説明

表面皮下欠陥検出方法及びその装置

【課題】小さな表面皮下欠陥を適切に検出できると共に1回の超音波の送出で被検査体の隣接する複数の面を探傷することができる表面皮下欠陥検出方法及びその検出装置をを提供すること。
【解決手段】
被検査体2の表面直下を伝播する超音波を、被検査体2の側面Aから隣接する側面Bへ向かって送出し、当該送出された超音波のうち被検査体2表面の欠陥で反射した反射超音波を検出する。側面Aから隣接する側面Bへの移行部であるオーバルを透過した超音波を受波し、受波した超音波の強度に基づいて、検出した反射超音波が真に被検査体2表面の欠陥dで反射したものであるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒鋼や鋼片の表面及び表面皮下に存在する欠陥を検出する表面皮下欠陥検出方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料である棒鋼や鋼片などの表面や表面皮下に存在する欠陥を非破壊で検出する方法として、磁粉探傷法、浸透探傷法、渦流探傷法、超音波探傷法などが知られている。
磁粉探傷法は、被検査体表面にできた磁粉指示模様を観察することで表面欠陥を検出する技術であり、浸透探傷法は、被検査体表面にできた指示模様の蛍光を観察することで表面欠陥を検出する技術であるが、これらは共に湿式検査である。そのため、磁粉液や蛍光浸透剤の被検査体表面への散布量変化による輝度の変動、被検査体の表面粗度分布などの影響を大きく受けるので、検査結果の再現性が良くない。これによって、検査作業者によって検査結果が異なるという問題と、被検査体の表面に開口している欠陥しか検出できないという特徴を有している。
【0003】
また、渦流探傷法は、誘導電流の変化を検出することで被検査体の欠陥とその深さを検出する技術である。この渦流探傷法は、金属材料の表層部分の検査が可能であるものの、欠陥以外の組織変化や磁気変化も検出してしまうので、検出結果において欠陥だけを弁別するのが難しいという問題を有している。
そこで、一般的には、特許文献1に示すような超音波を用いた超音波探傷法が用いられることが多い。超音波探傷法としては、垂直探傷法と斜角探傷法と表面探傷法の3つの技術が一般に用いられる。
【0004】
ここで、垂直探傷法は、被検査体の表面に対して垂直に進行する超音波を用いて被検査体内を探傷する技術であり、斜角探傷法は、被検査体の表面に対して斜めに進行する超音波を用いて被検査体内又は被検査体表面を探傷する技術である。また、表面探傷法は、被検査体の表面を伝播する表面超音波を用いて被検査体表面を探傷する技術である。
このうち表面探傷法では、超音波探触子から被検査体の表面に対して表面波となる表面超音波を送出し、被検査体の表面又は表面皮下に存在する欠陥で反射して戻ってきた反射超音波を超音波探触子で受信することで、被検査体の表面欠陥及び表面皮下欠陥を検出できる。
【0005】
特許文献1に開示の表層欠陥探傷方法は、上述の斜角探傷法を用いたものであって、角鋼片の表面下の所定深さ範囲の表層領域内にある内部欠陥を該角鋼片の表層領域側の面と直交する側の面に斜角探触子を配設して検出する超音波斜角法による表層欠陥探傷方法において、前記表層領域の層厚を2bとし、角鋼片の表層領域側の側面から斜角探触子までの距離をaとし、伝播速度Cの超音波が入射されて表層領域内の内部欠陥により反射して検出されるまでの時間をtF としたとき、[(C・tF /2)2 −(a−b)2]1/2 の計算式で表層領域側の側面に沿う方向の内部欠陥の位置までの距離である評定距離を求めることを特徴とするものである。
【0006】
これによって、特許文献1は、角鋼片の表層領域にある内部欠陥の位置を精度良く評定し得るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−34320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の表層欠陥探傷方法では、欠陥での反射波による信号のみならず、コーナーエコー(コーナー反射波)による信号を検出するものとなっている。コーナー反射波とは、角鋼片のコーナーで反射した超音波のことであり、欠陥に起因する反射波とは異なるものである。
しかしながら、特許文献1では、このようなコーナー反射波を低減することが困難であると共に、上述の検出信号からコーナー反射波を排除する、言い換えれば、欠陥に起因する反射波のみを抽出することも困難である。よって、適切にこれら検出した信号の弁別を行い欠陥を検出することは困難であり、欠陥が小さくなるほどその検出はさらに困難になる。加えて、特許文献1では、探触子による1回の超音波の送出によって被検査体の1面しか探傷できないといった課題もある。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、棒鋼や鋼片などの表層部分を伝播する表面超音波を用いた表面探傷法において、被検査体の角部(オーバル)で生じるコーナー反射波による影響を低減することで、小さな表面皮下欠陥を適切に検出できると共に1回の超音波の送出で被検査体の隣接する複数の面を探傷することができる表面皮下欠陥検出方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の表面皮下欠陥検出方法は、複数の面を有する被検査体表面に存在する欠陥を超音波を用いて検出する方法であって、前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体の一つの面から隣接する他の面へ向かって送出する送出ステップと、前記送出ステップで送出された超音波のうち前記被検査体表面の欠陥で反射した反射超音波を検出する検出ステップと、前記一つの面から前記隣接する他の面への移行部である角部を透過した超音波を受波する受波ステップと、前記受波ステップで受波した超音波の強度に基づいて、前記検出ステップで検出した反射超音波が真に前記欠陥で反射したものであるか否かを判定する判定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記判定ステップは、前記受波ステップで受波した超音波の強度が所定の閾値以上となったときに、前記検出ステップで検出した反射超音波が真に前記欠陥で反射したものであると判定してもよい。
また、前記判定ステップは、前記受波ステップで受波した超音波の強度が所定の閾値未満となったときに、前記送出ステップで送出される超音波の周波数を変更してもよい。
【0012】
ここで、前記被検査体が、順に隣接するA〜Dの4面を有すると共に、A面とB面の間の角部及びC面とD面の間の角部が前記超音波の減衰が大きくなるオーバル形状を有する場合に、当該前記被検査体の表面に存在する欠陥を検出するに際しては、前記送出ステップが、前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のA面からB面へ送出する第1送出ステップと、前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のB面からC面へ送出する第2送出ステップと、前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のC面からD面へ送出する第3送出ステップと、前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のD面からA面へ送出する第4送出ステップと、を有していてもよい。
【0013】
また、前記被検査体が、順に隣接するA〜Dの4面を有すると共に、A面とB面の間の角部及びC面とD面の間の角部が前記超音波の減衰が大きくなるオーバル形状を有する場合に、当該前記被検査体の表面に存在する欠陥を検出するに際しては、前記送出ステップが、前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のA面からB面を経てC面へ送出する第5送出ステップと、前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のC面からD面を経てA面へ送出する第6送出ステップと、を有していてもよい。
【0014】
本発明の表面皮下欠陥検出装置は、被検査体の表面直下を伝播する超音波を送出する送出部と、少なくとも前記被検査体表面に存在する欠陥で反射して戻った超音波を受波する受波部とを有する第1の探触子と、前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を送出する送出部と、少なくとも前記被検査体表面に存在する欠陥で反射して戻った超音波を受波する受波部とを有する第2の探触子と、を備え、第1の探触子は、複数の面を有する前記被検査体の一つの面上に配置され、第2の探触子は、前記第1の探触子が配置された面から隣接する他の面への移行部である角部を隔てて前記第1の探触子とは異なる面上に配置されていることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記第2の探触子は、送出する超音波の送出方向を、前記第1の探触子から送出された超音波の伝播方向の逆方向に向けて配置されていてもよい。
さらに、前記第1の探触子及び/又は前記第2の探触子の送出部は、周波数の異なる超音波を送出可能であってもよい。
また、前記第1の探触子及び/又は前記第2の探触子の送出部は、前記周波数の異なる超音波を全て含む広帯域超音波を送出可能であってもよい。
【0016】
ここで、前記第1の探触子及び/又は前記第2の探触子の受波部で受波された前記広帯域超音波に含まれる前記周波数の異なる超音波のそれぞれを選択的に透過する又は選択的に遮断するフィルタ部を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えばオーバルと呼ばれる角部で反射してきた表面超音波の影響を受けることなく、小さな表面欠陥及び表面皮下欠陥を適切に検出できると共に1回の超音波の送出で被検査体の隣接する複数の面を探傷することができる表面皮下欠陥検出方法及びその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】オーバルを有する被検査体の表面皮下欠陥を検出する方法の概略を説明する図である。
【図2】本発明の第1実施形態による表面皮下欠陥検出装置の構成の概略を示す図であり、(a)は、表面皮下欠陥検出装置全体の概略図、(b)は、探触子の構成の概略図である。
【図3】表面皮下欠陥検出装置の動作のフローチャートを示す図である。
【図4】表面皮下欠陥検出装置の動作における、初期設定の方法を説明する概略図であり、(a)は、欠陥からの反射表面波(S)のオーバルからの反射表面波(N)に対する比(S/N比)の検出方法を示す図であり、(b)は、オーバルを透過した透過表面波強度の閾値の決定方法を示す図である。
【図5】探触子から送出される表面波が狭帯域である場合の波形例と広帯域である場合の波形例とを示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態による表面皮下欠陥検出方法の概略を示す図である。
【図7】2つの探触子からそれぞれ対向する方向に表面波を送出した状態を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態による表面皮下欠陥検出方法の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
(第1実施形態)
図1〜図5を参照しながら、以下に、本発明の第1実施形態による表面皮下欠陥検出装置1について説明すると共に、この表面皮下欠陥検出装置1を用いた表面皮下欠陥検出方法について説明する。
【0020】
本実施形態による表面皮下欠陥検出装置1は、複数の面を有する棒鋼や鋼片などの被検査体2の表面や表面皮下に存在する欠陥を超音波を用いて検出(探傷)する装置である。
この表面皮下欠陥検出装置1は、被検査体2の表面直下を伝播する超音波(表面波)を送出する送出部及び少なくとも被検査体2の表面及び表面皮下に存在する欠陥で反射して戻った超音波を受波する受波部を有する第1の探触子と、第1の探触子と同様の構成を有する第2の探触子と、を備え、第1の探触子は、複数の面を有する被検査体2の一つの面上に配置され、第2の探触子は、第1の探触子が配置された面から隣接する他の面への移行部である角部を隔てて第1の探触子とは異なる面上に配置されている。
【0021】
表面皮下欠陥検出装置1について説明する前に、図1を参照して、棒鋼や鋼片などの被検査体2の形状を説明し、探触子から送出される超音波が被検査体2の形状によって受ける影響について説明する。
図1は、後述するオーバルを有する被検査体2の表面皮下欠陥を検出する方法の概略を説明する図である。
【0022】
被検査体2は、例えばカリバー圧延などで圧延されて形成された略四角柱の棒鋼や鋼片であるので、長手方向の両端にある2つの端面と、長手方向に沿った側面A〜側面Dの4側面と、隣接する2つの側面の一方から他方への移行部である4つの角部を有している。図1は、この略四角柱の被検査体2を、長手方向におけるある位置で、被検査体2の側面A〜側面Dに垂直な一つの平面で切断したときの断面を示している。
【0023】
この被検査体2の断面形状は略四角形であり、側面A〜側面Dの4側面に対応する4本の辺と、4つの角部に対応する4つの頂部を有している。4本の辺は、被検査体2の側面A〜側面Dにそれぞれ対応しているので、図1において、各辺には、対応する側面の記号A〜Dのいずれかを付している。
4つの頂部のうち、図1の紙面に向かって左右方向に位置する2つの頂部は、圧延時に、例えば最終スタンドのカリバーロールの溝で形成された部位であり、弧を描く滑らかな形状となっている。図1の紙面に向かって上下方向に位置する残りの2つの頂部は、例えば最終スタンドでカリバーロールの溝に接していなかった部位であり、弧を描かずに角張った多角形状又は不規則形状となっている。
【0024】
以下の説明において、この多角形状又は不規則形状の2つの頂部をオーバルというと共に、棒鋼や鋼片などの被検査体2を、図1に示す断面形状で代表させて説明する。
また、図1に示すように、上述の構成の被検査体2の側面Bの皮下には、例えばクラックなどの欠陥dが存在しているとする。
次に、被検査体2の多角形状又は不規則形状のオーバルが、「表面超音波による表面欠陥及び表面皮下欠陥の検出」に及ぼす影響について説明する。
【0025】
図1に示すように、被検査体2の側面A上に、被検査体2の表面直下を伝播する超音波(表面波)を送出すると共に被検査体2の表面直下を伝播した表面波を受波する探触子T(第1の探触子)を配置する。
側面A上に配置された探触子Tが側面Aから側面Bに向かって表面波を送出すると、側面A上の探触子Tから送出された表面波は、オーバルを透過して側面Bに伝播し、側面Bの表面皮下に存在する欠陥dで反射して探触子Tに戻る。このように、探触子Tが送出した表面波がオーバルを透過して欠陥dに到達し、その後欠陥dで反射した表面波がオーバルを透過して探触子Tに戻ることで、探触子Tが配置された側面の隣接面に存在する欠陥dを検出(探傷)することができる。
【0026】
しかし、前述のとおりオーバルは多角形状又は不規則形状を有しているので、オーバルを伝播する表面波は様々な方向に反射して減衰する。オーバルによる表面波の減衰が大きい場合(以下、オーバルの影響が大きい場合という)、図1に示すモデルにおいても、探触子Tは、信号成分である欠陥dからの反射表面波(信号成分S)を受波することはできず、ノイズ成分となるオーバルからの反射表面波(ノイズ成分N)を受波するだけである。よって、表面皮下欠陥検出装置1の後述する超音波探傷器6では、オーバルからの反射表面波に対応する信号(N)が検出されるだけである。
【0027】
オーバルによる表面波の減衰が小さい場合(以下、オーバルの影響が小さい場合という)、図1に示すモデルにおいて、探触子Tは、オーバルからの反射表面波(N)を受波した後に、欠陥dからの反射表面波(S)を受波することができる。よって、超音波探傷器6には、オーバルからの反射表面波(N)に対応する信号に続いて、欠陥dからの反射波(S)に対応する信号が検出される。しかし、オーバルの影響の程度によっては、欠陥dからの反射表面波(S)のオーバルからの反射表面波(N)に対する比(S/N比)が必要とされる大きさとならない場合もある。
【0028】
上述のように、オーバルの影響が大きい場合、探触子Tが配置された側面Aにオーバルを隔てて隣接する側面Bの表面皮下に存在する欠陥dを検出できなくなるが、この場合は、先に用いた表面波よりも低い周波数の表面波を探触子Tから送出する。低周波数の超音波を表面波に使用すると、表面波に対するオーバルの影響が小さくなるので、探触子Tから送出された表面波は、オーバルを透過しやすくなる。よって、図1に「低周波数を使用」した場合として示すように、超音波探傷器6には、オーバルからの反射表面波(N)に対応する信号に続いて、欠陥dからの反射表面波(S)に対応する信号が検出される。
【0029】
ここで、表面波の周波数について説明する。
通常、表面波を用いた表面探傷法における検出可能な欠陥の大きさは、表面波の波長の1/4程度までといわれている。しかしながら、実験の結果、表面波の波長の1/4〜1/7程度が検出できる欠陥の大きさの下限(最小値)となることが分かった。
つまり、検出したい欠陥の大きさの下限値(最小値)が決まれば、表面波の波長をその下限値の4〜7倍程度にすればよいことがわかる。いま、表面波の波長が決まれば、棒鋼や鋼片などの被検査体2における音速は一定であるので、表面波の周波数も決まる。
【0030】
このようにして決められた周波数の表面波を用いれば、下限値以上の大きさの欠陥を検出することが可能となる。しかし、上述のオーバルの影響によって、先に用いた表面波よりも低い周波数の表面波を用いると、周波数が低下した分だけ表面波の波長が大きくなるので、検出できる欠陥の大きさの下限値が、先に用いた高周波数の表面波の場合よりも大きくなってしまう。
【0031】
ここまでで述べたように、オーバルを有する被検査体2に対して表面探傷法を適用する場合は、用いる表面波の周波数に留意することより確実に欠陥を検出することができる。
次に、図2を参照しながら、上述のオーバルを有する被検査体2の表面及び表面皮下に存在する欠陥の検出に用いる表面皮下欠陥検出装置1について説明する。
図2は、表面皮下欠陥検出装置1の構成の概略を示す図であり、図2(a)は、表面皮下欠陥検出装置1全体の概略図、図2(b)は、センサヘッド3、センサホルダ4、及び探触子Tの概略構成を示す図である。
【0032】
表面皮下欠陥検出装置1は、探触子T(第1の探触子)とセンサホルダ4とホルダ支持体5からなるセンサヘッド3、探触子T’(第2の探触子)とセンサホルダ4’とホルダ支持体5’からなるセンサヘッド3’、超音波探傷器6、信号記録処理装置7、接触媒質供給回収部8、エアブロア9、エアブロア9’及びエア供給部10を有するものであり、略四角柱の被検査体2の検査ラインに設置されている。
【0033】
まず、表面欠陥及び表面皮下欠陥に用いるセンサヘッド3,3’の構成について説明する。
図2(b)に示すセンサヘッド3は、探触子Tと、探触子Tを保持するセンサホルダ4と、センサホルダ4を支持し被検査体2に当接させるホルダ支持体5からなるものである。センサヘッド3’は、センサヘッド3と同様の構成を有している。本実施形態による表面皮下欠陥検出装置1は、同様の構成を有する2つのセンサヘッド3,3’を備えている。
【0034】
探触子T及び探触子T’は、例えば圧電素子によって構成されており、所定電圧のパルス電流が加えられると所定周波数の超音波(表面波)を送出する送出部としての機能と、反射超音波(反射表面波)を受波する受波部としての機能とを有するものである。受波部としての機能は、反射表面波を受波すると受波した反射表面波に対応したパルス電流を発生することである。
【0035】
図2(b)に示すように、本実施形態における探触子T及び探触子T’は、それぞれ異なる2種類の圧電素子で構成されており、一方の圧電素子は周波数f1の表面波を送出することができ、他方の圧電素子は周波数f2の表面波を送出することができる。なお、圧電素子は、周波数f1が周波数f2より高く(f1>f2)なるように選択されている。
圧電素子の代わりに、電磁コイルを用いたローレンツ型横波発生用センサなどの電磁超音波センサを用いて、探触子T及び探触子T’を構成してもよい。
【0036】
センサホルダ4は、例えば略立方体で下方が開放された箱型の筐体であって、その箱型の内部において、超音波である表面波(レーリー波)を送出及び受波する探触子Tを有する。
さらにセンサホルダ4は、探触子Tと被検査体2との間で超音波を伝達する接触媒質を探触子Tに供給するための接触媒質供給管と、供給された接触媒質を探触子Tから回収するための接触媒質回収管を有するものである。このセンサホルダ4は、ホルダ支持体5により支持されるものとなっている。
【0037】
センサホルダ4’は、上述のセンサホルダ4と同様の構成を有しており、ホルダ支持体5’により支持される。
超音波探傷器6は、2つのセンサヘッド3,3’に備えられた2つの探触子T,T’に接続されており、探触子T,T’の送出部として働く2種類の圧電素子のいずれかへ選択的に所定電圧のパルス電流を出力する。また、超音波探傷器6は、当該2種類の圧電素子が反射表面波を受波して受波部として働いたときに発生したパルス電流を受け取り、後述する信号記録処理装置7に反射表面波信号として出力するものである。超音波探傷器6でパルス電流を調整することで、被検査体2の少なくとも2つの側面に伝播する表面波を探触子T,T’に送出させることができる。
【0038】
信号記録処理装置7は、超音波探傷器6に接続されており、超音波探傷器6から出力された反射表面波信号を受信して、受信した反射表面波信号を基に、反射表面波(エコー)の到達時間、すなわち欠陥の位置などを算出するものである。
接触媒質供給回収部8は、センサヘッド3,3’の探触子T,T’で用いられる接触媒質を、センサホルダ4,4’の接触媒質供給管を通して探触子T,T’に供給すると共に、センサホルダ4,4’の接触媒質回収管を通して探触子T,T’から接触媒質を回収するものである。そのため、接触媒質供給回収部8は、センサホルダ4,4’の接触媒質供給管及び接触媒質回収管に接続される。ここで、接触媒質とは、水、グリセリンペースト、油など、超音波を伝達する物質のことである。なお、探触子T,T’に電磁超音波センサを用いる場合は、接触媒質は不要である。
【0039】
エアブロア9,9’は、被検査体2の側面上に残る接触媒質などを除去するための手段である。図2(a)に示すように、エアブロア9,9’は、被検査体2の側面の幅とほぼ同じ幅を持つ略直方体の筐体と、該筐体の長手方向に沿って設けられた複数のエアノズルと、エア導入口(図示せず)とから構成される。
図2(a)に示すように、エアブロア9,9’は、センサヘッド3,3’が配置された被検査体2の側面上で、センサヘッド3,3’から所定の距離だけ離れた通材方向下流側に配置される。このとき、エアブロア9,9’は、被検査体2の側面との間に大きな摩擦が生じないように、該側面との間に所定の間隔を確保して浮き上がった状態で配置される。また、このような位置で、エアブロア9,9’は、エアノズルを被検査体2の周方向に沿った表面波の伝播範囲に向けて配置されている。
【0040】
エア供給部10は、表面皮下欠陥検出装置1が設置される工場全体での使用を目的としたエアを供給する工場圧力配管やコンプレッサなどである。このエア供給部10は、エアブロア9,9’のエア導入口に接続されて、エアを供給する。
上述のような構成の表面皮下欠陥検出装置1を被検査体2の検査ラインに設置して、図2(a)の右側に示すように、2つの探触子T,T’が被検査体2の隣接する側面に当接し、探触子Tは、探触子T’に向かって矢印で示される被検査体2の周方向に表面波が送出されるように、探触子T’は、探触子Tに向かって該矢印の反対方向に表面波が送出されるように、2つのセンサヘッド3,3’を配置する。
【0041】
このように配置することで、探触子Tが送出した表面波を探触子T’が受波することができ、その逆に、探触子T’が送出した表面波を探触子Tが受波することができる。
エアブロア9,9’は、これら2つのセンサヘッド3,3’のそれぞれに対応する位置に配置される。
次に、図3及び図4を参照しつつ、上述のように設置された表面皮下欠陥検出装置1の動作(表面皮下欠陥検出方法)について、以下に説明する。
【0042】
図3は、表面皮下欠陥検出装置1の動作のフローチャートを示す図である。
図4は、表面皮下欠陥検出装置1の動作における、初期設定の方法を説明する概略図であり、図4(a)は、欠陥d’からの反射表面波(S)のオーバルからの反射表面波(N)に対する比(S/N比)の検出方法を示す図であり、図4(b)は、オーバルを透過した表面波(透過表面波)強度の閾値の決定方法を示す図である。
【0043】
図4に示す表面皮下欠陥検出装置1の動作において、まずステップS1を行う。
ステップS1では、通常のオーバルを有すると共に検出下限の大きさの表面欠陥又は表面皮下欠陥d’を有するテスト鋼片11を準備する。その後、オーバルを挟んで隣接する2つの側面のうち、表面皮下欠陥d’を有しない側面に探触子Tを当接させ、表面皮下欠陥d’を有する側面上で当該表面皮下欠陥d’よりも探触子Tから遠くなる位置に探触子T’を当接させる。
【0044】
ステップS1でテスト鋼片11の準備ができれば、ステップS2に処理を進める。
ステップS2では、図4(a)に示すように、探触子Tから探触子T’に向かって周波数f1の表面波を送出する。探触子Tが送出した表面波は、オーバルを透過して欠陥d’で反射する。欠陥d’で反射した表面波は、オーバルを透過して探触子Tに戻り、受波される。
【0045】
この一連の動作における信号検出は、超音波探傷器6で行われ、信号記録処理装置7は、図4(a)の下に示すような各検出信号の強度を表示する。当該各検出信号のうち、欠陥d’からの反射表面波(S)と、オーバルからの反射表面波(N)とを比較して、欠陥d’からの反射表面波(S)のオーバルからの反射表面波(N)に対する比(S/N比)を求める。こうして求めたS/N比が、例えば2未満であった場合、探触子が送出する表面波の周波数f1を変更して、再度上記動作を行い、S/N比が2以上となるような表面波の周波数(探傷信号周波数)f1を選択する。
【0046】
このとき、もう一つの表面波の周波数f2を、周波数f1に対して所定の値だけ低くなるように選択することで、f1>f2となるように表面皮下欠陥検出装置1を設定する。(探触子が送出する表面波の周波数f1,f2を選択する。)
その後、ステップS3において、探触子Tと探触子T’との間に欠陥d’が存在しないように、2つの探触子T,T’の位置をテスト鋼片の長手方向にずらして移動させる。
【0047】
2つの探触子T,T’の位置をずらすと、図4(b)に示すように、探触子Tと探触子T’との間には、オーバルだけが存在し、欠陥d’は存在しなくなる。この状態で、図4(b)に示すように、探触子Tから探触子T’に向かって周波数f1の表面波を送出する。探触子Tが送出した表面波は、オーバルを透過して探触子T’に受波される。
この一連の動作における信号検出は超音波探傷器6で行われ、信号記録処理装置7は、図4(b)の下に示すような透過表面波による信号の強度を表示する。このときの信号強度を、以下に続く被検査体2の検査における閾値として設定する。
【0048】
次に、ステップS4にて、検査対象である鋼片(被検査体2)を準備する。その上で、表面皮下欠陥検出装置1の2つの探触子T,T’を、被検査体2のオーバルを挟む側面Aと側面Bにそれぞれ当接させる。その後、探触子Tが探触子T’に向かって表面波を送出し、探触子Tは被検査体2内で反射した反射表面波を受波し、探触子T’はオーバルを透過した透過表面波を受波する。
【0049】
ステップS5では、探触子T’が受波した透過表面波の強度が、ステップS3で設定した閾値以上であるか否かを判定する。透過表面波の強度が当該閾値以上であった場合、探触子Tが送出する表面波の周波数をf1のまま変更しないことにする(ステップS6)。しかし、透過表面波の強度が当該閾値未満であった場合、探触子Tが送出する表面波の周波数をf2に変更する(ステップS7)。
【0050】
その後、ステップS6、ステップS7のどちらを採用したとしても、探触子Tにより検出した「S/N比が2以上となる表面反射波」を基に、表面欠陥の有無を判断する。
ところで、ステップS7において、探触子Tが送出する表面波の周波数をf2に切り換えていたが、図5に示すように、送出する表面波の周波数を広帯域とすることで、斯かる切り換えが不要となる。
【0051】
すなわち、これまでに述べた2つの探触子T,T’は、図5に「狭帯域の場合」として示すように、互いに帯域が重なり合わない狭帯域の表面波を送出する2つの圧電素子として、周波数f1の表面波を送出する圧電素子と周波数f2の表面波を送出する圧電素子とを有している。
しかし、2つの探触子T,T’は、図5に「広帯域の場合」として示すような、[(f1+f2)/2}を中心周波数としつつ周波数f1と周波数f2を含む広帯域の表面波を送出する「単一の圧電素子」から構成されていてもよい。
【0052】
例えば図3のフローチャートにおいて、ステップS4で、探触子Tが周波数f1と周波数f2を含む広帯域の表面波を送出し、探触子T’が被検査体2を伝播した当該広帯域の表面波を受波したとする。
そのときステップS5において、超音波探傷器6又は信号記録処理装置7は、周波数f1及び周波数f2の何れか一方を選択的に透過させるローパスフィルタやハイパスフィルタなど(バンドパスフィルタでもよい)を用いて、探触子T’が受波した当該広帯域の表面波から周波数f1の成分だけを抽出し、オーバルを透過した周波数f1の透過表面波の強度が、ステップS3で設定した閾値以上であるか否かを判定する。
【0053】
当該透過表面波の強度が閾値未満であった場合、ステップS7では、フィルタを切り換え、周波数f2の成分だけを抽出するように変更して、検査をやり直すことができる。
このような広帯域の表面波を送出する圧電素子を採用しても、表面又は表面皮下欠陥からの反射表面波(S)のオーバルからの反射表面波(N)に対する比(S/N比)が高く、且つ欠陥からの反射表面波の検出においてオーバルの影響が小さな表面皮下欠陥検出を実現することができる。
(第2実施形態)
図6及び図7を参照しながら、以下に、本発明の第2実施形態による表面皮下欠陥検出装置1及び表面皮下欠陥検出方法について説明する。
【0054】
図6は、本実施形態による表面皮下欠陥検出方法の概略を示す図である。
図7は、2つの探触子T,T’からそれぞれ対向する方向に表面波を送出した状態を示す図である。
本実施形態による表面皮下欠陥検出装置1の構成は第1実施形態における表面皮下欠陥検出装置1と同様の構成を有するものである。
【0055】
また、本実施形態による表面皮下欠陥検出方法は、第1実施形態において図3のフローチャートに示した各ステップとほぼ同様のステップを有している。本実施形態による表面皮下欠陥検出方法は、図3のフローチャートに示したステップS1〜ステップS3を実行した後に、ステップS4〜ステップS7で、被検査体2の全周(側面A〜側面D)を検査することと、表面波を探触子Tと探触子T’との間でそれぞれ対向する方向に送出することを特徴としている。
【0056】
図6を参照しながら、本実施形態による表面皮下欠陥検出方法について以下に説明する。
まず、第1実施形態における図3のステップS4と同様に、表面皮下欠陥検出装置1の2つの探触子T,T’を被検査体2のオーバルを挟む側面Aと側面Bにそれぞれ当接させる。その後、探触子Tが探触子T’に向かって表面波を送出し、探触子Tは被検査体2内で反射した反射表面波を受波し、探触子T’はオーバルを透過した透過表面波を受波する。
【0057】
これに続いて、探触子T’が探触子Tに向かって表面波を送出し、探触子T’は被検査体2内で反射した反射表面波を受波し、探触子Tはオーバルを透過した透過表面波を受波する。これら反射表面波及び透過表面波を受波した後、図3のステップS5に処理を進める。
ステップS5では、探触子T’が受波した透過表面波の強度が、ステップS3で設定した閾値以上であるか否かを判定する。透過表面波の強度が当該閾値以上であった場合、探触子Tが送出する表面波の周波数をf1のまま変更しない(ステップS6)。しかし、透過表面波の強度が当該閾値未満であった場合、探触子Tが送出する表面波の周波数をf2に変更する(ステップS7)。
【0058】
続いて、探触子Tが受波した透過表面波の強度が、ステップS3で設定した閾値以上であるか否かを判定する。透過表面波の強度が当該閾値以上であった場合、探触子T’が送出する表面波の周波数をf1のまま変更しない(ステップS6)。しかし、透過表面波の強度が当該閾値未満であった場合、探触子T’が送出する表面波の周波数をf2に変更する(ステップS7)。
【0059】
このように、ステップS6又はステップS7で、探触子Tが送出する表面波の周波数と、探触子T’が送出する表面波の周波数とを選択した後に、図6に示す手順で、被検査体2の全周を検査し、表面欠陥を検出する。
まず、図6の左端に示すように、探触子Tを側面Aに配置し、探触子T’を側面Bに配置する。ステップS6又はステップS7で選択された周波数の表面波を用いて、探触子Tが表面波を送出し、その後に探触子T’が表面波を送出することで、側面A及び側面Bの検査を行う(第1送出ステップ)。
【0060】
次に、探触子Tを側面Bに配置すると共に探触子T’を側面Cに配置し、探触子T及び探触子T’が同様の手順で表面波を送出することで、側面B及び側面Cの検査を行う(第2送出ステップ)。
続いて、探触子Tを側面Cに配置すると共に探触子T’を側面Dに配置し、探触子T及び探触子T’が同様の手順を繰り返して表面波を送出することで、側面C及び側面Dの検査を行う(第3送出ステップ)。
【0061】
最後に、探触子Tを側面Dに配置すると共に探触子T’を側面Aに配置し、探触子T及び探触子T’が同様の手順を繰り返して表面波を送出することで、側面D及び側面Aの検査を行う(第4送出ステップ)。
この手順によって、本実施形態による表面皮下欠陥検出方法は、2つの探触子T,T’の配置を図6において時計回りに変更することで、被検査体2の側面を全周にわたって検査することができる。また、探触子Tと探触子T’との間で表面波をそれぞれ対向するに送出しているので(送信波の方向:「探触子T→探触子T’」又は「探触子T←探触子T’」)、表面波を図6において表面波を時計回りに送出した検査と反時計回りに送出した検査とを行うことができる。
【0062】
図7を参照して、探触子Tと探触子T’との間で表面波を双方向に送出することの利点を以下に説明する。
図7は、欠陥を有する被検査体2の同一側面上に2つの探触子T,T’を配置し、それぞれ対向する方向に表面波を送出した状態を示す図である。図中、被検査体2の表面皮下に示される矢印は、探触子T,T’から送出された表面波を示している。
【0063】
図7に示すように紙面右上から左下方向に向かって傾斜した欠陥は、紙面右側の探触子T’が送出した表面波を被検査体2の内部に向かって反射してしまうので、右側の探触子T’で欠陥を検出することは困難である。しかし、紙面左側の探触子Tが送出した表面波は、欠陥と被検査体2の表面に閉じこめられる向きに反射するため、被検査体2の側面を伝播して紙面左側の探触子Tに戻る。これによって、紙面左側の探触子Tは、欠陥を検出することができる。
【0064】
このように欠陥の形状は複雑であるため、表面波の伝播方向に対して有効な散乱断面積が小さい欠陥や上述したような傾いた欠陥である場合でも、2つの探触子T,T’から互いに対向する方向に表面波を送出する表面皮下欠陥検出方法によれば、第1実施形態における効果に加えて、確実に欠陥を検出することができる。
(第3実施形態)
図8を参照しながら、以下に、本発明の第3実施形態による表面皮下欠陥検出装置1及び表面皮下欠陥検出方法について説明する。図8は、本実施形態による表面皮下欠陥検出方法の概略を示す図である。
【0065】
本実施形態による表面皮下欠陥検出方法は、第2実施形態による表面皮下欠陥検出方法とほぼ同様のステップで、被検査体2の側面を全周にわたって検査するものであるが、第2実施形態とは2つの探触子T,T’を配置する側面が異なり、全周検査に要する工程が第2実施形態に比して略半分で済む方法である。
図8に示す如く、まず、表面皮下欠陥検出装置1の2つの探触子T,T’のうち、探触子Tを側面Aに配置し、探触子T’を、探触子Tからの表面波の送出方向においてオーバルと側面Bを隔てた側面Cにそれぞれ当接させる。このように2つの探触子T,T’を配置した後に、探触子Tから表面波を送出し、その後に探触子T’からも表面波を送出する(第5送出ステップ)。こうすることで、第2実施形態と同様の方法を用いて、側面A〜側面Cの3面を同時に検査することができる。
【0066】
この後、探触子Tを側面Cに配置し、探触子T’を、探触子Tからの表面波の送出方向においてオーバルと側面Dを隔てた側面Aにそれぞれ当接させる。このように2つの探触子T,T’を配置した後に、探触子Tから表面波を送出し、その後に探触子T’からも表面波を送出する(第6送出ステップ)。こうすることで、第2実施形態と同様の方法を用いて、側面C〜側面Aの3面を同時に検査することができる。
【0067】
このような図8に示す方法によっても、被検査体2の側面を全周にわたって検査することができ、第1実施形態における効果に加えて、確実に欠陥を検出することができる。なぜならば、オーバルが存在するのは、図1の紙面に向かって上下方向に位置する残りの2つの頂部であり、4つの頂部全てに存在しないからである。つまり、本実施形態であっても第2実施形態であっても、探触子Tと探触子T’との間には、一つのオーバルしか存在しないため、本実施形態は第2実施形態と略同じ検出ロジックで表面欠陥を検出可能である。
【0068】
とはいえ、本実施形態においては、第1及び第2実施形態とは異なり、表面波が被検査体2の3面を伝播しなくてはならないので、表面波送出の出力を適切な大きさに設定する必要があることは言うまでもない。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0069】
1 表面皮下欠陥検出装置
2 被検査体
3,3’センサヘッド
4,4’ センサホルダ
5,5’ホルダ支持体
6 超音波探傷器
7 信号記録処理装置
8,接触媒質供給回収部
9,9’エアブロア
10 エア供給部
11 テスト鋼片
T,T’ 探触子
d,d’ 欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の面を有する被検査体表面に存在する欠陥を超音波を用いて検出する方法であって、
前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体の一つの面から隣接する他の面へ向かって送出する送出ステップと、
前記送出ステップで送出された超音波のうち前記被検査体表面の欠陥で反射した反射超音波を検出する検出ステップと、
前記一つの面から前記隣接する他の面への移行部である角部を透過した超音波を受波する受波ステップと、
前記受波ステップで受波した超音波の強度に基づいて、前記検出ステップで検出した反射超音波が真に前記欠陥で反射したものであるか否かを判定する判定ステップと、を備えることを特徴とする表面皮下欠陥検出方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、前記受波ステップで受波した超音波の強度が所定の閾値以上となったときに、前記検出ステップで検出した反射超音波が真に前記欠陥で反射したものであると判定することを特徴とする請求項1に記載の表面皮下欠陥検出方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、前記受波ステップで受波した超音波の強度が所定の閾値未満となったときに、前記送出ステップで送出される超音波の周波数を変更することを特徴とする請求項1に記載の表面皮下欠陥検出方法。
【請求項4】
前記被検査体が、順に隣接するA〜Dの4面を有すると共に、A面とB面の間の角部及びC面とD面の間の角部が前記超音波の減衰が大きくなるオーバル形状を有する場合に、当該前記被検査体の表面に存在する欠陥を検出するに際しては、
前記送出ステップが、
前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のA面からB面へ送出する第1送出ステップと、
前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のB面からC面へ送出する第2送出ステップと、
前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のC面からD面へ送出する第3送出ステップと、
前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のD面からA面へ送出する第4送出ステップと、を有することを特徴とする請求項1に記載の表面皮下欠陥検出方法。
【請求項5】
前記被検査体が、順に隣接するA〜Dの4面を有すると共に、A面とB面の間の角部及びC面とD面の間の角部が前記超音波の減衰が大きくなるオーバル形状を有する場合に、当該前記被検査体の表面に存在する欠陥を検出するに際しては、
前記送出ステップが、
前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のA面からB面を経てC面へ送出する第5送出ステップと、
前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を、前記被検査体のC面からD面を経てA面へ送出する第6送出ステップと、を有することを特徴とする請求項1に記載の表面皮下欠陥検出方法。
【請求項6】
被検査体の表面直下を伝播する超音波を送出する送出部と、少なくとも前記被検査体表面に存在する欠陥で反射して戻った超音波を受波する受波部とを有する第1の探触子と、
前記被検査体の表面直下を伝播する超音波を送出する送出部と、少なくとも前記被検査体表面に存在する欠陥で反射して戻った超音波を受波する受波部とを有する第2の探触子と、を備え、
第1の探触子は、複数の面を有する前記被検査体の一つの面上に配置され、
第2の探触子は、前記第1の探触子が配置された面から隣接する他の面への移行部である角部を隔てて前記第1の探触子とは異なる面上に配置されていることを特徴とする表面皮下欠陥検出装置。
【請求項7】
前記第2の探触子は、送出する超音波の送出方向を、前記第1の探触子から送出された超音波の伝播方向の逆方向に向けて配置されていることを特徴とする請求項6に記載の表面皮下欠陥装置。
【請求項8】
前記第1の探触子及び/又は前記第2の探触子の送出部は、周波数の異なる超音波を送出可能であることを特徴とする請求項7に記載の表面皮下欠陥検出装置。
【請求項9】
前記第1の探触子及び/又は前記第2の探触子の送出部は、前記周波数の異なる超音波を全て含む広帯域超音波を送出可能であることを特徴とする請求項8に記載の表面皮下欠陥検出装置。
【請求項10】
前記第1の探触子及び/又は前記第2の探触子の受波部で受波された前記広帯域超音波に含まれる前記周波数の異なる超音波のそれぞれを選択的に透過する又は選択的に遮断するフィルタ部を備えることを特徴とする請求項9に記載の表面皮下欠陥検出装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図2】
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【図7】
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