説明

被処理廃棄物の溶融無害化処理装置およびこれを用いた溶融無害化処理方法。

【課題】被処理廃棄物を効率よく、安全かつ確実に溶融無害化する。
【解決手段】被処理廃棄物1aおよび添加材1bを投入混合し、棒状に成型するとともに、棒状に成型した被処理廃棄物2aを溶融処理装置22の円筒形状の管2211内に送り出し、溶融処理装置22では、第一溶融処理装置本体222により棒状の被処理廃棄物2aを焼成または溶融固化してコーティングし、破断が起きないようにし、第二溶融処理装置本体223により、コーティングされた棒状の被処理廃棄物2aの表層部から中心部まで溶融処理して、棒状の被処理廃棄物2a全体を溶融無害化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛散しやすく健康に影響が大きいといわれるアスベスト含有物をはじめとする被処理廃棄物を安全かつ確実に、さらに効率的に無害化処理するための被処理廃棄物の溶融無害化処理装置およびこれを用いた溶融無害化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱耐磨耗などに優れ、建築材料、工業材料に大量に使用されてきたアスベストは、人体への重大な健康被害が指摘され、除去が進んでいるが、最近の社会的な要請により、速やかな除去が求められている。
しかし、耐熱耐磨耗など優れた性質ゆえに、アスベストは処分が難しく、建物の解体工事現場、改修工事現場等でアスベスト含有物が回収されると、二重にした袋に詰められ、輸送作業により積み込まれて運搬されて、所定の管理型廃棄物処分場で埋め立て処分されている。このため、近い将来、処分場にて処分できる容量に限界がくることが明白となっている。また、輸送作業による運搬時には、袋詰めされたアスベスト含有物が漏洩しないように、厳重な防護対策が必要となるほか、処分場に至る運搬経路において多数の許可申請が必要とされる等、最終処分までに要する労力が極めて大きいことが指摘されている。
【0003】
そこで、最近、アスベスト含有物を溶融施設に持ち込み、高温溶融化して、アスベストを無害化する方法が開発されるなど、例えば、下記特許文献1から特許文献3にてアスベスト含有物の無害化処理に係る発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−301546号公報
【特許文献2】特開2007−295943号公報
【特許文献3】特開2007−308871号公報
【0005】
しかし、特許文献1にて提案された発明では、溶融施設の建設コストおよびランニングコストが膨大になるとともに、建設スペースの確保が困難であるという問題等が生じている。さらに、上記溶融施設は、国内に少ないという問題もある。特に、輸送作業による運搬時には、袋詰めされたアスベスト含有物が漏洩しないように、厳重な防護対策が必要となるほか、処分場に至る運搬経路において多数の許可申請が必要とされる等の溶融施設に持ち込むまでの運搬に関する問題ついて、何ら解決されていない問題がある。
【0006】
また、上記特許文献2または上記特許文献3に提案された発明では、アスベストをリン酸化合物やカルシウム化合物等により、他の物質形態に化学処理するのだが、建築物の壁、天井などある一定程度の厚みを有するアスベストに普遍的に浸透する等などし、すべてのアスベストを変質させることができるか否かについて疑義が生じる。さらに、健康被害をもたらさない程度にアスベストを変質させることが可能になるとしても、既存の施工状態に半永久的に処理したアスベストが存在することになり、経年的な信頼性の問題が新たに生ずるという課題もある。
【0007】
したがって、アスベスト除去工事現場等において、最も危険度の高い吹付けアスベストを除去して回収し、袋詰めしたアスベスト含有物を、当該現場から搬出するまでに無害化することができれば、処分場、溶融施設の問題が解決され、厳重な袋詰め等も不要となって、無害な一般廃棄物として処分することが可能となる。さらに、無害化処理したアスベスト含有物について減容化を図ることができれば、廃棄物の容量が少なくなり、一般廃棄物として廃棄するのに要する運搬時の輸送作業なども少なくて済むことが期待できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、従来のアスベスト含有物の無害化方法では、溶融施設の場合、建設コスト及びランニングコストが膨大なものとなるとともに、施設自体が少なく、溶融施設に持ち込むまでの運搬に係る問題は、何ら解決されていないという問題がある。既存の施工状態においてアスベストを他の物質形態に化学処理する方法では、すべてのアスベストを変質させることができるか否かについて疑義が生じ、また、既存の施工状態に存在する半永久的なアスベストに対する、経年的な信頼性の問題が生じている。これらの問題を解決するため、本出願人らは、特願2008−168137において、光源および反射鏡を有する処理装置により、鉛直に取り付けられた円筒管内を通過するアスベスト含有物を溶融し、工事現場などから搬出するまでに非アスベスト化する被処理廃棄物の溶融無害化処理装置に係る発明を提案しているが、さらに、被処理廃棄物の溶融無害化処理の効率性、確実性の向上を図ることなどの要請が生じている。
【0009】
被処理廃棄物の溶融無害化処理の効率性、確実性の向上については、例えば、被処理廃棄物を鉛直に取り付けた円筒管内に破砕物の状態で供給すると、被処理廃棄物が円筒管内を自由落下速度で通過することになって、そのような速度でも光源および反射鏡を有する処理装置による溶融処理を確実に遂行するための工夫、例えば、成型物にて供給するなどの工夫が必要となる。また、被処理廃棄物の一部が円筒管の内壁に付着して溶融すると、処理装置からの光の通過を遮るおそれがあるため、やはり被処理廃棄物を成型物として供給する工夫が必要となる。
さらに、被処理廃棄物は、工事現場で剥離・除去され、破砕装置で処理されて押出成型により成型物となった後であっても、粒径や形が不均一であるために内部に空洞が生じ、その密度差から破断するおそれがあって、特に、溶融処理するときに破断する危険性が高く、また、成型物の長さが長くなるほど破断の危険性が高くなるので、溶融処理中に破断し落下して、溶融処理されない被処理廃棄物が生じないようにする技術開発も必要となる。
また、処理廃棄物(特に、アスベスト含有物)は一般に、1500℃以上の加熱により溶融されるが、円筒管内を通過させつつ溶融させる場合、溶融化を進めるのに更なる高温(例えば、2000℃)での加熱が確実であると考えられるため、高温の加熱源および溶融される被処理廃棄物から熱の影響が小さくなる距離まで離して破砕装置や押出成型を行う装置を配置することになるが、そうすると成型物の長さが長くなって、破断の危険性が高まるという問題を解決する必要もある(図8(a)参照)。
このほか、被処理廃棄物が水分を含有している場合、溶融処理中に多量の水蒸気が発生し、円筒管の内壁に水蒸気が付着すると同時に被処理廃棄物から発生する排ガス成分も付着するので、やはり処理装置からの光の通過を遮るおそれがあるため、これを解決する必要がある。被処理廃棄物の径が大きくなると、高温に加熱しても一度に溶融しきれず、溶融途中の被処理廃棄物の塊が下方に垂れ下がって完全に溶融化されないまま落下するおそれがあるという課題もある。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑み提案されたもので、建物の解体工事現場、改修工事現場等において、アスベスト含有物をはじめとする被処理廃棄物を溶融無害化処理する溶融無害化処理装置に関し、光源および反射鏡を有する溶融処理装置による溶融処理機構を工夫し、被処理廃棄物を破断させることなく確実に溶融無害化処理することができ、被処理廃棄物の溶融無害化処理を効率性よく、確実かつ安全に進めることが可能な被処理廃棄物の溶融無害化処理装置およびこれを用いた溶融無害化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置は、被処理廃棄物を棒状に押し出しつつ成型する押出機構と、この押出機構から押し出された棒状の前記被処理廃棄物を受け取って送り出す送出機構と、この送出機構から送り出された棒状の前記被処理廃棄物を受け入れる中空部を有し、1000℃以下で構造的に安定で、赤外線を含む光に対してエネルギー吸収が少ない材料からなる前記中空部を囲む中空部材と、この中空部材の外側に可動可能に配置され、前記中空部に受け入れられた棒状の前記被処理廃棄物の表層部の焼成または溶融固化を行った後、前記表層部から中心部まで溶融処理する溶融処理装置と、から構成されることを特徴とする。
【0012】
特に、上記溶融処理装置における棒状の被処理廃棄物の表層部から中心部までの溶融処理は、少なくとも、棒状の被処理廃棄物の表層部を液状化する第一溶融処理段階と、この第一溶融処理段階で液状化した液状化部を流下させつつ、新たに現れる表層部を液状化する第二溶融処理段階とからなることが好ましい。
【0013】
また、上記押出機構において棒状に加工する前または棒状に加工している間の被処理廃棄物に、溶融温度を低下させる物質を添加することがさらに好ましい。
【0014】
このほか、上記中空部にガスを流し、被処理廃棄物の溶融処理で発生する排ガス成分によって中空部を囲む中空部材が汚染されることを防ぎつつ、排ガス成分を中空部から外部へ排出するガス発生手段を備えることが、さらにまた好ましい。
【0015】
そして、本発明に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理方法は、上記被処理廃棄物の溶融無害化処理装置を用いたことを特徴とする。
【0016】
すなわち、本発明は、溶融処理機構および照射方法調整機構を備えた溶融処理装置を複数段階にわたって配置することにより、被処理廃棄物を破断させることなく確実に溶融無害化する手段を提供する。例えば、二段階にて被処理廃棄物を溶融する場合には、第一溶融処理段階において照射を弱くするような調整を行って、被処理廃棄物の表層部のみを焼成または液状化してコーティングしつつ被処理廃棄物の破断を防ぎ、第二溶融処理段階において照射を強くするような調整を行って、被処理廃棄物全体を確実に溶融する。また例えば、三段階以上にて被処理廃棄物を溶融する場合には、第一溶融処理段階において照射を弱くするような調整を行って、被処理廃棄物の表層部のみを焼成または液状化してコーティングしつつ被処理廃棄物の破断を防ぐとともに、液状化した部分が被処理廃棄物本体よりも速く流下し、被処理廃棄物に新たな表層部が現れるので、第二溶融処理段階において照射を強くするような調整を行って、被処理廃棄物を溶融し、さらに、第三溶融処理段階以降にて、新たな表層部が現れる毎にこのような照射を繰り返し、全体の下位の段階にいくほど照射を強くしていくことで被処理廃棄物の表層部から中心部まで全体を溶融無害化処理するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、被処理廃棄物の溶融無害化処理装置を、被処理廃棄物を棒状に押し出しつつ成型する押出機構と、この押出機構から押し出された棒状の被処理廃棄物を受け取って送り出す送出機構と、この送出機構から送り出された棒状の被処理廃棄物を受け入れる中空部を有し、1000℃以下で構造的に安定で、赤外線を含む光に対してエネルギー吸収が少ない材料からなる中空部を囲む中空部材と、この中空部材の外側に可動可能に配置され、中空部に受け入れられた棒状の前記被処理廃棄物の表層部の焼成または溶融固化を行った後、前記表層部から中心部まで溶融処理する溶融処理装置とから構成したので、表層部から中心部まで棒状の被処理廃棄物全体を確実に溶融無害化することができる。特に、溶融処理装置による処理過程の初期に、表層部を焼成または溶融固化(コーティング、すなわち、被処理廃棄物自身で接着効果とともに亀裂などの発生を防ぐ効果を発揮)することが可能となるため、破断することなく確実に被処理廃棄物全体を溶融することができ、被処理廃棄物全体を液状化し、かつ、有害な効果をもたらす物質の微細構造を破壊して、無害な構造に変換することができる。
これにより、溶融処理過程の初期には、被処理廃棄物の表層部を焼成または液状化するための電力のみを投入すればよく、比較的温度を低く保つことができるとともに、焼成部位または液状化部位が被処理廃棄物の表層部となって熱源の領域も小さくなるので、押出機構と加熱源の距離を短くすることができ、被処理廃棄物の成型物の長さを短くして破断の危険性をさらに低くすることができる。また、成型物の長さを短くすることができるので、コンパクトな被処理廃棄物の溶融無害化処理装置を提供することも可能となる。
【0018】
また、上記溶融処理装置における棒状の被処理廃棄物の表層部から中心部までの溶融処理を、少なくとも、棒状の被処理廃棄物の表層部を液状化する第一溶融処理段階と、この第一溶融処理段階で液状化した液状化部を流下させつつ、新たに現れる表層部を液状化する第二溶融段階とから構成したので、中空部内での棒状の被処理廃棄物の表層部から中心部までの無害化をより確実に実行することができる。これにより、例えば、被処理廃棄物の径が大きい場合にも、被処理廃棄物が下方になればなるほど細くなり、重量も減少するため、破断や溶融しきれないまま塊で落下することを防ぐことができる。さらに、水分を含有する被処理廃棄物を処理する場合にも、水蒸気の発生を緩やかにでき、水蒸気とともに付着する被処理廃棄物の溶融処理で発生する排ガスによって中空部を囲む壁面が汚染される可能性を軽減できる。さらにまた、被処理廃棄物が細くなれば、被処理廃棄物の表層部が光源から発せられる光線の焦点により近づくため(被処理廃棄物表面の単位面積あたりの光線密度が大きくなるため)、溶融無害化の効率を向上させることができる。このほか、溶融処理装置が複数の段階的な溶融処理を行うものであるので、例えば、光源の電圧、消費電力の調整または光源の位置の調整により、被処理廃棄物の表層部を焼成するか、液状化するかを決めることができるため、被処理廃棄物の径や溶融温度の変動に対応した溶融処理が可能となる。
【0019】
また、上記押出機構において棒状に加工する前または棒状に加工している間の被処理廃棄物に、溶融温度を低下させる物質を添加したので、溶融温度を低下させる物質によって、溶融処理における温度を比較的低く保つことができ、押出機構と加熱源の距離を短くすることができるため、被処理廃棄物の成型物の長さを短くして破断の危険性をさらに低くすることができるほか、コンパクトな被処理廃棄物の溶融無害化処理装置を提供することが可能となる。また必要な電力を節約することができ、コストダウンの要請にも応えることができる。
【0020】
このほか、上記中空部にガスを流し、被処理廃棄物の溶融処理で発生する排ガス成分によって中空部を囲む中空部材が汚染されることを防ぎつつ、排ガス成分を中空部から外部へ排出するガス発生手段を備えたので、中空部内に下方から上方に向けてガスを流すことによって、被処理廃棄物の溶融処理で発生する排ガス成分による中空部を囲む中空部材の汚染(付着または反応)を防ぐことができるため、光源の光が中空部を囲む中空部材を通過する際のロスが少なく、効率的かつ長期間にわたり、被処理廃棄物の溶融無害化処理を継続することができる。また、排ガス成分を中空部の外部へ排出させることが可能であるので、排ガスを速やかに管または隔壁から除去することができ、その後、フィルタ処理などで浄化して排気することができる。
【0021】
そして、本発明に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理方法では、上記のような被処理廃棄物の溶融無害化処理装置を用いたので、被処理廃棄物の溶融無害化処理を効率よく、安全かつ確実に、さらにコストダウンの要請に応えつつ提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置の概略全体を示す概略図である。
【図2】実施例1に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置を用いた溶融無害化処理方法(工程)を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置の概略全体を示す概略図である。
【図4】実施例2に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置を用いた溶融無害化処理方法(工程)を示すフローチャートである。
【図5】本発明のさらに別の実施例に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置における中空部の形状を説明する説明図であって、(a)は、実施例3の説明図、(b)は、実施例4の説明図である。
【図6】本発明における溶融処理装置による被処理廃棄物の溶融処理プロセスを説明する説明図であって、(a)は、電圧または消費電力を低減した溶融処理プロセスを説明し、(b)は、光源の焦点をずらした溶融処理プロセスを説明するものである。
【図7】特願2008−168137に開示した溶融処理装置における被処理廃棄物の溶融処理プロセスを示す説明図であって、(a)は、溶融処理装置と送出装置等との距離が大きくなることを説明し、(b)は、被処理廃棄物に破断が生じた場合を説明するものである。
【図8】(a)は、特願2008−168137に開示した溶融処理装置の大きさを説明する説明図であって、(b)は、(a)と対比して、本発明における溶融処理装置がコンパクト化されることを説明する説明図である。
【図9】本発明における溶融処理装置による被処理廃棄物の溶融処理プロセスを説明する説明図であって、(a)は、棒状の被処理廃棄物の径が比較的細い場合の溶融処理プロセスを説明し、(b)は、棒状の被処理廃棄物の径が比較的太い場合の溶融処理プロセスを説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例1)
本発明に係る処理廃棄物の溶融無害化処理装置は、図1に示すとおり、被処理廃棄物1a、例えば、アスベスト含有物を押し出しつつ成型する押出機構としての成型装置1と、成型された棒状の被処理廃棄物2aを溶融処理する溶融処理機構2とからなる。
【0024】
まず、成型装置1は、被処理廃棄物1a、および、添加量を調整可能な添加装置(図示省略)を通じて被処理廃棄物1aに添加される固形化材、燃焼補助材、融点低下材をはじめとする添加材1bが投入される回収ホッパー11と、被処理廃棄物1aおよび添加材1bを混合して搬送する搬送管12と、混合された被処理廃棄物1aおよび添加材1bを押し出す押出装置13と、この押出装置13から押し出された被処理廃棄物1aおよび添加材1bを成型する成型型枠14とから構成されている。
【0025】
成型型枠14の末端部には、切れ目141が設けられている。この切れ目141は、成型された棒状の被処理廃棄物2aが押し出されてきた際に、溝形成部材142で棒状の被処理廃棄物2aを挟み込む部位になる。溝形成部材142によって挟み込まれた棒状の被処理廃棄物2aには、溝143が形成され、この形成された溝143には吊し部材144が係合される。なお、吊し部材144は、溶融処理装置22の近傍に達して高温になるため、耐熱性の材質で形成され、例えば、白金線、ニッケル線、ニクロム線などを用いて作製されるものである。
【0026】
また、溶融処理機構2は、棒状に成型され、吊し部材144が係合された棒状の被処理廃棄物2aを受け取り、さらに送り出す送出機構としての送出装置21と、この送出装置21から送り出された棒状の被処理廃棄物2aを溶融して無害化処理する溶融処理装置22とから構成されている。
【0027】
送出装置21は、先端にフック部を有し、このフック部に棒状の被処理廃棄物2aに係合させられた吊し部材144を引っ掛けて吊す固定部材211と、この固定部材211を支持する縦長の支持部材212と、この支持部材212に沿って固定部材211を可動可能にし、固定部材211に吊された棒状の被処理廃棄物2aを溶融処理装置22へ送り出す速度調整可能な送出装置本体213とからなる。
【0028】
溶融処理装置22は、筐体部と溶融装置本体部とからなり、筐体部は、送出装置本体213の先方下部に設けられ、送り出されてきた棒状の被処理廃棄物2aを受け入れる中空部を囲む中空部材としての例えば、円筒形状の管2211を備える装置筐体221で構成され、溶融装置本体部は、この装置筐体221内であって、円筒形状の管2211の外側に可動可能に配置され、円筒形状の管2211内に送り出されてきた棒状の被処理廃棄物2aを焼成または溶融固化してコーティングし、棒状の被処理廃棄物2aに接着効果や亀裂などの発生を防ぐ効果を発揮させて、破断が起きないようにする第一溶融処理装置本体222と、コーティングされた棒状の被処理廃棄物2aの表層部(例えば、表面から1mm〜5mm)から中心部まで溶融処理する第二溶融処理装置本体223と、これら第一溶融処理装置本体222、第二溶融処理装置本体223をそれぞれ、前後、上下、左右に可動可能にする第一架台224、第二架台225とを備えて構成されている。
【0029】
特に、円筒形状の管2211は、1000℃以下で構造的に安定で、赤外線を含む光、特に、0.01μm〜100μmの波長に対して透明、すなわち、エネルギー吸収が少ない材料からなる。さらに、第一溶融処理装置本体222と第二溶融処理装置本体223とは、同一の装置であり、例えば、ハロゲンランプに代表される光源222a、223a、および、この光源222a、223aから発生する光を反射する反射鏡222b、223bを有する。そして、光源222a、223aの電圧または消費電力を調整するか、または光源222a、223aの位置を第一架台224、第二架台225により前後、上下、左右に調整して焦点をずらして棒状の被処理廃棄物2aの表層部に照射する光の強弱を調整し、棒状の被処理廃棄物2aの表層部をコーティングし、または、溶融(液状化)するものである。
【0030】
なお、円筒形状の管2211内には、棒状の被処理廃棄物2aが溶融処理されている間、ガス発生装置(図示省略)から送られてくるガス226が下方から上方に流される。このガス226は、棒状の被処理廃棄物2aの溶融により発生する排ガスとともに、円筒形状の管2211の上部に設けられた複数の排気穴を有する栓2211aから排気され、排ガス浄化装置3によって浄化され、有害成分が除去された空気3aとして大気中排出される。
【0031】
以下、本実施例1における被処理廃棄物の溶融無害化処理装置を用いた溶融無害化処理方法(工程)を、図2に基づいて説明する。
【0032】
まず、投入工程1Aにおいて、被処理廃棄物1aとともに、固形化材、燃焼補助材、融点低下材をはじめとする添加材1bを、添加量を調整して添加手段を通じて回収ホッパー11に投入する。そうすると、被処理廃棄物1aおよび添加材1bは、搬送管12にて混合されながら押出装置13に搬送され、押出装置13から成型型枠14へ混合された被処理廃棄物1aおよび添加材1bが押し出され、成型型枠14にて棒状の被処理廃棄物2aに成型される(成型工程1B)。
【0033】
さらに、吊し工程1Cでは、例えば、ロボットにより、成型型枠14の末端部に設けられた切れ目141に、成型された棒状の被処理廃棄物2aが押し出されてきた際に、溝形成部材142を挟み込こんで、棒状の被処理廃棄物2aの端部に溝143を形成する。続いて、この溝143に吊し部材144を係合し、溶融処理機構2に供給可能な棒状の被処理廃棄物2aにするとともに、吊し部材144が係合させられた棒状の被処理廃棄物2aを、吊し部材144を介して送出装置21の固定部材211の先端のフック部に引っ掛ける。
【0034】
送出工程1Dでは、固定部材211に吊された棒状の被処理廃棄物2aを、速度調整可能な送出装置本体213により、所定のスピードにて支持部材12に沿って溶融処理装置22、特に、装置筐体221の1000℃以下で構造的に安定であり、赤外線を含む光、特に、0.01μm〜100μmの波長に対してエネルギー吸収が少ないな円筒形状の管2211へ送り出す。
【0035】
溶融工程1Eでは、送り出されてきた棒状の被処理廃棄物2aを、円筒形状の管2211内に受け入れさせ、円筒形状の管2211の外側に可動可能に配置されている第一溶融処理装置本体222および第二溶融処理装置本体223の光源222a、223aおよび反射鏡222b、223bにより、光を照射して溶融する。具体的には、まず、第一溶融処理装置本体222の光源222aおよび反射鏡222bによる光の照射により、棒状の被処理廃棄物2aをコーティングして破断することを防ぎ、さらに、第二溶融処理装置本体223の光源223aおよび反射鏡223bによる光の照射により、コーティングされた棒状の被処理廃棄物2aの表層部から中心部まで溶融する。特に、棒状の被処理廃棄物2aは、表層部が溶融すると、溶融して液状化した部分が棒状の被処理廃棄物2a本体よりも速く流下して、新たな表層部が現れることになるので、第二溶融処理装置本体223の光源223aおよび反射鏡223bによる光の照射を繰り返すことによって、表層部から中心部まで棒状の被処理廃棄物2aの全体を確実に溶融無害化することができる。
【0036】
(実施例2)
また、本発明に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置は、図3に示すような構成においても実施することができるものである。
本実施例2では、実施例1と同様、被処理廃棄物の溶融無害化処理装置が、被処理廃棄物1aを押し出しつつ成型する押出機構としての成型装置1と、成型された棒状の被処理廃棄物2aを溶融処理する溶融処理機構2とからなるものであるが、実施例1と異なるのは、実施例1における成型型枠14が送出装置21の送出装置本体213を除く部分を兼ねているところであり、以下、実施例1と異なる箇所を中心に詳述する。
【0037】
すなわち、図3に示すように、成型装置1は、被処理廃棄物1a、および、添加量を調整可能な添加手段(図示省略)を通じて被処理廃棄物1aに添加される固形化材、燃焼補助材、融点低下材をはじめとする添加材1bが投入される回収ホッパー11と、被処理廃棄物1aおよび添加材1bを混合して搬送する搬送管12と、混合された被処理廃棄物1aおよび添加材1bを押し出す押出装置13と、この押出装置13から押し出された被処理廃棄物1aおよび添加材1bを成型する成型型枠14とから構成されている。
特に、成型型枠14は、電動モーターを動かすなどして機能する起き上がり機構14aを備え、棒状の被処理廃棄物2aが押出装置13から押し出されて、内部が満たされると、電動モーターが作動して90度起き上がり、鉛直方向に設置できるようにしている。
【0038】
さらに、溶融処理機構2の送出装置21は、速度調整可能な送出装置本体から構成されていて、特に、成型型枠14が鉛直方向に設置される箇所の直下に設けられている。送出装置21内には、成型型枠14内から自然落下で落ちてくる棒状の被処理廃棄物2aを受け止め、速度調整しつつ溶融処理装置22へ送り出す調整部材としてのローター21aが複数個、成型型枠14から落ちてくる棒状の被処理廃棄物2aの径に嵌るようにして備えられている。
また、送出装置21の上端部は、起き上がり機構14aにより成型型枠14が90度起き上がって、鉛直方向に設置されたときに、成型型枠14の下端部と接面する位置に設けられている。
なお、溶融処理装置22は、実施例1と同様のものを用いればよい。
【0039】
以下、本実施例2における被処理廃棄物の溶融無害化処理装置を用いた被処理廃棄物の溶融無害化処理方法(工程)を、図4に基づいて説明する。
【0040】
まず、投入工程2Aおよび成型工程2Bは、実施例1の投入工程1Aおよび成型工程1Bとそれぞれ同様に行う。
【0041】
続いて、送出工程2Cでは、成型型枠14内に棒状の被処理廃棄物2aを満たして、起き上がり機構14aにより成型型枠14を90度起き上がらせて鉛直方向に設置し、下端部を送出装置21の上端部と接面させる。そうすると、成型型枠14内の棒状の被処理廃棄物2aが自然落下で落ちてくるので、送出装置21内の複数個のローター21aにより、棒状の被処理廃棄物2aの径に嵌るようにして受け止め、さらに、速度調整しつつ溶融処理装置22へ送り出す。
【0042】
最後に、溶融工程2Dにおいて、実施例1の溶融工程1Eと同様に溶融処理を行うことにより、棒状の被処理廃棄物2a全体を確実に溶融無害化する。
【0043】
すなわち、本実施例2においては、実施例1のような吊し工程1Cを排除することができ、また、例えば、ロボットをはじめ、吊し部材、固定部材、支持部材等を用いる必要がなくなる。
【0044】
(実施例3)
また、本発明に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置は、図5(a)に示すように、送出装置(図示省略)から送り出される棒状の被処理廃棄物を受け入れる中空部が、矩形の断面形状を有する管2212であってもよい。また、棒状の被処理廃棄物2aの表層部を焼成または液状化させてコーティングする第一溶融処理装置本体222を2機、対面させて配置し、棒状の被処理廃棄物2aの表層部から中心部まで溶融する第二溶融処理装置本体223を4機配置するなど、各溶融処理段階を構成する溶融処理装置本体の数や大きさを変動してもよい。すなわち、本発明における溶融処理装置22では、被処理廃棄物の種類や径の大きさによって溶融処理装置本体の段数を決定し、複数段にわたり配置することができ、被処理廃棄物の溶融温度が高いほど、径が大きいほど、光源から発せられる光線を吸収しにくいほど、段数を多くして配置することが好ましい実施形態となる。
【0045】
(実施例4)
さらに、本発明に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置は、図5(b)に示すように、送出装置(図示省略)から送り出される棒状の被処理廃棄物を受け入れる中空部が、隔壁部2213であってもよい。このような隔壁部2213を用いることにより、複数の送出装置から同時に棒状の被処理廃棄物2aを送り出すことができ、隔壁部2213の外側に並列に配置した第一溶融処理装置本体222、第二溶融処理装置本体223によって、棒状の被処理廃棄物2aを同時に溶融することが可能となって溶融処理の効率を向上させることができる。そして、この対面する隔壁部2213どうしを、例えば、1000℃以下で構造的に安定で、赤外線を含む光、特に、0.01μm〜100μmの波長に対して透明、すなわち、エネルギー吸収が少ない任意の材料からなる側壁2213aと天板2213bで囲むように構成することにより、上記実施例1〜3と同様に、溶融処理装置本体が被処理廃棄物によって汚れることを防止できるとともに、隔壁部2213の内側にガス(図示省略)を下方から上方に流すことにより、棒状の被処理廃棄物2aの溶融で発生する排ガスによって隔壁部2213が汚れることも防止することができる。
【0046】
ここで、上記実施例1〜4において、被処理廃棄物としては、例えばアスベスト含有物が挙げられる。固形化材としては、セメント、ベントナイト、石灰、石膏などが挙げられる。燃焼補助材としては、コークスなどが挙げられる。融点低下材としては、ホウ素化合物、フッ素化合物、ナトリウムなどが挙げられる。
【0047】
また、回収ホッパーの底部には、破砕機構を設けることが好ましく、この場合、被処理廃棄物を細かく砕くことができるので、添加材との混合や成型型枠における棒状への成型が効率的になる。
さらに、中空部材の中空部の形状は、上記の円筒形状の管、矩形の断面形状を有する管のほか、断面が円形、楕円形、多角形など任意の形状の管であってもよく、また上記のとおりの、溶融処理装置本体の光源および反射鏡と棒状の被処理廃棄物とを隔てる役割をすることができるような隔壁であってもよい。このような管または隔壁の材質としては、例えば、石英などを用いることが好ましい。
このほか、溶融処理装置本体の光源の電圧および電力は自在に調整できるため、被処理廃棄物の融点が分かっている場合には融点に、わからない場合にはトライ&エラーで事前に溶融温度を調べてその溶融温度に、それぞれ調整することも可能である。なお、溶融温度は熱電対を利用して測定することができる。また、上記実施例における光源と反射鏡は、これらが協調して被処理廃棄物に照射することにより、照射された被処理廃棄物が1500〜1600℃の溶融する温度に達することができるものであればよく、適宜のものを使用すればよい。
【0048】
そして、例えば、被処理廃棄物がアスベスト含有物で、溶融処理装置本体の光源にハロゲンランプを用いた場合、第一、第二溶融処理装置本体から発せられた光線が中空部の内側を通過する棒状のアスベスト含有物に照射されることにより、照射された棒状のアスベスト含有物は、溶融する1500℃〜1600℃程度の温度に達し、その熱により自発的に溶融するので、アスベスト含有物のごく表面のみならず、全体を溶融させることが可能となる。また、中空部の壁面の温度は、赤外線を吸収しない(赤外線に対しエネルギー吸収が少ないである)ため、1000℃以下に抑えられ、例えば、石英管としても溶融するおそれもない。
【0049】
なお、上記実施例において、「棒状の被処理廃棄物2aを焼成または溶融固化してコーティングし、破断が起きないようにする」とは、例えば、棒状の被処理廃棄物2aの表層部を焼成または液状化すると、被処理廃棄物2a自身で表面をコーティングするので、亀裂の発生などを防ぐことができ、破断を防止することができることを意味する。
また、「第一、第二溶融処理装置本体222、223が可動可能である」とは、中空部に対して前後、上下、左右に可動可能であり、さらに中空部の形状に沿って左右に可動させる場合も含まれる。例えば、第一架台、第二架台上の可動範囲にレールを配置し、第一、第二溶融処理装置本体の底部にタイヤを配置することにより、前後や左右の可動が可能となり、また、第一架台、第二架台をスライド機構によって上下に可動することも可能である。
【0050】
さらに、棒状の被処理廃棄物は、中空部の壁面の内側を通過するので、第一、第二溶融処理装置本体が棒状の被処理廃棄物よって汚されることから防止される。さらに、ガス発生装置(図示省略)から中空部材の中空部にガスを流すようにしたので、棒状の被処理廃棄物の溶融により発生する排ガスが中空部を囲む中空部材に付着して汚染することも防止することができる。中空部に流すガスは、棒状の被処理廃棄物の溶融により発生する排ガスとともに、中空部の上部の複数の排気穴を有する栓から排気され、排ガス浄化装置によって浄化した後、有害成分が除去された空気として大気中排出されるので、周辺環境への影響を最小限にすることができる。
また、第一、第二溶融処理装置本体の光源および反射鏡自体が高温となることについては、例えば、水冷管などの冷却手段を備えることにより解決されるものである。
【0051】
ここで、図6に示すように、上記実施例1〜4では、第一溶融処理装置本体222にて棒状の被処理廃棄物2aの表層部を焼成または液状化させて表面をコーティングするため、棒状の被処理廃棄物2aを破断させずに第二溶融処理装置本体223側へ供給することができ、さらに第二溶融処理装置本体223にて表層部、内部および中心部の溶融無害化を実施することができる。したがって、第一溶融処理装置本体222での加熱(光源から発せられる光線222a)は、棒状の被処理廃棄物2aの溶融温度程度でよく、比較的低温で行えるので、熱の影響を考慮しても送出装置(図示省略)との距離D1を小さくすることができ、棒状の被処理廃棄物2aの長さを短くすることができるため、コーティングの効果に加えてさらに破断を起こしにくくすることができる。
また、第一溶融処理装置本体222にて棒状の被処理廃棄物2aの表層部を焼成または液状化させて表面をコーティングしつつ、ごく表面を液状化して流下させると、棒状の被処理廃棄物2aの径が小さくなるので、第二溶融処理装置本体223での溶融処理は、棒状の被処理廃棄物2aの表層部が光源223aから発せられる光線の焦点により近づくため(被処理廃棄物表面の単位面積あたりの光線密度が大きくなるため)に、その溶融無害化処理の効率を向上させることができる。
なお、第一溶融処理装置本体222での棒状の被処理廃棄物2aの処理方法としては、例えば、図6(a)に示すように、電圧または消費電力を低減するか、図6(b)に示すように、対面する第一溶融処理装置本体222の光源222aの距離、または、光源222aと反射鏡222bのセットの距離を離す方向で調整し、焦点をずらすことなどが挙げられる。
【0052】
一方、図7に示すように、特願2008−168137に開示した技術では、送出装置(図示省略)から供給される棒状の被処理廃棄物2aを溶融処理装置22で溶融無害化する場合、棒状の被処理廃棄物2aの溶融温度よりも高温の加熱(光源から発せられる光線を吸収することを考慮した溶融温度よりも高温の加熱)が必要であるため、ここから発生する熱の影響を小さくするために、送出装置との距離D2を大きく離す必要が生ずる(図7(a)参照)。これに伴い、棒状の被処理廃棄物2aの長さを長くする必要があり、図7(b)に示すように、棒状の被処理廃棄物2aの破断の可能性を回避することが困難となる。
【0053】
そして、図8(b)に示すように、例えば、上記実施例1に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置では、棒状の被処理廃棄物2aの長さの差R1と、送出機構と第一溶融処理装置222の焦点との距離の差R2の合計が短くてすむので、特願2008−168137に開示したものに相当するもの(図8(a)参照)よりも高さを低くしてコンパクトなものにすることができ、工事現場に設置する装置として優位なものとなる。
【0054】
また、上記実施例1〜4に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置では、図9(a)に示すように、棒状の被処理廃棄物2aの径が比較的小さい場合、中空部の外側に配置される第一溶融処理装置本体222により、中空部の内側を通過する棒状の被処理廃棄物2aの表層部を焼成または液状化させることによって破断させずに供給し、続いて、第二溶融処理装置本体223により、中空部の内側を通過する棒状の被処理廃棄物2aを表層部、内部及び中心部まで溶融して全体を溶融無害化することができる。また、図9(b)に示すように、棒状の被処理廃棄物2aの径が比較的大きい場合、中空部の内側を通過する棒状の被処理廃棄物2aの表層部を焼成または液状化させることによって破断させずに供給し、続いて、第二溶融処理装置本体223により、中空部の内側を通過する棒状の被処理廃棄物2aの表層部をさらに液状化させて供給し、中空部の外側に配置される第三溶融処理装置本体227により、中空部の内側を通過する棒状の被処理廃棄物2aを表層部、内部及び中心部まで溶融して溶融無害化することができる。このように、棒状の被処理廃棄物2aの溶融温度が高くても、径が大きくても、光源から発せられた光線を吸収しにくくても、溶融処理装置による溶融段階を増加させて対応すれば、棒状の被処理廃棄物2a全体を破断させることなく、効率よく、安全かつ確実に溶融無害化することができる。
【0055】
したがって、本発明に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置およびこれを用いた溶融無害化処理方法では、光源の照射する光の強さ、焦点の位置などを調整する照射方法調整機構を備えた各溶融処理装置本体222、223、227を、複数段にわたって配置することにより、棒状の被処理廃棄物2aを破断させることなく、安全かつ確実に、効率よく溶融無害化することができる。さらに、融点低下材などの添加材1bを混合することや、第一溶融処理装置本体222の光源222aの強さを棒状の被処理廃棄物2aの融点温度付近になるように調整し、送出装置21と第一溶融処理装置本体222との距離D1を短くすることにより、コンパクトな構成とすることもできる。すなわち、コンパクトな構成で工事現場に設置する装置として、また、効率よく、さらに安全かつ確実に被処理廃棄物を溶融無害化する装置として、被処理廃棄物の溶融無害化処理装置およびこれを用いた溶融無害化処理方法を提供することができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。また、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱しなければ、システムを変更することも可能であり、本発明を構成する要素についても、公知または周知のものを使用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により、工事現場などでアスベスト等の被処理廃棄物の除去工事を行った際に、これまで厳重な袋詰め作業をして搬出していたアスベスト等の被処理廃棄物を一般廃棄物として搬出することができ、廃棄処理に要する工事費用を削減でき、廃棄物が減容化されるので、工事現場から排出される廃棄物量を削減でき、アスベスト等の被処理廃棄物の除去工事に要する工事期間も短縮できる。特に、コンパクトな構成で工事現場に設置することができ、また、効率よく、さらに安全かつ確実に被処理廃棄物を溶融無害化することができる被処理廃棄物の溶融無害化処理装置およびこれを用いた溶融無害化処理方法を提供することができる。なお、本発明に係る被処理廃棄物の溶融無害化処理装置内からアスベスト粉塵が排出されることもなく、大気拡散など環境への影響も微小なものになる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・・・成型機構
1a・・・・被処理廃棄物
1b・・・・添加材
11・・・・回収ホッパー
12・・・・搬送装置
13・・・・押出装置
14・・・・成型型枠
141・・・切れ目
142・・・溝形成部材
143・・・溝
144・・・吊り部材
2・・・・・溶融処理機構
21・・・・送出装置
211・・・固定部材
212・・・支持部材
213・・・送出装置本体
22・・・・溶融処理装置
221・・・装置筐体
2211・・円筒形状の管
2211a・栓
2212・・矩形の断面形状を有する管
2213・・隔壁部
2213a・隔壁
2213b・天板
222・・・第一溶融処理装置本体
222a・・光源(ハロゲンランプ)
222b・・反射鏡
223・・・第二溶融処理装置本体
223a・・光源(ハロゲンランプ)
223b・・反射鏡
224・・・第一架台
225・・・第二架台
226・・・ガス
227・・・第三溶融処理装置本体
3・・・・・浄化装置
3a・・・・空気
1A・・・・投入工程
1B・・・・成型工程
1C・・・・吊し工程
1D・・・・送出工程
1E・・・・溶融工程
2A・・・・投入工程
2B・・・・成型工程
2C・・・・送出工程
2D・・・・溶融工程
D1、D2・距離
R1、R2・差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理廃棄物を棒状に押し出しつつ成型する押出機構と、
この押出機構から押し出された棒状の前記被処理廃棄物を受け取って送り出す送出機構と、
この送出機構から送り出された棒状の前記被処理廃棄物を受け入れる中空部を有し、1000℃以下で構造的に安定で、赤外線を含む光に対してエネルギー吸収が少ない材料からなる前記中空部を囲む中空部材と、
この中空部材の外側に可動可能に配置され、前記中空部に受け入れられた棒状の前記被処理廃棄物の表層部の焼成または溶融固化を行った後、前記表層部から中心部まで溶融処理する溶融処理装置と、
から構成されることを特徴とする被処理廃棄物の溶融無害化処理装置。
【請求項2】
前記溶融処理装置における棒状の前記被処理廃棄物の表層部から中心部までの溶融処理は、
少なくとも、棒状の前記被処理廃棄物の表層部を液状化する第一溶融処理段階と、この第一溶融処理段階で液状化した液状化部を流下させつつ、新たに現れる表層部を液状化する第二溶融処理段階とからなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の被処理廃棄物の溶融無害化処理装置。
【請求項3】
前記押出機構において棒状に加工する前または棒状に加工している間の前記被処理廃棄物に、溶融温度を低下させる物質を添加した、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被処理廃棄物の溶融無害化処理装置。
【請求項4】
前記中空部にガスを流し、前記被処理廃棄物の溶融処理で発生する排ガス成分によって前記中空部を囲む前記中空部材が汚染されることを防ぎつつ、前記排ガス成分を前記中空部から外部へ排出するガス発生手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一つに記載の被処理廃棄物の溶融無害化処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一つに記載の被処理廃棄物の溶融無害化処理装置を用いた、
ことを特徴とする被処理廃棄物の溶融無害化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−201371(P2010−201371A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50806(P2009−50806)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】