説明

被包検出様式を用いた側方流動イムノアッセイ

【課題】被包金属粒子を特徴とする側方流動イムノアッセイ(LFI)の提供。
【解決手段】被包粒子は、検出様式としてSERSナノタグを用いてもよい。検出様式として被包粒子、特に被包SERSタグを用いると、視覚的読取りのために調製したLFIの感度が増加し、そして本発明にしたがって調製したLFIからのSERSスペクトル読取り値の分析を通じて、実質的により感度が高い定性的結果または定量的な結果を得る能力が導入される。また、検出様式としてSERSを用いると、LFIデバイスが多重化試験に用いられる能力も増進する。本発明の他の側面には、全血を試験するために特異的に設定されたLFIデバイス、検出および多重化アッセイの解釈のための読取り装置、ならびに読取り装置を実行するために用いるハードウェアおよびソフトウェア構成要素が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側方流動イムノアッセイ(LFI)を実行するためのシステムおよび方法、特に、検出様式としてSERSタグを用いる被包粒子を使用するLFIに関する。
【背景技術】
【0002】
側方流動イムノアッセイ(LFI)は、迅速でそして単純な定性的診断試験のためのよく知られた基盤である。LFIは1980年代後期に発表された。典型的なLFIには、硝酸セルロースまたは同様の物質から製造される薄い支持体または膜が含まれる。典型的には、支持体の1つの部分上のコンジュゲート化パッドに試料を適用すると、乾燥した試薬が再水和して、そして関心対象の抗原の検出に必要な免疫反応が開始する。代表的な基本的LFIは妊娠試験であり、数十万の個々の試験ストリップが毎年製造されている。試料をLFIコンジュゲート化パッドに適用した後、抗原に結合した試料および検出粒子は、毛細管作用を通じて、試験ストリップ支持体の支持体試験マーカー部分に運ばれる(wick up)。関心対象の抗原が存在するならば、試験マーカー箇所に置かれた抗体は、先に結合していた検出粒子を捕捉する。陽性試験の場合、結合していた検出粒子が試験マーカー箇所で可視になる。可視試験マーカーは、典型的には、着色されたライン、ドットまたはシンボルである。
【0003】
典型的なLFIデバイスは、多様な環境で使用するのに十分に単純であり、必要とする試料の調製は最小限であるかまったくなく、そして迅速な結果を生じる。しかし、典型的なLFIは比較的不正確であり、そして純粋に定性的な試験である。典型的な先行技術のLFIデバイスでは、高い感度、定性的分析または定量的結果を得るのは困難であるかまたは不可能である。
【0004】
伝統的に、多くのLFIデバイスは、検出様式として20〜40ナノメートルの範囲の直径を持つAuナノ粒子を利用している。LFIのコンジュゲート化パッドに粒子を置き、そして該パッドに該粒子を結合させる前に、適切な抗体をAu表面に直接吸着させる。試験ライン上のこれらのAuナノ粒子の捕捉によって、陽性試験を示してもよい。次いで、視覚的検出を用いて、試験ラインに結合したナノ粒子の高い光散乱性を観察してもよい。不運なことに、試験ラインに結合した粒子の視覚的検出は、血液、土または他の汚染物質によって不明瞭になりうる。
【0005】
より大きいAuナノ粒子を使用すると、サイズの増加に伴って、Auナノ粒子の散乱および吸収の両方が非線形方式で増加するため、LFI試験の感度が増加するであろう。受動的に吸着された抗体が抗原に効率的に結合する能力を、ナノ粒子自体の立体障害が制限するため、単に粒子サイズを増加させることに関連する感度代償がある。粒子可視性および抗体活性の最適な先行技術の組み合わせは、通常、約40nmの直径を有するAu粒子で生じる。Agなどの他の金属は、Agのより高い消光機能とともに感度を増加させうる。しかし、Agナノ粒子は、典型的には、Auほどよく抗体を受動的に吸着するようには働かない。
【0006】
LFI中の検出粒子の重大な特性は、コンジュゲートパッド上で乾燥状態から完全に放出される能力があることである。理想的には、この放出はいくぶん遅く、したがって、粒子がラインを超えて拡散する前に、抗原および結合した粒子が、続いて、捕捉ラインに結合することが可能になる。先行技術のAuナノ粒子は、この放出を最適にするように設計される界面化学の選択肢をまったく提供しない。さらに、アッセイを実行する支持体に対する粒子の非特異的吸着を最小限にするように、先行技術のAuナノ粒子の化学を調整することは不可能である。現在の実施は、いくぶん、アッセイに用いる緩衝液および支持体への、遮断剤および添加物の添加に限定される。
【0007】
典型的な先行技術LFIデバイスは、設計によって、単一の捕捉抗体に限定される。したがって、これらのデバイスは、単一種の検出に対する使用に限定される。限定された多重化能を持つLFI試験の例がある。典型的には、別個の試験を実行するよう選択された多数の抗体は、各々、別個の捕捉ラインと会合する。したがって、先行技術は、空間的多重化を解説する。使用する際、空間的に別個の捕捉ラインの視覚的観察によって、限定された様式で、単純な多重化定性的試験が可能になる。しかし、こうした空間的多重化形式は、試験が読取り可能になる前に、コンジュゲートパッドから最も遠くに配置された捕捉ラインと会合した検出様式が、他の捕捉ラインを経由して拡散することを必要とする。したがって、干渉の問題から感度の減少が生じるため、空間的多重化は問題がありうる。
【0008】
本発明は、上に論じる問題の1以上を克服することに対して向けられる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、被包金属粒子を特徴とする側方流動イムノアッセイを提供する。被包粒子は、検出様式としてSERSナノタグを用いてもよい。検出様式として被包粒子、特に被包SERSタグを用いると、視覚的読取りのために調製したLFIの感度が増加し、そして本発明にしたがって調製したLFIからのSERSスペクトル読取り値の分析を通じて、実質的により感度が高い定性的結果または定量的結果を得る能力が導入される。また、検出様式としてSERSを用いると、LFIデバイスが多重化試験に用いられる能力も増進する。本発明の他の側面には、全血を試験するために特に設定されたLFIデバイス、検出および多重化アッセイの解釈のための読取り装置、ならびに読取り装置を実行するために用いるハードウェアおよびソフトウェア構成要素が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明と一致するLFIを示し、多様な試料希釈での、商業的に入手可能な先行技術のLFIに比較した際の視覚的検出効率を示す。
【図2】図2は、多様な試料希釈に関する本発明と一致したLFIデバイスの試験ラインで収集した相対的SERSシグナルをグラフで示す。
【図3】図3は、RSVの陽性対照の希釈の関数としてのLFIキットから得たSERSシグナルをグラフで示す。
【図4】図4は、FluAの陽性対照の希釈の関数としてのLFIキットから得たSERSシグナルをグラフで示す。
【図5】図5は、FluBの陽性対照の希釈の関数としてのLFIキットから得たSERSシグナルをグラフで示す。
【図6】図6は、RSV抗原濃度の関数としての多重化コンジュゲートのSERSシグナルをグラフで示す。
【図7】図7は、インフルエンザA抗原濃度の関数としての多重化コンジュゲートのSERSシグナルをグラフで示す。
【図8】図8は、インフルエンザB抗原濃度の関数としての多重化コンジュゲートのSERSシグナルをグラフで示す。
【図9】図9は、多重化アッセイ較正中に得たスペクトルのコンピュータスクリーンキャプチャである。
【図10】図10は、代表的なスペクトルデータを示すコンピュータスクリーンキャプチャである。
【図11】図11は、FluBの代表的な検量線を示すコンピュータスクリーンキャプチャである。
【図12】図12は、FluAの代表的な検量線を示すコンピュータスクリーンキャプチャである。
【図13】図13は、RSVの代表的な検量線を示すコンピュータスクリーンキャプチャである。
【図14】図14は、多様なタグでのアッセイ実行のグラフである。
【図15】図15は、図式的スキャン図である。
【図16】図16は、内部較正を特徴とするアッセイのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、側方流動イムノアッセイデバイス、試験法および関連する装置を提供する。本LFIは、検出様式として、先行するLFIデバイスの金属ナノ粒子の代わりに被包粒子を使用することを特徴とする。本発明の1つの態様において、被包検出粒子は、米国特許第6,514,767号、表題「Surface Enhanced Spectroscopy−Active Composite Nanoparticles」に記載されるようなSERSタグであり、この特許は、その全体が本明細書に援用される。
【0012】
被包粒子は、米国特許第6,514,767号に記載されるように、石英ガラスに被包されていてもよい。限定されるわけではないが、多様な種類のポリマーを含む他の物質もまた、本発明に一致した被包物質として使用可能である。有効なLFIデバイス中の粒子の1つの重大な特性は、未知の液体試料の適用に際して、コンジュゲートパッドに結合した乾燥状態から完全に放出される能力である。シリカに被包されたか、ポリマーに被包されたか、または他のものに被包された検出粒子を使用すると、乾燥状態からの容易な放出が促進される。被包粒子の流動特性が、単純な視覚的検出のために設計されたLFIデバイスにおける、より鋭い読取りラインの発展に寄与しうる。以下の実施例に記載するように、被包粒子流動特性が増進すると、視覚的に読み取られるLFIデバイスの感度が少なくとも7倍増加しうる。
【0013】
被包粒子の使用を特徴とする別のアッセイ形式は、コンジュゲートパッドに乾燥状態で結合した粒子の使用を伴わずに製造可能である。特に、本明細書に記載するような粒子を、アッセイ希釈剤に取り込んでもよい。以下の実施例に詳細に記載するこの態様において、分析物および検出粒子を試験支持体から離れて混合し、そして続いて支持体に適用してもよい。したがって、検出粒子と分析物のインキュベーション時間を制御して、最も有効な性能を達成しうる。さらに、アッセイに用いる検出タグの量を正確に制御することも可能である。これは、コンジュゲート化パッド上に限定された空間しかないか、または多重化形式で、多数の別個の検出タグを用いる場合に、特に重要でありうる。外部から適用される検出タグの別の形式は、コンジュゲート化パッドの必要性を排除し、そしてしたがって、不完全なまたは不均一な検出粒子沈着または放出のように、パッドに関連する問題に対処しうる。
【0014】
被包粒子を用いたLFIデバイスを調製することによって達成される分散および流動特性の改善に加えて、粒子の流動特性をさらに増進し、そして制御するように、被包粒子の表面特性を調整することが可能である。例えば、デキストランまたはポリエチレングリコール(PEG)誘導体などの低い非特異的結合特性を有すると認識されているポリマーで粒子をコーティングして、外因性タンパク質またはニトロセルロース支持体との粒子相互作用を減少させてもよい。また、粒子をより親水性または疎水性にするように選択されたポリマーでの被包によって、粒子の流動特性を改変してもよい。こうした変化は、粒子流動速度の有意な変化を引き起こすと期待され、そしてこれを用いて、アッセイを特定の流動速度の必要条件に合わせてもよい。
【0015】
粒子流動速度に影響を及ぼす別のありうる方法は、粒子サイズまたは流体力学半径を有意に改変するコーティングまたは被包を生成することである。例えば、より大きい粒子、または長鎖ポリマー被包を伴うものは、よりコンパクトな粒子よりも、膜との相互作用がより多く、そして流動速度がより遅いこともありうる。コーティングの性質もまた、コンジュゲートパッドとの相互作用の量およびアッセイ希釈剤中の粒子の可溶性の両方を規定することによって、コンジュゲートパッドからの粒子の放出速度に影響を及ぼすであろう。例えば、粒子可溶性を低下させることによって、コンジュゲートパッドからの粒子の放出を遅らせ、こうして抗体コーティング粒子での検出前に、抗原が試験ラインで反応するためにより多くの時間を与えることが望ましい可能性もある。さらに、粒子表面の荷電は、アッセイ性能において、非常に重要な要因でありうる。被包物質選択を通じて、多様な粒子の等電点を修飾するかまたは決定することによって;異なるpHの緩衝液中の粒子流動の振舞いに影響を及ぼすことも可能である。これは、コンジュゲートと通常適合しないが、抗体−抗原結合、または試料マトリックス内の複合体からの抗原の放出に利点を有する緩衝液中で、粒子を使用することを可能にする可能性もある。同様に、界面活性剤を用いて、粒子の表面特性を調整して、こうして流動特性に影響を及ぼすことも可能である。
【0016】
粒子表面の調整をコンジュゲート化と平行して行ってもよいことに注目することが重要であり、例えば、粒子表面の半分をPEGで、そして半分を抗体でコーティングしてもよい。あるいは、抗体のコンジュゲート化前に、表面調整を行ってもよい。多くの望ましい効果を同時に達成してもよく、例えば、アミン末端PEGで粒子をコーティングして、等電点を上昇させ、非特異的結合を減少させ、そして可溶性を増加させてもよい。
【0017】
粒子を被包するかまたはコーティングして、上述の効果のいくつかまたはすべてを達成するのに、多くの物質が適している可能性もある。適切な物質には、限定されるわけではないが、以下が含まれる:石英ガラス、タンパク質、DNA、RNA、合成ポリアミノ酸(ポリリジン、ポリグルタミン酸)、ポリエチレングリコール、ブロック・コポリマー・デンドリマー、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリレート、およびデキストランなどの他の天然ポリマー、天然炭水化物に基づく他のポリマー、ならびに界面活性剤が含まれる。他の適切なコーティングは、米国特許出願第11/622,915号、表題「POLYMER COATED SERS NANOTAG」、2007年1月12日出願に論じられ、この出願は、その全体が本明細書に援用される。被包検出粒子を使用すると、結合部分として、慣用的なLFIの抗体および抗原ではなく、オリゴヌクレオチドの使用が促進されうる。
【0018】
非被包検出粒子を特徴とする先行技術のLFIデバイスは、反復可能な流動特性、そしてしたがって反復可能でそして正確な試験結果を確実にする、非常に制御された支持体の性質を必要とする。厳密な支持体製造基準を維持しなければならず、これが先行技術のデバイスのコストを有意に増加させる。上述のように、増進した流動特性を持つ被包検出粒子を使用すると、選択したレベルの試験性能を達成するのに必要な支持体性質基準を緩めることも可能である。さらに、以下に詳細に記載するような較正および制御技術を用いると、容易に利用可能な支持体に特有の多様性が相殺されうる。
【0019】
上に論じるように、先行技術のLFIデバイスは、一般的に、検出様式として、20〜40nmの範囲の直径を持つAuナノ粒子を利用する。LFIデバイスの調製中に、抗体をAu表面に直接吸着させる。受動的に吸着された抗体が未知の試料に存在する抗原に効率的に結合する能力を、Auナノ粒子の立体障害が制限するため、粒子サイズ増加に関連する上限がある。しかし、より大きい粒子を使用すると、サイズの増加に伴って、Auナノ粒子の光散乱能、そしてしたがって可視性が増加するため、LFIの感度が増加するであろう。
【0020】
SERSナノタグ、特にまたは一般的に、任意の被包粒子は、抗体活性の喪失を伴わずに、任意の現実的なサイズの金属コアを使用してもよい。これは、シリカ、ポリマーまたは他のシェルが、立体障害を最小限にする抗体の共有結合を可能にするためである。共有結合した抗体を含む被包粒子はまた、より多くの表面を抗原に利用可能にし、そして粒子あたり、より多くの抗体が付着することを可能にする、長い係留、分枝ポリマー付着、あるいはヒドロゲルまたはPEGスペーサーなどの類似の付着構造も特徴としてもよい。抗体がスペーサーと結合するならば、抗原−抗体結合に対するいかなる表面の影響も最小限になるであろう。さらに、シェルは、ナノ粒子の特性を操作する、選択した修飾のための理想的な支持体を提供する。したがって、より大きい被包検出粒子を用いることによって、視覚的に検出されるLFIの感度を増加させてもよい。
【0021】
被包はまた、検出粒子としての、非伝統的な形状の使用も可能にする。本明細書において、非伝統的な形状には、球体以外のいかなる形状も含まれる。非伝統的な形状には、限定されるわけではないが、プリズム、立方体、ピラミッド、ジャック、長方形の箱、中空シェル、あるいは平面または曲面を持つ、一般的に不規則な形状が含まれる。非伝統的な形状は、より大きい粒子に関して上述したのと同じ理由で、視覚的に検出するLFIデバイスで使用するのに好適でありうる。非伝統的な形状は、単純な球体より光をよく反射し、そしてしたがって、視覚的に検出するLFIデバイスの感度を増進させる。先行技術の金属ナノ粒子は、非被包非球状粒子の分散および流動特性が、試験の機能をひどく損なうであろうため、非伝統的な形状のLFIデバイスで使用するには適していない。被包粒子の単分散および流動特性が増進していることによって、非伝統的な形状の使用が可能になる。
【0022】
被包はまた、LFIデバイスの検出様式として、Au以外の金属の使用も可能にする。Auは、好ましい抗体吸着特性を持つため、先行技術において好ましい。これらの特性は、Agなどの他の金属には必ずしも共有されず、そうでなければ、AgはAuより反射性であるため、LFIデバイスの検出粒子に、より適しているであろう。シリカ、ポリマーまたは他の被包物質シェルは、被包粒子に対する抗体の共有結合を可能にするため、コア用に選択される金属は、より重要でなくなる。したがって、Agなどの、より明るく、より反射性の金属を被包収集粒子のコアとして用いることも可能である。
【0023】
任意の種類の被包粒子で、本発明を実行してもよい。被包粒子が、適切な波長の光での照合に際して、任意の種類の検出可能なスペクトルを生じる場合、以下に論じる特定の利点が認識されうる。本発明の実施に適した被包粒子の1つの種類は、米国特許第6,514,767号に記載される粒子などのSERS活性ナノ粒子である。本発明の実施に適した粒子の他の種類には、限定されるわけではないが、Towards the DRED of Resin−Suported Combinatorial Libraries: A Non−Invasive Methodology Based on Bead Self−Encoding and Multispectral Imaging Fenniri, H.; Hedderich, H. G.; Haber, K. S.; Achkar, J; Taylor, B.; Ben−Amotz, D. Agnew. Chem. Int. Ed.; 2000; 39(24); 4483−4485;およびBarcoded Resins: A New Concept for Polymer−Supported Combinatorial Library Self−Deconvolution Fenniri, H.; Ding, L.; Ribbe, A. E.; Zyrianov, Y. J. Am. Chem. Soc; (Communication); 2001; 123(33); 8151−8152に記載されるものなどの、ラマン活性粒子、ラマンビーズが含まれる。他の適切な粒子には、ラマン活性を有する粒子状物質に加えて、既知の条件下で検出可能な任意の他の種類の分光特性を示す、ビーズ、粒子または物質が含まれる。
【0024】
以下に詳細に論じるように、SERS活性ナノ粒子を、先行技術のLFIデバイスの単純なAuナノ粒子の代わりに用いると、実質的に改善された視覚的検出結果が観察された。さらに、適切な検出装置によって、SERS検出粒子と関連するレポーター分子のSERSスペクトルを読み取って、LFI試験の感度、正確さおよび柔軟性を非常に増進させてもよい。さらに、検出様式としてSERSまたは他の分光活性粒子を用いると、非常に多重化された試験の調製および分析が可能である。
【0025】
SERSは、単一のAuまたはAgナノ粒子の表面に付着した分子の検出を可能にする。ラマン活性レポーター分子(単数または複数)に会合しているかまたは結合しているラマン増進金属は、SERS活性ナノ粒子と称される。こうしたSERS活性ナノ粒子は、光学タグとしての有用性を有する。しかし、非被包金属から作製されたSERS活性ナノ粒子は、LFIなどのアッセイで用いた際、厄介な実用上の問題を提示する。金属ナノ粒子は、水溶液中での凝集に非常に高感度であり;ひとたび凝集すると、再分散させることは不可能である。さらに、いくつかのラマン活性分子の化学的組成は、金属ナノ粒子に他の分子(タンパク質など)を付着させるのに用いる化学反応と適合しない。これは、ラマン活性分子の選択、付着化学反応、および金属ナノ粒子に付着するはずの他の分子を制限する。
【0026】
SERS活性複合ナノ粒子(SACN)は、表面に1より多いラマン活性分子が付着しているかまたは会合している金属ナノ粒子で構成される。次いで、ラマン増進金属および分析物のこの複合体(SERS活性金属ナノ粒子と称される)を、被包物質によってコーティングするかまたは被包する。被包物質は、ガラス物質であってもよく、そしてその結果、SACNは、ガラスでコーティングされた分析物を装填したナノ粒子(GAN)と称される。SERS活性金属ナノ粒子コア上に適切な被包物質のシェルを成長させるかまたは別の方式で配置することによって、SACNを提供してもよい。金属ナノ粒子コアは任意のサイズのAuまたはAg球体、あるいは別の形状であってもよい。多数の金属粒子がコアに含まれてもよい。さらに、1より多い個々の粒子の凝集体を用いて、本発明を実施してもよい。
【0027】
本発明の被包検出様式として、SERS活性ナノ粒子を使用すると、内在性の多重化が可能になる。多数の捕捉抗体の混合物を有する単一の捕捉ラインを持つ、本発明に一致したLFIデバイスを調製してもよい。さらに、多数の別個の検出抗体にコンジュゲート化されたSERSナノタグのいくつかのサブセットを用いて、コンジュゲートパッドを調製してもよい。各種類のSERS検出粒子は、それ自体の種類のまたはSERS活性のレポーター分子を有するであろう。以下により詳細に記載するように、試験を実行した後、単一の捕捉ラインまたはポイントに結合した多様なSERSナノタグから、多数のスペクトルを得てもよい。
【0028】
検出様式として、多重化SERSナノタグ、別の種類のラマン活性粒子、ラマン活性分子、または照合に際して検出可能なスペクトルを生じうる任意の他の種類の粒子を特徴とするLFIデバイスもまた、較正された結果強度を報告する能力を有する。較正された試験結果強度によって、LFIが単なる定性的指標以上のものとして機能することが可能になる。較正された強度を用いると、関心対象の抗原の定量的測定値が得られうる。例えば、SERSナノタグが検出様式として用いられる態様において、多重化形式の多様な種類のSERSナノタグの1以上を陽性対照として照合して、必要な最小限の粒子流動量または速度が達成されていることを検証し、一次試験粒子に関して意味がある結果であることを確実にしてもよい。
【0029】
内部標準の形式を用いることによって、較正を達成してもよい。SERSナノタグの1つのサブセット(SERSスペクトル「A」を持つ)を、関心対象の抗原(「未知」)に対する検出抗体にコンジュゲート化する。SERSナノタグの別のサブセット(SERSスペクトル「B」を持つ)を、既知の濃度で試料緩衝液内にドーピングした抗原に対する検出抗体にコンジュゲート化してもよい。両方の抗原に対する捕捉抗体を混合し、そして側方流動支持体上に沈着させ、そして両方のサブセットのコンジュゲート化粒子を、コンジュゲートパッド上に沈着させる。試料を流動させると、2つのSERSスペクトル(「A/B」)の比を用いて、未知の濃度を決定することも可能である。同様の様式で、捕捉抗体が、サブセット「B」にコンジュゲート化された種に直接結合するならば、「既知の」抗原を完全に省略してもよい。
【0030】
LFI結果を読み取るように特に設定されたSERS分析装置の自動機能として、上述の較正および多重化分析を行ってもよい。専用読取り装置には、LFIカードを正確に受け取り、そして配置するように設定された容器が含まれるであろう。専用読取り装置にはまた、LFI支持体上の特定の領域に結合したSERSタグと会合したレポーター分子のSERSスペクトルを励起させるように配置されたレーザーも含まれるであろう。したがって、視覚的に検出されるLFIデバイスの伝統的な捕捉ラインを、捕捉ポイントまたは捕捉ドットと交換してもよく、これは、過剰な収集様式または抗体の使用を伴わずに、適切に正確なLFIデバイスの調製を可能にして、より低い全体の単位コストを生じるであろう。本発明の他の態様において、SERSナノタグ以外の被包検出粒子を用いて、較正されたかまたは定量化された結果を報告する能力を達成してもよい。適切な粒子には、限定されるわけではないが、ラマンビーズ、および適切なデバイスでの照合に際して検出可能なスペクトル特性を有する粒子または分子の他の種類が含まれる。
【0031】
適切なデバイスによって検出可能なスペクトル特性を有する検出様式を用いた際、新しい種類のLFIが可能であることが、当業者には容易に明らかであろう。例えば、SERSナノタグを検出様式として用いる態様において、2工程または別の工程の検出プロセスのいずれかを提供するLFIデバイスを調製してもよい。特に、上述のように、視覚的に、またはSERSスペクトル読取り装置を用いて、あるいはその両方で、デバイスを検出してもよい。使用する際、視覚的検査に際して陽性結果を提供するLFIデバイスを、SERSスペクトル読取り装置でさらに読み取って、予備的な定量的データを得るか、または陽性視覚的結果を確認してもよい。ラマンビーズなどのSERSナノタグ以外の粒子を用いて、類似の結果を得てもよい。
【0032】
検出様式としてSERSナノタグを使用すると、また、分析用に全血を受け入れるLFIデバイスを調製することも可能になる。血球によって与えられる強い着色が、先行技術のAuナノ粒子から反射されうるすべての光に干渉するかまたはこうした光を遮断することによって、試験を視覚的に読み取るいかなる試みも不明瞭にするため、先行技術のLFIデバイスは、典型的には全血分析には不向きである。対照的に、SERSナノタグは、スペクトルの近赤外部分からの光で励起可能であり、この波長では、ヘモグロビンからの干渉は最小限になる。全血に適したLFIデバイスの1つの態様において、赤色の透明カバーを支持体上に置いて、試験支持体全体に拡散される血液の負の視覚的影響を最小限にしてもよい。全血または他の液体で使用するのに適した別の態様において、近IR波長範囲の通過帯域を持つフィルターを用いて、SERSナノタグの照合用の近IR光の通過を可能にし、そのうえ同時に試験支持体の潜在的に望ましくない視覚的観察を防止してもよい。
【0033】
実施例
例示目的のためのみに以下の実施例を提供し、そしてこの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図しない。以下に記載する実施例は、抗原および抗体結合事象を特徴とするが、結合部分として、慣用的なLFIの抗体および抗原でなく、オリゴヌクレオチドを用いて、匹敵するLFIシステムを調製してもよい。
【0034】
実施例1
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)用の商業的側方流動イムノアッセイ(LFI)キットを得て、そしてSERSナノタグを用いてRSV抗原の存在を検出するように、該キットを修飾した。さらに、商業的製品の感度を決定するため、いくつかのキットを入手したままで用いた。デバイスとともにSERSナノタグを用いるため、使用前にキット内のコンジュゲートパッドを取り除いた。典型的な実験では、陽性対照を、キット由来の試料希釈剤で希釈し(総体積160μl)、そしてRSV検出抗体にコンジュゲート化されているSERSナノタグ(OD〜5の15μl)と混合した。約2分後、この混合物をキットに添加した。視覚的読取りおよびラマンスペクトルの収集前に、試験を室温で約15分間実行した。
【0035】
視覚的検出のみによる、商業的試験対SERSナノタグ修飾試験の感度を図1に示す。SERSナノタグを用いた視覚的検出限界は、商業的キットと同程度に優れているかまたはより優れている:27倍希釈した陽性試料102は、可視ラインを生じ、一方、商業的形式では、9倍希釈試料104で、ピンクがかった赤色ラインが薄れつつある。
【0036】
視覚的検出後、SERS修飾デバイスのラマンスペクトルを収集した。商業的に入手可能なレーザーおよび分光計を用いた。試料部位でのレーザー出力はおよそ200mWであり、100μmのスポットサイズに焦点を当てた。獲得は、4回の1秒間積分の平均であった。次いで、積分ソフトウェアを用いて、全体のシグナルへのSERSナノタグの寄与を分析した(全体のシグナルにはまた、ニトロセルロース膜由来のバックグラウンドも含まれる)。
【0037】
図2は、連続希釈陽性試料とともにインキュベーションした一連のSERS修飾キットの試験ラインで収集した相対的ラマンシグナルのグラフ106を示す。およそ400倍希釈した陽性に対応する検出限界(LOD)を決定した。ブランクを用いて実行した8つの異なるカード由来の8つの位置上で、バックグラウンド測定値を得た(LODは、平均バックグラウンドに3標準偏差を加えたものとして計算された)。3つの複製カード(試験ラインで読取り)上で決定したアッセイの正確さは、12%より優れていた。
【0038】
データは、非特異的結合が最小限であり、そして抗原の存在下でコンジュゲートの捕捉に成功していることを示し、SERSナノタグに基づく検出限界は、コロイドAuの視覚的検出を用いた商業的製品より約40〜50倍増加する。
【0039】
実施例2 単一(singleplex)実験:
RSV、インフルエンザAおよびインフルエンザBの多重化LFI試験の開発に向けた、予備的工程として、各抗原に関する一連の単一試験を開発した。各試験のため、抗体対を購入した。選択した「フレーバー」のSERSナノタグに各抗体をコンジュゲート化し、そして乾燥コンジュゲートパッドでなく、液体コンジュゲートとして、LFIストリップ上で試験して、ニトロセルロースストリップ上の捕捉抗体およびSERSナノタグにコンジュゲート化された検出抗体の最適な組み合わせを決定した。最適の対が見出されたら、適切なSERSナノタグをコンジュゲートパッド上で乾燥させ、そして完全な試験に組み立てた。
【0040】
RSV、インフルエンザAおよびインフルエンザBに関して得た標準を用いて、これらの試験を実行した。RSVに関しては、希釈なしで、そして商業的LFI流動緩衝液を用いた多様な希釈で、陽性対照(未知の濃度)を流動させた。インフルエンザAおよびB抗原は既知の濃度であり、そしてこれらもまた、試験のため、流動緩衝液中で希釈した。カートリッジをXYZステージ上に載せ、そして試料の位置を手動で調整して、各カートリッジに関して最適なシグナルを得た。1秒間の積分時間、商業的に入手可能なラマン分光計を用いて、スペクトルを獲得した。積分ソフトウェアを用いて、スペクトルからSERSシグナルの量を抽出した。それぞれの各試験で用いたニトロセルロース(バックグラウンド)またはSERSナノタグの単一のフレーバーの存在に関してのみ試料を分析した。これらの感度試験の結果を図3のグラフ108(RSV)、図4のグラフ110(FluA)、図5のグラフ112(FluB)に示す。
【0041】
3つの単一試験各々は、抗原濃度が増加するにつれて、シグナルのかなり線形の増加を示し、そして重要なことに、各々は、抗原なしでは非常に低いシグナルを有する。さらに、すべての試験は、抗原の最高の希釈では視覚的に陽性であり、そしてブランク(流動緩衝液のみ)では視覚的に陰性であった。比較すると、すべての商業的試験は、ブランクおよび抗原の最高の希釈で陰性であった。これは、SERSナノタグが、視覚的読取りを用いた場合、および専用ラマン読取り装置を用いた場合の両方で、より高感度であることを示す。実験読取り時間がわずか1秒であり、そしてシグナル平均がないこともまた、強調する価値がある。試験ライン全域で、スキャニングレーザーで採取したシグナルを平均し(読取り装置ノイズを最小限にするため)、そしてより長い積分時間を用いることによって、より高感度な結果が期待されうる。
【0042】
実施例3 多重化実験:
単一試験に関して適切な条件がひとたび決定されたならば、多重化LFIでの最初の試みは、本質的には、1つの試験になるようなすべての部分の組み合わせであった。三重化は、単一試験に関して用いたのと同じd8−DPy−RSVコンジュゲートを用いるが、FluA(Dpy)およびFluB(BPE)に関して、新規コンジュゲートを作製しなければならなかった。コンジュゲートパッド内に沈着させるため、すべてのコンジュゲートを混合した。同様に、3つの捕捉抗体すべてを縞状にして、ニトロセルロース・カード上の単一のラインにした。ストリップを組み立ててカートリッジにした後、類似の濃度範囲を用いて、各抗原を試験した。予備的試験のため、一度に1つの抗原のみを用いた。しかし、バックグラウンド・ニトロセルロースおよびタグの3つのフレーバーの存在に対して、データを分析した。また、検出/照合装置を専用カートリッジホルダーで修飾した。こうして、試料をホルダー内に挿入し、そしていかなる操作も伴わずにスペクトルを獲得して、試験ラインがレーザースポットによって探査されることを確実にした。各抗原濃度に関して、3つのタグすべての量に関するデータを図6のグラフ114(RSV)、図7のグラフ116(FluA)および図8のグラフ118(FluB)にプロットする。すべての試料由来のバックグラウンドシグナルは非常に低く、特異的に結合したタグの捕捉によって、流動が有意には邪魔されないことが示される。縦軸のスケールが図6〜8に関して同じ大きさのものであることに注目されたい。
【0043】
実施例4 多重化アッセイ較正実験:
3つの分析物(FluA、FluB、およびRSV)の各々に関して、陽性対照の連続希釈を調製し、そして多重化LFIキット上で流動させて、検量線を生成した。較正データおよび検量線を図9〜13に示す。試料を試験キットに添加した15分後に、すべてのデータポイントを獲得した。次いで、照合ソフトウェアと組み合わせて標準を用いて、コンジュゲートの各種類由来の相対的SERSシグナルとデータを適合させた。関心対象の種のみをプロットし、そして線形または等温モデルのいずれかを用いて、適切な曲線をデータに適合させた。
【0044】
3つの分析物すべてが存在する試料を調製した。LFIアッセイ形式で使用するために最適化されたユーザー・インターフェースを有する照合ソフトウェアを用いて、この試料を流動させた。試料を適用した3分後、試験物質を保持する試験カートリッジを装置内に挿入する。これによって、溶液がニトロセルロースストリップ内に拡散し始めるのに適切な時間が可能になった。読取りのためにカートリッジを垂直に挿入し、これによって液体が支持体全体にこぼれて試験を無効にする可能性もあるため、試験形式において、拡散が起こるのを確実にすることは重要であった。次いで、試料の添加から15分の時点まで、毎分、アッセイを監視した。分析物濃度の決定には、最終データポイントのみを用いた。図9のスクリーンキャプチャ120は、3回の1秒間積分の平均に基づく、各時点での獲得スペクトルを示し、終点を太く描く。図10のスクリーンキャプチャ122は、試験データを例示し、該データは、各時点での相対レベルならびに計算した検量線に基づく最終濃度の両方を示す。図11のスクリーンキャプチャ124は、FluBの検量線および曲線上の終点の位置を示す。図12のスクリーンキャプチャ126は、FluAの検量線および曲線上の終点の位置を示す。図13のスクリーンキャプチャ128は、RSVの検量線および曲線上の終点の位置を示す。
【0045】
実施例5
上述のように、被包検出粒子は、伝統的に用いられる40nm金コンジュゲートに勝る、LFI適用のための感度の特有の利点を有する。この感度の多くは、抗体が、被包物質シェルに共有結合可能であるため、抗体活性を失うことなく、より大きい金(より容易に見える)を用いる能力から来る。用いる検出粒子以外は同一である、FluAに関する3つの試験を開発することによって、この概念を試験した。第一の試料は、受動的に吸着された抗体を伴う標準的な40nm Auゾルを用いた。他の2つの試料は、上述のようなシリカ被包SERSタグを用い、一方の試料は50nmのAuコアを有する粒子を有し、そしてもう一方は、90nmのAuコアを有する粒子を用いた。インフルエンザA標準を購入し、そして各デバイスの感度を試験するのに用いた。視覚的照合によってデバイスを読み取り、そしてSERSタグを含むものをまた、スキャニング・ラマン読取り装置を用いても読み取った。結果を図14のグラフ130に示す。
【0046】
40nmの金コンジュゲートで調製した試験は適度に高感度であり、そして商業的に入手可能な試験から得られる結果に匹敵した。しかし、50nmコアSERSタグは、約1.3倍、より高感度な検出限界を有し、そして90nmコア粒子は、2倍高感度であった。スキャニング・ラマン読取り装置を用いると、40nmコンジュゲートを利用する通常の読取りデバイスより、50nmコア粒子は4倍、より高感度であり、そして90nm Auコア粒子は21倍、より高感度であった。
【0047】
粒子のコアサイズは、相応の感度ブーストの一部に関与するが、スキャニング・ラマン読取り装置の使用もまた影響が大きかった。側方流動デバイスに伴う不一致のため、各デバイスは、わずかに異なる粒子放出および流動特性を有する。スキャニング・ラマン読取り装置は、試験ラインの領域および陽性結果に向かって寄与しないはずの隣接領域の両方を含有するデバイスの領域をマッピングすることを可能にすることによって、補助することが見出された。したがって、バックグラウンド減法技術を用いて、デバイスを分析した。最も強い列(粒子の流動に対して垂直)をシグナルと仮定し、そして最も強くない列を、バックグラウンドと仮定した。この特定の例において、図15のスキャン図132に図式的に示すように、130μm間隔で間隔を空けた11列(各5点)からなるスキャンを使用した。他のスキャンパターンもまた利用してもよい。
【0048】
実施例6
内部較正を伴う被包粒子LFIアッセイを図16に示す。3つの選択した種類のコンジュゲートを含有する、側方流動デバイスを製造した。FluAおよびRSVモノクローナル抗体コンジュゲートに、正常ウサギIgGでコーティングしたSERSタグコンジュゲートを補充した。FluAおよびRSV捕捉抗体、ならびに抗ウサギIgG抗体の組み合わせを用いて、ニトロセルロース膜上に試験ラインを縞状に配置した。したがって、いかなるFluAまたはRSV抗原も存在しなくても、ウサギIgG粒子は試験ラインで捕捉されるであろう。抗原の存在下で、ウサギIgGコンジュゲートおよびFluAおよび/またはRSVコンジュゲートの両方もまた、試験ラインに結合するであろう。この方式で、較正コンジュガント(conjugant);(ウサギIgGコンジュゲート)は、すべての側方流動イムノアッセイに特有の流動およびコンジュゲート放出における変動を明らかにするのを補助する。1つのありうる試験形式は、ラインよりもはるかにより小さいレーザースポットを含む、試験ラインの単回の読取りを利用するであろう。したがって、試験ライン内の、または製造許容誤差によって導入されるわずかな変動は、不正確さにつながりうる。内部較正を用いて、いかなるLFI試験にも特有の不正確さを相殺してもよい。あるいは、正確さを増加させるため、平均読取りとともに、全ラインのレーザースキャンを用いてもよい。
【0049】
SERSタグの多重化使用が適切であるため、スペクトルを容易に分析して、デバイス内の任意の数の異なる粒子の量を決定してもよい。図16および付随する表は、較正物質の量に関して基準化せずに、デバイスを分析する場合、所定の希釈に関するCVが最大30%であり得ることを示す。しかし、同じデバイスを較正物質に関して基準化すると、デバイスは、20%未満のCVを有する傾向がある。
【0050】
試験に関する対照として機能するように、内部較正を拡張してもよい。大部分のLFIは2つのラインを用い、このうち一方は、粒子が適切に流動したことを示すシグナルを常に発展させるように意図される。装置は、較正物質由来のシグナルから、抗原の存在によるシグナルを切り離すため、較正物質を単に検出することが、試験が適切に実行されそして読み取られたことを確証するように機能しうる。
【0051】
いくつかの態様に関連して、本発明を特に示しそして記載するが、当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示する多様な態様に対して、形式および詳細を変化させてもよく、そして本明細書に開示する多様な態様は、請求項の範囲に対する制限として働くよう意図されないことが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側方流動イムノアッセイ(LFI)を実行する方法であって:
支持体を提供し;
検出抗体にコンジュゲート化された被包検出粒子を提供し;
支持体の試験部分上に捕捉抗体を提供し、ここで検出抗体および捕捉抗体の両方が関心対象の抗原に対する結合アフィニティーを有し;
検出抗体を用いて、関心対象の抗原に被包粒子を結合させ;
支持体を通じて、液体試料、および抗原に結合した被包粒子を、支持体の試験部分に拡散させ;
捕捉抗体を用いて、支持体の試験部分で、被包粒子および抗原を捕捉し;そして
支持体の試験部分で、被包粒子を観察する
工程を含む方法であって、
前記被包粒子は、ガラスに被包された金属ナノ粒子コアを含むが、前記金属コア表面に1以上のラマン活性分子が付着または会合していないことを特徴とする方法。
【請求項2】
コンジュゲート化パッド上で結合工程が起こる、請求項1の方法。
【請求項3】
支持体を通じて、液体試料および被包粒子を拡散させる前に、支持体から離れて、結合工程が起こる、請求項1の方法。
【請求項4】
液体試料および被包粒子が支持体を通じて拡散する間に、結合工程が起こる、請求項1の方法。
【請求項5】
被包検出粒子が、シリカ、ガラス、タンパク質、DNA、RNA、合成ポリアミノ酸、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリエチレングリコール、ブロック・コポリマー・デンドリマー、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリレート、他の天然ポリマー、デキストラン、天然炭水化物に基づく他のポリマーおよび界面活性剤からなる群より選択される物質で被包されている、請求項1の方法。
【請求項6】
被包検出粒子が金属コアを有する、請求項1の方法。
【請求項7】
被包検出粒子が複数の金属コアを有する、請求項1の方法。
【請求項8】
被包検出粒子が、複数の個々の被包粒子の凝集体である、請求項7の方法。
【請求項9】
被包検出粒子がAgコアを有する、請求項1の方法。
【請求項10】
被包検出粒子が実質的に球体ではない形状を有する、請求項1の方法。
【請求項11】
被包検出粒子が、プリズム、ピラミッド、立方体、箱、ジャック、中空シェルおよび不規則形状からなる群より選択される形状を有する、請求項10の方法。
【請求項12】
被包検出粒子が、選択した波長の光での照射に際して、検出可能なスペクトルを有する、請求項1の方法。
【請求項13】
観察工程が:
選択した波長の光を、試験部分に結合した検出粒子に照射し;そして
検出粒子のスペクトルを検出する
工程を含む、請求項12の方法。
【請求項14】
コンジュゲート化部分および試験部分を有する支持体;
コンジュゲート化部分と機能可能であるように会合した、検出抗体にコンジュゲート化された被包検出粒子;ならびに
試験部分と機能可能であるように会合した捕捉抗体
を含む側方流動イムノアッセイ(LFI)デバイス。
【請求項15】
支持体と会合した赤色フィルターおよび近赤外フィルターの1つをさらに含む、請求項14のLFIデバイス。
【請求項16】
被包検出粒子が、シリカ、ガラス、タンパク質、DNA、RNA、合成ポリアミノ酸、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリエチレングリコール、ブロック・コポリマー・デンドリマー、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリレート、他の天然ポリマー、デキストラン、天然炭水化物に基づく他のポリマーおよび界面活性剤からなる群より選択される物質で被包されている、請求項14のLFIデバイス。
【請求項17】
被包検出粒子が金属コアを有する、請求項14のLFIデバイス。
【請求項18】
被包検出粒子がAgコアを有する、請求項14のLFIデバイス。
【請求項19】
被包検出粒子が実質的に球体ではない形状を有する、請求項14のLFIデバイス。
【請求項20】
被包検出粒子が、プリズム、ピラミッド、立方体、箱、ジャック、中空シェルおよび不規則形状からなる群より選択される形状を有する、請求項14のLFIデバイス。
【請求項21】
被包検出粒子が、選択した波長の光での照射に際して、検出可能なスペクトルを有する、請求項14のLFIデバイス。
【請求項22】
選択した波長の光源光をさらに含む、請求項21のLFIデバイス。
【請求項23】
側方流動イムノアッセイ(LFI)を実行する方法であって:
支持体を提供し;
検出オリゴヌクレオチドにコンジュゲート化された被包検出粒子を提供し;
支持体の試験部分上で捕捉オリゴヌクレオチドを提供し、ここで検出オリゴヌクレオチドおよび捕捉オリゴヌクレオチドの両方が関心対象のターゲットオリゴヌクレオチドに相補的であり;
検出オリゴヌクレオチドを用いて、関心対象のターゲットオリゴヌクレオチドに被包粒子を結合させ;
支持体を通じて、液体試料、および関心対象のオリゴヌクレオチドに結合した被包粒子を、支持体の試験部分に拡散させ;
捕捉オリゴヌクレオチドを用いて、支持体の試験部分で、被包粒子および関心対象のオリゴヌクレオチドを捕捉し;そして
支持体の試験部分で、被包粒子を観察する
工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−230123(P2012−230123A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−159930(P2012−159930)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2008−552595(P2008−552595)の分割
【原出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】