説明

表面張力に保持された蛍光ナノドロップからの信号を測定する装置及び測定方法

ナノドロップの液体サンプルの蛍光を測定するための装置及び方法が記載されており、サンプルは2つのアンビル表面の間に表面張力によって保持されている。それぞれのアンビル表面は端部を埋め込まれた光ファイバを有し、該光ファイバは、光ファイバと一直線状のサンプルで濡らされた保持エリア内の表面と面一に終端する。サンプルの励起は、サンプルの側方から保持エリアと離れて提供される。光ファイバの伝達開口数を選択することにより、励起する周囲の光からの測定への影響を最小にする。仮想フィルタリングの方法は、光源のスケールを変えられた表現を測定から差し引くことにより、測定用センサーに当たる周囲の光又は励起光が修正されることを教示している。本発明の方法及び装置は、1ミクロリットルのTEバッファ中の1フェムトモルのソジウムフルオロセインを検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光分光分析の分野、並びに液体及び溶液の定量又は特性を明らかにする蛍光分光分析の用途に関する。特に、本発明は、ナノドロップの液滴の蛍光測定、特に表面張力に保持されたナノドロップの液滴の蛍光測定に関する。
【背景技術】
【0002】
2マイクロリットル以下で動作するサンプル量の少ない器具は、核酸、タンパク質及び薬剤を含む生物工学のサンプル及びその他の液体サンプルの定量で、入手可能な測定物質の量が非常に制限される場合にサンプルの損失量を最小にすることが望まれる場合及び測定の利便性が望まれる場合に、特に有効である。
【0003】
従来技術は、容器内又はコンテナ内でのサンプルの保持に集中しており、そのサンプルの量は通常20〜1000マイクロリットルである。比較的真っ直ぐな蛍光分光計のデザインは、Nogamiらの米国特許第5500536号に見ることができる。同時に複数の光源の波長を利用する蛍光分光計は、Goldsteinの米国特許5422719号に見ることができる。蛍光分光計の光学系での光ファイバの使用は、Glebelerらの米国特許6313471号に見ることができる。一般的な蛍光の良い紹介は、「蛍光分光学の原理(Principles of Fluorescence Spectroscopy)」、Joseph R. Lakowitz著、1999年、Kluwer Academic/Plenum Publishers, 233 Spring Street、New York, NY, 10013に見いだすことができる。
【0004】
Robertsonは、米国特許第6628382号及び第6809826号に、極めて小さいサンプルの光度測定又は分光光度測定の方法及び装置を開示している。彼らがその中及びここで名付けたこれらの「ナノドロップ(nanodrop)」のサンプルは2マイクロリットルオーダー以下であり、表面張力によって保持されている。これらの特許は、参照してその全体を本明細書に組み込む。Robertsonの装置では、ナノドロップは相対的に動作可能で実質的に平行な2つの表面の「アンビル(anvils)」の間に、表面張力によって保持されており、両方の表面を濡らすために、アンビルはその一方にサンプルを載せた後に共に動かされる。そして、アンビルを離してドロップレットを引っ張ってカラムにして光路(optical path)を確立し、その長さを通って光が投射される。一直線状(in-line)の光学は、カラムを通って光を通過するのに適している。光は、一方のアンビル内の入力用光ファイバから、他方のアンビル内の出力用光ファイバを通過して、センサーや電荷結合素子等に到達し、それらは、光度測定や分光光度測定を構成する際に、分光計や他の光学検出システムの一部になりうる。
【0005】
米国特許第6809826号に、Robertsonは前記の発明の改良版を開示しており、アンビル上の濡れる表面エリアを様々な手段で制限している。
【0006】
これらの2つの特許で、Robertsonは、その中で開示している装置によって蛍光を測定することを教示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、参照されたRobertsonの特許に開示されたタイプの測定は、蛍光を発しているナノドロップの測定に、最適な応用ができない。表面張力で保持されているサンプルは、適切で、大いに有効である。しかしながら、2つの従来技術のRobertsonの発明における光を取り扱うシステムは、特に、弱い発光又は蛍光のサンプルを含む場合には、蛍光透視鏡の測定を圧倒する傾向にある。1つの一直線状にある光ファイバから投射され、引っ張られた流体のカラムを通過し、保持されたナノドロップの蛍光を励起し、そして、一直線状にある受光用光ファイバに直接入る蛍光励起用の光は、サンプル自身の蛍光で生じるずっと弱い強度の光を妨害する。さらに、光ファイバからの蛍光は、いくつかの励起波長より高い。
【0008】
そこで、本発明の目的は、表面張力で保持されたナノドロップの蛍光測定を行うための方法及び装置を提供することであり、検出システムで受容される発光された蛍光の透過率を最大にし、そしてその他の光源、周囲の照明、システムの光ファイバからの蛍光、及び特に検出システムで受容される励起光源からの散乱光を最小にすることを特徴とする。
【0009】
本発明のさらなる目的は、蛍光を測定するための方法及び装置を提供することであり、ナノドロップサンプルが表面張力と励起光で保持され、周囲の迷光が測定検出システムから実質的に除外されることを特徴とする。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、表面張力で保持されたナノドロップサンプルから発光された蛍光を測定するための方法及び装置を提供することであり、補償が、測定用センサーに当たる励起光及び周囲の光のいずれにも実質的に提供されることを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、実質的に平行な関係にある2つのアンビル表面の間の保持エリアに、表面張力によって保持された液滴(a liquid drop)の形態のサンプルの蛍光を測定する装置によって満足され、光路は、湿ったサンプルドロップを介して、2つのアンビル表面上のそれぞれの濡れたエリアの間に確立されている。
装置は、
下記の3つの状態のいずれか1つに向かって少なくとも一方が他方に対して動作可能な第1及び第2のアンビル表面と、サンプルを照明するための少なくとも1つの手段とを含んでおり、
前記3つの状態が、
表面が対向し実質的に平行で且つ近づいた状態で離間して、少なくとも一方の動作可能な表面と他方の表面との上に濡れたエリアを形成する両方の表面に液体が広がるように、少なくとも一方の動作可能な表面と他方の表面とが遠ざかった状態で離間して、ドロップレットが第1の表面上に位置できるように選択された、調節可能なサンプル載置状態(an adjustable sample loading position)と、
アンビル表面が対向し実質的に平行で且つ近づいた状態で離間して、それぞれの上に濡れたエリアを形成する両方の表面上に液体が広がるように選択された、調節可能な圧縮状態(an adjustable sample compressing position)と、
対向し実質的に平行な表面が離れた状態で離間して、サンプルを引っ張ってカラムとするように選択された、調節可能なサンプル測定状態(an adjustable sample measuring position)であって、サンプルが表面張力によって保持されて、それによって蛍光を測定するための光路を提供するサンプル測定状態とであり、それに加えて
サンプル表面が十分に遠ざかって、両方の表面を拭き取る又は別の手段で清浄にしてサンプル及びいずれの関連する残余を除去することを許容する開放状態(an open position)と、であり、
一方のアンビル表面は、濡れたエリア内にその表面と面一で、且つ所定の伝達開口数(a selected transmission numerical aperture)(開口数の説明は、「光学の基礎(Fundamentals of Optics)」、Francis A. Jenkins と Harvey E. Whiteの共著、McGraw-Hill、1957年、307頁を参照されたい)で軸外の又は高い開口数の励起光又は周囲の光を最小にする第1のマルチモード光ファイバの近位端部を有し、第1の光ファイバの遠位端部は分光計又は良好な蛍光検出器を形成できるような十分な波長識別が可能な他の検出器と動作可能に繋がって(in active connection)おり、
信号をモディファイする手段(signal-modifying means)を含む他方のアンビル表面は、濡れたエリア内にその表面と面一に終端しており、所定の伝達開口数の近位端部を有する第2の光ファイバを含み、第2の光ファイバの遠位端部は信号をモディファイする手段を有しており、
サンプルを照明する手段は、最小限の光がそれらの所定の開口数内で光ファイバに入るように、サンプルの保持エリアから離れて設置されサンプルを側方から照射する少なくとも1つの光源からの相対的にコリメートされたライトを含んでおり、光源は安定した波長の強度分布を有している。
【0012】
装置を操作する方法の好ましい実施形態では、測定用センサーに当たる励起光及び周囲の光のいずれの補償も含んでいる。これは、器具類とバックグラウンドを別々に測定してそれらのスペクトルをサンプルの測定スペクトルから差し引くことにより、器具類とバックグラウンドの寄与を信号から取り除く。スケールを変えられた光源の表現(a scaled representation of the source)を単純に差し引くことにより蛍光を抽出することが実現可能な場合、極めて高い除去率のマルチモード光ファイバは、光ファイバの伝達開口数の角度を著しく越えた角度の光入射を有し、サンプル測定に関係する全ての光学表面の濡れ又は光学的接触の結果としての散乱を低減することは、光源からのバックグラウンドの光を水平(a level)に低減するのに十分である。そのような方式の改良(the principle improvement)は、仮想フィルタリング(virtual filtering)と称している。
【0013】
この方法は、
i. 蛍光を含まないサンプルを使用して光源のスペクトルを記録する工程と、
ii. 少なくとも1つの蛍光を発するターゲットを選択して、そのターゲットをサンプルに取り込む工程と、
iii. 蛍光を発する波長の全て又は殆どを含む規定の波長間隔(a default wavelength interval)を選択する工程と、
iv. 分光計で前記サンプルの蛍光を測定する工程と、
v. 工程ivの測定を、計算するためにプログラムされた手段に出力する工程と、
vi. 記録された光源のスペクトルのスケールを変えて、蛍光の信号が蛍光のピークの5%以下であると知られており一般的に蛍光のピークの短波長側であるある波長におけるサンプルの強度に一致させて、サンプルの個々の蛍光を計算する工程と、
vii. 蛍光の信号のみならず、いくらかの散乱された光源の放射をも含む信号のスペクトルから、スケールを変えた光源のスペクトルを差し引く工程と、
viii. 得られた信号のスペクトルを表示する工程と、を含む方法である。
【0014】
仮想フィルタリングで、特に低い信号の蛍光サンプル用の好ましい実施形態は、一般的だが必須ではない蛍光のピーク値に対して対称な蛍光信号を殆ど含む波長間隔を使用することを含み、それを超えて全体の信号から差し引くために、記録された光源のスペクトルのスケールを変える。
【0015】
この方法は、
i. 蛍光を含まないサンプルを使用して光源のスペクトルを記録する工程と、
ii. 少なくとも1つの蛍光を発するターゲットを選択して、そのターゲットをサンプルに取り込む工程と、
iii. 蛍光を発する波長の全て又は殆どを含む規定の波長間隔を選択する工程と、
iv. 分光計を用いて前記サンプルの蛍光を測定する工程と、
v. 工程ivの測定を、計算するためにプログラムされた手段に出力する工程と、
vi. 前もって記録された光源のスペクトルを独立してスケールを変えて、選択されそれらの値の間に直線的に補完する(linearly interpolating)発光の波長について特定の間隔におけるサンプルの強度に一致させて、サンプルの個々の蛍光を計算する工程と、
vii. 蛍光の信号のみならずいくらかの散乱された光源の放射をも含む信号のスペクトルから、スケールを変えられた光源のスペクトルを差し引いて蛍光を発する範囲の外側にある全ての蛍光の信号の値をゼロにするようにセットする工程と、
viii. 得られた信号のスペクトルを表示する工程と、を含む方法である。
【0016】
代わりに、光源とサンプルとの間に、励起光のみを通過するフィルターを挿入し、サンプルと検出器との間にサンプルからの蛍光のみを通過するフィルターを配置することができる。従って、サンプルからの蛍光は検出可能であるが、光源からの散乱光はフィルターによって除去される。多くの照明光源は、蛍光と同じ波長にいくらかの出力強度を有しており、これらは上述のブロッキングフィルター(blocking filter)を用いて最小にすることができる。
【0017】
第2の光ファイバの遠位端部に備えられた信号のモディファイする手段は、その光ファイバ中の信号の増幅から信号をほぼ完全に減衰させるまで、変えることができる。前者の場合、鏡面状の表面のキャップ(a mirrored surface cap)を光ファイバの遠位端部に備えている。これは、蛍光発光をファイバ内に戻して、サンプルを通ってセンサーまで伝達して戻す効果を有する。最も実用的な用途の場合、そのような構造は、望まれない周囲及びバックグラウンドの励起光エネルギーも増加する傾向にある。他の場合は、エネルギーを吸収する表面を形成する方法を採用して、測定するセンサーへの望まれない光の伝達を最小にする。光ファイバを長く細いポイントに引くことでそれをすることが可能であり、ファイバの終端又は中に吸収コーティング又は吸収表面(an absorbing coating or surface)をつけることができ、又は、蛍光及び励起波長領域内のいたるところで高吸収するガラスを用いて光ファイバを作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<発明の詳細な説明>
Robertsonに開示されたサンプル保持のシステムを用いることにより、最小のフィルタリング用光学部品(filtering optics)を用いて、他の透明なサンプルの良好な蛍光測定が可能である。
スケールを変えられた光源の表現を単純に差し引くことにより蛍光を抽出するのが実現可能な場合、極めて高い除去率のマルチモード光ファイバは、光ファイバの透過開口数の角度よりも著しく大きい角度の光を有し、サンプルの測定に関係する全ての表面の濡れ又は光学的接触の合計は、光源からのバックグラウンドの光を水平まで低減するのに十分である。これを実現可能にするためのさらなる要素は、スペクトル出力の相対的強度に対する固体状態の発光ダイオード(LEDs)の波長の高い再現性である。照明の配置を示したダイアグラムを、図1に示す。
【0019】
図1は、励起用LED12が液体サンプルのカラム14を照明しているのを図示している。この装置では、少なくとも1つの、好ましくは3つのLEDを使用して、最も普通に使用される蛍光物質を励起するのに必要とされる波長の範囲にわたって励起エネルギーを付与するのが好ましい。少なくとも1つのLED12からの光が、サンプル14中の興味のある分子の蛍光を励起する。アンビル20の下に見える光ファイバ18は、蛍光を発しているサンプルからの光を光ファイバ分光計(fiber optics spectrometer)100に運ぶ。光ファイバ18は、アンビル20を通って伸び、サンプルが光ファイバを濡らすことができるようにアンビル表面と面一で終端している。この図に全ては見えていないが図7の断面図には示されているように、アンビル24内にある対向したやや大きい光ファイバ又はロッド251は、その対向する端部にミラー又は光シンク(light sink)28を有するか、又は光ファイバが吸収ガラス材料から形成される。ミラーは、より多くのサンプルの光を分光計の光ファイバに反射する。光シンクは、より少ないサンプルの光と、より少ない妨害光(the interfering light)を反射する。吸収ガラスは、励起光又は蛍光を、光ファイバ18を通して検出システムに戻してはならない。
【0020】
サンプルから来た光の信号から光源のスペクトルを抽出するために、光源のスペクトルはサンプルからの蛍光を含まない迷光を用いてマッピングされて、光源の相対強度を記録する。サンプル処理(sample processing)の1つのモードのダイアグラムを図2に示す。
【0021】
図2は、例えば比較的単色の紫外LED(例えば日亜化学工業社製の品番NSHU590B)で照明された機器中のサンプルから蛍光スペクトルを抽出するために使用される処理を示している。図2の、ヘキスト(Hoechst)33258の蛍光色素140の蛍光の波長範囲内にある励起LEDからの信号は、透過率を図2の符号142で示され且つ図8の符号300で示されるようにLEDとサンプルとの間に配置されたHOYA社製UG−360のUVガラスフィルターと、図2に示すように透過率のスペクトル22が33258色素のピークの波長を透過させ、しかしUG−360のフィルターを通過したLEDからの励起光をブロックし、且つ図1の符号25で示されるように分光器のスリットに配置された干渉フィルター(interference filter)と、によってブロックされた。よって、33258色素のピーク波長の光は光源からの光によって妨害されず、外部の光源からの光は、光源のLEDを消したときのサンプルからの光の測定によって差し引かれる。同様のフィルターの使用は、蛍光の励起光源として使用される他のLEDからの励起光をブロックするのに使用できるが、分光計のスリットに配置されたフィルターは、結局のところ、所定の機器の構造内で測定可能な蛍光の範囲を制限する。
【0022】
図3は、図1Aのスペクトルを有する青色LEDのような可視光波長領域のLEDの発光を用いて、フルオロフォアからの信号の情報を抽出する方法を示している。このケースでは、符号70で示された青色LEDの出力強度スペクトルの妨害部分は、一応は図8のUVフィルター300と同様にLEDとサンプルとの間に配置され、符号75で示された透過率曲線を有するフィルターによってブロックされる。よって、図3の符号80で示された蛍光の発光強度スペクトルは、LEDからの光、又は符号22で示したスリットフィルターの透過率によって妨害されない。
【0023】
最も一般的なケースでは、励起が白色LEDのようにブロードなスペクトルの光源によってもたらされる場合、図7のLED255で示されたようにLEDとサンプルとの間のフィルターを使用しないとき、サンプルの蛍光は図4に示す仮想フィルタリングによって測定可能である。これをするためには、典型的には、その強度スペクトルの照明を図4の符号140で示された白色LEDのスケールを変えて、次のようにして除去する。最大発光(符号295として図4に蛍光用に示された波長)を選択するごとに、ソフトウェアは図4の符号275として示された規定波長又は参照波長(a default or reference wavelength)を自動で選ぶ。規定波長の位置で強度が一致するように、光源のスペクトルのスケールが変えられる。図4の符号280として示されたスケールを変えられた又は補正された光源スペクトルが信号スペクトル285から差し引かれて蛍光の強度スペクトルを生じ、蛍光の強度は図4の符号295として示された蛍光のピークの位置に測定される。
【0024】
低い蛍光信号の好ましい実施形態において、励起が白色LEDのようにブロードなスペクトルの光源によってもたらされる場合、図7のLED255で示されたようにLEDとサンプルとの間のフィルターを使用しないとき、サンプルの蛍光は図9a及び図9bに示す仮想フィルタリングによって測定可能である。これをするためには、典型的には、その強度スペクトルの照明を図9a及び図9bの符号140で示された白色LEDのスケールを変えて、次のようにして除去する。
i 図9aに蛍光用に示され、符号295として図9bのアレクサ(Alexa)647用に示された発光の最大波長ごとに、ソフトウェアは図9a及び図9bに符号270として示され最大波長295の両側に30nmずつ伸びた規定の波長間隔を自動で取り込む。発光の仮想フィルタリングの間隔(D1)はここでは任意で対称に適用されているが、それは必須ではない。この、スケールを変えられた又は補正された光源スペクトルは図9bの符号280として示されており、強度は図4の符号295として示された蛍光ピークの位置で測定された。選択された初期設定±20nmの設定可能な参照波長の間隔Δλは、個々の波長範囲であり、その範囲にわたって(スケールを変えられた、安定した光源のスペクトルの差し引きによる)残りのサンプルの蛍光の信号が表示される。
ii 間隔D1にわたって、間隔の端部の波長の位置における強度値のスケールを変えることにより光源スペクトルはスケールを変えられ、D1の間隔の端部の間での直線的補完を用いてサンプルのスペクトルの対応する値と設定された中間値とを一致させる。
iii スケールを変えられた光源スペクトルは、サンプルのスペクトルから、蛍光スペクトルの強度を残して差し引かれる。
【0025】
視覚化の目的のため、図9a及び図9bに図示されているように、仮想フィルタリングの間隔の外側にある信号はゼロ(0)に設定される。白色LEDのようにフィルターされていないブロードなスペクトルでの励起の場合には、低いレベルの蛍光の測定信号は、光源と信号スペクトルへの光源の寄与とを表現している2つの比較的大きな数値の差をとってそのバックグラウンドから低いレベルの蛍光の信号を抽出することの正確さにより多く依存している。仮想の発光フィルタリングの間隔は、低いレベルのサンプルの蛍光を測定する能力を著しく改良する。これらの実施は、ブロードなスペクトルの光源を用いたフルオロフォアの広い範囲の蛍光を励起し、多くの蛍光の測定に有用な十分な信号を検出することを可能にする。多くの蛍光測定は未知の試料と標準とを比較することでなされており、同じ比率の信号が基準から失われているので、仮想フィルタリングの間隔の端部を越えた少量の信号の損失によって、測定が著しく歪められることはない。ユーザーは、処理の適切な機能の確認のために、仮想フィルタリングの処理で使用された全てのスペクトルを選択可能に表示できる
【0026】
機器にサンプルを載置するために、上述のRobertsonの特許で教示された従来の方法に続いて、少量の実験用ピペッターを使用して図5Aに示すようにサンプルが一方の光学チップに配置される。そして、サンプルは、図5Bのように対向する光ファイバのチップによって接触され、両方のチップを濡らすために圧縮され、図5Cに見られるように上側のチップがその測定の位置に戻ったときに、サンプルを測定ゾーンに集中させそして測定カラムを形成させる。図5A、図5B及び図5Cに図示された操作の方法は、引用したRobertsonの特許に開示された従来技術の保持する装置及び方法であり、従来技術の保持する装置を示している。
【0027】
載置やサンプル処理後の清浄に適したスイングアーム(swinging arm)202を用いて測定するための装置200を図6に示す。アーム202は、固定アームであるフレーム204に軸支されており、各アームはそれぞれアンビル24、20を保持している。サンプルは、装置内の1つ以上のLED12によって側方から照明されている。3つ以上のLEDが好ましい。下側のソレノイドは、圧縮フェーズではアームを低い位置に動かし、その後に測定位置に戻すことを許容することにより、制御された圧縮及び測定カラムの形成を達成している。測定カラムからの信号が、図1、6、7及び8に図示した光ファイバ18によって、図1の光ファイバ分光計100の入口のスリットに直接運ばれる場合には、この測定の配置は図6及び図7に示されている。このシステムは、55 commerce way, Woburn Massachusetts 01801-1005のGilway Technical Lamp社製の品番E482の波長470nmの青色LEDと、5583 Mooretown Rd. Williamsburg, VA 23188のRoMack社製のSMAターミネーションを備えた400ミクロンのマルチモードファイバと、830 Douglas Ave, Dunedin, FL 34698のOcean Optics社製の品番USB2000−FLの光ファイバ分光計とを用いて、1マイクロリットルのサンプル(1ナノモルの溶液)中のTEバッファ中の1フェムトモルより少ないソジウムフルオロセイン(sodium fluorescein)を検出できることが実証されている。
【0028】
測定スペクトルの仮想フィルタリングの実行で、分光計100からコンピュータ400に出力され、そこで上述の仮想フィルタリング工程が行われる。
【実施例1】
【0029】
実施例1.ドナー−アクセプタFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer:蛍光共鳴エネルギー移動)ペアの発光スペクトルと、そのポジティブコントロール。
FRETペアは、シングルストランド(single-strand)のヌクレオチドプローブ(ループ)及びダブルストランド(double-strand)のヌクレオチド(ステム)構造を含むヘアピン構造の中に拘束された。蛍光ドナー(フルオレセイン)はステムの一端に共有結合し、アクセプタ(Cy5)はステムの他端に共有結合した。そして、プローブ(ループ)に相補的ヌクレオチド配列(complimentary nucleotide sequence)が存在しないときは、ヘアピンのダブルストランド(塩基対)のステム構造が保護される。励起されたドナーの蛍光510は、アクセプタに比例的に移動して、より長い波長の蛍光発光540を波長530の位置に生じた。シングルストランドのプローブ(ループ)に相補的ヌクレオチド配列が存在するときは、ヘアピンの塩基対のステム構造は崩壊し、ダブルストランドのプローブが形成され、そして励起されたドナー510からの共鳴エネルギーは波長530の位置のアクセプタに移動しなかった(520)。ポジティブコントロールは、波長530の位置の長い波長のアクセプタの発光520を減少または排除することにより、スペクトル的に区別された。
【実施例2】
【0030】
実施例2.フィルターされていない白色LEDで励起された4つのフルオロフォアを含む溶液の仮想フィルタリングされた発光スペクトル。
200nm異なる最大励起を有するフルオロフォアの複合混合物が、図4の符号140で示されている単一のブロードな波長のフィルターされていない白色LED光源を用いて励起されている。各々が波長の境界270内でほぼ50nm異なっている4つのフルオロフォアの仮想フィルタリング発光スペクトルの結果は、表示され、符合550でラベルされた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、採用された蛍光の励起と検出のモードの概略図である。
【図1A】図1は、本発明の1実施形態で使用された青色LEDの出力の強度スペクトルである。
【図2】図2は、紫外LEDの励起に使用する蛍光色素からの蛍光の信号を抽出するための方法を図解している。
【図3】図3は、青色LEDの励起に使用する蛍光色素からの蛍光の信号を抽出するための方法を図解している。
【図4】図4は、蛍光のスペクトルが分光計によって受容され、「参照の波長」の仮想フィルタリングと白色LEDの励起を用いたサンプルからの信号から、どのようにして引き抜かれるかの図である。
【図5A】図5Aは、サンプルを装置に載置する方法について、従来技術の工程を示している。
【図5B】図5Bは、サンプルを圧縮して両方のアンビルを濡らす方法について、従来技術の工程を示している。
【図5C】図5Cは、サンプルを測定するためのカラムに引き延ばす方法について、従来技術の工程を示している。
【図6】図6は、サンプルを取り扱うための装置を、破線で開放した載置の位置を、そして実線で閉じた測定の位置を、部分断面図で示している。
【図7】図7は、照明するLEDの配置を示した図6の断面図を、拡大したものである。
【図8】図8は、LEDとサンプルとの間に光源のフィルターを備えた照明システムを示している。
【図9】図9は、波長のバックグラウンドの除去を用いた仮想フィルタリングの好ましい実施形態を示している(a、b)。
【図10】図10は、ドナー−アクセプタのFRETペアのスペクトルと、そのポジティブコントロールを示す。
【図11】図11は、フィルターされていない白色LEDで励起した4つのフルオロフォアを含む溶液の、仮想フィルタリングした発光スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に平行な関係にある2つのアンビル表面の間に、表面張力によって保持された蛍光励起された液滴の形態の、蛍光励起されたサンプルの蛍光を測定する装置であって、
光路は2つの表面のそれぞれの濡れたエリアの間に確立されていることを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項2】
サンプルからの蛍光が、光ファイバにより検出器に伝達されることを特徴とする請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項3】
検出器が分光計であることを特徴とする請求項2に記載の蛍光測定装置。
【請求項4】
実質的に平行な関係にある2つのアンビル表面の間に、表面張力によって保持された蛍光励起された液滴の形態の、蛍光励起されたサンプルの蛍光を測定する装置であって、
光路は2つの表面のそれぞれの濡れたエリアの間に確立され、
前記装置は、下記の3つの状態のいずれか1つに向かって一方が他方に対して動作可能で実質的に平行な第1及び第2のアンビル表面と、サンプルを照明するための少なくとも1つの手段と、を含んでおり、
前記3つの状態が、
少なくとも一方の動作可能な表面と他方の表面とが遠ざかった状態で離間して、ドロップレットが第1の表面上に位置できるように選択された、調節可能なサンプル載置状態と、
アンビル表面が対向し実質的に平行で且つ近づいた状態で離間して、それぞれの上に濡れたエリアを形成する両方の表面上に液体が広がるように選択された、調節可能な圧縮状態と、
対向し実質的に平行な表面が離れた状態で離間して、サンプルを引っ張ってカラムとするように選択された、調節可能なサンプル測定状態であって、サンプルが表面張力によって保持されて、それによって蛍光を測定するための光路を提供するサンプル測定状態とであり、
一方の前記アンビル表面は、前記濡れたエリア内にその表面と面一の第1の光ファイバの近位端部を有し、前記第1の光ファイバの遠位端部は分光計の検出器と動作可能に繋がっており、
他方の前記アンビル表面は、前記第1の光ファイバに対応して、前記濡れたエリア内にその表面と面一の第2の光ファイバの近位端部を有し、第2の光ファイバの遠位端部は該光ファイバ内で伝達された光信号をモディファイする手段を有しており、
サンプルを照明するための少なくとも1つの手段は、サンプルの保持エリアから離れて設置された少なくとも1つの光源から最小限の光が光ファイバにその伝達開口数内で入るように、相対的にコリメートされたライトを含んでおり、
前記光源は、所定範囲の安定した波長分布を有し、前記サンプルのターゲット分子の蛍光を励起することを特徴とする請求項2に記載の蛍光測定装置。
【請求項5】
信号をモディファイする手段が鏡面状のキャップを含み、それにより前記蛍光計への蛍光信号が強められることを特徴とする請求項4に記載の蛍光測定装置。
【請求項6】
信号をモディファイする手段が光シンクを含み、それにより前記蛍光計に伝達される励起された周囲の光信号が最小になることを特徴とする請求項4に記載の蛍光測定装置。
【請求項7】
信号をモディファイする手段が吸収する光ファイバ又はロッドを含み、それにより前記蛍光計に伝達される励起する周囲の光の信号が最小になることを特徴とする請求項4に記載の蛍光測定装置。
【請求項8】
前記サンプルを照明するための手段が青色LEDであることを特徴とする請求項4に記載の蛍光測定装置。
【請求項9】
前記サンプルを照明するための手段が白色LEDであることを特徴とする請求項4に記載の蛍光測定装置。
【請求項10】
前記サンプルを照明するための手段が紫外LEDであることを特徴とする請求項4に記載の蛍光測定装置。
【請求項11】
前記サンプルを照明するための少なくとも3つの手段があることを特徴とする請求項4に記載の蛍光測定装置。
【請求項12】
請求項4に記載の蛍光測定装置の実質的に平行な2つのアンビル表面の間に、表面張力によって保持された液体のナノドロップサンプルの蛍光を測定する方法であって、
前記装置を、前記サンプル載置状態に開く工程と、
前記ナノドロップを前記アンビル表面の上に載置する工程と、
前記装置を、前記サンプル圧縮状態に閉じる工程と、
前記装置を、前記サンプル測定状態に開く工程と、
前記サンプルを前記励起ライトで照明する工程と、
前記サンプルから発する蛍光を測定してサンプルのスペクトルを得る工程と、
を含むことを特徴とする蛍光測定方法。
【請求項13】
スケールを変えられた光源のスペクトルを前記測定した蛍光スペクトルから差し引いてサンプルの蛍光スペクトルを得ることを含む、光源からの光を照射されたサンプルの蛍光スペクトルを測定する方法であって、
ix. 蛍光を含まないサンプルを使用して光源のスペクトルを記録する工程、
x. 少なくとも1つの蛍光を発するターゲットを選択して、そのターゲットをサンプルに取り込む工程と、
xi. 蛍光を発する波長の全て又は殆どを含む規定の波長間隔を選択する工程と、
xii. 分光計で前記サンプルの蛍光を測定する工程と、
xiii. 工程ivの測定を、計算するためのプログラムされた手段に出力する工程と、
xiv. 記録された光源のスペクトルのスケールを変えて、蛍光を発する波長範囲より外側の強度を可能な限り一致させることにより、サンプルの個々の蛍光を計算する工程と、
xv. 蛍光の信号のみならずいくらかの散乱された光源の放射も含む信号のスペクトルから、スケールを変えた光源のスペクトルを差し引く工程と、
xvi. 得られた信号のスペクトルを表示する工程と、を含むことを特徴とする蛍光スペクトル測定方法。
【請求項14】
前記サンプルが、表面張力によって保持されたナノドロップであることを特徴とする請求項13に記載の蛍光スペクトル測定方法。
【請求項15】
1つより多いターゲットがあることを特徴とする請求項13に記載の蛍光スペクトル測定方法。
【請求項16】
規定の波長間隔が、20〜40ナノメーターの範囲で選択されることを特徴とする請求項13に記載の蛍光スペクトル測定方法。

【図1】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2008−530554(P2008−530554A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555188(P2007−555188)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/004406
【国際公開番号】WO2006/086459
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507272913)ナノドロップ・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】NanoDrop Technologies, Inc.
【Fターム(参考)】