表面増強分光用基板
【課題】増強効果及び再現性が高く、低価格で製造が容易な表面増強分光用基板を提供する。
【解決手段】基板1の上に微粒子2が固相化されており、微粒子2の表面の一部が金属層3で被覆されている。金属付着微粒子10は、細密充填構造を取らず、いくつかの金属付着微粒子10が集合して、一つのクラスターを形成する。また、クラスターは間隔を置いて複数形成される。金属層3と基板1とは接触しておらず、各クラスターは基板1と電気的に分離されている。
【解決手段】基板1の上に微粒子2が固相化されており、微粒子2の表面の一部が金属層3で被覆されている。金属付着微粒子10は、細密充填構造を取らず、いくつかの金属付着微粒子10が集合して、一つのクラスターを形成する。また、クラスターは間隔を置いて複数形成される。金属層3と基板1とは接触しておらず、各クラスターは基板1と電気的に分離されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラマン分光や赤外分光等の分光測定に有効な表面増強分光用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
振動分光の一種であるラマン分光法は、分子をレーザ光で照射した際に発生する散乱光の波長を分析することにより分子種の同定を可能にする分析方法である。有効な手法である反面、散乱断面積が非常に小さいため適用範囲が限定されている。
【0003】
一方、表面増強効果を利用した光による分光測定が注目を集めている。金属あるいは半導体の微粒子の物理化学的特性は、微粒子の厚さ、サイズ、形状等に大きく依存する。例えば、サイズ100nm以下の金、銀、プラチナ等のナノ粒子に光を照射すると、ナノ粒子近傍に近接場と呼ばれる局在した強力な光の場が発生する。測定対象である分子ないしは薄膜状のサンプルを貴金属ナノ粒子でコーティングされた基板に展開して光学的手法にて分析することより、信号が数十倍(蛍光法および赤外分光法)から100万倍(ラマン分光法)増大されることが知られている。
【0004】
上記表面増強法を、例えばラマン分光に適用する場合は、金、銀等のナノ構造表面に測定対象を滴下し、レーザ光で励起して、ラマン散乱光を測定する。このようにすると、ラマン散乱光の強度が数桁から5、6桁程度まで増強される。
【0005】
上記増強現象が発見された当初は、電気化学的に表面が荒らされた銀基板が用いられた。その後は、真空蒸着により自己組織的に形成された銀に対してアニーリング法を適用して作製されたグレインや、基板上に吸着された金及び銀コロイド(コロイド法)が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。また、近年は、ナノリソグラフィー法と呼ばれる、基板上に形成された単分散のナノ粒子上に銀を蒸着して調製された帽子状の銀微粒子が用いられている(例えば、特許文献1参照)。さらに、電子ビームリソグラフィー法により基板上に形成されたナノサイズの銀構造体(電子ビーム法)等も用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−1703号公報
【特許文献2】特開2008−96189号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ralph A. Tripp et al., nanotoday JUN-AUG 2008 VOLUME3 NUMBER3-4 “Novel nanostructures for SERS biosensing”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の方法は、原理的に表面増強ラマン分光測定に有効であることは実証されているが、実用化に際して様々な問題を抱えている。アニーリング法により作製した銀のグレインでは、増強率がさほど大きくなく再現性に乏しい。コロイド法により作製した金及び銀コロイドでは、アニーリング法同様、増強率がさほど大きくなく、高価なコロイド液が大量に必要であるといった問題がある。ナノリソグラフィー法により作製した帽子状の銀微粒子では、細密充填されたナノ粒子を大面積の基板上に形成することが困難である。電子ビーム法では、電子描画装置の価格が億単位と非常に高価であり、電子ビームの走査に時間を要することから製造スループットが非常に低いといった欠点がある。
【0009】
表面増強ラマン法を実用化するには、性能の担保、再現性の保証、製造の容易さ、低価格化が不可欠である。これらの観点から、用いられている方法に、上記ナノリソグラフィー法がある。しかし、特許文献2に記載されたように、基板上に微粒子のみを相互に非接触状に配置する方法では、10倍程度の増強率しか得られないことがわかっている。このため、ナノリソグラフィー法を用いる場合は、図18に示すような細密充填構造に形成する。
【0010】
図18は、基板上に形成された単分散のナノ粒子上に帽子状に銀を蒸着して得られた銀微粒子60を上面から見た平面図を示す。このように、隙間なく細密に銀微粒子60が配置される。また、細密充填構造を構成し、分光用基板の領域にかかわらず均一な性能を担保するためには、図18のように、微粒子の粒径が揃っている(単分散性が非常に高い)ことが要求される。以上のように、ナノリソグラフィー法を用いても、性能を高めるためには、単分散性微粒子を細密充填配置しなければならないため、再現性、製造の容易さ、低価格化に問題があった。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、増強効果及び再現性が高く、低価格で製造が容易な表面増強分光用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の表面増強分光用基板は、金属が付着した金属付着微粒子が基板上に形成された表面増強効果を有する表面増強分光用基板であって、前記基板上には、複数の前記金属付着微粒子が集合して該金属付着微粒子の金属が相互に接触しているクラスターが間隔を置いて複数形成され、前記各クラスターは前記基板と電気的に分離されていることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板上のすべての領域について、細密充填構造を取る必要がないので、表面増強分光用基板の作製が容易になり、粒径が揃った金属付着微粒子を用いる必要もない。粒径が一様な金属付着微粒子を用いる必要がないので、低価格化が可能となる。また、作製が容易、低価格化が可能というだけではなく、基板上の金属付着微粒子をクラスター構造とすることにより、表面増強効果を向上させることができ、性能の再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る表面増強分光用基板の断面構造を示す図である。
【図2】本発明に係る表面増強分光用基板を上面から見た構造を示す平面図である。
【図3】表面増強分光用基板の金属付着微粒子によるクラスター化を示す図である。
【図4】金属付着微粒子によるクラスター内におけるプラズモンの伝播方向を示す図である。
【図5】クラスター周辺の近接場光の強度分布を示す図である。
【図6】異なる粒径の金属付着微粒子から構成されるクラスター群を示す平面図である。
【図7】異なる粒径の金属付着微粒子から構成され、多層化されたクラスター群を示す断面図である。
【図8】多層化されたクラスター群の撮影画像を示す図である。
【図9】異なる粒径の金属付着微粒子から構成されたクラスター群の撮像画像を示す図である。
【図10】実験に用いた各ラマン分光用基板の構造を示す断面図である。
【図11】図10のラマン分光用基板を用いて測定したラマンスペクトルを示す図である。
【図12】実験に用いた各表面増強分光用基板における金属付着微粒子の吸着密度の状態を示す図である。
【図13】図12の吸着密度が異なる表面増強分光用基板を用いて測定したラマンスペクトルを示す図である。
【図14】表面増強用基板を用いてラマン分光測定を行い、基板上の異なる3つの領域からそれぞれ測定されたラマンスペクトルを示す図である。
【図15】ラマン分光測定に用いた異なる粒径の金属付着微粒子を示す図である。
【図16】図15の2種類の金属付着微粒が混合して吸着された表面増強分光用基板を用いてラマン分光測定を行った結果を示す図である。
【図17】金属付着微粒子の粒径とラマン散乱光強度の関係を示す図である。
【図18】従来の細密充填型表面増強分光用基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。構造に関する図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0016】
図1は、本発明の表面増強分光用基板の基本的な構成を示す。ガラス、プラスティックやシリコン等の基板1の上に、微小球形状の金属付着微粒子10が形成されている。金属付着微粒子10は、例えば、粒径30nmから10μmの微小球形状の微粒子2と微粒子2に付着した金属層3とで構成されている。基板1上に微粒子2が固相化されており、微粒子2の表面の上半分程度が金属層3で帽子状に被覆されている。微粒子2はポリマー又はシリカ粒子等で構成される。金属層3は、金、銀、プラチナ(白金)、アルミ等の金属で構成されている。また、金、銀、プラチナ、アルミによる合金又は混合体のいずれかで構成されていても良い。さらに、基板1上の領域によって、金属層3の組成を変えても良い。金属層3の厚さは、2nm〜500nm程度に形成される。
【0017】
金属付着微粒子10は、図1に示すように、細密充填構造を取らず、いくつかの金属付着微粒子10が集合して、一つの集合体(クラスター)を形成する。クラスター内の金属付着微粒子10の金属層3は隣接する金属層同士で一部が接触するように形成されている。また、クラスターは間隔を置いて複数形成され、大きさが異なるクラスターが形成されるとともに、各クラスターは基板1上に不規則に散在している。このように、様々な形状と大きさに構成されたクラスターによるクラスター群が形成されている。
【0018】
図2は、金属付着微粒子10のクラスターが散在する様子を示す平面図である。図2は、同じ粒径の金属付着微粒子10が複数集まってクラスターを形成する例を示す。金属付着微粒子10の粒径とは、微粒子2の粒径とほぼ一致するものであるが、厳密には金属層3を含めた大きさが粒径となる。
【0019】
クラスターA1は、3個の金属付着微粒子10が集合することにより形成されている。クラスターA2は、9個の金属付着微粒子10が集合することにより形成されている。クラスターA3は、2個の金属付着微粒子10が集合することにより形成されている。クラスターA4は、3個の金属付着微粒子10が集合することにより形成されている。クラスターA5は、5個の金属付着微粒子10が集合することにより形成されている。図2からわかるように、基板1上には、大きさが異なり、形状も異なるクラスターが不規則に散在している。
【0020】
図1、2からわかるように、各クラスター内における金属付着微粒子10の金属層3は、隣接する金属層3と相互に接触しているので、1つのクラスター内における金属付着微粒子10はすべて電気的に接続されている。一方、金属層3のいずれも、基板1と接触していないので、各クラスターは、基板1と電気的に分離されている。
【0021】
図3は、実際に金属付着微粒子10がクラスターを構成し、各クラスターが不規則に散在している様子を走査型電子顕微鏡で撮影した画像を示す。白っぽい粒子が金属付着微粒子10に相当し、異なる形態のクラスターを形成していることがわかる。基板1上では、金属付着微粒子10が、ランダムに吸着されており、数個から数十個のクラスターが形成されていることが望ましい。
【0022】
本発明の表面増強分光用基板の製造方法を以下に示す。基板1上にポリマーもしくは、シリカ粒子による微粒子2の単層を形成する。微粒子2の単層の形成方法は色々あるが、一番簡便な方法としては、粒子懸濁液の塩濃度を増大させて粒子間の斥力を低減させ、粒子を高表面エネルギーの基板上に単層として物理吸着させることが、効果的かつ低コストである。
【0023】
適切に塩濃度を制御して若干の斥力を残すことにより、微粒子2が2層以上形成されることを防ぐことができる。次に微粒子2の上半分に金、銀、白金、アルミ等の金属層3を形成する。一番容易な形成方法としては、基板1に吸着した微粒子2を真空蒸着装置もしくはスパッタ装置内部に設置して、金属を飛散させる方法を挙げることができる。真空蒸着及びスパッタを用いた場合は、微粒子2の上方が金属で被覆されて金属層3が形成されるが、下方が金属で被覆されない。このため、金属付着微粒子10が基板1から電気的に分離されるので表面増強効果にとって望ましい。
【0024】
以上のように形成された表面増強分光用基板の金属付着微粒子10の金属層3中には自由電子が存在し、近紫外から近赤外波長の光が照射されると、自由電子の共鳴的振動は粒子表面上に局在する強力な近接場の形成につながる。このプラズモン共鳴周波数は、金属層3のサイズ、形状、元素に依存するが、異なったプラズモン共鳴周波数を有する金属付着微粒子10が共存することが表面増強効果の観点から望ましい。
【0025】
上記の手法によって得られる金属付着微粒子10の金属層3による金属クラスターは、数個から数十個の帽子状半球から構成され、各金属層が相互に接触することにより金属クラスター内の領域は電気的に接続される。これらのクラスターが光を吸収すると、面積の大きい部分から先鋭な部位にプラズモンが伝播し、先鋭部分で極めて強力な近接場が形成されることとなる。
【0026】
図2で示したクラスター群の各クラスターにおけるプラズモン伝播の様子を図4に示す。図中の矢印がプラズモン伝播方向を示す。クラスターA2では、中央部分が最も面積が大きいので、この領域から先鋭な部位、すなわちクラスターA2の角に相当する部位に向けてプラズモンが伝播する。他のクラスターでも同様に、面積が大きい領域から先鋭な部位に向かってプラズモンが伝播する。図5は、図4のようにプラズモンが伝播した場合に、発生する近接場を示す。近接場は、図の網掛線で表わされている領域である。このように、プラズモン伝播方向の先端部に近接場が生じる。
【0027】
図6は、粒径の異なる微粒子2を用い、粒径の異なる金属付着微粒子10によるクラスター形成の状態を示す図である。異なる粒径の微粒子2を基板1に不規則に吸着させた後、帽子状の金属層3をスパッタ又は真空蒸着により形成する。
【0028】
図6のように、クラスターB1は、粒径が異なるものが含まれる3個の金属付着微粒子10により形成される。クラスターB2は、粒径が異なるものが含まれる8個の金属付着微粒子10により形成される。クラスターB3は、粒径が異なるものが含まれる3個の金属付着微粒子10により形成される。クラスターB4は、粒径が同じの2個の金属付着微粒子10により形成される。クラスターB5は、粒径が異なるものが含まれる3個の金属付着微粒子10により形成される。クラスターB6は、粒径が異なるものが含まれる5個の金属付着微粒子10により形成される。
【0029】
プラズモン共鳴周波数は、金属層3のサイズ、形状、元素に依存するが、図6は、金属層3の大きさ(サイズ)を変えた金属付着微粒子10が共存する例を示している。図6のように、様々な粒径の金属付着微粒子10が集合することにより、1つのクラスターに異なるプラズモン共鳴周波数が存在するようになるため、クラスターの共鳴周波数は一定の幅を持つことになる。
【0030】
近接場強度をさらに増強するためには、サイズが異なる金属付着微粒子10を2層目以上に形成することが望ましい。1層目の形成方法と同じ方法を用いて2層目を形成するが、2層目の形成には、1層目に用いた金属付着微粒子10とは粒径が大きく異なる金属付着微粒子10を用いることが望ましい。
【0031】
図7は、1層目の金属付着微粒子10の粒径を異なるようにし、さらに2層目でも金属付着微粒子10の粒径を異なるように形成した例である。クラスターC1では、1層目は同じ粒径の微粒子2に金属層3が被覆されることにより、同じ粒径の金属付着微粒子が形成される。しかし、2層目では1層目とは異なる粒径の微粒子32に金属層33が被覆されることにより、金属付着微粒子が形成される。このように、1層目と2層目で金属付着微粒子の粒径が異なる。
【0032】
また、クラスターC2の1層目は、微粒子2上に金属層3が形成された金属付着微粒子、微粒子22上に金属層23が形成された金属付着微粒子、微粒子32上に金属層33が形成された金属付着微粒子により構成されている。微粒子2、22、32は、いずれも粒径が異なるため、粒径が異なる3種類の金属付着微粒子が形成される。一方、クラスターC2の2層目は、微粒子22上に金属層23が形成された金属付着微粒子、微粒子32上に金属層33が形成された金属付着微粒子等で構成されている。微粒子22、32は粒径が異なるため、粒径が異なる金属付着微粒子が形成される。
【0033】
この場合に、プラズモンは、面積の大きな部分から先鋭な部位に伝播するので、図の矢印のように、粒径の大きな金属付着微粒子10から粒径の小さな金属付着微粒子10に伝播することになる。このように、1層目の領域内におけるプラズモン伝播及び2層目の領域内におけるプラズモン伝播に加えて、1層目から2層目あるいは2層目から1層目の方向にプラズモンの伝播が発生するので、近接場強度がさらに強くなる。
【0034】
図8は、単層ではなく、多層化された金属クラスターを走査型電子顕微鏡で撮影した画像を示す。図9は、異なる粒径の金属付着微粒子から構成される金属クラスターを走査型電子顕微鏡で撮影した画像データを示す。
【0035】
次に、本発明の表面増強分光用基板の増強効果を図10、図11に示す。図10(a)は、基板1上に金薄膜4を20nmの厚さに形成し、この金薄膜4上に微粒子2として粒径100nmのシリカ粒子を吸着させてクラスター化し、シリカ粒子上に帽子状の銀からなる厚さ80nmの金属層3を形成してラマン分光用基板を作製した。
【0036】
図10(b)は、基板1上に金薄膜4を20nmの厚さに形成し、この金薄膜4上に微粒子2として粒径100nmのシリカ粒子を吸着させてクラスター化し、シリカ粒子上には金属層3を形成しなかった。このように、ラマン分光用基板を作製した。
【0037】
図10(c)は、基板1上に金薄膜を形成せずに、基板1上に粒径100nmのシリカ粒子の微粒子2を吸着させてクラスター化し、シリカ粒子上に帽子状の銀からなる厚さ80nmの金属層3を形成してラマン分光用基板を作製した。
【0038】
図10(d)は、基板1上に厚さ80nmの銀薄膜5のみを形成して表面増強分光用基板を作製した。図10(e)は、基板1上に厚さ20nmの金薄膜5のみを形成してラマン分光用基板を作製した。
【0039】
上記図10(a)〜10(e)までのラマン分光用基板を用いてラマン分光の測定を行った。図10(a)〜10(e)までのラマン分光用基板上に、濃度10mMのローダミン6Gエタノール溶液を滴下し、乾燥させたものを試料として用いた。このローダミン6Gは、蛍光色素の1種である。ラマン散乱の励起光として発振波長514.5nmのレーザを用い、光強度は400μWに設定した。ラマン散乱光は、レーザラマン分光装置により測定した。
【0040】
上記測定結果を、図11に示す。縦軸は信号強度を、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。図11のグラフのうち、曲線Aが10(a)のラマン分光用基板による測定結果を、曲線Bが10(b)のラマン分光用基板による測定結果を、曲線Cが10(c)のラマン分光用基板による測定結果を、曲線Dが10(d)のラマン分光用基板による測定結果を、曲線Eが10(e)のラマン分光用基板による測定結果を示す。なお、曲線Dと曲線Eとは一致している。これらの曲線からわかるように、強い増強が見られたバンドが現われているのは、曲線Aと曲線Cである。他の曲線については、増強を示すバンドは現われていない。図11の測定結果から、10(a)のラマン分光用基板と10(c)のラマン分光用基板においてのみ増強効果が見られることがわかる。
【0041】
10(c)のラマン分光用基板は、図1の本発明の表面増強分光用基板と基本的に同一の構成であり、また、10(a)のラマン分光用基板は、金薄膜4が存在することを除けば、図1の構成と基本的に同一であるので、これにより、本発明の表面増強分光用基板の増強効果が示された。
【0042】
次に、金属付着微粒子10の基板1に対する吸着密度により、増強効果がどのように変わるのかを測定した。この測定には、図1、2のようにクラスター化された表面増強分光用基板を用いた。ここで、微粒子2には粒径100nmのシリカ粒子を用い、金属層3は膜厚140nmの銀を蒸着することにより構成した。一方、基板1への微粒子2の吸着については、シリカ粒子懸濁液の塩濃度を適宜調整すること等により、吸着密度を5つのパターンに形成した。
【0043】
このように、微粒子2をクラスター化し、クラスターの分散度を変えることにより、金属付着微粒子10の吸着密度が変えられた表面増強分光用基板上に、濃度10mMのローダミン6Gエタノール溶液を滴下し、乾燥させた。この試料によりラマン分光スペクトルをレーザラマン分光装置で測定した。励起光には、発振波長514.5nmのレーザ光を用い、光強度は400μWとした。
【0044】
図12に、金属付着微粒子10の吸着密度が異なる5つのパターンを示す。図12(a)〜図12(e)は、走査型電子顕微鏡による撮像画像を示す。白っぽく見えるのが、金属付着微粒子10を示すが、図12(a)が最も吸着密度が低く、図12(b)、図12(c)、図12(d)、図12(e)の順に吸着密度が高くなっている。
【0045】
次に、これらの吸着密度が異なる表面増強分光用基板を用いてラマン分光測定による結果を図13に示す。縦軸は信号強度を、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。ラマンスペクトルのうち、曲線Xが図12(a)の吸着密度の場合を、曲線Yが図12(b)の吸着密度の場合を、曲線Zが図12(c)の吸着密度の場合を、曲線Uが図12(d)の吸着密度の場合を、曲線Vが図12(e)の吸着密度の場合を示す。全体の信号強度を見ると、曲線Vが最も低く、曲線U、曲線Z、曲線Y、曲線Xの順に信号強度が高くなっている。したがって、粒子の吸着密度が低い方、すなわち金属付着微粒子がクラスター化されて分散している方が表面増強効果が高くなることがわかる。
【0046】
次に、図1の構成の表面増強分析基板を用いて金属付着微粒子の質が均一に形成されているかの確認を行った。ここで、微粒子2には粒径150nmのシリカ粒子を用い、金属層3は膜厚20nmの銀を蒸着することにより構成した。表面増強分光用基板上に、濃度10mMのローダミン6Gエタノール溶液を滴下し、乾燥させた。この試料によりラマン分光スペクトルをレーザラマン分光装置で測定した。励起光には、発振波長514.5nmのレーザ光を用い、光強度は400μWとした。そして、基板1上の異なる領域からのラマンスペクトルをレーザラマン分光装置で測定した。
【0047】
図14には、基板1上の3つの領域からのラマンスペクトルが表示されている。縦軸は信号強度を、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。D1〜D3の曲線がそれぞれ基板1上の異なる領域からのラマン分光測定結果である。D1〜D3の曲線のピークの高さは、ほぼ同じであることがわかり、このことから金属付着微粒子の質は均一であると考えられる。
【0048】
次に、粒径の異なる金属付着微粒子を混合して作製した表面増強分光用基板を用いてラマン分光測定を行った結果を図16に示す。図16の縦軸は信号強度を、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。このラマン分光測定には、図15に示す2種類の粒径の金属付着微粒子を用いた。微粒子2A上に帽子状の金属層3Aが形成された金属付着微粒子10Aと、微粒子2B上に帽子状の金属層3Bが形成された金属付着微粒子10Bである。微粒子2A、2Bにはシリカ粒子を、金属層3A、3Bには銀を用いた。図に示されるように、微粒子2Aの粒径は100nmとし、微粒子2Bの粒径を50nmとした。これら2種類の粒径による金属付着微粒子が混合され、かつ、図6のようにクラスター化された表面増強分光用基板を上記ラマン分光測定に用いた。
【0049】
金属付着微粒子10A、10Bが混合して形成された表面増強分光用基板は、上記の異なる粒径の微粒子2Aと微粒子2Bを混合した微粒子混合懸濁液を作製し、この微粒子混合懸濁液を基板1に吸着させてクラスター化し、微粒子2A上には金属層3Aを、微粒子2B上には金属層3Bを形成して作製した。微粒子混合懸濁液は、微粒子2Aと微粒子2Bの混合比率を変化させて4種類作製し、これらの微粒子混合懸濁液に基づき、それぞれ表面増強分光用基板を作製した。微粒子2Aの懸濁液と微粒子2Bの懸濁液の混合比率が50:50の微粒子混合懸濁液による表面増強分光用基板をE1、混合比率が70:30の微粒子混合懸濁液による表面増強分光用基板をE2、混合比率が90:10の微粒子混合懸濁液による表面増強分光用基板をE3、混合比率が100:0の微粒子混合懸濁液による表面増強分光用基板をE4として作製した。上記のように、粒径100nmの微粒子2Aの混合割合を最初は50%とし、次に順に混合割合を増加させ、最後は微粒子2Aのみ、すなわち金属付着微粒子10Aのみとした。
【0050】
E1〜E4の4種類の各表面増強分光用基板上に、濃度10mMのローダミン6Gエタノール溶液を滴下し、乾燥させた。この試料によりラマン分光スペクトルをレーザラマン分光装置で測定した。励起光には、発振波長514.5nmのレーザ光を用い、光強度は50μWとした。図16のラマンスペクトルE1〜E4は、上記各表面増強分光用基板E1〜E4に対応している。図16を見ると、ピークの高さは、2種類の粒径の金属付着微粒子の混合比率が近くなる程、高くなっており、50:50の混合比率のときに最も高くなっていることがわかる。
【0051】
一方、金属付着微粒の粒径とラマン散乱光強度の関係を図17に示す。まず、図1、2に示されるような、金属付着微粒子10の粒径が同じものをクラスター化した表面増強分光用基板を作製した。金属付着微粒子10の粒径を100nmにしてクラスター化した表面増強分光用基板をF1、金属付着微粒子10の粒径を150nmにしてクラスター化した表面増強分光用基板をF2、金属付着微粒子10の粒径を50nmにしてクラスター化した表面増強分光用基板をF3として作製した。F1〜F3のすべてにおいて、微粒子2には、シリカ粒子を、金属層3には銀を用いた。
【0052】
F1〜F3の3種類の各表面増強分光用基板上に、濃度10mMのローダミン6Gエタノール溶液を滴下し、乾燥させた。この試料によりラマン分光スペクトルをレーザラマン分光装置で測定した。励起光には、発振波長514.5nmのレーザ光を用い、光強度は500μWとした。
【0053】
図17のラマンスペクトルに示されるように、粒径100nmの金属付着微粒子を用いたF1と粒径150nmの金属付着微粒子を用いたF2では信号強度は近くなっている。しかし、F1は、粒径50nmの金属付着微粒子を用いたF3より、全体に信号強度が高くなっている。このように、粒径の大きな金属付着微粒子を用いた表面増強分光用基板の方が信号強度が高くなる。他方、図16からわかるように、粒径100nmのみの金属付着微粒子で表面増強分光用基板を作製するのではなく、他の異なる粒径の金属付着微粒子と混合して表面増強分光用基板を作製した方が、ラマン信号強度がさらに増強されることがわかる。
【0054】
以上のように、本発明の表面増強分光用基板では、従来のナノリソグラフィー法による分光用基板と比較して、金属付着微粒子が細密充填されている必要がなく、また金属付着微粒子は単分散性である必要がない。また、細密充填構造でなく、金属付着微粒子がクラスター化されて分散されている方が増強効果が高いことがわかった。このため、金属付着微粒子をクラスター化し、各クラスターが不規則に散在するように構成している。本発明の表面増強分光用基板は、粒径に幅をもたせた金属付着微粒子をランダムに基板上に吸着させることで、簡単に上記の構造を実現できるものである。さらに、異なる粒径の金属付着微粒子層を複数積み上げることによっても、上記の構造を実現することができる。ランダムに金属付着微粒子を基板に吸着させるのは容易であり、大面積の基板を高い歩留まりで作製するのに有利である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の表面増強分光用基板は、ラマン分光法、赤外分光法等の分光分析方法に幅広く適用することができ、例えば、臨床検査、環境モニタリング、品質管理等の分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 基板
2 微粒子
3 金属層
22 微粒子
23 金属層
32 微粒子
33 金属層
10 金属付着微粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラマン分光や赤外分光等の分光測定に有効な表面増強分光用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
振動分光の一種であるラマン分光法は、分子をレーザ光で照射した際に発生する散乱光の波長を分析することにより分子種の同定を可能にする分析方法である。有効な手法である反面、散乱断面積が非常に小さいため適用範囲が限定されている。
【0003】
一方、表面増強効果を利用した光による分光測定が注目を集めている。金属あるいは半導体の微粒子の物理化学的特性は、微粒子の厚さ、サイズ、形状等に大きく依存する。例えば、サイズ100nm以下の金、銀、プラチナ等のナノ粒子に光を照射すると、ナノ粒子近傍に近接場と呼ばれる局在した強力な光の場が発生する。測定対象である分子ないしは薄膜状のサンプルを貴金属ナノ粒子でコーティングされた基板に展開して光学的手法にて分析することより、信号が数十倍(蛍光法および赤外分光法)から100万倍(ラマン分光法)増大されることが知られている。
【0004】
上記表面増強法を、例えばラマン分光に適用する場合は、金、銀等のナノ構造表面に測定対象を滴下し、レーザ光で励起して、ラマン散乱光を測定する。このようにすると、ラマン散乱光の強度が数桁から5、6桁程度まで増強される。
【0005】
上記増強現象が発見された当初は、電気化学的に表面が荒らされた銀基板が用いられた。その後は、真空蒸着により自己組織的に形成された銀に対してアニーリング法を適用して作製されたグレインや、基板上に吸着された金及び銀コロイド(コロイド法)が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。また、近年は、ナノリソグラフィー法と呼ばれる、基板上に形成された単分散のナノ粒子上に銀を蒸着して調製された帽子状の銀微粒子が用いられている(例えば、特許文献1参照)。さらに、電子ビームリソグラフィー法により基板上に形成されたナノサイズの銀構造体(電子ビーム法)等も用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−1703号公報
【特許文献2】特開2008−96189号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ralph A. Tripp et al., nanotoday JUN-AUG 2008 VOLUME3 NUMBER3-4 “Novel nanostructures for SERS biosensing”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の方法は、原理的に表面増強ラマン分光測定に有効であることは実証されているが、実用化に際して様々な問題を抱えている。アニーリング法により作製した銀のグレインでは、増強率がさほど大きくなく再現性に乏しい。コロイド法により作製した金及び銀コロイドでは、アニーリング法同様、増強率がさほど大きくなく、高価なコロイド液が大量に必要であるといった問題がある。ナノリソグラフィー法により作製した帽子状の銀微粒子では、細密充填されたナノ粒子を大面積の基板上に形成することが困難である。電子ビーム法では、電子描画装置の価格が億単位と非常に高価であり、電子ビームの走査に時間を要することから製造スループットが非常に低いといった欠点がある。
【0009】
表面増強ラマン法を実用化するには、性能の担保、再現性の保証、製造の容易さ、低価格化が不可欠である。これらの観点から、用いられている方法に、上記ナノリソグラフィー法がある。しかし、特許文献2に記載されたように、基板上に微粒子のみを相互に非接触状に配置する方法では、10倍程度の増強率しか得られないことがわかっている。このため、ナノリソグラフィー法を用いる場合は、図18に示すような細密充填構造に形成する。
【0010】
図18は、基板上に形成された単分散のナノ粒子上に帽子状に銀を蒸着して得られた銀微粒子60を上面から見た平面図を示す。このように、隙間なく細密に銀微粒子60が配置される。また、細密充填構造を構成し、分光用基板の領域にかかわらず均一な性能を担保するためには、図18のように、微粒子の粒径が揃っている(単分散性が非常に高い)ことが要求される。以上のように、ナノリソグラフィー法を用いても、性能を高めるためには、単分散性微粒子を細密充填配置しなければならないため、再現性、製造の容易さ、低価格化に問題があった。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、増強効果及び再現性が高く、低価格で製造が容易な表面増強分光用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の表面増強分光用基板は、金属が付着した金属付着微粒子が基板上に形成された表面増強効果を有する表面増強分光用基板であって、前記基板上には、複数の前記金属付着微粒子が集合して該金属付着微粒子の金属が相互に接触しているクラスターが間隔を置いて複数形成され、前記各クラスターは前記基板と電気的に分離されていることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板上のすべての領域について、細密充填構造を取る必要がないので、表面増強分光用基板の作製が容易になり、粒径が揃った金属付着微粒子を用いる必要もない。粒径が一様な金属付着微粒子を用いる必要がないので、低価格化が可能となる。また、作製が容易、低価格化が可能というだけではなく、基板上の金属付着微粒子をクラスター構造とすることにより、表面増強効果を向上させることができ、性能の再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る表面増強分光用基板の断面構造を示す図である。
【図2】本発明に係る表面増強分光用基板を上面から見た構造を示す平面図である。
【図3】表面増強分光用基板の金属付着微粒子によるクラスター化を示す図である。
【図4】金属付着微粒子によるクラスター内におけるプラズモンの伝播方向を示す図である。
【図5】クラスター周辺の近接場光の強度分布を示す図である。
【図6】異なる粒径の金属付着微粒子から構成されるクラスター群を示す平面図である。
【図7】異なる粒径の金属付着微粒子から構成され、多層化されたクラスター群を示す断面図である。
【図8】多層化されたクラスター群の撮影画像を示す図である。
【図9】異なる粒径の金属付着微粒子から構成されたクラスター群の撮像画像を示す図である。
【図10】実験に用いた各ラマン分光用基板の構造を示す断面図である。
【図11】図10のラマン分光用基板を用いて測定したラマンスペクトルを示す図である。
【図12】実験に用いた各表面増強分光用基板における金属付着微粒子の吸着密度の状態を示す図である。
【図13】図12の吸着密度が異なる表面増強分光用基板を用いて測定したラマンスペクトルを示す図である。
【図14】表面増強用基板を用いてラマン分光測定を行い、基板上の異なる3つの領域からそれぞれ測定されたラマンスペクトルを示す図である。
【図15】ラマン分光測定に用いた異なる粒径の金属付着微粒子を示す図である。
【図16】図15の2種類の金属付着微粒が混合して吸着された表面増強分光用基板を用いてラマン分光測定を行った結果を示す図である。
【図17】金属付着微粒子の粒径とラマン散乱光強度の関係を示す図である。
【図18】従来の細密充填型表面増強分光用基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。構造に関する図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0016】
図1は、本発明の表面増強分光用基板の基本的な構成を示す。ガラス、プラスティックやシリコン等の基板1の上に、微小球形状の金属付着微粒子10が形成されている。金属付着微粒子10は、例えば、粒径30nmから10μmの微小球形状の微粒子2と微粒子2に付着した金属層3とで構成されている。基板1上に微粒子2が固相化されており、微粒子2の表面の上半分程度が金属層3で帽子状に被覆されている。微粒子2はポリマー又はシリカ粒子等で構成される。金属層3は、金、銀、プラチナ(白金)、アルミ等の金属で構成されている。また、金、銀、プラチナ、アルミによる合金又は混合体のいずれかで構成されていても良い。さらに、基板1上の領域によって、金属層3の組成を変えても良い。金属層3の厚さは、2nm〜500nm程度に形成される。
【0017】
金属付着微粒子10は、図1に示すように、細密充填構造を取らず、いくつかの金属付着微粒子10が集合して、一つの集合体(クラスター)を形成する。クラスター内の金属付着微粒子10の金属層3は隣接する金属層同士で一部が接触するように形成されている。また、クラスターは間隔を置いて複数形成され、大きさが異なるクラスターが形成されるとともに、各クラスターは基板1上に不規則に散在している。このように、様々な形状と大きさに構成されたクラスターによるクラスター群が形成されている。
【0018】
図2は、金属付着微粒子10のクラスターが散在する様子を示す平面図である。図2は、同じ粒径の金属付着微粒子10が複数集まってクラスターを形成する例を示す。金属付着微粒子10の粒径とは、微粒子2の粒径とほぼ一致するものであるが、厳密には金属層3を含めた大きさが粒径となる。
【0019】
クラスターA1は、3個の金属付着微粒子10が集合することにより形成されている。クラスターA2は、9個の金属付着微粒子10が集合することにより形成されている。クラスターA3は、2個の金属付着微粒子10が集合することにより形成されている。クラスターA4は、3個の金属付着微粒子10が集合することにより形成されている。クラスターA5は、5個の金属付着微粒子10が集合することにより形成されている。図2からわかるように、基板1上には、大きさが異なり、形状も異なるクラスターが不規則に散在している。
【0020】
図1、2からわかるように、各クラスター内における金属付着微粒子10の金属層3は、隣接する金属層3と相互に接触しているので、1つのクラスター内における金属付着微粒子10はすべて電気的に接続されている。一方、金属層3のいずれも、基板1と接触していないので、各クラスターは、基板1と電気的に分離されている。
【0021】
図3は、実際に金属付着微粒子10がクラスターを構成し、各クラスターが不規則に散在している様子を走査型電子顕微鏡で撮影した画像を示す。白っぽい粒子が金属付着微粒子10に相当し、異なる形態のクラスターを形成していることがわかる。基板1上では、金属付着微粒子10が、ランダムに吸着されており、数個から数十個のクラスターが形成されていることが望ましい。
【0022】
本発明の表面増強分光用基板の製造方法を以下に示す。基板1上にポリマーもしくは、シリカ粒子による微粒子2の単層を形成する。微粒子2の単層の形成方法は色々あるが、一番簡便な方法としては、粒子懸濁液の塩濃度を増大させて粒子間の斥力を低減させ、粒子を高表面エネルギーの基板上に単層として物理吸着させることが、効果的かつ低コストである。
【0023】
適切に塩濃度を制御して若干の斥力を残すことにより、微粒子2が2層以上形成されることを防ぐことができる。次に微粒子2の上半分に金、銀、白金、アルミ等の金属層3を形成する。一番容易な形成方法としては、基板1に吸着した微粒子2を真空蒸着装置もしくはスパッタ装置内部に設置して、金属を飛散させる方法を挙げることができる。真空蒸着及びスパッタを用いた場合は、微粒子2の上方が金属で被覆されて金属層3が形成されるが、下方が金属で被覆されない。このため、金属付着微粒子10が基板1から電気的に分離されるので表面増強効果にとって望ましい。
【0024】
以上のように形成された表面増強分光用基板の金属付着微粒子10の金属層3中には自由電子が存在し、近紫外から近赤外波長の光が照射されると、自由電子の共鳴的振動は粒子表面上に局在する強力な近接場の形成につながる。このプラズモン共鳴周波数は、金属層3のサイズ、形状、元素に依存するが、異なったプラズモン共鳴周波数を有する金属付着微粒子10が共存することが表面増強効果の観点から望ましい。
【0025】
上記の手法によって得られる金属付着微粒子10の金属層3による金属クラスターは、数個から数十個の帽子状半球から構成され、各金属層が相互に接触することにより金属クラスター内の領域は電気的に接続される。これらのクラスターが光を吸収すると、面積の大きい部分から先鋭な部位にプラズモンが伝播し、先鋭部分で極めて強力な近接場が形成されることとなる。
【0026】
図2で示したクラスター群の各クラスターにおけるプラズモン伝播の様子を図4に示す。図中の矢印がプラズモン伝播方向を示す。クラスターA2では、中央部分が最も面積が大きいので、この領域から先鋭な部位、すなわちクラスターA2の角に相当する部位に向けてプラズモンが伝播する。他のクラスターでも同様に、面積が大きい領域から先鋭な部位に向かってプラズモンが伝播する。図5は、図4のようにプラズモンが伝播した場合に、発生する近接場を示す。近接場は、図の網掛線で表わされている領域である。このように、プラズモン伝播方向の先端部に近接場が生じる。
【0027】
図6は、粒径の異なる微粒子2を用い、粒径の異なる金属付着微粒子10によるクラスター形成の状態を示す図である。異なる粒径の微粒子2を基板1に不規則に吸着させた後、帽子状の金属層3をスパッタ又は真空蒸着により形成する。
【0028】
図6のように、クラスターB1は、粒径が異なるものが含まれる3個の金属付着微粒子10により形成される。クラスターB2は、粒径が異なるものが含まれる8個の金属付着微粒子10により形成される。クラスターB3は、粒径が異なるものが含まれる3個の金属付着微粒子10により形成される。クラスターB4は、粒径が同じの2個の金属付着微粒子10により形成される。クラスターB5は、粒径が異なるものが含まれる3個の金属付着微粒子10により形成される。クラスターB6は、粒径が異なるものが含まれる5個の金属付着微粒子10により形成される。
【0029】
プラズモン共鳴周波数は、金属層3のサイズ、形状、元素に依存するが、図6は、金属層3の大きさ(サイズ)を変えた金属付着微粒子10が共存する例を示している。図6のように、様々な粒径の金属付着微粒子10が集合することにより、1つのクラスターに異なるプラズモン共鳴周波数が存在するようになるため、クラスターの共鳴周波数は一定の幅を持つことになる。
【0030】
近接場強度をさらに増強するためには、サイズが異なる金属付着微粒子10を2層目以上に形成することが望ましい。1層目の形成方法と同じ方法を用いて2層目を形成するが、2層目の形成には、1層目に用いた金属付着微粒子10とは粒径が大きく異なる金属付着微粒子10を用いることが望ましい。
【0031】
図7は、1層目の金属付着微粒子10の粒径を異なるようにし、さらに2層目でも金属付着微粒子10の粒径を異なるように形成した例である。クラスターC1では、1層目は同じ粒径の微粒子2に金属層3が被覆されることにより、同じ粒径の金属付着微粒子が形成される。しかし、2層目では1層目とは異なる粒径の微粒子32に金属層33が被覆されることにより、金属付着微粒子が形成される。このように、1層目と2層目で金属付着微粒子の粒径が異なる。
【0032】
また、クラスターC2の1層目は、微粒子2上に金属層3が形成された金属付着微粒子、微粒子22上に金属層23が形成された金属付着微粒子、微粒子32上に金属層33が形成された金属付着微粒子により構成されている。微粒子2、22、32は、いずれも粒径が異なるため、粒径が異なる3種類の金属付着微粒子が形成される。一方、クラスターC2の2層目は、微粒子22上に金属層23が形成された金属付着微粒子、微粒子32上に金属層33が形成された金属付着微粒子等で構成されている。微粒子22、32は粒径が異なるため、粒径が異なる金属付着微粒子が形成される。
【0033】
この場合に、プラズモンは、面積の大きな部分から先鋭な部位に伝播するので、図の矢印のように、粒径の大きな金属付着微粒子10から粒径の小さな金属付着微粒子10に伝播することになる。このように、1層目の領域内におけるプラズモン伝播及び2層目の領域内におけるプラズモン伝播に加えて、1層目から2層目あるいは2層目から1層目の方向にプラズモンの伝播が発生するので、近接場強度がさらに強くなる。
【0034】
図8は、単層ではなく、多層化された金属クラスターを走査型電子顕微鏡で撮影した画像を示す。図9は、異なる粒径の金属付着微粒子から構成される金属クラスターを走査型電子顕微鏡で撮影した画像データを示す。
【0035】
次に、本発明の表面増強分光用基板の増強効果を図10、図11に示す。図10(a)は、基板1上に金薄膜4を20nmの厚さに形成し、この金薄膜4上に微粒子2として粒径100nmのシリカ粒子を吸着させてクラスター化し、シリカ粒子上に帽子状の銀からなる厚さ80nmの金属層3を形成してラマン分光用基板を作製した。
【0036】
図10(b)は、基板1上に金薄膜4を20nmの厚さに形成し、この金薄膜4上に微粒子2として粒径100nmのシリカ粒子を吸着させてクラスター化し、シリカ粒子上には金属層3を形成しなかった。このように、ラマン分光用基板を作製した。
【0037】
図10(c)は、基板1上に金薄膜を形成せずに、基板1上に粒径100nmのシリカ粒子の微粒子2を吸着させてクラスター化し、シリカ粒子上に帽子状の銀からなる厚さ80nmの金属層3を形成してラマン分光用基板を作製した。
【0038】
図10(d)は、基板1上に厚さ80nmの銀薄膜5のみを形成して表面増強分光用基板を作製した。図10(e)は、基板1上に厚さ20nmの金薄膜5のみを形成してラマン分光用基板を作製した。
【0039】
上記図10(a)〜10(e)までのラマン分光用基板を用いてラマン分光の測定を行った。図10(a)〜10(e)までのラマン分光用基板上に、濃度10mMのローダミン6Gエタノール溶液を滴下し、乾燥させたものを試料として用いた。このローダミン6Gは、蛍光色素の1種である。ラマン散乱の励起光として発振波長514.5nmのレーザを用い、光強度は400μWに設定した。ラマン散乱光は、レーザラマン分光装置により測定した。
【0040】
上記測定結果を、図11に示す。縦軸は信号強度を、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。図11のグラフのうち、曲線Aが10(a)のラマン分光用基板による測定結果を、曲線Bが10(b)のラマン分光用基板による測定結果を、曲線Cが10(c)のラマン分光用基板による測定結果を、曲線Dが10(d)のラマン分光用基板による測定結果を、曲線Eが10(e)のラマン分光用基板による測定結果を示す。なお、曲線Dと曲線Eとは一致している。これらの曲線からわかるように、強い増強が見られたバンドが現われているのは、曲線Aと曲線Cである。他の曲線については、増強を示すバンドは現われていない。図11の測定結果から、10(a)のラマン分光用基板と10(c)のラマン分光用基板においてのみ増強効果が見られることがわかる。
【0041】
10(c)のラマン分光用基板は、図1の本発明の表面増強分光用基板と基本的に同一の構成であり、また、10(a)のラマン分光用基板は、金薄膜4が存在することを除けば、図1の構成と基本的に同一であるので、これにより、本発明の表面増強分光用基板の増強効果が示された。
【0042】
次に、金属付着微粒子10の基板1に対する吸着密度により、増強効果がどのように変わるのかを測定した。この測定には、図1、2のようにクラスター化された表面増強分光用基板を用いた。ここで、微粒子2には粒径100nmのシリカ粒子を用い、金属層3は膜厚140nmの銀を蒸着することにより構成した。一方、基板1への微粒子2の吸着については、シリカ粒子懸濁液の塩濃度を適宜調整すること等により、吸着密度を5つのパターンに形成した。
【0043】
このように、微粒子2をクラスター化し、クラスターの分散度を変えることにより、金属付着微粒子10の吸着密度が変えられた表面増強分光用基板上に、濃度10mMのローダミン6Gエタノール溶液を滴下し、乾燥させた。この試料によりラマン分光スペクトルをレーザラマン分光装置で測定した。励起光には、発振波長514.5nmのレーザ光を用い、光強度は400μWとした。
【0044】
図12に、金属付着微粒子10の吸着密度が異なる5つのパターンを示す。図12(a)〜図12(e)は、走査型電子顕微鏡による撮像画像を示す。白っぽく見えるのが、金属付着微粒子10を示すが、図12(a)が最も吸着密度が低く、図12(b)、図12(c)、図12(d)、図12(e)の順に吸着密度が高くなっている。
【0045】
次に、これらの吸着密度が異なる表面増強分光用基板を用いてラマン分光測定による結果を図13に示す。縦軸は信号強度を、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。ラマンスペクトルのうち、曲線Xが図12(a)の吸着密度の場合を、曲線Yが図12(b)の吸着密度の場合を、曲線Zが図12(c)の吸着密度の場合を、曲線Uが図12(d)の吸着密度の場合を、曲線Vが図12(e)の吸着密度の場合を示す。全体の信号強度を見ると、曲線Vが最も低く、曲線U、曲線Z、曲線Y、曲線Xの順に信号強度が高くなっている。したがって、粒子の吸着密度が低い方、すなわち金属付着微粒子がクラスター化されて分散している方が表面増強効果が高くなることがわかる。
【0046】
次に、図1の構成の表面増強分析基板を用いて金属付着微粒子の質が均一に形成されているかの確認を行った。ここで、微粒子2には粒径150nmのシリカ粒子を用い、金属層3は膜厚20nmの銀を蒸着することにより構成した。表面増強分光用基板上に、濃度10mMのローダミン6Gエタノール溶液を滴下し、乾燥させた。この試料によりラマン分光スペクトルをレーザラマン分光装置で測定した。励起光には、発振波長514.5nmのレーザ光を用い、光強度は400μWとした。そして、基板1上の異なる領域からのラマンスペクトルをレーザラマン分光装置で測定した。
【0047】
図14には、基板1上の3つの領域からのラマンスペクトルが表示されている。縦軸は信号強度を、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。D1〜D3の曲線がそれぞれ基板1上の異なる領域からのラマン分光測定結果である。D1〜D3の曲線のピークの高さは、ほぼ同じであることがわかり、このことから金属付着微粒子の質は均一であると考えられる。
【0048】
次に、粒径の異なる金属付着微粒子を混合して作製した表面増強分光用基板を用いてラマン分光測定を行った結果を図16に示す。図16の縦軸は信号強度を、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。このラマン分光測定には、図15に示す2種類の粒径の金属付着微粒子を用いた。微粒子2A上に帽子状の金属層3Aが形成された金属付着微粒子10Aと、微粒子2B上に帽子状の金属層3Bが形成された金属付着微粒子10Bである。微粒子2A、2Bにはシリカ粒子を、金属層3A、3Bには銀を用いた。図に示されるように、微粒子2Aの粒径は100nmとし、微粒子2Bの粒径を50nmとした。これら2種類の粒径による金属付着微粒子が混合され、かつ、図6のようにクラスター化された表面増強分光用基板を上記ラマン分光測定に用いた。
【0049】
金属付着微粒子10A、10Bが混合して形成された表面増強分光用基板は、上記の異なる粒径の微粒子2Aと微粒子2Bを混合した微粒子混合懸濁液を作製し、この微粒子混合懸濁液を基板1に吸着させてクラスター化し、微粒子2A上には金属層3Aを、微粒子2B上には金属層3Bを形成して作製した。微粒子混合懸濁液は、微粒子2Aと微粒子2Bの混合比率を変化させて4種類作製し、これらの微粒子混合懸濁液に基づき、それぞれ表面増強分光用基板を作製した。微粒子2Aの懸濁液と微粒子2Bの懸濁液の混合比率が50:50の微粒子混合懸濁液による表面増強分光用基板をE1、混合比率が70:30の微粒子混合懸濁液による表面増強分光用基板をE2、混合比率が90:10の微粒子混合懸濁液による表面増強分光用基板をE3、混合比率が100:0の微粒子混合懸濁液による表面増強分光用基板をE4として作製した。上記のように、粒径100nmの微粒子2Aの混合割合を最初は50%とし、次に順に混合割合を増加させ、最後は微粒子2Aのみ、すなわち金属付着微粒子10Aのみとした。
【0050】
E1〜E4の4種類の各表面増強分光用基板上に、濃度10mMのローダミン6Gエタノール溶液を滴下し、乾燥させた。この試料によりラマン分光スペクトルをレーザラマン分光装置で測定した。励起光には、発振波長514.5nmのレーザ光を用い、光強度は50μWとした。図16のラマンスペクトルE1〜E4は、上記各表面増強分光用基板E1〜E4に対応している。図16を見ると、ピークの高さは、2種類の粒径の金属付着微粒子の混合比率が近くなる程、高くなっており、50:50の混合比率のときに最も高くなっていることがわかる。
【0051】
一方、金属付着微粒の粒径とラマン散乱光強度の関係を図17に示す。まず、図1、2に示されるような、金属付着微粒子10の粒径が同じものをクラスター化した表面増強分光用基板を作製した。金属付着微粒子10の粒径を100nmにしてクラスター化した表面増強分光用基板をF1、金属付着微粒子10の粒径を150nmにしてクラスター化した表面増強分光用基板をF2、金属付着微粒子10の粒径を50nmにしてクラスター化した表面増強分光用基板をF3として作製した。F1〜F3のすべてにおいて、微粒子2には、シリカ粒子を、金属層3には銀を用いた。
【0052】
F1〜F3の3種類の各表面増強分光用基板上に、濃度10mMのローダミン6Gエタノール溶液を滴下し、乾燥させた。この試料によりラマン分光スペクトルをレーザラマン分光装置で測定した。励起光には、発振波長514.5nmのレーザ光を用い、光強度は500μWとした。
【0053】
図17のラマンスペクトルに示されるように、粒径100nmの金属付着微粒子を用いたF1と粒径150nmの金属付着微粒子を用いたF2では信号強度は近くなっている。しかし、F1は、粒径50nmの金属付着微粒子を用いたF3より、全体に信号強度が高くなっている。このように、粒径の大きな金属付着微粒子を用いた表面増強分光用基板の方が信号強度が高くなる。他方、図16からわかるように、粒径100nmのみの金属付着微粒子で表面増強分光用基板を作製するのではなく、他の異なる粒径の金属付着微粒子と混合して表面増強分光用基板を作製した方が、ラマン信号強度がさらに増強されることがわかる。
【0054】
以上のように、本発明の表面増強分光用基板では、従来のナノリソグラフィー法による分光用基板と比較して、金属付着微粒子が細密充填されている必要がなく、また金属付着微粒子は単分散性である必要がない。また、細密充填構造でなく、金属付着微粒子がクラスター化されて分散されている方が増強効果が高いことがわかった。このため、金属付着微粒子をクラスター化し、各クラスターが不規則に散在するように構成している。本発明の表面増強分光用基板は、粒径に幅をもたせた金属付着微粒子をランダムに基板上に吸着させることで、簡単に上記の構造を実現できるものである。さらに、異なる粒径の金属付着微粒子層を複数積み上げることによっても、上記の構造を実現することができる。ランダムに金属付着微粒子を基板に吸着させるのは容易であり、大面積の基板を高い歩留まりで作製するのに有利である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の表面増強分光用基板は、ラマン分光法、赤外分光法等の分光分析方法に幅広く適用することができ、例えば、臨床検査、環境モニタリング、品質管理等の分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 基板
2 微粒子
3 金属層
22 微粒子
23 金属層
32 微粒子
33 金属層
10 金属付着微粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属が付着した金属付着微粒子が基板上に形成された表面増強効果を有する表面増強分光用基板であって、
前記基板上には、複数の前記金属付着微粒子が集合して該金属付着微粒子の金属が相互に接触しているクラスターが間隔を置いて複数形成され、前記各クラスターは前記基板と電気的に分離されていることを特徴とする表面増強分光用基板。
【請求項2】
前記各クラスターには、異なる粒径の金属付着微粒子が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の表面増強分光用基板。
【請求項3】
前記各クラスターには、前記金属付着微粒子の集合が多層構造を有するクラスターが含まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面増強分光用基板。
【請求項4】
前記金属付着微粒子の金属は、金、銀、白金、アルミ、これらの合金又は混合体のいずれかにより構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表面増強分光用基板。
【請求項5】
前記金属付着微粒子の金属は、ポリマー又はシリカ粒子の表面上に帽子状に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の表面増強分光用基板。
【請求項6】
前記基板上には、大きさが異なる前記クラスターが不規則に散在していることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の表面増強分光用基板。
【請求項1】
金属が付着した金属付着微粒子が基板上に形成された表面増強効果を有する表面増強分光用基板であって、
前記基板上には、複数の前記金属付着微粒子が集合して該金属付着微粒子の金属が相互に接触しているクラスターが間隔を置いて複数形成され、前記各クラスターは前記基板と電気的に分離されていることを特徴とする表面増強分光用基板。
【請求項2】
前記各クラスターには、異なる粒径の金属付着微粒子が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の表面増強分光用基板。
【請求項3】
前記各クラスターには、前記金属付着微粒子の集合が多層構造を有するクラスターが含まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面増強分光用基板。
【請求項4】
前記金属付着微粒子の金属は、金、銀、白金、アルミ、これらの合金又は混合体のいずれかにより構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表面増強分光用基板。
【請求項5】
前記金属付着微粒子の金属は、ポリマー又はシリカ粒子の表面上に帽子状に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の表面増強分光用基板。
【請求項6】
前記基板上には、大きさが異なる前記クラスターが不規則に散在していることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の表面増強分光用基板。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図8】
【図9】
【図12】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図8】
【図9】
【図12】
【公開番号】特開2012−88222(P2012−88222A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236278(P2010−236278)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【Fターム(参考)】
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