説明

袋体伸縮ジャッキとジャッキ

【課題】本発明は、袋体伸縮ジャッキに関し、揚重能力に応じてシリンダー径を大きくすることが出来て、製造コストを安価にするとともに、運搬等が容易であり、軽量で狭い場所においても安全に取り扱えるジャッキを提供することが課題である。
【解決手段】外筒2と、該外筒の内部に充填される砂3と、該外筒の内周壁面に摺接し摺動自在に内装される内筒4と、該内筒の上部開口部を閉蓋するヘッド5と、該ヘッドの下面に配設され前記内筒の上部壁面に内外に貫通して設けられた加圧バルブ6に接続された伸縮自在な袋体7と、で構成されている袋体伸縮ジャッキ1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建物の傾き修正や移動において使用される比較的大型の揚重用ジャッキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、家屋等の建物を持ち上げるジャッキ10として、図6に示すように、シリンダー11にピストン12が摺動自在に内装され、第1液室13および第2液室14に高圧油をそれぞれ給排バルブ15a,15bにより供給若しくは排出することで、ピストンヘッド12aを上下移動させている。そして、このジャッキ10を地盤の悪い場所で使用する場合に、路面の凹凸を吸収させる砂袋を使用して、当該ジャッキ10の水平を保つようにした技術が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−72809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のジャッキでは、砂袋を路面の凹凸を均すためのものであり、ジャッキそのものの機能を果たすものとして砂袋を使用するものは知られていない。また、ジャッキとして、空気を袋に供給して持ち上げるエアージャッキも知られているが、砂袋と空気袋を併用したジャッキは実現していない。また、大型のジャッキを必要とするところでも、そのジャッキの分解や持ち運びが容易でないことが多い。更に、大型ジャッキで重量物を持ち上げてそのまま設置する場合には、当該ジャッキが高価なこともあり、きわめてコストが嵩む事になる。従来のジャッキでは、狭い場所に設置して大きな重量物を持ち上げることができ、持ち運びが容易であり、分解や組立等も簡単で、ジャッキ製造コストも安価である、という条件を満足させるものがなかった。本発明に係る袋体伸縮ジャッキは、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る袋体伸縮ジャッキの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、
外筒と、該外筒の内部に充填される砂と、該外筒の内周壁面に摺接し摺動自在に内装される内筒と、該内筒の上部開口部を閉蓋するヘッドと、該ヘッドの下面に配設され前記内筒の上部壁面に内外に貫通して設けられた加圧バルブに接続された伸縮自在な袋体と、で構成されていることである。
【0005】
前記外筒の壁面の下部において、この壁面の内外に連通する砂抜きボルトが設けられていること、;
外筒の砂は、前記外筒の上端面から縮小された袋体の厚みの分だけ下げた位置まで、充填されていること、;
前記加圧バルブから袋体に充填される充填材が、硬化する液体であることを含むものである。
本発明に係るジャッキの要旨は、外筒と、該外筒の内部に充填される砂と、該外筒の内周壁面に摺接し摺動自在に内装される内筒と、該内筒の上部開口部を閉蓋するヘッドとで構成されていることである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の袋体伸縮ジャッキによれば、外筒および内筒を角型若しくは丸型の鋼管を用意して、鋼製蓋を溶接する事で形成することができる。よって、要請されるジャッキ能力によって適宜に鋼管の大きさを選定することで、揚重能力の大きなジャッキを安価で、且つ軽量にして製造することができる。
【0007】
また、この袋体伸縮ジャッキは、作業現場にても、溶接して組立することができるので、前記外筒および内筒の部品を分解した状態で運搬することができる。家屋の下にジャッキを設置する作業は非常に作業空間が狭く、危険な作業となるが、このジャッキによれば、全体が軽量なのでジャッキの設置作業も容易となり、作業の安全性も確保される。
【0008】
更に、外筒の下部に、充填した砂を外に抜き出すためのボルトが設けられているので、このボルトを外すと、内部の砂が外に排出されて、内筒のヘッド位置が次第に降下する。よって、重量物の借り受け台に使用してこの砂を抜くことで、仮受けした重量物をジャッキダウンさせることができる。同時に、外筒の重量が軽くなるので、ジャッキアップ作業や運搬が非常に容易となる。
【0009】
そして、加圧バルブから袋体に充填される充填材が、硬化する液体であることで、この膨張させた袋体をそのまま硬化させ、ジャッキアップの状態で固化・支持させることも可能となる。更に、本発明のジャッキでは、充填した砂を砂抜きボルトを外して外に排出させることで、重量物をジャッキダウンさせる仮受け台として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る袋体伸縮ジャッキ1は、図1乃至図2に示すように、角型若しくは丸型、図1では角型で鋼製の外筒2と、該外筒2の内部に充填される砂3と、該外筒2の内周壁面に摺接し若しくは若干の隙間を空けて摺動自在に内装される鋼製の内筒4と、該内筒4の上部開口部を閉蓋する鋼製のヘッド5と、該ヘッド5の下面に配設され前記内筒の上部壁面に内外に貫通して設けられた加圧バルブ6に接続された伸縮自在な袋体7と、で構成されている。
【0011】
図3(A),(B),(C)に示すように、前記外筒2の壁面の下部において、この壁面の内外に連通する砂抜きボルト8が設けられている。この図示の例では、ネジ付きのボルト8を、外筒壁面に溶接した板ナット9に裸着するようにしているが、このほか、開閉弁のようなものでもよい。
【0012】
また、前記砂3は、外筒2の上部開口端面の位置から少し下がった位置まで充填される。例えば、前記縮小された袋体7の厚みの分だけ下げた位置まで、充填されている。この外筒2も、底板2aと筒型鋼管2bとを溶接して形成する。よって、ジャッキとして要求される揚重能力に応じた大きさの鋼管を自由に設定すればよい。
【0013】
一方、内筒4は、図4(A),(B)に示すように、前記外筒2に内挿されるように少し小さい外形寸法になっている。外筒の内壁面に摺接するか、若しくは1〜2mmの隙間を有して遊嵌されるものである。そして、当該内筒4の上部に内外に貫通する貫通孔4aが設けられている。
【0014】
この貫通孔4aに、図5(A)に示す加圧バルブ6が内部から外側に挿入され、袋体7が内筒4の内部で上部側に着脱自在に設置される。同図5(B)に示すものは、充填砂3の上に載せる砂袋3aである。砂3は均一な粒径のものが使用され、前記外筒2の内部に充填される。
【0015】
前記内筒4の加圧バルブ6から袋体7に充填される充填材が、通常は、液体若しくは気体である。前記液体の場合には、流動体半流動体が充填されることがあり、硬化する液体や粘性体であることもある。このほか、外筒2および内筒4を鋼製としたが、硬質の合成樹脂でも形成しても良い。
【0016】
以上のような袋体伸縮ジャッキ1の使用方法について説明する。まず、外筒2を工場若しくは現場のサイトで形成する。そして、前記外筒2を所定の場所に立てて設置する。
【0017】
前記外筒2に、砂抜きボルト8を設置する。この外筒2の内部に砂3を、外筒上端面から5cm程度下位置まで、最後に砂袋3aを載せて充填する。
【0018】
内筒4を形成しておいて、その内側に袋体7を設置する。加圧ボルト6を貫通孔4aから外に出す。そして、前記外筒2の内部に、前記内筒4を挿入して、図2に示す状態にする。その際に、外筒2が小径であれば人力で挿入が可能であり、大口径では、トラックジャッキ等で押し込む。
【0019】
前記組立により、袋体伸縮ジャッキ1が完成したところで、ヘッド5を揚重対象の建物の下面に当接させ密着させて、このジャッキ1を設置する。そして、加圧バルブ6から、圧力ポンプ等(図示せず)で気体・液体・ゲル体・硬化剤等のうちから目的にあったものを圧入し、前記袋体7を伸張させて、内筒4およびヘッド5を上昇させる。
【0020】
前記圧力ポンプによる充填物が硬化剤であれば、所定の上昇後に、加圧バルブ6を閉鎖して、固化・固定させるものである。また、作業終了時、ジャッキ1を撤去するには、前記圧力ポンプで加圧バルブ6を介して減圧するか、前記砂抜きボルト8を抜いて砂3を外部に流出させて、ヘッド5を降下させるものである。
【0021】
このほか、他の使用例として、重量物の仮受け台としてこのジャッキ1を、前記袋体7を伸張させた状態にしておいて、家屋の下に仮受け台として設置し、前記外筒2の砂抜きボルト8を抜いて、外筒内部に充填された砂3を外に排出し、内筒4のヘッド5を次第に降下させてジャッキダウンさせることもできる。更に、前記袋体7の無いジャッキの構成(図示せず)にして、コンクリートなどを充填させて内筒4を伸張させた状態にする。そして、家屋の下に仮受け台として前記ジャッキを設置し、その後、砂抜きボルト8を外筒から抜いて前記内筒4をジャッキダウンさせることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る袋体伸縮ジャッキ1の斜視図である。
【図2】同本発明の袋体伸縮ジャッキ1の使用前後の断面図である。
【図3】同袋体伸縮ジャッキ1における外筒2の断面図(A)と、正面図(B)と、一部拡大詳細断面図(C)である。
【図4】同袋体伸縮ジャッキ1における内筒4の断面図(A)と、正面図(B)とである。
【図5】同内筒4における加圧ノズル6と袋体7の正面図(A)と、砂袋3aの正面図(B)とである。
【図6】従来例に係るジャッキ10の縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 袋体伸縮ジャッキ、
2 外筒、 2a 底板、
2b 筒型鋼管、
3 砂、 3a 砂袋、
4 内筒、 4a 貫通孔、
5 ヘッド、
6 加圧バルブ、 7 袋体、
8 砂抜きボルト、 9 板ナット、
10 従来のジャッキ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、該外筒の内部に充填される砂と、該外筒の内周壁面に摺接し摺動自在に内装される内筒と、該内筒の上部開口部を閉蓋するヘッドと、該ヘッドの下面に配設され前記内筒の上部壁面に内外に貫通して設けられた加圧バルブに接続された伸縮自在な袋体と、で構成されていること、
を特徴とする袋体伸縮ジャッキ。
【請求項2】
外筒の壁面の下部において、この壁面の内外に連通する砂抜きボルトが設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の袋体伸縮ジャッキ。
【請求項3】
外筒の砂は、前記外筒の上端面から縮小された袋体の厚みの分だけ下げた位置まで、充填されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の袋体伸縮ジャッキ。
【請求項4】
加圧バルブから袋体に充填される充填材が、硬化する液体であること、
請求項1乃至3のいずれかに記載の袋体伸縮ジャッキ。
【請求項5】
外筒と、該外筒の内部に充填される砂と、該外筒の内周壁面に摺接し摺動自在に内装される内筒と、該内筒の上部開口部を閉蓋するヘッドとで構成されていること、
を特徴とするジャッキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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