説明

被検査素子の電圧測定方法および電圧測定装置

【課題】被検査素子の出力電圧の測定において電圧計のオフセット値の影響を排除する。
【解決手段】まず、リレーRLY11を閉じる一方、リレーRLY12を開いて、基準電位端子T1と所定電圧端子T3との間の電圧Vt1を電圧計2で測定する。次に、リレーRLY12を閉じる一方、リレーRLY11を開いて、所定電圧端子T3と被測定電圧端子T2との間の電圧Vt2を電圧計2で測定する。演算処理部43は、電圧Vt1,Vt2の測定値の差を演算することにより、基準電位端子T1と被測定電圧端子T2との間の電圧Vを求めるとともに、それぞれの測定値に含まれるオフセット電圧を相殺する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの被検査素子を検査する検査装置における電圧測定に関し、特に、電圧測定精度の向上を図る被検査素子の電圧測定方法および電圧測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子などの被検査素子の検査装置においては各種の検査が行われる。特に、電圧系の検査には、被検査素子の各種の電圧が測定される。例えば、定電圧レギュレータのような電圧を出力する被検査素子の出力電圧測定を行う検査装置においては、被測定電圧に対して、並列に測定機器(電圧計など)を接続して電圧測定を行う。電圧測定においては、測定機器の誤差を排除して、測定精度を高めることが求められる。
【0003】
特許文献1には、2つの第1および第2半導体素子(三端子レギュレータ)の出力端子間の電圧を、被測定電圧として差動増幅回路により得て電圧計により測定する方法において、差動増幅回路に生じる測定誤差を除去することが開示されている。
【0004】
この測定方法では、まず、第1半導体素子に接続される測定端子を、差動増幅回路から一旦切り離すとともに、第2半導体素子の出力端子と短絡しておき、当該測定端子と第2半導体素子に接続される測定端子との間の差電圧を測定する。この状態では、本来は差電圧を生じないので、電圧計に示される電圧は誤差電圧となる。次に、第1半導体素子を測定端子と接続した状態で、第1および第2半導体素子の差電圧を測定し、この差電圧から上記の誤差電圧が差し引かれる。これにより、差動増幅回路によって生じる測定誤差が除去されるので、精度の高い電圧測定を行うことができる。
【0005】
特許文献2には、半導体素子(ダイオードなど)の逆電圧測定に本来必要な定電流電源を使用せず、定電圧電源とコンパレータによる電流検出回路とを用いて、安価な装置での測定を可能にすることが開示されている。
【0006】
この測定方法では、ダイオードのカソードに接続される測定端子に、定電圧電源により段階的に上昇する電圧を印加したときに被測定半導体素子のアノードに接続される測定端子に現れる漏れ電流をコンパレータで検出する。また、当該漏れ電流が、印加電圧の上昇に伴って増加して設定値(ブレークダウン電圧の電流値)を越えたときにコンパレータの出力が反転する。そのときの印加電圧を基準にして、変化幅を小さくして印加電圧を低下させ、コンパレータの出力が反転したときの印加電圧を測定値とする。これにより、簡素な構成で、精度の高い電圧測定を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−240571号公報(1992年8月27日公開)
【特許文献2】特開昭59−99368号公報(1984年6月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された測定方法では、差動増幅回路による測定誤差を除去することができるものの、使用する電圧計に生じる誤差による測定値への影響を排除することができない。
【0009】
また、特許文献2に開示された測定方法でも、コンパレータを含む測定回路に固有の測定誤差要因による測定値への影響を排除することができない。具体的には、コンパレータを構成する差動増幅回路にて発生する誤差により、測定誤差が生じる。
【0010】
ここで、電圧計における測定誤差について説明する。
【0011】
図6は、半導体素子の電圧測定のための従来の構成を示す回路図である。
【0012】
図6に示すように、半導体素子101(被検査素子)の出力電圧(被測定電圧)を測定するには、電圧計102を用いる。半導体素子101の基準電位端子および出力端子は、それぞれ基準電位端子T101および被測定電圧端子T102に接続される。これにより、電圧計102は、基準電位端子T101と被測定電圧端子T102との間の電圧を測定する。
【0013】
電圧計102には、固有の測定誤差(以降「オフセット電圧Voff」と称する)が存在する。したがって、電圧計102を用いて半導体素子101の出力電圧を測定すると、式(1)に示す測定値Vreadが得られる。
【0014】
Vread=V+Voff …(1)
この測定値Vreadは、基準電位端子T101と被測定電圧端子T102との間の電圧の真値Vにオフセット電圧Voffが加算された値になる。
【0015】
上記のように、電圧計102に固有のオフセット電圧の影響によって測定値Vreadは、被測電圧の真値Vに対して、誤差を生じる。
【0016】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検査素子の出力電圧の測定において電圧計のオフセット値の影響を排除することができる電圧測定方法および電圧測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の被検査素子の電圧測定方法は、電圧計を用いて被検査素子の出力電圧を測定する被検査素子の電圧測定方法において、上記の課題を解決するために、基準電位の第1端子と、前記出力電圧が印加される第2端子と、所定の電圧が印加される第3端子とを設けておき、前記第1端子と前記第3端子との間の第1電圧を前記電圧計により測定して第1測定値を得る第1測定工程と、前記第2端子と前記第3端子との間の第2電圧を前記電圧計により測定して第2測定値を得る第2測定工程と、前記第1測定値から前記第2測定値を減算する減算工程とを備えていることを特徴としている。
【0018】
上記の構成では、第1測定工程において、第1端子と第3端子との間の第1電圧が電圧計により測定されることで、第1測定値が得られる。また、第2測定工程において、第2端子と第3端子との間の第2電圧が電圧計により測定されることで、第2測定値が得られる。さらに、減算工程において、第1測定値から第2測定値が減算される。
【0019】
第1電圧と第2電圧との差が、測定の対象となる第1端子と第2端子との間の電圧、すなわち被検査素子の出力電圧であるので、減算工程の減算により、当該出力電圧が求められることになる。また、第1測定値および第2測定値には、電圧計が測定することによるオフセット電圧が等しく含まれている。このため、第1測定値から第2測定値を減算することにより、オフセット電圧が相殺される。したがって、求められた出力電圧には、オフセット電圧が含まれない。
【0020】
前記電圧測定方法において、前記第1測定工程または前記第2測定工程は、前記電圧計に内蔵されるA/Dコンバータの最小分解能の電圧より小さく、かつ異なる値の複数の定電圧を値の小さい順に前記第1電圧または前記第2電圧から減じ、これにより変化する値を前記定電圧毎に前記電圧計により測定して変化電圧測定値を得る変化電圧測定工程と、前記第1測定値または前記第2測定値を基準測定値として、当該基準測定値と前記変化電圧測定値とを比較して、前記変化電圧測定値が前記基準測定値より小さいか否かを判定する測定値比較工程と、前記変化電圧測定値が前記基準測定値より小さいと判定されたときの前記変化電圧測定値と当該変化電圧測定値を得たときの前記定電圧とを加算して前記第1測定値または前記第2測定値を補正する補正工程とを含んでいることが好ましい。
【0021】
上記の構成では、変化電圧測定工程において、定電圧が値の小さい順に第1電圧または第2電圧から減じられることにより変化する値が、定電圧毎に電圧計により測定され、その測定結果として変化電圧測定値が得られる。測定値比較工程においては、基準測定値(第1測定値または第2測定値)と変化電圧測定値とが比較された結果、変化電圧測定値が基準測定値より小さいか否かが判定される。補正工程においては、変化電圧測定値が基準測定値より小さいと判定されたときの変化電圧測定値と、当該変化電圧測定値を得たときの定電圧とが加算されて、第1測定値または第2測定値が補正される。
【0022】
定電圧がA/Dコンバータの最小分解能の電圧より小さいので、定電圧が第1電圧または第2電圧から減じられた値が最小分解能(電圧計の測定最小桁)の範囲内で変化している状態では、変化電圧測定値は基準測定値より小さくならない。一方、定電圧が第1電圧または第2電圧から減じられた値が最小分解能の範囲を越えて小さくなると、変化電圧測定値が最小分解能分だけ基準測定値より小さくなり、電圧計の測定値の最小桁が変化することになる。このときの変化電圧測定値は、被測定電圧を正確に表した値となる。したがって、補正工程において、予め減じられていた定電圧を変化電圧測定値に加算することにより、A/Dコンバータの最小分解能より小さい精度で電圧を測定することができる。
【0023】
本発明の被検査素子の電圧測定装置は、電圧計を用いて被検査素子の出力電圧を測定する被検査素子の電圧測定装置において、上記の課題を解決するために、基準電位の第1端子と、前記出力電圧が印加される第2端子と、所定の電圧が印加される第3端子と、前記第1端子と前記第3端子との間に前記電圧計が接続される第1通電経路を開閉する第1開閉手段と、前記第2端子と前記第3端子との間に前記電圧計が接続される第2通電経路を開閉する第2開閉手段と、前記第1端子と前記第3端子との間の第1電圧を測定するときに、前記第1通電経路を閉じるように前記第1開閉手段を制御する一方、前記第2通電経路を開くように前記第2開閉手段を制御し、前記第2端子と前記第3端子との間の第2電圧を測定するときに、前記第1通電経路を開くように前記第1開閉手段を制御する一方、前記第2通電経路を閉じるように前記第2開閉手段を制御する開閉制御手段と、前記電圧計により測定された前記第1電圧の第1測定値から、前記電圧計により測定された前記第2電圧の第2測定値を減じる減算手段とを備えていることを特徴としている。
【0024】
上記の構成では、開閉制御手段によって、第1電圧および第2電圧の測定時に第1開閉手段および第2開閉手段の開閉が制御される。第1電圧の測定時には、第1通電経路が第1開閉手段により閉じられる一方、第2通電経路が第2開閉手段により開かれる。一方、第2電圧の測定時には、第1通電経路が第1開閉手段により開かれる一方、第2通電経路が第2開閉手段により閉じられる。上記のようにして第1電圧および第2電圧が測定された結果、第1測定値および第2測定値が得られる。すると、減算手段によって第1測定値から第2測定値が減算される。
【0025】
第1電圧と第2電圧との差が、測定の対象となる第1端子と第2端子との間の電圧、すなわち被検査素子の出力電圧であるので、減算手段の減算により、当該出力電圧が求められることになる。また、第1測定値および第2測定値には、電圧計が測定することによるオフセット電圧が等しく含まれているが、第1測定値から第2測定値を減算することにより、オフセット電圧が相殺される。したがって、求められた出力電圧には、オフセット電圧が含まれない。
【0026】
前記電圧測定装置は、前記電圧計に内蔵されるA/Dコンバータの最小分解能の電圧より小さく、かつ異なる値の複数の定電圧を発生する定電圧発生手段と、前記電圧計と前記第1端子または前記第2端子との間に前記定電圧を個別に切り替えて印加する定電圧印加手段と、前記定電圧を値の小さい順に前記電圧計と前記第1端子または前記第2端子との間に印加するように前記定電圧印加手段を制御する電圧印加制御手段と、前記定電圧の印加により変化する前記第1電圧または前記第2電圧の値が前記定電圧毎に前記電圧計により測定された変化電圧測定値と、基準測定値となる前記第1測定値または前記第2測定値とを比較して、前記変化電圧測定値が前記基準測定値より小さいか否かを判定する測定値比較手段と、前記変化電圧測定値が前記基準測定値より小さいと判定されたときの前記変化電圧測定値と当該変化電圧測定値を得たときの前記定電圧とを加算して前記第1測定値または前記第2測定値を補正する補正手段とを有していることが好ましい。
【0027】
上記の構成では、定電圧発生手段によって発生した定電圧が、電圧印加制御手段に制御された定電圧印加手段によって、値の小さい順に電圧計と第1端子または第2端子との間に印加される。これにより変化する第1電圧または第2電圧の値は、定電圧毎に電圧計により変化電圧測定値として測定される。そして、測定値比較手段によって、基準測定値(第1測定値または第2測定値)と変化電圧測定値とが比較された結果、変化電圧測定値が基準測定値より小さいか否かが判定される。さらに、補正手段によって、変化電圧測定値が基準測定値より小さいと判定されたときの変化電圧測定値と、当該変化電圧測定値を得たときの定電圧とが加算されて、第1測定値または第2測定値が補正される。
【0028】
このように、上記の構成では、前述の電圧測定方法と同様、定電圧がA/Dコンバータの最小分解能の電圧より小さい定電圧を用いて変化電圧測定値を求め、変化電圧測定値が基準測定値より小さくなったときに、第1測定値または第2測定値を補正している。したがって、補正工程において、変化電圧測定値に、予め減じられた定電圧を加算することにより、A/Dコンバータの最小分解能より小さい精度で電圧を測定することができる。
【0029】
前記定電圧発生手段は、前記定電圧を個別に発生する複数の定電圧源であることが好ましい。あるいは、前記定電圧発生手段は、基準電圧を発生する基準電源と、前記基準電圧を所定の分圧比で分圧する複数の抵抗とを有し、分圧された前記基準電圧を前記定電圧として発生することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る半導体装置の電圧測定方法および電圧測定装置は、上記のように構成されることにより、被検査素子の電圧測定において、電圧計のオフセット値の影響をなくすことができる。したがって、被検査素子の電圧測定を高精度に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態1に係る電圧測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る電圧測定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2の電圧測定装置による電圧測定の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態2に係る電圧測定装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【図5】上記変形例の構成による電圧測定の具体例を説明するための回路図である。
【図6】従来の電圧測定に用いられる構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施形態1]
本発明に係る一実施形態について、図1を参照して以下に説明する。
【0033】
〔電圧測定装置の構成〕
図1は、本実施形態に係る電圧測定装置1の構成を示す回路図である。
【0034】
図1に示すように、電圧測定装置1は、半導体素子10の出力電圧を測定する装置である。電圧測定装置1は、半導体素子10の出力電圧を測定するために、電圧計2と、所定電源3と、測定制御装置4と、リレーRLY11,RLY12と、基準電位端子T1と、被測定電圧端子T2と、所定電圧端子T3とを備えている。半導体素子10は、電圧を出力(発生)する素子であり、代表的には定電圧レギュレータが挙げられる。
【0035】
電圧計2の一方の端子は、リレーRLY11,RLY12の一方の端子に接続されている。電圧計2の他方の端子は、所定電圧端子T3に接続されている。また、リレーRLY11の他方の端子は基準電位端子T1に接続され、リレーRLY12の他方の端子は被測定電圧端子T2に接続されている。
【0036】
基準電位端子T1(第1端子)は、半導体素子1の基準電位端子(グランド端子など)に接続されている。被測定電圧端子T2(第2端子)は、半導体素子1の出力端子に接続されている。所定電圧端子T3(第3端子)は、所定電源3に接続されている。
【0037】
電圧計2は、A/Dコンバータを内蔵しており、電圧計2の両端に入力される電圧をデジタル値に変換し、そのデジタル値に基づいて測定処理を行うとともに、測定値を図示しない表示部に表示する。この電圧計2は、電圧測定時に固有のオフセット電圧Voffを生じる。また、電圧計2は、A/Dコンバータの最小分解能で電圧を測定する。
【0038】
なお、所定電圧端子T3と基準電位端子T1との間の電位差、および所定電圧端子T3と被測定電圧端子T2との間の電位差は、電圧計2の入力範囲内であることが必要である。
【0039】
所定電源3は、所定の電圧を発生する電源である。この電圧は、被測定電圧端子T2に印加される半導体素子1の出力電圧と同じであってもよく、または当該出力電圧より高くてもよいし、低くてもよいが、予め所定の電圧として設定されている。
【0040】
リレーRLY11(第1開閉手段)は、電圧計2と基準電位端子T1との間を開閉する一方、リレーRLY12(第2開閉手段)は、電圧計2と被測定電圧端子T2との間を開閉する。これにより、リレーRLY11は、基準電位端子T1と所定電圧端子T3との間に電圧計2が接続される第1通電経路を開閉する。また、リレーRLY12は、被測定電圧端子T2と所定電圧端子T3との間に電圧計2が接続される第2通電経路を開閉する。
【0041】
リレーRLY11は、基準電位端子T1と所定電圧端子T3との間の電圧Vt1(第1電圧)を測定するときに閉じる一方、被測定電圧端子T2と所定電圧端子T3との間の電圧Vt2(第2電圧)を測定するときに開く。また、リレーRLY12は、電圧Vt2を測定するときに閉じる一方、電圧Vt1を測定するときに開く。
【0042】
《測定制御装置の構成》
測定制御装置4は、電圧Vt1を測定した後に電圧Vt2を測定し、電圧Vt1,Vt2のそれぞれの測定値V1read,V2readの差を求める測定処理を行う。このため、測定制御装置4は、リレーRLY11,RLY12を上記のように開閉するように制御し、測定値V1read,V2readを読み込んで、上記の差を求めるための演算処理を行う。
【0043】
測定制御装置4は、上記の測定処理を行うために、制御部41、リレー制御部42、演算処理部43および記憶部44を有している。測定制御装置4は、制御プログラムに基づいて測定処理を行うため、マイクロコンピュータや汎用のコンピュータなどで構成される。例えば、測定制御装置4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置(記録媒体)などを備えている。CPUは、電圧測定の機能を実現するプログラムの命令を実行する。ROMはプログラムを格納するために設けられ、RAMはプログラムを展開するために設けられる。記憶装置は、プログラムおよび各種データを格納するために設けられる。
【0044】
〈制御部の構成〉
制御部41は、上記の測定処理を行うために、リレー制御部42、演算処理部43および記憶部44の動作を制御する。
(1)リレー制御部の制御
制御部41は、リレー制御部42に、電圧Vt1,Vt2の測定をそれぞれ行うことを通知する。また、制御部41は、リレー制御部42に、電圧Vt1,Vt2の測定が終了したことを通知する。
(2)記憶部の制御
制御部41は、電圧Vt1および電圧Vt2のそれぞれの測定時に電圧計2より読み取った測定値V1read(第1測定値)および測定値V2read(第2測定値)を記憶部44に記憶させる。また、制御部41は、記憶部44に、必要に応じて測定値V1read,V2readを読み出す指示を与えて、これらの値を読み出す。さらに、制御部41は、演算処理部43より受け取った演算結果を記憶部44に記憶させる。
【0045】
なお、制御部41は、上記の演算結果を被測定電圧の測定値として図示しない表示部に表示する。
(3)演算処理部の制御
制御部41は、記憶部44か読み出した測定値V1read,V2readを演算処理部43に与える。
【0046】
〈リレー制御部の構成〉
リレー制御部42(開閉制御手段)は、制御部41からの電圧Vt1の測定を行う通知を受けて、リレーRLY11が閉じる一方、リレーRLY12が開くように、リレーRLY11,RLY12の開閉を制御する。また、リレー制御部42は、制御部41からの電圧Vt2の測定を行う通知を受けて、リレーRLY11が開く一方、リレーRLY12が閉じるように、リレーRLY11,RLY12の開閉を制御する。
【0047】
〈演算処理部の構成〉
演算処理部43(減算手段)は、制御部41から与えられる測定値V1read,V2readに基づいて、測定値V1readから測定値V2readを減算する処理を行う。
【0048】
〈記憶部の構成〉
記憶部44は、前述の測定値V1read,V2readを一時的に記憶することができればよく、例えばRAMなどの揮発性のメモリによって構成される。
【0049】
〔電圧測定装置による電圧測定〕
続いて、上記のように構成される電圧測定装置1による半導体素子10の電圧測定動作(電圧測定方法)について説明する。
【0050】
まず、リレーRLY11を閉じる一方、リレーRLY12を開き、基準電位端子T1と所定電圧端子T3との間に電圧計2を接続して、電圧Vt1を測定する(第1測定工程)。電圧Vt1を、基準電位端子T1と所定電圧端子T3との間の電圧の真値とすると、測定値V1readは、式(2)のように表される。
【0051】
V1read=V1+Voff …(2)
このとき、電圧計2によって測定された測定値V1readは、制御部41によって取り込まれて、記憶部44に記憶される。
【0052】
次に、リレーRLY12を閉じる一方、リレーRLY11を開き、所定電圧端子T3と被測定電圧端子T2との間に電圧計2を接続して、電圧Vt2を測定する(第2測定工程)。このとき、電圧計2によって測定された測定値V2readは、制御部41によって取り込まれて、記憶部44に記憶される。
【0053】
電圧Vt2を、所定電圧端子T3と被測定電圧端子T2との間の電圧の真値とすると、測定値V2readは、式(3)のように表される。
【0054】
V2read=Vt2+Voff …(3)
さらに、記憶部44に記憶された測定値V1read,V2readが読み出されると、演算処理部43により式(4)で表される演算が行われる(減算工程)。
【0055】
V=V1read−V2read
=(Vt1+Voff)−(Vt2+Voff)
=Vt1−Vt2 …(4)
この演算により、測定値V1read,V2readに含まれるオフセット電圧Voffが相殺される。したがって、基準電位端子T1と被測定電圧端子T2との間の電圧の真値Vが求められる。
【0056】
なお、所定電圧端子T3に印加される電圧が、基準電位端子T1の基準電位より高く、被測定電圧端子T2に印加される半導体素子1の出力電圧より低い場合、電圧Vt2が負の値となる。この場合も、式(4)により真値Vが求められる。
【0057】
〔実施形態の効果〕
このように、本実施形態の電圧測定装置1では、半導体素子10の2端子間の電圧の測定に、所定電源3による所定電圧を用いている。具体的には、電圧測定装置1では、前述のように、基準電位端子T1と所定電圧端子T3との間の電圧Vt1を測定し、所定電圧端子T3と被測定電圧端子T2との間の電圧Vt2を測定し、それぞれの測定値V1read,V2readの差を演算している。
【0058】
これにより、測定値V1read,V2readに含まれるオフセット電圧Voffが除去される。それゆえ、電圧計2に固有のオフセット電圧Voffに影響されることなく、半導体素子10の被測定電圧を測定することができる。したがって、被測定電圧の測定精度を向上させることができる。
【0059】
[実施形態2]
本発明に係る他の実施形態について、図2〜図5を参照して以下に説明する。
【0060】
前述の実施形態1に示す電圧測定装置1は、電圧計2に固有のオフセット電圧Voffの影響を半導体素子10の測定値より排除することができるものの、電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能よりも小さい精度で電圧を測定することができない。そこで、本実施形態では、電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能よりも小さい精度で電圧を測定することができる構成について説明する。
【0061】
なお、本実施形態において、前述の実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0062】
〔電圧測定装置の構成〕
図2は、本実施形態に係る電圧測定装置11の構成を示す回路図である。
【0063】
図2に示すように、電圧測定装置11は、半導体素子10の出力電圧を測定するために、電圧測定装置1と同様、電圧計2と、所定電源3と、リレーRLY11,RLY12と、基準電位端子T1と、被測定電圧端子T2と、所定電圧端子T3とを備えている。これらの接続構成は、電圧測定装置1における各部の接続構成と一部を除いて同一であるので、同一部分についての説明を省略する。また、電圧測定装置11は、電圧測定装置1が備える測定制御装置4に代えて測定制御装置5を備えている。さらに、電圧測定装置11は、上記の構成に加えて多段電源回路6を備えている。
【0064】
《多段電源回路の構成》
多段電源回路6は、n個(複数)の定電圧源P1〜Pnと、n+1個(複数)のリレーRLY0〜RLYnとを有している。
【0065】
定電圧源P1〜Pn(定電圧発生手段)は、複数の定電圧Vref1〜Vrefnを個別に発生する。定電圧Vref1〜Vrefnは、電圧計2のA/Dコンバータの分解能よりも小さい電圧であり、Vref1<Vref2<Vref3<…<Vrefnの関係を有する。
【0066】
定電圧源P1〜Pnは、並列に設けられており、それぞれがリレーRLY1〜RLYnと直列に接続されている。具体的には、定電圧源P1〜Pnは、負極(グランド端子)がリレーRLY11,RLY12の一方の端子(電圧計2側の端子)に接続され、正極(出力端子)がそれぞれリレーRLY1〜RLYnの一方の端子に接続されている。リレーRLY1〜RLYnの他方の端子は、電圧計2の一方の端子に接続されている。これにより、リレーRLY1〜RLYn(定電圧印加手段)は、それぞれ電圧計2とリレーRLY11,RLY12との間に定電圧源P1〜Pnを接続したり切り離したりする。
【0067】
リレーRLY0は、定電圧源P1〜Pnのいずれとも接続されておらず、定電圧源P1〜Pnの接続または切り離しには関与していない。具体的には、リレーRLY0は、一方の端子がリレーRLY11,RLY12の一方の端子に接続され、他方の端子が電圧計2の一方の端子に接続されている。
【0068】
リレーRLY0〜RLYnは、電圧の測定時に、リレーRLY0,リレーRLY1,リレーRLY2,…,リレーRLYn−1,リレーRLYnの順に1つずつ閉じる。
【0069】
電圧Vt1または電圧Vt2の測定時に、定電圧源P1〜Pnのいずれか1つが、基準電位端子T1または被測定電圧端子T2と電圧計2との間に接続される。このため、電圧計2は、基準電位端子T1または被測定電圧端子T2の電位から定電圧Vrefi(i=1〜n)だけ高い電位と、所定電圧端子T3の電位との間の電圧を測定することになる。つまり、電圧計2は、基準電位端子T1と所定電圧端子T3との間の電圧Vt1を測定する場合、実際にはVt1−Vrefiを測定している。同様に、電圧計2は、被測定電圧端子T2と所定電圧端子T3との間の電圧Vt2を測定する場合、実際にはVt2−Vrefiを測定している。
【0070】
《電圧測定の原理》
電圧測定装置11における電圧測定の原理について説明する。
【0071】
まず、電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能(電圧計2の測定最小桁)の電圧をVrとすると、電圧計2による測定値は、Vr,2Vr,…,(N−1)Vr,NVr(Nは正の整数)と表される。このため、電圧の測定対象となる2つの端子Ta,Tbの間の電圧Vabが、(N−1)Vr<Vab≦NVrの範囲の値である場合、電圧計2の測定値はNVrとなる。多段電源回路6を用いて電圧の測定を行う場合、電圧計2が実際に測定する電圧(Vab−Vrefi)が(N−1)Vr<Vab−Vrefi≦NVrの範囲の値であるときも、同様に電圧計2の測定値Vi(i=1〜n)はNVrとなる。このように、電圧計2では最小分解能Vrより小さい精度で測定することができない。
【0072】
そこで、本実施形態では、最小分解能Vrより小さい精度で測定するために次の原理に基づいて測定を行う。
【0073】
多段電源回路6において、リレーRLY1〜RLYnを前述のように切り替えて電圧計2に接続することにより、定電圧Vrefiを徐々に上昇させていく。すると、(N−1)Vr<Vab−Vrefiの範囲では、測定値Vi(変化電圧測定値)がNVrのままであるが、(N−1)Vr=Vab−Vrefiとなる時点で電圧計2の測定値Viが(N−1)Vrに変化する。この測定値Viは、測定最小桁が変化した値であり、最小分解能で表される正確な値である。したがって、測定値ViがNVrから(N−1)Vrに変化したとき、すなわち測定値ViがNVrより小さくなったときの測定値Viが、定電圧Vrefiの精度で電圧(Vab−Vrefi)を測定した値になる。
【0074】
ここで、リレーRLY0が閉じたときの電圧計2の測定値をV0(基準測定値)とすると、閉じたリレーRLYiに対応する測定値Viが測定値V0より小さくなるときの値(Vab−Vrefi)を測定値Vmとして採用する。これにより、端子Ta,Tbの間の電圧Vabは、式(5)のように表される。
【0075】
Vab=Vm=Vi+Vrefi …(5)
このように、測定値Vmは上記の演算により求められる。
【0076】
《測定制御装置の構成》
測定制御装置5は、前述の測定制御装置4と同様、電圧Vt1を測定した後に電圧Vt2を測定し、電圧Vt1,Vt2のそれぞれの測定値V1read,V2readの差を求める測定処理を行う。このため、測定制御装置5は、リレーRLY11,RLY12を前述のように順次開閉するように制御し、測定値V1read,V2readを読み込んで、上記の差を求めるための演算処理を行う。また、測定制御装置5は、電圧Vt1,Vt2の測定時に、電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能よりも小さい精度で測定を行うために、多段電源回路6におけるリレーRLY0〜RLYnを上記のように開閉するように制御する。
【0077】
測定制御装置5は、制御部51、リレー制御部52、比較処理部53、演算処理部54および記憶部55を有している。測定制御装置5は、制御プログラムに基づいて上記の測定処理を行うため、測定制御装置4と同様、マイクロコンピュータや汎用のコンピュータなどで構成される。
【0078】
〈制御部の構成〉
制御部51は、上記の測定処理を行うために、リレー制御部52、比較処理部53、演算処理部54および記憶部55の動作を以下のように制御する。
【0079】
(1)記憶部の制御
制御部51は、電圧Vt1,Vt2のそれぞれの測定時に電圧計2より読み取った測定値V1read,V2readを記憶部55に記憶させる。また、制御部51は、多段電源回路6においてリレーRLY0が閉じたときの電圧Vt1,Vt2の測定値(以降共通して「測定値V0」と称する)を記憶部55に記憶させる。また、制御部51は、多段電源回路6において、閉じたリレーRLYi(i=1〜n)に対応して定電圧Vrefi毎に測定された電圧Vt1,Vt2の測定値(以降共通して「測定値Vi」と称する)を記憶部55に記憶させる。
【0080】
制御部51は、測定値Viが測定値V0より小さいときに、記憶部55に記憶されているリレーRLY1〜RLYnにそれぞれ対応する定電圧Vref1〜Vrefnから、測定値Viに対応する定電圧Vrefiを読み出す。測定値Viが測定値V0より小さいことは、後述するように、比較処理部53によって判定される。
【0081】
(2)リレー制御部の制御
制御部51は、リレー制御部55に、電圧Vt1,Vt2の測定をそれぞれ行うことを通知するとともに、これらの測定が終了したことを通知する。また、制御部51は、閉じるリレーRLYiを特定するリレーIDを書き替える。リレーIDは、測定制御装置5に設けられたレジスタ(図示せず)にi(iは1〜nのいずれか1つ)という値にて設定されている。制御部51は、リレーRLY0が閉じた状態で電圧測定が行われた後にリレーRLY0が開くと、上記のレジスタのリレーIDの値iを“1”にセットする。また、制御部51は、測定値Viが測定値V0以上であるという比較処理部53による判定結果を受けて、上記のレジスタのリレーIDの値iを1つインクリメントする。
【0082】
(3)比較処理部の制御
制御部51は、上記の測定値V0,Viを記憶部55から読み出して比較処理部53に与える。
【0083】
(4)演算処理部の制御
制御部51は、記憶部55に記憶されている測定値V1read,V2readを読み出して演算処理部54に与える。また、制御部51は、測定値Viが測定値V0より小さいという判定結果を比較処理部53より受けると、記憶部55に記憶されている測定値Viおよび当該測定値Viに対応する定電圧Vrefiを読み出して演算処理部54に与える。
【0084】
〈リレー制御部の構成〉
リレー制御部52(開閉制御手段)は、制御部41からの電圧Vt1の測定を行う通知を受けて、リレーRLY11が閉じる一方、リレーRLY12が開くように、リレーRLY11,RLY12の開閉を制御する。また、リレー制御部52は、制御部51からの電圧Vt2の測定を行う通知を受けて、リレーRLY11が開く一方、リレーRLY12が閉じるように、リレーRLY11,RLY12の開閉を制御する。
【0085】
リレー制御部52(電圧印加制御手段)は、電圧Vt1,Vt2の測定時に、それぞれリレーRLY0,RLY1,RLY2,…,RLYn−1,RLYnの順に1つずつ閉じて、他を開くようにリレーRLY0〜RLYnの開閉を制御する。具体的には、電圧測定が開始して最初にリレーRLY0を閉じて開いた以降、リレーIDにて特定されるリレーRLYiを閉じるように制御する。これにより、リレー制御手段52は、定電圧Vref1〜Vrefnを値の小さい順に電圧計2と基準電位端子T1または被測定電圧端子T2との間に印加するようにリレーRLY1〜RLYnを開閉させている。また、リレー制御部52は、電圧の測定が終了したという通知を制御部51から受けると、閉じていたリレーRLY0〜RLYnを開くように制御する。
【0086】
〈比較処理部の構成〉
比較処理部53(測定値比較手段)は、制御部51により与えられた測定値V0と測定値Viとを比較して、測定値Viが測定値V0より小さいか否かを判定する。また、比較処理部53は、その判定の結果を制御部51に通知する。
【0087】
〈演算処理部の構成〉
演算処理部54(減算手段)は、制御部51から与えられる測定値V1read,V2readに基づいて、測定値V1readから測定値V2readを減算する処理を行う。また、演算処理部54(補正手段)は、比較処理部53によって、測定値Viが測定値V0より小さいと判定されたときに、制御部51から与えられる測定値Viおよび定電圧Vrefiに基づいて、前述の式(5)の演算を行うことにより測定値Vmを求める。これにより、演算処理部54は、最初の測定で得た測定値V0(測定値V1read,V2read)を測定値Vmに補正する。
【0088】
〈記憶部の構成〉
記憶部55は、前述の測定値V1read,V2readおよび測定値V0,Viを記憶している。また、記憶部55は、前述のリレーIDと、リレーIDで特定されるリレーRLY1〜RLYnにそれぞれ対応する定電圧Vref1〜Vrefnとの関係をテーブルの形式で記憶している。これにより、制御部51は、リレーIDを指定することにより、対応する定電圧Vrefiを記憶部55から読み出すことができる。
【0089】
〔電圧測定装置による電圧測定〕
続いて、電圧測定装置11による半導体装置10の電圧測定動作(電圧測定方法)について説明する。
【0090】
図3は、電圧測定装置11による半導体装置10の電圧測定の手順を示すフローチャートである。
【0091】
基準電位端子T1と所定電圧端子T3との間の電圧Vt1および被測定電圧端子T2と所定電圧端子T3との間の電圧Vt2の測定については、前述のように実施形態1ですでに説明しているので、ここではその説明を省略する。したがって、ここでは、多段電源回路6を用いた電圧Vt1,Vt2の測定に共通する電圧測定について説明する。
【0092】
なお、以降の説明では、電圧Vt1,Vt2の測定対象となる2端子(基準電位端子T1および所定電圧端子T3または所定電圧端子T3および被測定電圧端子T2)を端子Ta,Tbとする。
【0093】
図3に示すように、まず、リレー制御部52の制御によってリレーRLY0を閉じる(ステップS1)。このとき、他のリレーRLY1〜RLYnは、リレー制御部52の制御によって開いている。
【0094】
この状態で、端子Ta,Tb間の電圧(第1電圧および第2電圧)を電圧計2により測定する(ステップS2)。このとき、測定結果として得られた測定値V0が制御部51によって記憶部55に書き込まれる。このときの測定値V0は、定電圧源P1〜Pnの定電圧Vref1〜Vrefnが加算されない端子Ta,Tb間の電圧の測定値である。
【0095】
記憶部55に測定値V0が記憶されると、リレー制御部52の制御によってリレーRLY0を開く(ステップS3)。すると、制御部51によって、レジスタのリレーIDの値iを“1”にセットする(ステップS4)。このとき、制御部51は、測定値V0が0に低下したことによってリレーRLY0が開いたことを認識して、リレーIDを上記のようにセットする。
【0096】
次いで、リレー制御部52の制御によってリレーRLY1を閉じる(ステップS5)。これにより、定電圧源P1が電圧計2に接続される。このとき、リレー制御部52は、レジスタのリレーIDの値i(=1)を読み取って、リレーRLY1を閉じるように制御する。
【0097】
この状態で、端子Ta,Tb間の電圧Vabを電圧計2により測定する(ステップS6(変化電圧測定工程))。このとき、測定結果としての測定値Vi(V1)が制御部51によって記憶部55に書き込まれる。記憶部55に測定値Vi(V1)が記憶されると、リレー制御部52の制御によってリレーRLYi(RLY1)を開く(ステップS7)。このとき電圧計2が測定する電圧は、定電圧源P1が電圧計2に接続されることにより、実際には電圧Vabより定電圧Vref1だけ低い値となっている。
【0098】
さらに、比較処理部53によって、記憶部55から読み出された測定値V0,Viを比較し、測定値Viが測定値V0より小さいか否かを判定する(ステップS8(測定値比較工程))。比較の結果、測定値Viが測定値V0以上(Vi≧V0)であると判定されると、制御部51によってリレーIDの値iを1つインクリメントし(ステップS9)、処理がステップS5に戻る。
【0099】
ここで、リレーRLY1が閉じたとき、電圧計2が電圧(Vab−Vref1)を測定した結果が前述の最小分解能Vrの範囲内であれば、測定値Viは変化しない。このため、測定値Viが測定値V0以上であると判定される。
【0100】
定電圧源P1〜Pnの定電圧Vref1〜Vrefnは、電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能よりも小さい電圧であり、Vref1<Vref2<Vref3<…<Vrefnの関係を有する。このため、上記のステップS5〜S9によるループ処理では、リレーRLY1〜RLYnを順次切り替えて閉じていくと、測定値Viの値が徐々に小さくなる。しかしながら、測定対象となる電圧(Vab−Vrefi)が最小分解能の範囲で変化している状態では、測定値Viに変化がない。そして、測定値Viの値が最小分解能の境界値に達すると、測定値Viが低下する。
【0101】
この場合、ステップS8での比較の結果、測定値Viが測定値V0より小さいと判定される。すると、演算処理部54によって、そのときの測定値Viおよび定電圧Vrefiを加算して測定値Vmを計算し(ステップS10(補正工程))、処理を終える。
【0102】
このようにして、電圧Vt1を測定した結果として補正された測定値Vm1(Vm)が得られる。同様に、電圧Vt2を測定した結果として補正された測定値Vm2(Vm)が得られる。これらの測定値Vm1,Vm2は記憶部55に記憶される。
【0103】
そして、記憶部55に記憶された測定値Vm1,Vm2が読み出されると、演算処理部54により式(4)で表される演算が行われる(減算工程)。このとき、測定値V1read,V2readの代わりに測定値Vm1,Vm2が用いられる。これにより、測定値Vm1,Vm2に含まれるオフセット電圧Voffが相殺されるので、基準電位端子T1と被測定電圧端子T2との間の電圧の真値Vが求められる。また、測定値Vm1,Vm2が電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能より小さい精度で測定された値であるので、これらを用いて求められた真値Vをより高精度に求めることができる。
【0104】
〔実施形態の効果〕
このように、本実施形態の電圧測定装置11では、実施形態1の電圧測定装置1と同様、基準電位端子T1と所定電圧端子T3との間の電圧の測定値V1read)と、所定電圧端子T3と被測定電圧端子T2との間の電圧の測定値V2readとの差を演算している。これにより、測定値V1read,V2readに含まれるオフセット電圧Voffが除去される。それゆえ、電圧計2に固有のオフセット電圧Voffに影響されることなく、半導体素子10の被測定電圧を測定することができる。したがって、半導体素子10の被測定電圧の測定精度を向上させることができる。
【0105】
一方、電圧測定装置11では、多段電源回路6を用いることにより、電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能より小さい定電圧Vref1〜VrefnをリレーRLY1〜RLYnにより順次切り替えて電圧計2に印加して電圧Vabの測定値Viを得ている。また、電圧測定装置11では、測定値ViがリレーRLY0を接続したときの測定値V0より小さいときに、前述の式(5)の演算により、測定値Vmを得ている。これにより、電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能より小さい定電圧Vref1〜Vrefnの精度で半導体素子10の被測定電圧を測定することができる。したがって、半導体素子10の被測定電圧の測定精度をさらに向上させることができる。
【0106】
[変形例]
本実施形態の変形例について説明する。図4は、本実施形態の変形例に係る電圧測定装置12の構成を示す回路図である。
【0107】
〔電圧測定装置の構成〕
図4に示すように、電圧測定装置12は、電圧測定装置11と同様、電圧計2と、所定電源3と、測定制御装置5と、リレーRLY11,RLY12と、基準電位端子T1と、被測定電圧端子T2と、所定電圧端子T3とを備えている。また、電圧測定装置12は、前述の多段電源回路6に代えて、分圧抵抗回路7と、基準電源8と、オペアンプ9とを備えている。
【0108】
《分圧抵抗回路の構成》
分圧抵抗回路7は、図4に示すように、n個(複数)の抵抗RL1〜RLnと、n+1個(複数)のリレーRLY0〜RLYnとを有している。
【0109】
抵抗RL1〜RLnは、リレーRLY11,RLY12の一方の端子(電圧計2側の端子)と基準電源8との間に直列に接続されている。抵抗RL1がリレーRLY11,RLY12側に配置され、抵抗RLnが基準電源8側に配置されている。これにより、抵抗RL1〜RLnは、それぞれの抵抗値で定まる所定の分圧比で基準電源8の基準電圧を分圧する。
【0110】
リレーRLY0の一方の端子は、抵抗RL1とリレーRLY11,RLY12の一方の端子との接続点に接続されている。リレーRLY1〜RLYnは、それぞれ抵抗RL1〜RLnに対応して設けられている。リレーRLY1〜RLYn−1の一方の端子は、それぞれ対応する抵抗RL1〜RLn−1とそれらに隣接する抵抗RL2〜RLnとの接続点に接続されている。リレーRLYnの一方の端子は、抵抗RLnと基準電源8との接続点に接続されている。リレーRLY0〜RLYnの全ての他方の端子は、オペアンプ9の非反転入力端子に接続されている。
【0111】
上記のように構成される分圧抵抗回路7において、リレーRLY0〜RLYnは、前述の多段電源回路6におけるリレーRLY0〜RLYnと同様に開閉が制御される。また、リレーRLY1〜RLYn−1がそれぞれ閉じた状態では、その閉じた位置に現れる基準電圧の分圧値を取り出すことができる。これにより、基準電源8の基準電圧の分圧値が、閉じたリレーRLYiを介してオペアンプ9の非反転入力端子に印加される。さらに、リレーRLYnが閉じた状態では、リレーRLYnが基準電源8とオペアンプ9とを直接接続する。これにより、基準電源8の基準電圧は、分圧されずにオペアンプ9の非反転入力端子に印加される。
【0112】
《オペアンプの構成》
オペアンプ9は、出力端子が非反転入力端子に接続されることにより、ボルテージフォロワを構成している。また、オペアンプ9の出力端子は、電圧計2の一方の端子に接続されている。
【0113】
《測定制御装置の構成》
測定制御装置5は、基本的には、電圧測定装置11における測定制御装置5と同等の機能を有している。しかしながら、電圧測定装置12が、多段電源回路6に代えて、分圧抵抗回路7、基準電源8およびオペアンプ9を備えることから、測定制御装置5は、電圧測定装置11における測定制御装置5と以下のように異なる。
【0114】
〈制御部の構成〉
制御部51は、分圧抵抗回路7においてリレーRLY0が閉じたときの電圧Vt1,Vt2の測定値(以降共通して「測定値V0」と称する)を記憶部55に記憶させる。また、制御部51は、分圧抵抗回路7において、リレーRLYi(i=1〜n)がそれぞれ閉じたときの電圧Vt1,Vt2の測定値(以降共通して「測定値Vi」と称する)を記憶部55に記憶させる。
【0115】
〈記憶部の構成〉
記憶部55は、前述のリレーIDと、リレーIDで特定されるリレーRLY1〜RLYnにそれぞれ対応する定電圧Vref1〜Vrefnとの関係をテーブルの形式で記憶している。ここでの定電圧Vref1〜Vrefnは、前述の定電圧源P1〜Pnの定電圧Vref1〜Vrefnと異なっている。定電圧Vref1〜Vrefn-1は、分圧抵抗回路7において、リレーRLY1〜RLYnがそれぞれ閉じたときに抵抗RL1〜RLnの各接続点に現れる電圧である。また、定電圧Vrefnは基準電源8の基準電圧である。
【0116】
〔電圧測定装置による電圧測定〕
上記のように構成される電圧測定装置12による半導体装置10(被検査素子)の電圧測定動作について図3および図5を参照して説明する。
【0117】
図5は、電圧測定装置12の電圧測定の具体例を説明するための回路図である。
【0118】
図3に示すように、まず、リレー制御部52の制御によってリレーRLY0を閉じる(ステップS1)。この状態で、端子Ta,Tb間の電圧を電圧計2により測定する(ステップS2)。このとき、オペアンプ9は、非反転入力端子がリレーRLY0を介して、端子Ta(基準電位端子T1または被測定電圧端子T2)に接続されるので、オペアンプ9の出力端子には端子Taの電位が現れる。
【0119】
電圧測定の後、リレー制御部52の制御によってリレーRLY0を開く(ステップS3)。すると、制御部51によって、レジスタのリレーIDの値iを“1”にセットする(ステップS4)。次いで、リレー制御部52の制御によってリレーRLY1を閉じる(ステップS5)。これにより、抵抗RL1,RL2の接続点がオペアンプ9の非反転入力端子に接続される。それゆえ、基準電源8の基準電圧が抵抗RL1と抵抗RL2〜RLnとの分圧比で分圧された電圧(定電圧Vref1)が、オペアンプ9の非反転入力端子に印加される。したがって、オペアンプ9の出力端子には上記の電圧が現れる。
【0120】
この状態で、端子Ta,Tb間の電圧Vabを電圧計2により測定する(ステップS6)。このとき、測定結果としての測定値Vi(V1)が制御部51によって記憶部55に書き込まれる。続いて、リレー制御部52の制御によってリレーRLYi(RLY1)を開く(ステップS7)。このとき電圧計2が測定する電圧は、分圧抵抗回路7の分圧により、実際には電圧Vabより定電圧Vref1だけ低い値となっている。
【0121】
さらに、比較処理部53によって、記憶部55から読み出された測定値V0,Viを比較し、測定値Viが測定値V0より小さいか否かを判定する(ステップS8)。比較の結果、測定値Viが測定値V0以上(Vi≧V0)であると判定されると、制御部51によってリレーIDの値iを1つインクリメントし(ステップS9)、処理がステップS5に戻る。
【0122】
ここで、リレーRLY1が閉じたとき、電圧計2が電圧(Vab−Vref1)を測定した結果が前述の最小分解能Vrの範囲内であれば、測定値Viは変化しない。このため、測定値Viが測定値V0以上であると判定される。
【0123】
リレーRLY1〜RLYnがそれぞれ閉じることにより、抵抗RL1〜RLnによる分圧回路から定電圧Vref1〜Vrefnが得られる。この定電圧Vref1〜Vrefnは、電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能よりも小さい電圧であり、Vref1<Vref2<Vref3<…<Vrefnの関係を有する。このため、上記のステップS5〜S9によるループ処理では、リレーRLY1〜RLYnを順次切り替えて閉じていくと、測定値Viの値が徐々に小さくなる。しかしながら、測定対象となる電圧(Vab−Vrefi)が最小分解能の範囲で変化している状態では、測定値Viに変化がない。そして、測定値Viの値が最小分解能の境界値に達すると、測定値Viが低下する。
【0124】
この場合、ステップS8での比較の結果、測定値Viが測定値V0より小さいと判定される。すると、演算処理部54によって、そのときの測定値Viおよび定電圧Vrefiを加算して測定値Vmを計算して(ステップS10)、処理を終える。
【0125】
このようにして、電圧Vt1を測定した結果として測定値Vm1(Vm)が得られ、電圧Vt2を測定した結果として測定値Vm2(Vm)が得られる。
【0126】
このように、電圧測定装置12では、前述の多段電源回路6に代えて、分圧抵抗回路7、基準電源8およびオペアンプ9を用いている。これにより、電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能より小さい定電圧Vref1〜VrefnをリレーRLY1〜RLYnにより順次切り替えて取得して2つの端子Ta,Tbの間の電圧の測定値Viを得ている。また、電圧測定装置12では、測定値ViがリレーRLY0を接続したときの測定値V0より小さいときに、前述の式(5)の演算により、測定値Vmを得ている。これにより、電圧計2のA/Dコンバータの最小分解能より小さい定電圧Vref1〜Vrefnの精度で半導体素子10の被測定電圧を測定することができる。したがって、半導体素子10の被測定電圧の測定精度をさらに向上させることができる。
【0127】
〈電圧測定の具体例〉
ここで、電圧測定装置12による電圧測定の具体例について説明する。
【0128】
図5に示すように、分圧抵抗回路7が、リレーRLY0〜RLY9および抵抗RL1〜RL10を有し、端子Ta,Tbの間の電圧Vabを測定するものとする。ここでは、端子Taの電位が基準電位であり、電圧Vabが1.05Vであり、基準電源8の基準電圧が0.1Vであり、抵抗RL1〜RL9の抵抗値が同じであるとする。また、電圧計2におけるA/Dコンバータの最小分解能が0.1Vであるとする。
【0129】
なお、図5に示す構成では、分圧抵抗回路7における抵抗分割比を1/10単位で設定する都合上、図4に示す構成では基準電源8側に存在しない抵抗RL10(RLn+1)を設けている。
【0130】
まず、リレーRLY0のみを閉じたときの電圧計2の測定値V0が1.1Vであるとする。このときのオペアンプ9の出力端子に現れる電圧は0Vであるので、電圧計2の両端の実際の電圧は1.05Vである。
【0131】
次に、リレーRLY0を開き、リレーRLY1を閉じた状態で、分圧抵抗回路7から出力される電圧(定電圧Vref3)が0.01Vであることから、オペアンプ9の出力端子に現れる電圧も0.01Vとなる。したがって、この場合、電圧計2の両端の電圧は1.04Vとなる。これに対し、電圧計2は、最小分解能が0.1Vであるため、電圧計2の測定値V1は、測定値V0と同様、1.1Vとなる。
【0132】
同様にして、リレーRLY2,RLY3,RLY4,…が順次開くようにしていくと、オペアンプ9の出力端子の電圧が大きくなる。これに対して、電圧計2の両端の電圧は、電圧Vabからオペアンプ9の出力端子の電圧を減じた値となるので、徐々に小さくなる。リレーRLY4を閉じたときには、オペアンプ9の出力端子に現れる電圧は0.04Vであるので、電圧計2の両端の電圧は1.01Vとなる。これに対し、電圧計2は、電圧計2の測定値V1は、測定値V1と同様、1.1Vを維持している。
【0133】
そして、リレーRLY4を開き、リレーRLY5を閉じたときには、オペアンプ9の出力端子の電圧(定電圧Vref5)が0.05Vとなるため、電圧計2の両端の電圧が1Vになる。このとき、電圧計2の両端の電圧が最小分解能を越えて変化したことになるので、電圧計2の測定値V5が1.0Vとなる。このとき、測定値V5が測定値V0より小さくなるので、式(5)による演算(Vm=V5+Vref5)により、測定値Vmが1.05Vの値で求められる。
【0134】
このように、電圧計2が本来有するA/Dコンバータの最小分解能では測定できない桁(小数第2位)で電圧Vabを測定することが可能になる。
【0135】
[測定制御装置の実現形態]
電圧測定装置1,11,12の測定制御装置4,5における記憶部44,55を除く各ブロックは、以下のようにCPUを用いてソフトウェア(制御プログラム)によって実現される。あるいは、上記の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成されてもよい。
【0136】
前述の電圧測定機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)は、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体に記録されてもよい。本発明の目的は、当該記録媒体を電圧測定装置1,11,12に供給し、CPUが記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出して実行することによっても達成することが可能である。
【0137】
上記の記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/BD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系を用いることができる。また、上記の記録媒体としては、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系なども用いることができる。
【0138】
また、電圧測定装置1,11,12を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記のプログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体は特定の媒体に限定されない。このような伝送媒体としては、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線の伝送媒体が利用可能である。また、上記の伝送媒体としては、IrDAやリモコンのような赤外線や、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線が利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0139】
[付記事項]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明に係る被検査素子の電圧測定方法および電圧測定装置は、電圧計のオフセット電圧の影響を排除するとともに、電圧計のA/Dコンバータの最小分解能より小さい精度で電圧測定をすることができるので、高精度が要求される被検査素子の電圧測定に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0141】
1 電圧測定装置
2 電圧計
3 所定電源
4 測定制御装置
5 測定制御装置
6 多段電源回路
7 分圧抵抗回路
8 基準電源(定電圧発生手段)
9 オペアンプ
10 半導体素子(被検査素子)
11 電圧測定装置
12 電圧測定装置
41 制御部
42 リレー制御部(開閉制御手段)
43 演算処理部(減算手段)
44 記憶部
51 制御部
52 リレー制御部(開閉制御手段,電圧印加制御手段)
53 比較処理部(測定値比較手段)
54 演算処理部(減算手段,補正手段)
55 記憶部
P1〜Pn 定電圧源(定電圧発生手段)
RL1〜RLn 抵抗(定電圧発生手段)
RLY11 リレー(第1開閉手段)
RLY12 リレー(第2開閉手段)
RLY0 リレー
RLY1〜RLYn リレー(定電圧印加手段)
T1 基準電位端子(第1端子)
T2 被測定電圧端子(第2端子)
T3 所定電圧端子(第3端子)
Ta,Tb 端子
V0 測定値(基準測定値)
Vi 測定値(変化電圧測定値)
Vt1 電圧(第1電圧)
Vt2 電圧(第2電圧)
V1read,V2read 測定値
Vref1〜Vrefn 定電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧計を用いて被検査素子の出力電圧を測定する被検査素子の電圧測定方法において、
基準電位の第1端子と、前記出力電圧が印加される第2端子と、所定の電圧が印加される第3端子とを設けておき、
前記第1端子と前記第3端子との間の第1電圧を前記電圧計により測定して第1測定値を得る第1測定工程と、
前記第2端子と前記第3端子との間の第2電圧を前記電圧計により測定して第2測定値を得る第2測定工程と、
前記第1測定値から前記第2測定値を減算する減算工程とを備えていることを特徴とする被検査素子の電圧測定方法。
【請求項2】
前記第1測定工程または前記第2測定工程は、
前記電圧計に内蔵されるA/Dコンバータの最小分解能の電圧より小さく、かつ異なる値の複数の定電圧を値の小さい順に前記第1電圧または前記第2電圧から減じ、これにより変化する値を前記定電圧毎に前記電圧計により測定して変化電圧測定値を得る変化電圧測定工程と、
前記第1測定値または前記第2測定値を基準測定値として、当該基準測定値と前記変化電圧測定値とを比較して、前記変化電圧測定値が前記基準測定値より小さいか否かを判定する測定値比較工程と、
前記変化電圧測定値が前記基準測定値より小さいと判定されたときの前記変化電圧測定値と当該変化電圧測定値を得たときの前記定電圧とを加算して前記第1測定値または前記第2測定値を補正する補正工程とを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の被検査素子の電圧測定方法。
【請求項3】
電圧計を用いて被検査素子の出力電圧を測定する被検査素子の電圧測定装置において、
基準電位の第1端子と、
前記出力電圧が印加される第2端子と、
所定の電圧が印加される第3端子と、
前記第1端子と前記第3端子との間に前記電圧計が接続される第1通電経路を開閉する第1開閉手段と、
前記第2端子と前記第3端子との間に前記電圧計が接続される第2通電経路を開閉する第2開閉手段と、
前記第1端子と前記第3端子との間の第1電圧を測定するときに、前記第1通電経路を閉じるように前記第1開閉手段を制御する一方、前記第2通電経路を開くように前記第2開閉手段を制御し、前記第2端子と前記第3端子との間の第2電圧を測定するときに、前記第1通電経路を開くように前記第1開閉手段を制御する一方、前記第2通電経路を閉じるように前記第2開閉手段を制御する開閉制御手段と、
前記電圧計により測定された前記第1電圧の第1測定値から、前記電圧計により測定された前記第2電圧の第2測定値を減じる減算手段とを備えていることを特徴とする被検査素子の電圧測定装置。
【請求項4】
前記電圧計に内蔵されるA/Dコンバータの最小分解能の電圧より小さく、かつ異なる値の複数の定電圧を発生する定電圧発生手段と、
前記電圧計と前記第1端子または前記第2端子との間に前記定電圧を個別に切り替えて印加する定電圧印加手段と、
前記定電圧を値の小さい順に前記電圧計と前記第1端子または前記第2端子との間に印加するように前記定電圧印加手段を制御する電圧印加制御手段と、
前記定電圧の印加により変化する前記第1電圧または前記第2電圧の値が前記定電圧毎に前記電圧計により測定された変化電圧測定値と、基準測定値となる前記第1測定値または前記第2測定値とを比較して、前記変化電圧測定値が前記基準測定値より小さいか否かを判定する測定値比較手段と、
前記変化電圧測定値が前記基準測定値より小さいと判定されたときの前記変化電圧測定値と当該変化電圧測定値を得たときの前記定電圧とを加算して前記第1測定値または前記第2測定値を補正する補正手段とを含んでいることを特徴とする請求項3に記載の被検査素子の電圧測定装置。
【請求項5】
前記定電圧発生手段は、前記定電圧を個別に発生する複数の定電圧源であることを特徴とする請求項4に記載の被検査素子の電圧測定装置。
【請求項6】
前記定電圧発生手段は、
基準電圧を発生する基準電源と、
前記基準電圧を所定の分圧比で分圧する複数の抵抗とを有し、
分圧された前記基準電圧を前記定電圧として発生することを特徴とする請求項4に記載の被検査素子の電圧測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104695(P2013−104695A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246917(P2011−246917)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】