説明

被混練脱泡材料が収容される容器、及び、混練脱泡方法

【課題】自転公転式の混練脱泡装置を利用して、精度の高い混練脱泡処理を効率よく実現することを可能にする、被混練脱泡材料が収容される容器、及び、混練脱泡方法を提供する。
【解決手段】容器100は、容器ホルダ30を自転及び公転させることが可能に構成された混練脱泡装置1の容器ホルダに保持されて、容器ホルダの自転及び公転に伴って自転及び公転する、内部に被混練脱泡材料Mが収容される容器であって、容器ホルダ30に保持されて自転及び公転する、底面112及び側面114を含む容器本体110と、容器本体の内部空間140の所定の領域(第1の領域142)を囲繞するように構成された、容器本体の側面114と対向する囲繞壁部120とを含む。囲繞壁部120の少なくとも一部はろ過膜によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被混練脱泡材料が収容される容器、及び、混練脱泡方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物質から不純物を取り除く技術として、ろ過技術が知られている。
【0003】
また、物質を混練脱泡する装置として、物質が収容された容器を自転及び公転させる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、容器を自転及び公転させる際に容器内の物質に作用する遠心力を利用して、物質を混練する(攪拌する、混合する、分散させる)とともに、物質に内在する気泡を放出させることができる。
【特許文献1】 特開平10−43568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の(自転公転式の)混練脱泡装置を利用して、精度の高い混練脱泡処理を効率よく実現することを可能にする、被混練脱泡材料が収容される容器、及び、混練脱泡方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る容器は、
容器ホルダを自転及び公転させることが可能に構成された混練脱泡装置の前記容器ホルダに保持されて、前記容器ホルダの自転及び公転に伴って自転及び公転する、内部に被混練脱泡材料が収容される容器であって、
前記容器ホルダに保持されて自転及び公転する、底面及び側面を含む容器本体と、
前記容器本体の内部空間の所定の領域を囲繞するように構成された、前記容器本体の前記側面と対向する囲繞壁部と、
を含み、
前記囲繞壁部の少なくとも一部は、ろ過膜によって構成されている。
【0006】
本発明に係る容器では、被混練脱泡材料が、囲繞壁部によって囲繞された囲繞空間に収容される。そして、本発明に係る容器は、囲繞空間に被混練脱泡材料が収容された状態で、混練脱泡装置によって自転及び/又は公転させられる。これにより、囲繞空間に収容された被混練脱泡材料が、ろ過膜を透過して(ろ過膜によってろ過されて)、囲繞空間の外側に移動する。
【0007】
本発明に係る容器を利用すると、容器を自転及び/又は公転させることによって、被混練脱泡材料に、ろ過膜に向かう力を作用させることができる。詳しくは、収容容器が回転(自転、公転、自転及び公転)すると、囲繞壁部によって囲繞された空間に収容された被混練脱泡材料は、遠心力の影響を受けて、囲繞壁部の内壁に押し付けられる。そして、囲繞壁部の少なくとも一部がろ過膜として構成されていることから、被混練脱泡材料がろ過膜を透過しやすくなり、被混練脱泡材料のろ過処理を効率よく行うことができる。
【0008】
また、本発明では、囲繞壁部が、容器本体の側面と対向するように設定される。そのため、囲繞壁部の表面積を大きくすることが可能になり、ろ過膜の表面積を大きくすることが可能になる。そして、ろ過膜の表面積が大きくなると、ろ過膜の目詰まりが起こりにくくなるため、ろ過処理を効率よく確実に行うことができる。
【0009】
また、本発明では、囲繞壁部(ろ過膜)を透過した材料を、さらに混練脱泡することができる。そのため、気泡や不純物の含有量が少なく、かつ、組成物が均一に分散された材料を製造することが可能になる。
【0010】
なお、混練脱泡装置は、容器ホルダの公転軸と自転軸とが平行になるように構成されていてもよい。この場合、公転による遠心力を、囲繞壁部(ろ過膜)と直交する方向(ろ過膜の厚み方向)に作用させることができる。そのため、さらに効率よく、ろ過処理を行うことができる。
【0011】
(2)この容器において、
前記囲繞壁部の下端部は、前記容器本体の前記底面に固定されていてもよい。
【0012】
(3)この容器において、
前記囲繞壁部の下端部は、前記容器本体の前記底面から突出する凸部に固定されていてもよい。
【0013】
これによると、ろ過されて、囲繞壁部(ろ過膜)を透過した材料が、ろ過膜に接触することを防止することが可能になる。そのため、被混練脱泡材料のろ過処理を、効率よく確実に行うことができる。
【0014】
(4)この容器において、
前記容器本体の前記内部空間を区画する、前記底面と対向する上面をさらに含み、
前記囲繞壁部の上端部は、前記上面に固定されていてもよい。
【0015】
(5)この容器において、
前記囲繞壁部は円筒形となっていてもよい。
【0016】
(6)この容器において、
前記囲繞壁部は、すべて、ろ過膜によって構成されていてもよい。
【0017】
これによると、ろ過膜の表面積を大きくすることができるため、効率よく確実にろ過処理を行うことができる。
【0018】
(7)本発明に係る被混練脱泡材料の混練脱泡方法は、
被混練脱泡材料が収容された容器を自転及び公転させることが可能に構成された混練脱泡装置を利用して、前記容器を自転及び/又は公転させる工程を含み、
前記容器は、
底面及び側面を有する容器本体と、
前記容器本体の内部空間の所定の領域を囲繞するように構成された、前記容器本体の前記側面と対向する、少なくとも一部がろ過膜によって構成された囲繞壁部と、
を有し、
前記容器を自転及び/又は公転させる工程で、前記囲繞壁部で囲繞された囲繞空間に収容された被混練脱泡材料の少なくとも一部を、前記ろ過膜を通して前記囲繞空間の外側に移動させる。
【0019】
ここで、「容器ホルダを自転及び/又は公転させる工程」とは、容器ホルダを自転のみさせる工程、公転のみさせる工程、自転させながら公転させる工程を含むものとする。
【0020】
本発明によると、容器を自転及び/又は公転させることによって、被混練脱泡材料に、ろ過膜に向かう力を作用させることができる。そのため、被混練脱泡材料がろ過膜を透過しやすくなり、被混練脱泡材料のろ過処理を効率よく行うことができる。
【0021】
また、本発明では、囲繞壁部が、容器本体の側面と対向するように設定される。そのため、囲繞壁部の表面積を大きくすることが可能になり、ろ過膜の表面積を大きくすることが可能になる。そして、ろ過膜の表面積が大きくなると、ろ過膜の目詰まりが起こりにくくなるため、ろ過処理を効率よく確実に行うことができる。
【0022】
また、本発明では、囲繞壁部(ろ過膜)を透過した材料を、さらに混練脱泡することができる。そのため、気泡や不純物の含有量が少なく、かつ、組成物が均一に分散された材料を製造することが可能になる。
【0023】
なお、混練脱泡装置は、容器ホルダの公転軸と自転軸とが平行になるように構成されていてもよい。これによると、公転による遠心力を、囲繞壁部(ろ過膜)と直交する方向(ろ過膜の厚み方向)に作用させることができる。そのため、ろ過処理を、さらに効率よく行うことができる。
【0024】
(8)この混練脱泡方法において、
前記容器を自転及び/又は公転させる工程では、
前記ろ過膜を通って前記囲繞空間の外側に移動した材料が、前記囲繞壁部に接触しないように、前記容器の自転角速度及び/又は公転角速度を調整してもよい。
【0025】
これによると、ろ過された材料が、ろ過膜を介して囲繞空間に逆流することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態で説明するすべての構成が本発明にとって必須であるとは限らない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含むものとする。
【0027】
(1)混練脱泡装置1
はじめに、本発明を適用した実施の形態に適用可能な混練脱泡装置1について説明する。ここで、混練脱泡装置1は、被混練脱泡材料Mが収容された容器100を、自転及び公転させることが可能に構成された装置である。なお、以下に説明する混練脱泡装置1は、本実施の形態に適用可能な装置の一例であり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0028】
混練脱泡装置1は、図1に示すように、公転軸10を含む。公転軸10は、仮想の直線を中心に回転するように構成されている。公転軸10は、図1に示すように、鉛直に延びる仮想の直線(公転軸線L1)を軸として回転するように構成されていてもよい。ただし、公転軸10は、水平に延びる直線を軸として回転するように構成されていてもよい。
【0029】
混練脱泡装置1は、図1に示すように、回転体20を含む。回転体20は、公転軸10の回転に伴って回転するように構成されている。回転体20は、公転軸線L1を中心に(軸線として)回転するように構成されていてもよい。回転体20は、公転軸10に固定されていてもよい。これにより、回転体20を、公転軸10の回転に伴って回転させることが可能になる。
【0030】
混練脱泡装置1は、図1に示すように、容器ホルダ30を有する。容器ホルダ30は、容器100を保持する役割を果たす。容器ホルダ30は、容器100を保持するための内部空間を含んで構成されていてもよい。以下、容器ホルダ30について詳述する。
【0031】
容器ホルダ30は、回転体20の所定の位置に、自転可能に取り付けられている。容器ホルダ30は、回転体20の所定の位置を通る仮想の直線(自転軸線L2)を軸として自転するように構成されている。容器ホルダ30は、公転軸線L1と平行に延びる仮想の直線を軸として自転するように構成されていてもよい。すなわち、公転軸線L1と自転軸線L2とは、平行に延びる直線であってもよい。なお、公転軸線L1と自転軸線L2とが平行になるように混練脱泡装置を構成する場合、公転軸線L1と自転軸線L2とが所定の角度で交差するように混練脱泡装置を構成する場合に比べて、回転体20(容器ホルダ30及び自転軸32)の公転半径を小さくすることができる。そのため、混練脱泡装置の外形を小さくすることが可能になる。
【0032】
容器ホルダ30は、例えば図1に示すように、回転体20に取り付けられた軸受け34と同軸に回転する自転軸32に固定されていてもよい。これにより、容器ホルダ30を、回転体20に対して自転可能とすることができる。
【0033】
また、容器ホルダ30は、回転体20における、公転軸線L1から所定の間隔をあけた位置に取り付けられていてもよい。これにより、容器ホルダ30を、回転体20の回転に伴って、公転軸線L1を中心に公転させることが可能になる。
【0034】
混練脱泡装置1は、図1に示すように、トルク付与機構50を含む。トルク付与機構50は、容器ホルダ30(容器100)に回転トルクを付与する役割を果たす。トルク付与機構50は、容器ホルダ30に自転トルクを付与することが可能に構成されていてもよい。トルク付与機構50は、容器ホルダ30に公転トルクを付与することが可能に構成されていてもよい。トルク付与機構50は、また、容器ホルダ30に自転トルク及び公転トルクを付与することが可能に構成されていてもよい。すなわち、トルク付与機構50(混練脱泡装置1)は、容器ホルダ30を自転のみさせることが可能に構成されていてもよく、公転のみさせることが可能に構成されていてもよく、自転させながら公転させることが可能に構成されていてもよい。以下、トルク付与機構50の一例について説明する。
【0035】
トルク付与機構50は、容器ホルダ30に公転トルクを付与する公転トルク付与機構として、公転軸10を回転駆動させるモータ51を含む。先に説明したように、混練脱泡装置1では、回転体20は公転軸10の回転に伴って回転するように構成されており、容器ホルダ30は回転体20の回転に伴って公転するように構成されている。すなわち、公転軸10を回転させることによって、容器ホルダ30を公転させることができる。そのため、モータ51(モータ51、及び、公転軸10、回転体20)によって、容器ホルダ30に公転トルクを付与することができる。
【0036】
また、トルク付与機構50は、容器ホルダ30に、自転トルクを付与する自転トルク付与機構52を含む。自転トルク付与機構52は、容器ホルダ30(自転軸32)に固定された自転プーリー54と、回転体20と同心軸に回転可能な自転力付与プーリー56と、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56にかけまわされたトルク伝達ベルト58と、を含んでいてもよい。この構成では、トルク伝達ベルト58によって、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56の回転角速度が関連付けられる。そのため、自転プーリー54と自転力付与プーリー56とを、遊星機構と同様に挙動させることができ、回転体20を回転(自転プーリー54を公転)させることによって、自転プーリー54に自転トルクを付与することが可能になる。例えば自転力付与プーリー56が回転しないように設定された状態で、回転体20を反時計回りに回転させると(自転プーリー54を反時計回りに公転させると)、自転プーリー54は、自転軸線L2を中心に時計周りに自転する。そして、自転プーリー54は容器ホルダ30(自転軸32)に固定されていることから、自転トルク付与機構52によって、容器ホルダ30に自転トルクを付与することが可能になる。
【0037】
なお、自転トルク付与機構52は、容器ホルダ30の自転角速度を所望の値に設定することが可能に構成されていてもよい。自転トルク付与機構52は、自転力付与プーリー56の回転角速度を調整することにより、容器ホルダ30の自転角速度を所望の値に設定するように構成されていてもよい。自転力付与プーリー56の回転角速度は、例えば、モータ51の駆動力を自転力付与プーリー56に伝達する機構や、モータ51とは別に用意された自転力付与モータの駆動力を利用する機構など、すでに公知となっているいずれかの機構によって調整してもよい。
【0038】
なお、混練脱泡装置1が、公転軸線L1と自転軸線L2とが平行になるように構成されている場合、自転トルク付与機構52のトルク伝達のロスを極めて小さくすることができる。そのため、混練脱泡装置を、効率よく動作させることが可能になる。
【0039】
混練脱泡装置1は、容器ホルダ30の回転角速度(自転角速度及び公転角速度)を制御する制御装置を含んでいてもよい。制御装置は、トルク付与機構50の動作を調整することによって、容器ホルダ30の回転角速度を制御するように構成されていてもよい。具体的には、制御装置は、モータ51の駆動(回転速度)を調整することにより、容器ホルダ30の公転角速度を制御するように構成されていてもよい。また、制御装置は、モータ51の駆動力を自転力付与プーリー56に伝達する駆動力伝達機構(ギア比など)を調整することにより、あるいは、自転力付与モータの駆動を調整することにより、容器ホルダ30の自転角速度を制御するように構成されていてもよい。
【0040】
なお、制御装置は、経過時間と関連付けられて予め定められた回転角速度で、容器ホルダ30を自転及び/又は公転させることが可能に構成されていてもよい。言い換えると、混練脱泡装置1は、制御装置によって、時間の経過に伴って回転角速度(自転角速度及び公転角速度)を変化させることができるように構成されていてもよい。これにより、容器ホルダ30を、所望の回転角速度で自転及び/又は公転させることが可能になるため、被混練脱泡材料Mに最も適した手順で、被混練脱泡材料Mを混練脱泡することが可能になる。
【0041】
制御装置(混練脱泡装置1)は、容器ホルダ30を自転及び/又は公転させる工程の最後に、容器ホルダ30を公転のみさせるように構成されていてもよい。なお、「公転のみさせる」とは、「容器ホルダ30が回転体20に対して自転しない状態で、容器ホルダ30を公転させる」こと、及び、「容器ホルダ30を公転させながら、公転角速度に対して極めて小さい自転角速度(例えば1/40程度)で自転させる」ことを含むものとする。
【0042】
混練脱泡装置1は、バランス錘60を含んでいてもよい。バランス錘60は、回転体20に取り付けられて、回転体20の回転に伴って公転するように構成されている。バランス錘60によって、回転体20を、安定して回転させることができ、混練脱泡装置1の動作を安定させることができる。なお、バランス錘60は、公転軸線L1からの距離を調整可能に構成されていてもよい。
【0043】
混練脱泡装置1は、さらに、公転軸10、回転体20、容器ホルダ30、トルク付与機構50を支持するための支持体や、これらを収納する筐体をさらに含んでいてもよい。
【0044】
(2)容器100
次に、図1〜図2(B)を参照して、本発明を適用した実施の形態に係る容器100について説明する。容器100は、内部に被混練脱泡材料Mが収容される容器である。なお、本実施の形態に適用可能な被混練脱泡材料Mは、特に限定されるものではない。被混練脱泡材料Mは、複数の組成物によって構成された材料であってもよい。あるいは、被混練脱泡材料Mは、単一の組成物によって構成された材料であってもよい。また、被混練脱泡材料Mは、固体(粉体・粒体)や液体(ペースト状の液体を含む)、あるいは、液体と固体(粉体)との混合材料であってもよい。また、容器100は、混練脱泡装置1の容器ホルダ30に保持されて、容器ホルダ30の自転及び公転に伴って自転及び公転することが可能に構成されている。
【0045】
容器100は、図1及び図2(A)に示すように、容器本体110を含む。容器本体110は、容器ホルダ30に保持されて、容器ホルダ30の自転及び公転に伴って自転及び公転する。容器本体110は、底面112及び側面114を含む。なお、底面112の外形は特に限定されるものではない。底面112は、例えば円形となっていてもよい。すなわち、容器本体110は、円筒形(円柱形)となっていてもよい。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、底面112の外形は矩形となっていてもよい。容器本体110(容器100)は、底面112が自転軸線L2と直交するように、容器ホルダ30に保持されるように構成されていてもよい。容器本体110は、自転軸線L2が底面112の所定の点(例えば、底面112が円形の場合その中心、底面112が矩形の場合は対角線の交点)を通るように、容器ホルダ30に保持されるように構成されていてもよい。
【0046】
容器本体110は、上蓋116が着脱可能に構成されていてもよい(図1及び図2(A)参照)。上蓋116によって、容器100から被混練脱泡材料Mがこぼれ出すことを防止することができる。なお、上蓋116における底面112と対向する面を、上面117と称してもよい。上蓋116には、図2(A)に示すように、開口118が形成されていてもよい。開口118は、後述する第1の空間142に連通するように構成されていてもよい。これにより、第1の空間142内に被混練脱泡材料Mを収容することが可能になる。なお、上蓋116の開口118には栓119をはめ込むことが可能に構成されていてもよい。栓119により、被混練脱泡材料Mが、開口118を通してこぼれ出すことを防止することができる。
【0047】
容器100は、図1〜図2(B)に示すように、囲繞壁部120を含む。囲繞壁部120は、容器本体110の内部空間140の所定の領域を囲繞するように構成されている。なお、内部空間140のうち、囲繞壁部120で囲繞される空間(囲繞空間)を、第1の空間142と称してもよい。そして、内部空間140のうち、囲繞壁部120と容器本体110の内壁面によって区画される空間(第1の空間142の外側の空間)を、第2の空間144と称してもよい。すなわち、囲繞壁部120は、内部空間140を、第1及び第2の空間142,144に分割する部材であってもよい。囲繞壁部120は、図1〜図2(B)に示すように、容器本体110の側面114(側面114の内壁面)と対向するように構成されている。囲繞壁部120は、側面114と同心の円筒形状となっていてもよい。
【0048】
本実施の形態では、囲繞壁部120の下端部は、底面112に固定されている。また、囲繞壁部120の上端部は、上面117に固定されている。このとき、囲繞壁部120の上端部は、上面117における開口118の端部に固定されていてもよい。
【0049】
また、囲繞壁部120は、容器本体110に対して着脱可能に構成されていてもよい。これにより、混練脱泡処理後の材料を容易に取り出すことが可能になる。このとき、囲繞壁部120を、アダプタとみなしてもよい。
【0050】
本実施の形態では、囲繞壁部120の少なくとも一部がろ過膜によって構成されている。囲繞壁部120は、すべて、ろ過膜によって構成されていてもよい。なお、本実施の形態に適用可能なろ過膜は、特に限定されるものではない。ろ過膜は、被混練脱泡材料Mの性質(比重や粘度、組成物の粒径)にあわせて、適宜選択してもよい。
【0051】
(3)混練脱泡方法
次に、混練脱泡装置1及び容器100を利用して、被混練脱泡材料Mを混練脱泡する方法について説明する。図3は、本実施の形態に係る被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法について説明するためのフローチャート図である。
【0052】
本実施の形態に係る被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法は、混練脱泡装置1、及び、被混練脱泡材料Mが収容された容器100を用意することを含む(ステップS10)。なお、被混練脱泡材料Mは、容器100の第1の空間142に収容されている(図2(A)参照)。
【0053】
本実施の形態に係る被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法は、混練脱泡装置1(容器ホルダ30)に容器100を保持させることを含む(ステップS12)。
【0054】
そして、本実施の形態に係る被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法は、混練脱泡装置1を利用して、容器100を自転及び/又は公転させることを含む(ステップS14)。本実施の形態に係る被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法は、容器100を自転のみさせる工程を含んでいてもよい。また、被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法は、容器100を公転のみさせる工程を含んでいてもよい。また、被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法は、容器100を自転させながら公転させる工程を含んでいてもよい。
【0055】
なお、本実施の形態では、容器100を自転及び/又は公転させる工程で、被混練脱泡材料Mの少なくとも一部を、囲繞壁部120のろ過膜を通して、第1の空間142の外側(第2の空間144)に移動させる(図1参照)。本実施の形態では、第1の空間142に収容された被混練脱泡材料Mの一部のみを、第2の空間144に移動させてもよい。ただし、本実施の形態では、第1の空間142に収容された被混練脱泡材料Mを、すべて、第2の空間144に移動させてもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、囲繞壁部120のろ過膜を透過した材料が、囲繞壁部120に接触しないように、容器100の自転角速度及び/又は公転角速度を調整してもよい(図1参照)。このとき、容器100の自転角速度及び/又は公転角速度は、材料の粘度や量に基づいて設定してもよい。
【0057】
(4)作用効果
次に、本実施の形態に係る混練脱泡装置1及び容器100が奏する作用効果について説明する。
【0058】
本実施の形態では、容器100の第1の空間142に被混練脱泡材料Mを収容し、容器100を自転及び/又は公転させることにより、被混練脱泡材料Mに、囲繞壁部120(囲繞壁部120のろ過膜)へ向かう力を作用させることができる。言い換えると、容器100を自転及び/又は公転させると、被混練脱泡材料Mには遠心力が作用するため、被混練脱泡材料Mを囲繞壁部120(囲繞壁部120のろ過膜)に押し付けることができる。そのため、被混練脱泡材料Mを、効率よくろ過することができる。そして、被混練脱泡材料Mをろ過することで、被混練脱泡材料Mから、被混練脱泡材料Mに含まれる不純物や、被混練脱泡材料Mに内在する気泡を取り除くことができる。また、ろ過されて第2の空間144に移動した被混練脱泡材料Mは、遠心力の作用でさらに混練脱泡される。そのため、気泡や不純物の含有量が非常に小さく、かつ、組成物が均一に分散された材料を、効率よく製造することが可能になる。
【0059】
特に、本実施の形態では、囲繞壁部120(ろ過膜)が、側面114に対向するように配置される。そのため、図1に示すように、容器100の自転軸線L2を、公転軸線L1と平行になるように設定することにより、公転による遠心力を、囲繞壁部120(ろ過膜)に対して垂直に作用させることができる。そのため、ろ過効率を高めることが可能になる。
【0060】
また、囲繞壁部120が側面114に対向するように設定されることから、囲繞壁部120の表面積を広くすることが可能になる。そのため、ろ過膜の表面積を広くすることも可能になり、ろ過膜の目詰まりを防止することができる。
【0061】
また、容器100を公転させながら自転させることにより、囲繞壁部120(ろ過膜)における公転軸線L1から最も遠い領域、すなわち、公転による遠心力が最も大きく作用する領域が、時系列に、順次変化する。そのため、囲繞壁部120の全周を利用して、被混練脱泡材料Mをろ過することができ、ろ過膜の表面積を広くすることができる。
【0062】
(5)変形例
以下、本発明を適用した実施の形態の変形例について説明する。
【0063】
(5−1)第1の変形例
以下、第1の変形例について説明する。図4は、第1の変形例に係る容器200について説明するための図である。
【0064】
容器200は、容器本体210を有する。容器本体210の底面212には、凸部214が形成されている。凸部214は、底面212の中央領域に形成されていてもよい。凸部214は、底面212(容器本体210)に対して着脱可能に構成されていてもよい。すなわち、凸部214(凸部214及び囲繞壁部220)を、アダプタとみなしてもよい。また、容器本体210は、側面216を含んで構成されている。
【0065】
容器200は、また、囲繞壁部220を有する。囲繞壁部220は、側面216と対向するように構成されている。囲繞壁部220の下端部は、図4に示すように、凸部214に固定されている。囲繞壁部220と凸部214とは、別体として構成されていてもよい。ただし、囲繞壁部220と凸部214とは、一体的に構成されていてもよい。
【0066】
容器200を利用する場合、囲繞壁部220(ろ過膜)を透過した材料が、底面212及び側面216、並びに、凸部214で区画される空間に収容される。すなわち、ろ過後の材料を、ろ過膜に接触しないように保持することができる。そのため、ろ過された材料が、囲繞空間内に移動する(逆流する)ことを防止することが可能になり、被混練脱泡材料Mを精度よく混練脱泡することが可能になる。
【0067】
(5−2)第2の変形例
以下、第2の変形例について説明する。図5は、第2の変形例について説明するための図である。
【0068】
本変形例では、図5に示すように、公転軸線L1及び自転軸線L2が、ともに水平に延びるように構成された混練脱泡装置2を利用して、容器100(容器200)を自転及び公転させる。
【0069】
混練脱泡装置2によると、囲繞壁部120(ろ過膜)を透過した材料を、囲繞壁部120と接触しないように、容器100内に保持することができる。そのため、ろ過された材料が、囲繞壁部120で囲繞された空間内に移動することを防止することが可能になり、被混練脱泡材料Mを精度よく混練脱泡することが可能になる。
【0070】
(5−3)第3の変形例
以下、第3の変形例について説明する。図6は、第3の変形例について説明するための図である。
【0071】
本変形例では、図6に示すように、公転軸線L1及び自転軸線L2が、所定の角度で交差するように設定された混練脱泡装置3を利用して、容器100(容器200)を自転及び公転させる。
【0072】
混練脱泡装置3は、回転体21を有する。回転体21は、その一部(容器ホルダ30を保持する部分)が屈曲している。詳しくは、回転体21は、公転軸線L1から離れるほど高さが高くなるように屈曲する屈曲部23を有する。そして、屈曲部23に、容器ホルダ30(自転軸32及び軸受け34)が取り付けられる。これにより、自転軸線L2が、公転軸線L1と所定の角度で交差するように設定された混練脱泡装置を実現することができる。なお、公転軸線L1と自転軸線L2とは、例えば45度で交差するように調整されていてもよい。混練脱泡装置3を利用した場合でも、精度の高い混練脱泡処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る混練脱泡装置について説明するための図。
【図2】本発明に係る容器について説明するための図。
【図3】本発明に係る混練脱泡方法について説明するためのフローチャート図。
【図4】第1の変形例に係る容器について説明するための図。
【図5】第2の変形例に係る混練脱泡装置について説明するための図。
【図6】第3の変形例に係る混練脱泡装置について説明するための図。
【符号の説明】
【0074】
1…混練脱泡装置、 2…混練脱泡装置、 3…混練脱泡装置、 10…公転軸、 20…回転体、 21…回転体、 23…屈曲部、 30…容器ホルダ、 32…自転軸、 50…トルク付与機構、 51…モータ、 52…自転トルク付与機構、 54…自転プーリー、 56…自転力付与プーリー、 58…トルク伝達ベルト 60…バランス錘、 100…容器、 110…容器本体、 112…底面、 114…側面、 116…上蓋、 117…上面、 118…開口、 119…栓、 120…囲繞壁部、 140…内部空間、 142…第1の空間、 144…第2の空間、 200…容器、 210…容器本体、 212…底面、 214…凸部、 216…側面、 220…囲繞壁部、 L1…公転軸線、 L2…自転軸線、 M…被混練脱泡材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器ホルダを自転及び公転させることが可能に構成された混練脱泡装置の前記容器ホルダに保持されて、前記容器ホルダの自転及び公転に伴って自転及び公転する、内部に被混練脱泡材料が収容される容器であって、
前記容器ホルダに保持されて自転及び公転する、底面及び側面を含む容器本体と、
前記容器本体の内部空間の所定の領域を囲繞するように構成された、前記容器本体の前記側面と対向する囲繞壁部と、
を含み、
前記囲繞壁部の少なくとも一部はろ過膜によって構成されている容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器において、
前記囲繞壁部の下端部は、前記容器本体の前記底面に固定されている容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の容器において、
前記囲繞壁部の下端部は、前記容器本体の前記底面から突出する凸部に固定されている容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の容器において、
前記容器本体の前記内部空間を区画する、前記底面と対向する上面をさらに含み、
前記囲繞壁部の上端部は、前記上面に固定されている容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の容器において、
前記囲繞壁部は円筒形となっている容器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の容器において、
前記囲繞壁部は、すべて、ろ過膜によって構成されている容器。
【請求項7】
被混練脱泡材料が収容された容器を自転及び公転させることが可能に構成された混練脱泡装置を利用して、前記容器を自転及び/又は公転させる工程を含み、
前記容器は、
底面及び側面を有する容器本体と、
前記容器本体の内部空間の所定の領域を囲繞するように構成された、前記容器本体の前記側面と対向する、少なくとも一部がろ過膜によって構成された囲繞壁部と、
を有し、
前記容器を自転及び/又は公転させる工程で、前記囲繞壁部で囲繞された囲繞空間に収容された被混練脱泡材料の少なくとも一部を、前記ろ過膜を通して前記囲繞空間の外側に移動させる混練脱泡方法。
【請求項8】
請求項7に記載の混練脱泡方法において、
前記容器を自転及び/又は公転させる工程では、
前記ろ過膜を通って前記囲繞空間の外側に移動した材料が、前記囲繞壁部に接触しないように、前記容器の自転角速度及び/又は公転角速度を調整する混練脱泡方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−50834(P2009−50834A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243014(P2007−243014)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(393030408)株式会社シンキー (34)
【Fターム(参考)】