被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム
【課題】一の部材および他の部材の接続関係を定義して接続部材のデータを生成し、この接続部材のデータに基づき空気溜まりの発生をシミュレーションする。
【解決手段】第1パネル(PA)および第2パネル(PB)の接続関係を、各パネル(PA),(PB)のフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)の重心点(AG_A),(BG_H)の距離および法線ベクトル(AL_A)’,(BL_H)が貫通し合うフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)の隣接要素への設定から定義し、各パネル(PA),(PB)を接続して形成された接続部材について空気溜まりの発生をシミュレーションするようにした。よって、接続されるべき個別の各パネル(PA),(PB)を一の接続部材として解析処理することができる。
【解決手段】第1パネル(PA)および第2パネル(PB)の接続関係を、各パネル(PA),(PB)のフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)の重心点(AG_A),(BG_H)の距離および法線ベクトル(AL_A)’,(BL_H)が貫通し合うフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)の隣接要素への設定から定義し、各パネル(PA),(PB)を接続して形成された接続部材について空気溜まりの発生をシミュレーションするようにした。よって、接続されるべき個別の各パネル(PA),(PB)を一の接続部材として解析処理することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体ボディ等の被浸漬処理物は、液体塗料で満たされた塗料槽内に浸漬することにより、その表面に電着塗装を施すようにしている。このような塗装方法によれば、被浸漬処理物の表面に形成される塗膜厚さを略均一にしたり、被浸漬処理物の溶接箇所などにも同様の塗装処理を施したりすることができる等の利点がある。この反面、複雑な形状の被浸漬処理物には、例えば、車体ボディであればフード内面,ルーフ内面およびフロア下面等に複数の凹部が形成されるため、この凹部がエアポケットと呼ばれる空気溜まりとなり、この空気溜まりの空気が残留した状態のもとでは、当該部分に塗装処理を施すことができないといった欠点がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に示されるように、被浸漬処理物に空気溜まりが発生しないように、空気を大気中に排出するための排出経路を被浸漬処理物に予め形成しておき、この排出経路を介して空気を大気中に排出させ、被浸漬処理物の表面全域に塗装処理を施せるようにすることが行われている。
【0004】
このような被浸漬処理物に発生する空気溜まりは、自由表面を用いた周知の解析手法によりシミュレーションすることができ、このシミュレーション結果を反映させて被浸漬対象物を設計することにより設計作業を効率良く行うことができるようになる。本出願人は、特願2006−180453において、シミュレーションに要する時間を短縮して設計作業をより効率良く行えるようにするために、車体ボディの数値計算モデルを三次元の要素に分割することなく二次元の要素に分割するとともに、車体ボディを形成する部材毎の数値計算モデルのそれぞれを対象に空気溜まりの発生をシミュレーションする方法を出願している。
【特許文献1】特開平10−045037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように車体ボディを形成する部材毎に空気溜まりの発生をシミュレーションする方法においては、一の部材と他の部材とを接続して形成される接続部材を解析対象としてシミュレーションすることができなかった。つまり、例えば、一の部材および他の部材の端部が、浸漬方向下方に向けて開口するように断面がハの字形状(椀状)となるように接続される接続部材については、実際には空気溜まりが発生することになるが、上述のシミュレーション方法によれば、各部材の接続関係を定義することなく部材毎に個別にシミュレーションするようにしているため、各部材とも「空気溜まり発生せず」などと誤判定されてしまうという問題が生じ得た。
【0006】
本発明の目的は、一の部材および他の部材の接続関係を定義して接続部材のデータを生成し、この接続部材のデータに基づき空気溜まりの発生をシミュレーションするようにした被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、前記被浸漬処理物を形成する一の部材および他の部材の形状データを、複数の二次元の要素に分割する第1のステップと、前記各部材を形成する要素の重心点を算出する第2のステップと、前記各部材の要素同士の重心点の距離を求め、前記各部材が互いに所定距離内にあるか否かを判定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて所定距離内にあると判定したのち、前記各部材と同じ情報を有する前記各部材のコピーデータを生成する第4のステップと、前記各部材のオリジナルデータとコピーデータとを形成する要素から、それぞれ相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する第5のステップと、前記法線ベクトルが、前記各部材の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する第6のステップと、前記第6のステップにおいて貫通し合うと判定したのち、貫通し合う法線ベクトルを有する各要素を互いに隣接要素とし、前記各部材を接続する第7のステップと、前記第7のステップで接続された接続部材を形成する要素のうち、端部または穴部に位置する要素を初期境界要素に設定するとともに、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記初期境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第9のステップと、前記第9のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定するとともに、前記二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第10のステップと、前記第10のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記二次境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第11のステップと、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があると判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がなくなるまで前記第10のステップおよび前記第11のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がないと判定した場合には解析を終了させる第12のステップとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第9のステップおよび前記第11のステップでは、前記初期境界要素および前記二次境界要素と、前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0009】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする。
【0010】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、前記被浸漬処理物を形成する一の部材および他の部材の形状データを、複数の二次元の要素に分割する第1のステップと、前記各部材を形成する要素の重心点を算出する第2のステップと、前記各部材の要素同士の重心点の距離を求め、前記各部材が互いに所定距離内にあるか否かを判定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて所定距離内にあると判定したのち、前記各部材と同じ情報を有する前記各部材のコピーデータを生成する第4のステップと、前記各部材のオリジナルデータとコピーデータとを形成する要素から、それぞれ相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する第5のステップと、前記法線ベクトルが、前記各部材の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する第6のステップと、前記第6のステップにおいて貫通し合うと判定したのち、貫通し合う法線ベクトルを有する各要素を互いに隣接要素とし、前記各部材を接続する第7のステップと、前記第7のステップで接続された接続部材を形成する要素のうち、端部または穴部に位置する要素を初期境界要素に設定するとともに、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記初期境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第9のステップと、前記第9のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定するとともに、前記二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第10のステップと、前記第10のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記二次境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第11のステップと、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があると判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がなくなるまで前記第10のステップおよび前記第11のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がないと判定した場合には解析を終了させる第12のステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第9のステップおよび前記第11のステップでは、前記初期境界要素および前記二次境界要素と、前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0012】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、一の部材および他の部材の接続関係を、各部材の要素の重心点の距離および法線ベクトルが貫通し合う要素の隣接要素への設定から定義し、各部材を接続して形成された接続部材について空気溜まりの発生をシミュレーションするので、接続されるべき個別の各部材を一の接続部材として解析処理することができる。この場合、接続部材のデータはオリジナルデータとコピーデータとを有するので、例えば、各データのうち、一方側を表側に設定するとともに他方側を裏側に設定することができ、接続部材の表側と裏側とでそれぞれ正確に空気溜まりの発生をシミュレーションすることができる。
【0014】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、節点を共有する二次元の要素同士の重心点の高さを比較して空気または塗料と判定することにより、被浸漬処理物に空気溜りが発生するか否かを迅速に判定することができる。
【0015】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物を車体ボディとすることができ、この場合、複雑な形状の車体ボディにおける空気溜まりの発生をシミュレーションすることができる。
【0016】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムによれば、上記各本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を、コンピュータに実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施の形態について、図1〜図12を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るシミュレーション方法を実行する流体解析装置のブロック図を表している。
【0018】
図1に示すように、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行する流体解析装置(コンピュータ)10は、被浸漬処理物の解析条件等を入力するキーボード11と、解析処理結果等を表示するディスプレイ12と、被浸漬処理物の各種データ等を保存するHDD(ハードディスクドライブ)13と、FD(フレキシブルディスク)に解析処理結果等を保存したりするFDD(フレキシブルディスクドライブ)14とを有している。
【0019】
この流体解析装置10には、さらに、CPU15,ROM16およびRAM17からなる制御部18と、キーボード11のキーボードコントローラ19と、ディスプレイ12のディスプレイコントローラ20と、HDD13およびFDD14のディスクコントローラ21と、流体解析装置10をネットワーク22と接続するためのネットワークインターフェースコントローラ23とが設けられており、これらは相互にシステムバス24を介して通信可能となっている。
【0020】
制御部18を構成するCPU15は、ROM16やHDD13に保存されたソフトウェア、または、FDD14から供給されるソフトウェアを実行することにより、システムバス24に接続された種々の構成部材を総括的に制御するようになっている。すなわち、CPU15は、所定の処理シーケンスに従ってROM16やHDD13、あるいはFDD14からソフトウェアを読み出して、そのプログラムを実行することにより、図8および図11に示す動作を実現する制御を行うようになっている。
【0021】
CPU15は、解析対象となる被浸漬処理物の各種データをHDD13から読み出して、この読み出した各種データから複数の要素に分割された二次元の数値計算モデルを構築するようになっている。また、CPU15は、構築した数値計算モデルに基づいて、図8および図11に示す動作を実現するために必要な情報(データ)の算出、つまり、要素の重心点算出や隣接要素の設定等を行い、最終的に被浸漬処理物における空気溜まりの発生状態をディスプレイ12に表示するようになっている。
【0022】
制御部18を構成するRAM17は、CPU15のメインメモリあるいはワークエリア等として機能するものである。キーボードコントローラ19は、キーボード11や図示しないポインティングデバイス等の入力手段からの入力信号を制御し、ディスプレイコントローラ20は、ディスプレイ12の表示を制御するようになっている。ディスクコントローラ21は、ブートプログラム,種々のアプリケーション,編集ファイル,ユーザファイルおよびネットワーク管理プログラム等を保存または読み出すHDD13やFDD14とのアクセスを制御するようになっている。ネットワークインターフェースコントローラ23は、ネットワーク22上の他のデバイス(図示せず)と双方向にデータを送受信するようになっている。
【0023】
第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、乗用車等の車体ボディの電着塗装時に、車体ボディに発生する空気溜まりをシミュレーションするものである。まず、車体ボディの塗装ラインについて図2を参照して説明する。
【0024】
図2は車体ボディの塗装ラインを説明する説明図を示しており、被浸漬処理物としての車体ボディ30は、フロアパネル部材,サイドパネル部材およびルーフパネル部材等よりなる複数の車体パネル部材(図示せず)をスポット溶接等により接合することで形成されている。この車体ボディ30は、搬送装置31のハンガ32に吊り下げられた状態で塗装ライン33上を略水平方向に搬送されるようになっている。
【0025】
搬送装置31の塗装ライン33の前段には、前処理ライン(図示せず)が設けられており、この前処理ラインでは、車体ボディ30に対して電着塗装の前処理として、湯洗,脱脂,水洗,表面調整,皮膜化成,水洗,乾燥の処理をこの順番で連続して施すようにしている。この前処理ラインにおける処理を終えた後、車体ボディ30は、塗装ライン33に移行して電着槽(塗料槽)34に向かって下降し、電着溶液(塗料)35に完全に浸漬された状態で略水平方向に移動するようになっている。この状態のもとで、車体ボディ30と電着槽34内の電極(図示せず)に所定の大きさの電圧を加えることにより、車体ボディ30の表面に所定の膜厚の塗膜を析出させることができる。その後、搬送装置31により車体ボディ30を電着槽34から引き上げるとともに、車体ボディ30に電着せずに付着している余剰の電着溶液35を、水洗等により除去するようになっている。
【0026】
次に、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法について詳細に説明する。なお、第1実施の形態においては、解析手法として有限要素法を用いるとともに、車体ボディ30を構成するフロアパネル部材を解析対象として解析を行っている。
【0027】
図3は車体ボディにおけるフロアパネル部材の数値計算モデルを説明する説明図を示している。
【0028】
流体解析装置10の制御部18(図1参照)は、図3に示す車体ボディ30におけるフロアパネル部材40の形状データを、平面により形成される複数の二次元の要素41(破線円A部参照)に分割して数値計算モデルを構築するようになっており、この二次元の数値計算モデルを構築するにあたり、例えば、車体ボディ30の衝突変形シミュレーション等で用いられる数値計算モデルを流用することができる。
【0029】
フロアパネル部材40は、破線円A部内に示すように、一の部材としての第1パネル40aと他の部材としての第2パネル40bとを、スポット溶接等の接合手段により接合して形成され、制御部18は、まず、これらの各パネル40a,40bにおける相互の溶接部分WPを定義、つまり、各パネル40a,40bの接合関係を見出すことを実行するようになっている。
【0030】
ここで、第1実施の形態においては、各パネル40a,40bの端部近傍(エッジ部近傍)が相互に接合される場合を示しており、以下、図4および図5に示すモデルを用いて説明する。図4は第1実施の形態における各パネルの形状を簡素化して示す簡易モデル図を、図5は図4の破線円B部における要素を模式的に示す模式図をそれぞれ表している。
【0031】
図4に示すように、第1パネル40aおよび第2パネル40bは、溶接部分WPを介して互いに端部近傍が接合されることによってフロアパネル部材40を形成しており、各パネル40a,40bは相互に所定角度傾斜するように接合されている。各パネル40a,40bは、図2に示す電着槽34内への浸漬方向に対して図中上方側に開口するようになっている。
【0032】
図5の模式図に示すように、第1パネル40aは要素A,B,C,Dから構成されるとともに、第2パネル40bは要素E,F,G,Hから構成されており、これらの各要素A〜Hは、それぞれ4つの節点を有する平面により形成されている。これらの各要素A〜Hの形状データ(更新前データ)は、図6に示すように表される。また、各要素A〜Hを形成する各節点a〜tは、座標データ(X座標値,Y座標値,Z座標値)を有しており、これらの各節点a〜tの座標データ(更新前データ)は、図7に示すように表される。図6は各要素の更新前の形状データを示し、図7は各節点の座標データを示している。
【0033】
第1パネル40aを形成する要素Aは、節点a−節点fを結んで形成されるフリーエッジ40c(図5中破線)を有するとともに、その隣接要素は、節点bと節点gとを共有する要素Bとなっている。また、第2パネル40bを形成する要素Hは、節点o−節点tを結んで形成されるフリーエッジ40d(図5中破線)を有するとともに、その隣接要素は、節点nと節点sとを共有する要素Gとなっている。
【0034】
これらの要素Aおよび要素Hは、流体解析装置10の制御部18が図8に示すフローチャートを実行することにより、相互に溶接部分WPとして定義される。以下、図8〜図10に基づいて、制御部18による各パネル40a,40bの接合の定義方法について説明する。図8は各パネルの接合を定義するための解析処理を示すフローチャートを、図9(a),(b),(c)は図8のフローチャートの処理内容を説明する説明図を、図10は図6に対応する更新後データをそれぞれ表している。なお、以下の図8および図9における説明においては、第1パネル40aおよび第2パネル40bをそれぞれ第1パネル(PA)および第2パネル(PB)と表して説明する。
【0035】
図8に示すように、まず、流体解析装置10に電源を投入して制御部18に電力が供給されると、制御部18の初期設定が行われるとともに、HDD13等からRAM17に解析処理のソフトウェアが読み込まれて、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するプログラム(接合定義プログラム)が実行される(ステップS1)。
【0036】
次に、操作者により接合を定義すべき第1パネル(PA)および第2パネル(PB)を、キーボード11を介して入力する(ステップS2)。
【0037】
続くステップS3においては、入力された第1パネル(PA)および第2パネル(PB)に対応する元データ、つまり、車体ボディ30の衝突変形シミュレーション等に用いられる形状データ(流用データ)をHDD13から読み出す。そして、この読み出した第1パネル(PA)および第2パネル(PB)の形状データを複数の二次元の要素に分割する。その後、この分割処理において生成された図6および図7に示すデータ(更新前データ)を、RAM17に保存して数値計算モデルを構築する。ここで、ステップS3は、本発明の第1のステップを構成している。
【0038】
ステップS4では、各パネル(PA),(PB)のフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)、つまり、図5に示すフリーエッジ40c,40dを有する要素A,Hにおける重心点(AG_A),(BG_H)を算出する(図9(a)参照)。この重心点(AG_A),(BG_H)は、要素Aを形成する節点a,b,f,gおよび要素Hを形成する節点n,o,s,tの座標データを用いて所定の演算を行うことにより算出される。ここで、ステップS4は、本発明の第2のステップを構成している。
【0039】
ステップS5では、ステップS4で算出した重心点(AG_A),(BG_H)が、それぞれ互いに所定距離内にあるか否かを判定し、所定距離内にあると判定、つまり、各パネル(PA),(PB)は互いに近接する部材であると判定(yes)した場合にはステップS6に進む。一方、各パネル(PA),(PB)は所定距離以上離れていると判定、つまり、各パネル(PA),(PB)は互いに離れた部材であると判定(no)した場合にはステップS7に進む。なお、重心点(AG_A),(BG_H)の距離は、各重心点の座標データを用いて所定の演算を行うことにより算出される。ここで、ステップS5は、本発明の第3のステップを構成している。
【0040】
ステップS7では、各パネル(PA),(PB)は離れた部材であるため、それぞれは互いに接合されない部材、つまり、各パネル(PA),(PB)は「非溶接部材」であるとして、続くステップS8においてディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合されません」などと外部表示する。その後、ステップS9において接合定義の解析処理を終了する。
【0041】
ステップS6では、各パネル(PA),(PB)のコピーパネル(PA)’,(PB)’を生成する(図9(b)参照)。各コピーパネル(PA)’,(PB)’は、各パネル(PA),(PB)を形成する形状データと同じ情報(コピーデータ)を有しており、図10に示されるように図6に示す更新前データ(オリジナルデータ)に基づいて生成される。ただし、各コピーパネル(PA)’,(PB)’の形状データに対応するメモリアドレス,要素番号,節点番号および隣接要素番号は、オリジナルデータのそれとは異ならせている。このように各コピーパネル(PA)’,(PB)’に対応する形状データを生成し、これをRAM17に保存した後、ステップS10に進む。ここで、ステップS6は、本発明の第4のステップを構成している。
【0042】
ステップS10では、オリジナルデータにより形成されるフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)およびコピーデータにより形成されるフリーエッジ要素(FAM_A)’,(FBM_H)’から、オリジナル側とコピー側とで相反する方向に延びる法線ベクトル(AL_A),(BL_H),(AL_A)’,(BL_H)’を生成する(図9(c)参照)。
【0043】
各法線ベクトル(AL_A),(BL_H),(AL_A)’,(BL_H)’は、各フリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H),(FAM_A)’,(FBM_H)’における各重心点(AG_A),(BG_H),(AG_A)’,(BG_H)’の座標データを用いて所定の演算を行い、当該各重心点(AG_A),(BG_H),(AG_A)’,(BG_H)’から延びるように生成する。また、オリジナル側とコピー側とで、一方をプラス、他方をマイナスとすることにより、相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する。なお、法線ベクトルの生成においては、各フリーエッジ要素を形成する各節点の座標データを用いて所定の演算を行うことにより、各フリーエッジ要素の任意の部分から延びる法線ベクトルを生成するようにしても良い。ここで、ステップS10は、本発明の第5のステップを構成している。
【0044】
ステップS11では、ステップS10において生成した各法線ベクトル(AL_A),(BL_H),(AL_A)’,(BL_H)’が、それぞれ第1パネル(PA)側および第2パネル(PB)側の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する。つまり、図9(c)に示すように、法線ベクトル(AL_A)’がフリーエッジ要素(FBM_H)を貫通するとともに、法線ベクトル(BL_H)がフリーエッジ要素(FAM_A)’を貫通するか否かを判定する。
【0045】
ステップS11において、貫通し合うと判定(yes)した場合にはステップS12に進み、貫通し合わないと判定(no)した場合にはステップS13に進む。なお、貫通するか否かの判定は、法線ベクトルと要素(4つの節点により定義される平面)との交点が算出されるか否かにより判定する。ここで、ステップS11は、本発明の第6のステップを構成している。
【0046】
ステップS13では、各パネル(PA),(PB)が互いに近接する部材ではあるものの、例えば、図9(c)において各パネル(PA),(PB)が互いに図中左右方向に離れて図中上下方向に重ならないような場合(ステップS11におけるno判定)に、各パネル(PA),(PB)は互いに「非溶接部材」であるとして、続くステップS14においてディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合されません」などと外部表示する。その後、ステップS15において接合定義の解析処理を終了する。
【0047】
ステップS12では、最終的に各パネル(PA),(PB)は互いに接合される部材、つまり、各パネル(PA),(PB)は溶接部材であるとして、次のステップS16に進む。
【0048】
ステップS16では、コピーパネル(PA)’のフリーエッジ要素(FAM_A)’をパネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_H)の隣接要素に設定するとともに、パネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_H)をコピーパネル(PA)’のフリーエッジ要素(FAM_A)’の隣接要素に設定する。そして、図10の白抜矢印に示すように、隣接要素番号を更新してRAM17に保存する。そして、制御部18は、図10に示すように、隣接要素番号を更新するとともに、オリジナルデータとコピーデータとをそれぞれ解析対象部材I〜IIIとして、この接合定義の解析結果をHDD13に保存する。ここで、ステップS16は、本発明の第7のステップを構成している。
【0049】
続くステップS17では、ディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合されます」などと外部表示し、その後、ステップS18において接合定義の解析処理を終了する。このようにして、第1パネル(PA)と第2パネル(PB)との接合が定義され、各パネル(PA),(PB)を接続部材としてデータ上で関連付けることができる。
【0050】
次に、図11および図12に基づいて、図8に示す接合定義の解析処理を終えた後に実行される空気溜まりが発生するか否かの判定方法について説明する。図11は空気溜まりの発生を判定するための解析処理を示すフローチャートを、図12(a),(b),(c)は図11のフローチャートの処理内容を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0051】
図11に示すように、まず、HDD13等からRAM17に解析処理のソフトウェアが読み込まれて、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するプログラム(空気溜まり判定プログラム)が実行される(ステップS20)。
【0052】
次に、図8に示す接合定義のプログラムにおいて生成された接続部材としての解析対象部材I〜III(図10および図12参照)の形状データのうち、いずれか一つの解析対象部材(P_i)の形状データを、操作者のキーボード11の操作によりRAM17に呼び出す(ステップS21)。
【0053】
ステップS22では、RAM17に呼び出した解析対象部材(P_i)を形成する全要素を初期状態として空気に設定する。このように、初期状態として解析対象部材(P_i)を形成する全要素を空気に設定することにより、車体ボディ30が電着槽34に浸漬される前の解析対象部材(P_i)の周囲を、空気で満たした状態を模擬的に作り出している。
【0054】
ステップS23では、車体ボディ30の電着槽34への浸漬方向、つまり、解析対象部材(P_i)の重力方向(G)を、操作者のキーボード11の操作により入力する。そして、制御部18は、入力された重力方向(G)に基づいて解析対象部材(P_i)を形成する全要素における節点の座標データ(図7参照)を更新し、この重力方向(G)が考慮された座標データ(更新後データ)をRAM17に保存する。
【0055】
ステップS24では、解析対象部材(P_i)の端部または穴部に存在するフリーエッジ要素(FM_i)、つまり、図12(b)の解析対象部材II(接合定義された接続部材)の場合では、要素(BM_E)と要素(AM_D)’とがフリーエッジ要素(FM_i)に相当し、これらの要素(BM_E),(AM_D)’を初期境界要素に設定する。以下、解析対象部材IIに基づいて説明する。
【0056】
ステップS25では、ステップS24で設定した初期境界要素(BM_E),(AM_D)’の節点を共有するとともに、初期境界要素(BM_E),(AM_D)’の比較対象となる隣接要素(NM_i)、つまり、図12(b)に示す要素(BM_F)および要素(AM_C)’が隣接要素(NM_i)に相当し、これらの要素(BM_F),(AM_C)’を隣接要素に設定する。ここで、ステップS24およびステップS25は、本発明の第8のステップを構成している。
【0057】
ステップS26では、ステップS24で初期境界要素に設定した各要素(BM_E),(AM_D)’の重心点(BG_E),(AG_D)’を算出するとともに、ステップS25で隣接要素に設定した各要素(BM_F),(AM_C)’の重心点(BG_F),(AG_C)’を算出し、それぞれの重心点の高さをそれぞれのZ座標値に基づいて比較する。
【0058】
その後、ステップS27では、重心点(BG_E)は重心点(BG_F)よりも低いと判定して、隣接要素である要素(BM_F)の属性を空気のままとして属性の変更は行わない。一方、重心点(AG_D)’は重心点(AG_C)’よりも高いと判定して、隣接要素である要素(AM_C)’の属性を空気から液体(塗料)に変更する。ここで、ステップS27は、本発明の第9のステップを構成している。
【0059】
ステップS28では、初期境界要素(BM_E),(AM_D)’との比較が終了した隣接要素(BM_F),(AM_C)’を二次境界要素に設定し、その後、ステップS29において、新たに設定した二次境界要素(BM_F),(AM_C)’にそれぞれ隣接する隣接要素(NM_j)があるか否かの判定を行う。ここで、ステップS28およびステップS29は、本発明の第10のステップを構成している。
【0060】
ステップS29において、二次境界要素(BM_F),(AM_C)’に隣接する隣接要素(NM_j)が無いと判定(no)した場合、ステップS30に進み、ディスプレイ12を介して、例えば、判定結果をグラフィック表示する等して外部表示し、空気溜まり判定の解析処理を終了する。
【0061】
ステップS29において、二次境界要素(BM_F),(AM_C)’に隣接する隣接要素(NM_j)があると判定(yes)した場合、つまり、二次境界要素(BM_F),(AM_C)’の隣接要素(BM_G),(AM_B)’を見つけた場合、ステップS31に進む。
【0062】
ステップS31では、ステップS29で見つけた各隣接要素(BM_G),(AM_B)’の重心点(BG_G),(AG_B)’を算出して、ステップS28で二次境界要素に設定した各要素(BM_F),(AM_C)’の重心点(BG_F),(AG_C)’と、当該ステップS31で算出した各重心点(BG_G),(AG_B)’との高さをそれぞれのZ座標値に基づいて比較する。
【0063】
ステップS32では、重心点(BG_F)は重心点(BG_G)よりも低いと判定して、隣接要素である要素(BM_G)の属性を空気のままとして属性の変更は行わない。一方、重心点(AG_C)’は重心点(AG_B)’よりも高いと判定して、隣接要素である要素(AM_B)’の属性を空気から液体(塗料)に変更する。ここで、ステップS31およびステップS32は、本発明の第11のステップを構成している。
【0064】
続くステップS33では、二次境界要素(BM_F),(AM_C)’との比較が終了した隣接要素(BM_G),(AM_B)’を二次境界要素に設定し、その後、ステップS34において、新たに設定した二次境界要素(BM_G),(AM_B)’にそれぞれ隣接する隣接要素(NM_k)があるか否かの判定を行う。ここで、ステップS33およびステップS34は、本発明の第10のステップを構成している。
【0065】
ステップS34において、二次境界要素(BM_G),(AM_B)’に隣接する隣接要素(NM_k)が無いと判定(no)した場合、ステップS30に進み、ディスプレイ12を介して、例えば、判定結果をグラフィック表示する等して外部表示し、空気溜まり判定の解析処理を終了する。
【0066】
ステップS34において、二次境界要素(BM_G),(AM_B)’に隣接する隣接要素(NM_k)があると判定(yes)した場合、つまり、二次境界要素(BM_G),(AM_B)’の隣接要素(FBM_H),(FAM_B)’を見つけた場合、ステップS31に戻る。
【0067】
ステップS31では、ステップS34で見つけた各隣接要素(FBM_H),(FAM_B)’の重心点(FBG_H),(FAG_A)’を算出して、ステップS33で二次境界要素に設定した各要素(BM_G),(AM_B)’の重心点(BG_G),(AG_B)’と、当該ステップS31で算出した各重心点(FBG_H),(FAG_A)’との高さをそれぞれのZ座標値に基づいて比較する。
【0068】
このように、制御部18は、初期境界要素および二次境界要素と、隣接要素におけるそれぞれの重心点の高さを比較する比較処理、また、この比較結果に基づく要素の属性判定処理を繰り返して実行し、二次境界要素に隣接する隣接要素が無くなるまでこれらの解析処理を繰り返す。ここで、繰り返し行われるステップS31〜ステップS34における解析処理が、本発明の第12ステップを構成している。
【0069】
ここで、図12(b)に示す解析対象部材IIを構成する全要素の属性判定について説明すると、要素(BM_E)側(図中左方側)からの要素の属性は空気のままで変更されず、一方、要素(AM_D)’側(図中右方側)からの属性は空気から液体に変更される。したがって、要素(AM_D)’側からの属性の変更(空気から液体)に伴い、解析対象部材IIを構成する全要素の属性が液体(塗料)に変更され、よって、解析対象部材IIには空気溜まりが発生しないと判定されることになる。
【0070】
なお、図12(a)および図12(c)に示す解析対象部材I(第1パネル(PA)のオリジナル)と解析対象部材III(第2パネル(PB)のコピー)についても同じステップを経て同様に解析処理が行われ、解析対象部材Iおよび解析対象部材IIIについても、いずれも空気溜まりが発生しないと判定される。
【0071】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、第1パネル(PA)および第2パネル(PB)の接続関係を、各パネル(PA),(PB)のフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)の重心点(AG_A),(BG_H)の距離および法線ベクトル(AL_A)’,(BL_H)が貫通し合うフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)の隣接要素への設定から定義し、各パネル(PA),(PB)を接続して形成された接続部材について空気溜まりの発生をシミュレーションするので、接続されるべき個別の各パネル(PA),(PB)を一の接続部材として解析処理することができる。
【0072】
この場合、接続された各パネル(PA),(PB)のデータはオリジナルデータとコピーデータとを有するので、例えば、オリジナルデータおよびコピーデータのうち、一方側を表側に設定するとともに他方側を裏側に設定することができ、接続された各パネル(PA),(PB)の表側と裏側とでそれぞれ正確に空気溜まりの発生をシミュレーションすることができる。
【0073】
また、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、節点を共有する二次元の要素同士の重心点の高さを比較して空気または液体(塗料)と判定することにより、接続された各パネル(PA),(PB)に空気溜りが発生するか否かを迅速に判定することができる。
【0074】
さらに、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物として、車体ボディ30を形成するフロアパネル部材としたので、複雑な形状の車体ボディ30における空気溜まりの発生をシミュレーションすることができる。
【0075】
次に、本発明の第2実施の形態について、図13〜図20を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の部分については、同一の符号を付して説明する。
【0076】
第2実施の形態においては、第1パネル40aの端部を除く部分(例えば、第1パネル40aの中央部分)に第2パネル40bの端部が接合される場合を示しており、以下、図13および図14に示すモデルを用いて説明する。図13は第2実施の形態における各パネルの形状を簡素化して示す簡易モデル図を、図14は図13の破線円C部における要素を模式的に示す模式図をそれぞれ表している。
【0077】
図13に示すように、各パネル40a,40bは相互に所定角度傾斜するように接合されており、図2に示す電着槽34への浸漬時に、図中破線に示す気液境界面を形成、つまり、空気溜まりが発生するようになっている。ここで、気液境界面とは、図中上方側の空気と図中下方側の液体(塗料)との境界面のことである。
【0078】
図14の模式図に示すように、第1パネル40aおよび第2パネル40bを形成する各要素A〜Hの形状データ(更新前データ)は、図15に示すように表され、また、各要素A〜Hを形成する各節点a〜tの座標データ(更新前データ)は、図16に示すように表される。図15は第2実施の形態に係る各要素の更新前の形状データを示し、図16は第2実施の形態に係る各節点の座標データを示している。
【0079】
第2パネル40bを形成する要素Eは、節点k−節点pを結んで形成されるフリーエッジ40e(図14中破線)を有するとともに、その隣接要素は、節点lと節点qとを共有する要素Fとなっている。なお、第1パネル40aにおける第2パネル40bの要素Eの近傍には、上記のようなフリーエッジは存在しない。
【0080】
各パネル40a,40bは、流体解析装置10の制御部18が図17に示すフローチャートを実行することにより、各パネル40a,40bの溶接部分WPが定義される。以下、図17〜図19に基づいて、制御部18による各パネル40a,40bの接合の定義方法について説明する。図17は第2実施の形態に係る各パネルの接合を定義するための解析処理を示すフローチャートを、図18(a)〜(f)は図17のフローチャートの処理内容を説明する説明図を、図19は図15に対応する更新後データをそれぞれ表している。なお、図17および図18における説明においては、第1パネル40aおよび第2パネル40bをそれぞれ第1パネル(PA)および第2パネル(PB)と表して説明する。
【0081】
図17に示すように、まず、流体解析装置10に電源を投入して制御部18に電力が供給されると、制御部18の初期設定が行われるとともに、HDD13等からRAM17に解析処理のソフトウェアが読み込まれて、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するプログラム(接合定義プログラム)が実行される(ステップS40)。
【0082】
次に、操作者により接合を定義すべき第1パネル(PA)および第2パネル(PB)を、キーボード11を介して入力する(ステップS41)。
【0083】
続くステップS42においては、入力された第1パネル(PA)および第2パネル(PB)に対応する元データ、つまり、車体ボディ30の衝突変形シミュレーション等に用いられる形状データ(流用データ)をHDD13から読み出す。そして、この読み出した第1パネル(PA)および第2パネル(PB)の形状データを複数の二次元の要素に分割する。その後、この分割処理において生成された図15および図16に示すデータ(更新前データ)を、RAM17に保存して数値計算モデルを構築する。ここで、ステップS42は、本発明の第1のステップを構成している。
【0084】
ステップS43では、第2パネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_E)、つまり、図14に示すフリーエッジ40eを有する要素Eにおける重心点(BG_E)を算出する(図18(a)参照)。この重心点(BG_E)は、要素Eを形成する節点k,l,p,qの座標データを用いて所定の演算を行うことにより算出される。
【0085】
ステップS44では、第1パネル(PA)を形成する全要素(AM_A〜D)の重心点(AG_A〜D)を算出する(図18(a)参照)。各重心点(AG_A〜D)は、図14に示す要素A〜Dを形成する節点a〜jの座標データを用いて所定の演算を行うことにより算出される。ここで、ステップS43およびステップS44は、本発明の第2のステップを構成している。
【0086】
ステップS45では、ステップS43で算出したフリーエッジ要素(FBM_E)の重心点(BG_E)が、第1パネル(PA)の全要素(AM_A〜D)における重心点(AG_A〜D)のうち、どの要素の重心点に近いか否か(各パネル(PA),(PB)がそれぞれ所定距離内にあるか否か)を判定し、所定距離内にあると判定、つまり、各パネル(PA),(PB)は互いに近接する部材であると判定(yes)した場合にはステップS46に進む。ここでは、図18(a)に示すように、第1パネル(PA)の要素(AM_C)がフリーエッジ要素(FBM_E)に対して所定距離内にあると判定される。
【0087】
一方、各パネル(PA),(PB)は所定距離以上離れていると判定、つまり、各パネル(PA),(PB)は互いに離れた部材であると判定(no)した場合にはステップS47に進む。なお、重心点の距離は、各重心点の座標データを用いて所定の演算を行うことにより算出される。ここで、ステップS45は、本発明の第3のステップを構成している。
【0088】
ステップS47では、各パネル(PA),(PB)は離れた部材であるため、それぞれは互いに接合されない部材、つまり、各パネル(PA),(PB)は「非溶接部材」であるとして、続くステップS48においてディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合されません」などと外部表示する。その後、ステップS49において接合定義の解析処理を終了する。
【0089】
ステップS46では、各パネル(PA),(PB)のコピーパネル(PA)’,(PB)’を生成する(図18(b)参照)。各コピーパネル(PA)’,(PB)’は、各パネル(PA),(PB)を形成する形状データと同じ情報(コピーデータ)を有しており、図19に示されるように図15に示す更新前データ(オリジナルデータ)に基づいて生成される。ただし、各コピーパネル(PA)’,(PB)’の形状データに対応するメモリアドレス,要素番号,節点番号および隣接要素番号は、オリジナルデータのそれとは異ならせている。このように各コピーパネル(PA)’,(PB)’に対応する形状データを生成し、これをRAM17に保存した後、ステップS50に進む。ここで、ステップS46は、本発明の第4のステップを構成している。
【0090】
ステップS50では、オリジナルデータにより形成されるフリーエッジ要素(FBM_E)と第1パネル(PA)の要素(AM_C)、また、コピーデータにより形成されるフリーエッジ要素(FBM_E)’とコピーパネル(PA)’の要素(AM_C)’から、オリジナル側とコピー側とで相反する方向に延びる法線ベクトル(AL_C),(BL_E),(AL_C)’,(BL_E)’を生成する(図18(c)参照)。
【0091】
各法線ベクトル(AL_C),(BL_E),(AL_C)’,(BL_E)’は、各要素(AM_C),(FBM_E),(AM_C)’,(FBM_E)’における各重心点(AG_C),(BG_E),(AG_C)’,(BG_E)’の座標データを用いて所定の演算を行い、当該各重心点(AG_C),(BG_E),(AG_C)’,(BG_E)’から延びるように生成する。また、オリジナル側とコピー側とで、一方をプラス、他方をマイナスとすることにより、相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する。なお、法線ベクトルの生成においては、各フリーエッジ要素を形成する各節点の座標データを用いて所定の演算を行うことにより、各フリーエッジ要素の任意の部分から延びる法線ベクトルを生成するようにしても良い。ここで、ステップS50は、本発明の第5のステップを構成している。
【0092】
ステップS51では、ステップS50において生成した各法線ベクトル(AL_C),(BL_E),(AL_C)’,(BL_E)’が、それぞれ第1パネル(PA)側および第2パネル(PB)側の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する。つまり、図18(d)に示すように、法線ベクトル(AL_C)’がフリーエッジ要素(FBM_E)を貫通するとともに、法線ベクトル(BL_E)が要素(AM_C)’を貫通するか否かを判定する。
【0093】
ステップS51において、貫通し合うと判定(yes)した場合にはステップS52に進み、貫通し合わないと判定(no)した場合にはステップS53に進む。なお、貫通するか否かの判定は、法線ベクトルと要素(4つの節点により定義される平面)との交点が算出されるか否かにより判定する。ここで、ステップS51は、本発明の第6のステップを構成している。
【0094】
ステップS53では、各パネル(PA),(PB)が互いに近接する部材ではあるものの、第1パネル(PA)に対する第2パネル(PB)の接合が垂直である可能性があるとし、続くステップS54においてディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合の定義ができません」などと外部表示する。その後、ステップS55において接合定義の解析処理を終了する。ここで、実際に接合される各部材は、ステップS53のように判定されることは殆ど無く実用上問題とならない。
【0095】
ステップS52では、最終的に各パネル(PA),(PB)は互いに接合される部材、つまり、各パネル(PA),(PB)は溶接部材であるとして、次のステップS56に進む。
【0096】
ステップS56では、コピーパネル(PA)’の要素(AM_C)’をパネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_E)の隣接要素に設定するとともに、パネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_E)をコピーパネル(PA)’の要素(FAM_C)’の隣接要素に設定する。そして、図19の丸符号1に示すように、隣接要素番号を更新してRAM17に保存する。ここで、ステップS56は、本発明の第7のステップを構成している。
【0097】
ステップS57では、パネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_E)における隣接要素(BM_F)を検出し、続くステップS58において隣接要素(BM_F)の法線ベクトル(BL_F)が貫通するコピーパネル(PA)’の要素(AM_D)’を検出する(図18(d)参照)。なお、ステップS58において生成する法線ベクトルについても、隣接要素(BM_F)を形成する各節点の座標データを用いて所定の演算を行うことにより、隣接要素(BM_F)の任意の部分から延びる法線ベクトルを生成するようにしても良い。
【0098】
ステップS59では、コピーパネル(PA)’の要素(AM_C)’における隣接要素のうち、ステップS57で検出した隣接要素(AM_D)’が無い側の隣接要素、つまり、隣接要素(AM_B)’を図19の丸符号2に示すように形状データから削除する(図18(e)参照)。このように、コピーパネル(PA)’を要素(AM_C)’側と要素(AM_B)’側とで分離することにより、図20(b)に示すような解析対象部材IIを生成する(ステップS60)。
【0099】
ステップS61では、コピーパネル(PA)’における要素(AM_C)’のコピーとしてコピー要素(AM_C)”を生成し、RAM17に保存する。これにより、図19の丸符号3に示すように形状データが更新される。
【0100】
ステップS62では、ステップS61で生成したコピー要素(AM_C)”をコピーパネル(PB)’のフリーエッジ要素(FBM_E)’の隣接要素に設定するとともに、パネル(PB)’のフリーエッジ要素(FBM_E)’をコピー要素(AM_C)”の隣接要素に設定する。これにより、図19の丸符号4に示すように形状データが更新される。
【0101】
ステップS63では、コピー要素(AM_C)”の隣接要素として、コピーパネル(PA)’の要素(AM_B)’を指定することにより、図19の丸符号5に示すように形状データを更新し、これにより、ステップS59において分離されたコピーパネル(PA)’の要素(AM_B)’側とコピーパネル(PB)'とを接続し、図20(c)に示すような解析対象部材IIIを生成する(ステップS64)。
【0102】
ステップS65では、図19に示すように、オリジナルデータとコピーデータとをそれぞれ解析対象部材I〜IIIとして、この接合定義の解析結果をHDD13に保存するとともに、ディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合されます」などと外部表示する。その後、ステップS66において接合定義の解析処理を終了する。このようにして、第1パネル(PA)と第2パネル(PB)との接合が定義され、各パネル(PA),(PB)を接続部材としてデータ上で関連付けることができる。
【0103】
次に、図20に基づいて、第2実施の形態に係る解析対象部材I〜IIIを対象に実行される空気溜まりが発生するか否かの判定方法について説明する。なお、第2実施の形態においても、第1実施の形態に係る判定方法(図11参照)を実行するようになっている。図20(a),(b),(c)は空気溜まり判定プログラムの処理内容を説明する説明図を表している。
【0104】
図20(a)および(c)に示す解析対象部材IおよびIIIについては、第1実施の形態における各解析対象部材I〜IIIの判定結果と同じ判定がなされ、解析対象部材IおよびIIIを形成する全要素が液体(塗料)と判定される。したがって、全要素の属性が空気と判定、つまり、空気溜まりが発生すると判定される解析対象部材IIについて説明する。
【0105】
制御部18は、図20(b)に示す解析対象部材IIを形成するフリーエッジ要素となる要素(AM_D)’,(BM_H)を初期境界要素として、図11のフローチャートに示す解析処理を実行する。すると、第1実施の形態と同様に要素の属性判定が実行され、要素(BM_H)側からの要素の属性が次々と空気に設定されるとともに、要素(AM_D)’側からの要素の属性についても次々と空気に設定される。このように、解析対象部材IIを対象に図11のフローチャートを実行することにより、その全要素の属性が空気と判定され、したがって、図20(b)に示す解析対象部材IIには、空気溜まりが発生すると判定されることになる。
【0106】
以上のように構成した第2実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0107】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記各実施の形態においては、被浸漬処理物として乗用車等の車体ボディ30を形成する第1パネル40aおよび第2パネル40bよりなるフロアパネル部材40を対象としたものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、鉄道車両の車体フレームや建設機械のキャビン等を被浸漬処理物の対象としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係るシミュレーション方法を実行する流体解析装置のブロック図である。
【図2】車体ボディの塗装ラインを説明する説明図である。
【図3】車体ボディにおけるフロアパネル部材の数値計算モデルを説明する説明図である。
【図4】第1実施の形態における各パネルの形状を簡素化して示す簡易モデル図である。
【図5】図4の破線円B部における要素を模式的に示す模式図である。
【図6】各要素の更新前の形状データである。
【図7】各節点の座標データである。
【図8】各パネルの接合を定義するための解析処理を示すフローチャートである。
【図9】(a),(b),(c)は、図8のフローチャートの処理内容を説明する説明図である。
【図10】図6に対応する更新後データである。
【図11】空気溜まりの発生を判定するための解析処理を示すフローチャートである。
【図12】(a),(b),(c)は、図11のフローチャートの処理内容を説明する説明図である。
【図13】第2実施の形態における各パネルの形状を簡素化して示す簡易モデル図である。
【図14】図13の破線円C部における要素を模式的に示す模式図である。
【図15】第2実施の形態に係る各要素の更新前の形状データである。
【図16】第2実施の形態に係る各節点の座標データである。
【図17】第2実施の形態に係る各パネルの接合を定義するための解析処理を示すフローチャートである。
【図18】(a)〜(f)は、図17のフローチャートの処理内容を説明する説明図である。
【図19】図15に対応する更新後データである。
【図20】(a),(b),(c)は、空気溜まり判定プログラムの処理内容を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0109】
10 流体解析装置(コンピュータ)
18 制御部
30 車体ボディ(被浸漬処理物)
34 電着槽(塗料槽)
35 電着溶液(塗料)
40 フロアパネル部材(被浸漬処理物)
40a 第1パネル(一の部材)
40b 第2パネル(他の部材)
41 要素
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体ボディ等の被浸漬処理物は、液体塗料で満たされた塗料槽内に浸漬することにより、その表面に電着塗装を施すようにしている。このような塗装方法によれば、被浸漬処理物の表面に形成される塗膜厚さを略均一にしたり、被浸漬処理物の溶接箇所などにも同様の塗装処理を施したりすることができる等の利点がある。この反面、複雑な形状の被浸漬処理物には、例えば、車体ボディであればフード内面,ルーフ内面およびフロア下面等に複数の凹部が形成されるため、この凹部がエアポケットと呼ばれる空気溜まりとなり、この空気溜まりの空気が残留した状態のもとでは、当該部分に塗装処理を施すことができないといった欠点がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に示されるように、被浸漬処理物に空気溜まりが発生しないように、空気を大気中に排出するための排出経路を被浸漬処理物に予め形成しておき、この排出経路を介して空気を大気中に排出させ、被浸漬処理物の表面全域に塗装処理を施せるようにすることが行われている。
【0004】
このような被浸漬処理物に発生する空気溜まりは、自由表面を用いた周知の解析手法によりシミュレーションすることができ、このシミュレーション結果を反映させて被浸漬対象物を設計することにより設計作業を効率良く行うことができるようになる。本出願人は、特願2006−180453において、シミュレーションに要する時間を短縮して設計作業をより効率良く行えるようにするために、車体ボディの数値計算モデルを三次元の要素に分割することなく二次元の要素に分割するとともに、車体ボディを形成する部材毎の数値計算モデルのそれぞれを対象に空気溜まりの発生をシミュレーションする方法を出願している。
【特許文献1】特開平10−045037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように車体ボディを形成する部材毎に空気溜まりの発生をシミュレーションする方法においては、一の部材と他の部材とを接続して形成される接続部材を解析対象としてシミュレーションすることができなかった。つまり、例えば、一の部材および他の部材の端部が、浸漬方向下方に向けて開口するように断面がハの字形状(椀状)となるように接続される接続部材については、実際には空気溜まりが発生することになるが、上述のシミュレーション方法によれば、各部材の接続関係を定義することなく部材毎に個別にシミュレーションするようにしているため、各部材とも「空気溜まり発生せず」などと誤判定されてしまうという問題が生じ得た。
【0006】
本発明の目的は、一の部材および他の部材の接続関係を定義して接続部材のデータを生成し、この接続部材のデータに基づき空気溜まりの発生をシミュレーションするようにした被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、前記被浸漬処理物を形成する一の部材および他の部材の形状データを、複数の二次元の要素に分割する第1のステップと、前記各部材を形成する要素の重心点を算出する第2のステップと、前記各部材の要素同士の重心点の距離を求め、前記各部材が互いに所定距離内にあるか否かを判定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて所定距離内にあると判定したのち、前記各部材と同じ情報を有する前記各部材のコピーデータを生成する第4のステップと、前記各部材のオリジナルデータとコピーデータとを形成する要素から、それぞれ相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する第5のステップと、前記法線ベクトルが、前記各部材の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する第6のステップと、前記第6のステップにおいて貫通し合うと判定したのち、貫通し合う法線ベクトルを有する各要素を互いに隣接要素とし、前記各部材を接続する第7のステップと、前記第7のステップで接続された接続部材を形成する要素のうち、端部または穴部に位置する要素を初期境界要素に設定するとともに、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記初期境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第9のステップと、前記第9のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定するとともに、前記二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第10のステップと、前記第10のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記二次境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第11のステップと、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があると判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がなくなるまで前記第10のステップおよび前記第11のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がないと判定した場合には解析を終了させる第12のステップとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第9のステップおよび前記第11のステップでは、前記初期境界要素および前記二次境界要素と、前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0009】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする。
【0010】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、前記被浸漬処理物を形成する一の部材および他の部材の形状データを、複数の二次元の要素に分割する第1のステップと、前記各部材を形成する要素の重心点を算出する第2のステップと、前記各部材の要素同士の重心点の距離を求め、前記各部材が互いに所定距離内にあるか否かを判定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて所定距離内にあると判定したのち、前記各部材と同じ情報を有する前記各部材のコピーデータを生成する第4のステップと、前記各部材のオリジナルデータとコピーデータとを形成する要素から、それぞれ相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する第5のステップと、前記法線ベクトルが、前記各部材の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する第6のステップと、前記第6のステップにおいて貫通し合うと判定したのち、貫通し合う法線ベクトルを有する各要素を互いに隣接要素とし、前記各部材を接続する第7のステップと、前記第7のステップで接続された接続部材を形成する要素のうち、端部または穴部に位置する要素を初期境界要素に設定するとともに、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記初期境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第9のステップと、前記第9のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定するとともに、前記二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第10のステップと、前記第10のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記二次境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第11のステップと、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があると判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がなくなるまで前記第10のステップおよび前記第11のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がないと判定した場合には解析を終了させる第12のステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第9のステップおよび前記第11のステップでは、前記初期境界要素および前記二次境界要素と、前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0012】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、一の部材および他の部材の接続関係を、各部材の要素の重心点の距離および法線ベクトルが貫通し合う要素の隣接要素への設定から定義し、各部材を接続して形成された接続部材について空気溜まりの発生をシミュレーションするので、接続されるべき個別の各部材を一の接続部材として解析処理することができる。この場合、接続部材のデータはオリジナルデータとコピーデータとを有するので、例えば、各データのうち、一方側を表側に設定するとともに他方側を裏側に設定することができ、接続部材の表側と裏側とでそれぞれ正確に空気溜まりの発生をシミュレーションすることができる。
【0014】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、節点を共有する二次元の要素同士の重心点の高さを比較して空気または塗料と判定することにより、被浸漬処理物に空気溜りが発生するか否かを迅速に判定することができる。
【0015】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物を車体ボディとすることができ、この場合、複雑な形状の車体ボディにおける空気溜まりの発生をシミュレーションすることができる。
【0016】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムによれば、上記各本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を、コンピュータに実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施の形態について、図1〜図12を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るシミュレーション方法を実行する流体解析装置のブロック図を表している。
【0018】
図1に示すように、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行する流体解析装置(コンピュータ)10は、被浸漬処理物の解析条件等を入力するキーボード11と、解析処理結果等を表示するディスプレイ12と、被浸漬処理物の各種データ等を保存するHDD(ハードディスクドライブ)13と、FD(フレキシブルディスク)に解析処理結果等を保存したりするFDD(フレキシブルディスクドライブ)14とを有している。
【0019】
この流体解析装置10には、さらに、CPU15,ROM16およびRAM17からなる制御部18と、キーボード11のキーボードコントローラ19と、ディスプレイ12のディスプレイコントローラ20と、HDD13およびFDD14のディスクコントローラ21と、流体解析装置10をネットワーク22と接続するためのネットワークインターフェースコントローラ23とが設けられており、これらは相互にシステムバス24を介して通信可能となっている。
【0020】
制御部18を構成するCPU15は、ROM16やHDD13に保存されたソフトウェア、または、FDD14から供給されるソフトウェアを実行することにより、システムバス24に接続された種々の構成部材を総括的に制御するようになっている。すなわち、CPU15は、所定の処理シーケンスに従ってROM16やHDD13、あるいはFDD14からソフトウェアを読み出して、そのプログラムを実行することにより、図8および図11に示す動作を実現する制御を行うようになっている。
【0021】
CPU15は、解析対象となる被浸漬処理物の各種データをHDD13から読み出して、この読み出した各種データから複数の要素に分割された二次元の数値計算モデルを構築するようになっている。また、CPU15は、構築した数値計算モデルに基づいて、図8および図11に示す動作を実現するために必要な情報(データ)の算出、つまり、要素の重心点算出や隣接要素の設定等を行い、最終的に被浸漬処理物における空気溜まりの発生状態をディスプレイ12に表示するようになっている。
【0022】
制御部18を構成するRAM17は、CPU15のメインメモリあるいはワークエリア等として機能するものである。キーボードコントローラ19は、キーボード11や図示しないポインティングデバイス等の入力手段からの入力信号を制御し、ディスプレイコントローラ20は、ディスプレイ12の表示を制御するようになっている。ディスクコントローラ21は、ブートプログラム,種々のアプリケーション,編集ファイル,ユーザファイルおよびネットワーク管理プログラム等を保存または読み出すHDD13やFDD14とのアクセスを制御するようになっている。ネットワークインターフェースコントローラ23は、ネットワーク22上の他のデバイス(図示せず)と双方向にデータを送受信するようになっている。
【0023】
第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、乗用車等の車体ボディの電着塗装時に、車体ボディに発生する空気溜まりをシミュレーションするものである。まず、車体ボディの塗装ラインについて図2を参照して説明する。
【0024】
図2は車体ボディの塗装ラインを説明する説明図を示しており、被浸漬処理物としての車体ボディ30は、フロアパネル部材,サイドパネル部材およびルーフパネル部材等よりなる複数の車体パネル部材(図示せず)をスポット溶接等により接合することで形成されている。この車体ボディ30は、搬送装置31のハンガ32に吊り下げられた状態で塗装ライン33上を略水平方向に搬送されるようになっている。
【0025】
搬送装置31の塗装ライン33の前段には、前処理ライン(図示せず)が設けられており、この前処理ラインでは、車体ボディ30に対して電着塗装の前処理として、湯洗,脱脂,水洗,表面調整,皮膜化成,水洗,乾燥の処理をこの順番で連続して施すようにしている。この前処理ラインにおける処理を終えた後、車体ボディ30は、塗装ライン33に移行して電着槽(塗料槽)34に向かって下降し、電着溶液(塗料)35に完全に浸漬された状態で略水平方向に移動するようになっている。この状態のもとで、車体ボディ30と電着槽34内の電極(図示せず)に所定の大きさの電圧を加えることにより、車体ボディ30の表面に所定の膜厚の塗膜を析出させることができる。その後、搬送装置31により車体ボディ30を電着槽34から引き上げるとともに、車体ボディ30に電着せずに付着している余剰の電着溶液35を、水洗等により除去するようになっている。
【0026】
次に、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法について詳細に説明する。なお、第1実施の形態においては、解析手法として有限要素法を用いるとともに、車体ボディ30を構成するフロアパネル部材を解析対象として解析を行っている。
【0027】
図3は車体ボディにおけるフロアパネル部材の数値計算モデルを説明する説明図を示している。
【0028】
流体解析装置10の制御部18(図1参照)は、図3に示す車体ボディ30におけるフロアパネル部材40の形状データを、平面により形成される複数の二次元の要素41(破線円A部参照)に分割して数値計算モデルを構築するようになっており、この二次元の数値計算モデルを構築するにあたり、例えば、車体ボディ30の衝突変形シミュレーション等で用いられる数値計算モデルを流用することができる。
【0029】
フロアパネル部材40は、破線円A部内に示すように、一の部材としての第1パネル40aと他の部材としての第2パネル40bとを、スポット溶接等の接合手段により接合して形成され、制御部18は、まず、これらの各パネル40a,40bにおける相互の溶接部分WPを定義、つまり、各パネル40a,40bの接合関係を見出すことを実行するようになっている。
【0030】
ここで、第1実施の形態においては、各パネル40a,40bの端部近傍(エッジ部近傍)が相互に接合される場合を示しており、以下、図4および図5に示すモデルを用いて説明する。図4は第1実施の形態における各パネルの形状を簡素化して示す簡易モデル図を、図5は図4の破線円B部における要素を模式的に示す模式図をそれぞれ表している。
【0031】
図4に示すように、第1パネル40aおよび第2パネル40bは、溶接部分WPを介して互いに端部近傍が接合されることによってフロアパネル部材40を形成しており、各パネル40a,40bは相互に所定角度傾斜するように接合されている。各パネル40a,40bは、図2に示す電着槽34内への浸漬方向に対して図中上方側に開口するようになっている。
【0032】
図5の模式図に示すように、第1パネル40aは要素A,B,C,Dから構成されるとともに、第2パネル40bは要素E,F,G,Hから構成されており、これらの各要素A〜Hは、それぞれ4つの節点を有する平面により形成されている。これらの各要素A〜Hの形状データ(更新前データ)は、図6に示すように表される。また、各要素A〜Hを形成する各節点a〜tは、座標データ(X座標値,Y座標値,Z座標値)を有しており、これらの各節点a〜tの座標データ(更新前データ)は、図7に示すように表される。図6は各要素の更新前の形状データを示し、図7は各節点の座標データを示している。
【0033】
第1パネル40aを形成する要素Aは、節点a−節点fを結んで形成されるフリーエッジ40c(図5中破線)を有するとともに、その隣接要素は、節点bと節点gとを共有する要素Bとなっている。また、第2パネル40bを形成する要素Hは、節点o−節点tを結んで形成されるフリーエッジ40d(図5中破線)を有するとともに、その隣接要素は、節点nと節点sとを共有する要素Gとなっている。
【0034】
これらの要素Aおよび要素Hは、流体解析装置10の制御部18が図8に示すフローチャートを実行することにより、相互に溶接部分WPとして定義される。以下、図8〜図10に基づいて、制御部18による各パネル40a,40bの接合の定義方法について説明する。図8は各パネルの接合を定義するための解析処理を示すフローチャートを、図9(a),(b),(c)は図8のフローチャートの処理内容を説明する説明図を、図10は図6に対応する更新後データをそれぞれ表している。なお、以下の図8および図9における説明においては、第1パネル40aおよび第2パネル40bをそれぞれ第1パネル(PA)および第2パネル(PB)と表して説明する。
【0035】
図8に示すように、まず、流体解析装置10に電源を投入して制御部18に電力が供給されると、制御部18の初期設定が行われるとともに、HDD13等からRAM17に解析処理のソフトウェアが読み込まれて、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するプログラム(接合定義プログラム)が実行される(ステップS1)。
【0036】
次に、操作者により接合を定義すべき第1パネル(PA)および第2パネル(PB)を、キーボード11を介して入力する(ステップS2)。
【0037】
続くステップS3においては、入力された第1パネル(PA)および第2パネル(PB)に対応する元データ、つまり、車体ボディ30の衝突変形シミュレーション等に用いられる形状データ(流用データ)をHDD13から読み出す。そして、この読み出した第1パネル(PA)および第2パネル(PB)の形状データを複数の二次元の要素に分割する。その後、この分割処理において生成された図6および図7に示すデータ(更新前データ)を、RAM17に保存して数値計算モデルを構築する。ここで、ステップS3は、本発明の第1のステップを構成している。
【0038】
ステップS4では、各パネル(PA),(PB)のフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)、つまり、図5に示すフリーエッジ40c,40dを有する要素A,Hにおける重心点(AG_A),(BG_H)を算出する(図9(a)参照)。この重心点(AG_A),(BG_H)は、要素Aを形成する節点a,b,f,gおよび要素Hを形成する節点n,o,s,tの座標データを用いて所定の演算を行うことにより算出される。ここで、ステップS4は、本発明の第2のステップを構成している。
【0039】
ステップS5では、ステップS4で算出した重心点(AG_A),(BG_H)が、それぞれ互いに所定距離内にあるか否かを判定し、所定距離内にあると判定、つまり、各パネル(PA),(PB)は互いに近接する部材であると判定(yes)した場合にはステップS6に進む。一方、各パネル(PA),(PB)は所定距離以上離れていると判定、つまり、各パネル(PA),(PB)は互いに離れた部材であると判定(no)した場合にはステップS7に進む。なお、重心点(AG_A),(BG_H)の距離は、各重心点の座標データを用いて所定の演算を行うことにより算出される。ここで、ステップS5は、本発明の第3のステップを構成している。
【0040】
ステップS7では、各パネル(PA),(PB)は離れた部材であるため、それぞれは互いに接合されない部材、つまり、各パネル(PA),(PB)は「非溶接部材」であるとして、続くステップS8においてディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合されません」などと外部表示する。その後、ステップS9において接合定義の解析処理を終了する。
【0041】
ステップS6では、各パネル(PA),(PB)のコピーパネル(PA)’,(PB)’を生成する(図9(b)参照)。各コピーパネル(PA)’,(PB)’は、各パネル(PA),(PB)を形成する形状データと同じ情報(コピーデータ)を有しており、図10に示されるように図6に示す更新前データ(オリジナルデータ)に基づいて生成される。ただし、各コピーパネル(PA)’,(PB)’の形状データに対応するメモリアドレス,要素番号,節点番号および隣接要素番号は、オリジナルデータのそれとは異ならせている。このように各コピーパネル(PA)’,(PB)’に対応する形状データを生成し、これをRAM17に保存した後、ステップS10に進む。ここで、ステップS6は、本発明の第4のステップを構成している。
【0042】
ステップS10では、オリジナルデータにより形成されるフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)およびコピーデータにより形成されるフリーエッジ要素(FAM_A)’,(FBM_H)’から、オリジナル側とコピー側とで相反する方向に延びる法線ベクトル(AL_A),(BL_H),(AL_A)’,(BL_H)’を生成する(図9(c)参照)。
【0043】
各法線ベクトル(AL_A),(BL_H),(AL_A)’,(BL_H)’は、各フリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H),(FAM_A)’,(FBM_H)’における各重心点(AG_A),(BG_H),(AG_A)’,(BG_H)’の座標データを用いて所定の演算を行い、当該各重心点(AG_A),(BG_H),(AG_A)’,(BG_H)’から延びるように生成する。また、オリジナル側とコピー側とで、一方をプラス、他方をマイナスとすることにより、相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する。なお、法線ベクトルの生成においては、各フリーエッジ要素を形成する各節点の座標データを用いて所定の演算を行うことにより、各フリーエッジ要素の任意の部分から延びる法線ベクトルを生成するようにしても良い。ここで、ステップS10は、本発明の第5のステップを構成している。
【0044】
ステップS11では、ステップS10において生成した各法線ベクトル(AL_A),(BL_H),(AL_A)’,(BL_H)’が、それぞれ第1パネル(PA)側および第2パネル(PB)側の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する。つまり、図9(c)に示すように、法線ベクトル(AL_A)’がフリーエッジ要素(FBM_H)を貫通するとともに、法線ベクトル(BL_H)がフリーエッジ要素(FAM_A)’を貫通するか否かを判定する。
【0045】
ステップS11において、貫通し合うと判定(yes)した場合にはステップS12に進み、貫通し合わないと判定(no)した場合にはステップS13に進む。なお、貫通するか否かの判定は、法線ベクトルと要素(4つの節点により定義される平面)との交点が算出されるか否かにより判定する。ここで、ステップS11は、本発明の第6のステップを構成している。
【0046】
ステップS13では、各パネル(PA),(PB)が互いに近接する部材ではあるものの、例えば、図9(c)において各パネル(PA),(PB)が互いに図中左右方向に離れて図中上下方向に重ならないような場合(ステップS11におけるno判定)に、各パネル(PA),(PB)は互いに「非溶接部材」であるとして、続くステップS14においてディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合されません」などと外部表示する。その後、ステップS15において接合定義の解析処理を終了する。
【0047】
ステップS12では、最終的に各パネル(PA),(PB)は互いに接合される部材、つまり、各パネル(PA),(PB)は溶接部材であるとして、次のステップS16に進む。
【0048】
ステップS16では、コピーパネル(PA)’のフリーエッジ要素(FAM_A)’をパネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_H)の隣接要素に設定するとともに、パネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_H)をコピーパネル(PA)’のフリーエッジ要素(FAM_A)’の隣接要素に設定する。そして、図10の白抜矢印に示すように、隣接要素番号を更新してRAM17に保存する。そして、制御部18は、図10に示すように、隣接要素番号を更新するとともに、オリジナルデータとコピーデータとをそれぞれ解析対象部材I〜IIIとして、この接合定義の解析結果をHDD13に保存する。ここで、ステップS16は、本発明の第7のステップを構成している。
【0049】
続くステップS17では、ディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合されます」などと外部表示し、その後、ステップS18において接合定義の解析処理を終了する。このようにして、第1パネル(PA)と第2パネル(PB)との接合が定義され、各パネル(PA),(PB)を接続部材としてデータ上で関連付けることができる。
【0050】
次に、図11および図12に基づいて、図8に示す接合定義の解析処理を終えた後に実行される空気溜まりが発生するか否かの判定方法について説明する。図11は空気溜まりの発生を判定するための解析処理を示すフローチャートを、図12(a),(b),(c)は図11のフローチャートの処理内容を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0051】
図11に示すように、まず、HDD13等からRAM17に解析処理のソフトウェアが読み込まれて、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するプログラム(空気溜まり判定プログラム)が実行される(ステップS20)。
【0052】
次に、図8に示す接合定義のプログラムにおいて生成された接続部材としての解析対象部材I〜III(図10および図12参照)の形状データのうち、いずれか一つの解析対象部材(P_i)の形状データを、操作者のキーボード11の操作によりRAM17に呼び出す(ステップS21)。
【0053】
ステップS22では、RAM17に呼び出した解析対象部材(P_i)を形成する全要素を初期状態として空気に設定する。このように、初期状態として解析対象部材(P_i)を形成する全要素を空気に設定することにより、車体ボディ30が電着槽34に浸漬される前の解析対象部材(P_i)の周囲を、空気で満たした状態を模擬的に作り出している。
【0054】
ステップS23では、車体ボディ30の電着槽34への浸漬方向、つまり、解析対象部材(P_i)の重力方向(G)を、操作者のキーボード11の操作により入力する。そして、制御部18は、入力された重力方向(G)に基づいて解析対象部材(P_i)を形成する全要素における節点の座標データ(図7参照)を更新し、この重力方向(G)が考慮された座標データ(更新後データ)をRAM17に保存する。
【0055】
ステップS24では、解析対象部材(P_i)の端部または穴部に存在するフリーエッジ要素(FM_i)、つまり、図12(b)の解析対象部材II(接合定義された接続部材)の場合では、要素(BM_E)と要素(AM_D)’とがフリーエッジ要素(FM_i)に相当し、これらの要素(BM_E),(AM_D)’を初期境界要素に設定する。以下、解析対象部材IIに基づいて説明する。
【0056】
ステップS25では、ステップS24で設定した初期境界要素(BM_E),(AM_D)’の節点を共有するとともに、初期境界要素(BM_E),(AM_D)’の比較対象となる隣接要素(NM_i)、つまり、図12(b)に示す要素(BM_F)および要素(AM_C)’が隣接要素(NM_i)に相当し、これらの要素(BM_F),(AM_C)’を隣接要素に設定する。ここで、ステップS24およびステップS25は、本発明の第8のステップを構成している。
【0057】
ステップS26では、ステップS24で初期境界要素に設定した各要素(BM_E),(AM_D)’の重心点(BG_E),(AG_D)’を算出するとともに、ステップS25で隣接要素に設定した各要素(BM_F),(AM_C)’の重心点(BG_F),(AG_C)’を算出し、それぞれの重心点の高さをそれぞれのZ座標値に基づいて比較する。
【0058】
その後、ステップS27では、重心点(BG_E)は重心点(BG_F)よりも低いと判定して、隣接要素である要素(BM_F)の属性を空気のままとして属性の変更は行わない。一方、重心点(AG_D)’は重心点(AG_C)’よりも高いと判定して、隣接要素である要素(AM_C)’の属性を空気から液体(塗料)に変更する。ここで、ステップS27は、本発明の第9のステップを構成している。
【0059】
ステップS28では、初期境界要素(BM_E),(AM_D)’との比較が終了した隣接要素(BM_F),(AM_C)’を二次境界要素に設定し、その後、ステップS29において、新たに設定した二次境界要素(BM_F),(AM_C)’にそれぞれ隣接する隣接要素(NM_j)があるか否かの判定を行う。ここで、ステップS28およびステップS29は、本発明の第10のステップを構成している。
【0060】
ステップS29において、二次境界要素(BM_F),(AM_C)’に隣接する隣接要素(NM_j)が無いと判定(no)した場合、ステップS30に進み、ディスプレイ12を介して、例えば、判定結果をグラフィック表示する等して外部表示し、空気溜まり判定の解析処理を終了する。
【0061】
ステップS29において、二次境界要素(BM_F),(AM_C)’に隣接する隣接要素(NM_j)があると判定(yes)した場合、つまり、二次境界要素(BM_F),(AM_C)’の隣接要素(BM_G),(AM_B)’を見つけた場合、ステップS31に進む。
【0062】
ステップS31では、ステップS29で見つけた各隣接要素(BM_G),(AM_B)’の重心点(BG_G),(AG_B)’を算出して、ステップS28で二次境界要素に設定した各要素(BM_F),(AM_C)’の重心点(BG_F),(AG_C)’と、当該ステップS31で算出した各重心点(BG_G),(AG_B)’との高さをそれぞれのZ座標値に基づいて比較する。
【0063】
ステップS32では、重心点(BG_F)は重心点(BG_G)よりも低いと判定して、隣接要素である要素(BM_G)の属性を空気のままとして属性の変更は行わない。一方、重心点(AG_C)’は重心点(AG_B)’よりも高いと判定して、隣接要素である要素(AM_B)’の属性を空気から液体(塗料)に変更する。ここで、ステップS31およびステップS32は、本発明の第11のステップを構成している。
【0064】
続くステップS33では、二次境界要素(BM_F),(AM_C)’との比較が終了した隣接要素(BM_G),(AM_B)’を二次境界要素に設定し、その後、ステップS34において、新たに設定した二次境界要素(BM_G),(AM_B)’にそれぞれ隣接する隣接要素(NM_k)があるか否かの判定を行う。ここで、ステップS33およびステップS34は、本発明の第10のステップを構成している。
【0065】
ステップS34において、二次境界要素(BM_G),(AM_B)’に隣接する隣接要素(NM_k)が無いと判定(no)した場合、ステップS30に進み、ディスプレイ12を介して、例えば、判定結果をグラフィック表示する等して外部表示し、空気溜まり判定の解析処理を終了する。
【0066】
ステップS34において、二次境界要素(BM_G),(AM_B)’に隣接する隣接要素(NM_k)があると判定(yes)した場合、つまり、二次境界要素(BM_G),(AM_B)’の隣接要素(FBM_H),(FAM_B)’を見つけた場合、ステップS31に戻る。
【0067】
ステップS31では、ステップS34で見つけた各隣接要素(FBM_H),(FAM_B)’の重心点(FBG_H),(FAG_A)’を算出して、ステップS33で二次境界要素に設定した各要素(BM_G),(AM_B)’の重心点(BG_G),(AG_B)’と、当該ステップS31で算出した各重心点(FBG_H),(FAG_A)’との高さをそれぞれのZ座標値に基づいて比較する。
【0068】
このように、制御部18は、初期境界要素および二次境界要素と、隣接要素におけるそれぞれの重心点の高さを比較する比較処理、また、この比較結果に基づく要素の属性判定処理を繰り返して実行し、二次境界要素に隣接する隣接要素が無くなるまでこれらの解析処理を繰り返す。ここで、繰り返し行われるステップS31〜ステップS34における解析処理が、本発明の第12ステップを構成している。
【0069】
ここで、図12(b)に示す解析対象部材IIを構成する全要素の属性判定について説明すると、要素(BM_E)側(図中左方側)からの要素の属性は空気のままで変更されず、一方、要素(AM_D)’側(図中右方側)からの属性は空気から液体に変更される。したがって、要素(AM_D)’側からの属性の変更(空気から液体)に伴い、解析対象部材IIを構成する全要素の属性が液体(塗料)に変更され、よって、解析対象部材IIには空気溜まりが発生しないと判定されることになる。
【0070】
なお、図12(a)および図12(c)に示す解析対象部材I(第1パネル(PA)のオリジナル)と解析対象部材III(第2パネル(PB)のコピー)についても同じステップを経て同様に解析処理が行われ、解析対象部材Iおよび解析対象部材IIIについても、いずれも空気溜まりが発生しないと判定される。
【0071】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、第1パネル(PA)および第2パネル(PB)の接続関係を、各パネル(PA),(PB)のフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)の重心点(AG_A),(BG_H)の距離および法線ベクトル(AL_A)’,(BL_H)が貫通し合うフリーエッジ要素(FAM_A),(FBM_H)の隣接要素への設定から定義し、各パネル(PA),(PB)を接続して形成された接続部材について空気溜まりの発生をシミュレーションするので、接続されるべき個別の各パネル(PA),(PB)を一の接続部材として解析処理することができる。
【0072】
この場合、接続された各パネル(PA),(PB)のデータはオリジナルデータとコピーデータとを有するので、例えば、オリジナルデータおよびコピーデータのうち、一方側を表側に設定するとともに他方側を裏側に設定することができ、接続された各パネル(PA),(PB)の表側と裏側とでそれぞれ正確に空気溜まりの発生をシミュレーションすることができる。
【0073】
また、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、節点を共有する二次元の要素同士の重心点の高さを比較して空気または液体(塗料)と判定することにより、接続された各パネル(PA),(PB)に空気溜りが発生するか否かを迅速に判定することができる。
【0074】
さらに、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物として、車体ボディ30を形成するフロアパネル部材としたので、複雑な形状の車体ボディ30における空気溜まりの発生をシミュレーションすることができる。
【0075】
次に、本発明の第2実施の形態について、図13〜図20を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の部分については、同一の符号を付して説明する。
【0076】
第2実施の形態においては、第1パネル40aの端部を除く部分(例えば、第1パネル40aの中央部分)に第2パネル40bの端部が接合される場合を示しており、以下、図13および図14に示すモデルを用いて説明する。図13は第2実施の形態における各パネルの形状を簡素化して示す簡易モデル図を、図14は図13の破線円C部における要素を模式的に示す模式図をそれぞれ表している。
【0077】
図13に示すように、各パネル40a,40bは相互に所定角度傾斜するように接合されており、図2に示す電着槽34への浸漬時に、図中破線に示す気液境界面を形成、つまり、空気溜まりが発生するようになっている。ここで、気液境界面とは、図中上方側の空気と図中下方側の液体(塗料)との境界面のことである。
【0078】
図14の模式図に示すように、第1パネル40aおよび第2パネル40bを形成する各要素A〜Hの形状データ(更新前データ)は、図15に示すように表され、また、各要素A〜Hを形成する各節点a〜tの座標データ(更新前データ)は、図16に示すように表される。図15は第2実施の形態に係る各要素の更新前の形状データを示し、図16は第2実施の形態に係る各節点の座標データを示している。
【0079】
第2パネル40bを形成する要素Eは、節点k−節点pを結んで形成されるフリーエッジ40e(図14中破線)を有するとともに、その隣接要素は、節点lと節点qとを共有する要素Fとなっている。なお、第1パネル40aにおける第2パネル40bの要素Eの近傍には、上記のようなフリーエッジは存在しない。
【0080】
各パネル40a,40bは、流体解析装置10の制御部18が図17に示すフローチャートを実行することにより、各パネル40a,40bの溶接部分WPが定義される。以下、図17〜図19に基づいて、制御部18による各パネル40a,40bの接合の定義方法について説明する。図17は第2実施の形態に係る各パネルの接合を定義するための解析処理を示すフローチャートを、図18(a)〜(f)は図17のフローチャートの処理内容を説明する説明図を、図19は図15に対応する更新後データをそれぞれ表している。なお、図17および図18における説明においては、第1パネル40aおよび第2パネル40bをそれぞれ第1パネル(PA)および第2パネル(PB)と表して説明する。
【0081】
図17に示すように、まず、流体解析装置10に電源を投入して制御部18に電力が供給されると、制御部18の初期設定が行われるとともに、HDD13等からRAM17に解析処理のソフトウェアが読み込まれて、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するプログラム(接合定義プログラム)が実行される(ステップS40)。
【0082】
次に、操作者により接合を定義すべき第1パネル(PA)および第2パネル(PB)を、キーボード11を介して入力する(ステップS41)。
【0083】
続くステップS42においては、入力された第1パネル(PA)および第2パネル(PB)に対応する元データ、つまり、車体ボディ30の衝突変形シミュレーション等に用いられる形状データ(流用データ)をHDD13から読み出す。そして、この読み出した第1パネル(PA)および第2パネル(PB)の形状データを複数の二次元の要素に分割する。その後、この分割処理において生成された図15および図16に示すデータ(更新前データ)を、RAM17に保存して数値計算モデルを構築する。ここで、ステップS42は、本発明の第1のステップを構成している。
【0084】
ステップS43では、第2パネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_E)、つまり、図14に示すフリーエッジ40eを有する要素Eにおける重心点(BG_E)を算出する(図18(a)参照)。この重心点(BG_E)は、要素Eを形成する節点k,l,p,qの座標データを用いて所定の演算を行うことにより算出される。
【0085】
ステップS44では、第1パネル(PA)を形成する全要素(AM_A〜D)の重心点(AG_A〜D)を算出する(図18(a)参照)。各重心点(AG_A〜D)は、図14に示す要素A〜Dを形成する節点a〜jの座標データを用いて所定の演算を行うことにより算出される。ここで、ステップS43およびステップS44は、本発明の第2のステップを構成している。
【0086】
ステップS45では、ステップS43で算出したフリーエッジ要素(FBM_E)の重心点(BG_E)が、第1パネル(PA)の全要素(AM_A〜D)における重心点(AG_A〜D)のうち、どの要素の重心点に近いか否か(各パネル(PA),(PB)がそれぞれ所定距離内にあるか否か)を判定し、所定距離内にあると判定、つまり、各パネル(PA),(PB)は互いに近接する部材であると判定(yes)した場合にはステップS46に進む。ここでは、図18(a)に示すように、第1パネル(PA)の要素(AM_C)がフリーエッジ要素(FBM_E)に対して所定距離内にあると判定される。
【0087】
一方、各パネル(PA),(PB)は所定距離以上離れていると判定、つまり、各パネル(PA),(PB)は互いに離れた部材であると判定(no)した場合にはステップS47に進む。なお、重心点の距離は、各重心点の座標データを用いて所定の演算を行うことにより算出される。ここで、ステップS45は、本発明の第3のステップを構成している。
【0088】
ステップS47では、各パネル(PA),(PB)は離れた部材であるため、それぞれは互いに接合されない部材、つまり、各パネル(PA),(PB)は「非溶接部材」であるとして、続くステップS48においてディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合されません」などと外部表示する。その後、ステップS49において接合定義の解析処理を終了する。
【0089】
ステップS46では、各パネル(PA),(PB)のコピーパネル(PA)’,(PB)’を生成する(図18(b)参照)。各コピーパネル(PA)’,(PB)’は、各パネル(PA),(PB)を形成する形状データと同じ情報(コピーデータ)を有しており、図19に示されるように図15に示す更新前データ(オリジナルデータ)に基づいて生成される。ただし、各コピーパネル(PA)’,(PB)’の形状データに対応するメモリアドレス,要素番号,節点番号および隣接要素番号は、オリジナルデータのそれとは異ならせている。このように各コピーパネル(PA)’,(PB)’に対応する形状データを生成し、これをRAM17に保存した後、ステップS50に進む。ここで、ステップS46は、本発明の第4のステップを構成している。
【0090】
ステップS50では、オリジナルデータにより形成されるフリーエッジ要素(FBM_E)と第1パネル(PA)の要素(AM_C)、また、コピーデータにより形成されるフリーエッジ要素(FBM_E)’とコピーパネル(PA)’の要素(AM_C)’から、オリジナル側とコピー側とで相反する方向に延びる法線ベクトル(AL_C),(BL_E),(AL_C)’,(BL_E)’を生成する(図18(c)参照)。
【0091】
各法線ベクトル(AL_C),(BL_E),(AL_C)’,(BL_E)’は、各要素(AM_C),(FBM_E),(AM_C)’,(FBM_E)’における各重心点(AG_C),(BG_E),(AG_C)’,(BG_E)’の座標データを用いて所定の演算を行い、当該各重心点(AG_C),(BG_E),(AG_C)’,(BG_E)’から延びるように生成する。また、オリジナル側とコピー側とで、一方をプラス、他方をマイナスとすることにより、相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する。なお、法線ベクトルの生成においては、各フリーエッジ要素を形成する各節点の座標データを用いて所定の演算を行うことにより、各フリーエッジ要素の任意の部分から延びる法線ベクトルを生成するようにしても良い。ここで、ステップS50は、本発明の第5のステップを構成している。
【0092】
ステップS51では、ステップS50において生成した各法線ベクトル(AL_C),(BL_E),(AL_C)’,(BL_E)’が、それぞれ第1パネル(PA)側および第2パネル(PB)側の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する。つまり、図18(d)に示すように、法線ベクトル(AL_C)’がフリーエッジ要素(FBM_E)を貫通するとともに、法線ベクトル(BL_E)が要素(AM_C)’を貫通するか否かを判定する。
【0093】
ステップS51において、貫通し合うと判定(yes)した場合にはステップS52に進み、貫通し合わないと判定(no)した場合にはステップS53に進む。なお、貫通するか否かの判定は、法線ベクトルと要素(4つの節点により定義される平面)との交点が算出されるか否かにより判定する。ここで、ステップS51は、本発明の第6のステップを構成している。
【0094】
ステップS53では、各パネル(PA),(PB)が互いに近接する部材ではあるものの、第1パネル(PA)に対する第2パネル(PB)の接合が垂直である可能性があるとし、続くステップS54においてディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合の定義ができません」などと外部表示する。その後、ステップS55において接合定義の解析処理を終了する。ここで、実際に接合される各部材は、ステップS53のように判定されることは殆ど無く実用上問題とならない。
【0095】
ステップS52では、最終的に各パネル(PA),(PB)は互いに接合される部材、つまり、各パネル(PA),(PB)は溶接部材であるとして、次のステップS56に進む。
【0096】
ステップS56では、コピーパネル(PA)’の要素(AM_C)’をパネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_E)の隣接要素に設定するとともに、パネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_E)をコピーパネル(PA)’の要素(FAM_C)’の隣接要素に設定する。そして、図19の丸符号1に示すように、隣接要素番号を更新してRAM17に保存する。ここで、ステップS56は、本発明の第7のステップを構成している。
【0097】
ステップS57では、パネル(PB)のフリーエッジ要素(FBM_E)における隣接要素(BM_F)を検出し、続くステップS58において隣接要素(BM_F)の法線ベクトル(BL_F)が貫通するコピーパネル(PA)’の要素(AM_D)’を検出する(図18(d)参照)。なお、ステップS58において生成する法線ベクトルについても、隣接要素(BM_F)を形成する各節点の座標データを用いて所定の演算を行うことにより、隣接要素(BM_F)の任意の部分から延びる法線ベクトルを生成するようにしても良い。
【0098】
ステップS59では、コピーパネル(PA)’の要素(AM_C)’における隣接要素のうち、ステップS57で検出した隣接要素(AM_D)’が無い側の隣接要素、つまり、隣接要素(AM_B)’を図19の丸符号2に示すように形状データから削除する(図18(e)参照)。このように、コピーパネル(PA)’を要素(AM_C)’側と要素(AM_B)’側とで分離することにより、図20(b)に示すような解析対象部材IIを生成する(ステップS60)。
【0099】
ステップS61では、コピーパネル(PA)’における要素(AM_C)’のコピーとしてコピー要素(AM_C)”を生成し、RAM17に保存する。これにより、図19の丸符号3に示すように形状データが更新される。
【0100】
ステップS62では、ステップS61で生成したコピー要素(AM_C)”をコピーパネル(PB)’のフリーエッジ要素(FBM_E)’の隣接要素に設定するとともに、パネル(PB)’のフリーエッジ要素(FBM_E)’をコピー要素(AM_C)”の隣接要素に設定する。これにより、図19の丸符号4に示すように形状データが更新される。
【0101】
ステップS63では、コピー要素(AM_C)”の隣接要素として、コピーパネル(PA)’の要素(AM_B)’を指定することにより、図19の丸符号5に示すように形状データを更新し、これにより、ステップS59において分離されたコピーパネル(PA)’の要素(AM_B)’側とコピーパネル(PB)'とを接続し、図20(c)に示すような解析対象部材IIIを生成する(ステップS64)。
【0102】
ステップS65では、図19に示すように、オリジナルデータとコピーデータとをそれぞれ解析対象部材I〜IIIとして、この接合定義の解析結果をHDD13に保存するとともに、ディスプレイ12を介して、例えば、「入力された部材は接合されます」などと外部表示する。その後、ステップS66において接合定義の解析処理を終了する。このようにして、第1パネル(PA)と第2パネル(PB)との接合が定義され、各パネル(PA),(PB)を接続部材としてデータ上で関連付けることができる。
【0103】
次に、図20に基づいて、第2実施の形態に係る解析対象部材I〜IIIを対象に実行される空気溜まりが発生するか否かの判定方法について説明する。なお、第2実施の形態においても、第1実施の形態に係る判定方法(図11参照)を実行するようになっている。図20(a),(b),(c)は空気溜まり判定プログラムの処理内容を説明する説明図を表している。
【0104】
図20(a)および(c)に示す解析対象部材IおよびIIIについては、第1実施の形態における各解析対象部材I〜IIIの判定結果と同じ判定がなされ、解析対象部材IおよびIIIを形成する全要素が液体(塗料)と判定される。したがって、全要素の属性が空気と判定、つまり、空気溜まりが発生すると判定される解析対象部材IIについて説明する。
【0105】
制御部18は、図20(b)に示す解析対象部材IIを形成するフリーエッジ要素となる要素(AM_D)’,(BM_H)を初期境界要素として、図11のフローチャートに示す解析処理を実行する。すると、第1実施の形態と同様に要素の属性判定が実行され、要素(BM_H)側からの要素の属性が次々と空気に設定されるとともに、要素(AM_D)’側からの要素の属性についても次々と空気に設定される。このように、解析対象部材IIを対象に図11のフローチャートを実行することにより、その全要素の属性が空気と判定され、したがって、図20(b)に示す解析対象部材IIには、空気溜まりが発生すると判定されることになる。
【0106】
以上のように構成した第2実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0107】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記各実施の形態においては、被浸漬処理物として乗用車等の車体ボディ30を形成する第1パネル40aおよび第2パネル40bよりなるフロアパネル部材40を対象としたものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、鉄道車両の車体フレームや建設機械のキャビン等を被浸漬処理物の対象としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係るシミュレーション方法を実行する流体解析装置のブロック図である。
【図2】車体ボディの塗装ラインを説明する説明図である。
【図3】車体ボディにおけるフロアパネル部材の数値計算モデルを説明する説明図である。
【図4】第1実施の形態における各パネルの形状を簡素化して示す簡易モデル図である。
【図5】図4の破線円B部における要素を模式的に示す模式図である。
【図6】各要素の更新前の形状データである。
【図7】各節点の座標データである。
【図8】各パネルの接合を定義するための解析処理を示すフローチャートである。
【図9】(a),(b),(c)は、図8のフローチャートの処理内容を説明する説明図である。
【図10】図6に対応する更新後データである。
【図11】空気溜まりの発生を判定するための解析処理を示すフローチャートである。
【図12】(a),(b),(c)は、図11のフローチャートの処理内容を説明する説明図である。
【図13】第2実施の形態における各パネルの形状を簡素化して示す簡易モデル図である。
【図14】図13の破線円C部における要素を模式的に示す模式図である。
【図15】第2実施の形態に係る各要素の更新前の形状データである。
【図16】第2実施の形態に係る各節点の座標データである。
【図17】第2実施の形態に係る各パネルの接合を定義するための解析処理を示すフローチャートである。
【図18】(a)〜(f)は、図17のフローチャートの処理内容を説明する説明図である。
【図19】図15に対応する更新後データである。
【図20】(a),(b),(c)は、空気溜まり判定プログラムの処理内容を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0109】
10 流体解析装置(コンピュータ)
18 制御部
30 車体ボディ(被浸漬処理物)
34 電着槽(塗料槽)
35 電着溶液(塗料)
40 フロアパネル部材(被浸漬処理物)
40a 第1パネル(一の部材)
40b 第2パネル(他の部材)
41 要素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、
前記被浸漬処理物を形成する一の部材および他の部材の形状データを、複数の二次元の要素に分割する第1のステップと、
前記各部材を形成する要素の重心点を算出する第2のステップと、
前記各部材の要素同士の重心点の距離を求め、前記各部材が互いに所定距離内にあるか否かを判定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて所定距離内にあると判定したのち、前記各部材と同じ情報を有する前記各部材のコピーデータを生成する第4のステップと、
前記各部材のオリジナルデータとコピーデータとを形成する要素から、それぞれ相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する第5のステップと、
前記法線ベクトルが、前記各部材の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する第6のステップと、
前記第6のステップにおいて貫通し合うと判定したのち、貫通し合う法線ベクトルを有する各要素を互いに隣接要素とし、前記各部材を接続する第7のステップと、
前記第7のステップで接続された接続部材を形成する要素のうち、端部または穴部に位置する要素を初期境界要素に設定するとともに、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第8のステップと、
前記第8のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記初期境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第9のステップと、
前記第9のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定するとともに、前記二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第10のステップと、
前記第10のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記二次境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第11のステップと、
前記二次境界要素に隣接する隣接要素があるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があると判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がなくなるまで前記第10のステップおよび前記第11のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がないと判定した場合には解析を終了させる第12のステップとを有することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項2】
請求項1記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第9のステップおよび前記第11のステップでは、前記初期境界要素および前記二次境界要素と、前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項4】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
前記被浸漬処理物を形成する一の部材および他の部材の形状データを、複数の二次元の要素に分割する第1のステップと、
前記各部材を形成する要素の重心点を算出する第2のステップと、
前記各部材の要素同士の重心点の距離を求め、前記各部材が互いに所定距離内にあるか否かを判定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて所定距離内にあると判定したのち、前記各部材と同じ情報を有する前記各部材のコピーデータを生成する第4のステップと、
前記各部材のオリジナルデータとコピーデータとを形成する要素から、それぞれ相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する第5のステップと、
前記法線ベクトルが、前記各部材の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する第6のステップと、
前記第6のステップにおいて貫通し合うと判定したのち、貫通し合う法線ベクトルを有する各要素を互いに隣接要素とし、前記各部材を接続する第7のステップと、
前記第7のステップで接続された接続部材を形成する要素のうち、端部または穴部に位置する要素を初期境界要素に設定するとともに、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第8のステップと、
前記第8のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記初期境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第9のステップと、
前記第9のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定するとともに、前記二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第10のステップと、
前記第10のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記二次境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第11のステップと、
前記二次境界要素に隣接する隣接要素があるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があると判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がなくなるまで前記第10のステップおよび前記第11のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がないと判定した場合には解析を終了させる第12のステップとを有することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項5】
請求項4記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第9のステップおよび前記第11のステップでは、前記初期境界要素および前記二次境界要素と、前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項6】
請求項4または5記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項1】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、
前記被浸漬処理物を形成する一の部材および他の部材の形状データを、複数の二次元の要素に分割する第1のステップと、
前記各部材を形成する要素の重心点を算出する第2のステップと、
前記各部材の要素同士の重心点の距離を求め、前記各部材が互いに所定距離内にあるか否かを判定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて所定距離内にあると判定したのち、前記各部材と同じ情報を有する前記各部材のコピーデータを生成する第4のステップと、
前記各部材のオリジナルデータとコピーデータとを形成する要素から、それぞれ相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する第5のステップと、
前記法線ベクトルが、前記各部材の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する第6のステップと、
前記第6のステップにおいて貫通し合うと判定したのち、貫通し合う法線ベクトルを有する各要素を互いに隣接要素とし、前記各部材を接続する第7のステップと、
前記第7のステップで接続された接続部材を形成する要素のうち、端部または穴部に位置する要素を初期境界要素に設定するとともに、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第8のステップと、
前記第8のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記初期境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第9のステップと、
前記第9のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定するとともに、前記二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第10のステップと、
前記第10のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記二次境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第11のステップと、
前記二次境界要素に隣接する隣接要素があるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があると判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がなくなるまで前記第10のステップおよび前記第11のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がないと判定した場合には解析を終了させる第12のステップとを有することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項2】
請求項1記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第9のステップおよび前記第11のステップでは、前記初期境界要素および前記二次境界要素と、前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項4】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
前記被浸漬処理物を形成する一の部材および他の部材の形状データを、複数の二次元の要素に分割する第1のステップと、
前記各部材を形成する要素の重心点を算出する第2のステップと、
前記各部材の要素同士の重心点の距離を求め、前記各部材が互いに所定距離内にあるか否かを判定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて所定距離内にあると判定したのち、前記各部材と同じ情報を有する前記各部材のコピーデータを生成する第4のステップと、
前記各部材のオリジナルデータとコピーデータとを形成する要素から、それぞれ相反する方向に延びる法線ベクトルを生成する第5のステップと、
前記法線ベクトルが、前記各部材の要素同士で互いに貫通し合うか否かを判定する第6のステップと、
前記第6のステップにおいて貫通し合うと判定したのち、貫通し合う法線ベクトルを有する各要素を互いに隣接要素とし、前記各部材を接続する第7のステップと、
前記第7のステップで接続された接続部材を形成する要素のうち、端部または穴部に位置する要素を初期境界要素に設定するとともに、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第8のステップと、
前記第8のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記初期境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第9のステップと、
前記第9のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定するとともに、前記二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第10のステップと、
前記第10のステップにおいて設定された前記隣接要素の属性を、前記二次境界要素を用いて空気であるか塗料であるかを解析する第11のステップと、
前記二次境界要素に隣接する隣接要素があるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素があると判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がなくなるまで前記第10のステップおよび前記第11のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素に隣接する隣接要素がないと判定した場合には解析を終了させる第12のステップとを有することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項5】
請求項4記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第9のステップおよび前記第11のステップでは、前記初期境界要素および前記二次境界要素と、前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さより低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項6】
請求項4または5記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−197865(P2008−197865A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31570(P2007−31570)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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