説明

表面被覆多孔質酸化物粒子及び多孔質酸化物粒子の表面被覆方法

【課題】分散剤や樹脂等のバインダー成分がオープン孔内へ侵入するのを防止することができ、低屈折率性、低誘電性等の多孔質酸化物粒子の特性を維持することができる表面被覆多孔質酸化物粒子及び多孔質酸化物粒子の表面被覆方法を提供する。
【解決手段】本発明の表面被覆多孔質酸化物粒子は、酸化ケイ素等からなる多孔質酸化物粒子1の外周表面2に反応点5を形成し、この反応点5に有機高分子からなる被覆層6を結合して固定し、この被覆層6によりオープン孔3の開口端を封止するとともに、このオープン孔3内を親水性とし、この被覆層6の厚みを0.1nm以上かつ30nm以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面被覆多孔質酸化物粒子及び多孔質酸化物粒子の表面被覆方法に関し、更に詳しくは、低屈折率材料または低誘電体材料として好適に用いられ、オープン孔を有する多孔質酸化物粒子を樹脂等のバインダー成分中に分散させた場合においても、この多孔質酸化物粒子に形成されたオープン孔内へ樹脂等のバインダー成分が侵入することを防止し、この多孔質酸化物粒子の特性を維持することが可能な表面被覆多孔質酸化物粒子及び多孔質酸化物粒子の表面被覆方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な多孔質酸化物粒子が知られているが、特に、空孔が表面にて開口されたオープン孔を有する多孔質酸化物粒子は、そのままの状態で低屈折率材料または低誘電体材料として用いられることもあり、あるいは、分散性を確保するために分散剤等を使用して表面処理した後、有機溶媒あるいは樹脂等のバインダー成分中に分散させた状態で用いられることもある。
例えば、粒径が10〜500nmの粒子の表面に1〜10nm程度の微細なオープン孔を有する多孔質酸化物微粒子は、粒子内に多くの空孔を有していることから、以前から低屈折率材料、低誘電体材料等として使用されている。
【0003】
これらの材料としては、平均粒子径が5nm〜300nmであり、かつ平均孔径が0.01nm〜100nmの空気を含有する孔を有する微粒子と、熱硬化性樹脂及びシリケート化合物を含有するバインダー成分とを含むナノポーラス構造を有する低屈折率組成物(特許文献1)、粒子径が5nm〜300nmであり、かつ平均孔径が0.01nm〜100nmの空気を含有する孔を有し、屈折率が1.20〜1.45である中空シリカ微粒子あるいは多孔質シリカ微粒子と、塗布樹脂組成分として水系有機溶剤を50%以上含む有機溶剤及びバインダー樹脂と、を含む低屈折率層(特許文献2)、エチレン性不飽和基含有フッ素重合体と、有機ケイ素化合物の加水分解物とからなり、平均粒径が5〜50nmである多孔質シリカ粒子を含む樹脂硬化体からなる低屈折率層(特許文献3)等が提案されている。
【0004】
また、粒子とバインダーの結合を確保する観点から、粒子表面とバインダーとの結合力を大きくする目的で、平均粒子径が5〜300nmであり内部に溶媒や気体が充填された空孔を有する空洞粒子、あるいは多孔質粒子の表面に被覆層が設けられた複合粒子と、非イオン系界面活性剤と、バインダー成分とを含有する低屈折率層を透明フィルム上に設けた反射防止フィルム(特許文献4)等も提案されている。
【特許文献1】特開2004−272197号公報
【特許文献2】特開2005−283611号公報
【特許文献3】特開2006−209050号公報
【特許文献4】特開2005−157037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のオープン孔を有する多孔質酸化物粒子は、粒子そのものの比表面積が非常に大きいために表面エネルギーが大きく、したがって、この多孔質酸化物粒子を分散媒中に分散した際に、この分散媒に含まれる分散剤や樹脂等のバインダー成分が粒子表面への付着のみならずオープン孔内にも侵入して該オープン孔を埋めてしまい、その結果、十分な低屈折率性、低誘電性を保つことが技術的に困難であるという問題点があった。
【0006】
そこで、この問題点を解決するために、樹脂等のバインダー成分の組成、構造、分子量等を調整して、樹脂等のバインダー成分がオープン孔内に侵入しないようにすることも考えられており、例えば、多孔質シリカの表面に形成された空孔の開口端を数平均分子量が2000以上の高分子ケイ素化合物で覆った構造のものが提案されている(特開2006−308898号公報)が、高分子ケイ素化合物等の合成が煩雑で、汎用性に劣るという問題点があった。
【0007】
一方、本発明者等は、樹脂等のバインダー成分がオープン孔内に侵入しないようにするために、酸化物粒子の少なくとも表面の近傍に多数の空孔を形成し、これらの空孔を前記表面に開口端を有するオープン孔とし、このオープン孔内にキャッピング剤を有するとともに、少なくとも開口端を有機高分子からなる被覆層にて封止した表面被覆多孔質酸化物粒子を提案した(特願2007−271202号)。
しかしながら、この表面被覆多孔質酸化物粒子では、オープン孔内にキャッピング剤を有することから、このオープン孔内を親水性とすることが難しく、また、何段階もの工程を経て製造されるものであるから、工程が複雑で、製造コストの低減が難しい等の課題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、オープン孔を有する多孔質酸化物粒子を分散媒中に分散した場合においても、分散媒に含まれる分散剤や樹脂等のバインダー成分がオープン孔内へ侵入するのを防止することができ、したがって、低屈折率性、低誘電性等の多孔質酸化物粒子の特性を維持することができる表面被覆多孔質酸化物粒子、及び、従来と比べて少ない工程数で容易に表面被覆を行うことができる多孔質酸化物粒子の表面被覆方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、多孔質酸化物粒子の特性向上について鋭意検討を重ねた結果、多孔質酸化物粒子の表面近傍に形成されたオープン孔の開口端を有機高分子からなる被覆層にて封止し、さらに、このオープン孔内を親水性とすれば、この多孔質酸化物粒子を分散媒中に分散した場合においても、分散媒に含まれる分散剤や樹脂等のバインダー成分がオープン孔内へ侵入する虞が無く、しかも低屈折率性、低誘電性等の多孔質酸化物粒子の特性を維持することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の表面被覆多孔質酸化物粒子は、少なくとも表面の近傍に多数の空孔が形成され、これらの空孔が前記表面に開口端を有するオープン孔とされた多孔質酸化物粒子の表面を被覆してなる表面被覆多孔質酸化物粒子であって、前記開口端が有機高分子からなる被覆層にて封止されているとともに、前記オープン孔内が親水性とされていることを特徴とする。
【0011】
この表面被覆多孔質酸化物粒子では、前記多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、前記被覆層が結合することにより固定されていることが好ましい。
前記被覆層の厚みは0.1nm以上かつ30nm以下であることが好ましい。
前記多孔質酸化物粒子の平均粒子径は0.01μm以上かつ10μm以下であり、前記開口端の直径は0.1nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。
前記多孔質酸化物粒子は、酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンの群から選択される1種または2種以上を主成分とすることが好ましい。
前記オープン孔内には親水性を有する揮発性溶媒が含まれていることが好ましい。
前記揮発性溶媒は水であることが好ましい。
【0012】
本発明の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法は、少なくとも表面の近傍に多数の空孔が形成され、これらの空孔が前記表面に開口端を有するオープン孔とされた多孔質酸化物粒子の表面を被覆する方法であって、前記オープン孔内に親水性を有する揮発性溶媒を吸着させる第1の工程と、前記多孔質酸化物粒子の外周表面に反応点を形成する第2の工程と、前記多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、有機高分子からなる被覆層を結合し固定して、この被覆層にて前記開口端を封止するとともに、前記オープン孔内の前記揮発性溶媒を除去する第3の工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
この多孔質酸化物粒子の表面被覆方法では、前記第2及び第3の工程を、前記揮発性溶媒と相溶しない溶媒中にて行うことが好ましい。
【0014】
本発明の多孔質酸化物粒子の他の表面被覆方法は、少なくとも表面の近傍に多数の空孔が形成され、これらの空孔が前記表面に開口端を有するオープン孔とされた多孔質酸化物粒子の表面を被覆する方法であって、前記オープン孔内に親水性を有する揮発性溶媒を吸着させる第1の工程と、前記多孔質酸化物粒子の外周表面に反応点を形成する第2の工程と、前記多孔質酸化物粒子を乾燥させて前記オープン孔内の前記揮発性溶媒を除去する第3の工程と、前記多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、有機高分子からなる被覆層を結合し固定して、この被覆層にて前記開口端を封止する第4の工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
この多孔質酸化物粒子の表面被覆方法では、前記第2及び第4の工程を、前記揮発性溶媒と相溶しない溶媒中にて行うことが好ましい。
【0016】
これらの多孔質酸化物粒子の表面被覆方法では、前記有機高分子は、前記揮発性溶媒に対して不溶であることが好ましい。
前記被覆層の厚みは0.1nm以上かつ30nm以下であることが好ましい。
前記多孔質酸化物粒子の平均粒子径は0.01μm以上かつ10μm以下であり、前記開口端の直径は0.1nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。
前記多孔質酸化物粒子は、酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンの群から選択される1種または2種以上を主成分とすることが好ましい。
前記揮発性溶媒は水であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の表面被覆多孔質酸化物粒子によれば、少なくとも表面の近傍に多数の空孔が形成され、これらの空孔が前記表面に開口端を有するオープン孔とされた多孔質酸化物粒子の開口端を、有機高分子からなる被覆層にて封止するとともに、このオープン孔内を親水性としたので、分散剤や樹脂等のバインダー成分がオープン孔内へ侵入するのを防止することができる。したがって、低屈折率性、低誘電性等の多孔質酸化物粒子としての特性を維持することができる。
【0018】
本発明の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法によれば、オープン孔内に親水性を有する揮発性溶媒を吸着させる第1の工程と、多孔質酸化物粒子の外周表面に反応点を形成する第2の工程と、前記多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、有機高分子からなる被覆層を結合し固定して、この被覆層にて前記開口端を封止するとともに、前記オープン孔内の前記揮発性溶媒を除去する第3の工程と、を有するので、分散剤や樹脂等のバインダー成分がオープン孔内へ侵入する虞がなく、低屈折率性、低誘電性等の多孔質酸化物粒子としての特性を維持することができる表面被覆多孔質酸化物粒子を、従来より少ない工程数で、容易に得ることができる。
また、工程数を削減することが可能であるから、製造工程の短縮及び製造コストの低減を図ることができる。
【0019】
本発明の多孔質酸化物粒子の他の表面被覆方法によれば、オープン孔内に親水性を有する揮発性溶媒を吸着させる第1の工程と、多孔質酸化物粒子の外周表面に反応点を形成する第2の工程と、多孔質酸化物粒子を乾燥させてオープン孔内の揮発性溶媒を除去する第3の工程と、多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、有機高分子からなる被覆層を結合し固定して、この被覆層にて開口端を封止する第4の工程と、を有するので、分散剤や樹脂等のバインダー成分がオープン孔内へ侵入する虞がなく、低屈折率性、低誘電性等の多孔質酸化物粒子としての特性を維持することができる表面被覆多孔質酸化物粒子を、従来より少ない工程数で、容易に得ることができる。
また、工程数を削減することが可能であるから、製造工程の短縮及び製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の表面被覆多孔質酸化物粒子及び多孔質酸化物粒子の表面被覆方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0021】
[第1の実施形態]
本実施形態の表面被覆多孔質酸化物粒子は、少なくとも表面の近傍に多数の空孔が形成され、これらの空孔が前記表面に開口端を有するオープン孔とされた多孔質酸化物粒子の表面を被覆してなる表面被覆多孔質酸化物粒子であり、前記開口端は有機高分子からなる被覆層にて封止され、前記オープン孔内は親水性とされている粒子である。
【0022】
ここで、多孔質酸化物粒子の組成としては、酸化ケイ素、ゼオライト等のケイ酸アルミニウム等の無機酸化物、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の金属酸化物等が挙げられ、これら酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等は、これらのうち1種または2種以上を選択して用いることができる。
なお、オープン孔を表面被覆剤から生成された有機高分子からなる被覆層で覆う点を考慮すると、有機物に対する反応性が低いことが望ましく、また、低屈折率材料、低誘電率材料等として用いる場合には、材料自体が低屈折率、低誘電率であることが望ましいことから、酸化ケイ素を主成分とすることが好ましい。
【0023】
この多孔質酸化物粒子の平均粒子径は、0.01μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは0.03μm以上かつ3μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上かつ1μm以下である。
ここで、多孔質酸化物粒子の平均粒子径を上記の範囲とした理由は、上記の範囲が、多孔質酸化物粒子の低屈折率、低誘電率等の特性を良好にかつ長期間に亘って維持することができる範囲であるからであり、平均粒子径が0.01μm未満であると、多孔質酸化物粒子の特性が低下するので、好ましくなく、一方、10μmを超えると、多孔質酸化物粒子を添加した膜やフィルムの特性が低下するので、好ましくない。
【0024】
この多孔質酸化物粒子のオープン孔の開口端の直径については、後述する多孔質酸化物粒子の表面被覆方法のうち、オープン孔内に揮発性溶媒を吸着させた第1の工程の後に行う多孔質酸化物粒子の外周表面に反応点を形成する第2の工程時に、オープン孔が吸着した揮発性溶媒により塞がれていること、及び、次工程である第3の工程のオープン孔の開口端を有機高分子からなる被覆層により封止すること、を考慮すると、ある程度小さいことが必要である。一方、オープン孔内に揮発性溶媒を吸着させるためには、このオープン孔の開口端は、揮発性溶媒の分子の数倍程度の直径が必要である。以上の点から、開孔端の直径は0.1nm以上かつ50nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上かつ10nm以下、さらに好ましくは1nm以上かつ5nm以下である。
【0025】
この多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部には、上記の開口端を封止する有機高分子からなる被覆層が結合することにより固定されている。
ここで、「外周表面」とは、この多孔質酸化物粒子の外周面部分を構成する表面、すなわち、多孔質酸化物粒子の全表面のうち、オープン孔の内表面を除いた粒子外側の表面部分のことである。
この被覆層の厚みは、0.1nm以上かつ30nm以下が好ましく、より好ましくは0.1nm以上かつ15nm以下、さらに好ましくは0.5nm以上かつ10nm以下である。
【0026】
ここで、被覆層の厚みが0.1nm未満では、多孔質酸化物粒子の外周表面に均一に被覆層を形成することが困難である上に、オープン孔の開口端を封止した際にこの封止部分の被覆強度が十分に得られなくなるからである。
一方、被覆層の屈折率や誘電率は、一般的に多孔質酸化物粒子の屈折率や誘電率より高いため、被覆層の厚みが30nmを超えると、被覆層の影響が大きくなり、低屈折率や低誘電率を十分に得ることができなくなってしまうからである。
また、後述のようにオープン孔開孔端封止後の乾燥工程においては、オープン孔内に残留している溶媒等を被覆層を通して揮発除去する場合に、被覆層を厚くすると、この溶媒等の除去が十分に行なえなくなるからである。
【0027】
この有機高分子としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のモノマーを縮重合してなる有機樹脂が挙げられる。
この表面被覆多孔質酸化物粒子では、オープン孔内が親水性とされているので、このオープン孔内に気相あるいは液相の親水性を有する揮発性溶媒が含まれていてもよい。この親水性を有する揮発性溶媒としては、水はもちろんのこと、水と相溶性を有する低沸点の有機溶媒、例えば、エタノール、2−プロパノール等が挙げられる。
【0028】
「多孔質酸化物粒子の表面被覆方法」
本実施形態の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法は、少なくとも表面の近傍に多数の空孔が形成され、これらの空孔が前記表面に開口端を有するオープン孔とされた多孔質酸化物粒子の表面を被覆する方法であって、前記オープン孔内に親水性を有する揮発性溶媒を吸着させる第1の工程と、前記多孔質酸化物粒子の外周表面に反応点を形成する第2の工程と、前記多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、有機高分子からなる被覆層を結合し固定して、この被覆層にて前記開口端を封止するとともに、前記オープン孔内の前記揮発性溶媒を除去する第3の工程と、を有する。
【0029】
次に、この多孔質酸化物粒子の表面被覆方法について、図1に基づき各工程毎に詳細に説明する。
「第1の工程」
この第1の工程は、多孔質酸化物粒子1の外周表面2及びオープン孔3内に気相または液相の親水性を有する揮発性溶媒4を吸着させ、このオープン孔内を、気相または液相の親水性を有する揮発性溶媒4により満たすことにより、このオープン孔3を塞ぐ工程である(図1(a)〜(b))。
【0030】
揮発性溶媒4としては水が好適である。この多孔質酸化物粒子1に水を吸着させるには、多孔質酸化物粒子1と水蒸気源とを密閉容器に入れ、この密封容器内を水蒸気源から発生する水蒸気で飽和に近い状態とさせ、多孔質酸化物粒子1に水を吸着させる方法が採られる。
多孔質酸化物粒子1が酸化ケイ素の場合、相対湿度が約70〜80%でオープン孔内部まで吸着させることができるので、水蒸気源としては、飽和蒸気圧が高いNaCl、NaNO、NHCl、KBr、KCl等の飽和水溶液が望ましい。
【0031】
「第2の工程」
この第2の工程は、オープン孔3が揮発性溶媒4により塞がれた多孔質酸化物粒子1の外周表面2に反応点5を形成する工程である(図1(c))。
この反応点を形成するための反応点形成剤としては、この反応点5に結合する被覆層の材質が、例えばメタクリル酸メチルやアクリル酸メチル等のアクリルモノマーの場合には、アクリル基やビニル基を有するシランカップリング剤、表面カップリング剤等を用いることができる。
【0032】
この反応点形成剤を溶解する溶媒としては、多孔質酸化物粒子1に吸着させた揮発性溶媒4、例えば水とは相溶しない非水系溶媒であることが望ましい。
この反応点を形成する方法としては、ヘキサンや二酸化炭素を媒質にしたオートクレーブを用いた超臨界法、あるいは、トルエン、キシレン等の炭化水素、またはメチルイソブチルケトン等のケトン類を媒質にした還流法が挙げられる。
【0033】
この工程では、多孔質酸化物粒子1の外周表面に吸着している揮発性溶媒4、例えば水は、この工程で使用する非水系溶媒に直接接するので、この非水系溶媒中に含まれる反応点形成剤、例えばカップリング剤が加水分解により多孔質酸化物粒子1の外周表面に結合する反応、すなわち反応点5の形成の仲立ちを行い、消費される。一方、オープン孔3内は吸着した揮発性溶媒4、例えば水により満たされており、しかも、この工程で用いられる溶媒が非水系溶媒であるために、この非水系溶媒はオープン孔3内に入ることができず、したがって、オープン孔3内に吸着している揮発性溶媒4、例えば水は消費されず、このオープン孔3内に反応点が形成されることはない。
【0034】
よって、本工程により多孔質酸化物粒子1の外周表面2に、選択的に反応点5が形成されることとなる。
なお、本工程にて、反応点形成剤を溶解する溶媒として水系溶媒を用いた場合には、オープン孔3内にも水系溶媒が流入することとなり、よって、オープン孔3の内表面にも反応点が形成されてしまうことになるので、好ましくない。
【0035】
「第3の工程」
この第3の工程は、多孔質酸化物粒子1の外周表面2に生成した反応点5に、有機高分子からなる被覆層6を結合して固定し、この被覆層6にてオープン孔3の開口端を封止するとともに、オープン孔3内に吸着している揮発性溶媒4を除去する工程である(図1(d))。
【0036】
この有機高分子からなる被覆層6を形成するための表面被覆剤としては、上記の有機高分子の原料となるモノマーまたはオリゴマーが好ましく、このモノマーやオリゴマーは、単独または複数種類混合して使用することができる。
この表面被覆剤については、反応点5の性状、すなわち反応点形成剤により選定する必要があるが、例えば、この反応点形成剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアクリル基および/またはビニル基を有するシランカップリング剤を用いた場合、1官能以上のアクリルモノマーやメタクリルモノマー、ビニルモノマーを単独または複数種類混合して使用することができる。
【0037】
これらのモノマーの例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0038】
この工程では、上記の表面被覆剤と、外周表面2に反応点5が形成された多孔質酸化物粒子1を、溶媒に加え、得られた溶液を攪拌しながら、窒素等の不活性ガスを通気させ、この溶液内の酸素を十分に除去した後、ラジカル発生剤等の重合(または反応)開始剤を添加し、多孔質酸化物粒子1の外周表面2に吸着した表面被覆剤のモノマーまたはオリゴマーを重合(または反応)させ、有機高分子からなる被覆層6を形成する。
また、この溶液の攪拌及び不活性ガスの通気を行うことにより、オープン孔3内に吸着している揮発性溶媒4、例えば水を除去するようにしてもよい。
【0039】
このとき、多孔質酸化物粒子1の外周表面2に選択的に被覆層6を形成させたほうがより好ましく、モノマーの溶解性パラメータに着目して溶媒を選択使用することも効果的である。なぜならば、使用する表面被覆剤が、溶媒よりも反応点5を形成した多孔質酸化物粒子1に馴染みがよければ、添加した表面被覆剤は多孔質酸化物粒子1の外周表面2に多く集まり、効率的に被覆層6を形成することが可能になるからである。
【0040】
また、使用する溶媒は、重合(または反応)開始剤によって化学変化を生じさせないものを選択する必要がある。例えば、重合(または反応)開始剤として、上記のようなラジカル発生剤等を使用した際に用いられる溶媒としては、炭化水素系の溶媒の他、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等が挙げられ、これらの溶媒は、1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
この重合(または反応)開始剤としては、所定の温度でラジカルを発生する熱ラジカル発生剤、紫外線照射等でラジカルを発生する光ラジカル発生剤等が用いられる。熱ラジカル発生剤としては、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチルニトリル等が、また、光ラジカル発生剤としては、ベンゾフェノン等が好適に用いられる。
【0041】
また、上記の反応点形成剤として、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤を用いた場合には、カルボン酸を有する高分子ポリマーを付加させてアミド化させることにより、被覆層6を形成することができる。
その他、リン酸緩衝溶液中にてグルタルアルデヒドを付加させ、次いで、アミノ基を有する高分子あるいはヒスチジン等のアミノ酸を付加させることによっても、被覆層6を形成することができる。この場合、使用される溶媒については特に規定はしないが、一般的には水が使用される。
【0042】
この被覆層6を形成する際に、表面被覆剤も反応点5と重合(または反応)開始剤により結合するので、この表面被覆剤は、重合により被覆層6を形成すると同時に、多孔質酸化物粒子1の外周表面2に固定される。これにより、被覆層6は多孔質酸化物粒子1の外周表面2のみに形成されることとなる。
また、オープン孔3の開口端については、この開口端の周縁部からその中心に向かって被覆層6が形成されていくので、最終的には、開口端は被覆層6にて封止されることとなる。
【0043】
なお、このオープン孔3の内表面には反応点5が形成されていないので、このオープン孔3の内表面に被覆層が形成されることはない。
以上により、オープン孔3は内部の空隙を保持しつつ、その開口端が被覆層6にて封止されることとなるので、多孔質酸化物粒子1に被覆層6を形成することができる。
【0044】
最後に、被覆層6が形成された多孔質酸化物粒子1を溶媒と分離し、洗浄、乾燥させて、表面被覆多孔質酸化物粒子を得る。
ここで、封止されたオープン孔3内には、吸着している揮発性溶媒4、例えば水の他、第3の工程における溶媒が含まれているが、これらは本乾燥工程時に揮発除去される。これは、オープン孔3の開孔端を封止している被覆層6が完全に緻密な膜ではなく、オープン孔内に吸着している揮発性溶媒4や第3の工程における溶媒のような低分子量の物質が膜を通過することが可能だからである。
【0045】
したがって、乾燥条件としては、揮発性溶媒4や第3の工程における溶媒を除去するのに十分な温度及び時間を選定することが望ましく、揮発性溶媒4の種類、第3の工程における溶媒の種類の他、形成された被覆層6の材質や膜厚も考慮して決定する。例えば揮発性溶媒4として水、第3の工程における溶媒としてトルエンを用い、膜厚が1から30nmの場合には、80℃〜150℃にて、1時間〜15時間程度の乾燥を行うことが好ましい。また、減圧や乾燥ガスの導入等の乾燥雰囲気制御を行うことも好ましい。
【0046】
本実施形態の表面被覆多孔質酸化物粒子によれば、多孔質酸化物粒子1の表面近傍に多数の空孔を形成し、これらの空孔を表面に開口端を有するオープン孔3とし、このオープン孔3の開口端を有機高分子からなる被覆層6にて封止するとともに、オープン孔3内を親水性としたので、分散剤、樹脂等のバインダー成分等がオープン孔3内へ侵入するのを防止することができ、低屈折率性、低誘電性等の多孔質酸化物粒子1としての特性を維持することができる。
【0047】
本実施形態の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法によれば、オープン孔3内に親水性を有する揮発性溶媒4を吸着させる第1の工程と、多孔質酸化物粒子1の外周表面2に反応点5を形成する第2の工程と、多孔質酸化物粒子1の外周表面2に有機高分子からなる被覆層6を結合し固定して、この被覆層6にてオープン孔3の開口端を封止するとともに、このオープン孔3内の揮発性溶媒4を除去する第3の工程と、を有するので、本実施形態の表面被覆多孔質酸化物粒子を容易に得ることができる。
【0048】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法は、少なくとも表面の近傍に多数の空孔が形成され、これらの空孔が前記表面に開口端を有するオープン孔とされた多孔質酸化物粒子の表面を被覆する方法であり、オープン孔内に親水性を有する揮発性溶媒を吸着させる第1の工程と、多孔質酸化物粒子の外周表面に反応点を形成する第2の工程と、多孔質酸化物粒子の外周表面及びオープン孔内を乾燥させてオープン孔内の揮発性溶媒を除去する第3の工程と、多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、有機高分子からなる被覆層を結合し固定して、この被覆層にて開口端を封止する第4の工程と、を有する。
【0049】
次に、この多孔質酸化物粒子の表面被覆方法について、図2に基づき各工程毎に詳細に説明する。
なお、この多孔質酸化物粒子の表面被覆方法における第1及び第2の工程は、第1の実施形態の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法における第1及び第2の工程と全く同様であるから、説明を省略する。
【0050】
「第3の工程」
この第3の工程は、多孔質酸化物粒子1の外周表面2及びオープン孔3内を乾燥させてオープン孔3内に吸着している揮発性溶媒4を除去する工程である(図2(d))。
乾燥条件としては、揮発性溶媒4を除去するのに十分な温度及び時間であればよい。
例えば、水の場合、乾燥温度は80℃以上かつ150℃以下、乾燥時間は1時間以上かつ15時間以下である。
これにより、オープン孔3内に吸着している揮発性溶媒4、例えば水が除去される。
【0051】
「第4の工程」
この第4の工程は、多孔質酸化物粒子1の外周表面2の少なくとも一部に、有機高分子からなる被覆層6を結合し固定して、この被覆層6にてオープン孔3の開口端を封止する工程である(図2(e))。
この工程にて用いられる表面被覆剤及び溶媒、及び被覆層6の形成方法については、第1の実施形態の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法における第3の工程と全く同様である。
【0052】
この工程においても、第1の実施形態の第3の工程と同様に、この被覆層6を形成する際に、表面被覆剤も反応点5と重合(または反応)開始剤により結合するので、この表面被覆剤は、重合により被覆層6を形成すると同時に、多孔質酸化物粒子1の外周表面2に固定される。これにより、被覆層6は多孔質酸化物粒子1の外周表面2のみに形成されることとなる。
また、オープン孔3の開口端については、この開口端の周縁部からその中心に向かって被覆層6が形成されていくので、最終的には、開口端は被覆層6にて封止されることとなる。
【0053】
なお、このオープン孔3の内表面には反応点5が形成されていないので、このオープン孔3の内表面に被覆層が形成されることはない。
以上により、オープン孔3は内部の空隙を保持しつつ、その開口端が被覆層6にて封止されることとなるので、多孔質酸化物粒子1に被覆層6を形成することができる。
【0054】
本実施形態においては、第3の工程で揮発性溶媒4を除去しているので、封止されたオープン孔3内に揮発性溶媒4が含まれることはないが、第4の工程で用いられた溶媒が残留している場合がある。この残留溶媒は、第1の実施形態と同様、被覆層6が形成された多孔質酸化物粒子1を溶媒と分離し、洗浄、乾燥することにより,除去することができる。
【0055】
本実施形態の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法においても、第1の実施形態の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法と同様の作用、効果を奏することができる。
しかも、第1の実施形態の表面被覆方法では1つの工程であったものを、多孔質酸化物粒子の外周表面及びオープン孔内を乾燥させてオープン孔内の揮発性溶媒を除去する第3の工程と、多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、有機高分子からなる被覆層を結合し固定して、この被覆層にて開口端を封止する第4の工程との2工程としたので、オープン孔3内の揮発性溶媒4を確実に除去することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0057】
「実施例1」
(1)水の吸着
多孔質酸化物粒子として、ナノポーラスシリカ(オープン孔の細孔径:2〜3nm、平均粒子径:50nm、内部空孔率:50%、住友大阪セメント製)を用い、このナノポーラスシリカ及び飽和食塩水をデシケータ(密封容器)内に5日間静置し、ナノポーラスシリカの細孔内が飽和水蒸気で満たされるまで吸着させた。
【0058】
(2)反応点の形成
トルエン200mLに水を吸着したナノポーラスシリカ10gを加え、トルエンの沸点にて1時間還流を行い、その後、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを2.1g添加し、さらに3時間還流を行った。
その後、室温まで冷却して、分離、洗浄を行い、外周表面に反応点を形成したナノポーラスシリカAを得た。
【0059】
(3)表面被覆
このナノポーラスシリカA0.5gをトルエン200mL中に分散させ、得られた分散液にメタクリル酸メチル0.05mL、エチレングリコールジメタクリレート0.44mLを加え、60℃にて1時間攪拌を行った。
次いで、ドライ窒素を流しながら2,2−アゾビスイソブチロニトリルを0.08g添加し、60℃にて1時間反応させた後、ヘキサン200mLを加え、遠心分離機を用いて分離した。
【0060】
次いで、この分離されたペースト状のものにトルエン10mLを添加し、撹拌した後、遠心分離機にて分離し、上澄みを捨ててペースト状のものを回収するという操作を3回繰り返し行い、その後、乾燥機を用いて150℃にて12時間乾燥を行い、実施例1の表面被覆多孔質酸化物粒子Aを得た。図3に、この表面被覆多孔質酸化物粒子Aの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。
【0061】
(4)評価用薄膜の作製
トルエン3.5gにアクリディック52−101(大日本インキ化学工業社製)1.5gを加えて攪拌し、バインダーを得た。
次いで、バインダー1.28質量部、トルエン3.55質量部となるように、これらを混合し、これに表面被覆多孔質酸化物粒子A0.17質量部を加えて分散させ、塗料Aを得た。
次いで、スピンコートにより塗料Aをアクリル基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、80℃にて20分加熱して硬化させ、薄膜Aを得た。なお、スピンコートは、回転数1000〜2000rpm−30秒で行った。
【0062】
「実施例2」
(1)水の吸着
多孔質酸化物粒子として、ナノポーラスシリカ(オープン孔の細孔径:2〜3nm、平均粒子径:50nm、内部空孔率:50%、住友大阪セメント製)を用い、このナノポーラスシリカ及び飽和食塩水をデシケータ(密封容器)内に5日間静置し、ナノポーラスシリカの細孔内が飽和水蒸気で満たされるまで吸着させた。
【0063】
(2)反応点の形成
トルエン200mLに水を吸着したナノポーラスシリカ10gを加え、トルエンの沸点にて1時間還流を行い、その後、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを2.1g添加し、さらに3時間還流を行った。
その後、室温まで冷却して、分離、洗浄を行い、外周表面に反応点を形成したナノポーラスシリカBを得た。
【0064】
(3)表面被覆
このナノポーラスシリカB0.5gをトルエン200mL中に分散させ、得られた分散液にメタクリル酸メチル0.012mL、エチレングリコールジメタクリレート0.11mLを加え、60℃にて1時間攪拌を行った。
次いで、ドライ窒素を流しながら2,2−アゾビスイソブチロニトリルを0.02g添加し、60℃にて1時間反応させた後、ヘキサン200mLを加え、遠心分離機を用いて分離した。
【0065】
次いで、この分離されたペースト状のものにトルエン10mLを添加し、撹拌した後、遠心分離機にて分離し、上澄みを捨ててペースト状のものを回収するという操作を3回繰り返し行い、その後、乾燥機を用いて150℃にて12時間乾燥を行い、実施例2の表面被覆多孔質酸化物粒子Bを得た。
【0066】
(4)評価用薄膜の作製
トルエン3.5gにアクリディック52−101(大日本インキ化学工業社製)1.5gを加えて攪拌し、バインダーを得た。
次いで、バインダー1.28質量部、トルエン3.55質量部となるように、これらを混合し、これに表面被覆多孔質酸化物粒子B0.17質量部を加えて分散させ、塗料Bを得た。
次いで、スピンコートにより塗料Bをアクリル基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、80℃にて20分加熱して硬化させ、薄膜Bを得た。なお、スピンコートは、回転数1000〜2000rpm−30秒で行った。
【0067】
「実施例3」
(1)水の吸着
多孔質酸化物粒子として、ナノポーラスシリカ(オープン孔の細孔径:2〜3nm、平均粒子径:50nm、内部空孔率:50%、住友大阪セメント製)を用い、このナノポーラスシリカ及び飽和食塩水をデシケータ(密封容器)内に5日間静置し、ナノポーラスシリカの細孔内が飽和水蒸気で満たされるまで吸着させた。
【0068】
(2)反応点の形成
トルエン200mLに水を吸着したナノポーラスシリカ10gを加え、トルエンの沸点にて1時間還流を行い、その後、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを2.1g添加し、さらに3時間還流を行った。
その後、室温まで冷却して、分離、洗浄を行い、外周表面に反応点を形成したナノポーラスシリカCを得た。
【0069】
(3)表面被覆
このナノポーラスシリカC0.5gをトルエン200mL中に分散させ、得られた分散液にメタクリル酸メチル0.005mL、エチレングリコールジメタクリレート0.044mLを加え、60℃にて1時間攪拌を行った。
次いで、ドライ窒素を流しながら2,2−アゾビスイソブチロニトリルを0.008g添加し、60℃にて1時間反応させた後、ヘキサン200mLを加え、遠心分離機を用いて分離した。
【0070】
次いで、この分離されたペースト状のものにトルエン10mLを添加し、撹拌した後、遠心分離機にて分離し、上澄みを捨ててペースト状のものを回収するという操作を3回繰り返し行い、その後、乾燥機を用いて150℃にて12時間乾燥を行い、実施例3の表面被覆多孔質酸化物粒子Cを得た。
【0071】
(4)評価用薄膜の作製
トルエン3.5gにアクリディック52−101(大日本インキ化学工業社製)1.5gを加えて攪拌し、バインダーを得た。
次いで、バインダー1.28質量部、トルエン3.55質量部となるように、これらを混合し、これに表面被覆多孔質酸化物粒子C0.17質量部を加えて分散させ、塗料Cを得た。
次いで、スピンコートにより塗料Cをアクリル基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、80℃にて20分加熱して硬化させ、薄膜Cを得た。なお、スピンコートは、回転数1000〜2000rpm−30秒で行った。
【0072】
「実施例4」
(1)水の吸着
多孔質酸化物粒子として、ナノポーラスシリカ(オープン孔の細孔径:2〜3nm、平均粒子径:400nm、内部空孔率:62%、住友大阪セメント製)を用い、このナノポーラスシリカ及び飽和食塩水をデシケータ(密封容器)内に5日間静置し、ナノポーラスシリカの細孔内が飽和水蒸気で満たされるまで吸着させた。
【0073】
(2)反応点の形成
トルエン200mLに水を吸着したナノポーラスシリカ10gを加え、トルエンの沸点にて1時間還流を行い、その後、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを2.1g添加し、さらに3時間還流を行った。
その後、室温まで冷却して、分離、洗浄を行い、外周表面に反応点を形成したナノポーラスシリカDを得た。
【0074】
(3)表面被覆
このナノポーラスシリカD0.5gをトルエン200mL中に分散させ、得られた分散液にメタクリル酸メチル0.013mL、エチレングリコールジメタクリレート0.15mLを加え、60℃にて1時間攪拌を行った。
次いで、ドライ窒素を流しながら2,2−アゾビスイソブチロニトリルを0.025g添加し、60℃にて1時間反応させた後、ヘキサン200mLを加え、遠心分離機を用いて分離した。
【0075】
次いで、この分離されたペースト状のものにトルエン10mLを添加し、撹拌した後、遠心分離機にて分離し、上澄みを捨ててペースト状のものを回収するという操作を3回繰り返し行い、その後、乾燥機を用いて150℃にて12時間乾燥を行い、実施例4の表面被覆多孔質酸化物粒子Dを得た。
【0076】
(4)評価用薄膜の作製
トルエン3.5gにアクリディック52−101(大日本インキ化学工業社製)1.5gを加えて攪拌し、バインダーを得た。
次いで、バインダー1.28質量部、トルエン3.55質量部となるように、これらを混合し、これに表面被覆多孔質酸化物粒子D0.17質量部を加えて分散させ、塗料Dを得た。
次いで、スピンコートにより塗料Dをアクリル基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、80℃にて20分加熱して硬化させ、薄膜Dを得た。なお、スピンコートは、回転数1000〜2000rpm−30秒で行った。
【0077】
「実施例5」
(1)水の吸着
多孔質酸化物粒子として、ナノポーラスシリカ(オープン孔の細孔径:2〜3nm、平均粒子径:9500nm、内部空孔率:69%、住友大阪セメント製)を用い、このナノポーラスシリカ及び飽和食塩水をデシケータ(密封容器)内に5日間静置し、ナノポーラスシリカの細孔内が飽和水蒸気で満たされるまで吸着させた。
【0078】
(2)反応点の形成
トルエン200mLに水を吸着したナノポーラスシリカ10gを加え、トルエンの沸点にて1時間還流を行い、その後、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを2.1g添加し、さらに3時間還流を行った。
その後、室温まで冷却して、分離、洗浄を行い、外周表面に反応点を形成したナノポーラスシリカEを得た。
【0079】
(3)表面被覆
このナノポーラスシリカE0.5gをトルエン200mL中に分散させ、得られた分散液にメタクリル酸メチル0.005mL、エチレングリコールジメタクリレート0.044mLを加え、60℃にて1時間攪拌を行った。
次いで、ドライ窒素を流しながら2,2−アゾビスイソブチロニトリルを0.008g添加し、60℃にて1時間反応させた後、ヘキサン200mLを加え、遠心分離機を用いて分離した。
【0080】
次いで、この分離されたペースト状のものにトルエン10mLを添加し、撹拌した後、遠心分離機にて分離し、上澄みを捨ててペースト状のものを回収するという操作を3回繰り返し行い、その後、乾燥機を用いて150℃にて12時間乾燥を行い、実施例5の表面被覆多孔質酸化物粒子Eを得た。
【0081】
(4)評価用薄膜の作製
トルエン3.5gにアクリディック52−101(大日本インキ化学工業社製)1.5gを加えて攪拌し、バインダーを得た。
次いで、バインダー1.28質量部、トルエン3.55質量部となるように、これらを混合し、これに表面被覆多孔質酸化物粒子E0.17質量部を加えて分散させ、塗料Eを得た。
次いで、スピンコートにより塗料Eをアクリル基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、80℃にて20分加熱して硬化させ、薄膜Eを得た。なお、スピンコートは、回転数1000〜2000rpm−30秒で行った。
【0082】
「実施例6」
(1)水の吸着
多孔質酸化物粒子として、ナノポーラスシリカ(オープン孔の細孔径:2〜3nm、平均粒子径:50nm、内部空孔率:50%、住友大阪セメント製)を用い、このナノポーラスシリカ及び飽和食塩水をデシケータ(密封容器)内に5日間静置し、ナノポーラスシリカの細孔内が飽和水蒸気で満たされるまで吸着させた。
【0083】
(2)反応点の形成
トルエン200mLに水を吸着したナノポーラスシリカ10gを加え、トルエンの沸点にて1時間還流を行い、その後、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを2.1g添加し、さらに3時間還流を行った。
その後、室温まで冷却して、分離、洗浄を行い、外周表面に反応点を形成したナノポーラスシリカFを得た。
【0084】
(3)乾燥
このナノポーラスシリカFを、乾燥機を用いて120℃にて5時間加熱し、乾燥させた。
【0085】
(4)表面被覆
この乾燥ナノポーラスシリカF0.5gをトルエン200mL中に分散させ、得られた分散液にメタクリル酸メチル0.05mL、エチレングリコールジメタクリレート0.44mLを加え、60℃にて1時間攪拌を行った。
次いで、ドライ窒素を流しながら2,2−アゾビスイソブチロニトリルを0.08g添加し、60℃にて1時間反応させた後、ヘキサン200mLを加え、遠心分離機を用いて分離した。
【0086】
次いで、この分離されたペースト状のものにトルエン10mLを添加し、撹拌した後、遠心分離機にて分離し、上澄みを捨ててペースト状のものを回収するという操作を3回繰り返し行い、その後、乾燥機を用いて150℃にて12時間乾燥を行い、実施例6の表面被覆多孔質酸化物粒子Fを得た。
【0087】
(5)評価用薄膜の作製
トルエン3.5gにアクリディック52−101(大日本インキ化学工業社製)1.5gを加えて攪拌し、バインダーを得た。
次いで、バインダー1.28質量部、トルエン3.55質量部となるように、これらを混合し、これに表面被覆多孔質酸化物粒子F0.17質量部を加えて分散させ、塗料Fを得た。
次いで、スピンコートにより塗料Fをアクリル基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、80℃にて20分加熱して硬化させ、薄膜Fを得た。なお、スピンコートは、回転数1000〜2000rpm−30秒で行った。
【0088】
「比較例1」
(1)オープン孔の内面の不活性化
多孔質酸化物粒子として、ナノポーラスシリカ(オープン孔の細孔径:2〜3nm、平均粒子径:50nm、内部空孔率:50%、住友大阪セメント製)を用い、このナノポーラスシリカ10gを未処理の状態でトルエン200mLに加え、さらに、1,1,1,3,3,3ヘキサメチルジシラザン20gを添加し、このトルエン溶液にドライ窒素を吹き込みながらトルエンの沸点にて24時間還流を行った。
その後、室温まで冷却して、分離、洗浄を行い、粒子表面をトリメチルシリル化したナノポーラスシリカを得た。
【0089】
次いで、このナノポーラスシリカ3gをトルエン100mLに加え、超音波ホモジナイザー(ソニファイヤー450:BRANSON社製)にて60分間処理して粒子同士を衝突させることにより、外周表面のみからトリメチルシリル基を除去したナノポーラスシリカを含む処理液を得た。
【0090】
(2)反応点の形成
上記の処理液にトルエン500mLを加え、さらに3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを1.0g添加し、得られた溶液に再度ドライ窒素を吹き込みながらトルエンの沸点にて24時間環流を行った。
その後、室温まで冷却して、分離、洗浄を行い、表面に反応点を形成した表面処理粒子Gを得た。
【0091】
(3)表面被覆
表面処理粒子G0.5gをトルエン200mLに分散させ、得られた分散液にメタクリル酸メチル0.05mL、エチレングリコールジメタクリレート0.44mLを加え、60℃にて1時間攪拌を行った。
次いで、ドライ窒素を流しながら2,2−アゾビスイソブチロニトリルを0.08g添加し、60℃にて1時間反応させた後、ヘキサン200mLを加え、遠心分離機を用いて分離した。
【0092】
次いで、この分離されたペースト状のものにトルエン10mLを添加し、撹拌した後、遠心分離機にて分離し、上澄みを捨ててペースト状のものを回収するという操作を3回繰り返し行い、その後、乾燥機を用いて150℃にて12時間乾燥を行い、比較例1の表面被覆多孔質酸化物粒子Gを得た。
【0093】
(4)評価用薄膜の作製
トルエン3.5gにアクリディック52−101(大日本インキ化学工業社製)1.5gを加えて攪拌し、バインダーを得た。
次いで、バインダー1.28質量部、トルエン3.55質量部となるように、これらを混合し、これに表面被覆多孔質酸化物粒子G0.17質量部を加えて分散させ、塗料Gを得た。
次いで、スピンコートにより塗料Gをアクリル基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、80℃にて20分加熱して硬化させ、薄膜Gを得た。なお、スピンコートは、回転数1000〜2000rpm−30秒で行った。
【0094】
「比較例2」
(1)反応点の形成
多孔質酸化物粒子として、ナノポーラスシリカ(オープン孔の細孔径:2〜3nm、平均粒子径:50nm、内部空孔率:50%、住友大阪セメント製)を用い、このナノポーラスシリカ10gを未処理の状態でトルエン200mLに加え、トルエンの沸点にて1時間還流を行い、その後、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを2.1g添加し、さらに3時間還流を行った。
その後、室温まで冷却して、分離、洗浄を行い、表面に反応点を形成した表面処理粒子Hを得た。
【0095】
(2)表面被覆
表面処理粒子H0.5gをトルエン200mLに分散させ、得られた分散液にメタクリル酸メチル0.05mL、エチレングリコールジメタクリレート0.44mLを加え、60℃にて1時間攪拌を行った。
次いで、ドライ窒素を流しながら2,2−アゾビスイソブチロニトリルを0.08g添加し、60℃にて1時間反応させた後、ヘキサン200mLを加え、遠心分離機を用いて分離した。
【0096】
次いで、この分離されたペースト状のものにトルエン10mLを添加し、撹拌した後、遠心分離機にて分離し、上澄みを捨ててペースト状のものを回収するという操作を3回繰り返し行い、その後、乾燥機を用いて150℃にて12時間乾燥を行い、比較例2の表面被覆多孔質酸化物粒子Hを得た。
【0097】
(3)評価用薄膜の作製
トルエン3.5gにアクリディック52−101(大日本インキ化学工業社製)1.5gを加えて攪拌し、バインダーを得た。
次いで、バインダー1.28質量部、トルエン3.55質量部となるように、これらを混合し、これに表面被覆多孔質酸化物粒子H0.17質量部を加えて分散させ、塗料Hを得た。
次いで、スピンコートにより塗料Hをアクリル基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、80℃にて20分加熱して硬化させ、薄膜Hを得た。なお、スピンコートは、回転数1000〜2000rpm−30秒で行った。
【0098】
「比較例3」
(1)反応点の形成
多孔質酸化物粒子として、ナノポーラスシリカ(オープン孔の細孔径:2〜3nm、平均粒子径:50nm、内部空孔率:50%、住友大阪セメント製)を用い、このナノポーラスシリカ10gを未処理の状態でトルエン200mLに加え、トルエンの沸点にて1時間還流を行い、その後、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを2.1g添加し、さらに3時間還流を行った。
その後、室温まで冷却して、分離、洗浄を行い、表面に反応点を形成した表面処理粒子Iを得た。
【0099】
(2)評価用薄膜の作製
トルエン3.5gにアクリディック52−101(大日本インキ化学工業社製)1.5gを加えて攪拌し、バインダーを得た。
次いで、バインダー1.28質量部、トルエン3.55質量部となるように、これらを混合し、これに表面処理粒子I0.17質量部を加えて分散させ、塗料Iを得た。
次いで、スピンコートにより塗料Iをアクリル基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、80℃にて20分加熱して硬化させ、薄膜Iを得た。なお、スピンコートは、回転数1000〜2000rpm−30秒で行った。
【0100】
「評価」
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた表面被覆多孔質酸化物粒子A〜H及び表面処理粒子I、及び薄膜A〜I各々の評価を行った。なお、比較例4は、上記で用いたアクリル基板のみの評価である。
評価項目及び評価方法は以下のとおりである。
(1)被覆層量
熱分析装置Thermo Plus TG8120(リガク社製)により、表面被覆多孔質酸化物粒子A〜H及び表面処理粒子Iを200℃から450℃まで加熱したときの質量減少率から、粒子全体に対する被覆層量(百分率)を算出した。
【0101】
(2)反射率
アクリル基板各々に塗料A〜Iを塗布してアクリル基板の表面に薄膜A〜Iを形成し、これらのアクリル基板の裏面を黒マジックにて黒色化した後、分光光度計UV3150(島津製作所社製)を用いて、薄膜A〜Iの表面における測定光波長500nmから600nmの5°正反射率を測定し、この平均反射率を反射率とした。
(3)空孔保持率
上記により得られた「反射率」から、フレネルの式を用いて薄膜A〜Iの屈折率を算出し、この屈折率と、薄膜A〜I中の樹脂と粒子との体積比とから、粒子の屈折率を算出し、この屈折率から空孔保持率を求めた。
(4)被覆層の膜厚
上記により得られた「被覆層量」及び「空孔保持率」、及び「ナノポーラスシリカの平均粒子径」及び「シリカの比重(2.38)」から被覆層の膜厚を算出した。
これらの結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
以上の結果から、下記のことがわかった。
実施例1〜6と比較例2〜3を比較すると、実施例1〜6の方が明らかに空孔保持率が増大しており、また、水の吸着処理によるポリマー被覆法によりオープン孔の開口端が被覆され、バインダー成分がオープン孔内へ浸入するのを良好に防止していることが確認された。
また、工程についても、比較例1と比べて簡易化されており、かつ工程に要する時間も短縮されている。
【0104】
一方、比較例1は、本願発明者等が既に提案した方法(特願2007−271202号)にて作製した表面被覆多孔質酸化物粒子であり、実施例1〜5とほぼ同等の特性を有しているが、その工程が実施例1〜5のものと比べて複雑であり、かつ工程に要する時間も長いものとなっている。
【0105】
また、実施例1〜2では、被覆層量が増大すると空孔保持率が減少しているが、これは被覆層厚の増大により厚み方向の粒子数が増加したことが原因であり、空孔内へのバインダー成分の侵入は防止されている。
実施例3では、被覆層厚が薄く、空孔保持率も減少している。これは、オープン孔の開口端の被覆が完全ではなく、バインダーがオープン孔内に侵入してしまったことによると考えられる。
【0106】
実施例4〜5では、粒子径が大きくなるほど空孔保持率が高くなっているが、これは、被覆層の体積と比較してナノポーラスシリカ粒子自体の体積が非常に大きく、したがって、被覆層の影響を受け難くなっているためと考えられる。
実施例6は、外周表面に反応点を形成したナノポーラスシリカFを120℃にて5時間加熱し、乾燥させた点以外は、実施例1と同一の条件により被覆層を形成したものであるが、実施例1と同等の被覆層が形成されており、これら実施例1と実施例6とで得られた表面被覆多孔質酸化物粒子には差異が無いことが分かった。
【0107】
また、比較例2では、水の吸着処理を行わずにオープン孔の開口端の被覆を行ったために、オープン孔内にポリマーが侵入してしまい、空孔保持率が減少してしまったためと考えられる。
比較例3では、オープン孔の開口端の被覆を行わなかったために、オープン孔内にバインダー成分が侵入して埋めてしまったものと考えられる。
以上の結果から、多孔質酸化物粒子に水の吸着処理を施すことで、オープン孔内へのバインダー成分の侵入を防止し、空孔を維持することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の表面被覆多孔質酸化物粒子は、多孔質酸化物粒子のオープン孔の開口端を有機高分子からなる被覆層にて封止するとともに、このオープン孔内を親水性としたことにより、分散剤や樹脂等のバインダー成分がオープン孔内へ侵入するのを防止し、低屈折率性、低誘電性等の多孔質酸化物粒子としての特性を維持することができるものであるから、反射防止フィルム、位相差フィルム、拡散フィルム等の光学フィルムをはじめ、低屈折率性や低誘電性等が求められる様々な光学部品に適用可能であり、その工業的効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1の実施形態の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法を示す過程図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法を示す過程図である。
【図3】本発明の実施例1の表面被覆多孔質酸化物粒子を示す走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【符号の説明】
【0110】
1 多孔質酸化物粒子
2 外周表面
3 オープン孔
4 揮発性溶媒
5 反応点
6 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面の近傍に多数の空孔が形成され、これらの空孔が前記表面に開口端を有するオープン孔とされた多孔質酸化物粒子の表面を被覆してなる表面被覆多孔質酸化物粒子であって、
前記開口端が有機高分子からなる被覆層にて封止されているとともに、前記オープン孔内が親水性とされていることを特徴とする表面被覆多孔質酸化物粒子。
【請求項2】
前記多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、前記被覆層が結合することにより固定されていることを特徴とする請求項1記載の表面被覆多孔質酸化物粒子。
【請求項3】
前記被覆層の厚みは0.1nm以上かつ30nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の表面被覆多孔質酸化物粒子。
【請求項4】
前記多孔質酸化物粒子の平均粒子径は0.01μm以上かつ10μm以下であり、前記開口端の直径は0.1nm以上かつ50nm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の表面被覆多孔質酸化物粒子。
【請求項5】
前記多孔質酸化物粒子は、酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンの群から選択される1種または2種以上を主成分とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の表面被覆多孔質酸化物粒子。
【請求項6】
前記オープン孔内には親水性を有する揮発性溶媒が含まれていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の表面被覆多孔質酸化物粒子。
【請求項7】
前記揮発性溶媒は水であることを特徴とする請求項6記載の表面被覆多孔質酸化物粒子。
【請求項8】
少なくとも表面の近傍に多数の空孔が形成され、これらの空孔が前記表面に開口端を有するオープン孔とされた多孔質酸化物粒子の表面を被覆する方法であって、
前記オープン孔内に親水性を有する揮発性溶媒を吸着させる第1の工程と、
前記多孔質酸化物粒子の外周表面に反応点を形成する第2の工程と、
前記多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、有機高分子からなる被覆層を結合し固定して、この被覆層にて前記開口端を封止するとともに、前記オープン孔内の前記揮発性溶媒を除去する第3の工程と、を有することを特徴とする多孔質酸化物粒子の表面被覆方法。
【請求項9】
前記第2及び第3の工程を、前記揮発性溶媒と相溶しない溶媒中にて行うことを特徴とする請求項8記載の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法。
【請求項10】
少なくとも表面の近傍に多数の空孔が形成され、これらの空孔が前記表面に開口端を有するオープン孔とされた多孔質酸化物粒子の表面を被覆する方法であって、
前記オープン孔内に親水性を有する揮発性溶媒を吸着させる第1の工程と、
前記多孔質酸化物粒子の外周表面に反応点を形成する第2の工程と、
前記多孔質酸化物粒子を乾燥させて前記オープン孔内の前記揮発性溶媒を除去する第3の工程と、
前記多孔質酸化物粒子の外周表面の少なくとも一部に、有機高分子からなる被覆層を結合し固定して、この被覆層にて前記開口端を封止する第4の工程と、
を有することを特徴とする多孔質酸化物粒子の表面被覆方法。
【請求項11】
前記第2及び第4の工程を、前記揮発性溶媒と相溶しない溶媒中にて行うことを特徴とする請求項10記載の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法。
【請求項12】
前記有機高分子は、前記揮発性溶媒に対して不溶であることを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項記載の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法。
【請求項13】
前記被覆層の厚みは0.1nm以上かつ30nm以下であることを特徴とする請求項8ないし12のいずれか1項記載の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法。
【請求項14】
前記多孔質酸化物粒子の平均粒子径は0.01μm以上かつ10μm以下であり、前記開口端の直径は0.1nm以上かつ50nm以下であることを特徴とする請求項8ないし13のいずれか1項記載の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法。
【請求項15】
前記多孔質酸化物粒子は、酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンの群から選択される1種または2種以上を主成分とすることを特徴とする請求項8ないし14のいずれか1項記載の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法。
【請求項16】
前記揮発性溶媒は水であることを特徴とする請求項8ないし15のいずれか1項記載の多孔質酸化物粒子の表面被覆方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−18447(P2010−18447A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177967(P2008−177967)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】