説明

被搬送シートの一時停止装置

【課題】 ストッパーの停止動作及び停止解除動作の際に、折丁の損傷をなくすることができる被搬送シートの一時停止装置を提供する。
【解決手段】 コンベヤ上を横方向にずれ重なって列をなして搬送される被搬送シートをストッパーに乗り上げさせることによって被搬送シートの流れを一時的に停止させる装置であって、ストッパーの動作設定機構部を備え、該動作設定機構部は、ストッパーを、該ストッパーの待機位置から被搬送シートの搬送下流方向に移動させながら降下させ、且つ、ストッパーの先端側を被搬送シートの搬送上流側に向けて下方に傾斜させることによってストッパーに被搬送シートを乗り上げさせて被搬送シートの流れを停止させる停止動作と、ストッパーを、被搬送シートの搬送下流方向に被搬送シートの搬送速度よりも速い速度で移動させながら上昇させることにより、ストッパー上の被搬送シートをコンベア上に滑り落として被搬送シートの停止を解除する停止解除動作とを行わせるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、輪転機等から排紙された後、コンベヤ上を少しずつずれ重なって搬送される折丁(被搬送シート)の流れを一時的に堰き止める折丁の一時停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
輪転機の折機等から排出された折丁を、コンベヤ上を少しずつずれ重なった状態で搬送し、スタッカーによって自動的に突き揃え、員数し、積重ねた後、バンドラーによって結束する装置が知られている。
【0003】
スタッカーにおいては、コンベア上をずれ重なって搬送される折丁を小束集積部において積重ねるが、所定部数が集積された時点でその折丁集積体(即ち、小束)を小束集積部からプッシャーによって次工程(バンドラー)に排出するために、後流の折丁を仮受けする仮受け板が小束集積部に進入するまでの間、小束集積部に搬送されてくる折丁の流れをコンベア上で一時的に堰き止めることが必要になる。このとき、コンベアには前工程の輪転機から連続的に折丁が排紙されてくるため、コンベア自体は停止せずそのまま走向を続ける。
【0004】
このような折丁の流れを一時的に堰き止める手段として、搬送される折丁の流れに一時的にブレーキをかけるために折丁の上を押さえる押さえストッパーと、該押さえストッパーを搬送方向と逆の方向に押し撫でるように移動する押圧体とを備える、いわゆる瀬切り装置が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【0005】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【特許文献1】特公平5−57186号公報
【特許文献2】実公平8−5179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、搬送中の折丁を押さえ込んで停止させる直前に折丁がストッパーに擦れることによって折丁が傷つき、また、ストッパーの押さえ込みを解除する際にも、解除動作の開始直後の流れ始めた折丁がストッパーに擦れることによって折丁の印刷部分が損なわれるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記のような問題を解消するために、ストッパーの停止動作及び停止解除動作の際に、折丁の損傷をなくすることができる被搬送シートの一時停止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねて完成されたものである。
1.コンベヤ上を横方向にずれ重なって列をなして搬送される被搬送シートをストッパーに乗り上げさせることによって前記被搬送シートの流れを一時的に停止させる装置であって、前記ストッパーの動作設定機構部を備え、該動作設定機構部は、前記ストッパーを、該ストッパーの待機位置から前記被搬送シートの搬送下流方向に移動させながら降下させ、且つ、前記ストッパーの先端側を前記被搬送シートの搬送上流側に向けて下方に傾斜させることによって前記ストッパーに前記被搬送シートを乗り上げさせて前記被搬送シートの流れを停止させる停止動作と、前記ストッパーを、前記被搬送シートの搬送下流方向に前記被搬送シートの搬送速度よりも速い速度で移動させながら上昇させることにより、前記ストッパー上の前記被搬送シートを前記コンベア上に滑り落として前記被搬送シートの停止を解除する停止解除動作とを行わせるものであることを特徴とする被搬送シートの一時停止装置を提供する。
2.前記ストッパーを該ストッパーの傾斜角度を大きくしながら上昇させることによって前記被搬送シートの停止解除動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の被搬送シートの一時停止装置を提供する。
3.前記待機位置での前記ストッパーを、ほぼ水平状態で、かつ、先端側が前記被搬送シートの搬送上流側を向くように設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の被搬送シートの一時停止装置を提供する。
4.前記動作設定機構部は、回転駆動軸に取り付けられる回転アームと、カム機構部と、を備え、前記ストッパーを、前記回転アームの回転中心から偏心した位置を揺動中心として前記回転アームに揺動自在に取り付け、前記カム機構部は、前記ストッパー側に取り付けられるカムフォロア7と、前記回転アームの回転により、前記ストッパーが公転運動をしながら揺動して前記停止動作及び前記停止解除動作が可能になるように、前記カムフォロアを案内する環状のカム溝と、を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の被搬送シートの一時停止装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記ストッパーを、前記ストッパーの待機位置から前記被搬送シートの搬送下流方向に移動させながら降下させ、且つ、前記ストッパーの先端側を前記被搬送シートの搬送上流側に向けて下方に傾斜させることによって前記ストッパーに前記被搬送シートを乗り上げさせて前記被搬送シートの流れを停止させる停止動作を行わせるので、ストッパーで被搬送シートを押さえ込むことなく該被搬送シートを停止させることができ、その結果、被搬送シートを押さえ込む際に、被搬送シートが擦れて損傷するのを防止することができる。
また、前記ストッパーを、前記被搬送シートの搬送下流方向に前記被搬送シートの搬送速度よりも速い速度で移動させながら上昇させることにより、前記ストッパー上の前記被搬送シートを前記コンベア上に滑り落として前記被搬送シートの停止を解除する停止解除動作とを行わせるので、被搬送シートの停止を解除する際に、被搬送シートが擦れて損傷するのを防止することができる。
【0010】
また、前記ストッパーを該ストッパーの傾斜角度を大きくしながら上昇させることによって前記被搬送シートの停止解除動作を行うようにすれば、前記被搬送シートを前記ストッパーからスムーズに滑り落ちることにより停止解除を迅速に行うことができる。
【0011】
また、前記待機位置での前記ストッパーは、ほぼ水平状態で、かつ、先端側が前記被搬送シートの搬送上流側を向くように設定すれば、前記ストッパーを最初から傾斜させた状態で待機させ、前記傾斜状態を維持したままストッパーを降下させるのに比べて、ストッパーの待機位置とコンベアとの間の空間を狭くすることができて、省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態について以下に図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態については、スタッカーを例として説明する。
【0013】
スタッカー100は、折丁(被搬送シートの一例)Pを搬送するコンベア101の下流側に位置する小束集積部102と、コンベア101上を搬送される折丁Wの流れを一時的に堰き止めるためのストッパー1を有する一時停止装置Aとを備えている。コンベア101の上流側には、コンベア101上を水平方向にずれ重なって列をなして搬送される折丁Wのエッジ部分を検出するエッジ検出手段103が配置され、エッジ検出手段103と小束集積部102との間に、ストッパー1が配設されている。ストッパー1は、へら状であり、上面側には折丁Wの当たり部1aが形成されている。
【0014】
なお、コンベア101は、複数本の紐状ベルトがプーリーにエンドレスに巻回されて構成されている。図において符号104は制御部、符号105は仮受け体、符号106は小束プッシャーを示す。
【0015】
一時停止装置Aは、ストッパー1の動作設定機構部2を備えている。該動作設定機構部2は、図外のサーボモータで駆動する横向きの回転駆動軸3に取り付けられる回転アーム4と、カム機構部とを備えている。ストッパー1は、回転アーム4の回転中心から偏心した先端部に回転軸9で揺動自在に取り付けられている。また、回転伝動アーム4の端部にはバランスウエイト5が取り付けられている。
【0016】
回転駆動軸3には図外の伝動機構を介して前記サーボモータの駆動軸の動力が伝達され、回転駆動軸3の回転によって回転駆動軸3の軸芯周りに回転アーム4を回転させる。前記カム機構部は、ストッパー1の基端部側には遊転自在に取り付けられるカムフォロア7と、カムフォロア7を係入して案内する環状のカム溝8と、カム溝8が側面に形成されたカム板6とを備えている、
そして、回転アーム4が回転してカムフォロア7がカム溝8で案内されることにより、ストッパー1を公転運動させながら揺動させることにより、次の動作を行わせる。
【0017】
カム溝8のうち図2に示す直線に近い弧状の部分81でカムフォロア7が案内されることにより、同図の二点鎖線で示すストッパー1の待機位置10から同図の矢印のように折丁Wの搬送下流方向に移動させながら降下させると共にストッパー1の先端側を折丁Wの搬送上流側に向けて下方に傾斜させて、ストッパー1への折丁Wの乗り上げが可能な下限位置にまでストッパー1を降下させ、該位置まで降下したストッパー1を一旦停止させる。これにより、図3のように搬送される複数の折丁Wが停止したストッパー1に乗り上がって当たり部1aに当たることによって折丁Wの搬送が停止する。
【0018】
待機位置10でのストッパー1は、ほぼ水平状態で、かつ、該ストッパー1の先端側が折丁Wの搬送上流側を向くように設定される。また、この停止動作では、折丁Wの搬送下流方向へのストッパー1の移動速度が、折丁Wの搬送速度とほぼ同じになるように設定されている。
折丁Wを停止させた後に該停止を解除する場合には、図3の二点鎖線で示すようにストッパー1を折丁Wの搬送下流方向に折丁Wの搬送速度よりも速い速度で移動させながら、且つ、該ストッパー1の傾斜角度を大きくしながら、上昇させる停止解除動作を行わせる。これにより、図3の二点鎖線で示すように折丁Wをストッパー1上の折丁Wをコンベア101上に滑り落として折丁Wの停止を解除する。その後、ストッパー1を待機位置10まで復帰させる。
コンベア101の回転数は、図外の速度検出手段(例えばロータリーエンコーダ)によって検出されている。折丁Wの員数は、エッジ検出手段5からの検出信号に基づいて、カウンターIC等で構成される計数手段(図示せず)によって計数されている。
【0019】
エッジ検出手段103としては、搬送される折丁Wに照射した光の反射光により表面高さ変位を検出する光学式検出器を使用することができる。ずれ重なって搬送される折丁Wのエッジ部分には段差が生じるため、その段差を検出することにより折丁Wのエッジ部分を検出することができる。光学式検出器は、レーザー光で作用するものが好ましいが、発光ダイオード又は他の光源を使用することもできる。光学式検出器と計数手段とを兼ね備えたものとして、レーザーカウンターがあり、例えば、スイス国のBaumer electric AG社を製造元とするレーザーカウンターSCATEC-1を使用することができる。なお、光学式検出器に代えて、超音波検出器を使用することも可能である。
【0020】
プログラマブルコントローラ等で構成される制御手段104は、前記計数手段からの計数信号、速度検出手段からの速度検出信号、及びエッジ検出手段5の検出位置からストッパー1による堰止め位置に至るまでの距離から、ストッパー1の作動タイミングを演算し、停止させるべき折丁Wが搬送されてきたところでストッパー1を作動させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る一時停止装置の一実施形態を備えたスタッカーの正面図である。
【図2】図1の一時停止装置の動作を説明する正面図である。
【図3】図1の一時停止装置の動作を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0022】
A 一時停止装置
1 ストッパー
2 動作設定機構部
3 回転駆動軸
4 回転アーム
6 カム板
7 カムフォロア
8 カム溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤ上を横方向にずれ重なって列をなして搬送される被搬送シートをストッパーに乗り上げさせることによって前記被搬送シートの流れを一時的に停止させる装置であって、
前記ストッパーの動作設定機構部を備え、
該動作設定機構部は、前記ストッパーを、該ストッパーの待機位置から前記被搬送シートの搬送下流方向に移動させながら降下させ、且つ、前記ストッパーの先端側を前記被搬送シートの搬送上流側に向けて下方に傾斜させることによって前記ストッパーに前記被搬送シートを乗り上げさせて前記被搬送シートの流れを停止させる停止動作と、前記ストッパーを、前記被搬送シートの搬送下流方向に前記被搬送シートの搬送速度よりも速い速度で移動させながら上昇させることにより、前記ストッパー上の前記被搬送シートを前記コンベア上に滑り落として前記被搬送シートの停止を解除する停止解除動作とを行わせるものであることを特徴とする被搬送シートの一時停止装置。
【請求項2】
前記ストッパーを該ストッパーの傾斜角度を大きくしながら上昇させることによって前記被搬送シートの停止解除動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の被搬送シートの一時停止装置。
【請求項3】
前記待機位置での前記ストッパーを、ほぼ水平状態で、かつ、先端側が前記被搬送シートの搬送上流側を向くように設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の被搬送シートの一時停止装置。
【請求項4】
前記動作設定機構部は、回転駆動軸に取り付けられる回転アームと、カム機構部と、を備え、
前記ストッパーを、前記回転アームの回転中心から偏心した位置を揺動中心として前記回転アームに揺動自在に取り付け、
前記カム機構部は、前記ストッパー側に取り付けられるカムフォロア7と、前記回転アームの回転により、前記ストッパーが公転運動をしながら揺動して前記停止動作及び前記停止解除動作が可能になるように、前記カムフォロアを案内する環状のカム溝と、を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の被搬送シートの一時停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−199467(P2006−199467A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14350(P2005−14350)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】