し、生成された放電ガスの励起活性種は、ガス流路の狭小な断面に対応した非常に細いガス流として放電管の先端部から噴射されるので、被処理物表面の非常に狭い部分や領域を限定的に処理したり、狭い凹所の内部を十分に処理することができる。
【0020】本発明によれば、放電管は、ガス流路の長さa及びその狭い方の幅bが、b≦1mm、b/a≦1/10の関係にあると、狭小なガス流路内で放電を発生させることができる。例えば、放電管は、その長さa及び内径bが前記関係にある細長いガラス等の円管で形成することができ、それによって被処理物の表面をスポット状に処理することができる。円管は複数本であっても良く、これらを平行に又はそれぞれ所定の向きに配置することによって、多数の部分を同時にスポット処理することができる。また、別の実施例では、その長さa及び狭い方の幅bが前記関係にあるスリット状断面のガス流路を有する放電管を使用することができ、被処理物の表面を非常に細い直線状に処理することができる。
【0021】また、本発明によれば、放電ガスの供給源に接続される基端部と被処理物に向けて開口する先端部との間にガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管と、該放電管に沿って配置された電源電極と、放電管及び被処理物を収容しかつ接地された導電材料からなるケーシングとを有することを特徴とする表面処理装置が提供される。電源電極は、放電管の周囲に巻回したコイルで構成することができる。
【0022】このようにケーシング自体を接地電極とすることによって、電源電極とケーシングとの間に放射方向に電界が形成されるから、放電管の内部には、ガス流路に沿って気体放電が発生する。特に放電管を細長い円管やスリット状の狭いガス流路を有するように構成した場合には、放電を良好に発生させかつ維持することができる。放電管は、その寸法が長さをa、狭い方の幅をbとして、b≦1mm、b/a≦1/10の関係にあるような狭小なガス流路でも、放電を発生させ、極めて狭い部分をスポット状又は直線状に処理できるので好都合である。
【0023】更に本発明によれば、放電ガスの供給源に接続される基端部と被処理物に向けて開口する先端部との間にガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管と、放電管に沿ってガス流路の上流側及び下流側にそれぞれ配置された電源電極及び接地電極とを有し、電源電極を通電することにより放電管内で大気圧又はその近傍の圧力下で放電ガスに気体放電を生じさせることを特徴とする表面処理装置が提供される。電源電極又は接地電極の少くともいずれか一方は、放電管の周囲に巻回したコイルで構成することができる。
【0024】気体放電は、放電管内の放電ガスの流れに沿って概ね電源電極と接地電極との間で発生し、これにより生成される放電ガスの励起活性種は、ガス流路の狭小な断面に対応した非常に細いガス流として放電管の先端部から被処理物表面に噴射される。従って、被処理物表面の非常に狭い部分や領域を限定的に処理し、又は狭い凹所の内部を十分に処理することができる。この場合、放電管は、ガス流路の長さa及び狭い方の幅bが、b≦1mm、b/a≦1/10の関係にあると、狭小なガス流路内で放電を発生させ、極めて狭い部分をスポット状又は直線状に処理できるので好都合である。
【0025】また、本発明の別の側面によれば、圧電体からなる素子片の表面に形成した電極にプラグのリード端子をはんだ付けし、該プラグに真空ケースを装着して圧電素子を製造する方法であって、前記はんだ付けの前に、狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管内に、その基端部から先端部のノズル開口に向けて放電ガスを流しながら、放電管に沿って配置された電極を通電することにより、放電管内に大気圧又はその近傍の圧力下で気体放電を生じさせ、それにより生成される放電ガスの励起活性種を含むガス流をノズル開口から、少なくとも素子片の電極の接合面又はプラグ端子の表面のいずれか一方に噴射して表面処理する過程を含むことを特徴とする新規な圧電素子の製造方法が提供される。
【0026】上述したように、放電管内には、放電ガスの流れに沿って気体放電が良好に発生し、ガス流路の断面に対応した細いガス流が、放電管先端部のノズル開口から噴射されるので、素子片の電極の接合面又はプラグ端子表面だけを放電ガスの励起活性種に曝露することができる。従って、素子片の圧電体材料や接合面以外の電極部分に励起活性種が作用してその周波数に影響を及ぼすことなく、はんだ付けする部分だけを効果的に表面処理して、ぬれ性の向上を図ることができ、両者をより少ないはんだ量で良好に接続することができる。
【0027】更に本発明によれば、圧電体の表面に電極を形成したSAW(表面弾性波)片をパッケージ内に搭載し、該電極をパッケージの端子と電気的に接続し、パッケージを真空封止することにより圧電素子を製造する方法であって、狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管内に、その基端部から先端部のノズル開口に向けてフッ素化合物を含む放電ガスを流しながら、該放電管に沿って配置された電極を通電することにより、放電管内に大気圧又はその近傍の圧力下で気体放電を生じさせ、それにより生成される放電ガスの励起活性種を含むガス流を放電管先端部のノズル開口から、圧電体の電極形成面に露出する圧電材料の部分に噴射してエッチング処理することにより、SAW片の周波数を調整する過程を含むことを特徴とする圧電素子の製造方法が提供される。
【0028】この場合にも、上述したように放電管内に放電ガスの流れに沿って気体放電が良好に発生し、ガス流路の断面に対応した細いガス流が放電管先端部のノズル開口から噴射されるので、SAW片の周波数をモニタしつつ、その圧電体部分を僅かな量ずつ制御しながら削ることができるので、より精密に周波数調整を行うことができる。特に圧電体が水晶からなる場合には、フッ素化合物を含む放電ガスを用いることにより、容易にエッチングを行うことができる。これにより、より精度の高い圧電素子を大気圧下でのエッチング処理でより簡単かつ低コストで製造することができる。
【0029】このエッチング処理は、SAW片をパッケージに実装し、その電極をパッケージ端子と電気的に接続した後に行うことができる。また、SAW片をパッケージに実装する前にエッチングを行うこともできる。この場合、電極を形成した圧電体のウエハをダイシングした後、切り出したSAW片の電極をパッケージ端子と接続する前に個々のチップについて、又は電極を形成した圧電体ウエハをダイシングして個々のチップに切り出す前にウエハの状態で、エッチングすることができる。
【0030】本発明によれば、ノズル部材と振動板との間に仕切部材によって画定される複数のキャビティ内に注入されるインクを選択的に噴射する型式のインクジェット用プリントヘッドを製造する方法であって、仕切部材を振動板に接着した後に、狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管内に、その基端部から先端部の開口に向けて所定の放電ガスを流しながら、放電管に沿って配置された電極を通電することにより、放電管内に大気圧又はその近傍の圧力下で気体放電を生じさせ、それにより生成される放電ガスの励起活性種を含むガス流を放電管先端部の開口から振動板と仕切部材との接着部付近に噴射して、アッシング処理する過程を含むことを特徴とするインクジェット用プリントヘッドの製造方法が提供される。
【0031】インクジェット用プリントヘッドの場合、振動板や仕切部材の表面に接着剤が残存していると、キャビティ内に注入されたインクに気泡が生じ易く、そのために印刷不良を生じたり、残存する接着剤がインク中に溶解してその組成を変化させ、ノズル開口付近に付着してインクの噴射を妨げ、印刷不良を生じる虞があった。しかしながら、隣接する仕切部材の間に画定されるキャビティは非常に狭いため、従来のウェット処理やプラズマ処理では、振動板と仕切部材との接着部付近からはみ出した余分な接着剤を容易に除去することができなかった。そこで、上述したように放電ガスの励起活性種を含む非常に細いガス流を噴射することによって、振動板や仕切部材に付着する余分な接着剤をアッシングして容易に除去することができるので、印刷不良を生じる虞のないプリントヘッドをより簡単に製造することができる。
【0032】更に本発明によれば、試料の表面から微小な異物をプローブの先端に係着して採取するマイクロサンプリング方法であって、プローブ先端を異物に接近させる前に、狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管内に、その基端部から先端部の開口に向けて所定の放電ガスを流しながら、該放電管に沿って配置された電極を通電して、放電管内に大気圧又はその近傍の圧力下で気体放電を生じさせ、それにより生成される放電ガスの励起活性種を含むガス流を放電管先端部の開口から試料表面に噴射することにより、異物の周囲から試料を部分的に除去する過程を含むことを特徴とするマイクロサンプリング方法が提供される。
【0033】試料の表面に異物が部分的に又は完全に没入している場合、従来のマイクロサンプリング方法では、プローブ先端を異物に接近させることが困難であった。この方法によれば、試料又は異物の性質に応じて放電ガスを適当に選択することによって、その励起活性種を含むガス流を必要な部分にのみ噴射することができるから、試料の他の部分や異物に影響を与えることなく、異物の周囲から試料を部分的にエッチング又はアッシングすることができ、プローブ先端を接近させるのに必要な空間を確保することができ、異物の採取をより簡単にかつ確実に行うことができる。
【0034】
【発明の実施の形態】以下に添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施例について詳細に説明する。図1及び図2R>2は、本発明による第1の構成を有する表面処理装置の第1実施例を概略的に示している。この表面処理装置は、内部に狭小な断面のガス流路を画定する例えばガラスのような誘電体材料の細長い円管からなる放電管1と、該放電管を挟んで対向配置された1対の平板状の電源電極2及び接地電極3とを有する。電源電極2は、高圧トランス4を介して高周波電源5に接続されている。放電管1は、その基端部6がガス供給源7に接続され、かつその先端には、ノズル部8が被処理物9に向けて開口している。
【0035】被処理物9の狭小な領域10を表面処理したい場合、その表面処理に対応した所定の放電ガスをガス供給源7から放電管1内に導入し、ノズル部8から噴出させつつ、電源5から電源電極2に所定の電圧を印加する。放電管1内部には、図2に示すように前記両電極に挟まれた領域11で気体放電が生じる。放電領域11では、プラズマによる前記放電ガスの解離、電離、励起等によって該放電ガスの励起種、イオン等の活性種が生成される。これら励起活性種は、ノズル部8から細いガス流として領域10に向けて噴射され、所望の表面処理を行う。
【0036】放電管1には、その長さをa1、内径をb1とした場合に、1μm≦b1≦1mm、b1/a1≦1/10の関係を有するような極細の毛細管を使用することができる。例えば、放電ガスとしてヘリウム、アルゴン等の希ガスや、酸素、窒素、又はCF4 等のフッ素化合物を基端部において1kgf/cm2 程度の圧力で供給し、電源として20kHzの高周波電源を使用したところ、何れの場合にも放電管内には安定した良好な放電状態が維持された。また、電源に13.56MHzを使用した場合には、放電ガスにヘリウム等の希ガスと酸素、窒素又はCF4等のフッ素化合物との混合ガスを用いることによって、同様に良好な放電状態が得られた。処理レートは、電源周波数を13.56MHzとした方が高いことが確認された。
【0037】一般に、放電ガスが希ガス単体の場合にはぬれ性の向上、酸素を含むガスの場合にはアッシング、CF4 等を含むガスであればエッチングを目的とする表面処理がなされる。本発明によれば、放電管1の内径b1に対応した細いガス流によって、被処理物の領域10だけを、その周囲の部分に実質的に影響を与えることなく良好に表面処理することができた。更に本発明によれば、プラスチック成形用型のように、被処理物9の表面に狭い溝や穴が形成されている場合に、その中に放電管1のノズル部8を挿入してガス流を直接噴射することにより、その内面をより効果的に表面処理することができる。
【0038】また、放電管1内部に付着した汚れは、ガス流路が非常に狭いために、従来の洗浄液等を用いたウエット処理では十分に洗浄されない。しかし、本発明によれば、エッチング、アッシング等の洗浄処理を行うための放電ガスを適当に選択して放電管1内部で放電させることによって、そのプラズマ活性種により容易に自己洗浄できることが確認された。従って、被処理物に対する表面処理の終了後に又はその合間に定期的に適宜ガス種を変えて放電させることによって、常に放電管内部を清浄に維持し、ガス流路を確保して放電状態を安定させ、表面処理を良好に行うことができる。
【0039】図3は、前記第1の構成を有する表面処理装置の第2実施例を示している。第2実施例の表面処理装置は、放電管13が、図4によく示されるように、2枚の誘電体材料からなる矩形の薄板、例えばガラス板14、15を僅かな隙間をもって互いに対向させ、かつその両側部を接着テープ16等で接着して形成されている。放電管13の内部には、ガス供給源7に接続される基端部17から先端に開口するノズル部18に向けて、狭いスリット状の長方形断面のガス流路が画定される。平板状の電源電極2及び接地電極3が、放電管13を挟むようにその両側に配設されている。
【0040】ガス供給源7から所定の放電ガスを放電管13内に導入し、ノズル部18から噴出させつつ、電源5から電源電極2に所定の電圧を印加する。放電管13の内部には、前記両電極に挟まれた領域19で気体放電が生じる。本実施例では、ガス流がスリット状のノズル部18から細い直線状に噴射され、これに含まれる前記放電ガスの励起活性種によって、被処理物9の細い直線状の領域20が表面処理される。
【0041】放電管13の寸法は、その長さをa2、両ガラス板の隙間をb2として、第1実施例の放電管1と同様に、1μm≦b2≦1mm、b2/a2≦1/10に設定することができる。第1実施例と同様に、放電ガスとしてヘリウム、アルゴン等の希ガスや、酸素、窒素、又はCF4 等のフッ素化合物を基端部6において1kgf/cm2 程度の圧力で供給し、電源として20kHzの高周波電源を使用したところ、何れの場合にも放電管内には安定した良好な放電状態が維持された。また、電源に13.56MHzを使用した場合には、放電ガスにヘリウム等の希ガスと酸素、窒素又はCF4 等のフッ素化合物との混合ガスを用いることによって、同様に良好な放電状態が得られた。
【0042】処理領域20の長さは、放電管13の寸法によりガス流路の幅を変えることによって調整される。また、別の実施例では、前記ガス流路の幅又は隙間を基端部17からノズル部18に向けて徐々に狭くすることができる。これにより、ガス流に含まれる励起活性種の密度を高めることができる。更に別の実施例では、放電管13の内部を放電ガスの流れ方向に沿って仕切ることにより、複数のガス流路を並設することができる。
【0043】図5には、図1に示す第1実施例の別の変形例が示されている。この変形例では、それぞれ誘電体材料の細長い円管からなる複数の放電管1が、対向配置された1対の電源電極2・接地電極3間に隣接させて平行に1列に配置されている。各放電管1の基端部6は共通のガス供給源7に接続されている。所定の放電ガスを前記ガス供給源から各放電管1内に同時に供給し、各ノズル部8から被処理物9に向けて噴射しつつ、電源5から電源電極2に所定の電圧を印加すると、前記各放電管内で同時に気体放電が生じる。各放電管のノズル部8が、それぞれ対応する被処理物9の狭い領域に向けてガス流を噴射することによって、直線状の領域22を同時に表面処理することができる。
【0044】また、本実施例では、一部の放電管1にのみガス供給源7から放電ガスを供給し、かつ気体放電を発生させることによって、被処理物9の領域22の一部分だけを選択的に表面処理することもできる。更に本実施例では、被処理物9の処理したい各領域の位置に応じて、放電管と放電管との間を適当に離隔することができる。また、各放電管を両電極2、3間で横方向に移動できると、被処理物の処理したい領域の位置の変動に、容易に対応することができる。別の実施例では、電極2、3間に放電管1を2列又はそれ以上の複数列に配列することができる。更に別の実施例では、複数の放電管の向きを平行ではなく、それぞれ異なる向きに例えば放射方向に配置することによって、被処理物9の湾曲した表面の複数の領域を同時に表面処理することができる。
【0045】図6には、図5の更に別の変形例が示されている。横1列に平行に配置された複数の放電管1のノズル部8には、その先端開口を先細に狭くしたノズル部材23が嵌着されている。同様に図7に示す実施例では、図3の放電管13のノズル部18にノズル部材23が取り付けられている。各ノズル部8、18からのガス流をノズル部材23で絞ることによって、被処理物9表面に噴射されるガス流の速度を高め、かつそのプラズマ密度を高くして、処理レートを一層高めることができる。
【0046】次に、図8には、本発明による第2の構成を有する表面処理装置の構成が概略的に示されている。この表面処理装置は、導電材料で形成されかつ接地された箱形のケーシング24を有する。ケーシング24の中央には、放電管25が、そのノズル部26を下向きにして垂直に吊下されている。放電管25のすぐ下方には、被処理物9を載せたテーブル27が配置されている。
【0047】この放電管25は、図9に良く示されるように、図1の実施例と同様に狭小な断面のガス流路を画定する細長い円管状の部分28と、その基端側に連続する拡径された部分29とからなり、ガラス等の誘電体材料で一体に形成されている。円管部分28は、先端のノズル部26を被処理物9表面に向けて配置される。拡径部分29は、二重構造を有し、同心位置に配置された内管30との間に環状の空室31を画定している。空室31はガス供給源7に接続され、かつ円管部分28の前記ガス流路に連通している。内管30の内部には、高圧トランス4を介して電源5に接続された棒状の電源電極32が挿入されている。
【0048】ガス供給源7から環状空室31内に導入された所定の放電ガスは、円管部分28を通ってノズル部26から被処理物9表面に向けて噴出する。これと同時に、電源5から電源電極32に所定の電圧を印加する。本実施例では、ケーシング24を接地電極として、その中央に位置する電源電極32から放射方向に電界が形成される。従って、気体放電は、図9に示されるように拡径部分29及び円管部分28内部の比較的広い領域33に発生する。この放電による前記放電ガスの励起活性種が、ノズル部26から細いガス流として噴射され、これに曝露される被処理物9の狭小な領域10を表面処理することができる。
【0049】円管部分28の寸法は、図1の放電管1と同様に、その長さをa1、内径をb1として、1μm≦b1≦1mm、b1/a1≦1/10の関係を有するように設定した。放電ガスとして、ヘリウム、アルゴン等の希ガスや、これに酸素、窒素又はCF4 等のフッ素化合物を混合したガスを使用し、電源として20kHzの高周波電源を使用したところ、安定した良好な放電状態が得られた。特に放電ガスをヘリウム等の希ガス単体とした場合には、放電領域33がノズル部26から外まで伸びて、被処理物9表面を直接曝露する様子が観察された。また、放電ガスに前記混合ガスを使用した場合、それに含まれる酸素、窒素又はCF4 等の流量を増やすと、それにつれて放電領域33が縮小した。本実施例の表面処理装置を用いてポリイミド被膜の水に対する濡れ性を向上させる表面処理を行ったところ、従来は数十秒要した処理時間を10秒以下に短縮することができた。
【0050】本発明によれば、図9の実施例と異なる放電管及び電極構造を使用することができる。例えば、図1010の実施例では、図1の実施例と同様に円管状の放電管1を使用し、その外周に円筒状の電源電極34が嵌装されている。図11の実施例では、円管状の放電管1の外周にコイル電極35が卷装されている。また、図12の実施例では、図3の実施例と同様に2枚のガラス板を重ね合わせたスリット状のガス流路を有する板状の放電管13の一方の側面に、平板状の電源電極2設けられている。これら何れの場合にも、図9の場合と同様に放電管内で気体放電を発生させ、かつそのガス流を用いて表面処理することができる。
【0051】次に、本発明による第3の構成を有する表面処理装置について説明する。図13は、その第1実施例による表面処理装置の構成を概略的に示している。この表面処理装置は、図1の実施例と同様に、ガラスのような誘電体材料の細長い円管からなる放電管1を有する。放電管1の外周には、円筒状の電源電極34と接地電極36とが嵌装され、それぞれ基端部6に近い上流側とノズル部8に近い下流側とに適当な距離をもって離隔されている。
【0052】ガス供給源7から所定の放電ガスを放電管1内に導入し、ノズル部8から噴出させつつ、電源5から電源電極34に所定の電圧を印加する。放電管1内には、前記両電極間の領域37に気体放電が発生する。放電領域37に生成されるプラズマによる前記放電ガスの励起活性種が、ノズル部8から細いガス流として被処理物9に向けて噴射される。これにより、被処理物9の狭い領域10だけを、その周囲の部分に何ら影響を与えることなく良好に表面処理することができる。
【0053】放電管1の寸法は、図1の実施例と同様に、その長さをa1、内径をb1として、1μm≦b1≦1mm、b1/a1≦1/10の範囲内に設定した。放電ガスとして、例えばヘリウム、アルゴン等の希ガス、若しくはこれらと酸素、窒素又はCF4 等のフッ素化合物との混合ガスを使用し、20kHzの高周波電源を使用したところ、放電管1内に安定した良好な放電状態が維持された。また、電源電極34と接地電極36とは、数十cmの距離まで離隔しても、良好に放電することが確認された。
【0054】図10の実施例のように、放電領域が放電管のノズル部8から外に伸びると、被処理物9表面が放電に直接曝露されて、処理レートは高くなるが、被処理物表面を損傷する等の悪影響を及ぼす虞がある。本実施例の場合には、放電ガスに上記各ガスを適当に選択すること及び接地電極36の存在によって、放電領域37を或る程度放電管1内に制限することができる。
【0055】図14は、図13に示す第1実施例の変形例であり、電源電極35及び接地電極38が、それぞれ放電管1の外周に巻回されたコイル電極からなる。放電ガスにヘリウム、アルゴン等の希ガス、若しくはこれらと酸素、窒素又はCF4 等のフッ素化合物との混合ガスを使用し、20kHzの高周波電源を使用したところ、電源電極35からノズル部8付近までの広い領域に気体放電が発生した。特に放電ガスに希ガスを使用し、かつ20kHzの高周波電源を使用した場合には、図2の実施例と同様に、放電領域が、ノズル部8から噴射されるガス流に沿って放電管1の外まで伸びた。
【0056】また、別の実施例では、電源電極又は接地電極のいずれか一方を図14のコイル電極とし、かつ他方を図13の円筒状の電極にすることができる。これら何れの場合にも、図13の実施例と同様に放電管1内に気体放電を発生させ、被処理物を良好に表面処理することができる。
【0057】図15は、前記第3の構成を有する表面処理装置の第2実施例を示している。この表面処理装置は、図3の実施例と同様に2枚の誘電体材料の薄板を僅かな隙間をもって対向させ、その内部に狭いスリット状のガス流路を画定するように重ね合わせた放電管13を有する。それぞれ2枚の平板からなる電源電極39及び接地電極40が、放電管13の上流側と下流側とに適当な距離をもって離隔して、放電管13を挟むようにその両側に配設されている。
【0058】放電管13は、図3の実施例と同様に、その長さをa2、両ガラス板の隙間をb2として、1μm≦b2≦1mm、b2/a2≦1/10の範囲内に設定した。図13の実施例と同様に、放電ガスとしてヘリウム、アルゴン等の希ガス、若しくはこれらと酸素、窒素又はCF4 等のフッ素化合物との混合ガスをガス供給源7から放電管13内に導入しつつ、電源5として20kHzの高周波電源から電源電極39に所定の電圧を印加したところ、前記両電極間の領域37で安定した気体放電が得られた。前記放電ガスの励起活性種を含む細い直線状のガス流がスリット状のノズル部18から噴射され、被処理物9の狭い直線状の領域20を表面処理することができた。
【0059】図16は、前記第3の構成を有する表面処理装置の第3実施例を示している。この第3実施例の放電管25は、図9の実施例と同一の構成を有し、内部に狭小な断面のガス流路を画定する細長い円管部分28と、その基端側に連続する拡径部分29とからなる。円管部分28は、先端のノズル部26を被処理物9表面に向けて配置される。二重構造を有する拡径部分29は、内管30の内部に棒状の電源電極32が挿入され、かつ円管部分28の外周には、円筒状の接地電極41がノズル部26近傍に嵌装されている。
【0060】拡径部分29内部に画定された環状空室31にガス供給源7から所定の放電ガスを導入し、かつ円管部分28を通ってノズル部26から被処理物9に向けて噴出させると同時に、電源5から電源電極32に所定の電圧を印加する。これにより、拡径部分29及び円管部分28内で電源電極32の先端付近と接地電極41との間の領域33で気体放電が発生する。この放電による前記放電ガスの励起活性種が、ノズル部26から細いガス流として被処理物9に向けて噴射され、その狭小な領域10を表面処理する。
【0061】円管部分28の寸法は、図1、図9の放電管1と同様に、その長さをa1、内径をb1として、1μm≦b1≦1mm、b1/a1≦1/10の関係を有するように設定した。放電ガスとして、上述した他の実施例と同様にヘリウム、アルゴン等の希ガスや、これに酸素、窒素又はCF4 等のフッ素化合物を混合したガスを使用し、電源として20kHzの高周波電源を用いたところ、安定した良好な放電状態が得られた。本実施例によれば、このようにして被処理物の領域10だけを、その周囲の部分に何ら影響を与えることなく良好に表面処理することができた。
【0062】上述した本発明の表面処理方法は、以下に説明するように様々な分野に適用することができる。図1717には、本発明の表面処理方法を用いて所謂バーAT型の圧電振動子を製造する方法が示されている。一般にバーAT型圧電振動子は、圧電振動片42と、これを支持して外部回路と接続部材するためのプラグ43とを有する。
【0063】圧電振動片42は、長さ約4.5〜7mm、幅約1.5〜2mm程度の小さい長方形をなす圧電体材料、例えば水晶の薄い基板からなる圧電体チップの両面に、長方形の同一パターンの励振電極44が、それぞれCr下地層の上にAgを蒸着又はスパッタリングすることにより、1000〜4000Åの厚さに形成されている。前記圧電体チップの下端には、励振電極44から引き出された接続用ランド45が左右両側に設けられている。また、前記励振電極はAgでなくAuの薄膜で形成することができる。
【0064】プラグ43は所謂ハーメチック端子であり、その外周に金属環を嵌めたガラスからなる絶縁体46を貫通する2本のリード線を有する。前記リード線は、絶縁体46から上向きに突出する短い偏平なインナリード47と、前記絶縁体から下向きに延出する細長いピン状のアウタリード48とを有する。前記プラグのインナリード47は、はんだ付けで圧電振動片42のランド45に接続される。このため、前記インナリードの表面には、前記圧電振動片を接続する前に予めはんだめっきが施されている。前記インナリードの大きさは、長さ約1mm、幅約0.6mmと非常に小さく、前記ランドの大きさも同程度に非常に小さい。
【0065】圧電振動片42は、ランド45上にインナリード47を載せるようにプラグ43を位置合わせし、かつ窒素ガス等の熱風を用いたリフロー法により加熱して前記はんだめっきを溶融させることによってはんだ付けされる。このようにして、前記圧電振動片はプラグ43に片持ち式に支持され、かつ励振電極44が前記リード線と電気的に接続される。更に前記圧電振動片は、真空中でケース(図示せず)内に収納され、かつ該ケースの開口にその外面に予めはんだめっきを施した前記金属環を圧入することによって気密に封止される。
【0066】本発明によれば、圧電振動片42とプラグ43とをはんだ付けする前処理として、ランド45及びインナリード47の表面をそれぞれ処理する。本実施例の表面処理装置は、例えば図13及び図14に示す実施例と同様に、ガラスのような誘電体材料の細長い円管からなる放電管1を、そのノズル部8を前記圧電振動片のランド表面又は前記プラグのインナリード表面に向けて配置する。放電管1の外周には、コイル状の電源電極35と円筒状の接地電極36とが放電ガスの流れ方向に沿って互いに離隔して嵌装されている。放電ガスをガス供給源7から放電管1内に導入してノズル部8から噴出させつつ、電源5から電源電極35に所定の電圧を印加して、放電管1内に前記両電極間で気体放電を生じさせる。
【0067】この気体放電により生成された前記放電ガスの励起活性種は、細いガス流となってノズル部8から前記圧電振動片のランド表面又は前記プラグのインナリード表面に向けて噴射される。本実施例では、放電ガスとしてヘリウムとCF4 との混合ガスを選択する。この結果、ヘリウムにより安定した放電が得られ、かつCF4 の励起活性種を含む細いガス流によって、ランド45の表面及びインナリード47に予め施した前記はんだめっきの表面は、先ず酸化膜がエッチングされて除去され、その後に改質されてぬれ性が向上する。
【0068】このようにはんだ付け部分のぬれ性を向上させることによって、上述したように非常に小さい圧電振動片42とプラグ43とを良好に接続できると共に、使用するはんだ量を従来より少なくすることができる。本発明によれば、特に非常に小さい面積のランド45を表面処理するとき、それに対応した大きさに表面処理装置のノズル部の口径が設定され、しかも被処理面が直接放電に曝露されないので、その周囲の圧電振動片42の部分に前記励起活性種の影響が及んだり周波数を変動させる虞がなく、好都合である。
【0069】上記実施例ではランド及びインナリード双方を表面処理したが、これらいずれか一方のみを処理しても、同様の効果が得られる。別の実施例では、ヘリウム以外の希ガスとCF4 以外のフッ素化合物(例えばフレオン(商品名))との混合ガスを使用して、同様に安定した放電とぬれ性向上とを実現することができる。また、図17の表面処理装置は単なる一例であって、上述した様々な放電管又は電極構造を有する本発明の表面処理装置を用いて、同様に圧電素子を製造することができる。更に、これを前処理装置としてはんだ付け装置に組み込んでインライン化することにより、連続的な処理が可能になり、より一層品質及び歩留まりの向上が図られる。当然ながら、本発明の圧電素子の製造方法は、音叉型等の他の圧電振動子、SAWデバイス等の他の圧電素子についても、圧電振動片又はSAW片等とリード端子とをはんだ付けにより接続する場合に、同様に適用することができる。
【0070】図18は、本発明による表面処理方法を利用することにより、SAWデバイスの製造工程において、その周波数を調整する方法を示している。本実施例のSAWデバイスは、その大きさが例えば幅約3mm、長さ約4mm、厚さ約0.5mm程度の小さい長方形の薄板に切り出した水晶(SiO2 )チップからなるSAW片49を備える。SAW片49は、前記水晶チップの一方の面(主面)の略中央に1組の櫛型電極を組み合わせた形の交差指電極(IDT)が形成され、かつその両側に格子状の反射器が設けられている。
【0071】これらの電極及び反射器は、蒸着又はスパッタリングにより前記水晶チップ表面に成膜したAl薄膜を、ホトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることによって形成される。前記SAW片の固有振動数、即ちSAWデバイスの周波数は、基本的に前記Al電極パターンの幅、ピッチ及び膜厚により決定される。このように電極等を形成したSAW片49は、セラミック材料等で形成されるベース50の内部に、銀ペーストなどの導電ペーストや接着剤51で固定され、かつ前記電極は、ボンディングワイヤ52によりベース50の電極と電気的に接続される。
【0072】本発明によれば、この状態において、前記SAW片の水晶部分をエッチングして僅かな量ずつ削ることによって、SAWデバイスの周波数を微調整する。本実施例の表面処理装置は、図1に示されるようにガラスのような誘電体材料の細長い円管からなる放電管1を、そのノズル部8をSAW片49の水晶が露出する表面に向けて配置する。放電管1の両側には、1対の平板電極2、3が対向配置されている。放電ガスをガス供給源7から放電管1内に導入し、ノズル部8から噴出させつつ、電源5から電源電極2に所定の電圧を印加して、放電管1内で気体放電を生じさせる。
【0073】この気体放電により生成された前記放電ガスの励起活性種は、細いガス流となってノズル部8から前記SAW片の水晶露出面に向けて噴射される。本実施例の表面処理装置も、ノズル部8の口径が前記水晶露出面の大きさに対応した寸法に設定されている。しかも、被処理面が直接放電に曝露されないので、前記放電がSAW片49の前記Al電極及び反射器に影響を与えることが無い。
【0074】本実施例では、放電ガスとしてヘリウムとCF4 との混合ガスを使用する。この結果、ヘリウムにより安定した放電が得られるだけでなく、かつCF4 の励起活性種を含む細いガス流によって、上述したように非常に小さいSAW片49の水晶露出面だけを、Alで形成された前記電極又は反射器に何ら影響を与えることなく、エッチングして僅かな量ずつ削り取ることができる。このエッチングは前記SAW片の周波数をモニタしながら行われ、所望の周波数に微調整する。周波数調整を終えると、窒素雰囲気中でキャップ部材を装着してベース50内部を気密に封止する。
【0075】従来は、真空中でのドライエッチングによりSAWデバイスの周波数調整を行っていたため、設備が大型かつ高価であり、作業が面倒かつ時間を要するため、生産性が低く、コストを増加させる一因となっていた。これに対し、本発明によれば、上述したように大気圧中で作業できるため、設備を小型化かつ安価にできると共に、インライン化による連続処理が可能となり、生産性の向上及びコストの低減化を図ることができる。
【0076】本発明によるSAWデバイスの周波数調整は、SAW片をベース内に実装する前に行うことができる。即ち、ホトリソグラフィ技術を用いて水晶ウエハ表面に電極パターンを形成しかつダイシングして個々のチップに切り出した後、これをベース内部に固定してその電極と接続する前に、上述したように個々のチップについて周波数をモニタしながら、その水晶露出面をエッチングする。また、電極パターンを形成した水晶ウエハをダイシングして個々のチップに切り出す前に、ウエハの状態で個々の電極パターンについて周波数をモニタしながら、水晶露出面をエッチングすることもできる。
【0077】別の実施例では、ヘリウム以外の希ガスとCF4 以外のフッ素化合物(例えばフレオン(商品名))との混合ガスを使用して、同様に安定した放電とフッ化処理とを実現することができる。また、放電ガスとして塩素又は塩素を含む化合物を用いると、Al電極を直接エッチングすることにより周波数調整することも可能だが、塩素系のガスはその取扱い、安全性に困難がある。
【0078】更に別の実施例では、電極材料としてAl以外にAu、Al−Cu合金などの導電性材料を用いたり、SAW片49のチップ材料として、水晶以外にリチウムタンタレート、リチウムニオベートなどの圧電体を用いた場合にも、本発明による周波数調整を同様に行うことができる。
【0079】また、本発明による表面処理方法を用いて、STN型、TFT型、MIM型等各種LCDの液晶パネルを製造することができる。一般に液晶パネルは、図19A及び図19Bに示すように、ガラス基板53の駆動電極を形成した面にポリイミド樹脂を均一に塗布しかつ焼成し、これを一定方向にラビングすることにより配向膜54を形成する。この配向膜を形成した面の外周に沿って例えばUV(紫外線)硬化性のシール材55を印刷し、その上にスペーサを介して、同じく配向膜56を形成した別のガラス基板57を重ね合わせ、前記シール材の硬化により一体的に接着してセル容器58を形成する。セル容器58の中には、後述するように液晶材料を注入する。
【0080】本発明によれば、液晶材料を注入する前に、前記セル容器の内面を表面処理して、そのぬれ性を向上させる。本実施例では、シール材55が、ガラス基板57の一方の短辺の略中央に設けられるセル容器への液晶注入口59に加えて、対向する他方の短辺の略中央に放電ガスの排気口60を設けるために、これらの部分をそれぞれ残すように塗布される。また、セル容器58のセルギャップ、即ち前記両ガラス基板間の隙間は非常に狭く、STN型パネルの約7μmから強誘電性液晶を使用する場合の約1.5μmまであり、通常約5μmである。
【0081】図19Aに良く示すように、液晶注入口59は、連絡管61を介してガス供給源7に接続される。セル容器58の上下両側には、これを挟むように平板状の電源電極2及び接地電極3を配設する。ガス供給源7から送給される放電ガスは、液晶注入口59からセル容器58内部に導入され、その中を通過して反対側の排気口60から外部に流出する。このように放電ガスをセル容器58内部に流しながら、電源5から電源電極2を通電すると、セル容器内に気体放電が生じる。前記両電極の寸法を小さい方のガラス基板57の寸法に合わせることによって、放電領域をセル容器58内部の全体に広げることができる。
【0082】本実施例では、放電ガスとしてヘリウムを選択する。これにより、その励起活性種にセル容器内面が直接曝露されて、ぬれ性が向上する。図3及び図4に関連して上述した説明から分かるように、本発明によれば、セルギャップが1.5μm程度のセル容器においても、良好な放電状態が得られ、良好な表面処理が可能である。これに対し、従来の真空中でのプラズマ放電は、このような狭ギャップのセル容器内では発生しない。
【0083】この後、前記排気口を閉塞し、かつ真空槽内に配置して前記セル容器内部を一定の真空状態にする。次に、液晶注入口59に液晶材料を付け、前記真空槽内を大気圧に戻して、セル容器58内に液晶を注入する。前記液晶注入口はシール材と同じくUV硬化性の接着剤を用いて閉塞する。
【0084】本発明によれば、上述したようにセル容器内面のぬれ性が従来に比して大幅に良くなっているので、粘性の高い液晶材料であっても、セル容器58内部に気泡を残すことなく、円滑かつ確実に注入することができる。また、従来のようにガラス基板を重ね合わせる前後にそれぞれ洗浄する必要がなく、1回の工程で済ませることができるので、作業効率が良く、生産性が向上する。
【0085】また、本発明による表面処理方法を利用して、インクジェット用プリントヘッドを製造することができる。図20Aに示すプリントヘッド62は、口径約30μmのノズル63を多数穿設したノズルプレート64と振動板65との間隙を、前記ノズルの位置に合わせて仕切部材66によって多数のキャビティ67に分割し、かつ前記各キャビティに対応して振動板65の背後にピエゾ変換器68を配置した構造を有する。前記ピエゾ変換器に電気的信号を与えて振動板65を機械的に振動させることによって、対応する前記キャビティ内のインク69がノズル63から噴射される。
【0086】各仕切部材66は、通常接着剤によって振動板65の所定位置に取り付けられる。前記仕切部材と振動板との接着部付近には、図20Bに示すように、はみ出した余分な接着剤70が残存することがある。しかしながら、キャビティ67の大きさは、例えば幅約100μm、高さ約220μmと非常に小さいので、接着剤70の除去は比較的困難である。
【0087】本実施例によれば、上述した本発明の、例えば図1又は図13に示されるような誘電体材料の細長い円管からなる放電管1を有する様々な構成の表面処理装置を使用し、仕切部材66を接着した振動板65の上方に配置した放電管1の内部に流される放電ガス中で気体放電を発生させる。また、別の実施例では、本発明の例えば図9又は図16に示されるような細長い円管部分と拡径部分とからなる放電管25を有する表面処理装置を使用することができる。
【0088】放電ガスとして、ヘリウム等の希ガスと酸素との混合ガスを使用し、その励起活性種を含むガス流を、ノズル部8から振動板65の前記仕切部材同士の狭い隙間に向けて噴射する。放電管1又は放電管25の円管部分に例えば口径50μmの毛細管を用いることによって、通常有機系樹脂である接着剤70を上述したように非常に狭いキャビティ67からアッシングして除去することができる。このようにして前記キャビティ内部に付着した余分な接着剤を事前に除去した振動板65を組み付けることによって、キャビティ内での気泡の発生やインクの変質による印字不良を解消した高品質のプリントヘッドを製造することができる。
【0089】図21には、図20のプリントヘッドと異なる構造を有するインクジェット用プリントヘッド71が示されている。このプリントヘッド71は、それぞれガラス又は樹脂等の絶縁材料で形成された厚い第1基板72と、それに一体的に結合された薄い第2基板73とからなる。第1基板72の一方の面には、ホトリソグラフィ技術を用いたウェットエッチングにより、その幅が広い方の基端部から先細の先端部に向けて延長する4本の溝74が凹設されている。各溝74には、前記基端部に近い位置に、それぞれ後述するインク溜まりとなる幅広部分が設けられている。溝74の本数は、必要に応じて適当に設定することができる。
【0090】第1基板72の前記一方の面に、前記溝を塞ぐように同一形状の平板からなる第2基板73を貼着する。これによって、それぞれ前記基端部に開口するインク供給口75からインク溜まり76を経て、前記先端部に開口するノズル77に連通する4本のインク流路78を内設したプリントヘッド71が形成される。前記第2基板の外面には、それぞれインク溜まり76に対応する位置に、図20の実施例と同様に、該第2基板を機械的に振動させて前記インク溜まり内のインクをノズル77から噴射するための公知のピエゾ変換器が取り付けられる。
【0091】インク流路78の内寸は、プリントヘッド71の大きさが、例えば長さ、幅共に約10mm程度であることを考えれば、非常に小さい。例えば、最大で図21R>1Bで示すインク溜まり76の部分が幅約400μm、深さ約80μmであり、その他の部分は図21Cで示すノズル近傍で幅及び深さ共に約50μmである。従って、前記インク流路内面のぬれ性を良くすることは、常に鮮明で良好な印刷状態を確保する上で重要である。
【0092】本発明によれば、ピエゾ変換器を取り付ける前に、前記プリントヘッドのインク流路内面を表面処理して、そのぬれ性を向上させる。本実施例では、大気圧下において、図22に示すように前記基端部に連絡管79を接続し、ガス供給源7から放電ガスを送給する。前記放電ガスは、インク供給口75からインク流路78内を通過し、ノズル77から外部に排出される。プリントヘッド71の上下両側には、これを挟むように平板状の電源電極2及び接地電極3を配設する。電源5から所定の電圧を電源電極2に印加すると、インク流路78内で気体放電が発生する。
【0093】本実施例の場合、良好な放電状態が得られるように、放電ガスとしてヘリウム等の希ガスを選択する。これにより、インク流路内面は、前記放電ガスの励起活性種に直接曝露されて、インクに対するぬれ性が向上する。従って、インク流路78におけるインクの流れ、及び該流路内でインク中に発生する気泡の抜けが良くなるので、印字不良の虞を解消した高品質のプリントヘッドが得られる。図1及び図5に関連して上述した説明から分かるように、本発明によれば、プリントヘッドの狭いインク流路78内においても、安定した放電により良好な表面処理が可能である。これに対し、従来の真空中でのプラズマ放電では、インク流路78内で放電が発生しにくいため、十分な表面処理効果は期待できない。
【0094】図23には、図22に示す実施例の変形例が示されている。この変形例では、1対の平板電極2、3に代えて、図11に示す実施例と同様のコイル電極35がプリントヘッド71の外周に巻回されている。この場合にも、放電ガスをガス供給源7から連絡管79を介してインク流路78内に送給し、その中を流れる前記放電ガス中で生じる気体放電に直接曝露させることによって表面処理し、インク流路78のインクに対するぬれ性を向上させることができる。
【0095】図24には、図23に示す実施例の変形例が示されている。この変形例は、プリントヘッド71の基端部に装着される連絡管80が誘電体材料で形成され、かつその外周にコイル電極35が巻回されている。従って、気体放電は連絡管80内部で発生し、ガス供給源7から供給される放電ガスの励起活性種がガス流となってインク流路78を流れる際に、間接的にその表面処理を行う。この場合も同様に、インク流路78のインクに対するぬれ性を向上させることができる。
【0096】また、本発明の表面処理方法を用いて、試料の表面に没入している数十〜数百μmの微小な無機物又は有機物の異物を採取・分析するためのマイクロサンプリングを簡単に行うことができる。先ず、試料が例えばフレキシブル基板に使用されるポリイミドフィルムのような有機系材料で、異物が無機物の場合について説明する。図25Aに示すように、試料81の上方に例えば図1のような誘電体材料の細長い円管からなる放電管1を、そのノズル部8を異物82が没入している位置に向けて配置する。
【0097】放電ガスとしてヘリウム等の希ガスと酸素との混合ガスを使用し、放電管1内で気体放電を生じさせ、前記放電ガスの励起活性種を含むガス流を試料81表面に噴射する。本実施例では、放電管1に例えば口径50μmの毛細管を用いることによって、異物82の周囲に存在する僅かな試料81だけを部分的にアッシングして除去することができる。従って、図25Bに示すように、異物82の周囲に小さな凹み83が形成され、かつその中に前記異物が露出してくる。従来のマニピュレータ等のサンプリング装置を用いて、そのプローブ84を凹み83内に挿入する。プローブ84は、通常その先端が半径約1μm程度の大きさであるから、異物82に容易に接近させることができ、該異物を係着して簡単に採取することができる。
【0098】試料がセラミック、シリコン等の無機系材料で異物が有機物の場合には、放電ガスにヘリウム等の希ガスとCF4 等のフッ素化合物との混合ガスを使用し、図25Aと同様に表面処理を行う。この場合、試料81の表面は、異物82の周囲が部分的にエッチングされて除去され、同様に凹み83が形成されてその中に異物82が露出してくるので、従来のマニピュレータを用いて簡単に採取することができる。
【0099】試料及び異物共に有機物又は無機物の場合、上述した図25の表面処理方法では、異物までがアッシング又はエッチングされて採取できなくなる。このような場合には、図26Aに示すように、放電管1のノズル部8を異物82の周囲の試料81表面に向けて配置し、表面処理を行う。放電ガスの励起活性種を含むガス流は、放電管1を異物82の周りに沿って移動させながら、異物82に直接当たらないように放電管1から試料81表面に向けて噴射される。これにより、試料81表面には、異物82の周囲に環状の凹み85が形成される。従って、この場合にも、従来のマニピュレータを用いて、そのプローブ84を凹み85内に挿入して異物82に接近させ、その先端に係着して簡単に採取することができる。
【0100】以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はその技術的範囲内において、上記実施例に様々な変形・変更を加えて実施することができる。例えば、平板状の電源電極2に対向配置される接地電極3には、メッシュ状のものを使用することができる。また、圧電素子、液晶パネル、インクジェット用プリンヘッドの製造、及びマイクロサンプリングには、上述した各実施例のもの以外に、必要に応じて図1〜図16に関連して説明した様々な放電管及び電極構造の表面処理装置を用いることができる。
【0101】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。本発明の表面処理方法は、被処理物の内部をガス流路として外部から放電ガスを流しながら、その外側から電界を作用させることによって、被処理物内部が外部から容易に接近できない隙間や管路等の狭小な空間であっても、被処理物内部に気体放電が発生しかつ良好な状態に維持され、被処理物内部は放電ガスの励起活性種に直接暴露されて、安定して良好に表面処理することができる。従って、より広範な分野において大気圧下でのプラズマによる表面処理が可能となり、高い汎用性が得られる。
【0102】この表面処理方法をインクジェット用プリントヘッドの製造に適用すれば、該ヘッドに内設されたインク流路のぬれ性を改善できるので、インクの流れを良くして、使用時における印字不良等の虞を解消し、より鮮明な印刷が可能になる。また、液晶パネルの製造においては、放電ガスを適当に選択することによって、液晶材料を注入する前に1度の工程でセル容器内部のぬれ性が向上するので、液晶材料の注入作業が円滑にかつ確実に行われ、歩留まりを向上させてより品質の高い液晶パネルを製造することができる。
【0103】本発明の表面処理装置によれば、被処理物の狭小な内部空間内で放電ガスの流れに沿って気体放電を発生させることができ、それにより生成された放電ガスの励起活性種に直接曝露されることによって、被処理物の非常に狭い内部の表面を十分に処理することができる。従って、大気圧下でのプラズマによる表面処理をより広範な用途に用いることができる。
【0104】また、本発明の表面処理装置は、電源電極と接地電極とを放電管を挟んで対向する位置に、または放電管に沿ってガス流路の上流側及び下流側にそれぞれ配置することによって、ガス流路の狭い空間内に安定した気体放電を発生させることができる。更に、本発明によれば、放電管及び電源電極の周囲に配置したケーシングを接地電極とし、電源電極を中心とする放射方向に電界を形成することによって、同様にガス流路の狭い空間内に安定した気体放電を発生させることができる。
【0105】本発明の圧電素子の製造方法によれば、狭小な断面のガス流路を有する放電管を用いて気体放電を生じさせ、そのガス流により、互いにはんだ付けされる素子片の電極及びプラグ端子だけを、又はそれらのいずれか一方だけを放電ガスの励起活性種に曝露することにより効果的に表面処理して、はんだへのぬれ性を向上できるので、はんだ付けが容易になりかつ少ないはんだ量で良好な接続状態が得られ、歩留まり及び生産性の向上と共にコストの低減化が図られる。また、圧電体材料に励起活性種が作用してその周波数に影響を及ぼす虞がないので、安定した性能が得られる。
【0106】また、本発明によれば、SAWデバイスの製造工程において、SAW片をパッケージ内に搭載する前又は後に、狭小な断面のガス流路を有する放電管を用いてフッ素化合物を含む放電ガスに気体放電を生じさせ、そのガス流を噴射することによって、圧電体材料の露出部分だけを僅かずつ制御してエッチング処理でき、その周波数をモニタしながら簡単に微調整することができるので、従来の真空設備を必要とせず、インライン化による連続処理が可能となり、生産性が向上して、より高品質・高性能のSAWデバイスを低コストで製造することができる。
【0107】本発明のインクジェット用プリントヘッドの製造方法によれば、狭小な断面のガス流路を有する放電管を用いて放電ガスに気体放電を生じさせ、そのガス流を噴射することによって、振動板と仕切部材との接合部から狭いキャビティの表面にはみ出した余分な接着剤をアッシングして比較的簡単に除去できるので、印刷不良を生じる虞がない高品質のプリントヘッドを低コストで製造することができる。
【0108】本発明のマイクロサンプリング方法によれば、大気圧近傍の圧力下で生成したプラズマによる励起活性種を、狭小な断面のガス流路を有する放電管によって非常に細いガス流として試料表面に噴射できるので、試料の表面に部分的に又は完全に没入している異物の周囲から、プローブを接近させるのに十分な僅かな量だけ試料表面を部分的に削除することができるので、異物の採取をより簡単にかつ確実に行うことができる。しかも、表面処理の影響が試料の他の部分や異物自体に及ぶ虞がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の構成を有する表面処理装置の第1実施例を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】図1と異なる放電管を有する表面処理装置の第2実施例を概略的に示す縦断面図である。
【図4】図3の放電管を示す斜視図である。
【図5】図1の更に別の変形例を示す斜視図である。
【図6】図5の変形例を示す平面図である。
【図7】図3の第2実施例の変形例を示す平面図である。
【図8】本発明による第2の構成を有する表面処理装置の実施例を概略的に示す図である。
【図9】図8の放電管を拡大して示す縦断面図である。
【図10】図9と異なる放電管及び電極構造の変形例を示す縦断面図である。
【図11】図10と異なる電極構造の変形例を示す縦断面図である。
【図12】図9と更に異なる放電管及び電極構造の変形例を示す縦断面図である。
【図13】本発明による第3の構成を有する表面処理装置の第1実施例を概略的に示す縦断面図である。
【図14】図13の変形例を示す縦断面図である。
【図15】図13と異なる放電管を有する表面処理装置の第2実施例を概略的に示す縦断面図である。
【図16】図13と更に異なる放電管を有する表面処理装置の第3実施例を概略的に示す縦断面図である。
【図17】本発明の方法により圧電素子の電極を表面処理する過程を示す斜視図である。
【図18】本発明の方法により圧電素子の周波数を調整する過程を示す図である。
【図19】図19Aは本発明の方法により液晶パネルのセル内部を表面処理する過程を概略的に示す断面図、図1919Bはその平面図である。
【図20】図20Aはインクジェット用プリントヘッドのノズル部分を示す拡大断面図、図20Bは振動板を表面処理する過程を示す図である。
【図21】図21Aは別の構造を有するインクジェット用プリントヘッドの一部を破砕した平面図、図21BはそのB−B線における断面図、図21CはC−C線における断面図である。
【図22】図21に示すプリントヘッドのインク流路を表面処理する過程を示す概略断面図である。
【図23】図22と異なる電極構造により表面処理する過程を示す平面図である。
【図24】図23の変形例を示す平面図である。
【図25】本発明の方法により試料表面に没入した異物を採取する過程をA図、B図の順に示す断面図である。
【図26】図25の変形例による過程を同じくA図、B図の順に示す断面図である。
【符号の説明】
1 放電管
2 電源電極
3 接地電極
4 高圧トランス
5 高周波電源
6 基端部
7 ガス供給源
8 ノズル部
9 被処理物
10 処理領域
11 放電領域
13 放電管
14、15 矩形板
16 スペーサ
17 基端部
18 ノズル部
19 放電領域
20 処理領域
22 処理領域
23 ノズル部材
24 ケーシング
25 放電管
26 ノズル部
27 テーブル
28 円管部分
29 拡径部分
30 内管
31 環状空室
32 電源電極
33 放電領域
34、35 電源電極
36 接地電極
37 放電領域
38 接地電極
39 電源電極
40、41 接地電極
42 圧電振動片
43 プラグ
44 励振電極
45 ランド
46 絶縁体
47 インナリード
48 アウタリード
49 SAW片
50 ベース
51 接着剤
52 ボンディングワイヤ
53 ガラス基板
54 配向膜
55 シール材
56 配向膜
57 ガラス基板
58 セル容器
59 液晶注入口
60 排気口
61 連絡管
62 プリントヘッド
63 ノズル
64 ノズルプレート
65 振動板
66 仕切部材
67 キャビティ
68 ピエゾ変換器
69 インク
70 接着剤
71 プリントヘッド
72 第1基板
73 第2基板
74 溝
75 インク供給口
76 インク溜まり
77 ノズル
78 インク流路
79、80 連絡管
81 試料
82 異物
83 凹み
84 プローブ
85 凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】 大気圧又はその近傍の圧力下で誘電体材料からなる被処理物の内部に所定の放電ガスを流しながら、前記被処理物の外部に配置した電極を通電して前記被処理物内部で気体放電を生じさせ、前記気体放電により生成される前記放電ガスの励起活性種に前記被処理物内部の表面を曝露させることを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】 前記被処理物内部の寸法が、その長さをa、狭い方の幅をbとして、b≦1mm、b/a≦1/10の関係を有することを特徴とする請求項1記載の表面処理方法。
【請求項3】 狭小な断面の内部空間を有する誘電体材料からなる被処理物について、前記誘電体内部を流れるように放電ガスを供給するための手段と、前記被処理物に沿って配置され、前記被処理物内部において大気圧又はその近傍の圧力下で前記放電ガスに気体放電を生じさせる電極とを有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項4】 放電ガスの供給源に接続される基端部と被処理物に向けて開口する先端部との間に、狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管と、前記放電管内で大気圧又はその近傍の圧力下で前記放電ガスに気体放電を生じさせるように、前記放電管を挟んで対向配置された電源電極及び接地電極とを有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項5】 前記ガス流路の長さa及び狭い方の幅bが、b≦1mm、b/a≦1/10の関係にあることを特徴とする請求項4記載の表面処理装置。
【請求項6】 前記放電管が、その長さをa、内径をbとする少くとも1本の細長い円管からなることを特徴とする請求項5記載の表面処理装置。
【請求項7】 前記放電管が、その長さをa、幅をbとするスリット状の断面を有するガス流路を有することを特徴とする請求項5記載の表面処理装置。
【請求項8】 放電ガスの供給源に接続される基端部と被処理物に向けて開口する先端部との間にガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管と、前記放電管に沿って配置された電源電極と、前記放電管及び前記被処理物を収容しかつ接地された導電材料からなるケーシングとを有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項9】 前記ガス流路の長さa及び狭い方の幅bが、b≦1mm、b/a≦1/10の関係にあることを特徴とする請求項8記載の表面処理装置。
【請求項10】 前記放電管が、その長さをa、内径をbとする少くとも1本の細長い円管からなることを特徴とする請求項9記載の表面処理装置。
【請求項11】 前記放電管が、その長さをa、幅をbとするスリット状の断面を有するガス流路を有することを特徴とする請求項9記載の表面処理装置。
【請求項12】 前記電源電極が、前記放電管の周囲に巻回されたコイルからなることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか記載の表面処理装置。
【請求項13】 放電ガスの供給源に接続される基端部と被処理物に向けて開口する先端部との間にガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管と、前記放電管に沿って前記ガス流路の上流側及び下流側にそれぞれ配置され、前記放電管内で大気圧又はその近傍の圧力下で前記放電ガスに気体放電を生じさせる電源電極及び接地電極とを有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項14】 前記ガス流路の長さa及び狭い方の幅bが、b≦1mm、b/a≦1/10の関係にあることを特徴とする請求項13記載の表面処理装置。
【請求項15】 前記放電管が、その長さをa、内径をbとする少くとも1本の細長い円管からなることを特徴とする請求項14記載の表面処理装置。
【請求項16】 前記放電管が、その長さをa、幅をbとするスリット状の断面を有するガス流路を有することを特徴とする請求項14記載の表面処理装置。
【請求項17】 前記電源電極又は接地電極の少くともいずれか一方が、前記放電管の周囲に巻回されたコイルからなることを特徴とする請求項13乃至16いずれか記載の表面処理装置。
【請求項18】 圧電体からなる素子片の表面に形成した電極にプラグのリード端子をはんだ付けし、前記プラグに真空ケースを装着して圧電素子を製造する方法であって、前記はんだ付けの前に、狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管内に、その基端部から先端部の開口に向けて所定の放電ガスを流しながら、前記放電管に沿って配置された電極を通電することにより、前記放電管内に大気圧又はその近傍の圧力下で気体放電を生じさせ、それにより生成される前記放電ガスの励起活性種を含むガス流を前記放電管の先端部開口から、少なくとも前記素子片の電極の接合面又は前記プラグ端子表面のいずれか一方に噴射して表面処理する過程を含むことを特徴とする圧電素子の製造方法。
【請求項19】 圧電体の表面に電極を形成したSAW(表面弾性波)片をパッケージ内に搭載し、前記電極を前記パッケージの端子と電気的に接続し、前記パッケージを気密に封止することにより圧電素子を製造する方法であって、狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管内に、その基端部から先端部の開口に向けてフッ素化合物を含む放電ガスを流しながら、前記放電管に沿って配置された電極を通電することにより、前記放電管内に大気圧又はその近傍の圧力下で気体放電を生じさせ、それにより生成される前記放電ガスの励起活性種を含むガス流を前記放電管の先端部開口から、圧電体の電極形成面に露出する圧電材料の部分に噴射してエッチング処理することにより、前記SAW片の周波数を調整する過程を含むことを特徴とする圧電素子の製造方法。
【請求項20】 前記SAW片の電極を前記パッケージ端子と電気的に接続した後に、前記放電ガスの励起活性種による前記エッチング処理を行なうことを特徴とする請求項19記載の圧電素子の製造方法。
【請求項21】 前記圧電体が水晶であることを特徴とする請求項19又は20記載の圧電素子の製造方法。
【請求項22】 配向膜を形成した2枚のガラス基板を、それらの間に一定の狭ギャップを有するようにシールド材で一体的に接着してセル容器を形成し、前記セル容器内に液晶材料を封入して液晶パネルを製造する方法であって、前記液晶材料を封入する前に、前記セル容器内にその液晶注入口から所定の放電ガスを流しながら、前記セル容器に沿って配置した電極を通電して前記セル容器内部で気体放電を生じさせ、前記気体放電により生成される前記放電ガスの励起活性種に前記セル容器内部の表面を曝露させることを特徴とする液晶パネルの製造方法。
【請求項23】 前記所定の放電ガスがヘリウムを含むことを特徴とする請求項22記載の液晶パネルの製造方法。
【請求項24】 ノズル部材と振動板との間に仕切部材によって画定される複数のキャビティ内に注入されるインクを選択的に噴射する型式のインクジェット用プリントヘッドを製造する方法であって、前記仕切部材を前記振動板に接着した後に、狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管内に、その基端部から先端部の開口に向けて所定の放電ガスを流しながら、前記放電管に沿って配置された電極を通電することにより、前記放電管内に大気圧又はその近傍の圧力下で気体放電を生じさせ、それにより生成される前記放電ガスの励起活性種を含むガス流を前記放電管の先端部開口から前記振動板と仕切部材との接着部付近に噴射してアッシング処理する過程を含むことを特徴とするインクジェット用プリントヘッドの製造方法。
【請求項25】 インク供給口からノズル開口に通じるインク流路を内設したインクジェット用プリントヘッドを製造する方法であって、前記インク供給口から前記ノズル開口に所定の放電ガスを流しながら、前記プリントヘッドの外側に配置した電極を通電して前記インク流路内で気体放電を生じさせ、前記気体放電により生成される前記放電ガスの励起活性種に前記インク流路内面を曝露させる過程を含むことを特徴とするインクジェット用プリントヘッドの製造方法。
【請求項26】 前記所定の放電ガスがヘリウムを含むことを特徴とする請求項25記載のインクジェット用プリントヘッドの製造方法。
【請求項27】 試料の表面から微小な異物をプローブの先端に係着して採取するマイクロサンプリング方法であって、前記プローブ先端を前記異物に接近させる前に、狭小な断面のガス流路を画定する誘電体材料からなる放電管内に、その基端部から先端部の開口に向けて所定の放電ガスを流しながら、前記放電管に沿って配置された電極を通電して、前記放電管内に大気圧又はその近傍の圧力下で気体放電を生じさせ、それにより生成される前記放電ガスの励起活性種を含むガス流を前記放電管の先端部開口から前記試料表面に噴射することにより、前記異物の周囲から前記試料を部分的に除去する過程を含むことを特徴とするマイクロサンプリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図22】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開平9−232293
【公開日】平成9年(1997)9月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−317025
【出願日】平成8年(1996)11月13日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)