説明

表面形状転写樹脂シートの製造方法

【課題】 表面コート液を多量に使用しなくても、樹脂シートの微細な凹凸表面に表面コート液を均一に塗布することができる表面形状転写樹脂シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 積層樹脂シート53の上面76に帯電防止剤を塗布する工程を含む樹脂シートの製造方法において、帯電防止剤を塗布するための機構として、積層樹脂シート53を、上面76が上方に向いた姿勢で水平方向に搬送し、上面76に常時当接する塗布ロール73と、角度θの傾斜角で塗布ロール73に回転接触していて、塗布ロール73に接する部分に塗布ロール73と協働して帯電防止剤を溜めるための液溜まり部81を確保する補助ロール74とを設け、積層樹脂シート53の上面76を塗布ロール73の周面77で押圧することにより、液溜まり部81に供給されて塗布ロール73の周面77に付着した帯電防止剤を上面76に均一に塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状転写樹脂シートの製造方法、詳しくは、転写型の転写により、表面に微細な凹凸が形成された表面形状転写樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
表面形状転写樹脂シートは、原料樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを形成し、その樹脂シートに転写型の凹凸形状を転写することによって得られるシートである。凹凸形状の転写は、例えば、樹脂シートを押圧ロールと転写型との間に挟み込んで、シート表面を転写型で押圧することによって行なわれる。
表面形状転写樹脂シートの用途としては、例えば、建築用部材などが従来知られている。近年では、液晶ディスプレイのバックライト装置に組み込まれる各種光学部材としての使用が普及しつつある。
【0003】
バックライト装置においては、樹脂シートは、例えば、光源から放出された光を前面側に均等に拡散させるための光拡散板として使用され、凹凸表面が前面側に向くように、光源が設置されたランプボックスの開放面に取り付けられる。
一方、光源の発光により装置内に熱が篭るので、通常、バックライト装置には、空気を入れ替えて装置内を冷却するための排出機構を設ける必要がある。ところが、排出機構を設けると、埃や粉塵(以下、「埃など」という。)が外部から排出機構を通して装置内に侵入し、光拡散板の凹凸表面に埃などがまばらに付着する場合がある。そして、埃などが付着した状態で光源が発光すると、埃などのムラが液晶セルを通して見える結果、画質の低下などの不具合を生じる。
【0004】
そこで、埃などの付着を緩和するための手法として、例えば、光拡散板の表面に帯電防止剤を含有したコーティング層を形成することにより、光拡散板の帯電防止性能を持続させる手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、例えば、光拡散板の作製後、ロールコータ法により、界面活性剤(帯電防止剤)を光拡散板の表面に塗布することによってコーティング層を形成する。
【0005】
また、コーティング層の形成とは異なる手法として、光拡散板を作製する際に、光拡散板の原料樹脂に帯電防止剤を配合する手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−178544号公報
【特許文献2】特開2004−184470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、光拡散板の表面が凹凸形状であるとき、特許文献1に例示された手法に倣って帯電防止剤を凹凸表面にコーティングしても、帯電防止剤が凹凸形状に塞き止められて均一に広がらないという不具合を生じる。
かかる不具合を解決する手法として、多量の帯電防止剤を凹凸表面に滴下することにより、凹凸形状の凹部から帯電防止剤を溢れさせて、面内に行き渡らせる手法が考えられるかもしれない。しかし、帯電防止剤の使用量が極端に多くなりコストが増加する、余分な帯電防止剤が光拡散板の製造装置を汚染する、および帯電防止剤が完全に乾かず光拡散板のハンドリングが困難になるといった別の不具合を生じる。
【0008】
一方、特許文献2に例示された手法では、帯電防止剤の配合量によっては、樹脂シートが変色したり、帯電防止剤のブリードアウトによって樹脂シート(光拡散板)の表面状態が劣化したりするといった不具合がある。
本発明の目的は、表面コート液を多量に使用しなくても、樹脂シートの微細な凹凸表面に表面コート液を均一に塗布することができる表面形状転写樹脂シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法は、樹脂シートの一方表面に微細な凹凸を形成して、前記微細な凹凸が形成された前記樹脂シートを送出する工程と、前記送出される樹脂シートの前記一方表面に表面コート液を塗布する塗布工程とを含み、前記塗布工程は、表面コート液を塗布するための機構として、送出される前記樹脂シートを、前記一方表面が上方に向いた姿勢で水平方向に搬送し、前記樹脂シートの前記一方表面に常時当接する塗布ロールと、前記塗布ロールの周面に対して回転接触するロールであって、前記塗布ロールが前記樹脂シートに接する角度位置とは異なる角度位置において前記塗布ロールに接していて、前記塗布ロールに接する部分に前記塗布ロールと協働して表面コート液を溜めるための液溜まり部を確保する、表面コート液供給のための補助ロールとを備え、前記樹脂シートの前記一方表面を前記塗布ロールの周面で押圧することにより、前記液溜まり部に供給されて前記塗布ロールの周面に付着した表面コート液を前記一方表面に均一に塗布することを特徴としている。
【0010】
本発明の方法によれば、液溜まり部が、塗布ロールと補助ロールとの協働により形成されている。そのため、液溜まり部に溜められた表面コート液は、塗布ロールの回転により液溜まり部を通過する塗布ロールの周面(ロール周面)に連続的に付着し、塗布ロールと補助ロールとの接触部分を通過する際に量が調節されて、樹脂シートに対する塗布ロールの当接位置に至るまで、ロール周面に付着した状態で運ばれる。そして、当該当接位置では、樹脂シートの微細な凹凸表面(一方表面)が、表面コート液が付着した塗布ロールの周面で押圧される。これにより、樹脂シートの微細な凹凸表面が表面コート液に接触して、微細な凹凸表面に表面コート液が塗布される。
【0011】
このように、樹脂シートが塗布ロールを通過する際、樹脂シートの微細な凹凸表面全体が、塗布ロールの周面に付着した表面コート液に満遍なく接触するので、樹脂シートの微細な凹凸表面に表面コート液を均一に塗布することができる。
また、表面コート液を多量に使用するのではなく、表面コート液の塗布量が塗布ロールと補助ロールとの接触部分で調節されるので、表面コート液の無駄が少ない。そのため、表面コート液の使用量が少なくて済む。その結果、コート液のコストの増加、製造装置の汚染、および樹脂シートのハンドリング性の低下などを抑制することができる。
【0012】
また、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、前記補助ロールが、前記塗布ロールの軸線と、前記樹脂シートに対する前記塗布ロールの接触線とを含む平面よりも前記樹脂シートの送出方向上流側に傾斜した角度位置に設けられており、前記塗布工程では、前記液溜まり部に前記送出方向下流側から表面コート液を供給することが好適である。
この方法では、補助ロールが送出方向上流側に傾斜した角度位置に設けられているので、補助ロールが塗布ロールの周面における頂部よりも下側に接していて、それにより、補助ロールの周面と塗布ロールの周面とにより挟まれて形成された液溜まり部が、下流側に開放している。そして、塗布工程では、送出方向下流側から表面コート液が供給されるので、供給された表面コート液を塗布ロールの回転により確実に液溜まり部に案内することができる。その結果、表面コート液の無駄をより少なくすることができる。
【0013】
また、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、少なくとも前記塗布ロールの周面がゴム材料からなることが好適である。
この方法では、塗布ロールの周面がゴム材料からなるので、樹脂シートの凹凸表面(一方表面)を塗布ロールで押圧する際、凹凸表面の形状に合わせてロール周面を変形させることができる。これにより、凹凸表面の凹んだ部分にもロール周面を入り込ませることができるので、より均一に表面コート液を塗布することができる。
【0014】
また、ゴム材料であるから、長期間使用後も、樹脂シートとの接触によるロール周面側の磨耗量を低減することができる。そのため、樹脂シートに対して表面コート液を、長期間安定して塗布することができる。
また、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、前記微細な凹凸を形成する工程では、前記樹脂シートの前記一方表面に前記送出方向に平行な筋状の溝を多数形成することにより、前記送出方向に延びる凹条および凸条が交互に配置された凹凸条部を前記一方表面に形成することが好適である。
【0015】
この方法では、微細な凹凸が、樹脂シートの送出方向に延びる凹条および凸条が交互に配置された凹凸条部であるため、樹脂シートの凹凸表面に塗布された表面コート液を、シートの送出方向に沿ってより均一に広げることができる。
また、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、前記凹凸条部における凸条の高さが、150μm以上であることが好適である。ただし、凸条の高さが150μm以上でなくても本発明の表面形状転写樹脂シート製造方法による上記効果を発現することができる。例えば、凸条の高さが50μm以上150μm未満の場合には、樹脂シートの搬送速度を適宜調整することにより、本発明の効果を良好に発現することができる。
【0016】
凸条の高さが150μm以上である場合に、凹凸条部に表面コート剤を滴下しても、滴下された表面コート剤は、凸条に塞き止められて均一に面内に広がらない。これに対し、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、高さ150μm以上の凸条を有する樹脂シートに対しても、表面コート剤を均一に塗布することができる。
さらに、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法では、表面コート液が、界面活性剤からなる帯電防止剤を含有していることが好適である。
【0017】
すなわち、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法は、帯電防止性能を付与したい各種樹脂シート(例えば、入射された光を微細な凹凸により拡散させる光拡散板など)の製造に好適である。
表面コート液として帯電防止剤を使用する場合、帯電防止剤を樹脂シートの表面に塗布することにより、製造された表面形状転写樹脂シートに帯電防止性能を十分与えることができる。そのため、シートの原料樹脂に帯電防止剤を全く配合する必要がないか、配合するとしても少量でよい。その結果、樹脂シートの変色、樹脂シートの表面状態の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法によれば、表面コート液を多量に使用しなくても、樹脂シートの微細な凹凸表面に表面コート液を均一に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、液晶ディスプレイの模式的な側面図である。
【図2】図2は、液晶ディスプレイの模式的な斜視図である。
【図3】図3は、積層樹脂板の模式的な斜視図である。
【図4】図4は、ランプボックスに対する積層樹脂板の取り付け状態を示すランプボックスの要部拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る積層樹脂シートの製造方法に使用される製造装置の概略構成図である。
【図6】図6は、積層樹脂シートの製造装置の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<液晶ディスプレイの全体構成>
図1は、液晶ディスプレイの模式的な側面図である。図2は、液晶ディスプレイの模式的な斜視図である。
液晶ディスプレイ1は、いわゆる直下型液晶ディスプレイであって、バックライト2と、バックライト2の前面に配置された液晶パネル3とを備えている。なお、図1および図2では、液晶ディスプレイ1を便宜的に、その前側を紙面上側に向けた姿勢で表している。また、以下の図で表される液晶ディスプレイ1、バックライト2、液晶パネル3などの各構成部材の縮尺は、説明の便宜上それぞれ設定されたものであり、全ての構成部材の縮尺が同じであるわけではない。
【0021】
バックライト2は、四角板状の後壁4および後壁4の周縁から前方へ一体的に立設された四角枠状の側壁5を有し、前面側が開放された薄型箱状の樹脂製ランプボックス6と、ランプボックス6内に設けられた複数の線状光源7と、ランプボックス6の開放面8(前面)を塞ぐ積層樹脂板9とを備えている。
すなわち、箱状のランプボックス6は、その開放面8の輪郭が四角枠状の側壁5により形成され、側壁5および後壁4により囲まれる空間内に、線状光源7が設けられている。ランプボックス6の後壁4内面には、例えば、線状光源7から後壁4側へ入射する光を、ボックスの開放面8側へ反射させるための反射板(図示せず)が全体に取り付けられている。
【0022】
線状光源7は、例えば、直径が2〜4mmの円筒状ランプである。複数の線状光源7は、積層樹脂板9の背面(後述する主面20)に対して一定間隔を空けた状態で、互いに平行に等しい間隔を空けて配置されている。
隣り合う線状光源7の中心同士の間隔Lは、省電力化の観点から、10mm以上であることが好ましい。また、積層樹脂板9の背面(後述する主面20)と線状光源7の中心との距離dは、薄型化の観点から、50mm以下であることが好ましい。また、距離dに対する間隔Lの比率(L/d)は、1.0〜6.0であることが好ましい。とりわけ、隣り合う線状光源7同士の間隔Lは、10〜100mmであることが好ましく、積層樹脂板9の背面(後述する主面20)と線状光源7の中心との距離dは、3〜50mmであることが好ましい。また、線状光源7の中心とランプボックス6の後壁4内面(反射板)との距離fは、例えば、2.0〜10.0mmである。
【0023】
なお、線状光源7としては、例えば、蛍光管(冷陰極管)、ハロゲンランプ、タングステンランプなど、公知の筒形ランプを用いることができる。また、バックライト2の光源としては、線状光源7に代えて、発光ダイオードなどの点状光源などを用いることもできる。
液晶パネル3は、液晶セル10と、液晶セル10を厚さ方向両側から挟む1対の偏光板11,12とを備えている。このような液晶パネル3は、一方の偏光板11と積層樹脂板9とが対向するように、バックライト2の前面に配置される。
【0024】
液晶セル10としては、例えば、TFT型液晶セル、STN型液晶セルなど、公知の液晶セルを用いることができる。
なお、液晶パネル3と積層樹脂板9との間には、各種光学フィルム、拡散フィルムを介在されていてもよい。
<積層樹脂板の構成>
図3は、積層樹脂板の模式的な斜視図である。図4は、ランプボックスに対する積層樹脂板の取り付け状態を示すランプボックスの要部拡大断面図である。
【0025】
図3に示すように、積層樹脂板9は、ランプボックス6の側壁5の枠形状とほぼ同じ四角の板状に形成されている。積層樹脂板9は、厚さ方向に3枚の樹脂層が積層された光透過性の3層光拡散板であり、相対的に厚い基材層13と、この基材層13を厚さ方向両側から挟む相対的に薄い1対の表面層14,15とを備えている。
積層樹脂板9は、前面側の主面16に、微細な凹凸としての半円凹凸部17を有している。
【0026】
半円凹凸部17は、積層樹脂板9の1組の対向周縁間に筋状に延びる一次元タイプのシリンドリカルレンズ形状の半円凸条18と、隣り合う半円凸条18の間の凹条19とからなる。なお、以下の図において、半円凸条18および凹条19の数は、説明の便宜上それぞれ設定されたものであり、実際には図面に表れた数に限定されるわけではない。
半円凸条18の幅Wは、例えば、10〜500μm、好ましくは、50〜400μmである。また、半円凸条18の高さHは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、さらに好ましくは、150μm以上であり、具体的には、150〜400μmである。また、半円凸条18の幅Wおよび高さHの具体的な数値としては、W=400μm、H=200μmが例示できる。ただし、幅Wおよび高さHの値は、これに限定されるものではない。
【0027】
半円凹凸部17において、多数の半円凸条18は、互いに平行に等しい間隔E(例えば、1〜15μm)を空けて配置されている。隣り合う半円凸条18の頂点同士の距離(ピッチP)は、例えば、10〜500μmであり、好ましくは、50〜400μmである。また、半円凸条18のピッチPに対する高さHの比率(H/P)は、例えば、0.2〜0.8である。
【0028】
そして、半円凹凸部17を有する前面側の主面16には、界面活性剤からなる表面コート液としての帯電防止剤がコーティングされている。
コーティングされる界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸およびそれらのLi(リチウム)塩、Na(ナトリウム)塩、Ca(カルシウム)塩、Mg(マグネシウム)塩、Zn(亜鉛)塩などのオレフィン系硫酸エステルまたはその金属塩、高級アルコールのリン酸エステル類などのアニオン系界面活性剤、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、カチオン系アクリル酸エステル誘導体、カチオン系ビニルエーテル誘導体などのカチオン系界面活性剤、アルキルアミン系ベタインの両性塩、カルボン酸またはスルホン酸アラニンの両性塩、アミンオキサイド系などの両性系界面活性剤、脂肪酸多価アルコールエステル、アルキル(アミン)のポリオキシエチレン付加物などの非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、半円凹凸部17の帯電防止性能の持続耐久性の観点から、好ましくは、両性系界面活性剤が挙げられ、さらに好ましくは、アミンオキサイド系界面活性剤が挙げられる。
【0029】
一方、積層樹脂板9は、背面側の主面20に、微細な凹凸が多数形成されたマット部21を有している。マット部21は、背面側の主面20全体にわたってほぼ均一に分布するエンボス形状からなるマット面とされている。
マット部21の形状は、例えば、表面の粗さで表すことができる。一例として、マット部21の算術平均粗さRaは、例えば、JIS B0601−2001に準拠して測定された値で、0.8〜5.0μmであり、好ましくは、1.0〜4.0μmである。また、マット部21の十点平均粗さRzは、例えば、JIS B0601−2001に準拠して測定された値で、8.0〜30.0μmであり、好ましくは、8.0〜20.0μmである。また、マット部21の平均間隔Rsmは、例えば、JIS B0601−2001に準拠して測定された値で、100〜400μmであり、好ましくは、200〜400μmである。
【0030】
また、図4に示すように、基材層13の厚さt1と、背面側の表面層14の厚さt2と、前面側の表面層15の厚さt3とを足した積層樹脂板9の総厚さTは、例えば、0.1〜10mmであり、好ましくは、1.0〜4.0mmである。また、基材層13の厚さt1は、例えば、0.05〜9.0mmであり、好ましくは、0.9〜3.0mmである。また、背面側の表面層14の厚さt2は、例えば、0.03〜1.0mmであり、好ましくは、0.05〜0.1mmである。また、前面側の表面層15の厚さt3は、例えば、0.0〜1.0mmであり、好ましくは、0.0〜0.1mmである。すなわち、前面側の表面層15は形成されなくてもよく、その場合には、積層樹脂板9は、相対的に厚い基材層13と、相対的に薄い表面層14とが積層された光透過性の2層光拡散板である。2層光拡散板の場合には、半円凹凸部17は、基材層13の前面側の主面に形成される。
【0031】
積層樹脂板9の原料としては、特に制限されず、例えば、公知の透光性樹脂を用いることができる。
透光性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、環状オレフィン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)などが挙げられる。
【0032】
上記透光性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、スチレン系樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、スチレン系樹脂の単独使用が挙げられる。
また、基材層13の原料として用いられる樹脂(A)と、表面層14,15の原料として用いられる樹脂(B)とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0033】
また、積層樹脂板9には、必要により光拡散剤(光拡散粒子)を含有することができる。
光拡散剤としては、積層樹脂板9を構成する透光性樹脂と屈折率が異なり、透過光を拡散できる粒子であれば特に制限されず、例えば、無機系の光拡散剤として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などが挙げられる。これらは、脂肪酸などで表面処理が施されたものであってもよい。
【0034】
また、例えば、有機系の光拡散剤として、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などが挙げられ、好ましくは、重量平均分子量が50万〜500万の高分子量重合体粒子や、アセトンに溶解させたときのゲル分率が10質量%以上である架橋重合体粒子が挙げられる。
上記光拡散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0035】
積層樹脂板9が光拡散剤を含有する場合、光拡散剤の配合割合は、透光性樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部、好ましくは、0.001〜0.2質量部である。また、光拡散剤は、上記透光性樹脂とのマスターバッチとして用いることができる。また、透光性樹脂の屈折率と光拡散剤の屈折率との差の絶対値は、光拡散性の観点から、通常、0.01〜0.20であり、好ましくは、0.02〜0.15である。
【0036】
また、積層樹脂板9には、必要により、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤などの各種添加剤を添加することもできる。紫外線吸収剤を添加する場合には、透光性樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤を0.1〜3質量部添加することが好ましい。上記した範囲であれば、紫外線吸収剤の表面へのブリードを抑制でき、積層樹脂板9の外観を良好に維持することができる。また、熱安定剤をさらに添加する場合には、透光性樹脂中の紫外線吸収剤1質量部に対して、熱安定剤を2質量部以下の割合で添加することが好ましく、透光性樹脂中の紫外線吸収剤1質量部に対して、熱安定剤を0.01〜1質量部添加することがさらに好ましい。また、光安定剤をさらに添加する場合には、透光性樹脂100質量部に対して、光安定剤を0.1〜1質量部添加することが好ましい。
【0037】
そして、積層樹脂板9は、図4に示すように、ランプボックス6内の線状光源7に対して半円凹凸部17が平行となる位置において、ランプボックス6の側壁5に対して積層樹脂板9の背面(主面20)を当接させて、ランプボックス6に固定されている。これにより、ランプボックス6の開放面8が積層樹脂板9により塞がれている。
<積層樹脂板(積層樹脂シート)の製造方法>
上記した積層樹脂板9は、下記の方法により製造された積層樹脂シートを切断することにより作製することができる。
【0038】
図5は、本発明の一実施形態に係る積層樹脂シートの製造方法に使用される製造装置の概略構成図である。図6は、積層樹脂シートの製造装置の要部拡大斜視図である。
シート製造装置51は、原料樹脂をシート状に押し出して成形するシート成形機52と、押し出された積層樹脂シート53を押圧により成形するための一組の押圧用ロール群54と、成形された積層樹脂シート53に帯電防止剤を塗布するための塗布用ロール群55と、積層樹脂シート53を引き取るための一対の引取用ロール群56とを備えている。
【0039】
シート成形機52は、基材層13の原料樹脂(A)を加熱溶融するための第1押出機57と、表面層14の原料樹脂(B)を加熱溶融するための第2押出機58と、第1および第2押出機57,58で溶融された樹脂が供給されるフィードブロック59と、フィードブロック59内の樹脂をシート状態で押し出すためのダイ60とを備えている。
第1および第2押出機57,58としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機など、公知の押出成形機を用いることができる。第1および第2押出機57,58には、押出機のシリンダ内に樹脂を投入するためのホッパ61,62が取り付けられている。
【0040】
フィードブロック59としては、2種以上の樹脂をダイ60に供給し、積層した状態で共押出しできる型式であれば特に制限されず、例えば、2種3層分配型、2種2層分配型など、公知のフィードブロックを用いることができる。
ダイ60としては、共押出し用のダイであれば特に制限されず、例えば、マルチマニホールドダイなど、公知のダイを用いることができる。
【0041】
押圧用ロール群54は、積層樹脂シート53を押圧により成形しながら、積層樹脂シート53の上下面75,76(上面76が積層樹脂板9の前面側の主面16であり、下面75が積層樹脂板9の背面側の主面20である。)に転写型により凹凸を形成する機構として、3つの押圧ロール63〜65を備えている。
3つの押圧ロール63〜65は、それぞれ円柱状の金属製(例えば、ステンレス鋼製、鉄鋼製など)ロールからなり、各軸線が水平となるように配置されていて、上から順に上ロール63、中間ロール64および下ロール65として、互いの軸線が平行となるように鉛直方向に連続して配置されている。押圧ロール63〜65の回転軸にはそれぞれモータ(図示せず)が接続されていて、上ロール63および下ロール65が反時計回りに回転可能であり、中間ロール64が時計回りに回転可能である。すなわち、押圧ロール63〜65は、上から順に「反時計回りに回転可能」、「時計回りに回転可能」、「反時計回りに回転可能」である。これにより、全てのロール63〜65が積層樹脂シート53を挟みこんだ状態で同期回転することができるので、シート成形機52から押し出された積層樹脂シート53の両面75,76に加工を施しながら搬送し、塗布用ロール群55へと送出することができる。
【0042】
各ロールの直径は、例えば、100mm〜500mmである。また、押圧ロール63〜65として金属製ロールが用いられる場合、その表面に、例えば、クロームメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、Ni−Pメッキなどのメッキ処理が施されていてもよい。
上ロール63の周面66は、例えば、鏡面加工が施されることにより平滑面とされている。
【0043】
中間ロール64の周面67には、例えば、積層樹脂シート53にマット部21を形成するためのマット転写型68が取り付けられている。
マット転写型68には、積層樹脂板9の背面側の主面20のマット部21とは反対型の微細な凹凸からなるエンボス形状が、中間ロール64の周面67に多数形成されている。すなわち、マット転写型68の表面は、微細な凹凸からなるエンボス形状が表面全体わたってほぼ均一に分布しているマット面とされており、その算術平均粗さRaが、例えば、6.0〜8.0μmであり、その十点平均粗さRzが、例えば、45.0〜50.0μmであり、その平均間隔Rsmが、例えば、120〜150μmである。
【0044】
下ロール65の周面69には、積層樹脂シート53に半円凹凸部17を形成するための凹版転写型70が取り付けられている。
凹版転写型70には、図6に示すように、シリンドリカルレンズ形状の半円凸条18とは反対型の凹溝71が、下ロール65の周方向に沿って多数筋状に形成されている。すなわち、凹溝71は、その長手方向(周方向)に直交する切断面が略半円弧状の輪郭を有している。隣り合う凹溝71の中心同士の距離(ピッチ)は、半円凸条18の形状に応じて適宜定められる。
【0045】
なお、マット転写型68が下ロール65に取り付けられてもよく、凹版転写型70が中間ロール64に取り付けられてもよい。また、中間ロール64の周面67は、鏡面加工が施されることにより平滑面とされていてもよい。その場合、積層樹脂板9の背面側の主面20は平滑面となる。
上記マット転写型68および凹版転写型70の原料としては、例えば、有機材料を用いることができる。
【0046】
有機材料としては、加熱溶融状態でダイ60から押し出された直後の積層樹脂シート53に繰り返し押し当てても、転写型の形状を維持できる耐熱性を有していればよく、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂(PI樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。
【0047】
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、アルリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)、熱可塑性ポリイミド樹脂(PI樹脂)などが挙げられる。
【0048】
これらのうち、好ましくは、ビカット軟化点(JIS K7206−1999 A50法)が、ダイ60から押し出される積層樹脂シート53のビカット軟化点よりも40℃以上高い熱可塑性樹脂、架橋された熱可塑性樹脂が挙げられる。
有機材料の具体的な一例として、上記した反対型の転写型が形成された有機材料製フィルムを、マット転写型68および凹版転写型70として用いることができる。
【0049】
有機材料製フィルム(マット転写型68および凹版転写型70)の厚さは、例えば、0.05mm〜5mmである。厚さが上記した範囲であれば、積層樹脂シート53に対して良好に転写することができる。
塗布用ロール群55は、押圧用ロール群54から送出された積層樹脂シート53の一方表面としての上面76に帯電防止剤を塗布するための機構として、3つのロール72〜74を備えている。
【0050】
3つのロール72〜74は、それぞれ円柱状の金属製(例えば、ステンレス鋼製、鉄鋼製など)ロールからなり、各軸線が押圧ロール63〜65の軸線に対して平行となるように上下方向に連続して配置されている。
3つのロール72〜74は、下から順に、積層樹脂シート53を下側から当接する支持ロール72と、積層樹脂シート53を挟んで支持ロール72に対向し、積層樹脂シート53に上側から当接する塗布ロール73と、塗布ロール73の斜め上方に配置され、塗布ロール73に当接する補助ロール74とを含んでいる。
【0051】
支持ロール72は、その上端が下ロール65の下端と同じ高さ位置となるように設置されている。これにより、下ロール65から送出される積層樹脂シート53を、送出直後の高さで支持したまま帯電防止剤を塗布できるので、塗布の作業性を向上させることができる。支持ロール72は、フリーローラであり、積層樹脂シート53の下面75に対して回動可能に接触している。
【0052】
塗布ロール73は、その回転軸がモータ(図示せず)に接続されていて、積層樹脂シート53における支持ロール72の当接位置(接触位置)と同じ位置において、上側から積層樹脂シート53の上面76に対して反時計回りに回転可能に接触している。塗布ロール73の周面77は、ゴム材料からなることが好ましい。ゴム材料としては、例えば、JIS K6253に準拠して測定される硬度が、A30〜A90のゴム材料、具体的には、NBR系ゴムなどが挙げられ、例えば、これらのゴム製シートを周面77に取り付けることにより、周面77をゴム製にすることができる。また、塗布ロール73の周面77形状は、例えば、クラウン加工されることにより、軸方向中央部が両端部よりも盛り上がっていることが好ましい。
【0053】
補助ロール74は、その回転軸がモータ(図示せず)に接続されていて、塗布ロール73の軸線と、積層樹脂シート53に対する塗布ロール73の接触線とを含む第1の平面78よりも積層樹脂シート53の送出方向上流側に傾斜した角度位置において、塗布ロール73の周面77に対して時計回りに回転可能に接触している。具体的には、補助ロール74と塗布ロール73とのなす角度、すなわち、補助ロール74の軸線と塗布ロール73の軸線とを含む第2の平面79と第1の平面78とのなす角度θが、例えば、10〜90°、好ましくは、15〜65°、さらに好ましくは、20〜35°となるように塗布ロール73に回転接触している。
【0054】
補助ロール74が傾斜して塗布ロール73に接触することにより、塗布ロール73の上方には、塗布ロール73の周面77と補助ロール74の周面80とが協働して区画するロール72〜74の軸線方向に長手な液溜まり部81が、シートの送出方向下流側に開放して形成されている。
また、補助ロール74の周面80の材質は、塗布ロール73の周面77の材質と同じであることが好ましい。つまり、補助ロール74の周面80は、ゴム材料からなることが好ましい。なお、補助ロール74の周面80の材質は、スポンジ製であってもよい。また、補助ロール74の周面80形状は、例えば、フラット加工されることにより、軸方向中央部および両端部が平坦であることが好ましい。塗布ロール73の周面77形状がクラウン加工されており、補助ロール74の周面80形状がフラット加工されていることにより、これらロール73,74の接触状態を良好にすることができる。
【0055】
液溜まり部81の上方には、複数の供給ノズル82が、液溜まり部81の長手方向(塗布ロール73の軸方向)に互いに等しい間隔をあけて設置されている。液溜まり部81への帯電防止剤への供給は、例えば、供給ノズル82から帯電防止剤を滴下することにより行なわれる。なお、供給ノズル82は、液溜まり部81における長手方向中央部1箇所だけに設けられていてもよい。
【0056】
供給ノズル82は、液収容部83に接続されている。液収容部83には、帯電防止剤が希釈された状態で貯留されている。貯留される帯電防止剤の濃度は、例えば、0.1〜5質量%であり、好ましくは、1.0〜4.0質量%である。帯電防止剤の濃度が上記範囲であれば、積層樹脂シート53に帯電防止剤をより均一に塗布できつつ、積層樹脂シート53に十分な帯電防止性能を与えることができる。
【0057】
一対の引取用ロール群56は、積層樹脂シート53を厚さ方向両側から挟み込む一対の引取ロール84,85を含んでいる。
引取ロール84,85は、それぞれ円柱状の金属製(例えば、ステンレス鋼製、鉄鋼製など)ロールからなり、下側の引取ロール84の上端が下ロール65の下端と同じ高さ位置となるように対向設置されている。これにより、下ロール65から送出される積層樹脂シート53を、送出直後の高さで支持したまま水平搬送できるので、搬送抵抗を小さくすることができる。
【0058】
次いで、上記した製造装置を用いた積層樹脂シート53の製造方法を説明する。
(1) シート製造工程
まず、第1押出機57のホッパ61に基材層13の原料樹脂(A)が投入され、溶融混練された後、フィードブロック59に供給される。一方、第2押出機58のホッパ62に表面層14,15の原料樹脂(B)が投入され、溶融混練された後、フィードブロック59に供給される。第1押出機57および第2押出機58のシリンダ温度は、例えば、190〜250℃に設定される。
【0059】
次いで、フィードブロック59内の樹脂が、ダイ60から共押出しされることにより、中間の基材層13および上下側の表面層14,15からなる3層の積層樹脂シート53として連続的に押し出される。
(2) 転写工程
ダイ60から押し出された積層樹脂シート53は、押圧ロール63〜65で押圧・冷却されることによって成形される。
【0060】
具体的には、ダイ60から共押出しされた樹脂は、上ロール63と中間ロール64とで挟み込まれて押圧された後、中間ロール64の周面67に下面75(背面側の主面20)が密着して搬送され、その際に冷却される。上ロール63および中間ロール64の表面温度としては、積層樹脂シート53の押出温度よりも低いことが好ましく、例えば、50℃〜120℃である。そして、上ロール63と中間ロール64との押圧の際、積層樹脂シート53の下面75(背面側の主面20)には、中間ロール64のマット転写型68の形状が転写されて微細な凹凸が多数形成されることによりマット部21が形成される。
【0061】
その後、中間ロール64と下ロール65とで挟み込まれて押圧される。下ロール65の表面温度としては、例えば、50℃〜120℃である。そして、中間ロール64と下ロール65との押圧の際、積層樹脂シート53の上面76(前面側の主面16)には、凹版転写型70の表面形状が転写されることによりシートの流れ方向(送出方向)に平行な筋状の半円凸条18および凹条19が多数本形成される。
【0062】
その後、積層樹脂シート53は、下ロール65の周面69に上面76が密着して搬送され、下ロール65の下端から塗布用ロール群55へと水平方向に送出される。
(3) 塗布工程
塗布用ロール群55では、塗布ロール73が下ロール65と同方向に回転(反時計回り回転)し、それに伴って補助ロール74が同期回転する。
【0063】
そして、供給ノズル82から液溜まり部81に供給された帯電防止剤が、塗布ロール73の回転により液溜まり部81を通過する塗布ロール73の周面77に連続的に付着し、積層樹脂シート53に対する塗布ロール73の当接位置に至るまで、周面77に付着した状態で運ばれる。
そして、塗布ロール73と積層樹脂シート53との当接位置では、積層樹脂シート53の上面76が、帯電防止剤が付着した周面77で押圧される。これにより、積層樹脂シート53の半円凹凸部17が帯電防止剤に接触して、半円凹凸部17が形成された上面76に帯電防止剤が均一に塗布される。
【0064】
なお、帯電防止剤の塗布量は、例えば、塗布ロール73と補助ロール74との密着度を調整し、また、積層樹脂シート53の総厚さTに合わせて塗布ロール73と支持ロール72との隙間の大きさを調節してこれらロールによる挟持力を加減することにより、例えば、0.01〜50g/m2に調節されることが好ましい。
(4) 引取工程
その後は、一対の引取ロール84,85により引き取られて表面形状転写樹脂シートとしての積層樹脂シート53が製造される。この後、積層樹脂シート53がさらに冷却された後、適当な大きさで切断されることにより、上記積層樹脂板9を得ることができる。
(5) 作用効果
以上のように、本実施形態の方法によれば、積層樹脂シート53が塗布ロール73と支持ロール72との間を通過する際、積層樹脂シート53の上面76に形成された半円凹凸部17全体が、塗布ロール73の周面77に付着した帯電防止剤に満遍なく接触する。そのため、積層樹脂シート53の半円凹凸部17に帯電防止剤を均一に塗布することができる。
【0065】
また、帯電防止剤を多量に使用するのではなく、帯電防止剤の塗布量が、塗布ロール73と補助ロール74との密着度を増減することにより、また、塗布ロール73と支持ロール72とによる挟持力を加減することにより調節されるので、帯電防止剤の無駄が少ない。そのため、帯電防止剤の使用量が少なくて済む。しかも、補助ロール74が傾斜して塗布ロール73に接触していて、それにより液溜まり部81がシートの送出方向下流側に開放していることから、送出方向下流側から供給された帯電防止剤を塗布ロール73の回転により確実に液溜まり部81に案内することができる。その結果、帯電防止剤の無駄をより少なくすることができる。よって、帯電防止剤のコストの増加、製造装置の汚染、および積層樹脂シート53のハンドリング性の低下などを抑制することができる。
【0066】
さらに、帯電防止剤を積層樹脂シート53の上面76に塗布することにより、製造された積層樹脂板9に帯電防止性能を十分与えることができる。そのため、シートの原料樹脂に帯電防止剤を全く配合する必要がないか、配合するとしても少量でよい。その結果、積層樹脂板9の変色、積層樹脂板9の表面状態の低下を抑制することができる。
また、塗布ロール73の周面77がゴム材料からなるので、積層樹脂シート53の上面76を塗布ロール73で押圧する際、半円凹凸部17の形状に合わせて周面77を変形させることができる。これにより、半円凹凸部17の凹条19にも周面77を入り込ませることができるので、より均一に帯電防止剤を塗布することができる。
【0067】
また、ゴム材料であるから、長期間使用後も、積層樹脂シート53との接触による周面77側の塗布ロール73の磨耗量を低減することができる。そのため、積層樹脂シート53に対して帯電防止剤を、長期間安定して塗布することができる。
また、転写工程において、積層樹脂シート53の送出方向に平行な筋状の半円凸条18および凹条19が多数本形成されるため、塗布工程においては、積層樹脂シート53は、半円凸条18および凹条19がロールの回転方向に平行となるように水平搬送される。そのため、積層樹脂シート53の半円凹凸部17に塗布された帯電防止剤を、積層樹脂シート53の送出方向に沿ってより均一に広げることができる。
【0068】
また、表面に高さ150μm以上の凸条が多数形成された一般的な樹脂シートにおいては、その表面に帯電防止剤を滴下しても、滴下された帯電防止剤が凸条に塞き止められて均一に面内に広がらない。これに対し、上記実施形態の方法では、高さ150μm以上の半円凸条18を有する積層樹脂シート53に対しても、帯電防止剤を均一に塗布することができる。
【0069】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の実施形態で実施することもできる。
例えば、樹脂板は、積層樹脂板9のような3層樹脂板に限定されるものではなく、例えば、単層樹脂板、2層樹脂板、4層以上の層からなる樹脂板であってもよい。
また、本発明の製造方法で使用される表面コート液としては、例えば、上記した界面活性剤に限らず、撥水剤、防汚ハードコート剤など、均一に塗布する必要性のある各種コート剤を適用することができる。
【0070】
また、例えば、前述の実施形態では、多数の半円凸条18は、前面側の主面16に平行な一方向に沿って延びるシリンドリカルレンズ形状で形成されている(1次元タイプ)(図3参照)が、例えば、前面側の主面16に平行な異なる二方向(例えば、互いに直交する二方向)に沿って延びるシリンドリカルレンズ形状で形成されていてもよい(すなわち、2次元タイプであってもよい)。
【0071】
また、半円凹凸部17は、例えば、長手方向において、連続しない多数個の半円凸条が互いに離間した状態で配列されていてもよい。
また、前述の実施形態では、半円凸条18の切断面の輪郭形状は、半円弧状であるとして説明したが、半円弧状に限定されるものではなく、例えば、円柱体をその軸線を含まない平面で切ったうちのいずれか一方の部材に相当する形状であってもよい。また、V字状、半楕円弧状、扁平湾曲線状などであってもよい。すなわち、「半円凸部」の語は、このような形状の凸部をも含む意味で用いている。
【0072】
また、例えば、搬送または積層樹脂シート53と押圧ロール63〜65との密着を補助する転写技術上無関係なロールであれば、積層樹脂シート53および各転写型(マット転写型68および凹版転写型70)に接するロール(タッチロール)が設けられていてもよい。
また、上記積層樹脂板9は、バックライト用の光拡散板として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【0073】
また、上記バックライト2は、液晶ディスプレイ用の面光源装置として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<積層樹脂シートの原料>
積層樹脂シートの原料として、以下の(1)〜(8)の材料を準備した。
(1) 透光性樹脂A
スチレン樹脂(東洋スチレン株式会社製「HRM40」 屈折率1.59)
(2) 透光性樹脂B
MS樹脂(新日鐵化学株式会社製「MS200NT(スチレン/メタクリル酸メチル=80質量部/20質量部)」 屈折率1.57)
(3) 帯電防止剤A
カチオン系帯電防止剤(日本純薬株式会社製「SAT−6C」 100倍希釈(1質量%))
(4) 光拡散剤マスターバッチB(ペレット)
透光性樹脂Bと、光拡散剤と、紫外線吸収剤とをドライブレンドした後、ブレンド物をスクリュー径65mm二軸押出機のホッパに投入し、シリンダ内で溶融混合した。そして、ブレンド物を溶融混合した状態でストランド状(ひも状)に押出し、ペレット化することにより調製した。なお、シリンダ温度は、ホッパ下部(200℃)から押出ダイ付近(250℃)と下流へ向けて徐々に高温になるように設定した。
<実施例および比較例>
(実施例1)
<積層樹脂シートの製造装置の構成>
図5に示す樹脂シート製造装置51と同様の構成を有する装置を用いた。なお、押圧ロール群および塗布用ロール群の条件を以下の通りとした。
(1) 上ロール
周面が鏡面加工された金属製ロール(直径:450mm)。
(2) 中間ロール
周面にマット転写型が設けられた金属製ロール(直径:450mm)。すなわち、中間ロールの周面は、微細な凹凸が多数形成されてなるマット面とされている。
(3) 下ロール
周面に凹版転写型が設けられた金属製ロール(直径:450mm)。すなわち、下ロールの周面には、周方向に一周する断面半円弧状の凹溝が、互いに平行に多数本筋状に形成されている。なお、凹版転写型の凹溝のピッチおよび高さについては、シートに形成する半円凸条の形状に合わせて下記表1のように設定した。
(4) 塗布ロール
周面がゴム製で、周面形状がクラウン加工された金属製ロール(直径50mm)。
(5) 補助ロール
周面がゴム製で、周面形状がフラット加工された金属製ロール(直径50mm)。また、補助ロールと塗布ロールとのなす角度(第2の平面と第1の平面とのなす角度θ)が20°となるように設置した。
(6) 支持ロール
塗布ロールと同じロールを用いた。
<具体的な製造方法>
まず、透光性樹脂A100質量部を、シリンダ内の温度が190〜250℃の第1押出機で溶融混練した後、3層分配型フィードブロックに供給した。また、光拡散剤マスターバッチB100質量部を、シリンダ内の温度が190〜250℃の第2押出機で溶融混練した後、上記3層分配型フィードブロックに供給した。
【0075】
次いで、第1押出機からフィードブロックに供給された樹脂が基材層となり、第2押出機からフィードブロックに供給された樹脂が両側の表面層となるように、フィードブロック内の樹脂を、押出樹脂温度250℃でマルチマニホールドダイ(幅:1500mm)により共押出しした後、上、中間および下ロールで押圧・冷却することによって、幅1100mm、総厚さ2.0mm(基材層1.9mm、表面層各0.05mm)の3層の積層樹脂シートを作製した。
【0076】
積層樹脂シートの作製過程では、ダイから共押出しされた樹脂は、上ロールと中間ロールとで挟み込まれて押圧された後、中間ロールの周面に密着して搬送され、その際に冷却された。中間ロールの周面にマット転写型が設けられているので、上ロールと中間ロールとの押圧の際、樹脂シートの下面側の表面層の主面(シート下面)には、マット転写型が転写されることにより微細な凹凸が多数形成された。
【0077】
その後、中間ロールと下ロールとで挟み込まれて押圧された。下ロールの周面に凹版転写型が備えられているので、中間ロールと下ロールとの押圧の際、樹脂シートの上面側の表面層の主面(シート上面)には、凹版転写型が転写されることによりシートの流れ方向に平行な筋状の半円凸条が多数本形成された。転写された半円凸条は、ピッチP400μmで等間隔に積層樹脂シートの幅方向全面に配列し、その高さHが200μmであった。
【0078】
また、上ロールの表面温度が65℃、中間ロールの表面温度が77℃、下ロールの表面温度が98℃となるように、各ロールの表面温度を調整した。
塗布ロール群においては、液溜まり部における塗布ロールの軸方向中央部1箇所に帯電防止剤Aを滴下(10秒間隔で10mLごと)した。そして、この滴下された帯電防止剤Aを、液溜まり部を通過する塗布ロールの周面に付着させ、塗布ロールと積層樹脂シートとの接触により、積層樹脂シートの上面全体に塗布した。
【0079】
なお、積層樹脂シートの生産速度は4.7m/分であった。
(実施例2)
補助ロールと塗布ロールとのなす角度θを10°としたこと以外は、実施例1と同様の方法・条件により、3層の積層樹脂シートを作製した。
(比較例1)
補助ロールを設置しなかったこと、および、帯電防止剤Aを、積層樹脂シートと塗布ロールとの接触部分よりも上流側から当該接触部分における塗布ロールの軸方向中央部1箇所に滴下(10秒間隔で10mLごと)したこと以外は、実施例1と同様の方法・条件により、3層の積層樹脂シートを作製した。
(比較例2)
帯電防止剤Aを、積層樹脂シートと塗布ロールとの接触部分よりも上流側から当該接触部分における塗布ロールの軸方向へ均等割りされた7箇所に滴下(10秒間隔で10mLごと)したこと以外は、比較例1と同様の方法・条件により、3層の積層樹脂シートを作製した。
(比較例3)
ピッチP250μmで等間隔に積層樹脂シートの幅方向全面に配列し、その高さHが100μmの半円凸条を積層樹脂シートの上面に形成したこと以外は、比較例1と同様の方法・条件により、3層の積層樹脂シートを作製した。
(比較例3)
ピッチP300μmで等間隔に積層樹脂シートの幅方向全面に配列し、その高さHが200μmの半円凸条を積層樹脂シートの上面に形成したこと以外は、比較例1と同様の方法・条件により、3層の積層樹脂シートを作製した。
<評価>
1 帯電防止剤Aの均一塗布性
上記実施例および比較例で作製された各積層樹脂シートについて、塗布用ロール群通過後の上面外観を目視で確認することにより、均一塗布性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0080】
なお、表1において、「○」は、帯電防止剤Aが均一に塗布されていたことを示し、「×」は、帯電防止剤Aの塗布ムラがあったことを示している。
【0081】
【表1】

【符号の説明】
【0082】
16 (前面側の)主面
17 半円凹凸部
18 半円凸条
19 凹条
53 積層樹脂シート
73 塗布ロール
74 補助ロール
76 (積層樹脂シートの)上面
77 (塗布ロールの)周面
78 第1の平面
81 液溜まり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの一方表面に微細な凹凸を形成して、前記微細な凹凸が形成された前記樹脂シートを送出する工程と、
前記送出される樹脂シートの前記一方表面に表面コート液を塗布する塗布工程とを含み、
前記塗布工程は、
表面コート液を塗布するための機構として、
送出される前記樹脂シートを、前記一方表面が上方に向いた姿勢で水平方向に搬送し、前記樹脂シートの前記一方表面に常時当接する塗布ロールと、
前記塗布ロールの周面に対して回転接触するロールであって、前記塗布ロールが前記樹脂シートに接する角度位置とは異なる角度位置において前記塗布ロールに接していて、前記塗布ロールに接する部分に前記塗布ロールと協働して表面コート液を溜めるための液溜まり部を確保する、表面コート液供給のための補助ロールとを備え、
前記樹脂シートの前記一方表面を前記塗布ロールの周面で押圧することにより、前記液溜まり部に供給されて前記塗布ロールの周面に付着した表面コート液を前記一方表面に均一に塗布することを特徴とする、表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記補助ロールが、前記塗布ロールの軸線と、前記樹脂シートに対する前記塗布ロールの接触線とを含む平面よりも前記樹脂シートの送出方向上流側に傾斜した角度位置に設けられており、
前記塗布工程では、前記液溜まり部に前記送出方向下流側から表面コート液を供給することを特徴とする、請求項1に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
少なくとも前記塗布ロールの周面がゴム材料からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記微細な凹凸を形成する工程では、前記樹脂シートの前記一方表面に前記送出方向に平行な筋状の溝を多数形成することにより、前記送出方向に延びる凹条および凸条が交互に配置された凹凸条部を前記一方表面に形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記凹凸条部における凸条の高さが、150μm以上であることを特徴とする、請求項4に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
表面コート液が、界面活性剤からなる帯電防止剤を含有していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−139996(P2011−139996A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2313(P2010−2313)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】