説明

被洗浄基板、あるいは、さらに処理される清潔な基板を製造するための、方法および装置

【課題】被洗浄基板、あるいは、さらに処理される清潔な基板を製造するための、方法および装置を提供する。
【解決手段】電子源カソード(5)およびアノード機器(7)を備えたプラズマ放電機器を用いることによって、基板のプラズマエッチ洗浄が実行される。アノード機器(7)は、一方ではアノード電極(9)を、他方では、自身から電気的に孤立されている閉じ込め部(11)を備えている。この閉じ込め部(11)は、洗浄されるべき基板(21)の領域(S)に向けられた、開口部(13)を備えている。電子源カソード(5)およびアノード電極(9)は、供給源(19)を有する供給回路によって、電気を供給されている。この回路は、電気的に浮遊して操作される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0001】
本発明は、第1の態様に基づいて、少なくとも1つの被洗浄基板の製造、および、特に、それに付随する、洗浄された切削工具本体の製造に言及している。なお、洗浄前および/または洗浄後において、例えば加熱および/またはコーティングによって、被洗浄基板が追加的に処理されることもある。上記のような被洗浄基板を製造するために使用される洗浄プロセスは、一般的にいうならば、非反応性あるいは反応性のプラズマエッチングである。本発明における第1の態様に基づくと、その目的は、洗浄される基板の表面領域の近傍における、エッチングプラズマ密度の増加を実現すること、さらに、上述した(addressed)表面領域における盛り上がった部分および突出した部分内に対しても、また、特に、それに関連して、工具本体基板の刃先に対しても、改善された均一な洗浄を獲得することにある。
【課題を解決するための手段】
【0002】
この目的は、本発明における第1の態様にしたがうと、少なくとも1つの被洗浄基板を製造するための方法、あるいは、このような被洗浄基板に対する追加的な処理によって得られる基板を製造するための方法によって、達成される。この方法は、
・反応スペースを有し、イオン化するためのガスを含んでいる真空チャンバ内において、少なくとも1つの電子源カソードと、少なくとも1つのアノード電極を有する少なくとも1つのアノード機器との間に、少なくとも1つのプラズマ放電を達成すること、
・反応スペースに向けて開口している開口部を有し、少なくとも1つのアノード電極を備えている閉じ込め部によって、少なくとも1つのアノード機器の近傍における電子密度を増加し、さらに、これに付随してイオン化密度を増加すること、
・閉じ込め部内にアノード電極を設けること、および、閉じ込め部を、アノード電極に印加される電位とは異なる電位で操作すること、さらに、これにより、閉じ込め部内およびその開口部の近傍に、増加されたイオン密度を集中すること、
・基板を、少なくとも時間とともに平均化された場合に、およびアノード電極の電位に関して、マイナスとなる電位に置くこと、
・基板における少なくとも1つの洗浄すべき表面領域を、増加されたイオン密度の領域に曝され、かつ開口部の近傍の位置に配置し、これにより、所定の洗浄時間の間、電子源カソードよりも開口部に実質的に近づけること、
を含んでいる。
【0003】
ドイツ公開特許公報第4228499号にしたがうと、基板のプラズマ洗浄は、中空のカソードと、この中空のカソードに対向しており、放電軸に平行な、実質的に平坦なアノードとの間における、プラズマ放電を達成することによって達成される。この基板は、放電軸から離れており、かつ、放電軸に平行な真空チャンバ内に配置される。
【0004】
一般的にプラズマ洗浄を対象とする、さらなる参考文献にしたがうと、ドイツ公開特許公報4125365号および米国特許公報A5294322号では、蒸発ターゲットと、アノードとしての真空チャンバの壁との間に、第1の電気供給源によって、第1のプラズマ放電が達成されている。洗浄プロセスに関して、蒸発ターゲットと基板との間に、シャッターが配置されている。第2のアノード電極は、U字型であり、洗浄プロセスに関して、第2の追加的な電気供給源によって、真空チャンバの壁に関連するアノード電位で操作される。第3の電気供給源によって、基板は、上述した壁に関連するカソード電位で操作される。
【0005】
さらに、米国特許公報5503725号も注目されている。
本発明にしたがうと、一実施形態では、アノード電極と電子源カソードとの間の電位UACを有する低電圧放電として、上述したプラズマ放電が生成される。そして、この電位に関し、
20V≦UAC≦100V
が妥当する。また、これに関し、他の実施形態では、
35V≦UAC≦70V
が妥当する。
【0006】
定義
この明細書および請求項において、我々が、電圧、電流あるいは電位の値を示した場合には常に、我々は、これらの値に関する「2乗平均平方根(RMS)」について言及している。このような2乗平均平方根の定義に関して、我々は、例えば、ウィキペディアを引用する。
http://en.wikipedia.org/wiki/ROOT MEAN SQUARE
他の実施形態では、アノード電極および電子源カソードは、浮遊電位で操作されている、電気供給回路によって操作される。
【0007】
したがって、1つだけの電源供給が使用され、電子源カソードは、規定された電位差において、唯一のアノード電極と「対面(see)」する。これは、上述した閉じ込め部内のアノード電極である。
【0008】
追加的な電源供給によって、上述した閉じ込め部を、所定の電位、場合によっては調整可能な電位で駆動することも可能である。この電位は、アノード電極の電位とは異なる。しかし、これにも関わらず、一実施形態では、上述した閉じ込め部は、浮遊電位で操作される。
【0009】
これに関し、上述した閉じ込め部は、金属からなるか、あるいは、その表面における少なくとも1部が金属からなる、誘電材料の本体を有している。場合によっては、それは、誘電材料からなることも可能である。
【0010】
一実施形態では、上述した閉じ込め部の内部スペースは、少なくとも1つの切断平面において実質的にU字形状となるように選択される。アノード電極は、上述した切断平面において、U字型の内部スペースの底部から離されて、かつ、この底部に沿って設けられている。
【0011】
さらに、一実施形態では、上述したU字型の内部スペースが、上述した切断平面に直交するように考慮された、チャネルを形成している。
【0012】
他の実施形態では、アノード電極では、DCおよび重畳パルスを含む上記電子源カソードに対する電気の供給を受ける。したがって、一方では、上述した閉じ込め部の内部およびその近傍における、高いプラズマ密度を生成することが可能となり、また、他方では、閉じ込め部およびアノード電極の加熱を、制御可能に制限することが可能となる。
【0013】
他の実施形態では、DC値、上記DC値に対する上記パルスの振幅、パルス繰り返し周波数、パルス幅すなわちデューティサイクル、パルス形状における、少なくとも1つが調整可能である。これに関し、一実施形態では、上述したパルス繰り返し周波数が、
0.2Hz<f≦200KHzとなるように選択される。
【0014】
本発明にしたがう方法における、さらに他の実施形態では、閉じ込め部における内部スペースが、少なくとも1つの切断平面において実質的にU字形状となるように選択され、さらに、アノード電極が、上記の切断平面において、U字型の内部スペースの底部から離されて、かつこの底部に沿って設けられており、アノード電極が広がりWANを有しており、閉じ込め部における内部スペースの上記した底部が、WCOの広がりを有しており、
AN<WCO≦WAN+2DSD
が妥当するように、これらの値が選択されている。
DSDは、この方法が真空チャンバ内で操作される状態における暗部距離である。
【0015】
これに関し、上記のような操作状態における暗部距離は、真空チャンバ内のトータル圧力が0.1Pa〜10Paである場合に、約0.5mm〜10mmである。DSDは、トータル圧力が0.1Pa〜3Paである場合には、ほぼ1mm〜10mmとなる。
【0016】
プラズマ放電を生成する2つの電極の表面のすぐ前に、当業者に知られているように、「電極暗部」と呼ばれる領域が形成されている。この電極暗部の広がりは、電極表面に対して実質的に垂直であり、暗部距離である。この暗部にわたって(すなわち、プラズマ電位と電極表面の電位との間で)、実質的な電極の電位降下が存在する。このため、実質的にこの暗部にわたって、荷電粒子が電場によって加速される。これは、電極暗部にわたる、電極の電位降下によって引き起こされる。
【0017】
他の実施形態では、閉じ込め部におけるU字型の内部スペースの脚部の広がりLが、
0.5WAN≦L≦1.5WAN
にしたがって選択される。
【0018】
さらに他の実施形態では、洗浄されるべき基板の表面領域が、閉じ込め部の開口部によって規定された平面からdだけ離されて配されており、
2cm≦d≦10cm
が選択されている。
【0019】
本発明にしたがう方法における他の実施形態では、アノード電極が、上記電子源カソードに対する供給を受け、これにより、アノード表面における単位あたりの電流密度が、少なくとも0.5A/cmとなる。これに関し、上記のような電流密度の上限は、第1に、加熱制限策(heat−up limiting measure)の効率によって制限される。これは、アノード機器に導入されている。
【0020】
他の実施形態では、電子源カソード電気供給に対する上述したアノード電極によって、50V〜100V(上限および下限も範囲内)のアノードの電位降下が達成される。このため、電子は、アノードの暗部にわたって、アノード電極に向かって強く加速される。これにより、アノードの暗部に存在するガス分子のイオン化率が高められる。
【0021】
一実施形態では、少なくとも1つの電子源カソードが、実質的に電子のみを生成するように選択される。このような電子源については、例えば、熱フィラメント源あるいは中空のカソード源とすることが可能である。正イオンの衝突によって、上記のカソードが材料粒子も出射することを、回避することはできない。このため、上記の電子源は、「実質的に」電子のみを出射する、と定められている。
【0022】
他の実施形態では、少なくとも1つの電子源カソードは、電子および源材料を出射するカソードとなるように、選択されている。この場合、基板のコーティングは、制御可能に移動可能なシャッターによって防止される。これに関し、上記の電子源カソードを、例えば、スパッタリングターゲット(非マグネトロンあるいはマグネトロンスパッタリングターゲット)によって、あるいは、アーク蒸発ターゲットによって、形成することが可能である。したがって、本発明にしたがう洗浄操作に関して、個々のターゲットは、もっぱら、閉じ込め部における上述したアノード電極によって操作される。
【0023】
他の実施形態では、基板は、DC、DC+ACあるいはACバイアス電位で操作される。これに関し、重畳パルスを伴うDC電位で操作されることが好ましい。
【0024】
本発明にしたがう方法における他の実施形態では、
・電子源カソードとして電子および源金属を出射するカソードを選択し、上述したカソードから上述したアノード電極に向かう源金属粒子の流れが制限されるが遮断されない、金属イオンエッチ洗浄、
・上述したアノード電極が無効であり、さらに、基板が、電子源カソードに関するアノード電極として操作される、加熱、
・コーティング
の処理ステップにおける少なくとも1つによって、基板が追加的に処理される。
【0025】
したがって、また、コーティングステップに着目すると、電子源カソードが、例えばスパッタリング源あるいはアーク蒸発源からなるターゲットによって形成されている場合には、常に、洗浄操作の間、閉じ込め部を伴うアノード電極は、上述したターゲットカソードに対するアノードとして操作される。他方、コーティングステップの間では、閉じ込め部を伴うアノード電極は、無効となる。そして、例えば真空チャンバの壁のような、スパッタリング源あるいはアーク蒸発源の特定のアノードが、スパッタリングカソードに関して、あるいは、個別に、アーク蒸発カソードに関して、有効となる。
【0026】
実際に、コーティングモードについては、異なる技術において実行することが可能である。
(a)電子源カソードが材料を出射し、アノード電極が無効になる。その代わりに、電子源カソードを有する材料源に固有のアノードが有効となる。
(b)電子源カソードが材料を出射し、アノード電極が有効のまま維持される。このようなコーティング処理は、イオンメッキに類似している。
(c)カソードが、実質的に電子のみを出射し、アノード電極が有効となる。例えば炭素を含有したガス(例えば、メタンあるいはアセチレン、あるいはこれらの混合物)のようなコーティングガスが注入される。このガスは、アノード電極の近傍においてバラバラに壊される。このため、コーティング材料(例えばダイヤモンド状の炭素)が堆積される。このような技術は、主に、プラズマ化学気相成長法(plasma enhanced chemical vapour deposition:PECVD)にしたがう。
(d)電子源カソードが、電子および材料を出射する。アノード電極が有効である。コーティングガスあるいは反応性ガスが、真空チャンバに注入される。
(e)電子源カソードおよび上述したアノード電極が、ともに無効になる。分離されたコーティング材料源が有効となる。
【0027】
他の実施形態では、真空チャンバ内に、補助的なアノード電極が設けられている。洗浄、金属イオンエッチング、加熱あるいはコーティングなどの基板処理の間に駆動されているアノード電極の操作が、第1の期間において不可能となり、その代わりに、補助的なアノード電極の操作が可能となる。これにより、アーク放電(「邪魔な」アーク放電を意味する)は、発生することを防止されるか、あるいは、発達することを防止される。
【0028】
これに関し、補助的なアノードが処理アノードの操作に取って代わる第1の期間は、第2の期間よりも短くなるように選択される。この第2の期間は、上述した第1の期間の直前あるいは直後の期間であり、この第2の期間において、基板処理が実行される。
【0029】
他の実施形態では、いま述べた補助的なカソードの操作を伴う実施形態から離れて、基板処理の間に駆動されているアノード電極が、アノード機器のアノード電極であり、このために、上述した閉じ込め部と補助的なアノード電極との協同が、アノード機器よりも電子源カソードに実質的に近い位置に配置される。
【0030】
さらに他の実施形態では、上述した第1の期間における基板処理アノード電極から補助的なアノード電極への上述した切り替えは、以下に示すモードにおける少なくとも1つにおいて、制御される。
・切り替えが、規則的に(例えば、処理時間中に周期的に)タイマー制御される、防止モード。
・アーク放電は防止されないが、アーク検出によってすぐにアーク放電が検知され、いったんアーク放電のスタートが検知された場合には、処理アノード電極から補助的なアノード電極への切り替えによって、アーク放電のさらなる発達が不可能となる、制限モード。
【0031】
いま述べた、所望しないアーク放電に起因する処理ダメージの発生の防止に着目し、より包括的な態様に基づいて考察すると、基板プラズマ処理に関与している1対の電極における一方の電極が、比較的に短い第1の期間において無効となり、その操作が、補助的な電極の操作を可能とすることによって引き継がれる。アーク放電のダメージの防止に関する上記の包括的なアプローチは、これ自体が発明である本発明における第2の態様に基づいて考察されており、少なくとも1つの基板に対する、少なくとも2つの電極の関与の下にプラズマが生成される真空プラズマ放電処理の際における、所望しないアーク放電によって生じる処理ダメージを防止するための方法を含んでいる。この方法は、少なくとも2つの電極の一方の操作を不可能とすること、および、その代わりに、第1の期間において、補助的な電極の操作を可能とすること、を含んでおり、この第1の期間が、第1の期間の直前あるいは直後における第2の期間よりも、大幅に短くなっている。
【0032】
上述したような本発明における第1の態様にしたがう独創的な方法における全ての実施形態に着目すると、これら全ての実施形態における2つ、3つあるいはそれより多くを組み合わせることが可能であり、この際、特定の実施形態が矛盾に陥ることはない。
【0033】
上述した目的を達成するために、および、本発明における第1の態様に基づくと、真空処理装置は、
・反応スペースを有する真空チャンバを備えており、上記チャンバ内に、
・電子源カソード、アノード機器および基板運搬台を備え、これら電子源カソードおよびアノード機器におけるアノード電極が、電気供給源を介して、操作可能に相互に接続されている、プラズマ放電機器を備えており、
・さらに、アノード機器が、反応スペースを向いて開口された内部スペースを有する閉じ込め部を備え、さらに、アノード電極を含んでおり、
・閉じ込め部が、アノード電極から電気的に孤立された状態で取り付けられており、
・基板運搬台が、前記運搬台上の基板における表面領域を、閉じ込め部における開口部の近傍に、そして、実質的に、電子源カソードよりも開口部に近い位置に配するように、真空チャンバ内に取り付けられており、さらに、電気的バイアス源に対して操作可能に基板を接続するように着想されている、装置である。
【0034】
この装置における他の複数の実施形態は、相互矛盾のない場合には、これらの2つ、3つあるいはより多くを組み合わせることも可能であり、この開示の一部をなす請求項において特定されている。
【0035】
次に、実施例によって、および図を利用して、本発明をさらに説明することとする。これらの図は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にしたがう製造方法を操作する、本発明にしたがう真空処理装置を、概略的かつ単純化して示す図である。
【図2】図1にしたがう装置に適用することの可能なアノード機器の実施形態における、概略的な斜視図である。
【図3】図1あるいは2の実施形態における、プラズマ放電電極に印加される放電電流における異なる時間経過を、発見的に示す図である。
【図4a】本発明にしたがう装置に適用される、および、本発明にしたがう方法を操作するための、第1のタイプの電子源カソードを概略的に示す図である。
【図4b】第2のタイプの電子源カソードを、再び概略的に示す図である。
【図5】本発明における第2の態様に基づく、真空チャンバ内のプラズマ処理、および、所望しないアーク放電による処理ダメージの防止を示す図である。
【図6】本発明にしたがう、および、本発明に関する製造方法を実行する、より詳細な処理装置であって、エッチ洗浄モードにおいて動作している処理装置を、概略的かつ単純化して示す図である。
【図7】金属イオンエッチングモードで操作されている、図6にしたがう装置および方法を示す図である。
【図8】基板加熱モードで操作されている、図6あるいは図7にしたがう装置および方法を示す図である。
【図9】基板コーティングモードで操作されている、図6〜8に関する装置および方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明にしたがう、および、本発明に関する真空洗浄装置によって実行される、清潔な基板を製造するための方法における原理を示している。ポンピング機器3によって真空化される真空チャンバ1には、電子源カソード5およびアノード機器7が設けられている。電子源カソード5は、真空チャンバ1の反応スペースR内に電子を出射する。アノード機器7は、アノード電極9および閉じ込め部11を備えている。閉じ込め部11は、反応スペースRに向けられた開口部13を有する、内部スペースを規定する。アノード電極9は、閉じ込め部11の内部スペースに設けられており、閉じ込め部11から電気的に孤立している。この閉じ込め部11は、金属および/または誘電性物質から構成されており、これにしたがって、一実施形態では、閉じ込め部11における少なくとも内部表面が、金属から構成されている。この閉じ込め部11は、浮遊電位Φflで操作される。いくつかの応用では、この閉じ込め部を、真空容器の壁に関連して、および、図1における17の破線描写に示すように、所定の電位あるいは調整可能な電位で、操作することも可能である。電子源カソード5およびアノード電極9は、供給源19によって電気的に供給を受ける。この供給源19は、図1に示すような極性を有するDC成分を含む、信号を生成する。
【0038】
電子源カソード5によって生成された電子は、電子源カソード5の出射表面からの電場によって、アノード電極9に向けて進む。どのような場合でもアノード電極9の電位とは異なる電位で操作されている閉じ込め部11によって、図1に概略的に示すように、閉じ込め部11内のその開口部13の近傍において、電子密度の増加がもたらされる。
【0039】
例えばアルゴン、クリプトン、キセノンあるいはこれらの混合物などの作動ガスGclは、真空チャンバ1内に注入され、電子衝撃によってイオン化される。反応性洗浄が実行される予定のある場合にはいつでも、追加的に、例えば窒素、水素、酸素あるいはこれらの混合物などの反応性ガスが、チャンバ1に注入される。
【0040】
閉じ込め部11内のその開口部13の近傍における増加された電子密度に起因して、上述した領域内において、作動ガスにおけるイオン化率の増加がもたらされる。そして、反応性エッチ洗浄の場合には、反応性ガスにおける活性化の増加がもたらされる。基板21は、洗浄される必要のある表面領域Sを有しており、閉じ込め部11の開口部13の近傍における基板運搬台22上に、表面Sが開口部13を向いた状態で、配されている。これにより、表面Sは、この領域において、密度の増加されたプラズマに曝されることになる。増加されたプラズマ密度は、閉じ込め部11によって、表面領域Sに向けて「集中される(focussed)」ことになり、これにより、反応性であっても非反応性であっても、エッチング速度の増加がもたらされる、といえる。これにより、基板21は、基板運搬台22を介して、プラズマ電位に関してマイナスの電位で操作される。図1に概略的に示すように、これは、供給源23を用いて、真空チャンバの壁の電位に関してマイナスの電位で運搬台22を操作することによって、実現される。
【0041】
閉じ込め部11の内表面、および、給電接続15のための保護チューブ25(この実施形態において、閉じ込め部11の一部として設けられている)の内表面は、選択され真空チャンバ1内に行き渡っている動作状態において、多くとも暗部距離(dark space distance)DSDだけ、アノード電極9および給電接続15から離されている。なお、チューブ25を介する給電は、真空チャンバの壁から電気的に孤立されており、閉じ込め部11の電位となっている。
【0042】
閉じ込め部11の内部スペースは、x/y面に関する切断平面においてU字型となっている。このため、アノード電極9は、U字の底部に隣接して備えられており、上述したように、この底部およびU字の脚部から、多くとも暗部距離DSDだけ離されている。
【0043】
電極機器7を、実質的に環状の正方形の開口部(circular of square opening)を有するように構成することが可能である。それにも関わらず、図2に示すような一実施形態では、アノード機器は、図1のx/y面に直交するz方向に、例えば直線的に延ばされている、ということが着想されている。このため、電極アノード9aも、同じように直線的に延びており、U字形状の閉じ込め部11aも同様である。図2にしたがう実施形態では、アノード電極9aは、保護チューブ25aを介して電源の供給を受ける。
【0044】
1つの構成では、図2の5aに概略的に示されているように、1つより多くの電子源カソードが設けられている。電子密度の大幅な増加、および、これによる、閉じ込め部11・11aおよび隣接する開口部13、13aのそれぞれにおける、プラズマ密度の大幅な増加を得るために、アノード電極表面の単位あたりの放電電流密度は、少なくとも0.5A/cmに選択されるべきである。その結果、アノードの暗部にわたって、アノードの電位がほぼ50V〜100Vに落ちることになる。これは、個々のイオン化効果、あるいは、反応性ガスにおいては活性化効果を伴う、アノード電極に向かう高電子加速を引き起こす。
【0045】
上記のようなアノードの電位降下が存在することの少なくとも1つの徴候は、アノード電極とチャンバの壁との間における、約10V〜85Vの電位差である。
【0046】
それでもやはり、上記のような電子衝撃によって、アノード電極は、熱的に重大な負荷を負い、これは、具体的な対策を必要とする。実際には、それは、アノード電極9、9aの熱的な負荷、および、対抗策の効率性であり、これらは、適用可能な放電電流密度の上限に関して決定的に重要である。アノード電極9、9a内に、チャネルのシステムを設けること、および、アノード電極から余分な熱を取り除くために、これらのチャネルを介する熱輸送媒体を供給することは、明らかに実行可能である。しかしながら、このアプローチは、多大な構造上の複雑さおよびコストを伴う。
【0047】
上述した高い放電電流密度、および基板におけるそれぞれの高いエッチング速度と結合している、高いプラズマ密度を、動作中のアノード電極を冷やすことなく実現するために、供給源19が、DCバイアス電流および重畳パルスによって操作される。電子源カソード5、5aとアノード電極9、9aとの間におけるプラズマ放電は、実際には低い電圧放電であり、このために、図3に示すように、DCバイアス電流に重畳された脈動電流によって操作される。図3に概略的に示すように、重畳パルスを、DCバイアス値に関する1つの極性、双方の極性とすることが可能であり、さらに、いずれの場合においても、選択された形状(すなわちスペクトル)とすることが可能である。一実施形態では、パルスの繰り返し周波数における少なくとも1つ、DCバイアス値に関する単極性あるいは両極性のパルスの振幅、デューティサイクル(すなわちパルス幅)、および重畳パルスの形状を、選択あるいは調整することが可能である。これにより、アノード機器の近傍におけるプラズマ密度、および、閉じ込め部11、11aの内部およびその近傍におけるプラズマ密度を、調整することが可能となる。
【0048】
他の実施形態では、および図1に示すように、電子源カソード5とアノード電極9との間における低電圧のプラズマ放電が、磁場Hを利用して、制御可能に成形されている。この磁場Hは、コイル機器27によって概略的に示されるように、生成される。制御可能に変化するように実現されている上記のような磁場によって、電子源カソード5とアノード電極9との間のプラズマインピーダンスを制御することが可能となり、これにより、結果として生じる、基板領域Sを暴露するプラズマ密度を、制御することが可能となる。上記のような磁場を用いることによって、エッチ洗浄される基板21の表面領域Sに沿ったエッチング速度の分布を、調整あるいは変化することが可能となる。
【0049】
今まで、我々は、単に電子を供給するものとしての電子源カソード5について論じてきた。そうはいうものの、2つのタイプの電子源カソード5を利用することが可能である。第1のタイプは、実際に、実質的に電子のみを出射するものであり、例えば、熱フィラメントカソードあるいは中空のカソード電子源である。図4aは、概略図によって、この第1のタイプの電子源を示しており、これは、加熱電流Iによって加熱される熱フィラメント源によって示されている。Eは、電子源カソード5とアノード電極9、9aとの間の低電圧によって印加される、電場を示している。
【0050】
電子源カソード5の第2のタイプは、これによって、電子に加えて、電子源の材料が反応スペース内に出射されるものである。このような電子源は、例えば、マグネトロンスパッタ源、アーク蒸発源を含むスパッタ源である。このタイプの電子源カソードは、マグネトロンスパッタ源によって、図4bに概略的に示されている。独創的に製造された基板を、単にエッチ洗浄するだけである場合には、第1のタイプの電子源カソードを使用することが可能である。一方、一度の洗浄の前および/または後に、基板をさらに処理する場合、すなわち、層システムによってコートする場合には、第2のタイプの電子源カソード5を利用することが有利である。
【0051】
図4bに示すように、上記のような第2のタイプの電子源カソード5を使用する場合には、制御可能に移動可能な、シャッター29を設けることが可能である。これは、図に示すような、カソードの表面から基板21上に向かう材料の流れを遮断する閉鎖位置と、この流れを可能とする開放位置との間で、移動可能である。ガスイオンエッチ洗浄動作モードでは、シャッター29は、閉鎖位置にある。いままで述べたエッチ洗浄に関しては、電子源カソード5と協同するアノードだけが、そのタイプに関係なく、アノード電極9、9aである。上述したエッチング技術によって、および、特に、上記したように操作されるアノード機器7のコンセプトに起因して、基板におけるエッチング速度を非常に高くすることが可能となる。これにより、高密度プラズマが、基板の表面領域に「集中される」。図2に示すように直線的に延びるアノード機器を特別に作成すること、および、場合によっては、アノード機器に対して基板を移動することによって、エッチ洗浄される基板の表面に沿ったエッチング速度の密度分布が、非常に良好になる。エッチングの効果は、基板表面に沿って均一に分布され、また、この基板における陥没部(intrusion)内に、および基板の突出部に沿って、均一に分布される。これにより、基板が、刃先を有する工具の本体である場合には、この刃先を、刃先とは別の領域と等しくエッチングすることが可能となる。
【0052】
さらに続けて図1を参照すると、基板領域S上のエッチング速度、および、電子およびイオン衝撃によるその熱的な負荷を、追加的に調整するために、バイアス源23は、DCによって操作されるか、あるいは、DCによる操作と重畳された単極性あるいは両極性のパルスとを含む、DCおよびACによって操作される、ということに注意しなければならない。DCおよび重畳パルスによってバイアスの印加が実行される場合には、常に、基板領域Sにおける特定のスパッタ洗浄効果を最適化するように、パルス繰り返し周波数、パルス幅(すなわちデューティサイクル)、単極性あるいは両極性パルスの振幅、およびパルス形状における少なくとも1つを、調整することが可能である。
【0053】
電子源カソード5とアノード電極9、9aとの間のプラズマ放電については、「低電圧(low voltage)」プラズマ放電と称することができる、と上述してきた。この用語は、当業者によって完全に理解されているが、「低(low)」の意味するものに関しては、明確にされていない。これは、以下にリストアップするような、放電電流密度およびアノード電極表面によってもたらされる放電電圧および放電電流に関する、いくつかの操作パラメータによって、明確にされる。
【0054】
以下では、今日において推奨される操作パラメータがリストアップされている。
・反応スペースに曝されている、今日において使用されているアノード電極の表面
図2に示されているような、Y方向における幅WAN: 8cm
図2のz方向における広がり: 60cm
ANは、より一般的には、z方向における基板の広がりから生じる。そして、基板の両端部におけるアノード電極の突き出し長(overlength)は、5cmから10cmである。
・電子源カソード5a: アーク蒸発器における2つのターゲット
・各ターゲットとアノード電極との間の放電電流: 200A
これによる、アノード電極9aの暴露表面における電流密度: 0.83A/cm
・閉じ込め部:
U字の底部における広がりWCO: 8cm+2×DSP
U字の脚部の長さL:0.5WAN〜1.5WAN(浮遊電位で操作される)
閉じ込め部の開口部13と基板領域Sとの間の距離d(図1参照):
2cm≦d≦10cm、好ましくは、4cm≦d≦6cm
閉じ込め部のU字における脚部の長さLを変化することによって、エッチング速度の分布を調整することが可能である。
・エッチングガス:
作動ガス: アルゴン、クリプトン、キセノン、あるいはこれらの混合物
反応性エッチングガス: 窒素、水素、酸素あるいはこれらの混合物
・全体的な動作圧力: 0.1Pa〜10Pa、好ましくは0.1Pa〜3Pa(全ての制限が含まれている)
・電子源カソードとアノード電極との間における、低電圧UACの放電
20V≦UAC≦100V、好ましくは、35V≦UAC≦70V
これにより、アノード電極と真空チャンバの壁との間の電位差が、10Vと85Vとの間となり、これに関連して、好ましい操作では、20Vと50Vとの間となる。
・パルス繰り返し周波数f: 0.2Hz≦f≦200KHz
・基板に沿ったエッチング分布を制御するために、および/または、プラズマインピーダンス(さらに、これに付随して、例えば与えられた放電電圧UACでの処理速度)を制御するために導入される、磁場H。
・基板に付加されるバイアス:10V〜2000Vの直流。より具体的には、
エッチ洗浄に関して、60V〜1000V
金属イオンエッチングに関して、600V〜2000V
コーティングに関して、10V〜300V
これに関連して、0Hz〜500KHzの繰り返し周波数で(好ましくは、50KHz〜300KHzの周波数範囲で)、パルスを重畳する。
【0055】
いままで、我々は、本発明における第1の態様に基づいて、被洗浄基板の製造、および、この処理を実行するための装置について説明してきた。
【0056】
図5を用いて、本発明における第2の態様について説明する。これは、これ自体が発明であると考えられるものであるが、第1の態様に基づいて今まで説明されてきたような被洗浄基板の製造に対して、最適に組み合わせることが可能である。
【0057】
図5に、この第2の態様が、最も一般的な形状で示されている。真空チャンバ100内では、プラズマ放電を生成するために、電気供給源110によって、1対のプラズマ放電電極102および104が操作されている。一般的な考察に基づくと、電極102、104の一方を、例えばスパッタリングカソード、アーク蒸発カソード、中空のカソード、熱フィラメントカソードなどとすることが可能である。引き続き一般的な考察に基づくと、電極対がAC(これに関連して、特にRF)の供給を受けている場合には、「カソード」および「アノード」という表現は、かなり不明確であるか、あるいは、個々のエッチングによって、個々の電極表面におけるスパッタリング比に対して規定されているだけである。したがって、電極の一方を、あるいは双方でさえも、真空チャンバの少なくとも一部によって形成することが可能である。これは、例えばエッチングチャンバに詳しい当業者には、周知のことである。
【0058】
処理される基板106が準備され、バイアス源によってバイアスされている真空チャンバ100内に配される。それでもなお、また、一般的な態様に基づくと、基板を、電極102および104の一方に配置することが可能である。これも、当業者には周知のことである。
【0059】
上記のような一般的な処理では、所望しないアーク放電が考慮される。これは、電極102と電極104との間に生じる可能性があり、また、例えば、アノードとスパッタリング源のタートットとの間、あるいは、電極102および104のいずれか一方と基板106との間にも生じる可能性がある。電極102および104が、ともにアーク蒸発源を規定している場合には、これらの電極間におけるアーク放電は、明らかに、所望されるアーク放電である。しかしながら、いずれか一方の電極と基板106との間のアーク放電は、そうではない。
【0060】
本発明における第2の態様に基づくと、所望しないアーク放電によって受ける処理のダメージを防止することが可能である。これは、所望しないアーク放電に関与している電極102あるいは104を、個々の補助的な電極に切り替えることによって、実現される。このため、図5にしたがうと、例えば補助的な電極102AUXが設けられている。切り替えユニットTを利用することによって、放電供給源110が、電極102から補助的な電極102AUXに切り替えられる。これは、定期的に、例えば、上述したアーク放電を防止するために、基板106のプラズマ処理中に周期的に実行されるか、あるいは、アーク放電が検出されたときにそれがスタートし、供給源110が切り替えられる。いずれの場合においても、電極102に関する処理電極の操作は、電極102AUXに関する個々の補助的な電極の操作によって、短い第1の期間に実行される。これは、この第1の期間の前あるいは後における、第2の処理期間に比べて大幅に短い。これら電極102と電極104との間のアーク放電を、当業者に知られているように、供給ループ112内の放電電流をモニタすることによって、検出することも可能である。
【0061】
これに関し、どの電極が補助的な電極に切り替わるのかは、設計および特定用途の問題になる。例えば、2つの電極102および104が、スパッタターゲットおよび個々のスパッタ源におけるアノードによって実現される場合、補助的なアノードよりも、むしろ補助的なカソードが設けられることになる。図5を念頭におく場合、アーク放電の分布は、一方における2つの電極102および104の1つと、他方における基板106との間に生じる。これは、バイアス回路電流114をモニタすることによって、検出することが可能である。したがって、いずれの電極102、104が基板上のアーク放電に関与しているのかについては、電流炸裂(current burst)の極性を分析することによって、検出することが可能である。この場合、個別に関与している電極102あるいは104が、その補助的なパートナーに切り替えられる。
【0062】
本発明における第2の態様に基づいて、図5を用いて説明されてきた本発明の包括的なコンセプトから離れて、我々は、いままで本発明における第1の態様(エッチ洗浄)だけに関連して説明されていた、図1に戻ることにする。
【0063】
図5に関連して一般的に説明されてきた、所望しないアーク放電による処理ダメージに対する予防は、図1に関連して説明されてきた実施形態に適用されることが完全に適している可能性があり、また、適している、ということは、完全に明らかである。
【0064】
したがって、また、図1にしたがうと、電子源カソード5に隣接して、例えば、リング状のアノードとして着想された、補助的なアノード9AUXが設けられている。アーク放電を予防する場合、あるいは、アーク放電の発生を不可能とする場合には、常に、切り替えユニットTによって、アノード9が切り離され、アノード9AUXに置き換えられている。切り替えユニットTの操作は、タイミングユニット30からのタイマー制御に基づいて実行されるか、あるいは、アークの検出によって始動される。アークの検出は、例えば、検出器ユニット32によって概略的に示されているように、基板バイアスループ内の電流をモニタすることによって、実行される。ユニット32の出力は、例えば、単一パルスあるいは複数パルス発生器ユニット34を始動する。その結果、好ましくいことに、パルス長を調整することが可能である。このため、切り替えユニットTは、図1における「and/or関係」によって概略的に示されているように、タイマーユニット30あるいはパルス発生器ユニット34のいずれか一方によって制御されるか、あるいは、これらの双方によって制御される。したがって、アークの防止を、例えば、タイマーユニット30の制御に基づいて、実施することが可能である。そして、アークの検出制御を、タイマーユニット30による制御にも関わらずアークが生じた場合の、緊急制御として用いることが可能である。
【0065】
以上のように、図5において説明されてきた包括的なアーク防止アプローチは、図1〜4に関連して説明されてきた洗浄技術との組み合わせに応用されることが、最も適している。
【0066】
図6に、基板としての多数の工具本体を処理するための、真空設備を示している。図6に概略的に示すように、この設備は、上述した特定種類の基板に関して、図1あるいは図2の実施形態に応じて実現された、一実施形態である。それは、図5を用いて図1において説明された、アーク処理方法を組み込んでいる。
【0067】
図6の実施形態と図1の実施形態との比較を容易にするために、対応する部材には、同一の参照番号を使用している。
【0068】
排気ポート3aを有する真空チャンバ1内には、アーク蒸発ターゲットカソード6によって実現された、電子源カソード5が設けられている。これに変えて、例えば、熱的放射カソードあるいはスパッタターゲットカソード設けることも可能であり、また、一般的に、上述したような第2のタイプの電子源カソードを設けることも可能である。
【0069】
アノード機器7は、アノード電極9あるいは9a、および、閉じ込め部11あるいは11aを備えている。閉じ込め部11、11aは、金属から構成されており、浮遊電位で操作される。
【0070】
閉じ込め部11、11aは、それぞれ、開口部13、13aを規定している。アーク蒸発ターゲットカソード6に関して、給電接続15と切り替えユニットT1および切り替えユニットT2とを介して、供給源19によって、アノード電極9、9aが給電される。基板21aは、モータドライブ24によって軸Mの周囲において駆動的に回転できるように、基板運搬台カルーセル22上に支持されている。カルーセル22上で、基板21a、切削工具の本体が、切り替えユニットT3を介して、および、バイアス供給ユニット23によって、規定された電位で操作される。
【0071】
磁場Hは、コイル機器27によって生成される。スパッタリングターゲットカソード6は、制御可能に移動可能なシャッター29によって、カルーセル22上の基板21aから遮蔽されている(図4b参照)。アーク蒸発ターゲットカソード6に隣接して、補助的なアノード9AUXが設けられている。幾何学的なサイズおよび操作パラメータに関しては、図1の実施形態に関連して述べたことと同じことが妥当する。図6の実施形態を、異なる操作モードにおいて操作することが可能である(これについては後で説明する)。図6に示されている操作モードは、エッチ洗浄モードである。このモードでは、作動ガス、および、場合によっては反応性ガスが、それぞれのガス注入口GCLを介して、真空チャンバ1に注入される。エッチ洗浄モードでは、アノード電極9、9aは、切り替えユニットT1および切り替えT2を介して、供給源19の陽極に対して、操作可能に接続されている。供給源19の陰極は、アーク蒸発ターゲットカソード6に対して、操作可能に接続されている。基板運搬台カルーセル22、および、それに伴う基板21aは、切り替えユニットT3を介して、バイアス源23の陰極に対して、操作可能に接続されている。バイアス源23の陽極は、真空容器1の壁に対して接続されている。操作可能に移動可能なシャッター21は、個々のドライブ(図示せず)によって制御可能に駆動され、閉鎖された状態で、スパッタリングターゲットカソード6からスパッタされた源材料が回転カルーセル22上の基板21aに到達することを防止する。
【0072】
この操作モードでは、電子源として作用するアーク蒸発ターゲットカソード6とアノード電極9、9aとの間で、低電圧プラズマ放電が操作され、図1に関連して説明されたような、作動ガスイオン、あるいは、場合によっては活性化された反応性ガスによって、回転カルーセル22上の基板21aがエッチングされる。図1に関連して説明されたような、アークの検出、あるいは、より一般的なアークのダメージからの保護が、ユニット30、34、検出器ユニット32によって実行される。これに関連して、その後、やがて、切り替えユニットT1の操作が実行される。これは、例えば、周期的に、および/または、発生しかけているアーク放電をセンサユニット32が検知したときには常に、実行される。この制御された操作によって、切り替えユニットT1は、図1の切り替えユニットTと同様に、アノード電極9、9aを操作する代わりに、アーク蒸発ターゲットカソード6に関する補助的なアノード9AUXの操作を可能とする。
【0073】
図7は、図6に関連して説明された実施形態を示しており、ここでは、これは、第2の操作モード、金属イオンエッチングあるいは洗浄モードで操作されている。
【0074】
これに関し、シャッター29は、金属製のアーク蒸発ターゲットカソード6からの金属粒子あるいはイオンが、基板表面に到達するように、部分的に開放される。このため、回転するカルーセル22上の基板21aにおけるエッチングが、金属イオン衝突によって、追加的に実行される。図6に関連して説明されたような、アーク放電のダメージの防止が実行される。
【0075】
図8は、第3のモード、加熱モードで操作されている、図6の実施形態を示している。切り替えユニットT2を用いることによって、アノード電極9、9aの操作が不可能となり、回転するカルーセル22上の基板21aが、切り替えユニットT3および切り替えユニットT2を介して、供給源19の陽極に切り替えられる。そして、アーク蒸発ターゲットカソード6に関連するアノードも、同様に切り替えられる。シャッター21は閉じられている。このため、基板21aは、電子衝撃によって加熱される。加熱レートは、供給源19を適切に調整することによって、制御される。アークのダメージ保護は、不可能となる可能性がある。
【0076】
図9では、基板コーティングモードで操作されている、図6に示した実施形態が示されている。これに関し、アーク蒸発ターゲットカソード6は、通常のスパッタリング源の一部として操作される。その結果、真空容器1の壁が、アノードとして作用する。これは、切り替えユニットT5およびT2を介して実現される。これまでは、すなわち、エッチ洗浄モードあるいは金属エッチ洗浄モードにおいては、アーク蒸発ターゲットカソード6に関するアノードとして動作していたアノード電極9、9aは、無効となる。
【0077】
ダメージからの保護のために補助的なアノードが稼働しているときには、常に、この補助的なアノード9AUXを、標準的なアノード9、9aが操作されている電位とは異なる、カソードに関する電位で操作することが、できる限り望まれる。図6に破線で示されているように、これについては、補助的な供給源19AUXを利用することによって、実現することが可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの被洗浄基板、あるいは、洗浄およびこの洗浄の前および/または後における追加的な処理によって得られる基板を製造するための方法において、
・反応スペースを有し、イオン化するためのガスを含んでいる真空チャンバ内において、
少なくとも1つの電子源カソードと、少なくとも1つのアノード電極を有する少なくとも1つのアノード機器との間に、少なくとも1つのプラズマ放電を達成すること、
・前記反応スペースに向けて開口している開口部を有し、前記少なくとも1つのアノード電極を備えている閉じ込め部によって、少なくとも1つのアノード機器の近傍における電子密度を増加し、さらに、これに付随してイオン化密度を増加すること、
・前記閉じ込め部内に前記アノード電極を設けること、および、前記閉じ込め部を、前記アノード電極の電位とは異なる電位で操作すること、さらに、これにより、前記閉じ込め部内および前記開口部の近傍において、イオン密度を増加すること、
・前記基板を、前記アノード電極における前記電位に関して、少なくとも時間とともに平均化された場合にマイナスとなる電位に置くこと、
・前記基板における少なくとも1つの洗浄すべき表面を、増加されたイオン密度の前記領域に曝され、かつ前記開口部の近傍の位置に配置し、これにより、所定の洗浄時間の間、前記電子源カソードよりも前記開口部に実質的に近づけることを含み、
前記真空チャンバに補助的なアノード電極を設けること、および、基板処理の間に駆動されているアノード電極の操作を、タイマー制御によって第1の期間において不可能とし、前記補助的なアノード電極の操作をタイマー制御によって前記第1の期間において可能とすることによって、アーク放電の発生を防止すること、あるいはアーク放電の成長を妨げること、をさらに含んでおり、前記第1の期間が、前記第1の期間の直前あるいは直後における第2の期間に比べて短くなっている、方法。
【請求項2】
基板処理の間に駆動されている前記アノード電極が、前記アノード機器のアノード電極となるように選択されており、前記補助的なアノード電極が、前記アノード機器よりも、前記電子源カソードに実質的に近くなるように配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理の間に駆動されている前記アノード電極における、前記補助的なアノード電極を操作することによる前記交換操作が、
時間的内にくり返されるタイマー制御される防止モード、アーク検出によって制御される制限モード、
における少なくとも1つのモードにおいて制御される、請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの基板に対する真空プラズマ放電処理の際に、所望しないアーク放電によって生じる処理ダメージを防止するための方法において、少なくとも2つの電極間にプラズマが生成され、第1の期間中に、前記少なくとも2つの電極のうちの1つの操作を不可能とすること、および、その代わりに、第1の期間中に、補助的な電極の操作を可能とすることを含んでおり、前記第1の期間が、前記第1の期間の直前あるいは直後における、第2の処理期間に比べて大幅に短くなっている、方法。
【請求項5】
真空処理装置において、
反応スペースを有する真空チャンバを備えており、前記チャンバ内に、
・電子源カソード、アノード機器および基板運搬台を備え、前記電子源カソードおよび前記アノード機器におけるアノード電極が、電気供給源を介して、操作可能に相互に接続されている、プラズマ放電機器と、
・前記反応スペースに向けられた内部スペースを有する閉じ込め部を備え、さらに、前記アノード電極を含む前記アノード機器と、
・前記アノード電極から電気的に孤立された状態で取り付けられている、前記閉じ込め部と、
・前記基板運搬台上の基板における表面領域を、前記開口部の近傍に、そして、実質的に、前記電子源カソードよりも前記開口部に近い位置に配するように、前記真空チャンバ内に取り付けられており、さらに、電気的バイアス源に対して前記基板を操作可能に接続するように着想されている、前記基板運搬台と、
を備え、
前記真空チャンバ内に、補助的なアノード電極をさらに備えており、
タイマー制御された切り替えユニットが、第1の期間において、前記アノード電極の代わりに、前記補助的なアノードの操作を可能とし、この第1の期間が、前記第1の期間の直前あるいは直後における期間に比べて大幅に短くなっている、装置。
【請求項6】
前記補助的なアノードが、前記アノード機器よりも前記電子源カソードに大幅に近い位置に配置されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記切り替え機器が、タイマーの出力部およびアーク検出器ユニットの出力部における少なくとも1つに対して操作可能に接続されている、制御入力部を備えている、請求項5あるいは6に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−246572(P2012−246572A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197147(P2012−197147)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2009−532686(P2009−532686)の分割
【原出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(598051691)エリコン・トレーディング・アクチェンゲゼルシャフト,トリュープバッハ (44)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Trading AG,Truebbach
【Fターム(参考)】