説明

被加工物の加工システム

【解決手段】 パレットチェンジャ4は、搬出入位置Aと待機位置Bとに交換可能な2枚のパレットP(P1、P2)を備えている。
搬出入位置AにおけるパレットP1の長辺の一方には、通常の素材Wを把持するためのクランプ6が配置されている。また、パレットP1の他方の長辺には破材W’を把持するための第2のクランプ7が配置されるとともに、パレットP1の隅部22Bには位置決め凸部31が配置されている。
待機位置Bの素材Wよりも優先して破材W’を切断加工する際には、作業者は破材W’をパレットP1上の隅部22Bに位置決めしてからクランプ7で固定する。この後、レーザ加工機2におけるプログラム原点の座標系を変更するように操作盤5aを介して制御手段5に入力する。
【効果】 従来と比較して作業者の作業負担を軽減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被加工物の加工システムに関し、より詳しくは、パレット上に支持された板状の被加工物に加工を施すようにした被加工物の加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工テーブル上に板状の被加工物を載置し、加工テーブルをX軸方向に移動させるとともに加工ヘッドを上記X軸方向と直交するY軸方向に移動可能に構成されたレーザ加工機は既に公知である。
また、従来では、加工テーブルの隣接位置にパレットチェンジャを配置して、被加工物を支持したパレットをパレットチェンジャによって加工テーブル上に搬入し、或いは加工テーブル上からパレットを搬出するようにした加工システムが提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−138069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような従来の加工システムにおいては、加工テーブルの一側側に作業者が操作する操作盤が配置される一方、加工テーブルの他側側に上記パレットチェンジャが配置されている。そして、加工テーブルは、操作盤とパレットチェンジャとの間で所定のX軸方向に移動されるとともに、加工ヘッドは上記X軸方向と直交するY軸方向に移動されるようになっている。
このようなパレットチェンジャを備えた従来の加工システムにおいては、加工テーブルに支持したパレット上の被加工物に対して加工ヘッドにより切断加工等を行っている際に、パレットチェンジャに待機させた別のパレットに対して作業者が次に処理すべき被加工物の取り付けを行うようにしている。そして、加工ヘッドによって加工済みの被加工物を支持したパレットはパレットチェンジャによって加工テーブル上から搬出される一方、それまで待機させていた他方のパレットがパレットチェンジャによって加工テーブル上に搬入されて、該新たなパレット上の被加工物に対して加工ヘッドにより切断加工が施されるようになっている。
このような従来の加工システムにおいては、各パレットにおける被加工物の位置決め部材やクランプは、上記パレットにおける上記操作盤とは反対側の隅部に配置されていたものである。
ところで、このような従来の加工システムにおいて、加工テーブル上のパレットに支持された被加工物の次の予定していた被加工物の加工よりも優先して全く別の製品を切り出す必要が生じる場合があり、製品が小さいものであれば一度製品の切出しが終了した破材を利用して切り出すようにしている。このような場合、従来では、先ず、作業者は加工テーブル上の被加工物の加工が終了したら操作盤を操作して板材加工機の自動運転を停止させ、その後、操作盤側から板材加工機を挟んだ反対側のパレットチェンジャまで移動し、該パレットチェンジャで待機中のパレットに優先加工の対象となる製品を切り出すことができる大きさの破材を取り付ける。その後、作業者は、再度操作盤側に戻ってからパレットチェンジャによりパレットの交換操作を行わせて、破材を支持したパレットを加工テーブル上に搬入させる。その後、作業者は操作盤を操作して新たな加工テーブル上の破材を加工するための加工プログラムの呼出しや編集作業を行うようにしている。以上のように、従来の加工システムにおいては、次に予定していた加工に優先して別の加工を行うような場合に作業者は操作盤側からパレットチェンジャ側へ移動して別の被加工物をパレットに固定しなければならず作業性が悪いという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した事情に鑑み、請求項1に記載した本発明は、被加工物を支持するパレットを着脱可能に支持する加工テーブルをX軸方向に移動させるとともに上記被加工物に加工を施す加工ヘッドを上記X軸と直交するY軸方向に移動させて、上記加工テーブルに支持されたパレット上の被加工物に所要の加工を施すようにした加工機と、
少なくとも2枚のパレットを載置可能で、各パレットをY軸方向に移動させて上記加工テーブルとの間でパレットを交換するパレットチェンジャと、
上記加工機およびパレットチェンジャの作動を制御する制御手段とを備え、
さらに、上記各パレットは、加工テーブルに対してパレットチェンジャ側の隅部を基準として被加工物を位置決めする第1位置決め手段と、この第1位置決め手段により位置決めされた被加工物を固定する第1把持手段とを備え、上記制御手段は被加工物を加工するための加工プログラムに従って上記加工機の作動を制御して被加工物を加工するようにした被加工物の加工システムにおいて、
上記パレットの少なくとも1枚に、パレットチェンジャに対して加工テーブル側の隅部を基準として第2の被加工物を位置決めする第2位置決め手段を設けるとともに、該第2位置決め手段によって位置決めされた第2の被加工物を固定する第2把持手段を設けて、
上記制御手段は、上記第1位置決め手段により位置決めされた被加工物に対して上記加工機で加工を施す場合と、上記第2位置決め手段により位置決めされた第2の被加工物に対して上記加工機で加工を施す場合とに応じて、上記加工機におけるプログラム原点の位置を切換可能としたものである。
【発明の効果】
【0005】
上述した構成によれば、次に予定していた被加工物よりも優先して別の被加工物から別の製品を切り出す場合に、作業者は操作盤側から被加工物をパレットに位置決めして固定することができる。そして、作業者はほとんど移動することなく、加工機が優先する被加工物に加工を施すことができるようにすることができる。つまり、本発明においては、作業者は操作盤側だけで全ての作業を行うことができるので、従来と比較して作業性が極めて良好な被加工物の加工システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、図1において、1は板状の被加工物から所要の形状の製品を切り出すように切断加工する加工システムである。この加工システム1は、長方形のパレットP上に支持された被加工物としての素材Wに所要の切断加工を施すレーザ加工機2と、2枚のパレットP(P1、P2)を交互にレーザ加工機2の加工テーブル3との間で交換するパレットチェンジャ4と、レーザ加工機2およびパレットチェンジャ4の作動を制御する制御手段5とを備えている。
【0007】
レーザ加工機2は、レーザ光を発振するレーザ発振器11と、パレットPを支持する上記加工テーブル3と、レーザ光を素材Wに照射して切断加工を施す加工ヘッド12と、加工テーブル3をX軸方向に移動させる第1駆動機構13と、加工ヘッド12を上記X軸方向と直交するY軸方向に移動させる第2駆動機構14とを備えている。
上記第1駆動機構13、第2駆動機構14およびレーザ発振器11の作動は、制御手段5によって制御されるようになっている。レーザ発振器11及び制御手段5が備える操作盤5aは、加工テーブル3の移動路の一側側に隣接させて配置されており、他方、パレットチェンジャ4は加工テーブル3の移動路の他側側に隣接させて配置されている。
【0008】
そして、加工テーブル3上に大きな素材Wを載置したパレットPが支持された状態において、制御手段5が予め記憶した加工プログラムに基づいてレーザ発振器11を作動させると、該レーザ発振器11から発振されたレーザ光は、複数の反射ミラー他からなる導光手段15によって加工ヘッド12に導入された後に、加工テーブル3に支持されたパレットP上の素材Wに照射されるようになっている。
そのように、加工ヘッド12から素材Wに対してレーザ光を照射しながら制御手段5は、予め記憶した加工プログラムに基づいて第1駆動機構13により加工テーブル3をX軸方向に移動させるとともに第2駆動機構14により加工ヘッド12をY軸方向に移動させるので、素材Wから所要の形状の製品を切り出すことができるようになっている。このレーザ加工機2の構成は従来公知のものと同じである。加工テーブル3の第1駆動機構13による一方の移動端が加工テーブル3にパレットPが搬出または搬入される搬出入位置Aとなっている。
【0009】
本実施例のパレットチェンジャ4は上下に2枚のパレットPをそれぞれ載置可能であり、一方のパレットPが上記加工テーブル3上に支持されている状態において、他方のパレットPはパレットチェンジャ4上となる待機位置Bに待機するように構成されている。そして、一方のパレットPがレーザ加工機2で加工されている間に、作業者が待機位置Bに待機しているパレットP上に次の加工対象となる素材Wを固定しておくことにより、加工中の素材Wの加工終了後にパレットPを交換してから次の素材Wの加工を始めるような連続運転が可能となっている。
図1および図2に示すように、各パレットPは、長方形をした枠状部材22と、該枠状部材22の内側の全域にわたって枠状部材22の短辺に平行で等間隔に配置された板状の支持部材23とを備えている。そして、枠状部材22の長辺における操作盤5aから遠く離れた側に4個のクランプ6が設けられている。また、各パレットPは、クランプ6を設けた枠状部材22の長辺と図1における右側となる加工テーブル3に搬入されたときに加工ヘッド12に近い側の短辺との隅部22Aに位置決め凸部21を備えている。尚、位置決め凸部21の内側には鉛直方向の当接面が形成されている。
【0010】
図2に示すように、クランプ6は、枠状部材22の長辺上に配置されたガイドレール24に案内されてX軸方向に移動可能となっている。各クランプ6は、本体部6Aとナット部材19とによってレール24を上下から挟み込んだ状態においてボルト20を締めることでレール24に固定されるようになっている。また、ボルト20を緩めることで各クランプ6をレール24の長手方向の所要位置に平行移動させることができるようになっている。
クランプ6の本体部6Aにおける内方側の箇所には、素材Wを支持する水平な支持部6Bが形成されており、またそれに隣接して鉛直方向の当接面6Cが形成されている。
上記支持部材23の上面の所要位置には、鉛直上方に向けて複数の凸部23Aが配置されている。この凸部23Aの上端部の高さは上記クランプ6の支持部6Bと同じ高さに設定されている。
そのため、パレットPの複数の凸部23A上に長方形の素材Wを載置させてから該素材Wの長辺の外縁部を各クランプ6の当接面6Cに当接させることで、パレットP上における素材WのY軸方向の位置決めが行われるようになっている。そして、その状態から素材Wをクランプ6の当接面6Cに対してX軸方向に摺動させてから素材Wの短辺を上記位置決め凸部21の当接面に当接させることにより、素材WがX軸方向において位置決めされるようになっている。上記各クランプ6の当接面6Cと位置決め凸部21とによって、隅部22Aに素材WをパレットP上に位置決めするための第1位置決め手段が構成されている。
このようにしてパレットP上の隅部22Aに素材Wが位置決めされると、その後、作業者が各クランプ6の把持部材26をボルト27で締め付けることにより、各クランプ6の把持部材26と支持部6Bにより素材Wの長辺の4箇所が把持されてパレットPに素材Wが固定されるようになっている。
【0011】
このように両方のパレットPの枠状部材22には、パレットP上における素材WのY軸方向を位置決めする4個のクランプ6と素材WのX軸方向を位置決めする位置決め凸部21が配置されている。
そして、クランプ6と位置決め凸部21により位置決めされて固定された素材Wを支持したパレットPが加工テーブル3上の搬出入位置Aに搬入されて、図示しない固定手段により加工テーブル3に位置決めされて固定された際に、パレットPの隅部22Aにある素材Wの角部の頂点が制御手段5において認識されているレーザ加工機2のプログラム原点と一致するようになっている。また、加工プログラムはプログラム原点を基準に作成されており、制御手段5によりプログラム原点を基準とした座標系において加工プログラムが実行されるようになっている。
なお、クランプ6としては、図4に示すようなエアシリンダにより把持部材26を開閉作動させて把持するようにしたものでもよい。
【0012】
パレットチェンジャ4の基本構成は従来公知のものと同じであり、上方部にY軸方向と平行な一対のガイドレールを上下位置に高さを異ならせて2組備えており、上方側の一対のガイドレールに一方のパレットPの車輪を載置できるようになっており、下方側の一対のガイドレールに他方のパレットPの車輪を載置できるようになっている。
パレットチェンジャ4は、両パレットPを同時に昇降させるための図示しない昇降機構を備えるとともに、各パレットPを上記ガイドレール上となる待機位置Bから搬出入位置Aの加工テーブル3上に搬入し、或いはそこからガイドレール上となる待機位置BへパレットPを搬出させるための図示しない進退動機構を備えている。これら昇降機構および進退動機構の作動は、上記制御手段5によって制御されるようになっている。
制御手段5は、パレットチェンジャ4の昇降機構と進退動機構の作動を制御して、各パレットPをパレットチェンジャ4側の待機位置Bから加工テーブル3上の搬出入位置Aへ搬入したり、逆に加工テーブル3上の搬出入位置Aからパレットチェンジャ4側の待機位置Bへ搬出するようになっている。
【0013】
本実施例における加工システムの通常の動作順は図3のようになる。先ずパレットP1に待機位置Bの上段のガイドレールに支持され、かつ素材Wが位置決めされてクランプ6により固定される(図3(a))。そのパレットP1をパレットチェンジャ4の進退動機構によって加工テーブル3上の搬出入位置Aまで押し出して、該加工テーブル3上に載置させる。加工テーブル3には前述した図示しない固定手段が配置されており、加工テーブル3上のパレットP1は図示しない位置決め手段により位置決めされてから固定手段により固定される。
このようにパレットP1が搬出入位置Aの加工テーブル3に固定されると、レーザ加工機2において制御手段5は予め記憶した加工プログラムに基づいて前述したようにレーザ発振器11、両駆動機構13,14を作動させて加工ヘッド12を素材Wと水平面において相対移動させて素材Wから所要の形状の製品が切断される。
【0014】
一方、上記レーザ加工機2による素材Wの切断加工中において、作業者によりパレットチェンジャ4側で待機している他方のパレットP2上に次に加工対象となる素材Wが載置されて、上述したクランプ6、位置決め凸部21によりパレットP2上の隅部22Aに位置決めされてからクランプ6により固定される(図3(b))。
そして、最初のパレットP1の素材Wに対するレーザ加工機2による切断加工が終了すると、加工終了後の加工テーブル3をパレットP1が搬出入位置Aに位置するように移動して停止する。その後、加工テーブル3の固定手段によるパレットP1の固定が解放されてパレットチェンジャ4の進退動機構により搬出入位置AのパレットP1はパレットチェンジャ4の上方のガイドレール上である待機位置Bまで搬出されて停止される。
その直後、上記昇降機構により上下のパレットP1、P2が所定量だけ上昇されてから(図3(c))、下段のガイドレール上の他方のパレットP2が進退動機構により搬出入位置Aである加工テーブル3上に押し出される。
【0015】
この後、搬出入位置Aの加工テーブル3上のパレットP2は、前述したように位置決め手段により位置決めされてから固定手段により加工テーブル3に固定される。このようにパレットP2が搬出入位置Aの加工テーブル3に固定されると、前述した最初のパレットP1上の素材Wに対する場合と同様に、予め記憶した加工プログラムに基づいてレーザ加工機2により加工テーブル3に支持されたパレットP2上の素材Wに対して所要の切断加工が施される(図3(d))。
他方、この間にパレットチェンジャ4の待機位置Bにおいては、先に加工済みの素材Wの製品および残材が作業者により排出された後に、空になった待機位置BのパレットP1に対して新たな素材Wが上述した要領で載置されてから位置決めされてクランプ6によって固定される。
【0016】
この間に、加工テーブル3に支持されたパレットP2の素材Wに対するレーザ加工機2による切断加工が終了して、加工テーブル3上におけるパレットP上の素材W(製品および残材)は、搬出入位置Aの復帰して停止する。
その後、パレットチェンジャ4の進退動機構により搬出入位置AのパレットP2は待機位置Bのパレットチェンジャ4の下段のガイドレール上まで搬出される(図3(e))。
以上のような動作を繰り返すようにして、この加工システム1において立てられた生産計画を順次こなしていくようにしている。
【0017】
ところで、上述したように搬出入位置Aの加工テーブル3上にパレットP1、P2を搬入してから該パレットP1(P2)上の素材Wに対してレーザ加工機2により切断加工を行い、所要の製品を切り出した後に(図3(b)参照)、次に加工を予定していた素材Wよりも優先して、別の製品を切り出すことが要求されることがある。尚、このような場合には被加工物として破材W’が利用される。
本実施例は、このような割り込みの要望があった場合において、作業性がよくなるようにパレットPを改良したものである。
【0018】
すなわち、図1に示すように、一方のパレットP1には、その枠状部材22におけるクランプ6の位置とは反対側となるX軸方向の長辺に複数のクランプ7を設けてあり、また、クランプ7を設けた枠状部材22の長辺と第1位置決め手段の位置決め凸部21が設けられた短辺とは反対側の短辺との隅部22Bには第2の位置決め凸部31を突設している。クランプ7の構成は、上記クランプ6と同じなので詳細な構成の説明は省略する。このように、上記第1位置決め手段に対して対角線上の対向位置となる枠状部材22の隅部22Bに第2の位置決め凸部31が配置されている。これらの各クランプ7が備える当接面と位置決め凸部31の当接面とによって、隅部22Bに第2の被加工物としての破材W’をパレットP1上に位置決めするための第2位置決め手段が構成されている。
【0019】
そして、次に予定していた素材Wよりも優先して破材W’に対して切断加工を行いたいという要望があった場合には、現在加工中であるパレットP1(P2)上の素材Wの加工が終了した後に、作業者は操作盤5aを介して制御手段5に所要事項を入力して、加工テーブル3を搬出入位置Aに復帰して停止させる。
ここで、搬出入位置Aに停止したパレットP1が第2の位置決め凸部31とクランプ7を備えているものである場合には、作業者は先ず該搬出入位置AのパレットP1から製品と残材を取り外し、その後に、作業者は破材W’を加工テーブル3上のパレットP1の支持部材23に載置してから隣合う辺の一方をクランプ7の図示しない当接面6Cに当接させるとともに、隣合う他方の辺を第2の位置決め凸部31に当接させる(図1参照)。それにより、パレットP1上に隅部22Bを基準に破材W’のX軸方向とY軸方向の位置決めが行われたことになり、その後、クランプ7により破材W’をパレットP1に把持して固定する。
一方、上記搬出入位置Aに停止したパレットP2が第2の位置決め凸部31とクランプ7を備えていないものである場合には、搬出入位置Aにおけるパレット2から製品と残材と取り出すことなく、パレットチェンジャ4によってパレットP1、P2の交換を行う。つまり、待機位置BにあるパレットP1に対しては次の素材を載置しないで空の状態にしておき、前述した搬出入位置AにあるパレットP2を先ずパレットチェンジャ4により待機位置Bまで後退させ、その後、空のパレットP1を待機位置Bから加工テーブル3上の搬出入位置Aに搬入する。それから、上述した要領で該パレットP1の隅部22Bの近くに破材W’を載置してから位置決め凸部31とクランプ7とにより破材W’のX軸方向とY軸方向の位置決めが行われる。その後、クランプ7により破材W’がパレットP1に固定される。
【0020】
このように、破材W’の優先加工の場合には、搬出入位置Aに第2位置決め手段を備えたパレットP1を位置させ、該パレットP1のクランプ7と位置決め凸部31とによって隅部22Bを基準としてパレットP1に破材W’を位置決めし、固定するようになっている。
前述したように、通常の素材WをパレットP上に固定する際には隅部22Aを基準にして位置決めしたが、隅部22Aとは対角線上の対向位置にある隅部22Bを基準にして位置決めする。次に操作盤5aを操作して制御手段5において認識されるレーザ加工機2のプログラム原点を現在の位置からX軸方向はパレットP1の第1の位置決め凸部21と第2の位置決め凸部31の各当接面間の距離だけ図1における左方に移動し、Y軸方向はクランプ6とクランプ7の各当接面間の距離だけ図1における下方に移動して、さらに、X軸とY軸をともに180°反転するように設定する。これにより、制御手段5により新たなプログラム原点が認識される。なお、このようなプログラム原点の位置の変更や軸の反転といった一連の処理を自動的に行うためのボタンを操作盤5aに設けても良い。
【0021】
このように破材W’に対して次に予定している素材Wよりも優先加工を行う場合には、破材W’をパレットP1の隅部22Bに位置決めしてクランプ7で固定した後に、作業者はレーザ加工機2において設定されるプログラム原点の座標系を変更するように操作盤5aを介して制御手段5に入力するようにしている。
すると、制御手段5は、新たなプログラム原点およびその座標系を認識した上で、予め記憶した加工プログラムにより破材W’に対してレーザ加工機2により所要の切断加工を施す。これにより、パレットP1上の隅部22Bに位置決めした破材W’から製品を切り出すことができる。
【0022】
そして、上述したようにして破材W’に対する切断加工が終了したら、制御手段5により加工テーブル3は搬出入位置Aに復帰して停止させて、加工が完了した製品と残材を排出する。制御手段5の加工基準点を隅部22Aに戻すことにより、待機位置Bで待機中のパレットP2に支持された素材Wの加工を行うことができるようになる。
【0023】
なお、上記実施例のパレットチェンジャ4においては、2枚のパレットPを載置して交互に搬出入位置Aへ出し入れする構成となっていたが、3枚以上のパレットPを載置し、かつ各パレットPを順次、搬出入位置Aへ出し入れするようなパレットチェンジャを採用しても良い。
また、上記実施例においては、2枚の内の一方のパレットP1のみに第2位置決め手段となるクランプ7と位置決め凸部31を設けていたが、両方のパレットPに第2位置決め手段を配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例を示す平面図。
【図2】図1に示したクランプ6の正面図。
【図3】図1に示したパレットチェンジャ4によってパレットPの搬出入作動を示す作動工程図。
【図4】本発明におけるクランプ6の別の実施例を示す正面図。
【符号の説明】
【0025】
1‥加工システム 2‥レーザ加工機
3‥加工テーブル 4‥パレットチェンジャ
5‥制御手段 6C‥当接面(第1位置決め手段)
7‥クランプ(第2位置決め手段) 21‥位置決め凸部(第1位置決め手段)
31‥位置決め凸部(第2位置決め手段)
W‥素材(被加工物) W’‥破材(第2の被加工物)
P(P1、P2)‥パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を支持するパレットを着脱可能に支持する加工テーブルをX軸方向に移動させるとともに上記被加工物に加工を施す加工ヘッドを上記X軸と直交するY軸方向に移動させて、上記加工テーブルに支持されたパレット上の被加工物に所要の加工を施すようにした加工機と、
少なくとも2枚のパレットを載置可能で、各パレットをY軸方向に移動させて上記加工テーブルとの間でパレットを交換するパレットチェンジャと、
上記加工機およびパレットチェンジャの作動を制御する制御手段とを備え、
さらに、上記各パレットは、加工テーブルに対してパレットチェンジャ側の隅部を基準として被加工物を位置決めする第1位置決め手段と、この第1位置決め手段により位置決めされた被加工物を固定する第1把持手段とを備え、上記制御手段は被加工物を加工するための加工プログラムに従って上記加工機の作動を制御して被加工物を加工するようにした被加工物の加工システムにおいて、
上記パレットの少なくとも1枚に、パレットチェンジャに対して加工テーブル側の隅部を基準として第2の被加工物を位置決めする第2位置決め手段を設けるとともに、該第2位置決め手段によって位置決めされた第2の被加工物を固定する第2把持手段を設けて、
上記制御手段は、上記第1位置決め手段により位置決めされた被加工物に対して上記加工機で加工を施す場合と、上記第2位置決め手段により位置決めされた第2の被加工物に対して上記加工機で加工を施す場合とに応じて、上記加工機におけるプログラム原点の位置を切換可能であることを特徴とする被加工物の加工システム。
【請求項2】
上記第1位置決め手段により位置決めされた被加工物を加工する際のプログラム原点と上記第2位置決め手段により位置決めされた第2の被加工物を加工する際のプログラム原点の位置をパレットの対角線上の隅部となるように設定したことを特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−58246(P2010−58246A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228646(P2008−228646)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】