説明

表面処理装置

【課題】加熱手段によって加熱されて皺が生じた状態でフィルムを巻き取ることでその皺が被処理媒体の表面処理に影響することを防止することが可能な表面処理装置を提供する。
【解決手段】フィルム103と、フィルム103の面の搬送方向と略直交する方向における異なる領域を選択的に加熱することでフィルム103を介して被処理媒体Sの面を加熱する加熱手段101と、を有し被処理媒体Sの表面を処理する表面処理装置100は、フィルム103の搬送経路上の、フィルム103と被処理対象Sとが分離する分離部Dと、巻き取り軸105によってフィルム103が巻き取られる巻き取り部Wと、の間でフィルム103を再加熱する再加熱手段120を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御可能な表面処理装置に関するものである。本発明は、特に、熱溶融性トナーを用いて画像が形成された記録材を被処理媒体として処理する表面処理装置に好適に適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の後処理で、印刷物の表面に均一に又は部分的に光沢性(グロス)を付与する装置が提案されている。例えば、オフセット印刷においては、次のような装置が提案されている。即ち、UV硬化性インキを用いて、色材インキで印刷された印刷物の表面を全体的に又は部分的にオーバーコートして、このUV硬化性インキを紫外線で固化定着させる。これにより、全面的に又は部分的に印刷物の光沢性を向上させることができる。
【0003】
電子写真方式においては、透明トナーを用いて現像したトナー像を転写して、光沢性を付与する方法が提案されている(特許文献1)。又、電子写真方式において、次のようにして印刷物の表面全体の光沢性を向上させる方法が提案されている(特許文献2)。即ち、トナーで画像が形成された印刷物の表面を、表面の平滑性の高い無端状のベルトを介して再加熱することによりトナーを再溶融させる。その後、ベルトと接触した状態でトナーを冷却させることにより、トナーで形成された画像の表面にベルトの平滑性が転写された状態でトナーを固化させる。この方法では、印刷物の全体の光沢を制御することができるが、印刷物の表面の光沢を部分的に制御することは困難である。
【0004】
一方、特許文献3には、熱転写プリンタにおいて、印刷物の表面全体に光沢を持たせる方法が開示されている。この方法では、インクフィルムに、インク層が形成されたインク層部とインク層が形成されていない樹脂層部とを設ける。そして、先ずインクフィルムのインク層を受像紙に転写させる。その後、インクフィルムの樹脂層部をサーマルヘッドとプラテンローラとの間に送り込み、サーマルヘッドをインクフィルム及びインク層が転写された受像紙を介してプラテンローラに押圧して、受像紙上のインク層を再加熱する。これによって、受像紙上のインク層の表面を平滑化する。
【0005】
又、特許文献4には、サーマルヘッドを用いて印刷物の表面の光沢を部分的に制御する方法が開示されている。この方法では、サーマルヘッドでシート体の表面を部分的に加熱した後に、そのシート体を無端ベルトに加圧ローラで押圧しながら搬送し、その後そのシート体を無端ベルトに密着させた状態のまま冷却する。これにより、シート体の表面のサーマルヘッドで加熱した部分に無端ベルトの表面性状を転写する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−318482号公報
【特許文献2】特開2007−086747号公報
【特許文献3】特開平10−315515号公報
【特許文献4】特開2004−170548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、例えばサーマルヘッドと薄いフィルムを用いて部分的に印刷物を加熱する方法が、電子写真方式などにより画像が形成された印刷物の表面の光沢を部分的に制御するのに適していることを見出した。この方法によれば、サーマルヘッドを電気的に制御することで、印刷物上の任意の位置を加熱することができる。被処理媒体が電子写真方式によってトナーで画像が形成された印刷物である場合、印刷物のトナー像を、フィルムを介して加熱・溶融させ、その後冷却・分離することで、印刷物の任意位置の光沢を制御することができる。この場合、溶けたトナーが冷えて固化した後にフィルムから剥離されると、フィルムの表面性が転写されて平滑な表面になり、光沢性が向上する。
【0008】
この方法を用いる場合、所望の部分のトナーを溶かすために、フィルムは非常に薄くすることが望まれる。このようなフィルムは、加熱すると熱収縮によって変形し、再利用が困難となる。従って、このようなフィルムは、巻き取り軸に巻き取る巻き取り式にして使い切りにするのが簡便である。
【0009】
しかしながら、このようなフィルムは、サーマルヘッドによって加熱すると、上述のように、熱収縮による変形によって皺が発生する。そして、この皺によって、フィルムを上手く(平滑に)巻き取ることが困難となる。このように、従来、フィルムを皺無く巻き取ることが困難となることがあった。
【0010】
従って、本発明の目的は、加熱手段によって加熱されてフィルムに皺が生じた場合であっても、フィルムを皺無く巻き取ることを容易とすることが可能な表面処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は本発明に係る表面処理装置にて達成される。要約すれば、本発明は、供給軸から引き出され巻き取り軸に巻き取られて搬送されるフィルムと、前記フィルムの面の前記搬送方向と略直交する方向における異なる領域を選択的に加熱することで前記フィルムを介して被処理媒体の面を加熱する加熱手段と、を有し、被処理媒体を前記搬送方向に搬送される前記フィルムに接触させて同方向に搬送しながら前記加熱手段によって加熱し、その後、前記フィルムから被処理媒体を分離することで被処理媒体の表面を処理する表面処理装置において、前記フィルムの搬送経路上の、前記フィルムと被処理対象とが分離する分離部と、前記巻き取り軸によって前記フィルムが巻き取られる巻き取り部と、の間で前記フィルムを再加熱する再加熱手段を有することを特徴とする表面処理装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱手段によって加熱されてフィルムに皺が生じた場合であっても、フィルムを皺無く巻き取ることを容易とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る表面処理装置の要部の模式的な断面図である。
【図2】本発明の他の実施例に係る表面処理装置の要部の模式的な断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施例に係る表面処理装置の要部の模式的な断面図である。
【図4】サーマルヘッドの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【図5】サーマルヘッドの駆動回路の一例を示す回路図である。
【図6】本発明の一実施例に係る表面処理装置の概略制御態様を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施例に係る表面処理装置の模式的な断面図である。
【図8】本発明の一実施例に係る表面処理装置を備えた画像形成システムの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る表面処理装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0015】
実施例1
1.表面処理装置の基本構成
図1は、本発明の一実施例に係る表面処理装置100の要部の模式的な断面図である。本実施例では、表面処理装置100は、電子写真方式の画像形成装置によって熱溶融性のトナーで別途画像が形成された記録材を被処理媒体Sとして、その表面の表面性状を制御する処理(表面処理)を行う。
【0016】
表面処理装置100は、被処理媒体Sの搬送経路を挟んで対向して配置される、加熱手段としての接触型の局所加熱装置であるサーマルヘッド101と、支持部材としてのローラ型のプラテンであるプラテンローラ102と、を有する。プラテンローラ102は、サーマルヘッド101が後述するフィルム103及び被処理媒体Sを介して押圧される際の下支えとなると共に、被処理媒体Sを搬送する。サーマルヘッド101は、後述する処理領域情報に応じて選択的に発熱する。
【0017】
表面処理装置100は更に、サーマルヘッド101によって被処理媒体Sに押圧されると共に選択的に加熱されるフィルム103と、フィルム103の供給手段としての供給軸104と、フィルム103の巻き取り手段としての巻き取り軸105と、を有する。巻き取り軸105は、駆動源としての巻き取り軸駆動モータM1(図6)によって回転駆動される。巻き取り軸駆動モータM1は、フィルム103を供給軸104から巻き取り軸105に巻き取る方向に巻き取り軸105を回転駆動することができる。このとき、供給軸104は、フィルム103を巻き取り軸105へと供給する方向に回転可能とされる。尚、供給軸104を上記方向とは逆方向に回転させる方向に付勢してフィルム103のたるみを防止するための付勢手段を設けてもよい。
【0018】
ここで、フィルム103の被処理媒体Sに接触する側の面を表面、その反対側の面を裏面とする。又、被処理媒体Sのフィルム103が接触する側の面を表面、その反対側であるプラテンローラ102に接触する側の面を裏面とする。
【0019】
表面処理装置100は更に、フィルム103の裏面側に接触するように設けられた、テンションローラ106と分離ローラ107とを有する。供給軸104、巻き取り軸105、プラテンローラ102、テンションローラ106及び分離ローラ107の回転軸線方向は略平行である。フィルム103は、供給軸104から引き出され、テンションローラ106の外周の一部に掛け回されて、サーマルヘッド101とプラテンローラ102とによる押圧部(ニップ)である処理部Tに案内される。そして、フィルム103は、処理部Tを通過して、分離ローラ107の外周の一部に掛け回されて、巻き取り軸105に案内され、巻き取り軸105によって巻き取られる。このフィルム103の搬送方向を順方向とする。フィルム103の搬送方向は、供給軸104、巻き取り軸105、プラテンローラ102、テンションローラ106及び分離ローラ107の回転軸線方向と略直交する。被処理媒体Sの表面処理を行うとき、処理部Tにおけるフィルム103と被処理媒体Sの搬送方向は同方向である。テンションローラ106は、フィルム103のテンションを調節する。分離ローラ107は、サーマルヘッド101によって加熱され押圧されたフィルム103と被処理媒体Sとを分離する。テンションローラ106、分離ローラ107は、フィルム103の搬送に伴って回転する。
【0020】
表面処理装置100は更に、被処理媒体Sの搬送方向において処理部Tの上流側に、処理を行う前に被処理媒体Sの姿勢を整える、互いに押圧されたローラ対であるレジストローラ対108を有する。レジストローラ対108は、駆動源としてのレジストローラ駆動モータM2(図6)によって回転駆動される。レジストローラ対108は、被処理媒体Sの斜行を補正した後、その被処理媒体Sを処理部Tに搬送する。被処理媒体Sは、回転が停止されているレジストローラ対108の接触部(ニップ)にその搬送方向の先端が突き当たることで斜行が補正される。
【0021】
表面処理装置100は更に、被処理媒体Sの搬送方向において処理部Tの下流側に、互いに押圧されたローラ対である搬送ローラ対109を有する。搬送ローラ対109は、処理後の被処理媒体Sを表面処理装置100の外部の排出トレイ(後述)或いは後処理工程へと搬送する。
【0022】
尚、本実施例では、上述のように、表面処理装置100は、電子写真方式の画像形成装置によって別途画像が形成された記録材を被処理媒体Sとして、その表面処理を行う。従って、図7に示すように、本実施例では、表面処理装置100には、装置本体内に被処理媒体Sを給送する給送部110が設けられている。即ち、表面処理装置100には、別途画像形成済みの記録材とされる被処理媒体Sを積載するカセット111と、カセット111から被処理媒体Sを一枚ずつ分離給送する供給ローラ112とを備えた給送部110が設けられている。カセット111から供給ローラ112によって給送された被処理媒体Sは、レジストローラ対108まで搬送される。
【0023】
又、図7に示すように、表面処理装置100には、排出部113が設けられている。排出部113は、表面処理が施された後の被処理媒体Sを表面処理装置100の外部へ排出する排出ローラ対114と、表面処理装置100の外部において排出された被処理媒体Sが積載される排出トレイ115とを備えている。
【0024】
更に、図7に示すように、表面処理装置100には、被処理媒体Sの搬送方向においてレジストローラ対108の下流側、且つ、テンションローラ106の上流側に、被処理媒体Sの有無を検知する被処理媒体センサ116が設けられている。被処理媒体センサ116により、搬送中の被処理媒体Sを検知することができる。
【0025】
図4は、サーマルヘッド101の発熱体の構成の概略図である。サーマルヘッド101は、アルミナなどを用いた基板101aに印刷されたグレーズ101b(保温層)上にコモン(共通)電極101c、リード(個別)電極101dを形成すると共に、これらの各電極の上面に発熱抵抗体101eを形成して構成されている。更に、上記基板101a、保温層101b、各電極101c、101d及び発熱抵抗体101eの上面に、保護膜(オーバーコート層)101fが形成されている。又、サーマルヘッド101には、発熱体に選択的に電力を印加して発熱させるための駆動回路130(図6)が接続されている。更に、サーマルヘッド101には、被処理媒体Sに熱を与えた後の余分な熱を放熱させる放熱板などの部材が設けられている。サーマルヘッド101は、被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向に沿って直線状に配列された複数の発熱体(加熱部)を有し、その配列方向において異なる領域を選択的に加熱することでフィルム103を介して被処理媒体Sの面を加熱することができる。
【0026】
本実施例で使用したサーマルヘッド101は、発熱体密度300dpi、記録密度(処理密度)300dpi、駆動電圧30V、発熱体平均抵抗値5000Ωである。しかし、サーマルヘッド101の構成や仕様は、本実施例のものに限定されるものではない。
【0027】
図5は、一般的なサーマルヘッド101の駆動回路の概略図である。アルミナ基板上には、1ライン分の発熱抵抗体が設けられ、その両サイドに電極が配線されている。又、1ライン分のデータ(処理領域情報)を転送し保持するレジスタ群を含むドライバICが、同一アルミナ基板上或いは別個の配線基板上に設けられている。
【0028】
プラテンローラ102は、軸(芯金)の周りに、硬質ゴムなどの摩擦係数の高い部材から成る弾性層をローラ状に形成した弾性ローラである。本実施例では、軸の周りにシリコーンゴムから成る弾性層をローラ状に形成した耐熱性のゴムローラである。プラテンローラ102は、軸により表面処理装置100の装置本体に回動可能に取り付けられている。そして、この軸を介してプラテンローラ102を駆動源としてのプラテンローラ駆動モータM3(図6)により回転駆動することにより、被処理媒体Sとフィルム103とが搬送される。本実施例では、被処理媒体Sの搬送速度は、プラテンローラ102の回転速度によって決定され、サーマルヘッド101へ送られるデータ(処理領域情報)は、このプラテンローラ101の回転速度に基づいて決定される。本実施例では、表面処理時に、処理部において被処理媒体Sとフィルム103は略等速度で同方向に搬送される。
【0029】
フィルム(転写フィルム)103は、供給軸104に所望の長さ巻き取られて蓄えられており、必要に応じて巻き取り軸105により巻き取ることにより、処理部Tに供給される。フィルム103は、被処理媒体Sの表面を局所的に加熱するために、薄い可撓性材料で構成することが望まれる。この観点から、フィルム103の厚さは40μm以下が望ましい。フィルム103の厚さは、光沢処理の観点からは2μmまで薄くすることが可能であるが、強度の観点からは4μm以上が好ましい。更に、表面処理において、写真調の写像性に優れた表面性を得るために、フィルム103はある程度の剛度を持つことが有効であり、下記のような材質においては8μm以上が好ましい。又、材質については、サーマルヘッド101に対する耐熱性が必要である。ポリイミドなど、200℃を超える耐熱性を有する材質が望ましい。しかし、加熱履歴は残るが、PET(ポリエチレンテレフタラート)など安価で一般的な樹脂フィルム(熱可塑性フィルム)を採用することができる。又、フィルム103の表層(被処理媒体Sに接触する面)には、離型コーティングを施すことができる。この機能層は、低表面エネルギーのコーティング層であり、フィルム103と被処理媒体Sの表層の樹脂との離型性を向上するために施すことができる。フィルム103の表面の形状を被処理媒体Sの表面に転写するにあたっては、フィルム103の形状を如何に正確に転写するかという観点から、スムーズに離型することが望ましい。これらの組成としては、例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。又、形成方法については、コーティングを用いることができるが、コーティングに限ることはなく、あくまで転写すべき表面性を形成できることが重要となる。例えば、写真用の平滑な面を作るため、ベースフィルムにコーティングにより平滑面を作成することができる。又、フィルム103の裏面(サーマルヘッド101と摺動する面)には、スティック防止層を設けることができる。これはサーマルヘッド101との機械的摩擦を低減するために施すことができる。上述の離型コーティングに近い特性が要求されるため、具体的には、離型層と同様のフッ素樹脂、シリコーン樹脂などによるコーティングが有効である。本実施例では、フィルム103として、厚さ8μmのPETフィルム(基材)に離型コーティングを施したものを使用した。
【0030】
フィルム103は、その表面形状(表面性状)を被処理媒体Sに転写するため、高光沢の平滑フィルムであれば、高光沢な写真調の光沢表面に処理することが可能になる。又、逆に、サンドブラストなどによるマットフィルムを使用するか或いは特定の形状を施したフィルムを使えば、その形状の反転形状を被処理媒体Sに転写することが可能である。例えば、絹目や和紙や、エンボス紙に有るような様々な風合いの形状を転写することが可能である。又、幾何学模様を施すことも可能であり、格子など様々な風合いを転写することが可能である。又、更に1μmからサブμmオーダーの幾何学構造を作ることによりホログラム色を呈する表面を転写することが可能である。本実施例の表面処理装置100によれば、部分的に処理が可能であるため、これらのフィルム103から種類の異なるフィルム103を複数備えて、必要な場所にのみさまざまな形状やホログラム色を処理することも可能である。
【0031】
本実施例では、フィルム103のサイズは、その搬送方向と略直交する方向の幅が320mm〜350mm程度のものを使用し、サーマルヘッド102の同方向の幅も同等の幅を持つものを使用する。これにより、A3サイズ程度までの様々なサイズの被処理媒体Sに対応することが可能である。又、本実施例では、フィルム103は、その表面が平滑で、被処理媒体Sに光沢を付与するためのものであるものとする。又、本実施例では、フィルム103は、熱可塑性フィルムから成り、その薄さから、一度使用すると、加熱部分にしわが発生し、再利用することはできない。
【0032】
分離ローラ107の外周の一部に掛け回されているフィルム103の位置に、フィルム103から被処理媒体Sを分離する部分(分離部)Dが形成されている。分離ローラ107は、フィルム103の冷却機能と曲率によるフィルム103からの被処理媒体Sの分離機能の2つの役目を担っている。分離ローラ107は、SUSなどの金属ローラにより構成することができる。又、分離部Dの温度上昇を抑えるため冷却機構を設けてもよい。冷却機構としては、空冷機構を設けたり、冷却フィンを取り付けたりすることなどが有効である。
【0033】
尚、本実施例では、被処理媒体Sとフィルム103との分離を行うために、曲率分離を行う分離ローラ107を配設した。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、サーマルヘッド101の筐体を用いてフィルム103を屈曲させて、フィルム103から被処理媒体Sを分離しても良い。
【0034】
2.表面処理の基本動作
本実施例では、被処理媒体Sの表面処理を行う際に、被処理媒体Sは、給送部110(図7)から表面処理装置100の内部に一枚ずつ搬送される。被処理媒体Sは、レジストローラ対108の位置まで搬送され、斜行補正されるために一旦停止する。その後、レジストローラ対108が駆動されて、被処理媒体Sの搬送が再開されると、被処理媒体Sの搬送方向の先端が被処理媒体センサ116(図7)によって検知される。そして、被処理媒体Sが被処理媒体センサ116を通過するタイミングに合わせて、サーマルヘッド101を駆動するタイミングが制御される。被処理媒体Sは、発熱抵抗体を直線的に並べたサーマルヘッド101とプラテンローラ102とでニップが形成されている処理部Tに搬送される。処理部Tにおいては、被処理媒体Sの搬送経路を挟んで、プラテンローラ102と、処理領域情報に応じて選択的に発熱するサーマルヘッド101とが対向している。そして、サーマルヘッド101の下方にはフィルム103、更にその下方に被処理媒体Sが搬送される。フィルム103は、サーマルヘッド101とプラテンローラ102により、被処理媒体Sと共に挟持されて搬送される。サーマルヘッド101は、発熱抵抗体を後述する処理領域情報により決定された加熱パターンにより選択的に加熱可能であり、フィルム103と被処理媒体Sをプラテンローラ102との間に挟持して搬送しながら、被処理媒体S上のトナー像を再溶融させる。被処理媒体Sの搬送方向においてサーマルヘッド101の下流側の分離ローラ107により形成される分離部Dにおいて、フィルム103は被処理媒体Sから分離される。この時、被処理媒体Sは十分に冷却されているため、被処理媒体Sの表面のトナー像は、フィルム103の表面性が転写された状態で固化し、被処理媒体Sの表面に所望の光沢を付与することができる。
【0035】
巻き取り軸105は、被処理媒体Sの搬送に伴って搬送されるフィルム103を巻き取り、同時に分離部Dでフィルム103と被処理媒体Sを分離するために必要なテンションを発生させている。尚、サーマルヘッド101は、通常時はプラテンローラ102から離間した状態で待機させることができる。そして、サーマルヘッド101を、被処理媒体Sの処理領域の開始位置が処理部Tに到達するタイミングに合わせてプラテンローラ102に押圧し、処理領域の終了位置が処理部Tを通過した後にプラテンローラ102から離間ささせることができる。この場合、巻き取り軸105は、サーマルヘッド101がプラテンローラ102に押圧されると駆動され、離間されると停止するようにすることができる。
【0036】
表面処理が施された後の被処理媒体Sは、搬送ローラ対109によって排出部113(図7)へと搬送され、排出ローラ対114によって表面処理装置100の外部の排出トレイ115へと排出される。
【0037】
図6は、本実施例の表面処理装置100における表面処理動作の制御に係る概略制御態様を示す。表面処理装置100の各種動作は、コントローラ(制御部)150により統括的に制御される。コントローラ150は、パーソナルコンピュータなどの外部装置400から送られてくる処理命令、或いは表面処理装置100に設けられた操作部160により入力される処理命令に基づいて、表面処理装置100の各部の動作を制御する。本実施例との関連において、コントローラ150は、特に、サーマルヘッド駆動回路130、巻き取り軸駆動モータM1、レジストローラ駆動モータM2、プラテンローラ駆動モータM3、後述する再加熱手段120などの動作を制御する。コントローラ150は、制御手段としてのCPU151、記憶手段としてのROM152及びRAM153などを有し、CPU151が処理命令に応じて、ROM152、RAM153に格納されたプログラムやデータに従って制御を実行する。処理命令は、対応する領域が処理部Tを通過するタイミングに合わせてサーマルヘッド101を選択的に発熱させるための処理領域情報(光沢画像データ)を含む。サーマルヘッド101は、その処理領域情報に基づき被処理媒体Sの所定位置に対応して発熱して、被処理媒体Sの表面処理を行なう。
【0038】
尚、一般的に写真調の高光沢とは60度グロス(JIS Z 8741 鏡面光沢度−測定方法)において40%以上、更には80%以上の高光沢を意味する。従来の光沢処理手法では、一枚一枚異なる領域について、部分的に写真調の光沢処理をすることが困難であった。本実施例の表面処理装置100によれば、被処理媒体の上半分といった写真領域の処理はもちろん、見出し文字や、印刷内容に合わせて任意の形や領域について部分的に光沢処理を行うことができる。
【0039】
3.再加熱手段
上述のように、処理部Tにおいて被処理媒体S上のトナー像とフィルム103が密着した状態でサーマルヘッド101によって加熱された部分のトナー像が溶ける。被処理媒体S上のトナー像とフィルム103は密着したまま下流へと搬送され、分離ローラ107によってフィルム103が被処理媒体Sから分離される。この分離部Dにおいては、溶けたトナー像は既に冷却されており、被処理媒体Sの表面は、フィルム103の表面性が転写されて平滑になっており、光沢性が向上している。
【0040】
本実施例では、サーマルヘッド101として、発熱抵抗体ピッチ約0.085mm(300dpi)の記録密度300dpi、有効印字長300mmの部分グレーズタイプのものを用いた。上述のように、このサーマルヘッド101に配列された発熱抵抗体が発熱した部分のトナー像が溶け、この部分のみフィルム103の表面性が転写される。そのため、例えば「A」という画像信号(処理領域情報)に応じた発熱制御を行えば、被処理媒体S上のトナー像に「A」という平滑画像が形成される。尚、発熱抵抗体は、応答性を良くするために発熱量が小さいので、熱抵抗を小さくするためにフィルム103の厚さは薄い方が望ましい。そのため、上述のように、本実施例では、フィルム103として非常に薄い8μmのものを用いた。
【0041】
このフィルム103は、サーマルヘッド101によって加熱すると、熱収縮による変形によって皺が発生する。そして、前述のように、この皺によって、フィルム103を上手く(平滑に)巻き取ることが困難となる。又、この皺が生じたままフィルム103を巻き取り続けると、巻き取り部Wにおけるフィルム103の皺がサーマルヘッド101にまで及ぶことがある。そして、処理部Tから分離部Dまでの間におけるフィルム103と被処理媒体Sとの密着性に影響を与えることがある。その結果、均一なグロスを与えられなくなるなど、被処理媒体Sの表面性状の制御が意図した通りに行えなくなることがある。
【0042】
従って、本実施例の目的の一つは、加熱手段によって加熱されてフィルムに皺が生じた場合であっても、フィルムを皺無く巻き取ることを容易とすることである。又、本実施例の目的の他の一つは、加熱手段によって加熱されて皺が生じた状態でフィルムを巻き取ることでその皺が被処理媒体の表面処理に影響することを防止(抑制)することである。
【0043】
そこで、本実施例では、フィルム103の搬送経路において、加熱手段101と巻き取り手段105との間に、フィルム103を再加熱する再加熱手段120を設ける。より詳細には、フィルム103の搬送経路において、分離ローラ107による分離部Dの下流、且つ、巻き取り軸105による巻き取り部Wの上流でフィルム103を再加熱する再加熱手段120を設ける。
【0044】
本実施例では、特に、フィルム103の搬送経路上の、フィルム103と被処理媒体Sとが分離する分離部Dと、巻き取り軸105によってフィルム103が巻き取られる巻き取り部Wと、の間でフィルム103の裏面に接触するように、加熱ローラ121を設ける。本実施例では、この加熱ローラ121は、熱源121aとしてハロゲンヒータを内部に具備した、SUSなどの金属で作製された中空のローラで構成される。そして、加熱ローラ121は、熱源121aが発熱することで、搬送中のフィルム103を裏面側から加熱する。加熱ローラ121は、巻き取り軸105がフィルム103を巻き取るにことによって巻き取り半径が大きくなってもフィルム103に接触するような位置に配置されている。即ち、フィルム103は常に加熱ローラ121によって張架されている。加熱ローラ121の回転軸線方向は、供給軸104、巻き取り軸105、プラテンローラ102、テンションローラ106及び分離ローラ107の回転軸線方向は略平行である。加熱ローラ121は、フィルム103の搬送に伴って回転する。又、加熱ローラ121は、フィルム103の搬送方向と略直交する方向の略全域を加熱できるようになっている。即ち、再加熱手段120は、フィルム103の面の搬送方向と略直交する方向において、加熱手段101が加熱可能な領域の全域を加熱するようにすることができる。
【0045】
熱源121aの発熱動作は、コントローラ150によって制御され(図6)、本実施例ではフィルム103の搬送中は常に発熱させられる。この加熱ローラ121による加熱温度は、典型的には、サーマルヘッド101による加熱温度と同等とする。但し、巻き取り軸105に巻き取られるフィルム103の皺を許容しうる程度に低減できるのであれば、サーマルヘッド101による加熱温度より低温又はより高温としてもよい。
【0046】
尚、本実施例では、加熱ローラ121は、熱源121aを内装している。しかし、これに限定されるものではなく、加熱ローラは、ローラの外周から加熱する外部加熱方式のものでも良い。
【0047】
このように、表面処理装置100は、供給軸104から引き出され巻き取り軸105に巻き取られて搬送されるフィルム103を有する。又、表面処理装置100は、フィルム103の面の搬送方向と略直交する方向における異なる領域を選択的に加熱することでフィルム103を介して被処理媒体Sの面を加熱する加熱手段101を有する。この表面処理装置100は、被処理媒体Sを上記搬送方向に搬送されるフィルム103に接触させて同方向に搬送しながら加熱手段101によって加熱し、その後、フィルム103から被処理媒体Sを分離することで被処理媒体Sの表面を処理する。そして、表面処理装置100は、フィルム103の搬送経路上の、フィルム103と被処理対象Sとが分離する分離部Dと、巻き取り軸105によってフィルム103が巻き取られる巻き取り部Wと、の間でフィルム103を再加熱する再加熱手段120を有する。特に、本実施例では、再加熱手段120は、フィルム103に接触してフィルム103の面を加熱するローラ121を有する。
【0048】
処理部Tにおいてサーマルヘッド101で所望の画像信号(処理領域情報)に応じて部分加熱されたフィルム101は、加熱された部分が収縮して非加熱部との境界で皺が発生する。フィルム103は、加熱ローラ121による再加熱部Hを通過することによって、その搬送方向と略直交する方向の略全域を加熱され、全体が収縮して、皺が低減する。この皺が低減した状態で巻き取り軸15に巻き取ることによって、フィルム103は平滑(皺が無い状態)に巻き取られる。このように、サーマルヘッド101によって加熱されて皺が生じた場合であっても、フィルム103を皺無く巻き取ることが容易となる。そのため、巻き取り軸15に巻き取られるフィルム103に皺が生じることを抑制することができ、その皺がサーマルヘッド101による処理部Tに影響を及ぼすことを防止することができる。
【0049】
ここで、本実施例では、加熱ローラ121をフィルム103の裏面側に1本配置したが、図2に示すように、フィルム103を挟んで加熱ローラ121と対向する位置に対向ローラ122を設けてもよい。対向ローラ122は、プラテンローラ102と同様の耐熱性のゴムローラなどで構成することができる。このように再加熱手段120を加熱ローラ121と対向ローラ122とから成るローラ対構成として、フィルム103を挟持する。これにより、万一、巻き取り軸105に巻き取られるフィルム103に皺が生じても、その皺がより上流のサーマルヘッド101による処理部Tに影響を与えることを防止することができる。又、このように再加熱手段120を加熱ローラ121と対向ローラ122とから成るローラ対構成としてフィルム103を挟持することで、次のような効果も得られる。即ち、巻き取り軸105によるフィルム103の巻き取り半径に影響されることなく、常に加熱ローラ121とフィルム103とを接触させることができるので、再加熱手段120の配置の自由度が向上する。
【0050】
尚、所望により、フィルム103は、表面側から加熱することも可能である。上述のように再加熱手段120を、フィルム103を挟持するローラ対で構成する場合、少なくとも一方のローラがフィルム103の面を加熱するようにすることができる。
【0051】
以上、本実施例によれば、加熱手段101によって加熱されたフィルム103の皺を、再加熱手段120で加熱することによって低減する。これにより、巻き取り軸105にフィルム103を平滑に巻き取ることができる。即ち、フィルム103を皺無く巻き取ることが容易となる。そのため、フィルム103の皺が加熱手段101による処理部Tに影響を及ぼして均一なグロスを印刷物に与えることができなくなることを防止することが可能となる。
【0052】
又、本実施例によれば、ローラ121で再加熱手段120を構成して、このローラ121によってフィルム103を張架する。これにより、例え巻き取り軸105に巻き取られるフィルム103に皺が発生した場合であっても、その皺が加熱手段101による処理部Tに影響を与えないようにすることが容易となる。又、再加熱手段120をローラ対構成とすることによって、その配置の自由度を向上することができる。
【0053】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の表面処理装置の基本構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0054】
図3は、本実施例の表面処理装置100の要部の模式的な断面図である。本実施例では、フィルム103の搬送経路上の、フィルム103と被処理媒体Sとが分離する分離部Dと、巻き取り軸15によってフィルム103が巻き取られる巻き取り部Wとの間でフィルム103の裏面に接触するように再加熱用サーマルヘッド123を設ける。即ち、本実施例では、再加熱手段120は、フィルム103の面の搬送方向と略直交する方向における異なる領域を選択的に加熱することが可能である。本実施例では、この再加熱用サーマルヘッド123は、実質的に表面処理用サーマルヘッド101と同じ構成とされる。再加熱用サーマルヘッド123も、表面処理用サーマルヘッド101と同様に、コントローラ150の処理命令に従って、サーマルヘッド駆動回路によって駆動される(図示せず)。尚、表面処理用101に対して設けられているものと同様のプラテンローラを、再加熱用サーマルヘッド123に対して設けてもよい。
【0055】
この再加熱用サーマルヘッド123を、表面処理用サーマルヘッド101による処理部Tから、再加熱用サーマルヘッド123による再加熱部Hまでのフィルム103の搬送時間を考慮して時間的に遅らせて、次のように選択的に発熱させる。即ち、本実施例では、表面処理用サーマルヘッド101による加熱領域(処理領域)を規定する画像信号(処理領域情報)の反転画像信号(反転処理領域情報)に従って、処理領域の周囲の非処理領域に対応して、再加熱用サーマルヘッド123を選択的に発熱させる。即ち、本実施例では、再加熱手段120は、フィルム103の面の搬送方向と略直交する方向において、加熱手段101が加熱可能な領域のうち加熱手段101によって加熱されていない領域を加熱する。
【0056】
これにより、表面処理用サーマルヘッド101の加熱によって既に縮んでいる部分を再加熱用サーマルヘッド123で加熱することなく、効率的にその他の部分を加熱することができる。その結果、フィルム103は、再加熱用サーマルヘッド123による再加熱部Hを通過することによって、結果的にその搬送方向と略直交する方向の略全域が一度は加熱されたことになる。これにより、フィルム103の全体が収縮して、皺が低減し、巻き取り軸105によってフィルム103は平滑(皺が無い状態)に巻き取られる。そのため、巻き取り軸15に巻き取られるフィルム103に皺が生じることを抑制することができる。即ち、フィルム103を皺無く巻き取ることが容易となる。これにより、その皺が表面処理用サーマルヘッド101による処理部Tに影響を及ぼすことを防止(抑制)することができる。
【0057】
尚、本実施例のように再加熱用サーマルヘッド123を駆動するために画像信号(処理領域情報)を用いることによって、効率よく、巻き取り軸105に巻き取られるフィルム103の皺を低減することができる。但し、所望により、上記画像信号(処理領域情報)を用いずに、再加熱用サーマルヘッド123の全ての発熱抵抗体に電圧を印加してもよい。即ち、フィルム103の搬送中に常にサーマルヘッド123の全ての発熱抵抗体を発熱させて、再加熱用サーマルヘッド123によってフィルム103の搬送方向と略直交する方向の略全域を加熱する。これによって、フィルム103の幅全域が加熱され、フィルム103の全体が収縮して、皺が低減し、巻き取り軸105によってフィルム103は平滑(皺が無い状態)に巻き取られる。
【0058】
以上、本実施例によれば、再加熱手段120としてサーマルヘッド123を用いる。これにより、加熱手段101で加熱しなかった部分のみを再加熱手段120で加熱することで、無駄なく加熱してフィルム103の皺を低減することが可能となる。
【0059】
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例において、実施例1、2の表面処理装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0060】
実施例1、2では、表面処理装置は、電子写真方式の画像形成装置によって別途画像が形成された記録材を被処理媒体として、その表面処理を行う個別の表面処理装置であった。しかし、表面処理装置は、電子写真方式の画像形成装置に接続され、画像形成装置において画像が形成された記録材が、被処理媒体として表面処理装置に搬送されるものであってもよい。
【0061】
1.システム構成
図8は、本発明の一実施例に係る表面処理装置を備えた画像形成システムの全体構成を示す模式的な断面図である。本実施例では、表面処理装置100と、電子写真方式の画像形成装置200とが連結されて、画像形成システム300が構成されている。画像形成システム300は、画像形成装置200において記録用紙などの記録材Pに電子写真方式により熱溶融性トナーで画像を形成して、記録材Pの搬送方向において下流側に連結された表面処理装置100に受け渡す。表面処理装置100は、この画像が形成された記録材Pを被処理媒体Sとして、その表面の表面性状を制御する処理(表面処理)を行った後に出力する。
【0062】
2.画像形成装置
画像形成装置200は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することのできる中間転写方式を採用したタンデム型のデジタルプリンタである。画像形成装置200は、複数の画像形成部としてそれぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)210Y、210M、210C、210Bkを有する。
【0063】
尚、各画像形成部210Y、210M、210C、210Bkの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用の要素であることを表すために図中符号に与えた添え字Y、M、C、Bkは省略して、各色用のものに共通に適用されるものとして総括的に説明する。
【0064】
画像形成部210には、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム201が設けられている。感光ドラム201は、図中矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム201の周りには、その回転方向に従って順に次の各手段が設けられている。先ず、帯電手段としての帯電器202である。次に、露光手段としての露光装置(LEDユニット)203である。次に、現像手段としての現像器204である。次に、一次転写手段としての一次転写ローラ205である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置206である。
【0065】
又、各画像形成部210の各感光ドラム201に対向するように、中間転写体として無端ベルト状の中間転写体ベルト207が設けられている。中間転写ベルト207は、複数の支持部材としての駆動ローラ271、テンションローラ272、二次転写対向ローラ273によって張架されている。中間転写ベルト207は、駆動ローラ271が回転駆動されることによって、図中矢印R2方向に回転(周回移動)する。上記各一次転写ローラ205は、中間転写ベルト207の内周面側において、各感光ドラム201に対向して設けられている。各一次転写ローラ205は、中間転写ベルト207を介して各感光ドラム201に押圧され、中間転写ベルト207と各感光ドラム201とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1を形成する。又、中間転写ベルト207の外周面側において、二次転写対向ローラ273に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ208が設けられている。二次転写ローラ208は、中間転写ベルト207を介して二次転写対向ローラ273に押圧され、中間転写ベルト207と二次転写ローラ208とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成する。
【0066】
又、記録材Pの搬送方向において二次転写部N2の下流側には、定着手段としての定着器230が設けられている。
【0067】
更に、画像形成装置200は、記録材Pの搬送方向において二次転写部N2の上流側に設けられた記録材供給部240、二次転写部N2と定着器230との間に設けられた定着前搬送部250、定着器230の下流側に設けられた記録材排出部260を有する。
【0068】
フルカラー画像の形成時を例として、画像形成動作について説明する。画像形成時には、各画像形成部210において、回転する感光ドラム201の表面は帯電器202によって一様に帯電させられる。又、露光装置203に各画像形成部に対応する分解色の画像信号が入力され、この画像信号に応じて、一様に帯電処理された感光ドラム201の表面に、露光装置203から光が照射される。これによって、感光ドラム201上の電荷が中和され、感光ドラム201上には画像信号に応じた静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム201上に形成された静電潜像には、現像器204によって各画像形成部に対応する色のトナーが供給されてトナー像として現像される。感光ドラム201上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ205の作用によって中間転写体ベルト207に一次転写される。フルカラー画像の形成時には、各画像形成部210において各感光ドラム201上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト207上に順次に重ね合わせるように一次転写され、中間転写体ベルト207上にフルカラー画像用の多重トナー像が形成される。
【0069】
一方、記録材供給部240では、カセット241に収められた記録材Pが供給ローラ242及び分離ローラ対243によって1枚ずつ分離され、複数の搬送ローラ244によってレジストローラ対245へと搬送される。記録材Pの供給時及びレジストローラ対245への搬送中に斜行した記録材Pは、レジストローラ対245にその搬送方向の先端が突き当たることで斜行が補正される。
【0070】
中間転写体ベルト207上のトナー像は、二次転写ローラ208の作用によって記録材Pに二次転写される。その後、記録材Pは、定着前搬送部250により定着器230へと搬送される。定着器230は、対向するローラやベルトなどにより形成された接触部(定着ニップ)において、通過する記録材Pに所定の圧力と熱量を与える。これによって、記録材P上にトナー像を溶融固着させる。そのため、定着器230は、熱源となるヒータを備え、常に最適な温度が維持されるように制御されている。本実施例では、定着器230は、熱源を内部に備えた加熱ローラ231と、これに圧接して定着ニップを形成する加圧ローラ232とを有する。
【0071】
定着器230によって画像が定着された記録材Pは、記録材排出部260によって画像形成装置200から排出され、記録材Pの搬送方向において画像形成装置200の下流に連結された表面処理装置100へと搬送される。本実施例では、この画像が定着された記録材Pが、表面処理装置100において表面処理を施す被処理媒体Sである。
【0072】
ここで、各色のトナーは、樹脂と顔料とを主成分とする微粉体である。本実施例では、各色のトナーとしては、主にポリエステル樹脂と顔料とで構成されるものを用いた。
【0073】
3.表面処理装置
表面処理装置100の構成及び動作は、実施例1、2のものと実質的に同じである。但し、本実施例では、表面処理装置100は、画像形成装置200と接続されているので、実施例1、2の表面処理装置100におけるカセット111は設けられておらず、画像形成装置200から画像形成済みの記録材Pが被処理媒体Sとして直接搬送される。
【0074】
又、本実施例では、表面処理装置100のコントローラ150は、図示しない画像形成装置200側のコントローラ(制御部)と通信可能である。そして、本実施例では、コントローラ150は、画像形成装置200から入力される処理命令や、表面処理装置100に設けられた操作部により入力される処理命令に基づいて、表面処理装置100の各部の動作を制御することができる。処理命令は、対応する領域が処理部Tを通過するタイミングに合わせてサーマルヘッド101を選択的に発熱させるための処理領域情報を含む。サーマルヘッド101は、その処理領域情報に基づき被処理媒体Sの所定位置に対応して発熱して、被処理媒体Sの表面処理を行なう。実施例1、2と同様、コントローラ150は、パーソナルコンピュータなどの外部装置から処理命令が入力されるようになっていてもよい。
【0075】
このような画像形成システムに本発明に従う表面処理装置を適用しても、上記実施例1、2と同様の効果を奏し得る。
【0076】
その他
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0077】
上述の実施例では、被処理媒体として、電子写真画像形成装置において、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の有色トナーを用いた4色プロセスで画像が形成された記録材を用いた。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0078】
例えば、被処理媒体として、電子写真画像形成装置において、上記4色の有色トナーと、色材を含まない樹脂主体の透明トナーとを用いた5色プロセスにより画像が形成された記録材を用いてもよい。この場合、例えば、図8の画像形成装置200の画像形成部210Y、210M、210C、210Bkと同様の構成の透明画像用の画像形成部を、中間転写ベルト207の画像転写面の移動方向の最上流に設ける。透明トナーとしては、例えば、顔料を含まず、主にポリエステル樹脂で構成されるものを用いることができる。又、透明トナーとしては、光透過性が高く、着色剤が実質的に入らない樹脂から成る、実質的に無色であり、少なくとも可視光を実質的に散乱することなく良く透過する粒子を好適に用いることができる。但し、透明トナーは、定着後に上述のように実質的に無色透明となるものであれば好適に用いることができ、定着前には無色透明でなくてもよく、例えば集合したときに白色に見えるようなものであっても構わない。例えば、透明トナーは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに分版後、印字率の低い部分に透明トナーを補い、記録材の全体をトナーで覆うように印字パターンを決定し出力することができる。これにより、被処理媒体の任意の場所の表面処理が可能となる。その他、一定量の透明トナーを記録材の全面に載せるなどしてもよい。
【0079】
又、例えば、被処理媒体として、上記4色及び5色プロセスに限らず、樹脂コーティングを施した記録材に4色プロセスにより画像が形成された記録材を用いてもよい。
【0080】
又、例えば、溶融熱転写記録、昇華熱転写記録、インクジェット記録などにより記録された記録材も同様に、被処理媒体として用いることができる。この場合も、熱可塑性樹脂で記録材の面を覆うことより、被処理媒体の全面の任意の場所の表面処理が可能となる。
【0081】
又、上述の実施例では、被処理媒体の表面に部分的に光沢を付与する場合について説明した。一方、印刷物としては、特色として、金、銀などの金属質を表現することが求められることがある。サーマルヘッドを用いた熱転写プリンタでは、金属色のインクとして、例えばフィルムに金属蒸着層を形成し、これを熱により転写することにより、金属質の画像を形成することが可能である。熱転写方式で使用するフィルムは、フィルム基材と、フィルム基材にコーティングされたインク層とを有する。インク層は剥離層を介してフィルム基材にコーティングされることがあり、又インク層の上には接着層が設けられることがある。本発明は、このようなフィルムに金、銀などの金属色のインクを蒸着したものなどの特色用のフィルムを用い、サーマルヘッドで加熱することにより被処理媒体の表面に部分的にその特色の画像を熱転写する表面処理装置にも適用することができる。本発明においては、このように被処理媒体の表面に部分的に金属色のインクを熱転写し、金属光沢などの金属質の表現を付与することも含めて、被処理媒体の表面処理という。即ち、フィルムは被処理媒体上の熱可塑性樹脂画像表面と表面粗さが異なる表面粗さを表層に有するもの、或いは被処理媒体に加熱により溶融して転写されるインクがコーティングされたものとすることができる。このように、本発明は、フィルムを介して加熱して被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御したり、フィルム上の熱溶融性インクを被処理媒体の表面に部分的に熱転写したりする表面処理装置に適用可能である。
【0082】
尚、実施例2で説明したように再加熱用サーマルヘッドを用いる場合に、上流側の表面処理用サーマルヘッドで加熱した部分を除く全領域を加熱するのは省エネの観点からは好ましくない場合がある。この場合、例えば、フィルムの短手方向中心として対称となるように、表面処理用サーマルヘッドと再加熱用サーマルヘッドとで加熱すればよい。具体的には、制御手段が、上流側の表面処理用サーマルヘッドでフィルムを加熱した図形の鏡像図形部分を下流側の再加熱用サーマルヘッドで加熱するように制御する。当然、上流側で既に加熱した部分は下流側のサーマルヘッドで加熱しないように制御することで不要な加熱を抑制することができる。
【符号の説明】
【0083】
100 表面処理装置
101 サーマルヘッド(加熱手段)
103 フィルム
105 巻き取り軸(巻き取り手段)
120 再加熱手段
121 加熱ローラ
123 再加熱用サーマルヘッド
D 分離部
H 再加熱部
P 記録材
S 被処理媒体
T 処理部
W 巻き取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給軸から引き出され巻き取り軸に巻き取られて搬送されるフィルムと、前記フィルムの面の前記搬送方向と略直交する方向における異なる領域を選択的に加熱することで前記フィルムを介して被処理媒体の面を加熱する加熱手段と、を有し、被処理媒体を前記搬送方向に搬送される前記フィルムに接触させて同方向に搬送しながら前記加熱手段によって加熱し、その後、前記フィルムから被処理媒体を分離することで被処理媒体の表面を処理する表面処理装置において、
前記フィルムの搬送経路上の、前記フィルムと被処理対象とが分離する分離部と、前記巻き取り軸によって前記フィルムが巻き取られる巻き取り部と、の間で前記フィルムを再加熱する再加熱手段を有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記再加熱手段は、前記フィルムに接触して前記フィルムの面を加熱するローラを有することを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記再加熱手段は、前記フィルムを挟持するローラ対であって、少なくとも一方のローラが前記フィルムの面を加熱するローラ対を有することを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記再加熱手段は、前記フィルムの面の前記搬送方向と略直交する方向における異なる領域を選択的に加熱することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記再加熱手段は、前記フィルムの面の前記搬送方向と略直交する方向において、前記加熱手段が加熱可能な領域のうち前記加熱手段によって加熱されていない領域を加熱することを特徴とする請求項4に記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記再加熱手段は、前記フィルムの面の前記搬送方向と略直交する方向において、前記加熱手段が加熱可能な領域の全域を加熱することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−230204(P2012−230204A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97683(P2011−97683)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】