説明

被加工物に溝を形成する方法及び装置

【課題】 溝が正確に形成可能となる、被加工物に溝を形成する方法及び装置を提供する。
【解決手段】 被加工物に溝を形成する方法及び装置において、振動ドライブ(12)が設けられ、その出力軸上にのこ刃(14)が一方の端部により収容され、のこ刃の他方の端部(16)には切削縁部(17)が設けられる。振動ドライブ(12)は、被加工物の表面とのこ刃(14)との間に特定の角度を持たせて、被加工物に位置付けられ、のこ刃(14)が振動する様式で駆動され、出力軸に対して半径方向に延びる方向に案内部(72)に沿って移動される。このようにして、連結要素は、2つの被加工物が適合するようにこれら2つの被加工物に形成された溝に挿入され、被加工物間に持続的で正確な連結を形成するために、2つの被加工物に接着接合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に溝を形成する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、2つの被加工物を連結する方法に関する。
【0003】
最後に、本発明は、被加工物に溝を形成する装置に関する。
【背景技術】
【0004】
被加工物を連結する場合に、特に、枠組み壁工法においては、ラメロ社製の連結装置と称される装置が知られている。これは、丸のこ刃を用いて、互いに連結される木製の2つの部分に円弧状の溝を切削し、これらの溝にビスケットとしても知られる小型で平坦なほぼレンズ状の木製板を挿入し、これらを木工用接着剤で貼り付けるようにする。ビスケットは、木工用接着剤の効果で膨張し、このようにして2つの構成部材間に持続的で堅固な連結をもたらす。
【0005】
この種の連結は、接着の結果として非常に強固であるが、比較的小さな被加工物では、弓形状の溝のため、限られたスペースで連結されることがほとんど不可能であるという不利な点がある。
【0006】
また、実際に、木工用接着剤により隣接する被加工物を連結するための金属コネクタが、独国特許出願公開第10250096号明細書に開示され知られており、連結要素が木製単板で被覆されている。このようにして、割り当てられた溝に挿入された連結要素は、同様に、木工用接着剤により互いに連結され得る。
【0007】
しかしながら、ここで、溝は丸のこ刃により形成されるため、限られたスペースでの連結を妨げる、弓形状の形状が得られてしまうといった問題もある。
【0008】
さらに、独国特許発明第19938106号明細書は、止め具付き携帯型電動工具を開示しており、この電動工具が出力軸の長手軸周りに間欠的に工具を駆動するための振動ドライブを備える。また、この電動工具には、当該携帯型電動工具と被加工物との間の最小距離を維持するための調整可能な止め具が設けられている。
【0009】
原理的には、このような工具を用いて研磨作業又はのこぎりでの切削作業を実行することができるが、被加工物に正確な溝を形成することは不可能である。
【特許文献1】独国特許出願公開第10250096号明細書
【特許文献2】独国特許発明第19938106号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、溝が正確に形成可能となる、被加工物に溝を形成する方法及び装置を提供するという目的に基づくものである。同時に、また、矩形の横断面を有する溝を形成する可能性が提供される。さらに、溝をできるだけ被加工物の縁部及び角の領域において形成することができることも意図される。
【0011】
加えて、このような溝を用いて縁部の領域及び角の領域であっても被加工物の信頼性のある連結を確実とする少なくとも2つの被加工物を連結する方法が提供され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、次のような工程を有する被加工物への溝形成方法により実現される。
【0013】
本発明の方法は、
出力軸にのこ刃が一方の端部により収容され、のこ刃の他方の端部には切削縁が設けられてなる振動ドライブを設ける工程と、
被加工物の表面とのこ刃との間に特定の角度を持たせて、被加工物に振動ドライブを位置付ける工程と、
のこ刃を振動させながら駆動する工程と、
出力軸に対して半径方向に延びる方向に案内部に沿ってのこ刃を案内する工程とを含む。
【0014】
また、本発明の目的は、次のような被加工物に溝を形成する装置によっても実現される。本装置は、振動ドライブを備え、その出力軸にのこ刃が一方の端部により収容され、のこ刃の第2の端部には切削縁部が設けられており、被加工物の表面に対して特定の角度でのこ刃を位置付けるための少なくとも1つの停止面と、出力軸に対して半径方向に延びる方向にのこ刃を移動するための案内部とを備える。
【0015】
このようにして、本発明の目的は、完全に実現される。
【0016】
本発明に係る方法、及び本発明に係る装置によれば、溝を正確な形状で正確な経路に沿って被加工物に形成することができる。のこ刃を振動させながら駆動する間には、のこ刃は、出力軸に対して半径方向に延びる方向に案内部に沿って案内されるため、実質的に直線状の溝を被加工物の表面に形成することができる。
【0017】
また、この方法を用いると、本発明によれば、少なくとも2つの被加工物が次のような工程により連結されることが可能である。すなわち、
このような方法により、複数の被加工物に互いに位置合わせされた溝を形成する工程と、
各場合において2つの関連する溝内に連結要素を挿入する工程と、
各連結要素を接着接合することにより、これら被加工物を合わせて結合する工程とを含む。
【0018】
このようにして、被加工物間に非常に正確で耐久性及び信頼性のある連結を形成することができる。
【0019】
同時に、正確な案内により、非常に薄い構成部材をも真横に互いに連結することができる。
【発明の実施の形態】
【0020】
本発明の好ましい開発では、木工用接着剤で貼り付けを可能とする表面被膜を有する金属要素が連結要素として用いられる。
【0021】
このようにして、特に、木製の構成部材は、接着を生じるという点で原理的に知られる従来の連結手段によって、互いに連結可能とされる。しかしながら、連結要素は、金属からなるため、従来の連結要素の場合よりもはるかに小型化され得る。同様に、角度を持たせた連結もまた可能である。
【0022】
本発明に係る方法の場合には、のこ刃は、好ましくは、出力軸の長手軸周りに往復振動するように駆動される。
【0023】
このように、振動が非常に小さく維持され、略矩形の溝を対応する形状ののこ刃により形成することができる。
【0024】
この目的のため、本発明の更なる改善点として、切削縁部は、少なくとも特定の箇所が直線となるように形成される。
【0025】
のこ刃は、好ましくは、1分あたり5000〜30000の振動の頻度で、好ましくは、0.5°〜7°の旋回角で駆動される。
【0026】
これにより、のこ刃の前進が優れ、及び同時に正確な作業が可能となる。
【0027】
本発明の有利な開発として、本発明に係る装置は、被加工物の表面を支持する第1の停止面と、のこ刃により画定される平面からの距離が調整可能とされる第2の停止面とを備える。
【0028】
このようにして、被加工物の表面からの溝の距離は、正確に予め設定され維持され得る。
【0029】
この構成の追加的開発として、第2の停止面がその角度について調整可能である。
【0030】
このようにして、多様な角度での被加工物の連結が可能である溝を形成することができる。実質的には、0°〜90°、又は90°〜180°の任意の所望の角度が、対応する予めの設定によって実現することができる。
【0031】
本発明の更なる改良点によれば、出力軸のラジアル平面に平行して延びる第3の停止面が設けられる。
【0032】
このようにして、工具は、被加工物の外にある平面上においても案内され得る。
【0033】
なお、上述した本発明の特徴、及び以下で説明する特徴は、本文で示した各組み合わせだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせやそれら特徴自体としても用いることができることは、言うまでもない。
【0034】
本発明の更なる特徴及び利点は、図面を参照しながら、以下の好ましい例示的実施形態に関する記載から生じるものである。
【実施例】
【0035】
図1及び図2において、本発明に係る装置の全体は、数字10により示される。装置10は、全体を13で示した取付台に固定された振動ドライブ12を備える。取付台13は、被加工物の表面に沿って振動ドライブを正確に案内可能とする。
【0036】
振動ドライブ12は、ハンドルとして設計され、前方端部から出力軸54がほぼ直角に突出するハウジング15を備える(図2を参照のこと)。
【0037】
振動ドライブの出力軸54は、1分あたり約5000〜30000の振動に設定可能な高い頻度で、さらに約0.5°〜7°をとり得る小さい旋回角で、長手軸56周りに往復振動するように駆動される。のこ刃14は、第1の端部60(図2)が適切な積極的連結により出力軸54に固定されるとともに、第2の端部16(図1)が出力軸54から垂直方向に外側に向かって突出している。
【0038】
本例では、のこ刃14は、矩形状であり、その第2の端部16には直線状の切削縁部17を有している。
【0039】
取付台13は、平面の台板37に連結された基部本体18を備える。基部本体は、その外側において、加工される被加工物に対面しながら、台板37に対して垂直方向に延びる平面状の第1の停止面24により終端されている。フランジ50は、この基部本体18から直角に上方に向かって突出している。このフランジ50には、フレーム52が調整ねじ48により2つの歯状ラック46に沿って移動可能となるように収容されている。フレーム52の後方側のねじ(図示せず)は、固定用に役立つ。
【0040】
フレーム52の下方端部には、ピボット軸36があり、その上には、弓形部30が一端を保持されている。弓形部30は、弓状の溝32を備え、このため、ピボット軸36周りに上方に回動可能であり、溝32を通って延びる調整ねじ34により他方の端部にてフレーム52に固定可能である。板28は、弓形部30の下方端部に固定され、板の下方端部には、第2の停止面26が形成されている。したがって、平板30をピボット軸36周りに回動させることにより、第1の停止面24と第2の停止面26との間の角度は、両矢印42に示されるように、90°〜180°の間で大きく変化し得るように調整可能である。
【0041】
加えて、台板37の外側面には、第3の停止面38が形成されており、第1の停止面24に対して直角に延びている。
【0042】
振動ドライブ12は、長手方向の案内部72に両側を調整可能に収容されている(図2を参照)。これらの案内部72は、台板37に平行し、さらに振動ドライブ12のハウジング15の範囲の主方向19に平行して延びており、のこ刃14で対応する前進が切削縁部17の範囲の方向に垂直に生じ得るように、振動ドライブ12を直線的に移動させることが可能である。
【0043】
図1によると、加えて、見る人に対面する取付台13の側面には、ロッド20が設けられ、その上には、渦巻ばねの形態でばね要素22が保持されている。この場合、ばね要素22の一方の端部は、フランジ50に締め付けられているとともに、他方の端部は、ブロック39で振動ドライブ12と共に移動する。
【0044】
このようにして、ばね要素22は、振動ドライブ12が第1の停止面24の方向に移動する場合には応力がかかる。
【0045】
この応力のかかった位置を図1に示す。ここで、のこ刃14の切削縁部17は、第1の停止面24からかなりの量すでに突出している。振動ドライブ12は、解除されると、ばね要素22の作用を受けて開始位置へと案内部72上で後退する。
【0046】
よって、本発明に係る装置の動作モードは、次のようになる。
【0047】
被加工物に特定の角度で溝を形成するためには、装置10は、第1の停止面24を被加工物の前方の縁部に当接させて配置することができる。第2の停止面26とのこ刃14との間の距離は、調整ねじ48によって歯状ラック46に沿ってフレーム52を調整することにより設定することができる。のこ刃14は、垂直側面において、標識74のレベルにある(図1を参照のこと)。加えて、第1の停止面24と第2の停止面26との間の角度は、弓形部30をピボット軸36周りに回動することにより、90°〜180°に設定され得るものであり、同時に、のこ刃14と被加工物の表面との間の角度の設定が伴う。その後、振動しながら駆動されるのこ刃14により、溝が被加工物に鋸で切られて形成することができ、振動ドライブ12がばね要素22の作用に反して案内部72に沿って次第に進む。
【0048】
このようにして、溝を被加工物の表面に対して正確な位置及び正確な角度配向で形成することができる。
【0049】
さらに、類似する方法で、適切な形状、大きさ、及び位置の溝を、第1の被加工物とともに結合される、割り当てられた第2の被加工物に形成することができる。
【0050】
その後、図3に概略示されているように、2つの被加工物62及び64は、合わせて連結要素68により結合され得る。
【0051】
小型の板状の連結要素70は、第1の被加工物62及び第2の被加工物64の2つの互いに位置合わせされた溝66及び68の間に押し込まれる。この連結要素70は、好ましくは金属からなり、木製単板で被覆されている。したがって、連結要素70は、2つの溝66、68の中に木工用接着剤で貼り付けることができ、これにより、2つの被加工物62、64の間に非常に堅固な信頼性のある連結が形成される。連結要素70のコアが金属からなるため、連結要素70は、高度な強度を有し、のこ刃14を可能な限り矩形に形成すると、結果的に、同様に、矩形に形成され得る。
【0052】
このようにして、隣接する被加工物間に比較的小さな連結要素によって、非常に堅固で持続的な連結を形成することができる。これは、被加工物の縁部領域及び角領域の両方において迅速に可能である。さらに、90°の角度、またはそれ以外の角度を形成する角度を持たせた連結を、被加工物間に形成することができる。加えて、深く、特に幅広くない溝を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る装置を示す側面斜視図である。
【図2】図1による装置を示す正面斜視図である。
【図3】本発明に係る連結要素によって連結される2つの被加工物を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 装置
12 振動ドライブ
13 取付台
14 のこ刃
15 ハウジング
16 端部
17 切削縁部
18 基部本体
19 主方向
20 ロッド
22 ばね要素
24 停止面
26 停止面
28 板
30 弓形部
32 溝
34 調整ねじ
36 ピボット軸
37 台板
38 停止面
39 ブロック
42 両矢印
46 歯状ラック
48 調整ねじ
50 フランジ
52 フレーム
54 出力軸
56 長手軸
60 端部
62 被加工物
64 被加工物
66 溝
68 溝
70 連結要素
72 案内部
74 標識


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(62,64)に溝(66,68)を形成する方法であって、
出力軸(54)にのこ刃(14)が第1の端部(60)により収容され、のこ刃の他方の端部(16)には切削縁部(17)が設けられてなる振動ドライブ(12)を設ける工程と、
被加工物の表面とのこ刃(14)との間に特定の角度を持たせて、被加工物(62、64)に振動ドライブ(12)を位置付ける工程と、
のこ刃(14)を振動させながら駆動する工程と、
出力軸(54)に対して半径方向に延びる方向に案内部(72)に沿ってのこ刃(14)を案内する工程とを含む方法。
【請求項2】
のこ刃(14)は、出力軸(54)の長手軸(56)周りに往復振動するように駆動される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
のこ刃(14)は、切削縁部(17)が少なくとも特定の箇所で直線状であるように形成されたものを用いる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
のこ刃(14)は、1分あたり5000〜30000の振動の頻度で、好ましくは、0.5°〜7°の旋回角で駆動される先行する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの被加工物を連結する方法であって、
先行する請求項のいずれかに記載の方法により、被加工物(62、64)に互いに位置合わせされた溝(66、68)を形成する工程と、
各場合において2つの関連する溝(66、68)内に連結要素(70)を挿入する工程と、
各連結要素(70)を接着接合することにより、被加工物(62、64)を合わせて結合する工程とを含む方法。
【請求項6】
金属要素が、木工用接着剤で貼り付け可能とする表面被膜を有して設けられる連結要素(70)として用いられる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
被加工物に溝を形成する装置であって、振動ドライブ(12)を備え、その出力軸(54)にのこ刃(14)が第1の端部(60)により収容され、のこ刃の第2の端部に切削縁部(17)が設けられており、
被加工物の表面に対して特定の角度でのこ刃(14)を位置付けるための少なくとも1つの停止面(24、26、38)と、
出力軸(54)に対して半径方向に延びる方向にのこ刃(14)を移動させるための案内部(72)とをさらに備える装置。
【請求項8】
被加工物の表面を支持する第1の停止面(24)と、のこ刃(14)により画定される平面からの距離が調整可能とされる第2の停止面(26)とを備える請求項7に記載の装置。
【請求項9】
第2の停止面(26)は、第1の停止面(24)に対する角度について調整可能である請求項8に記載の装置。
【請求項10】
出力軸(54)のラジアル平面に平行して延びる第3の停止面(38)を備える請求項8又は9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−341602(P2006−341602A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147599(P2006−147599)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(594106092)ツェー ウント イー フェイン ゲーエムベーハー (11)
【Fターム(参考)】