被検体情報取得装置
【課題】合成開口による画像構成を行う超音波取得装置において、撮像範囲が機械走査範囲より狭くなることを防ぐための技術を提供する。
【解決手段】被検体を第一の方向に電子走査し、第一の方向と交差する第二の方向に機械走査されるプローブと、受信信号を整相加算する第一の整相加算手段と、第一の整相加算信号を第二の方向の断層面毎に格納するメモリと、格納された信号のうちM枚の断層面に対応する信号を選択する手段と、選択された信号を第二の方向に整相加算する第二の整相加算手段と、第二の整相加算信号から被検体内の画像データを取得する手段を有し、第二の整相加算手段は、プローブの機械走査に伴って、M枚の信号を固定し遅延パターンを変化させる第一のケースと、M枚の信号の組を変化させ遅延パターンを固定する第二のケースを切り替える被検体情報取得装置を用いる。
【解決手段】被検体を第一の方向に電子走査し、第一の方向と交差する第二の方向に機械走査されるプローブと、受信信号を整相加算する第一の整相加算手段と、第一の整相加算信号を第二の方向の断層面毎に格納するメモリと、格納された信号のうちM枚の断層面に対応する信号を選択する手段と、選択された信号を第二の方向に整相加算する第二の整相加算手段と、第二の整相加算信号から被検体内の画像データを取得する手段を有し、第二の整相加算手段は、プローブの機械走査に伴って、M枚の信号を固定し遅延パターンを変化させる第一のケースと、M枚の信号の組を変化させ遅延パターンを固定する第二のケースを切り替える被検体情報取得装置を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成開口を行う被検体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳がんの早期発見のための有力な画像診断装置として、X線マンモグラフィー装
置が広く知られている。一方、被ばくを伴うX線の代わりに、浸襲性の低い超音波エコー
を用いて広範囲の3次元画像データを取得する方法が、たとえば特許文献1などに開示されている。特許文献1には、超音波探触子(以下プローブとも呼ぶ)を機械的に走査しながら電子走査を行うことで、3次元の超音波エコー画像を取得する装置が開示されている。
【0003】
3次元の超音波エコー画像を取得する方法としては、素子が2次元状に配列された2次元トランスデューサアレイを用いて3次元電子走査を行う方法も公知である。しかしながら、広範囲の撮像領域を良好な解像度で3次元電子走査するためには、2次元トランスデューサアレイの素子数が多くなる、素子数の増加に伴い処理規模が増加する、走査時間が増大するなどの問題がある。このため、実用的な超音波画像診断装置を構成することが困難になっている。これに対して、プローブの機械走査と電子走査を組み合わせた装置は被検体の広範囲の領域が簡便に撮像できるため、超音波マンモグラフィーなどの広範囲の撮像域の3次元画像取得装置として好適な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−028366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プローブを機械的に走査して広い領域の3次元エコー画像を取得するために、1次元方向に電子走査するプローブを、その電子走査方向と直交する方向(以下エレベーション方向と呼ぶ)に連続移動させながらエコー画像を取得する方法がある。この方法は、速度的にもコスト的にも最も有利である。この場合、超音波ビームの電子走査によって一つの断層スライス像を再構成することが出来るので、エレベーション方向の各位置において作成された断層スライス像を積み重ねることによって、機械走査領域全体の3次元画像を取得することが出来る。
【0006】
しかし、この方法には、スライス面内での画像分解能に比較してエレベーション方向への画像分解能が大幅に低下するという問題があった。その第一の理由は、プローブの機械走査を遅くして断層スライス面の取得ピッチを細かくすることが被検者の肉体的負担を増加させることになるため、ある程度機械走査を速めてエレベーション方向の画素密度を粗くせざるを得ないからである。さらに1次元トランスデューサアレイを用いて電子走査を行う一次元配列プローブではそのエレベーション方向の実効的開口角が配列方向に比べて小さく、エレベーション方向の再構成分解能が劣化するという問題も有していた。
【0007】
前記特許文献1には、プローブの機械走査に伴って、エレベーション方向の異なる位置において、電子走査により取得したデータの補間を行う装置が開示されている。すなわち、断層スライス面間で補間を行う装置である。これにより、エレベーション方向の画素密度の低下を抑制することができる。さらに複数の異なるエレベーション方向位置で取得したデータを用いて、合成開口原理を用いた処理を行うことでエレベーション方向の実効的
開口角による分解能低下を抑制する装置が開示されている。
【0008】
エレベーション方向の実効的開口角による分解能低下を、合成開口原理を用いて抑制する方法について、図5(a)〜(d)を用いて説明する。図5(a)〜(d)中、符号501〜504はプローブの位置を示している。図5は、エレベーション方向と被検体の深さ方向とから構成される面の射影図を示し、紙面奥行き方向に複数の素子が配列されている。つまり、紙面奥行き方向が電子走査方向である。このプローブは、エレベーション方向へ501から504の順に機械走査しながら、断層スライス面で電子走査により超音波受信ビーム信号を採取する。符号51は、合成開口方式を用いて整相加算を行う目標領域の中心、すなわち焦点である。符号511〜514はそれぞれ、プローブ位置501〜504におけるプローブから焦点51までの超音波エコーの伝搬経路を表す。プローブは、機械走査に応じて移動したそれぞれの位置(501、502、・・・)で超音波エコー信号を取得する。そして、その超音波エコー信号を記憶し、それぞれの位置での伝搬経路511〜514の伝搬時間を相殺するように各取得超音波エコー信号に遅延を与えて信号を加算する整相加算を行う。これにより、焦点51に合焦した超音波受信ビーム信号が作成できる。
【0009】
以上の動作は、各エレベーション位置において行う電子走査と組み合わせることができる。すなわち、電子走査で行う断層スライス面上での送受信超音波ビーム走査に関しては、断層スライス面内での送受信ビーム形成を行い、受信信号に通常の整相加算を行った整相加算信号(超音波受信ビーム信号)を格納しておく。次に、プローブ機械走査に応じて生じる各断層スライス面上の対応する超音波受信ビーム信号の整相加算信号に関しては、上記のエレベーション方向の整相加算を行う。
【0010】
このときプローブの機械走査に応じてそれぞれの位置で取得、作成した整相加算信号を記憶するための波形メモリが必要となる。一つの方法として、機械走査時に取得した信号をすべていったん波形メモリに格納して機械走査後にエレベーション方向の整相加算を行うことも可能であるが、その場合、画像再構成処理のリアルタイム性が失われる上に、大容量の波形メモリが必要になってしまう。そのためエレベーション方向の整相加算はプローブの機械走査に応じて逐次的に(できればリアルタイムで)行う構成をとることが好ましい。
【0011】
図5(e)は、プローブ機械走査による8つのプローブ位置(501〜508)において電子走査により採取した整相加算信号のうち、4つのプローブ位置での信号を用いてエレベーション方向に対する合成開口の整相加算を行った場合の模式図である。4つのプローブ位置での信号を用いて合成開口による1つの合成撮像面データを形成するためには、少なくとも断層スライス面(この例では4スライス面)分の信号を波形メモリに格納しておけばよい。すなわち、プローブ位置が504になった時点からエレベーション方向の整相加算を開始する。そして、プローブ位置が505〜508と移動するに伴って、エレベーション方向の整相加算を行って結果を出力しつつ、取得した信号を波形メモリに格納する。このとき新規に取得した信号を上書きする形で波形メモリに格納する、あるいは不要な信号を破棄することにより、波形メモリ容量を有効に使用することができる。またエレベーション方向の整相加算による合成撮像面データがプローブの機械走査に伴って順次得られていくために、画像再構成処理のリアルタイム性も確保されることとなる。
【0012】
合成開口原理を用いたエレベーション方向の整相加算に関しては、整相加算を行うエレベーション方向のプローブ位置の幅(図5(d)の53)が、通常の電子走査における複数トランスデューサ素子による開口幅に相当する。また、各プローブ位置同士の間隔(ピッチ)が、トランスデューサ素子間のピッチに相当する。これらの値をプローブのトランスデューサアレイの素子ピッチや電子走査の開口幅と同等とすることで、断層スライス面
でのBモード画像と同等の分解能をエレベーション方向においても得ることができる。
【0013】
しかしながらエレベーション方向の整相加算をプローブの機械走査に応じて逐次的に行う場合には、下に示すような問題が生じる。
図5(e)において、4つのプローブ位置での信号を用いて所定の(固定の)遅延パターンでエレベーション方向に整相加算することにより1つの断層スライス面を構成する。そのため、プローブ走査範囲54に対して、3D画像構成が行えるエレベーション領域5
5は小さくなる。そのため、プローブ走査開始および終了付近で、3D画像構成が行えな
い領域であるデッドゾーン56が生じる。すなわち、撮像範囲が機械走査範囲より狭くなってしまう。デッドゾーンの幅は、合成開口に用いるエレベーション方向のプローブ位置の数やピッチが大きいほど大きくなる。一方、デッドゾーン幅を狭めるためには上記プローブ位置の数やピッチを小さくする必要があり、エレベーション分解能が低下してしまう。このため、必要とする取得領域よりプローブを機械走査させる範囲を大きくとらねばならず、装置規模・装置構成の増大や走査時間の増加をまねくこととなる。特にマンモグラフィー装置などの診断装置へ適用する場合は、被験者に過大な負荷を強いることになる。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、合成開口による画像構成を行う被検体情報取得装置において、分解能を低下させず、撮像範囲を拡大するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、被検体に超音波を送信し、反射した超音波を受信して受信信号を出力する素子が複数配列した第一の方向に電子走査するプローブと、前記プローブを、前記素子の受信面と平行な面上における前記第一の方向と交差する第二の方向に機械走査する走査手段と、前記受信信号を用いて前記第一の方向の整相加算を行い、第一の整相加算信号を生成する第一の整相加算手段と、前記第一の整相加算信号を前記第二の方向における各位置で断層面毎に格納するメモリ手段と、前記メモリ手段に格納された第一の整相加算信号のうち、M枚(Mは2以上の整数)の断層面に対応する第一の整相加算信号を選択する選択手段と、前記選択されたM枚の断層面に対応する第一の整相加算信号を用いて前記第二の方向の整相加算を行い、第二の整相加算信号を生成する第二の整相加算手段と、を有し、前記第二の整相加算手段から出力される前記第二の整相加算信号を用いて、被検体内の情報を画像データとして取得する被検体情報取得装置であって、前記第二の整相加算手段は、前記プローブの機械走査に伴って、M枚の前記第一の整相加算信号の組を固定し、遅延パターンを変化させて第二の整相加算を行う第一のケースと、M枚の前記第一の整相加算信号の組を変化させ、遅延パターンを固定して第二の整相加算を行う第二のケースと、を切り替え、前記第一のケースにより、デッドゾーンに位置する断層面上の第二の整相加算信号を生成することを特徴とする被検体情報取得装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、合成開口による画像構成を行う被検体情報取得装置において、分解能を低下させずに撮像範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の装置の構成例を示す図。
【図2】本発明にかかわる超音波受信ビーム信号を説明する図。
【図3】本発明の実施例1における制御を説明する図。
【図4】本発明の第一の制御フェーズにおける整相加算を説明する図。
【図5】従来の合成開口を説明する図。
【図6】本発明の第二の整相加算手段の構成例を示す図。
【図7】本発明の第二の制御フェーズにおける整相加算を説明する図。
【図8】本発明の実施例2における制御を説明する図。
【図9】本発明の実施例3に使用する送信ビームを説明する図。
【図10】本発明の第一の制御フェーズにおける整相加算を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態を説明する。本発明はプローブを機械走査した各位置で超音波の送受信を行い、受信信号を用いて整相加算および合成開口を行う被検体情報取得装置に適用可能である。被検体情報取得装置とは、被検体に超音波を送信し、被検体内部で反射した反射波(反射した超音波)を受信して、被検体情報を画像データとして取得する超音波エコー技術を利用した装置である。取得される被検体情報とは、被検体内部の組織の音響インピーダンスの違いを反映した情報を示す。
以下の各実施例では、被検体情報取得装置の例として超音波画像診断装置について説明する。
【0019】
<実施例1>
図1に、本発明に基づく超音波画像診断装置の構成を示す。装置は、プローブ1、プローブ走査機構2、位置センサ3、送信手段4(送信回路)、受信回路5、第一の整相加算手段6、メモリ手段7、選択回路8、第二の整相加算手段9を備える。装置はまた、制御手段10、遅延パターンの複数組を格納したメモリ11、画像信号化手段12、画像メモリ13、画像処理手段14、表示手段15を備える。また、符号16は、プローブ1に含まれるトランスデューサアレイであり、符号17は、トランスデューサアレイより送受信される超音波ビームの概念図である。
【0020】
なお、本発明は、LCDなどの表示手段15や、画像処理手段14を必ずしも備える必要
はない。本発明は、プローブ内での超音波ビームの電子走査とプローブの機械走査を行って3D超音波画像データを作成し画像メモリ13へ格納するまでの機能を持つ、画像取得
装置として構成することもできる。その場合、画像処理手段14は一般的なPC上でソフトウエアによって構成され、画像取得装置の画像メモリ13から読み取った画像データを加工することで、3D超音波画像データより3Dレンダリング画像や断面画像、MIP画像を構
成することが可能である。またその際に各種画像フィルタや画素間の補間や形状・座標変換、動画処理を加えることもできる。
【0021】
プローブ1上には、素子が複数配列された、略1次元のトランスデューサアレイがある。ここで、略1次元トランスデューサアレイとは、送信手段4、第一の整相加算手段6と組み合わせ、超音波送受信ビームが断層スライス面上を電子走査し、通常のBモード超音
波断層画像を作成されるものであればよい。具体的には1D、1.5D、1.75Dのトラン
スデューサアレイを用いることができる。また、2D構成のトランスデューサアレイであ
っても、断層スライス画像を撮像するために電子走査により二次元断面を走査できるものであればよい。本発明において、複数の素子を用いて電子走査を行う方向を第一の方向と称する。1Dのアレイトランスデューサにおいては、素子の配列方向に電子走査を行っていく。そのため、素子が複数配列された方向は第一の方向と一致する。
【0022】
プローブ1の電子走査としては、超音波送受信ビームの方向を変え、扇状に超音波送受信ビームを平面上で電子走査するセクタ走査や、略平行移動で超音波送受信ビームを平面上に電子走査するリニア走査などが用いられる。以降では主にリニア走査について説明を加えるが、これに限定されるものではない。リニア走査は、電子走査による撮像幅が一定であり、撮像対象のプローブ近接部分でも広い撮像域を得られること、横方向分解能が撮像深度(プローブ・撮像対象接合面より測った深さ)によらないことなど利点がある。そのため超音波マンモグラフィーにはリニア走査が有利に適用できる。
【0023】
プローブ1はプローブ走査機構2の可動部位(不図示)に固定され、可動部位とともに、電子走査を行う断層スライス画像にほぼ垂直方向に移動する。この方向は、素子の受信面と平行な面上において、電子走査方向である第一の方向と交差する方向と言える。この移動を機械走査と呼ぶ。プローブ走査機構2は制御手段10からの制御に従ってモータ駆動により可動部位を移動させる。同時に、たとえば可動部位に固定された位置センサ3により、プローブ1の位置が制御手段10で検出される。本発明は制御手段10でプローブ1の位置に応じた制御ができればよいため、駆動に高精度ステッピングモータを用いて駆動制御が可能であれば位置センサ3を省くことも可能である。プローブ1が移動する機械走査方向(エレベーション方向ともいう)は、本発明の第二の方向に相当する。本発明において取得される断層スライス画像は、第一の方向と第二の方向とから規定される面に垂直な面である。
【0024】
プローブ1は、プローブ走査機構2により移動しながら、超音波の送受信動作を行って超音波エコーの断層スライス画像データを取得する。取得した断層スライス画像データは画像メモリ13に格納される。画像メモリ13に格納された断層スライス画像データは、プローブ走査機構2による機械走査終了後あるいは機械走査中に、画像処理手段14により、被検体の所望の断層スライス画像、3Dレンダリング画像などに処理され、表示手段
15に表示される。特に本発明の断層スライス画像データは、後述のように、プローブ1の移動方向(第二の方向)に合成開口原理を用いた整相加算を行ったものであることを特徴としている。このように本装置により3次元画像データを得ることができる。
【0025】
また制御手段10は、超音波の送受信動作に同期してプローブ走査機構2によるプローブ1の移動の開始、停止、あるいは移動速度の制御を行って、所望の位置での断層スライス画像データを取得する。
プローブ1の機械走査に関しては、ステップ・アンド・リピート方式と、連続走査方式があり、またこれらを組み合わせることもできる。ステップ・アンド・リピート方式は、プローブ1の移動・停止を断続的に行って、プローブ1の停止期間中に超音波ビーム17の電子走査を行って断層スライスデータを取得する方式である。連続走査方式は、プローブ1を略連続的に移動させながら断層スライスデータを取得する方式である。
【0026】
プローブ走査機構2によりプローブ1が所定の位置に達すると、制御手段10は、超音波ビーム17の電子走査を開始する。
その際、はじめに送信手段4が、プローブ1上のトランスデューサアレイ16の少なくとも一部分を駆動して、送信超音波ビーム17を被検体へ向け送信する。送信ビームの形成は周知の方法で行うことができる。制御手段10でトランスデューサアレイ16上の送信開口に相当するトランスデューサ素子が選択され送信フォーカスを有する超音波送信ビーム17が送信される。
【0027】
超音波送信ビーム17は、被検体内を伝搬中にその各部位の音響インピーダンスに応じて超音波反射波を生成し、その一部が超音波受信エコーとしてトランスデューサアレイ16で受波される。トランスデューサアレイ16上の選択された各トランスデューサ素子で超音波受信エコーが受波されると、各々受信信号(アナログ信号)を発生し受信回路5へ出力する。受信回路5は増幅回路とAD変換器より構成され、入力した各受信信号を増幅しデジタル時系列データ(デジタル化された受信信号)へ変換する。このとき、スイッチング回路で選択される複数のトランスデューサ素子の組を選定することにより、トランスデューサアレイ16上で超音波を受波する領域すなわち受信開口の位置および大きさを決めることができる。
【0028】
トランスデューサアレイ16上の受信開口に相当する各トランスデューサ素子からの複
数のアナログの受信信号は、受信回路5で同数の受信デジタル時系列データに変換されたのち、第一の整相加算手段6に入力される。第一の整相加算手段6は、複数の受信デジタル時系列データを用いて超音波受信ビーム信号(第一の整相加算信号)を作成する。
【0029】
図2(a)は超音波受信ビーム信号の作成を説明した図であり、図2(b)は超音波受信ビーム信号の表す走査信号が断層スライス面上(断層面上)でとる位置の概略を示す図である。
本図において、最も近い素子から距離rの位置の点Pで超音波送信ビームが反射し、反射波がトランスデューサアレイ16に受信されたとする。各トランスデューサ素子が出力する受信信号26は、反射波の伝播距離に応じて時刻がずれている。すなわち、点Pで反射
された超音波エコーは、開口を構成するトランスデューサ素子群(これを開口素子群という)22の中心位置から外側の素子になるにしたがって遅れて受信される。そこで、開口素子群22の各トランスデューサ素子の受信信号26の遅れ時間を、中心位置で受信された信号を基準として遅れ調整回路27によって調整してやる。そして、それぞれの受信信号26に含まれる点Pからのエコー信号成分を加算回路28で加算すると、点Pを焦点とした強い信号が受信できる。トランスデューサ素子にはいろいろな方向からの超音波エコーが重畳して受信されるが、他の点からの超音波エコーは加算しても受信波の位相がそろっていないので大きな信号成分になることはない。またここで遅れ調整回路27、加算回路28は第一の整相加算手段9中に含まれている。
【0030】
距離rの点Pからの反射波が開口素子群22の中心位置で受信される時刻tは、既知の音
速をcとすると t=2r/cで表せる。したがって、時刻tを基に対応する反射位置まで
の距離rが計算でき、計算されたrを基に各素子の信号遅延時間が計算できる。よって、受信時刻tに応じて、距離rに応じた適切な遅れ時間の調整を遅れ調整回路27で行うようにすると、全ての点で焦点の合った強い1次元反射信号波形を形成することが出来る。これを受信ダイナミックフォーカスと呼ぶ。この結果、送信ビームの経路に沿った領域に超音波反射エコーの受信感度が高い領域すなわち受信ビームが形成される。第一の整相加算手段6の出力は、この受信ビームに起因する受信信号を加算した超音波受信ビーム信号29となる。
第一の整相加算手段6から出力された超音波受信ビーム信号29(第一の整相加算信号)は、電子走査に伴って順次メモリ手段7に格納される。この時メモリ手段には、断層面毎に信号が格納される。
【0031】
電子走査により図2(b)のように、超音波受信ビーム信号29がラスタ走査形式で出力されることになり、断層スライス面30に対する超音波エコー信号を取得することが出来る。つまり断層スライス面30に関して超音波受信ビーム信号29(第一の整相加算信号)は電子ビーム走査の走査線信号となっている。
【0032】
なお、加算回路28による加算は、入力信号ごとに重みをつけて加算するというアポダイジング処理を含めることもできる。アポダイジング処理は、受信開口を制御したり周辺からの干渉波の影響を減らしたりする効果がある。この重みは目的に応じて固定でも良いし受信時刻に応じて変化するようにしても良い。
【0033】
制御手段10は上記一連の電子走査により断層スライス面30上での走査線信号に相当する超音波受信ビーム信号29を取得するために超音波送受信を制御するとともに、プローブ走査機構2によるプローブ1の移動を制御する。
プローブ1の移動に伴ってメモリ手段7には異なる複数位置の断層スライス面上での走査線信号に相当する複数の超音波受信ビーム信号29が格納されていく。
【0034】
第二の整相加算手段9では、プローブ1が異なる位置にあるときにそれぞれ取得した複
数の超音波受信ビーム信号29に対して、合成開口法に基づいてエレベーション方向(第二の方向)の分機能を向上するための第二の整相加算処理を行う。選択回路8は、メモリ手段7に格納された複数の超音波受信ビーム信号29の組を選択して、第二の整相加算手段9へ入力する。遅延パターン組格納メモリ11には、第二の整相加算処理に使用するための各超音波受信ビーム信号29へ与える遅延量の組が格納されている。
【0035】
本発明の特徴のひとつは、プローブ機械走査のプローブ位置に応じて、第二の整相加算手段9に入力する複数の超音波受信ビーム信号29の組と使用する遅延パターン組を変化せることである。この変化は、第一から第三の制御フェーズに分けられる。
第一の制御フェーズは、プローブ機械走査開始直後に、プローブ位置に応じて、第二の整相加算手段に並列に入力される超音波受信ビーム信号の組を固定し、選択する遅延パターンを変化させて第二の整相加算処理を行うものである。
第二の制御フェーズは、第二の整相加算手段に入力される超音波受信ビーム信号の組を変化させ、選択する遅延パターンを固定して第二の整相加算手段で行う整相加算を行うものである。
第三の制御フェーズは、プローブ機械走査終了直前の期間に行われる処理であり、第一の制御フェーズと同様の処理を、プローブの進行方向に対して逆向きに行うものである。
第一の制御フェーズと第三の制御フェーズは、本発明の第一のケースに相当する。第二の制御フェーズは、本発明の第二のケースに相当する。本実施例において、第一と第三の制御フェーズは、従来の合成開口処理ではデッドゾーンとなっていた領域の撮像面を求める期間である。第一から第三の制御フェーズについての詳細は後述する。
【0036】
第二の整相加算手段9で整相加算された結果は、画像信号化手段12へ出力される。画像信号化手段12は、整相加算された超音波エコー信号を強度に応じた輝度信号に変換し、また信号帯域を画像データに適した周波数帯域へ変調するため、包絡線検波やヒルベルト変換を用いた振幅検出とダウンサンプリングを行う。輝度のダイナミックレンジを行うためにLOG圧縮を行ってもよい。また画像信号各種のフィルタを設けることもできる。
画像信号化手段12で作成された画像信号は画像メモリ手段13へ格納される。
【0037】
(制御フロー)
本実施例の制御手段10で行う整相加算に関する制御の処理について図3を用いて説明する。図3(a)は、処理全体のフロー図であり、3D画像データ取得の開始から終了までを説明する。図3(b)は、図3(a)中の各断層スライス面を電子走査して面上の走査線信号に相当する複数の超音波受信ビーム信号を取得するための処理(これを断層走査線処理と称する)を説明する図である。
【0038】
ステップS301において、プローブ走査機構2がプローブ1の機械走査を開始する。プローブ1が所定の位置になると超音波の送受信が開始される。
ステップS302において、プローブ1が電子走査を始める。以降、プローブの機械走査と電子走査は逐次実行される。
ステップS303において、第一の整相加算手段6は、受信したデジタル時系列データを整相加算し、第一の整相加算信号としての超音波受信ビーム信号29を生成する。
ステップS304において、得られた超音波受信ビーム信号29はメモリ手段7へ格納される。電子走査に伴って走査された各超音波ビームに対応する超音波受信ビーム信号29が順次メモリ手段7へ格納されていく。以上を繰り返し、後述の所定の枚数であるM枚の断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29が格納された段階(ステップS305=YES)で処理が第一の制御フェーズへ移る。なお、合成開口の性質上、Mが2以上の整数であることは言うまでもない。
【0039】
第一の制御フェーズが始まると、ステップS306において、選択回路8が、第二の整
相加算手段9へ入力する複数の超音波受信ビーム信号29の組を選択する。このとき、断層スライス面上の走査線信号を構成する超音波受信ビーム信号29を選択回路8で選択し、その電子走査の順に第二の整相加算手段9へ入力する。
ステップS307において、遅延パターン組格納メモリ11から、第二の整相加算手段9で行う遅延パターンの組が選択される。
ステップS308において、第二の整相加算手段9が、選択された遅延パターンでエレベーション方向に整相加算する合成開口処理を行って第二の整相加算信号を生成し、画像信号化手段12に出力する。その後プローブ1の移動に伴って次の断層スライス面に関する電子走査を行い断層スライス面上の超音波受信ビーム信号29の取得を行う。
【0040】
図3(b)に、ステップS309の断層スライス面に関する信号取得(断層走査線処理)の詳細を示す。
ステップS401において、第一の整相加算手段6で使用する遅延パターンを設定する。特に断層スライス面に対する電子走査がリニア走査である場合には、第一の整相加算手段6で使用する受信超音波ビームの遅延パターンは一定でよい。このため第一の整相加算手段6で使用する遅延パターンの設定は前もって、例えば第一の制御フェーズの開始時に一括して行ってもよい。
ステップS402以降、プローブのトランスデューサアレイが電子走査を開始する。具体的には、ステップS403において、実際の電子走査が行われ、走査された超音波ビームを出力する。ステップS404において、第一の整相加算手段が、超音波受信ビーム信号29を順次作成する。ステップS405において、作成された信号をメモリ手段7へ格納していく。
【0041】
ステップS309の後、再度ステップS307に戻り、第二の整相加算手段9で行う遅延パターンの組を選択しなおす。そして異なる遅延パターンを用いてエレベーション方向の整相加算を行い、結果を画像信号化手段12に出力し、その後プローブ1の移動に伴って断層走査線処理を行う、という動作をくりかえす。
以上のように第一の制御フェーズでは、プローブ1の移動に伴って第二の整相加算手段9への入力信号の組を固定し、使用する遅延パターンを変化させていく制御を行う。この第一の制御フェーズは、プローブの機械走査が始まってから所定の枚数の断層スライス面を取得するまで続く。
【0042】
第一の制御フェーズが終了後、制御手段10は第二の制御フェーズを開始する。
ステップS310において、第二の整相加算手段9で行うエレベーション方向の整相加算のための遅延パターンを遅延パターン組格納メモリ11から読み込み設定する。
ステップS311において、選択回路8が、メモリ手段7から合成開口に使用する断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29の組を選択し、第二の整相加算手段9への入力データとして設定する。
ステップS312において、第二の整相加算手段が、選択された超音波受信ビーム信号29の組を入力としてエレベーション方向の整相加算を行い、その結果を画像信号化手段12に出力する。これが本フェーズの合成開口処理である。
【0043】
その後、プローブ1の移動に伴って、ステップS313で断層走査線処理が行われる。これにより作成された新たな断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29が、メモリ手段7へ格納される。エレベーション方向の整相加算のための遅延パターンを固定したまま、選択回路8で合成開口に使用する断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29の組を新たに選択し第二の整相加算手段9で第二の整相加算を行う。さらに次の断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29を取得するための断層走査線処理を行うことを繰り返す。
【0044】
以上のように第二の制御フェーズでは、遅延パターンは固定し、プローブ1の移動に伴って第二の整相加算手段9への入力信号の組を変えていく制御を行う。
そして、ステップS314で、プローブ機械走査領域の終了点に達した時点でプローブの移動を終了する。
【0045】
その後第三の制御フェーズに移るが、ここではあらたに断層スライス面上の走査線信号を構成する超音波受信ビーム信号29の取得は行わない。すでにメモリ手段7に格納された複数の超音波受信ビーム信号29を用いて第二の整相加算手段による処理を行う。
ステップS315において、選択回路8で使用する超音波受信ビーム信号29の組を選択する。
ステップS316において、第二の整相加算手段9で行う遅延パターンの組を選択する。
ステップS317において、選択した遅延パターンを用いてエレベーション方向の整相加算を行い(合成開口処理)、結果を画像信号化手段12に出力する。選択される遅延パターンを変化させつつ、この処理を所定回数くりかえす。
この制御フェーズでは新たな超音波受信ビーム信号29の作成は必要ないため、超音波送信を含む断層走査線処理を行う必要がなく、これらの動作を省くように制御されることが好ましい。
最後の合成開口処理が終了した時点で、プローブの機械走査に伴った3Dの超音波画像データ採取を終了する。
【0046】
(合成開口効果)
次いで図4と図10を用いて第二の整相加算手段でおこなう整相加算処理による合成開口効果を説明する。ここではリニア走査の場合を例として説明する。ここでは説明を簡略にするために送信と受信の開口の大きさを同じものとするが、送受信の開口の大きさを異なるものとしてもよい。
まず、第一の整相加算手段6と第二の整相加算手段9の二段の整相加算により二次元アレイと同等の整相加算が可能になることを、図4(a)を用いて説明する。説明を簡単にするために、合成開口を行う注目点Pは、断層スライスSL#(n)の面内にあるものとする。
【0047】
略一次元アレイトランスデューサ上にある開口の中心S0から垂直に発した超音波ビームはP点において反射し、R0位置のトランスデューサ素子で受信される。次にプローブは断
面スライスSL#(n+1)の位置に移動し、S0に対応する位置S1を開口中心として再び超音波ビームを発信する。超音波ビームは垂直方向に発信されるが、その一部が断層スライス面SL#(n)内のP点の方向にも伝播し、P点で反射された超音波がR0点に対応する点R1で受信される。合成開口原理の整相加算は、R0での受信信号とR1での受信信号とを、それぞれ発信からP点で反射して受信するまでの伝播時間に相当する受信時間のずれを調整して加算すれ
ば実現できる。
【0048】
例えば、断層スライス面SL#(n)で点Pの画像を構成する事を考える。この際に、S0、R0の一次元位置でトランスデューサ素子により得られた信号に加え、S1、R1の位置の信号にそれぞれ伝搬時間に相当する受信時間のずれを調整して加算すれば、二次元アレイと同等に断層スライス面垂直方向の分解能を向上できる。なお、ここでは受信点が4つの例を用いて説明するが、受信点がより多数になっても原理は同様である。整相加算のときは、最短伝搬距離S0-Pを基準に、R0、S1、R1の位置で受信された信号にそれぞれの伝搬距離、R0-P、S1-P、R1-Pの差分を超音波が伝搬する時間を遅延として与えればよい。今後合成開口により画像を構成する目標点Pを合成開口の焦点と称することにする。
【0049】
略一次元アレイプローブによりS0、R0位置での信号が取得された後、プローブを機械走査してS1、R1位置での信号を取得する。その際、第一の整相加算手段6は、まずS0、R0位
置での信号の整相加算を行い、次いでS1、R1位置での信号の整相加算を行う。前者は伝搬距離S0-Pを基準にR0位置での信号に遅延を与え、後者は伝搬距離S1-Pを基準にR1位置での信号に遅延を与える。その後第二の整相加算手段9でこれらの結果に合成開口に基づく整相加算を行えばよい。
【0050】
より詳しく言えば、第一の整相加算手段6で行われたS1、R1位置での信号の整相加算は伝搬距離S1-Pを基準に行われたものであり、S0、R0位置での信号の整相加算は伝搬距離S0-Pを基準に行われたものである。よって、前者の加算結果に伝搬距離S1-PとS0-Pの差分に対応する超音波伝搬時間を遅延として与えたのち後者に加算すれば、伝搬距離S0-Pを基準として4点での信号に整相加算が行われる。
【0051】
このとき、点S1から断層スライス面SL#(n+1)内の垂直方向に、S1からPまでと同じ距離
の点Qを考える。この場合、点S1,P,R1からなる三角形と、点S1,Q,R1からなる三角形とは
明らかに合同だから、S1からP点を経由してR1に到達する時間とS1からQ点を経由してR1に到達する時間は同じになる。この関係は、R1位置のトランスデューサ素子だけでなく、同じ略一次元トランスデューサアレイの他のトランスデューサ素子に関しても同じである。したがって、断層スライス面SL#(n+1)の位置において、P点を焦点とした1次元整相加算
結果とQ点を焦点とした整相加算結果とは全く同じ加算信号となる。したがって、P点に対する2次元の整相加算では、まず断層スライス面ごとに整相加算を行って点Pと点Qの整相加算信号を求め、次にエレベーション方向に整相加算を行って点Pと点Qの整相加算信号を加算すれば良いことがわかる。
【0052】
特に第一の整相加算手段6で受信ダイナミックフォーカスを行うようにすれば、略一次元トランスデューサアレイの配列方向の整相加算に関しては、目標点の高さに応じておのおのの断層スライス面で行われている。例えば、R0位置およびR1位置からの信号は、それぞれ点P、点Qの高さに応じて遅延が与えられており、それぞれS0位置およびS1位置からの信号と加算されていることになる。このため、第一の整相加算手段6で行う遅延処理は、第二の整相加算手段9で行う遅延処理とは独立に行うことができる。よって、第一の整相加算手段6で整相加算された超音波受信ビーム信号29をこの断層スライス面での走査線信号としてメモリ手段7に格納する。その後プローブ1を移動し異なる断層スライス面で取得した超音波受信ビーム信号29との間で第二の整相加算を行うことで、上記のような合成開口効果を得ることができる。
【0053】
図4(b)に、上記のようにして第一の整相加算手段6より得られた複数の超音波受信ビーム信号29が、断層スライス面SL#(n)とSL#(n+1)上にラスタ走査形式で走査線を形成している様子を示す。図4(a)に即して言えば、略一次元トランスデューサアレイをS0(を含む位置)からS1へ走査させながら、第一の整相加算手段6により断層スライス面上の走査線に相当する超音波受信ビーム信号29が取得される。次いで同様にトランスデューサアレイをS2(不図示)に移動させながら、断層スライス面SL#(n+1)上の走査線に対する信号を取得する。
【0054】
図4(b)中、LS0、LS1は上記点S0、S1の位置に対応する走査線信号を表し、その信号上に点P、点Qに対応する超音波エコー部分SP、SQが存在する。LS0、LS1に示す走査線の位置は、プローブ1の移動に伴って平行移動された位置にあり、これをプローブ機械走査に応じた断層スライス面上で対応する走査線と呼ぶことにする。SP、SQは第一の整相加算手段6により断層スライス面方向の開口について受信ダイナミックフォーカスの整相加算がされている。受信ダイナミックフォーカスを行っているため、超音波受信ビーム信号29が形成する走査線信号LS0、LS1での深さ方向に対応する時間的な位置は、おのおの長さS0-P、S1-P=S1-Qを音速cで割ったものの2倍に対応している。S1-Qは、点S1、S2位置間の長さ(すなわち断層スライス面SL#(n)とSL#(n+1)の間隔)と、S0-Pの長さとから幾何学的
関係により求められる。このため、走査線信号LS0上の任意の位置のSPに対応する走査線
信号LS1上のSQの位置が決められれば、その二者が一致するように走査線信号LS1に遅延を与えればよい。このように、LS0上での任意のSPに対応するLS2上でのSQに遅延をかけながら加算していくことで、エレベーション方向にも受信ダイナミックフォーカスを行うことができる。
【0055】
第二の整相加算手段9では、第一の整相加算手段6から出力する超音波受信ビーム信号29に対して、断層スライス面上で対応する走査線の走査線信号をなす複数の超音波受信ビーム信号29を選択し、整相加算を行えばよい。このときに与える遅延は断層スライス面の間隔と焦点の深さ方向位置によって決定される。
ここでは説明を簡単にするために、合成開口の焦点Pの位置を断層スライス面の上にあるとして説明を加えたが、合成開口の焦点Pは断層スライス面の上になくともよい。即ち合成開口の焦点は略一次元トランスデューサの電子走査によって取得される各断層スライス面の間、または断層スライス面を外れた位置にあってもよい。この場合にも、焦点Pと各断層スライス面の位置から幾何学的関係を使ってエレベーション方向の第二の整相加算が行える。
【0056】
本発明では、このように、多数の信号に遅延を与えて加算する処理を、まず略一次元配列に行う。そして、その結果に対する遅延と加算処理をエレベーション移動方向に行うという、二段の整相加算手段を有する構成である。したがって、一般の二次元アレイを用いる場合はもとより、すべての受信信号をメモリに格納したのち合成開口を行う場合に比べても、リアルタイム処理のための回路規模を抑制し小さくすることができる。
【0057】
(第一の制御フェーズ)
第一の制御フェーズ中における合成開口の詳細について、図10(a)〜図10(c)を用いて説明する。第二の整相加算は各断層スライス面の位置と対象点の位置で決まるため、図にはプローブ1の移動を行うエレベーション方向と被検体の深さ方向で作る断面への射影図を示す。本実施例において、第一の制御フェーズは、後述する第三の制御フェーズと並んで、従来の合成開口処理ではデッドゾーンとなっていた領域の断層スライス画像データである撮像面を求める期間である。
ここで、本発明における、デッドゾーンについて説明する。デッドゾーンとは、従来のように、第二の整相加算の遅延パターンを固定したままで機械走査方向に第二の整相加算をしていった場合に、合成開口されていない領域(第二の整相加算による高分解能な断層スライス画像データが生成できない領域)のことを称する。つまり、機械走査の位置に関わらず、第二の制御フェーズのみを行って第二の整相加算を行った場合において、デッドゾーンはM枚の断層面に対応する超音波受信ビーム信号を用いて整相加算されていない領域である。なお、機械走査方向に第二の整相加算を行う際に使用する断層面の枚数をM枚とする。
【0058】
図中、SL#(0)〜SL#(8)は、プローブ1の位置に対応した断層スライス面である。FP1〜FP3は、合成開口の対象として焦点を与える焦点P1〜P3の乗る撮像面である。以降の説明において、撮像面とは、合成開口により生成される断層スライス画像データの意味として用いる。プローブ1の機械走査に伴って断層スライス面が決まる。特に、断層スライス面SL#(0)をプローブ機械走査開始位置とする。
符号40は、第二の整相加算手段9で与える遅延量を求めるための超音波伝搬経路である。符号41は、超音波伝搬時間が同一となる点を結んだ補助線である。またメモリ手段7へ格納される超音波受信ビーム信号29を、丸記号を用いて概念図的に表わす。それぞれの丸記号は、各断層スライス面内の走査線信号に対応する複数の超音波受信ビーム信号29を一括して表す。ここでは機械走査は連続であるものとして説明をする。
【0059】
図10(a)は、プローブ機械走査の開始後、所定枚数のM枚の組み合わせの断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29が格納され、処理が第一の制御フェーズへ移った段階をあらわす。所定枚数Mはエレベーション方向に合成開口を行う際に使用する断層スライス面の面数にとればよく、エレベーション方向合成開口での開口の大きさと断層スライス面のピッチによって決定される。一般に、Mが大きいほど合成開口効果での分解能が高くなるが、第二の整相加算手段9の処理が増加する。この例ではM=5とする。
断層スライス面のピッチ間隔が細かいほどエレベーション分解能が向上するが、一方で全体の撮像時間が増加する。またここでは、断層スライス面のピッチ間隔は等間隔であるとする。これはプローブ1の機械走査の速度を均一にし、また後段の画像信号化手段12での処理後に画像メモリ13に格納する3D画像データのエレベーション方向ピッチを均一に構成するのに好ましい構成で、その後の画像処理にも好適なデータ生成が行える。ただし、撮像領域の部分的な分解能を上げるなどの目的で断層スライス面のピッチ間隔を制御手段10により変化させても構わない。
【0060】
図10(a)では、メモリ手段7には、SL#(0)〜SL#(4)の5面の断層スライス面に対応する複数の超音波受信ビーム信号29が格納されている。図10(b)、図10(c)では、プローブ1を移動しながら取得された各々の断層スライス面に対応する複数の超音波受信ビーム信号29を、次々とメモリ手段7に格納していく段階を示す。図10(a)〜図10(c)において、プローブ1の移動に応じて新たに取得され、格納された超音波受信ビーム信号29は、黒色の丸記号で表示されている。第二の整相加算手段9には、選択回路8により選択された断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)に対応する超音波受信ビーム信号29が入力される。同時に遅延パターン組格納メモリ11に格納された遅延パターンから図10(a)〜図10(c)の時相に応じた遅延パターンが選択され、第二の整相加算手段9で第二の整相加算が行われる。
【0061】
遅延パターンは以下のように決定、選択される。
図10(a)において、FP1は合成開口により合成される撮像面であり、特に図10(
a)は第二の整相加算手段による整相加算が開始される時相であるので、この面が撮像開始面に相当する。FP1のエレベーション方向位置は取得する撮像範囲によって決定される
。図に示すように、撮像面を機械走査範囲外にとることができる。同様に、FP2,FP3はそ
れぞれ、図10(b)、図10(c)の時相で合成開口によって合成される撮像面である。FP1〜FP3のエレベーション方向間隔は、断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)のピッチに一致させる。これは後述の第二の制御フェーズ中に得られる撮像面の間隔と整合がとれた間隔で画像データを作成するのに適しており、エレベーション方向分解能や画像データ利用に好ましい構成である。ただし、これ以外の間隔を用いてもよい。
【0062】
まず、図10(a)においてFP1上の焦点P1にフォーカスを合わせる整相加算処理につ
いて説明する。断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)上の、P1に対応する走査線に基づいて整相加算処理を行う。焦点P1はFP1上にあり、かつ、断層スライス面上の走査線をプローブ1
の移動する向きと逆向きに平行移動した線上にある。P1が乗っているこの線を、FP1上の
撮像ラインと呼ぶことにする。
【0063】
超音波伝搬経路40は、SL#(0)〜SL#(4)上で断層スライス面の対応する走査線を作成する際の、超音波開口中心から焦点P1までの各々の超音波の伝搬経路を示す。その長さは、SL#(0)〜SL#(4)のそれぞれとFP1の垂直距離を底辺、焦点P1の高さを高さとする直角三角
形の斜辺の長さとして幾何学的に求められる。エレベーション方向の整相加算はSL#(0)〜SL#(4)上での断層スライス面の対応する走査線上の信号に対し、超音波伝搬経路40の各経路の伝搬時間の差を相殺するように遅延を与えて加算することで行われる。
補助線41は焦点P1を中心とする円である。超音波伝搬経路40の各経路とこの円の交点を基準として、各超音波伝搬経路長の差異が幾何学的に計算できる。伝搬経路帳の差異
と音速cを用いて、SL#(0)〜SL#(4)上での断層スライス面の対応する走査線に与える遅延量が求まる。この遅延量を用いることで焦点P1に対する整相加算が行える。撮像面FP1上
の焦点P1の高さを変えていくと、撮像ライン上の各点に関して整相加算された信号が得られる。
【0064】
プローブ1の走査方向は、断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)の略垂線方向である。このため、断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)ごとに、撮像面FP1上の撮像ラインに対応する走査線
を選択し、選択した走査線群に遅延量を与えて整相加算を行うと、撮像ライン上の各点に対する整相加算信号が得られる。ここで得られた整相加算信号は、撮像面FP1の各撮像ラ
イン上の各点に対して断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)を用いてエレベーション方向に合成開口を行ったものとなっている。
このとき与える遅延量は、撮像ライン上での焦点Pの高さと、走査線がSL#(0)〜SL#(4)のどの断層スライス面上のあるかによって決定される。同一断層スライス面の走査線に対しては同じ遅延量の組を用いることができる。この焦点の高さと断層スライス面によって決まる遅延量の組を遅延パターンとして遅延パターン組格納メモリ11に格納しておけばよい。第一の制御フェーズでは、第二の整相加算手段9の遅延パターンを、プローブ1の走査位置に応じて遅延パターン組格納メモリ11より選択する。選択した遅延パターンを第二の整相加算手段9で処理を行う。
【0065】
以上のようにして撮像面FP1上の撮像ライン上の各点に対する合成開口された整相加算
信号が得られる。得られた整相加算信号は画像信号化手段12で画像信号化され、画像メモリ13へ格納される。これにより画像メモリ13には撮像面FP1上に対応した合成開口
された断層スライス画像データが格納される。
【0066】
図10(b)、図10(c)の場合も同様である。すなわち、プローブ1の機械走査に伴ってそれぞれ撮像面FP2、FP3にとった時の遅延パターンを断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)と撮像面FP2、FP3の幾何学的配置より計算しておく。そして計算結果を遅延パターン組格納メモリ11に格納しておく。プローブ1が移動して図10(b)、図10(c)の時相になった時点で、制御手段10は遅延パターン組格納メモリ11よりおのおのの遅延パターンを第二の整相加算手段9へ与える。エレベーション方向に整相加算を行った結果は、撮像面FP2,FP3に対応した合成開口された断層スライス画像データとして、画像メモリ
13に格納される。
【0067】
上記の方法により、図10(a)〜図10(c)に示すように、プローブ1の機械走査にともなって撮像面FP1〜FP3上の合成開口が行われる。その結果得られた信号値が画像信号化手段12で画像信号に変換され、それぞれ撮像面FP1〜FP3に対する断層スライス画像データとして画像メモリ13に格納されていく。このように、遅延パターンを変化させて第二の整相加算を行うことにより、デッドゾーンに位置する断層面上の第二の整相加算信号を生成できるため、デッドゾーンを低減することができる。撮像面FP1〜FP3の設定の仕方、また撮像面上での画像ラインの設定の仕方などは画像データの取り扱いによって任意である。ただし、プローブ1の機械走査のピッチや断層スライス面での超音波ビームの電子走査のピッチに合致させ、後段の画像処理手段14で所望の画像のピクセルまたはボクセルに一致させるのが好ましい。
【0068】
(第二の整相加算手段の具体的構成例)
図4(c)を用いて、第二の整相加算手段の処理をより詳しく説明する。図中のFPは、エレベーション方向の合成開口整相加算を行う目的の撮像面である。FLは、撮像面FP上の対象とする撮像ライン、F0は撮像ライン上の焦点である。本図は図4(b)と同様にプローブ1がエレベーション方向に連続移動しながら、断層スライス面を順に、・・・、SL#(n-1)、SL#(n)、SL#(n+1)、・・・、と出力する時に出力される超音波受信ビーム信号29
の走査順を示したものである。
【0069】
図中の各断層スライス面の内部では、実線で示した超音波発信ごとの超音波受信ビーム信号29が電子走査によりラスタ走査順に計算出力され、エレベーション方向には一定周期で断層スライス面が計算出力される。この結果、各断層スライス面内の焦点に対応する特定位置a,b,cのエコー信号は、一定周期ごとに出力されることになる。よって、メモリ
手段7に格納された超音波受信ビーム信号29から断層スライス面間隔に対応する上記一定周期の出力に遅延を与え加算を行っていけばよい。計算結果は対応する撮像ラインFL上の焦点像F0として得られる。
【0070】
第一の制御フェーズでは、第二の整相加算手段9への入力信号の組が固定され、選択回路8は超音波受信ビーム信号29のうち必要な断層スライス面(上記の例ではSL#(0)〜SL#(4))分のデータを第二の整相加算手段9へ入力する。
図6に、第二の整相加算手段9の好ましい構成例を示す。第二の整相加算手段9は、スライス遅れ回路90と整相加算回路91を有する。スライス遅れ回路90は、それぞれ一つの断層スライス面分の超音波受信ビーム信号29を格納するメモリ900〜903からなる。整相加算回路91は、遅れ調整回路92と加算回路93からなる。選択回路8で選択された連続する複数の超音波受信ビーム信号29は、断層スライス面に従ってスライス遅れ回路90のメモリ900〜903に格納される。図10(a)〜図10(c)に示した第一の制御フェーズでは、SL#(0)〜SL#(4)上の走査線に関する超音波受信ビーム信号29が、取得された順にメモリ900〜903に格納される。
【0071】
その後メモリ900〜903から順次データを読み出すと、図4(c)のa,b,cで示す
ように連続するスライス面の同じ位置のエコー信号が並列に出力できることになる。遅れ調整回路92は、図10(a)〜図10(c)の時相に応じて遅延パターン組格納メモリ11より遅延パターンを選択し、各断層スライス面の走査線に沿って超音波受信ビーム信号29に遅延を加える。加算回路93は、各断層スライス面からの信号を加算する。上記の処理を走査線ごとに繰り返すことで、撮像面の各撮像ライン上での整相加算結果が得られる。
【0072】
なお、加算回路93による加算は第一の整相加算手段6の加算回路28と同様に、入力信号ごとに重みをつけて加算するというアポダイジング処理(アポダイゼーション)を含めることもできる。アポダイジング処理は、受信開口を制御したり周辺からの干渉波の影響を減らしたりする効果がある。この重みは目的に応じて固定でも良いし受信時刻に応じて変化するようにしても良い。
【0073】
この実施例では、断層スライス面走査の繰り返しピッチが一定であることを仮定して、スライス遅れ回路を一定時間の遅れ回路としている。しかし、何らかの理由により繰り返しピッチが乱れたり無駄時間が発生したりする場合には、スライス遅れ回路の起動と停止を適切に制御する手段を追加して、常に連続する断層スライス面の同じ位置のエコー信号が並列に出力できるようにすることができる。また、スライス遅れ回路90と遅れ調整回路92はどちらも遅延時間を調整する回路なので、統合して一つの遅れ調整回路としたり、遅延時間の分割方法を種々に変えて実施したりすることも可能である。しかし、これらの変形は単なる設計事項であり、本発明の主旨を変えるものではない。また上記説明では、合成開口を行う断層スライス面の数を5とし、図6におけるスライス遅れ回路90のメモリ900〜903をこれに合わせ4とした。しかしながらこれらの数は一例であり、所望の数値を採用して良い。
【0074】
(第二の制御フェーズ)
図7を用いて、第二の制御フェーズ中に第二の整相加算手段9でおこなう整相加算処理
による合成開口効果を説明する。
図7(a)〜図7(c)は、第一の制御フェーズ図10(a)〜図10(c)に続いて、第二の制御フェーズにおいてプローブ1の機械走査に従ったエレベーション方向の整相加算の様子を示す図である。第二の制御フェーズは、従来の合成開口処理で撮像面を求める方法と同様である。
【0075】
図7(a)は、図10(c)に続いてプローブ1を移動させ、これに応じて撮像面FP4
を設定した状態である。プローブ1の電子走査により取得された断層スライス面上の複数の超音波受信ビーム信号29が、メモリ手段7へ格納される。第二の整相加算手段9には、選択回路8により選択された断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)上の走査線信号に相当する複数の超音波受信ビーム信号29が入力される。このとき、断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)のうちの真ん中の面の位置に撮像面FP4が設定され、エレベーション方向の開口の略中心上の断面が撮像されるように、第二の整相加算手段9の遅延パターンが設定される。
【0076】
第二の制御フェーズでは、フェーズのはじめに、第二の整相加算手段9でおこなうエレベーション方向の整相加算のための遅延パターンを遅延パターン組格納メモリ11から読み込んで設定する。第二の整相加算手段9が、この遅延パターンを用いてエレベーション方向の整相加算を行うことで、撮像面FP4上での各撮像ライン上での整相加算結果が得ら
れる。得られた結果は画像信号化手段12で画像信号に変換され、撮像面FP4に対する合
成開口された断層スライス画像データとして画像メモリ13に格納される。
【0077】
プローブ1が移動して図7(b)の時相になった時点でも同様に、プローブ1の電子走査により取得された断層スライス面上の複数の超音波受信ビーム信号29がメモリ手段7へ格納される。このとき、制御手段10からの制御により、選択回路8に第二の整相加算回路9への入力信号(超音波受信ビーム信号)が選択しなおされる。すなわち、メモリ手段7に格納された複数の超音波受信ビーム信号29のうち特定の複数の超音波受信ビーム信号が選択回路8で選択され、第二の整相加算手段9へ入力される。図7(b)の場合、断層スライス面SL#(1)〜SL#(5) 上の走査線信号に相当する複数の超音波受信ビーム信号
29が選択される。
【0078】
図6の構成例に従えば、選択回路8で選択された連続する複数の超音波受信ビーム信号29は、断層スライス面SL#(1)〜SL#(5)の順に、スライス遅れ回路90のメモリ900〜903に格納される。メモリ900〜903から順次データを読みだし、スライス遅れ回路90と遅れ調整回路92で所定の遅延パターンが与えられ、撮像面FP5上の各撮像ライ
ン上に対応する整相加算結果が得られる。結果は画像信号化手段12で画像信号に変換され、撮像面FP5に対する合成開口された断層スライス画像データとして画像メモリ13に
格納される。
【0079】
プローブ1をさらに移動させた状態を示す図7(c)でも同様に、撮像面FP6に対する
断層スライス画像データが画像メモリ13に格納される。このような処理を続けることで、最初に設定された同一の遅延パターンを、異なる断層スライス面間での整相加算に適用して合成開口を行うことが可能になる。合成開口処理により得られた断層スライス画像データは、順次画像メモリ13に格納される。同一の遅延パターンを用いることで、合成開口される受信ビームパターンのエレベーション方向の形状は同じになる。また、第二の整相加算に入力する複数の超音波受信ビーム信号29の断層スライス面をずらしていくことでエレベーション方向に走査された合成開口画像が得られる。
【0080】
本実施例では、撮像面FP4〜FP6は等間隔としており、それぞれ断層スライス面SL#(2)〜SL#(4)に一致させた構成をとっている。かかる構成をとることで、プローブ1の機械走査と作成される合成開口断層画像の撮像面が一致し、制御手段10で行う制御や画像処理手
段14で行う画像再構成が簡便なものとなる。ただし、撮像面の位置はこの構成に限られることはない。撮像面の位置は断層スライス面の間の位置にとることもでき、とくに偶数面の断層スライス面を用いて第二の整相加算を行う場合には、撮像面を整相加算を行う断層スライス面の中間位置にとることが好ましい。
また、第二の制御フェーズを開始する時点での撮像面FP4の位置を、合成開口される断
層スライス面SL#(0)〜SL#(4)のうちの真ん中の面の位置である断層スライス面SL#(2)と一致させている。その結果、合成開口される受信ビームパターンのエレベーション方向の対称性を上げている。これにより合成開口される画像のエレベーション方向の均一性が増す。ただし、第二の制御フェーズにおいて使用する第二の整相加算用の遅延パターンを一定にたもつ構成をとるならば、撮像面と合成開口される複数断層スライス面の位置関係はこれに限られるものではない。
【0081】
(第三の制御フェーズ)
第二の制御フェーズを行っていき、プローブ1の機械走査が走査終了点に達した後に第三の制御フェーズに移行する。複数の断層スライス面に対応する複数の超音波受信ビーム信号29を第二の整相加算手段9への入力信号として固定する。そして、遅延パターン組格納メモリ11から選択する遅延パターンを変化させつつ、合成開口を行う撮像面を移動させながら画像データを取得し、取得領域が被検体の所定の領域に達した時点で全処理を終了する。この過程は、図10(a)〜図10(c)を用いて説明した第一の制御フェーズの過程を、エレベーションプローブ進行方向と逆方向に行うものである。
【0082】
ただし、プローブ1の移動は撮像走査終了点に達した時点で終了しても構わない。プローブ機械走査のプローブ移動を第二の制御フェーズの終了時に同時に終了し、その後第二の整相加算処理のみを行っていくことで、第三の制御フェーズを継続することができる。すなわち、既にメモリ手段7に格納された複数の超音波受信ビーム信号29を用いて、遅延パターン組格納メモリ11から選択する遅延パターンを変化しながら、合成開口を行う撮像面を移動させ、移動する撮像面でのエレベーション合成開口データを作成する。このとき超音波の送受信を行う電子走査を行って第一の整相加算手段6で新たな超音波受信ビーム信号29を作成し、メモリ手段7に新たな超音波受信ビーム信号29を格納していく必要はない。合成開口を行う撮像面を移動するため第二の整相加算手段9で遅延パターンを変化しながら整相加算された出力は、画像信号化手段12で画像信号に変換され、対応する撮像面の断層スライス画像データとして画像メモリに格納されていく。所定の撮像面までの断層スライス画像データが作成された時点で処理を終了すればよい。
【0083】
本実施例では、メモリ手段7に格納される複数の超音波受信ビーム信号29は、合成開口に用いる断層スライス面数(上記説明ではM=5)より第一および第三の制御フェーズにおいて撮像面移動を行う面数(上記説明では3面)分だけ多くとる必要がある。これは、先行して機械走査するプローブ1からの超音波受信ビーム信号29を取得格納し、同時に第二の整相加算手段9によるエレベーション方向の合成開口整相加算をおこなうためである。ただし、格納しておかねばならない超音波受信ビーム信号29は合成開口に用いる断層スライス面数(上記説明ではM=5)と第一の制御フェーズおよび第三の制御フェーズで移動する撮像面数分で十分である。そのため、不必要となったメモリの領域に上書きをしていく構成をとることで、メモリ領域を効率的に使用することができる。
【0084】
(本実施例の効果)
本実施例では、先行して機械走査するプローブ1からの超音波受信ビーム信号29を取得格納し、プローブ1の位置より機械走査方向に遅れた位置での撮像面をエレベーション方向に順次合成開口していくものとなっている。すなわち、プローブ1の位置で電子走査により取得される断層スライス面より後方の撮像面の走査線が、第二の整相加算手段9により合成開口されて出力される。このような構成で第二の整相加算手段9に対する処理の
制御を第一、第二および第三の制御フェーズに分けて行うことで、プローブ1の機械走査の移動は全機械走査領域に対して一様になる。このため、プローブ1の機械制御に対する制御は単純なものとなり、特に連続走査で一様にプローブ移動を行うのに好適である。このためプローブ走査機構2によるプローブの移動制御が簡便になり、装置構成の複雑化や機械走査時間の無駄を省いた構成にできるという利点を有する。さらに、図10(a)のFP1に示すように、機械走査範囲外へ撮像領域を拡大した広範囲な撮像が可能になる。
本実施例の場合、図4に示したように、第二の制御フェーズにおいて、断層スライス面のうちの真ん中の面の位置に撮像面が設定されるため、デッドゾーンがプローブの機械走査の開始位置と終了位置において生成される。よって、第一の制御フェーズを第二の制御フェーズの前に行い、第三の制御フェーズを第二の制御フェーズの後に行ったが、本発明は上記例に限定されるものではない。デッドゾーンが生成される位置に応じて第一の制御フェーズや第三の制御フェーズを行うと良い。
【0085】
<実施例2>
実施例2は、プローブ1の機械走査をステップ・アンド・リピート方式でおこなう場合に好適な構成である。本実施例は、制御手段10が行う第一〜第三の制御フェーズに、プローブ1の機械走査におけるプローブ移動停止またはプローブ移動の開始を含む。
【0086】
図8に、本実施例での制御処理をフロー図で示す。実施例1と共通する装置構成および処理の詳細に関しては、説明を省略する。
ステップS801〜S805では、実施例1と同様の処理が行われる。具体的には、エレベーション方向の合成開口を行うための所定枚数Mの断層スライス面を取得するまで、プローブ1を移動させつつ電子走査を行い、超音波受信ビーム信号29を取得する。取得された複数の超音波受信ビーム信号29はメモリ手段7に格納される。メモリ手段7に格納された超音波受信ビーム信号29が所定枚数Mの断層スライス面の走査線に対応するものとなった時点で、第一の制御フェーズへうつる。この時点で、メモリ手段7には、エレベーション方向の合成開口を行うための所定枚数Mの断層スライス面の超音波受信ビーム信号29が格納されている。
【0087】
(第一の制御フェーズ)
ステップS806において、プローブ走査機構2でプローブ1の移動を停止する。本実施例の第一の制御フェーズでは、プローブ1の位置を固定し、プローブ1での超音波送受信による電子走査を行わず、メモリ手段7に格納された超音波受信ビーム信号29を用いて実施例1における第一の制御フェーズと同様の処理を行う。ただし、プローブ1の移動と断層走査線処理は行わない。
【0088】
ステップS807において、メモリ手段7に格納された複数の超音波受信ビーム信号29から、第二の整相加算手段への入力データの組が選択される。ステップS808において、遅延パターン組格納メモリ11から遅延パターンが選択される。そしてステップS809において、第二の整相加算手段9が、エレベーション方向の整相加算(合成開口処理)を行う。整相加算の結果は画像信号化手段12に出力される。画像信号化手段12で画像信号化された撮像面上のデータは、画像メモリ13に格納される。次いで、遅延パターン組格納メモリ11から新たに選択した遅延パターンを用いて第二の整相加算手段9での整相加算処理を行うことを繰り返す。遅延パターン組格納メモリ11に格納された遅延パターンを図10(a)〜図10(c)に示したものと同様に撮像面FP1〜FP3に対応するものとすることで、画像メモリ13に撮像面FP1〜FP3を構成する走査線を画像化した信号が格納されていく。撮像面を移動するごとに第二の整相加算手段9での整相加算処理を繰り返し、所定の撮像面に対する処理が終了した段階で第二の制御フェーズに移行する。
【0089】
(第二の制御フェーズ)
ステップS810において、再度、プローブ走査機構2でプローブ1の移動を開始する。またプローブ1の移動に伴って断層走査線処理、すなわちプローブ1による超音波の送受信および電子走査を行って複数の超音波受信ビーム信号29を作成し、メモリ手段7に格納する。本実施例では、メモリ手段7に格納される超音波受信ビーム信号29のデータサイズは、エレベーション方向の合成開口を行うための所定枚数Mの断層スライス面に相当するもののみとする。そして、新たな断層スライス面の超音波受信ビーム信号29が取得されるたびに、メモリ手段7のうち、合成開口が済んで不要となったメモリ領域に上書きする形で書き換えていく。
【0090】
ステップS811において、第二の整相加算手段9で使用する遅延パターンが選択、設定される。第二の制御フェーズでは、この遅延パターンが固定である。ステップS812において、プローブ1の移動および断層走査線処理に伴い、メモリ手段7内に新たに更新された超音波受信ビーム信号29が入力データ組として選択される。ステップS813において、第二の整相加算手段9は、選択されたデータに整相加算を行って(合成開口処理)、結果を画像信号化手段12に出力する。画像信号化手段12で画像信号化された撮像面上のデータは画像メモリ13に格納される。画像メモリ13には撮像面図7に示したFP4〜FP6と同様にプローブ1の移動に対応した撮像面上の画像走査線データが格納されていく。続いてステップS814において、プローブ1の移動に伴う断層走査線処理を継続する。
【0091】
(第三の制御フェーズ)
ステップS815において、プローブ1の機械走査が走査終了点に達したときに、プローブ走査機構はプローブ機械走査を停止する。続いてのステップS816〜S818の処理は第一の制御フェーズの処理と同様であり、デッドゾーンの撮像面や、場合によっては機械走査範囲外の撮像面が作成される。
【0092】
本実施例では、メモリ手段7に格納される超音波受信ビーム信号29が、エレベーション方向の合成開口を行うための所定枚数Mの断層スライス面に対応するもののみで済む。そのため、実施例1のように各撮像面の処理に先行する機械走査のプローブ1の断層走査線処理のデータを格納する必要がない。したがってメモリ手段7の構成をより小さくし、コストを抑制することが可能である。
特にプローブ1の機械走査をステップ・アンド・リピート方式でおこなう場合には、制御手段10で行うプローブ移動の制御と組み合わせて第二の整相加算手段9での処理を行うことで、処理を好適に行うことができる。
【0093】
<実施例3>
実施例3は、制御手段10が行う第一〜第三の制御フェーズで、超音波エコーの信号を取得するための超音波送信パターン条件が異なる制御を行うものである。さらに本実施例は、プローブ1上のトランスデューサアレイが1.5D、1.75D、または2Dの構成であり、これらのトランスデューサアレイを用いてエレベーション方向の送信ビームパターンが制御可能となっている。さらに、このエレベーション方向の送信ビームパターンを変更するため、超音波送信パターン条件を用いて制御手段10が行う第一〜第三の制御フェーズで異なる制御を行うことを特徴とする。
【0094】
初めに、本実施例のプローブ1を用いたエレベーション方向の送信パターンの変更に関して説明する。本実施例では、略一次元トランスデューサアレイとして、エレベーション方向にもトランスデューサ素子が分割されており、エレベーション方向に独立に超音波送信駆動可能なトランスデューサアレイを用いる。このようなものとして、1.5D、1.7
5D、および2D構成のトランスデューサアレイがあるが、ここでは簡単のため、1.5Dア
レイについて説明を加える。ただし、1.75D、2Dアレイを用いてもよい。
【0095】
図9(a)に、1.5Dトランスデューサアレイのエレベーション方向断面図を示す。トランスデューサアレイ16はエレベーション方向に複数(ここでは5つとする)に分割され、中心に対して対称に配列されたトランスデューサ素子が結線され一括して駆動される。ここでは同時に駆動する素子を同一番号で表し、中心素子列を160、第一側列の素子列を161、第二側列の素子列を162で表す。送信手段4は不図示のスイッチング回路を介して160、161、162を独立に駆動でき、スイッチング回路の接続は制御手段10により超音波送信パターン条件として制御できる。なお、1.5D トランスデューサ
アレイ送信側にはエレベーション方向に超音波を収束する音響レンズを設けてもよい。ただし、エレベーション方向で合成開口を行う本発明では超音波ビームの開口角が大きい方が好ましいため、音響レンズを持たない構成がより好ましい。
【0096】
図9(b)〜図9(d)には、トランスデューサアレイ16をスイッチング回路の接続により、条件を変えて駆動した場合のエレベーション方向の開口角の概略図を示す。図9(b)は中心素子列160のみ、図9(c)は中心素子列160と第一側列の素子列161、図9(d)はすべての素子列(中心素子列160と第一側列の素子列161と第二側列の素子列162)を駆動した場合である。
図9(b)に示す中心素子列160のみで駆動した場合には、エレベーション方向の駆動実効素子幅が小さいため開口角が大きく、エレベーション方向の広範囲にわたって超音波送信が行わる。一方、送信超音波の音圧密度の強度は弱くなる。図9(c)、図9(d)になるにつれ、駆動素子列が大きくなり、エレベーション方向の駆動実効素子幅が大きくなる。また、開口角は小さくなり、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅が細くなる。
【0097】
このように、制御手段10により超音波送信パターン条件としてスイッチング回路の接続を制御し、駆動実効素子幅を変えることで、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を制御できる。
【0098】
さらに、中心素子列160、第一側列の素子列161、第二側列の素子列162の駆動パルス間に時間遅れを生じさせることで、エレベーション方向に送信ビームを形成できる。例えば、設定した送信フォーカスに対して中心素子列160、第一側列の素子列161、第二側列の素子列162の駆動パルスの位相をそろえることで、エレベーション方向に収束する送信超音波ビームを作成できる。
【0099】
図9(e)は、このようにして形成した送信超音波ビームの概略図である。このとき、例えば第二側列の素子列162の駆動パルスの位相を他の素子列の駆動パルスの位相より若干ずらすことで、意図的に送信超音波ビームの収束を弱めることもできる。図9(f)はこのようにして形成した送信超音波ビームの概略図であり、図9(e)の送信超音波ビームよりも、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅が太くなる。また図9(g)は、送信フォーカスの位置をより近接に設定し、かつ第二側列の素子列162の駆動パルスの位相を他の素子列の駆動パルスの位相よりより大きくずらした場合の概略図である。
【0100】
このように、中心素子列、第一側列、第二側列の駆動パルスをずらし、超音波送信パターン条件として制御手段10により時間差を与えて制御することで、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を制御できる。
【0101】
本実施例は、制御手段10が行う制御項目の中に、上記のような超音波送信の超音波送信パターン条件を加え、第一〜第三の制御フェーズでこれら超音波送信パターン条件を変えるものである。
すなわち、第一の制御フェーズにおいては、超音波受信ビーム信号29を取得するために送信する超音波のエレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を太くする超音波送信パターン条件を用いる。また第二の制御フェーズにおいては、超音波受信ビーム信号29を取得するために送信する超音波のエレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を細くする超音波送信パターン条件を用いる。第三の制御フェーズにおいては第一の制御フェーズと同様の制御を行う。
【0102】
エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を太くする超音波送信パターン条件は、図9(b)に示すようなスイッチング回路の接続、あるいは図9(g)に示すような中心素子列、第一側列、第二側列の駆動パルスの時間差でよい。
また、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を細くする超音波送信パターン条件は、図9(d)に示すようなスイッチング回路の接続、あるいは図9(e)に示すような中心素子列、第一側列、第二側列の駆動パルスの時間差でよい。
【0103】
このような制御をおこなうと、第一の制御フェーズ時には、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅が太くなる。その結果、図10(a)における撮像面FP1のよ
うに、超音波送信を行うプローブ1より離れた面にも広範囲に超音波が回り込み、その超音波エコー波がプローブ1で受信できる。
また第二の制御フェーズ時には、合成開口に用いる複数の断層スライス面の略中央に撮像面が設定される。この場合には超音波エコーを取得するプローブ位置と撮像面はさほど離れることはないため、第一の制御フェーズ時に比べ送信超音波の回り込みは良好となる。この場合には、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を細くとることで送信超音波ビームの音圧密度の低下を防ぎ、超音波エコー波の全般的なSN比を確保することができる。
【0104】
制御手段10が行う制御に第一の制御フェーズと第二の制御フェーズとで超音波送信パターン条件の異なる制御を行うことを含むことで、各々の制御フェーズにおいて撮像面に対する超音波エコー波のSN比が好適な条件を与えることができる。これにより機械走査に伴う各プローブ位置で好適な合成開口原理に基づく第二の整相加算が行えることとなる。
【0105】
本実施例は前記実施例1、実施例2のいずれに組み合わせることも可能である。
また本実施例では、超音波送信パターン条件として、トランスデューサアレイ上の各トランスデューサ素子の駆動パルスに与える遅延条件とエレベーション方向の駆動素子数を用いた。しかし、その他にも、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を制御できる送信条件を制御してもよい。特にエレベーション方向の駆動パルス振幅や駆動パルス幅に変化を与え、トランスデューサ素子から送信する超音波の強度にエレベーション方向へ分布を与える送信アポダイゼーションを行ってもよい。送信アポダイゼーションの条件を第一の制御フェーズと第二の制御フェーズとで違えることで、本実施例と同様の効果を与えることができる。
【0106】
さらに1.75D、2Dアレイを用いた場合には、エレベーション方向に配列したトランスデューサを非対称に駆動できるため、駆動パルスに遅延を非対称に与えることで送信ビームにエレベーション方向の偏角を与えることも可能である。これらの送信条件を第一の制御フェーズと第二の制御フェーズと違えることで、本実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1:プローブ,2:プローブ走査機構,4:送信手段,5:受信回路,6:第一の整相加算手段,7:メモリ手段,8:選択回路,9:第二の整相加算手段,11:遅延パターン組格納メモリ,12:画像信号化手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成開口を行う被検体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳がんの早期発見のための有力な画像診断装置として、X線マンモグラフィー装
置が広く知られている。一方、被ばくを伴うX線の代わりに、浸襲性の低い超音波エコー
を用いて広範囲の3次元画像データを取得する方法が、たとえば特許文献1などに開示されている。特許文献1には、超音波探触子(以下プローブとも呼ぶ)を機械的に走査しながら電子走査を行うことで、3次元の超音波エコー画像を取得する装置が開示されている。
【0003】
3次元の超音波エコー画像を取得する方法としては、素子が2次元状に配列された2次元トランスデューサアレイを用いて3次元電子走査を行う方法も公知である。しかしながら、広範囲の撮像領域を良好な解像度で3次元電子走査するためには、2次元トランスデューサアレイの素子数が多くなる、素子数の増加に伴い処理規模が増加する、走査時間が増大するなどの問題がある。このため、実用的な超音波画像診断装置を構成することが困難になっている。これに対して、プローブの機械走査と電子走査を組み合わせた装置は被検体の広範囲の領域が簡便に撮像できるため、超音波マンモグラフィーなどの広範囲の撮像域の3次元画像取得装置として好適な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−028366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プローブを機械的に走査して広い領域の3次元エコー画像を取得するために、1次元方向に電子走査するプローブを、その電子走査方向と直交する方向(以下エレベーション方向と呼ぶ)に連続移動させながらエコー画像を取得する方法がある。この方法は、速度的にもコスト的にも最も有利である。この場合、超音波ビームの電子走査によって一つの断層スライス像を再構成することが出来るので、エレベーション方向の各位置において作成された断層スライス像を積み重ねることによって、機械走査領域全体の3次元画像を取得することが出来る。
【0006】
しかし、この方法には、スライス面内での画像分解能に比較してエレベーション方向への画像分解能が大幅に低下するという問題があった。その第一の理由は、プローブの機械走査を遅くして断層スライス面の取得ピッチを細かくすることが被検者の肉体的負担を増加させることになるため、ある程度機械走査を速めてエレベーション方向の画素密度を粗くせざるを得ないからである。さらに1次元トランスデューサアレイを用いて電子走査を行う一次元配列プローブではそのエレベーション方向の実効的開口角が配列方向に比べて小さく、エレベーション方向の再構成分解能が劣化するという問題も有していた。
【0007】
前記特許文献1には、プローブの機械走査に伴って、エレベーション方向の異なる位置において、電子走査により取得したデータの補間を行う装置が開示されている。すなわち、断層スライス面間で補間を行う装置である。これにより、エレベーション方向の画素密度の低下を抑制することができる。さらに複数の異なるエレベーション方向位置で取得したデータを用いて、合成開口原理を用いた処理を行うことでエレベーション方向の実効的
開口角による分解能低下を抑制する装置が開示されている。
【0008】
エレベーション方向の実効的開口角による分解能低下を、合成開口原理を用いて抑制する方法について、図5(a)〜(d)を用いて説明する。図5(a)〜(d)中、符号501〜504はプローブの位置を示している。図5は、エレベーション方向と被検体の深さ方向とから構成される面の射影図を示し、紙面奥行き方向に複数の素子が配列されている。つまり、紙面奥行き方向が電子走査方向である。このプローブは、エレベーション方向へ501から504の順に機械走査しながら、断層スライス面で電子走査により超音波受信ビーム信号を採取する。符号51は、合成開口方式を用いて整相加算を行う目標領域の中心、すなわち焦点である。符号511〜514はそれぞれ、プローブ位置501〜504におけるプローブから焦点51までの超音波エコーの伝搬経路を表す。プローブは、機械走査に応じて移動したそれぞれの位置(501、502、・・・)で超音波エコー信号を取得する。そして、その超音波エコー信号を記憶し、それぞれの位置での伝搬経路511〜514の伝搬時間を相殺するように各取得超音波エコー信号に遅延を与えて信号を加算する整相加算を行う。これにより、焦点51に合焦した超音波受信ビーム信号が作成できる。
【0009】
以上の動作は、各エレベーション位置において行う電子走査と組み合わせることができる。すなわち、電子走査で行う断層スライス面上での送受信超音波ビーム走査に関しては、断層スライス面内での送受信ビーム形成を行い、受信信号に通常の整相加算を行った整相加算信号(超音波受信ビーム信号)を格納しておく。次に、プローブ機械走査に応じて生じる各断層スライス面上の対応する超音波受信ビーム信号の整相加算信号に関しては、上記のエレベーション方向の整相加算を行う。
【0010】
このときプローブの機械走査に応じてそれぞれの位置で取得、作成した整相加算信号を記憶するための波形メモリが必要となる。一つの方法として、機械走査時に取得した信号をすべていったん波形メモリに格納して機械走査後にエレベーション方向の整相加算を行うことも可能であるが、その場合、画像再構成処理のリアルタイム性が失われる上に、大容量の波形メモリが必要になってしまう。そのためエレベーション方向の整相加算はプローブの機械走査に応じて逐次的に(できればリアルタイムで)行う構成をとることが好ましい。
【0011】
図5(e)は、プローブ機械走査による8つのプローブ位置(501〜508)において電子走査により採取した整相加算信号のうち、4つのプローブ位置での信号を用いてエレベーション方向に対する合成開口の整相加算を行った場合の模式図である。4つのプローブ位置での信号を用いて合成開口による1つの合成撮像面データを形成するためには、少なくとも断層スライス面(この例では4スライス面)分の信号を波形メモリに格納しておけばよい。すなわち、プローブ位置が504になった時点からエレベーション方向の整相加算を開始する。そして、プローブ位置が505〜508と移動するに伴って、エレベーション方向の整相加算を行って結果を出力しつつ、取得した信号を波形メモリに格納する。このとき新規に取得した信号を上書きする形で波形メモリに格納する、あるいは不要な信号を破棄することにより、波形メモリ容量を有効に使用することができる。またエレベーション方向の整相加算による合成撮像面データがプローブの機械走査に伴って順次得られていくために、画像再構成処理のリアルタイム性も確保されることとなる。
【0012】
合成開口原理を用いたエレベーション方向の整相加算に関しては、整相加算を行うエレベーション方向のプローブ位置の幅(図5(d)の53)が、通常の電子走査における複数トランスデューサ素子による開口幅に相当する。また、各プローブ位置同士の間隔(ピッチ)が、トランスデューサ素子間のピッチに相当する。これらの値をプローブのトランスデューサアレイの素子ピッチや電子走査の開口幅と同等とすることで、断層スライス面
でのBモード画像と同等の分解能をエレベーション方向においても得ることができる。
【0013】
しかしながらエレベーション方向の整相加算をプローブの機械走査に応じて逐次的に行う場合には、下に示すような問題が生じる。
図5(e)において、4つのプローブ位置での信号を用いて所定の(固定の)遅延パターンでエレベーション方向に整相加算することにより1つの断層スライス面を構成する。そのため、プローブ走査範囲54に対して、3D画像構成が行えるエレベーション領域5
5は小さくなる。そのため、プローブ走査開始および終了付近で、3D画像構成が行えな
い領域であるデッドゾーン56が生じる。すなわち、撮像範囲が機械走査範囲より狭くなってしまう。デッドゾーンの幅は、合成開口に用いるエレベーション方向のプローブ位置の数やピッチが大きいほど大きくなる。一方、デッドゾーン幅を狭めるためには上記プローブ位置の数やピッチを小さくする必要があり、エレベーション分解能が低下してしまう。このため、必要とする取得領域よりプローブを機械走査させる範囲を大きくとらねばならず、装置規模・装置構成の増大や走査時間の増加をまねくこととなる。特にマンモグラフィー装置などの診断装置へ適用する場合は、被験者に過大な負荷を強いることになる。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、合成開口による画像構成を行う被検体情報取得装置において、分解能を低下させず、撮像範囲を拡大するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、被検体に超音波を送信し、反射した超音波を受信して受信信号を出力する素子が複数配列した第一の方向に電子走査するプローブと、前記プローブを、前記素子の受信面と平行な面上における前記第一の方向と交差する第二の方向に機械走査する走査手段と、前記受信信号を用いて前記第一の方向の整相加算を行い、第一の整相加算信号を生成する第一の整相加算手段と、前記第一の整相加算信号を前記第二の方向における各位置で断層面毎に格納するメモリ手段と、前記メモリ手段に格納された第一の整相加算信号のうち、M枚(Mは2以上の整数)の断層面に対応する第一の整相加算信号を選択する選択手段と、前記選択されたM枚の断層面に対応する第一の整相加算信号を用いて前記第二の方向の整相加算を行い、第二の整相加算信号を生成する第二の整相加算手段と、を有し、前記第二の整相加算手段から出力される前記第二の整相加算信号を用いて、被検体内の情報を画像データとして取得する被検体情報取得装置であって、前記第二の整相加算手段は、前記プローブの機械走査に伴って、M枚の前記第一の整相加算信号の組を固定し、遅延パターンを変化させて第二の整相加算を行う第一のケースと、M枚の前記第一の整相加算信号の組を変化させ、遅延パターンを固定して第二の整相加算を行う第二のケースと、を切り替え、前記第一のケースにより、デッドゾーンに位置する断層面上の第二の整相加算信号を生成することを特徴とする被検体情報取得装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、合成開口による画像構成を行う被検体情報取得装置において、分解能を低下させずに撮像範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の装置の構成例を示す図。
【図2】本発明にかかわる超音波受信ビーム信号を説明する図。
【図3】本発明の実施例1における制御を説明する図。
【図4】本発明の第一の制御フェーズにおける整相加算を説明する図。
【図5】従来の合成開口を説明する図。
【図6】本発明の第二の整相加算手段の構成例を示す図。
【図7】本発明の第二の制御フェーズにおける整相加算を説明する図。
【図8】本発明の実施例2における制御を説明する図。
【図9】本発明の実施例3に使用する送信ビームを説明する図。
【図10】本発明の第一の制御フェーズにおける整相加算を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態を説明する。本発明はプローブを機械走査した各位置で超音波の送受信を行い、受信信号を用いて整相加算および合成開口を行う被検体情報取得装置に適用可能である。被検体情報取得装置とは、被検体に超音波を送信し、被検体内部で反射した反射波(反射した超音波)を受信して、被検体情報を画像データとして取得する超音波エコー技術を利用した装置である。取得される被検体情報とは、被検体内部の組織の音響インピーダンスの違いを反映した情報を示す。
以下の各実施例では、被検体情報取得装置の例として超音波画像診断装置について説明する。
【0019】
<実施例1>
図1に、本発明に基づく超音波画像診断装置の構成を示す。装置は、プローブ1、プローブ走査機構2、位置センサ3、送信手段4(送信回路)、受信回路5、第一の整相加算手段6、メモリ手段7、選択回路8、第二の整相加算手段9を備える。装置はまた、制御手段10、遅延パターンの複数組を格納したメモリ11、画像信号化手段12、画像メモリ13、画像処理手段14、表示手段15を備える。また、符号16は、プローブ1に含まれるトランスデューサアレイであり、符号17は、トランスデューサアレイより送受信される超音波ビームの概念図である。
【0020】
なお、本発明は、LCDなどの表示手段15や、画像処理手段14を必ずしも備える必要
はない。本発明は、プローブ内での超音波ビームの電子走査とプローブの機械走査を行って3D超音波画像データを作成し画像メモリ13へ格納するまでの機能を持つ、画像取得
装置として構成することもできる。その場合、画像処理手段14は一般的なPC上でソフトウエアによって構成され、画像取得装置の画像メモリ13から読み取った画像データを加工することで、3D超音波画像データより3Dレンダリング画像や断面画像、MIP画像を構
成することが可能である。またその際に各種画像フィルタや画素間の補間や形状・座標変換、動画処理を加えることもできる。
【0021】
プローブ1上には、素子が複数配列された、略1次元のトランスデューサアレイがある。ここで、略1次元トランスデューサアレイとは、送信手段4、第一の整相加算手段6と組み合わせ、超音波送受信ビームが断層スライス面上を電子走査し、通常のBモード超音
波断層画像を作成されるものであればよい。具体的には1D、1.5D、1.75Dのトラン
スデューサアレイを用いることができる。また、2D構成のトランスデューサアレイであ
っても、断層スライス画像を撮像するために電子走査により二次元断面を走査できるものであればよい。本発明において、複数の素子を用いて電子走査を行う方向を第一の方向と称する。1Dのアレイトランスデューサにおいては、素子の配列方向に電子走査を行っていく。そのため、素子が複数配列された方向は第一の方向と一致する。
【0022】
プローブ1の電子走査としては、超音波送受信ビームの方向を変え、扇状に超音波送受信ビームを平面上で電子走査するセクタ走査や、略平行移動で超音波送受信ビームを平面上に電子走査するリニア走査などが用いられる。以降では主にリニア走査について説明を加えるが、これに限定されるものではない。リニア走査は、電子走査による撮像幅が一定であり、撮像対象のプローブ近接部分でも広い撮像域を得られること、横方向分解能が撮像深度(プローブ・撮像対象接合面より測った深さ)によらないことなど利点がある。そのため超音波マンモグラフィーにはリニア走査が有利に適用できる。
【0023】
プローブ1はプローブ走査機構2の可動部位(不図示)に固定され、可動部位とともに、電子走査を行う断層スライス画像にほぼ垂直方向に移動する。この方向は、素子の受信面と平行な面上において、電子走査方向である第一の方向と交差する方向と言える。この移動を機械走査と呼ぶ。プローブ走査機構2は制御手段10からの制御に従ってモータ駆動により可動部位を移動させる。同時に、たとえば可動部位に固定された位置センサ3により、プローブ1の位置が制御手段10で検出される。本発明は制御手段10でプローブ1の位置に応じた制御ができればよいため、駆動に高精度ステッピングモータを用いて駆動制御が可能であれば位置センサ3を省くことも可能である。プローブ1が移動する機械走査方向(エレベーション方向ともいう)は、本発明の第二の方向に相当する。本発明において取得される断層スライス画像は、第一の方向と第二の方向とから規定される面に垂直な面である。
【0024】
プローブ1は、プローブ走査機構2により移動しながら、超音波の送受信動作を行って超音波エコーの断層スライス画像データを取得する。取得した断層スライス画像データは画像メモリ13に格納される。画像メモリ13に格納された断層スライス画像データは、プローブ走査機構2による機械走査終了後あるいは機械走査中に、画像処理手段14により、被検体の所望の断層スライス画像、3Dレンダリング画像などに処理され、表示手段
15に表示される。特に本発明の断層スライス画像データは、後述のように、プローブ1の移動方向(第二の方向)に合成開口原理を用いた整相加算を行ったものであることを特徴としている。このように本装置により3次元画像データを得ることができる。
【0025】
また制御手段10は、超音波の送受信動作に同期してプローブ走査機構2によるプローブ1の移動の開始、停止、あるいは移動速度の制御を行って、所望の位置での断層スライス画像データを取得する。
プローブ1の機械走査に関しては、ステップ・アンド・リピート方式と、連続走査方式があり、またこれらを組み合わせることもできる。ステップ・アンド・リピート方式は、プローブ1の移動・停止を断続的に行って、プローブ1の停止期間中に超音波ビーム17の電子走査を行って断層スライスデータを取得する方式である。連続走査方式は、プローブ1を略連続的に移動させながら断層スライスデータを取得する方式である。
【0026】
プローブ走査機構2によりプローブ1が所定の位置に達すると、制御手段10は、超音波ビーム17の電子走査を開始する。
その際、はじめに送信手段4が、プローブ1上のトランスデューサアレイ16の少なくとも一部分を駆動して、送信超音波ビーム17を被検体へ向け送信する。送信ビームの形成は周知の方法で行うことができる。制御手段10でトランスデューサアレイ16上の送信開口に相当するトランスデューサ素子が選択され送信フォーカスを有する超音波送信ビーム17が送信される。
【0027】
超音波送信ビーム17は、被検体内を伝搬中にその各部位の音響インピーダンスに応じて超音波反射波を生成し、その一部が超音波受信エコーとしてトランスデューサアレイ16で受波される。トランスデューサアレイ16上の選択された各トランスデューサ素子で超音波受信エコーが受波されると、各々受信信号(アナログ信号)を発生し受信回路5へ出力する。受信回路5は増幅回路とAD変換器より構成され、入力した各受信信号を増幅しデジタル時系列データ(デジタル化された受信信号)へ変換する。このとき、スイッチング回路で選択される複数のトランスデューサ素子の組を選定することにより、トランスデューサアレイ16上で超音波を受波する領域すなわち受信開口の位置および大きさを決めることができる。
【0028】
トランスデューサアレイ16上の受信開口に相当する各トランスデューサ素子からの複
数のアナログの受信信号は、受信回路5で同数の受信デジタル時系列データに変換されたのち、第一の整相加算手段6に入力される。第一の整相加算手段6は、複数の受信デジタル時系列データを用いて超音波受信ビーム信号(第一の整相加算信号)を作成する。
【0029】
図2(a)は超音波受信ビーム信号の作成を説明した図であり、図2(b)は超音波受信ビーム信号の表す走査信号が断層スライス面上(断層面上)でとる位置の概略を示す図である。
本図において、最も近い素子から距離rの位置の点Pで超音波送信ビームが反射し、反射波がトランスデューサアレイ16に受信されたとする。各トランスデューサ素子が出力する受信信号26は、反射波の伝播距離に応じて時刻がずれている。すなわち、点Pで反射
された超音波エコーは、開口を構成するトランスデューサ素子群(これを開口素子群という)22の中心位置から外側の素子になるにしたがって遅れて受信される。そこで、開口素子群22の各トランスデューサ素子の受信信号26の遅れ時間を、中心位置で受信された信号を基準として遅れ調整回路27によって調整してやる。そして、それぞれの受信信号26に含まれる点Pからのエコー信号成分を加算回路28で加算すると、点Pを焦点とした強い信号が受信できる。トランスデューサ素子にはいろいろな方向からの超音波エコーが重畳して受信されるが、他の点からの超音波エコーは加算しても受信波の位相がそろっていないので大きな信号成分になることはない。またここで遅れ調整回路27、加算回路28は第一の整相加算手段9中に含まれている。
【0030】
距離rの点Pからの反射波が開口素子群22の中心位置で受信される時刻tは、既知の音
速をcとすると t=2r/cで表せる。したがって、時刻tを基に対応する反射位置まで
の距離rが計算でき、計算されたrを基に各素子の信号遅延時間が計算できる。よって、受信時刻tに応じて、距離rに応じた適切な遅れ時間の調整を遅れ調整回路27で行うようにすると、全ての点で焦点の合った強い1次元反射信号波形を形成することが出来る。これを受信ダイナミックフォーカスと呼ぶ。この結果、送信ビームの経路に沿った領域に超音波反射エコーの受信感度が高い領域すなわち受信ビームが形成される。第一の整相加算手段6の出力は、この受信ビームに起因する受信信号を加算した超音波受信ビーム信号29となる。
第一の整相加算手段6から出力された超音波受信ビーム信号29(第一の整相加算信号)は、電子走査に伴って順次メモリ手段7に格納される。この時メモリ手段には、断層面毎に信号が格納される。
【0031】
電子走査により図2(b)のように、超音波受信ビーム信号29がラスタ走査形式で出力されることになり、断層スライス面30に対する超音波エコー信号を取得することが出来る。つまり断層スライス面30に関して超音波受信ビーム信号29(第一の整相加算信号)は電子ビーム走査の走査線信号となっている。
【0032】
なお、加算回路28による加算は、入力信号ごとに重みをつけて加算するというアポダイジング処理を含めることもできる。アポダイジング処理は、受信開口を制御したり周辺からの干渉波の影響を減らしたりする効果がある。この重みは目的に応じて固定でも良いし受信時刻に応じて変化するようにしても良い。
【0033】
制御手段10は上記一連の電子走査により断層スライス面30上での走査線信号に相当する超音波受信ビーム信号29を取得するために超音波送受信を制御するとともに、プローブ走査機構2によるプローブ1の移動を制御する。
プローブ1の移動に伴ってメモリ手段7には異なる複数位置の断層スライス面上での走査線信号に相当する複数の超音波受信ビーム信号29が格納されていく。
【0034】
第二の整相加算手段9では、プローブ1が異なる位置にあるときにそれぞれ取得した複
数の超音波受信ビーム信号29に対して、合成開口法に基づいてエレベーション方向(第二の方向)の分機能を向上するための第二の整相加算処理を行う。選択回路8は、メモリ手段7に格納された複数の超音波受信ビーム信号29の組を選択して、第二の整相加算手段9へ入力する。遅延パターン組格納メモリ11には、第二の整相加算処理に使用するための各超音波受信ビーム信号29へ与える遅延量の組が格納されている。
【0035】
本発明の特徴のひとつは、プローブ機械走査のプローブ位置に応じて、第二の整相加算手段9に入力する複数の超音波受信ビーム信号29の組と使用する遅延パターン組を変化せることである。この変化は、第一から第三の制御フェーズに分けられる。
第一の制御フェーズは、プローブ機械走査開始直後に、プローブ位置に応じて、第二の整相加算手段に並列に入力される超音波受信ビーム信号の組を固定し、選択する遅延パターンを変化させて第二の整相加算処理を行うものである。
第二の制御フェーズは、第二の整相加算手段に入力される超音波受信ビーム信号の組を変化させ、選択する遅延パターンを固定して第二の整相加算手段で行う整相加算を行うものである。
第三の制御フェーズは、プローブ機械走査終了直前の期間に行われる処理であり、第一の制御フェーズと同様の処理を、プローブの進行方向に対して逆向きに行うものである。
第一の制御フェーズと第三の制御フェーズは、本発明の第一のケースに相当する。第二の制御フェーズは、本発明の第二のケースに相当する。本実施例において、第一と第三の制御フェーズは、従来の合成開口処理ではデッドゾーンとなっていた領域の撮像面を求める期間である。第一から第三の制御フェーズについての詳細は後述する。
【0036】
第二の整相加算手段9で整相加算された結果は、画像信号化手段12へ出力される。画像信号化手段12は、整相加算された超音波エコー信号を強度に応じた輝度信号に変換し、また信号帯域を画像データに適した周波数帯域へ変調するため、包絡線検波やヒルベルト変換を用いた振幅検出とダウンサンプリングを行う。輝度のダイナミックレンジを行うためにLOG圧縮を行ってもよい。また画像信号各種のフィルタを設けることもできる。
画像信号化手段12で作成された画像信号は画像メモリ手段13へ格納される。
【0037】
(制御フロー)
本実施例の制御手段10で行う整相加算に関する制御の処理について図3を用いて説明する。図3(a)は、処理全体のフロー図であり、3D画像データ取得の開始から終了までを説明する。図3(b)は、図3(a)中の各断層スライス面を電子走査して面上の走査線信号に相当する複数の超音波受信ビーム信号を取得するための処理(これを断層走査線処理と称する)を説明する図である。
【0038】
ステップS301において、プローブ走査機構2がプローブ1の機械走査を開始する。プローブ1が所定の位置になると超音波の送受信が開始される。
ステップS302において、プローブ1が電子走査を始める。以降、プローブの機械走査と電子走査は逐次実行される。
ステップS303において、第一の整相加算手段6は、受信したデジタル時系列データを整相加算し、第一の整相加算信号としての超音波受信ビーム信号29を生成する。
ステップS304において、得られた超音波受信ビーム信号29はメモリ手段7へ格納される。電子走査に伴って走査された各超音波ビームに対応する超音波受信ビーム信号29が順次メモリ手段7へ格納されていく。以上を繰り返し、後述の所定の枚数であるM枚の断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29が格納された段階(ステップS305=YES)で処理が第一の制御フェーズへ移る。なお、合成開口の性質上、Mが2以上の整数であることは言うまでもない。
【0039】
第一の制御フェーズが始まると、ステップS306において、選択回路8が、第二の整
相加算手段9へ入力する複数の超音波受信ビーム信号29の組を選択する。このとき、断層スライス面上の走査線信号を構成する超音波受信ビーム信号29を選択回路8で選択し、その電子走査の順に第二の整相加算手段9へ入力する。
ステップS307において、遅延パターン組格納メモリ11から、第二の整相加算手段9で行う遅延パターンの組が選択される。
ステップS308において、第二の整相加算手段9が、選択された遅延パターンでエレベーション方向に整相加算する合成開口処理を行って第二の整相加算信号を生成し、画像信号化手段12に出力する。その後プローブ1の移動に伴って次の断層スライス面に関する電子走査を行い断層スライス面上の超音波受信ビーム信号29の取得を行う。
【0040】
図3(b)に、ステップS309の断層スライス面に関する信号取得(断層走査線処理)の詳細を示す。
ステップS401において、第一の整相加算手段6で使用する遅延パターンを設定する。特に断層スライス面に対する電子走査がリニア走査である場合には、第一の整相加算手段6で使用する受信超音波ビームの遅延パターンは一定でよい。このため第一の整相加算手段6で使用する遅延パターンの設定は前もって、例えば第一の制御フェーズの開始時に一括して行ってもよい。
ステップS402以降、プローブのトランスデューサアレイが電子走査を開始する。具体的には、ステップS403において、実際の電子走査が行われ、走査された超音波ビームを出力する。ステップS404において、第一の整相加算手段が、超音波受信ビーム信号29を順次作成する。ステップS405において、作成された信号をメモリ手段7へ格納していく。
【0041】
ステップS309の後、再度ステップS307に戻り、第二の整相加算手段9で行う遅延パターンの組を選択しなおす。そして異なる遅延パターンを用いてエレベーション方向の整相加算を行い、結果を画像信号化手段12に出力し、その後プローブ1の移動に伴って断層走査線処理を行う、という動作をくりかえす。
以上のように第一の制御フェーズでは、プローブ1の移動に伴って第二の整相加算手段9への入力信号の組を固定し、使用する遅延パターンを変化させていく制御を行う。この第一の制御フェーズは、プローブの機械走査が始まってから所定の枚数の断層スライス面を取得するまで続く。
【0042】
第一の制御フェーズが終了後、制御手段10は第二の制御フェーズを開始する。
ステップS310において、第二の整相加算手段9で行うエレベーション方向の整相加算のための遅延パターンを遅延パターン組格納メモリ11から読み込み設定する。
ステップS311において、選択回路8が、メモリ手段7から合成開口に使用する断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29の組を選択し、第二の整相加算手段9への入力データとして設定する。
ステップS312において、第二の整相加算手段が、選択された超音波受信ビーム信号29の組を入力としてエレベーション方向の整相加算を行い、その結果を画像信号化手段12に出力する。これが本フェーズの合成開口処理である。
【0043】
その後、プローブ1の移動に伴って、ステップS313で断層走査線処理が行われる。これにより作成された新たな断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29が、メモリ手段7へ格納される。エレベーション方向の整相加算のための遅延パターンを固定したまま、選択回路8で合成開口に使用する断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29の組を新たに選択し第二の整相加算手段9で第二の整相加算を行う。さらに次の断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29を取得するための断層走査線処理を行うことを繰り返す。
【0044】
以上のように第二の制御フェーズでは、遅延パターンは固定し、プローブ1の移動に伴って第二の整相加算手段9への入力信号の組を変えていく制御を行う。
そして、ステップS314で、プローブ機械走査領域の終了点に達した時点でプローブの移動を終了する。
【0045】
その後第三の制御フェーズに移るが、ここではあらたに断層スライス面上の走査線信号を構成する超音波受信ビーム信号29の取得は行わない。すでにメモリ手段7に格納された複数の超音波受信ビーム信号29を用いて第二の整相加算手段による処理を行う。
ステップS315において、選択回路8で使用する超音波受信ビーム信号29の組を選択する。
ステップS316において、第二の整相加算手段9で行う遅延パターンの組を選択する。
ステップS317において、選択した遅延パターンを用いてエレベーション方向の整相加算を行い(合成開口処理)、結果を画像信号化手段12に出力する。選択される遅延パターンを変化させつつ、この処理を所定回数くりかえす。
この制御フェーズでは新たな超音波受信ビーム信号29の作成は必要ないため、超音波送信を含む断層走査線処理を行う必要がなく、これらの動作を省くように制御されることが好ましい。
最後の合成開口処理が終了した時点で、プローブの機械走査に伴った3Dの超音波画像データ採取を終了する。
【0046】
(合成開口効果)
次いで図4と図10を用いて第二の整相加算手段でおこなう整相加算処理による合成開口効果を説明する。ここではリニア走査の場合を例として説明する。ここでは説明を簡略にするために送信と受信の開口の大きさを同じものとするが、送受信の開口の大きさを異なるものとしてもよい。
まず、第一の整相加算手段6と第二の整相加算手段9の二段の整相加算により二次元アレイと同等の整相加算が可能になることを、図4(a)を用いて説明する。説明を簡単にするために、合成開口を行う注目点Pは、断層スライスSL#(n)の面内にあるものとする。
【0047】
略一次元アレイトランスデューサ上にある開口の中心S0から垂直に発した超音波ビームはP点において反射し、R0位置のトランスデューサ素子で受信される。次にプローブは断
面スライスSL#(n+1)の位置に移動し、S0に対応する位置S1を開口中心として再び超音波ビームを発信する。超音波ビームは垂直方向に発信されるが、その一部が断層スライス面SL#(n)内のP点の方向にも伝播し、P点で反射された超音波がR0点に対応する点R1で受信される。合成開口原理の整相加算は、R0での受信信号とR1での受信信号とを、それぞれ発信からP点で反射して受信するまでの伝播時間に相当する受信時間のずれを調整して加算すれ
ば実現できる。
【0048】
例えば、断層スライス面SL#(n)で点Pの画像を構成する事を考える。この際に、S0、R0の一次元位置でトランスデューサ素子により得られた信号に加え、S1、R1の位置の信号にそれぞれ伝搬時間に相当する受信時間のずれを調整して加算すれば、二次元アレイと同等に断層スライス面垂直方向の分解能を向上できる。なお、ここでは受信点が4つの例を用いて説明するが、受信点がより多数になっても原理は同様である。整相加算のときは、最短伝搬距離S0-Pを基準に、R0、S1、R1の位置で受信された信号にそれぞれの伝搬距離、R0-P、S1-P、R1-Pの差分を超音波が伝搬する時間を遅延として与えればよい。今後合成開口により画像を構成する目標点Pを合成開口の焦点と称することにする。
【0049】
略一次元アレイプローブによりS0、R0位置での信号が取得された後、プローブを機械走査してS1、R1位置での信号を取得する。その際、第一の整相加算手段6は、まずS0、R0位
置での信号の整相加算を行い、次いでS1、R1位置での信号の整相加算を行う。前者は伝搬距離S0-Pを基準にR0位置での信号に遅延を与え、後者は伝搬距離S1-Pを基準にR1位置での信号に遅延を与える。その後第二の整相加算手段9でこれらの結果に合成開口に基づく整相加算を行えばよい。
【0050】
より詳しく言えば、第一の整相加算手段6で行われたS1、R1位置での信号の整相加算は伝搬距離S1-Pを基準に行われたものであり、S0、R0位置での信号の整相加算は伝搬距離S0-Pを基準に行われたものである。よって、前者の加算結果に伝搬距離S1-PとS0-Pの差分に対応する超音波伝搬時間を遅延として与えたのち後者に加算すれば、伝搬距離S0-Pを基準として4点での信号に整相加算が行われる。
【0051】
このとき、点S1から断層スライス面SL#(n+1)内の垂直方向に、S1からPまでと同じ距離
の点Qを考える。この場合、点S1,P,R1からなる三角形と、点S1,Q,R1からなる三角形とは
明らかに合同だから、S1からP点を経由してR1に到達する時間とS1からQ点を経由してR1に到達する時間は同じになる。この関係は、R1位置のトランスデューサ素子だけでなく、同じ略一次元トランスデューサアレイの他のトランスデューサ素子に関しても同じである。したがって、断層スライス面SL#(n+1)の位置において、P点を焦点とした1次元整相加算
結果とQ点を焦点とした整相加算結果とは全く同じ加算信号となる。したがって、P点に対する2次元の整相加算では、まず断層スライス面ごとに整相加算を行って点Pと点Qの整相加算信号を求め、次にエレベーション方向に整相加算を行って点Pと点Qの整相加算信号を加算すれば良いことがわかる。
【0052】
特に第一の整相加算手段6で受信ダイナミックフォーカスを行うようにすれば、略一次元トランスデューサアレイの配列方向の整相加算に関しては、目標点の高さに応じておのおのの断層スライス面で行われている。例えば、R0位置およびR1位置からの信号は、それぞれ点P、点Qの高さに応じて遅延が与えられており、それぞれS0位置およびS1位置からの信号と加算されていることになる。このため、第一の整相加算手段6で行う遅延処理は、第二の整相加算手段9で行う遅延処理とは独立に行うことができる。よって、第一の整相加算手段6で整相加算された超音波受信ビーム信号29をこの断層スライス面での走査線信号としてメモリ手段7に格納する。その後プローブ1を移動し異なる断層スライス面で取得した超音波受信ビーム信号29との間で第二の整相加算を行うことで、上記のような合成開口効果を得ることができる。
【0053】
図4(b)に、上記のようにして第一の整相加算手段6より得られた複数の超音波受信ビーム信号29が、断層スライス面SL#(n)とSL#(n+1)上にラスタ走査形式で走査線を形成している様子を示す。図4(a)に即して言えば、略一次元トランスデューサアレイをS0(を含む位置)からS1へ走査させながら、第一の整相加算手段6により断層スライス面上の走査線に相当する超音波受信ビーム信号29が取得される。次いで同様にトランスデューサアレイをS2(不図示)に移動させながら、断層スライス面SL#(n+1)上の走査線に対する信号を取得する。
【0054】
図4(b)中、LS0、LS1は上記点S0、S1の位置に対応する走査線信号を表し、その信号上に点P、点Qに対応する超音波エコー部分SP、SQが存在する。LS0、LS1に示す走査線の位置は、プローブ1の移動に伴って平行移動された位置にあり、これをプローブ機械走査に応じた断層スライス面上で対応する走査線と呼ぶことにする。SP、SQは第一の整相加算手段6により断層スライス面方向の開口について受信ダイナミックフォーカスの整相加算がされている。受信ダイナミックフォーカスを行っているため、超音波受信ビーム信号29が形成する走査線信号LS0、LS1での深さ方向に対応する時間的な位置は、おのおの長さS0-P、S1-P=S1-Qを音速cで割ったものの2倍に対応している。S1-Qは、点S1、S2位置間の長さ(すなわち断層スライス面SL#(n)とSL#(n+1)の間隔)と、S0-Pの長さとから幾何学的
関係により求められる。このため、走査線信号LS0上の任意の位置のSPに対応する走査線
信号LS1上のSQの位置が決められれば、その二者が一致するように走査線信号LS1に遅延を与えればよい。このように、LS0上での任意のSPに対応するLS2上でのSQに遅延をかけながら加算していくことで、エレベーション方向にも受信ダイナミックフォーカスを行うことができる。
【0055】
第二の整相加算手段9では、第一の整相加算手段6から出力する超音波受信ビーム信号29に対して、断層スライス面上で対応する走査線の走査線信号をなす複数の超音波受信ビーム信号29を選択し、整相加算を行えばよい。このときに与える遅延は断層スライス面の間隔と焦点の深さ方向位置によって決定される。
ここでは説明を簡単にするために、合成開口の焦点Pの位置を断層スライス面の上にあるとして説明を加えたが、合成開口の焦点Pは断層スライス面の上になくともよい。即ち合成開口の焦点は略一次元トランスデューサの電子走査によって取得される各断層スライス面の間、または断層スライス面を外れた位置にあってもよい。この場合にも、焦点Pと各断層スライス面の位置から幾何学的関係を使ってエレベーション方向の第二の整相加算が行える。
【0056】
本発明では、このように、多数の信号に遅延を与えて加算する処理を、まず略一次元配列に行う。そして、その結果に対する遅延と加算処理をエレベーション移動方向に行うという、二段の整相加算手段を有する構成である。したがって、一般の二次元アレイを用いる場合はもとより、すべての受信信号をメモリに格納したのち合成開口を行う場合に比べても、リアルタイム処理のための回路規模を抑制し小さくすることができる。
【0057】
(第一の制御フェーズ)
第一の制御フェーズ中における合成開口の詳細について、図10(a)〜図10(c)を用いて説明する。第二の整相加算は各断層スライス面の位置と対象点の位置で決まるため、図にはプローブ1の移動を行うエレベーション方向と被検体の深さ方向で作る断面への射影図を示す。本実施例において、第一の制御フェーズは、後述する第三の制御フェーズと並んで、従来の合成開口処理ではデッドゾーンとなっていた領域の断層スライス画像データである撮像面を求める期間である。
ここで、本発明における、デッドゾーンについて説明する。デッドゾーンとは、従来のように、第二の整相加算の遅延パターンを固定したままで機械走査方向に第二の整相加算をしていった場合に、合成開口されていない領域(第二の整相加算による高分解能な断層スライス画像データが生成できない領域)のことを称する。つまり、機械走査の位置に関わらず、第二の制御フェーズのみを行って第二の整相加算を行った場合において、デッドゾーンはM枚の断層面に対応する超音波受信ビーム信号を用いて整相加算されていない領域である。なお、機械走査方向に第二の整相加算を行う際に使用する断層面の枚数をM枚とする。
【0058】
図中、SL#(0)〜SL#(8)は、プローブ1の位置に対応した断層スライス面である。FP1〜FP3は、合成開口の対象として焦点を与える焦点P1〜P3の乗る撮像面である。以降の説明において、撮像面とは、合成開口により生成される断層スライス画像データの意味として用いる。プローブ1の機械走査に伴って断層スライス面が決まる。特に、断層スライス面SL#(0)をプローブ機械走査開始位置とする。
符号40は、第二の整相加算手段9で与える遅延量を求めるための超音波伝搬経路である。符号41は、超音波伝搬時間が同一となる点を結んだ補助線である。またメモリ手段7へ格納される超音波受信ビーム信号29を、丸記号を用いて概念図的に表わす。それぞれの丸記号は、各断層スライス面内の走査線信号に対応する複数の超音波受信ビーム信号29を一括して表す。ここでは機械走査は連続であるものとして説明をする。
【0059】
図10(a)は、プローブ機械走査の開始後、所定枚数のM枚の組み合わせの断層スライス面に対応する超音波受信ビーム信号29が格納され、処理が第一の制御フェーズへ移った段階をあらわす。所定枚数Mはエレベーション方向に合成開口を行う際に使用する断層スライス面の面数にとればよく、エレベーション方向合成開口での開口の大きさと断層スライス面のピッチによって決定される。一般に、Mが大きいほど合成開口効果での分解能が高くなるが、第二の整相加算手段9の処理が増加する。この例ではM=5とする。
断層スライス面のピッチ間隔が細かいほどエレベーション分解能が向上するが、一方で全体の撮像時間が増加する。またここでは、断層スライス面のピッチ間隔は等間隔であるとする。これはプローブ1の機械走査の速度を均一にし、また後段の画像信号化手段12での処理後に画像メモリ13に格納する3D画像データのエレベーション方向ピッチを均一に構成するのに好ましい構成で、その後の画像処理にも好適なデータ生成が行える。ただし、撮像領域の部分的な分解能を上げるなどの目的で断層スライス面のピッチ間隔を制御手段10により変化させても構わない。
【0060】
図10(a)では、メモリ手段7には、SL#(0)〜SL#(4)の5面の断層スライス面に対応する複数の超音波受信ビーム信号29が格納されている。図10(b)、図10(c)では、プローブ1を移動しながら取得された各々の断層スライス面に対応する複数の超音波受信ビーム信号29を、次々とメモリ手段7に格納していく段階を示す。図10(a)〜図10(c)において、プローブ1の移動に応じて新たに取得され、格納された超音波受信ビーム信号29は、黒色の丸記号で表示されている。第二の整相加算手段9には、選択回路8により選択された断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)に対応する超音波受信ビーム信号29が入力される。同時に遅延パターン組格納メモリ11に格納された遅延パターンから図10(a)〜図10(c)の時相に応じた遅延パターンが選択され、第二の整相加算手段9で第二の整相加算が行われる。
【0061】
遅延パターンは以下のように決定、選択される。
図10(a)において、FP1は合成開口により合成される撮像面であり、特に図10(
a)は第二の整相加算手段による整相加算が開始される時相であるので、この面が撮像開始面に相当する。FP1のエレベーション方向位置は取得する撮像範囲によって決定される
。図に示すように、撮像面を機械走査範囲外にとることができる。同様に、FP2,FP3はそ
れぞれ、図10(b)、図10(c)の時相で合成開口によって合成される撮像面である。FP1〜FP3のエレベーション方向間隔は、断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)のピッチに一致させる。これは後述の第二の制御フェーズ中に得られる撮像面の間隔と整合がとれた間隔で画像データを作成するのに適しており、エレベーション方向分解能や画像データ利用に好ましい構成である。ただし、これ以外の間隔を用いてもよい。
【0062】
まず、図10(a)においてFP1上の焦点P1にフォーカスを合わせる整相加算処理につ
いて説明する。断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)上の、P1に対応する走査線に基づいて整相加算処理を行う。焦点P1はFP1上にあり、かつ、断層スライス面上の走査線をプローブ1
の移動する向きと逆向きに平行移動した線上にある。P1が乗っているこの線を、FP1上の
撮像ラインと呼ぶことにする。
【0063】
超音波伝搬経路40は、SL#(0)〜SL#(4)上で断層スライス面の対応する走査線を作成する際の、超音波開口中心から焦点P1までの各々の超音波の伝搬経路を示す。その長さは、SL#(0)〜SL#(4)のそれぞれとFP1の垂直距離を底辺、焦点P1の高さを高さとする直角三角
形の斜辺の長さとして幾何学的に求められる。エレベーション方向の整相加算はSL#(0)〜SL#(4)上での断層スライス面の対応する走査線上の信号に対し、超音波伝搬経路40の各経路の伝搬時間の差を相殺するように遅延を与えて加算することで行われる。
補助線41は焦点P1を中心とする円である。超音波伝搬経路40の各経路とこの円の交点を基準として、各超音波伝搬経路長の差異が幾何学的に計算できる。伝搬経路帳の差異
と音速cを用いて、SL#(0)〜SL#(4)上での断層スライス面の対応する走査線に与える遅延量が求まる。この遅延量を用いることで焦点P1に対する整相加算が行える。撮像面FP1上
の焦点P1の高さを変えていくと、撮像ライン上の各点に関して整相加算された信号が得られる。
【0064】
プローブ1の走査方向は、断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)の略垂線方向である。このため、断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)ごとに、撮像面FP1上の撮像ラインに対応する走査線
を選択し、選択した走査線群に遅延量を与えて整相加算を行うと、撮像ライン上の各点に対する整相加算信号が得られる。ここで得られた整相加算信号は、撮像面FP1の各撮像ラ
イン上の各点に対して断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)を用いてエレベーション方向に合成開口を行ったものとなっている。
このとき与える遅延量は、撮像ライン上での焦点Pの高さと、走査線がSL#(0)〜SL#(4)のどの断層スライス面上のあるかによって決定される。同一断層スライス面の走査線に対しては同じ遅延量の組を用いることができる。この焦点の高さと断層スライス面によって決まる遅延量の組を遅延パターンとして遅延パターン組格納メモリ11に格納しておけばよい。第一の制御フェーズでは、第二の整相加算手段9の遅延パターンを、プローブ1の走査位置に応じて遅延パターン組格納メモリ11より選択する。選択した遅延パターンを第二の整相加算手段9で処理を行う。
【0065】
以上のようにして撮像面FP1上の撮像ライン上の各点に対する合成開口された整相加算
信号が得られる。得られた整相加算信号は画像信号化手段12で画像信号化され、画像メモリ13へ格納される。これにより画像メモリ13には撮像面FP1上に対応した合成開口
された断層スライス画像データが格納される。
【0066】
図10(b)、図10(c)の場合も同様である。すなわち、プローブ1の機械走査に伴ってそれぞれ撮像面FP2、FP3にとった時の遅延パターンを断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)と撮像面FP2、FP3の幾何学的配置より計算しておく。そして計算結果を遅延パターン組格納メモリ11に格納しておく。プローブ1が移動して図10(b)、図10(c)の時相になった時点で、制御手段10は遅延パターン組格納メモリ11よりおのおのの遅延パターンを第二の整相加算手段9へ与える。エレベーション方向に整相加算を行った結果は、撮像面FP2,FP3に対応した合成開口された断層スライス画像データとして、画像メモリ
13に格納される。
【0067】
上記の方法により、図10(a)〜図10(c)に示すように、プローブ1の機械走査にともなって撮像面FP1〜FP3上の合成開口が行われる。その結果得られた信号値が画像信号化手段12で画像信号に変換され、それぞれ撮像面FP1〜FP3に対する断層スライス画像データとして画像メモリ13に格納されていく。このように、遅延パターンを変化させて第二の整相加算を行うことにより、デッドゾーンに位置する断層面上の第二の整相加算信号を生成できるため、デッドゾーンを低減することができる。撮像面FP1〜FP3の設定の仕方、また撮像面上での画像ラインの設定の仕方などは画像データの取り扱いによって任意である。ただし、プローブ1の機械走査のピッチや断層スライス面での超音波ビームの電子走査のピッチに合致させ、後段の画像処理手段14で所望の画像のピクセルまたはボクセルに一致させるのが好ましい。
【0068】
(第二の整相加算手段の具体的構成例)
図4(c)を用いて、第二の整相加算手段の処理をより詳しく説明する。図中のFPは、エレベーション方向の合成開口整相加算を行う目的の撮像面である。FLは、撮像面FP上の対象とする撮像ライン、F0は撮像ライン上の焦点である。本図は図4(b)と同様にプローブ1がエレベーション方向に連続移動しながら、断層スライス面を順に、・・・、SL#(n-1)、SL#(n)、SL#(n+1)、・・・、と出力する時に出力される超音波受信ビーム信号29
の走査順を示したものである。
【0069】
図中の各断層スライス面の内部では、実線で示した超音波発信ごとの超音波受信ビーム信号29が電子走査によりラスタ走査順に計算出力され、エレベーション方向には一定周期で断層スライス面が計算出力される。この結果、各断層スライス面内の焦点に対応する特定位置a,b,cのエコー信号は、一定周期ごとに出力されることになる。よって、メモリ
手段7に格納された超音波受信ビーム信号29から断層スライス面間隔に対応する上記一定周期の出力に遅延を与え加算を行っていけばよい。計算結果は対応する撮像ラインFL上の焦点像F0として得られる。
【0070】
第一の制御フェーズでは、第二の整相加算手段9への入力信号の組が固定され、選択回路8は超音波受信ビーム信号29のうち必要な断層スライス面(上記の例ではSL#(0)〜SL#(4))分のデータを第二の整相加算手段9へ入力する。
図6に、第二の整相加算手段9の好ましい構成例を示す。第二の整相加算手段9は、スライス遅れ回路90と整相加算回路91を有する。スライス遅れ回路90は、それぞれ一つの断層スライス面分の超音波受信ビーム信号29を格納するメモリ900〜903からなる。整相加算回路91は、遅れ調整回路92と加算回路93からなる。選択回路8で選択された連続する複数の超音波受信ビーム信号29は、断層スライス面に従ってスライス遅れ回路90のメモリ900〜903に格納される。図10(a)〜図10(c)に示した第一の制御フェーズでは、SL#(0)〜SL#(4)上の走査線に関する超音波受信ビーム信号29が、取得された順にメモリ900〜903に格納される。
【0071】
その後メモリ900〜903から順次データを読み出すと、図4(c)のa,b,cで示す
ように連続するスライス面の同じ位置のエコー信号が並列に出力できることになる。遅れ調整回路92は、図10(a)〜図10(c)の時相に応じて遅延パターン組格納メモリ11より遅延パターンを選択し、各断層スライス面の走査線に沿って超音波受信ビーム信号29に遅延を加える。加算回路93は、各断層スライス面からの信号を加算する。上記の処理を走査線ごとに繰り返すことで、撮像面の各撮像ライン上での整相加算結果が得られる。
【0072】
なお、加算回路93による加算は第一の整相加算手段6の加算回路28と同様に、入力信号ごとに重みをつけて加算するというアポダイジング処理(アポダイゼーション)を含めることもできる。アポダイジング処理は、受信開口を制御したり周辺からの干渉波の影響を減らしたりする効果がある。この重みは目的に応じて固定でも良いし受信時刻に応じて変化するようにしても良い。
【0073】
この実施例では、断層スライス面走査の繰り返しピッチが一定であることを仮定して、スライス遅れ回路を一定時間の遅れ回路としている。しかし、何らかの理由により繰り返しピッチが乱れたり無駄時間が発生したりする場合には、スライス遅れ回路の起動と停止を適切に制御する手段を追加して、常に連続する断層スライス面の同じ位置のエコー信号が並列に出力できるようにすることができる。また、スライス遅れ回路90と遅れ調整回路92はどちらも遅延時間を調整する回路なので、統合して一つの遅れ調整回路としたり、遅延時間の分割方法を種々に変えて実施したりすることも可能である。しかし、これらの変形は単なる設計事項であり、本発明の主旨を変えるものではない。また上記説明では、合成開口を行う断層スライス面の数を5とし、図6におけるスライス遅れ回路90のメモリ900〜903をこれに合わせ4とした。しかしながらこれらの数は一例であり、所望の数値を採用して良い。
【0074】
(第二の制御フェーズ)
図7を用いて、第二の制御フェーズ中に第二の整相加算手段9でおこなう整相加算処理
による合成開口効果を説明する。
図7(a)〜図7(c)は、第一の制御フェーズ図10(a)〜図10(c)に続いて、第二の制御フェーズにおいてプローブ1の機械走査に従ったエレベーション方向の整相加算の様子を示す図である。第二の制御フェーズは、従来の合成開口処理で撮像面を求める方法と同様である。
【0075】
図7(a)は、図10(c)に続いてプローブ1を移動させ、これに応じて撮像面FP4
を設定した状態である。プローブ1の電子走査により取得された断層スライス面上の複数の超音波受信ビーム信号29が、メモリ手段7へ格納される。第二の整相加算手段9には、選択回路8により選択された断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)上の走査線信号に相当する複数の超音波受信ビーム信号29が入力される。このとき、断層スライス面SL#(0)〜SL#(4)のうちの真ん中の面の位置に撮像面FP4が設定され、エレベーション方向の開口の略中心上の断面が撮像されるように、第二の整相加算手段9の遅延パターンが設定される。
【0076】
第二の制御フェーズでは、フェーズのはじめに、第二の整相加算手段9でおこなうエレベーション方向の整相加算のための遅延パターンを遅延パターン組格納メモリ11から読み込んで設定する。第二の整相加算手段9が、この遅延パターンを用いてエレベーション方向の整相加算を行うことで、撮像面FP4上での各撮像ライン上での整相加算結果が得ら
れる。得られた結果は画像信号化手段12で画像信号に変換され、撮像面FP4に対する合
成開口された断層スライス画像データとして画像メモリ13に格納される。
【0077】
プローブ1が移動して図7(b)の時相になった時点でも同様に、プローブ1の電子走査により取得された断層スライス面上の複数の超音波受信ビーム信号29がメモリ手段7へ格納される。このとき、制御手段10からの制御により、選択回路8に第二の整相加算回路9への入力信号(超音波受信ビーム信号)が選択しなおされる。すなわち、メモリ手段7に格納された複数の超音波受信ビーム信号29のうち特定の複数の超音波受信ビーム信号が選択回路8で選択され、第二の整相加算手段9へ入力される。図7(b)の場合、断層スライス面SL#(1)〜SL#(5) 上の走査線信号に相当する複数の超音波受信ビーム信号
29が選択される。
【0078】
図6の構成例に従えば、選択回路8で選択された連続する複数の超音波受信ビーム信号29は、断層スライス面SL#(1)〜SL#(5)の順に、スライス遅れ回路90のメモリ900〜903に格納される。メモリ900〜903から順次データを読みだし、スライス遅れ回路90と遅れ調整回路92で所定の遅延パターンが与えられ、撮像面FP5上の各撮像ライ
ン上に対応する整相加算結果が得られる。結果は画像信号化手段12で画像信号に変換され、撮像面FP5に対する合成開口された断層スライス画像データとして画像メモリ13に
格納される。
【0079】
プローブ1をさらに移動させた状態を示す図7(c)でも同様に、撮像面FP6に対する
断層スライス画像データが画像メモリ13に格納される。このような処理を続けることで、最初に設定された同一の遅延パターンを、異なる断層スライス面間での整相加算に適用して合成開口を行うことが可能になる。合成開口処理により得られた断層スライス画像データは、順次画像メモリ13に格納される。同一の遅延パターンを用いることで、合成開口される受信ビームパターンのエレベーション方向の形状は同じになる。また、第二の整相加算に入力する複数の超音波受信ビーム信号29の断層スライス面をずらしていくことでエレベーション方向に走査された合成開口画像が得られる。
【0080】
本実施例では、撮像面FP4〜FP6は等間隔としており、それぞれ断層スライス面SL#(2)〜SL#(4)に一致させた構成をとっている。かかる構成をとることで、プローブ1の機械走査と作成される合成開口断層画像の撮像面が一致し、制御手段10で行う制御や画像処理手
段14で行う画像再構成が簡便なものとなる。ただし、撮像面の位置はこの構成に限られることはない。撮像面の位置は断層スライス面の間の位置にとることもでき、とくに偶数面の断層スライス面を用いて第二の整相加算を行う場合には、撮像面を整相加算を行う断層スライス面の中間位置にとることが好ましい。
また、第二の制御フェーズを開始する時点での撮像面FP4の位置を、合成開口される断
層スライス面SL#(0)〜SL#(4)のうちの真ん中の面の位置である断層スライス面SL#(2)と一致させている。その結果、合成開口される受信ビームパターンのエレベーション方向の対称性を上げている。これにより合成開口される画像のエレベーション方向の均一性が増す。ただし、第二の制御フェーズにおいて使用する第二の整相加算用の遅延パターンを一定にたもつ構成をとるならば、撮像面と合成開口される複数断層スライス面の位置関係はこれに限られるものではない。
【0081】
(第三の制御フェーズ)
第二の制御フェーズを行っていき、プローブ1の機械走査が走査終了点に達した後に第三の制御フェーズに移行する。複数の断層スライス面に対応する複数の超音波受信ビーム信号29を第二の整相加算手段9への入力信号として固定する。そして、遅延パターン組格納メモリ11から選択する遅延パターンを変化させつつ、合成開口を行う撮像面を移動させながら画像データを取得し、取得領域が被検体の所定の領域に達した時点で全処理を終了する。この過程は、図10(a)〜図10(c)を用いて説明した第一の制御フェーズの過程を、エレベーションプローブ進行方向と逆方向に行うものである。
【0082】
ただし、プローブ1の移動は撮像走査終了点に達した時点で終了しても構わない。プローブ機械走査のプローブ移動を第二の制御フェーズの終了時に同時に終了し、その後第二の整相加算処理のみを行っていくことで、第三の制御フェーズを継続することができる。すなわち、既にメモリ手段7に格納された複数の超音波受信ビーム信号29を用いて、遅延パターン組格納メモリ11から選択する遅延パターンを変化しながら、合成開口を行う撮像面を移動させ、移動する撮像面でのエレベーション合成開口データを作成する。このとき超音波の送受信を行う電子走査を行って第一の整相加算手段6で新たな超音波受信ビーム信号29を作成し、メモリ手段7に新たな超音波受信ビーム信号29を格納していく必要はない。合成開口を行う撮像面を移動するため第二の整相加算手段9で遅延パターンを変化しながら整相加算された出力は、画像信号化手段12で画像信号に変換され、対応する撮像面の断層スライス画像データとして画像メモリに格納されていく。所定の撮像面までの断層スライス画像データが作成された時点で処理を終了すればよい。
【0083】
本実施例では、メモリ手段7に格納される複数の超音波受信ビーム信号29は、合成開口に用いる断層スライス面数(上記説明ではM=5)より第一および第三の制御フェーズにおいて撮像面移動を行う面数(上記説明では3面)分だけ多くとる必要がある。これは、先行して機械走査するプローブ1からの超音波受信ビーム信号29を取得格納し、同時に第二の整相加算手段9によるエレベーション方向の合成開口整相加算をおこなうためである。ただし、格納しておかねばならない超音波受信ビーム信号29は合成開口に用いる断層スライス面数(上記説明ではM=5)と第一の制御フェーズおよび第三の制御フェーズで移動する撮像面数分で十分である。そのため、不必要となったメモリの領域に上書きをしていく構成をとることで、メモリ領域を効率的に使用することができる。
【0084】
(本実施例の効果)
本実施例では、先行して機械走査するプローブ1からの超音波受信ビーム信号29を取得格納し、プローブ1の位置より機械走査方向に遅れた位置での撮像面をエレベーション方向に順次合成開口していくものとなっている。すなわち、プローブ1の位置で電子走査により取得される断層スライス面より後方の撮像面の走査線が、第二の整相加算手段9により合成開口されて出力される。このような構成で第二の整相加算手段9に対する処理の
制御を第一、第二および第三の制御フェーズに分けて行うことで、プローブ1の機械走査の移動は全機械走査領域に対して一様になる。このため、プローブ1の機械制御に対する制御は単純なものとなり、特に連続走査で一様にプローブ移動を行うのに好適である。このためプローブ走査機構2によるプローブの移動制御が簡便になり、装置構成の複雑化や機械走査時間の無駄を省いた構成にできるという利点を有する。さらに、図10(a)のFP1に示すように、機械走査範囲外へ撮像領域を拡大した広範囲な撮像が可能になる。
本実施例の場合、図4に示したように、第二の制御フェーズにおいて、断層スライス面のうちの真ん中の面の位置に撮像面が設定されるため、デッドゾーンがプローブの機械走査の開始位置と終了位置において生成される。よって、第一の制御フェーズを第二の制御フェーズの前に行い、第三の制御フェーズを第二の制御フェーズの後に行ったが、本発明は上記例に限定されるものではない。デッドゾーンが生成される位置に応じて第一の制御フェーズや第三の制御フェーズを行うと良い。
【0085】
<実施例2>
実施例2は、プローブ1の機械走査をステップ・アンド・リピート方式でおこなう場合に好適な構成である。本実施例は、制御手段10が行う第一〜第三の制御フェーズに、プローブ1の機械走査におけるプローブ移動停止またはプローブ移動の開始を含む。
【0086】
図8に、本実施例での制御処理をフロー図で示す。実施例1と共通する装置構成および処理の詳細に関しては、説明を省略する。
ステップS801〜S805では、実施例1と同様の処理が行われる。具体的には、エレベーション方向の合成開口を行うための所定枚数Mの断層スライス面を取得するまで、プローブ1を移動させつつ電子走査を行い、超音波受信ビーム信号29を取得する。取得された複数の超音波受信ビーム信号29はメモリ手段7に格納される。メモリ手段7に格納された超音波受信ビーム信号29が所定枚数Mの断層スライス面の走査線に対応するものとなった時点で、第一の制御フェーズへうつる。この時点で、メモリ手段7には、エレベーション方向の合成開口を行うための所定枚数Mの断層スライス面の超音波受信ビーム信号29が格納されている。
【0087】
(第一の制御フェーズ)
ステップS806において、プローブ走査機構2でプローブ1の移動を停止する。本実施例の第一の制御フェーズでは、プローブ1の位置を固定し、プローブ1での超音波送受信による電子走査を行わず、メモリ手段7に格納された超音波受信ビーム信号29を用いて実施例1における第一の制御フェーズと同様の処理を行う。ただし、プローブ1の移動と断層走査線処理は行わない。
【0088】
ステップS807において、メモリ手段7に格納された複数の超音波受信ビーム信号29から、第二の整相加算手段への入力データの組が選択される。ステップS808において、遅延パターン組格納メモリ11から遅延パターンが選択される。そしてステップS809において、第二の整相加算手段9が、エレベーション方向の整相加算(合成開口処理)を行う。整相加算の結果は画像信号化手段12に出力される。画像信号化手段12で画像信号化された撮像面上のデータは、画像メモリ13に格納される。次いで、遅延パターン組格納メモリ11から新たに選択した遅延パターンを用いて第二の整相加算手段9での整相加算処理を行うことを繰り返す。遅延パターン組格納メモリ11に格納された遅延パターンを図10(a)〜図10(c)に示したものと同様に撮像面FP1〜FP3に対応するものとすることで、画像メモリ13に撮像面FP1〜FP3を構成する走査線を画像化した信号が格納されていく。撮像面を移動するごとに第二の整相加算手段9での整相加算処理を繰り返し、所定の撮像面に対する処理が終了した段階で第二の制御フェーズに移行する。
【0089】
(第二の制御フェーズ)
ステップS810において、再度、プローブ走査機構2でプローブ1の移動を開始する。またプローブ1の移動に伴って断層走査線処理、すなわちプローブ1による超音波の送受信および電子走査を行って複数の超音波受信ビーム信号29を作成し、メモリ手段7に格納する。本実施例では、メモリ手段7に格納される超音波受信ビーム信号29のデータサイズは、エレベーション方向の合成開口を行うための所定枚数Mの断層スライス面に相当するもののみとする。そして、新たな断層スライス面の超音波受信ビーム信号29が取得されるたびに、メモリ手段7のうち、合成開口が済んで不要となったメモリ領域に上書きする形で書き換えていく。
【0090】
ステップS811において、第二の整相加算手段9で使用する遅延パターンが選択、設定される。第二の制御フェーズでは、この遅延パターンが固定である。ステップS812において、プローブ1の移動および断層走査線処理に伴い、メモリ手段7内に新たに更新された超音波受信ビーム信号29が入力データ組として選択される。ステップS813において、第二の整相加算手段9は、選択されたデータに整相加算を行って(合成開口処理)、結果を画像信号化手段12に出力する。画像信号化手段12で画像信号化された撮像面上のデータは画像メモリ13に格納される。画像メモリ13には撮像面図7に示したFP4〜FP6と同様にプローブ1の移動に対応した撮像面上の画像走査線データが格納されていく。続いてステップS814において、プローブ1の移動に伴う断層走査線処理を継続する。
【0091】
(第三の制御フェーズ)
ステップS815において、プローブ1の機械走査が走査終了点に達したときに、プローブ走査機構はプローブ機械走査を停止する。続いてのステップS816〜S818の処理は第一の制御フェーズの処理と同様であり、デッドゾーンの撮像面や、場合によっては機械走査範囲外の撮像面が作成される。
【0092】
本実施例では、メモリ手段7に格納される超音波受信ビーム信号29が、エレベーション方向の合成開口を行うための所定枚数Mの断層スライス面に対応するもののみで済む。そのため、実施例1のように各撮像面の処理に先行する機械走査のプローブ1の断層走査線処理のデータを格納する必要がない。したがってメモリ手段7の構成をより小さくし、コストを抑制することが可能である。
特にプローブ1の機械走査をステップ・アンド・リピート方式でおこなう場合には、制御手段10で行うプローブ移動の制御と組み合わせて第二の整相加算手段9での処理を行うことで、処理を好適に行うことができる。
【0093】
<実施例3>
実施例3は、制御手段10が行う第一〜第三の制御フェーズで、超音波エコーの信号を取得するための超音波送信パターン条件が異なる制御を行うものである。さらに本実施例は、プローブ1上のトランスデューサアレイが1.5D、1.75D、または2Dの構成であり、これらのトランスデューサアレイを用いてエレベーション方向の送信ビームパターンが制御可能となっている。さらに、このエレベーション方向の送信ビームパターンを変更するため、超音波送信パターン条件を用いて制御手段10が行う第一〜第三の制御フェーズで異なる制御を行うことを特徴とする。
【0094】
初めに、本実施例のプローブ1を用いたエレベーション方向の送信パターンの変更に関して説明する。本実施例では、略一次元トランスデューサアレイとして、エレベーション方向にもトランスデューサ素子が分割されており、エレベーション方向に独立に超音波送信駆動可能なトランスデューサアレイを用いる。このようなものとして、1.5D、1.7
5D、および2D構成のトランスデューサアレイがあるが、ここでは簡単のため、1.5Dア
レイについて説明を加える。ただし、1.75D、2Dアレイを用いてもよい。
【0095】
図9(a)に、1.5Dトランスデューサアレイのエレベーション方向断面図を示す。トランスデューサアレイ16はエレベーション方向に複数(ここでは5つとする)に分割され、中心に対して対称に配列されたトランスデューサ素子が結線され一括して駆動される。ここでは同時に駆動する素子を同一番号で表し、中心素子列を160、第一側列の素子列を161、第二側列の素子列を162で表す。送信手段4は不図示のスイッチング回路を介して160、161、162を独立に駆動でき、スイッチング回路の接続は制御手段10により超音波送信パターン条件として制御できる。なお、1.5D トランスデューサ
アレイ送信側にはエレベーション方向に超音波を収束する音響レンズを設けてもよい。ただし、エレベーション方向で合成開口を行う本発明では超音波ビームの開口角が大きい方が好ましいため、音響レンズを持たない構成がより好ましい。
【0096】
図9(b)〜図9(d)には、トランスデューサアレイ16をスイッチング回路の接続により、条件を変えて駆動した場合のエレベーション方向の開口角の概略図を示す。図9(b)は中心素子列160のみ、図9(c)は中心素子列160と第一側列の素子列161、図9(d)はすべての素子列(中心素子列160と第一側列の素子列161と第二側列の素子列162)を駆動した場合である。
図9(b)に示す中心素子列160のみで駆動した場合には、エレベーション方向の駆動実効素子幅が小さいため開口角が大きく、エレベーション方向の広範囲にわたって超音波送信が行わる。一方、送信超音波の音圧密度の強度は弱くなる。図9(c)、図9(d)になるにつれ、駆動素子列が大きくなり、エレベーション方向の駆動実効素子幅が大きくなる。また、開口角は小さくなり、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅が細くなる。
【0097】
このように、制御手段10により超音波送信パターン条件としてスイッチング回路の接続を制御し、駆動実効素子幅を変えることで、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を制御できる。
【0098】
さらに、中心素子列160、第一側列の素子列161、第二側列の素子列162の駆動パルス間に時間遅れを生じさせることで、エレベーション方向に送信ビームを形成できる。例えば、設定した送信フォーカスに対して中心素子列160、第一側列の素子列161、第二側列の素子列162の駆動パルスの位相をそろえることで、エレベーション方向に収束する送信超音波ビームを作成できる。
【0099】
図9(e)は、このようにして形成した送信超音波ビームの概略図である。このとき、例えば第二側列の素子列162の駆動パルスの位相を他の素子列の駆動パルスの位相より若干ずらすことで、意図的に送信超音波ビームの収束を弱めることもできる。図9(f)はこのようにして形成した送信超音波ビームの概略図であり、図9(e)の送信超音波ビームよりも、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅が太くなる。また図9(g)は、送信フォーカスの位置をより近接に設定し、かつ第二側列の素子列162の駆動パルスの位相を他の素子列の駆動パルスの位相よりより大きくずらした場合の概略図である。
【0100】
このように、中心素子列、第一側列、第二側列の駆動パルスをずらし、超音波送信パターン条件として制御手段10により時間差を与えて制御することで、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を制御できる。
【0101】
本実施例は、制御手段10が行う制御項目の中に、上記のような超音波送信の超音波送信パターン条件を加え、第一〜第三の制御フェーズでこれら超音波送信パターン条件を変えるものである。
すなわち、第一の制御フェーズにおいては、超音波受信ビーム信号29を取得するために送信する超音波のエレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を太くする超音波送信パターン条件を用いる。また第二の制御フェーズにおいては、超音波受信ビーム信号29を取得するために送信する超音波のエレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を細くする超音波送信パターン条件を用いる。第三の制御フェーズにおいては第一の制御フェーズと同様の制御を行う。
【0102】
エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を太くする超音波送信パターン条件は、図9(b)に示すようなスイッチング回路の接続、あるいは図9(g)に示すような中心素子列、第一側列、第二側列の駆動パルスの時間差でよい。
また、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を細くする超音波送信パターン条件は、図9(d)に示すようなスイッチング回路の接続、あるいは図9(e)に示すような中心素子列、第一側列、第二側列の駆動パルスの時間差でよい。
【0103】
このような制御をおこなうと、第一の制御フェーズ時には、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅が太くなる。その結果、図10(a)における撮像面FP1のよ
うに、超音波送信を行うプローブ1より離れた面にも広範囲に超音波が回り込み、その超音波エコー波がプローブ1で受信できる。
また第二の制御フェーズ時には、合成開口に用いる複数の断層スライス面の略中央に撮像面が設定される。この場合には超音波エコーを取得するプローブ位置と撮像面はさほど離れることはないため、第一の制御フェーズ時に比べ送信超音波の回り込みは良好となる。この場合には、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を細くとることで送信超音波ビームの音圧密度の低下を防ぎ、超音波エコー波の全般的なSN比を確保することができる。
【0104】
制御手段10が行う制御に第一の制御フェーズと第二の制御フェーズとで超音波送信パターン条件の異なる制御を行うことを含むことで、各々の制御フェーズにおいて撮像面に対する超音波エコー波のSN比が好適な条件を与えることができる。これにより機械走査に伴う各プローブ位置で好適な合成開口原理に基づく第二の整相加算が行えることとなる。
【0105】
本実施例は前記実施例1、実施例2のいずれに組み合わせることも可能である。
また本実施例では、超音波送信パターン条件として、トランスデューサアレイ上の各トランスデューサ素子の駆動パルスに与える遅延条件とエレベーション方向の駆動素子数を用いた。しかし、その他にも、エレベーション方向の送信超音波ビームパターンの幅を制御できる送信条件を制御してもよい。特にエレベーション方向の駆動パルス振幅や駆動パルス幅に変化を与え、トランスデューサ素子から送信する超音波の強度にエレベーション方向へ分布を与える送信アポダイゼーションを行ってもよい。送信アポダイゼーションの条件を第一の制御フェーズと第二の制御フェーズとで違えることで、本実施例と同様の効果を与えることができる。
【0106】
さらに1.75D、2Dアレイを用いた場合には、エレベーション方向に配列したトランスデューサを非対称に駆動できるため、駆動パルスに遅延を非対称に与えることで送信ビームにエレベーション方向の偏角を与えることも可能である。これらの送信条件を第一の制御フェーズと第二の制御フェーズと違えることで、本実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1:プローブ,2:プローブ走査機構,4:送信手段,5:受信回路,6:第一の整相加算手段,7:メモリ手段,8:選択回路,9:第二の整相加算手段,11:遅延パターン組格納メモリ,12:画像信号化手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送信し、反射した超音波を受信して受信信号を出力する素子が複数配列した第一の方向に電子走査するプローブと、
前記プローブを、前記素子の受信面と平行な面上における前記第一の方向と交差する第二の方向に機械走査する走査手段と、
前記受信信号を用いて前記第一の方向の整相加算を行い、第一の整相加算信号を生成する第一の整相加算手段と、
前記第一の整相加算信号を前記第二の方向における各位置で断層面毎に格納するメモリ手段と、
前記メモリ手段に格納された第一の整相加算信号のうち、M枚(Mは2以上の整数)の断層面に対応する第一の整相加算信号を選択する選択手段と、
前記選択されたM枚の断層面に対応する第一の整相加算信号を用いて前記第二の方向の整相加算を行い、第二の整相加算信号を生成する第二の整相加算手段と、を有し、
前記第二の整相加算手段から出力される前記第二の整相加算信号を用いて、被検体内の情報を画像データとして取得する被検体情報取得装置であって、
前記第二の整相加算手段は、前記プローブの機械走査に伴って、M枚の前記第一の整相加算信号の組を固定し、遅延パターンを変化させて第二の整相加算を行う第一のケースと、M枚の前記第一の整相加算信号の組を変化させ、遅延パターンを固定して第二の整相加算を行う第二のケースと、を切り替え、前記第一のケースにより、デッドゾーンに位置する断層面上の第二の整相加算信号を生成する
ことを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項2】
前記デッドゾーンが前記プローブの機械走査の開始位置において生成される場合は、前記第二の整相加算手段は、前記第一のケースの後、前記第二のケースに切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項3】
前記デッドゾーンが前記プローブの機械走査の終了位置において生成される場合は、前記第二の整相加算手段は、前記第二のケースの後、前記第一のケースに切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項4】
前記デッドゾーンが前記プローブの機械走査の開始位置及び終了位置において生成される場合は、前記第二の整相加算手段は、前記第一のケースの後に前記第二のケースを行い、前記第二のケースの後に再度、前記第一のケースを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項5】
前記プローブは、前記第二の方向にも複数の素子が配列されており、駆動する素子を制御することにより、前記第一のケースと第二のケースで形状の異なる超音波の送信ビームを形成する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項6】
前記第二の整相加算信号を用いて3次元画像データを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項1】
被検体に超音波を送信し、反射した超音波を受信して受信信号を出力する素子が複数配列した第一の方向に電子走査するプローブと、
前記プローブを、前記素子の受信面と平行な面上における前記第一の方向と交差する第二の方向に機械走査する走査手段と、
前記受信信号を用いて前記第一の方向の整相加算を行い、第一の整相加算信号を生成する第一の整相加算手段と、
前記第一の整相加算信号を前記第二の方向における各位置で断層面毎に格納するメモリ手段と、
前記メモリ手段に格納された第一の整相加算信号のうち、M枚(Mは2以上の整数)の断層面に対応する第一の整相加算信号を選択する選択手段と、
前記選択されたM枚の断層面に対応する第一の整相加算信号を用いて前記第二の方向の整相加算を行い、第二の整相加算信号を生成する第二の整相加算手段と、を有し、
前記第二の整相加算手段から出力される前記第二の整相加算信号を用いて、被検体内の情報を画像データとして取得する被検体情報取得装置であって、
前記第二の整相加算手段は、前記プローブの機械走査に伴って、M枚の前記第一の整相加算信号の組を固定し、遅延パターンを変化させて第二の整相加算を行う第一のケースと、M枚の前記第一の整相加算信号の組を変化させ、遅延パターンを固定して第二の整相加算を行う第二のケースと、を切り替え、前記第一のケースにより、デッドゾーンに位置する断層面上の第二の整相加算信号を生成する
ことを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項2】
前記デッドゾーンが前記プローブの機械走査の開始位置において生成される場合は、前記第二の整相加算手段は、前記第一のケースの後、前記第二のケースに切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項3】
前記デッドゾーンが前記プローブの機械走査の終了位置において生成される場合は、前記第二の整相加算手段は、前記第二のケースの後、前記第一のケースに切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項4】
前記デッドゾーンが前記プローブの機械走査の開始位置及び終了位置において生成される場合は、前記第二の整相加算手段は、前記第一のケースの後に前記第二のケースを行い、前記第二のケースの後に再度、前記第一のケースを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項5】
前記プローブは、前記第二の方向にも複数の素子が配列されており、駆動する素子を制御することにより、前記第一のケースと第二のケースで形状の異なる超音波の送信ビームを形成する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項6】
前記第二の整相加算信号を用いて3次元画像データを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−161563(P2012−161563A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26095(P2011−26095)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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